説明

ノニオン界面活性剤組成物

【課題】複合金属酸化物触媒を用いて合成したアルキレンオキサイド付加物の、保存中の液性劣化を抑制したノニオン界面活性剤組成物を提供する。
【解決手段】複合金属酸化物触媒の存在下、脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドとを付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物を85〜95質量%含有すると共に、酸化防止剤を含有し、かつpHが4.0〜7.0であることを特徴とするノニオン界面活性剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニオン界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤組成物に配合されるノニオン界面活性剤として、近年、エステル型の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの開発が進められている。
また、洗剤組成物においては、その使用量の低減、あるいは洗剤組成物が収容される容器サイズのコンパクト化等により、高濃度の界面活性剤を含有する洗剤組成物が主流であるため、ノニオン界面活性剤を製造する際には、純度の高いものが求められている。しかし、ノニオン界面活性剤は純度が高くなるほど保存時の劣化に伴なって着色しやすくなり、該ノニオン界面活性剤を含有する洗剤組成物も色調が変化しやすかった。
【0003】
そこで、洗剤組成物の色調変化を抑制するために、ノニオン界面活性剤に酸化防止剤を添加する方法が知られている。また、洗浄剤組成物に酸化防止剤を添加する方法(例えば、特許文献1、2参照。)や、洗浄剤組成物に2,6−ジ−tert‐ブチル−p−クレゾール(商品名「BHT」)等のラジカル連鎖禁止剤等を添加する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、特許文献1、3では、洗浄剤組成物のpHを6〜11に調整することで、洗剤組成物を長期保存する場合でも安定した色調を維持している。なお、特許文献1、3に記載の方法において、pHの調整を行うのは洗浄剤組成物であって、ノニオン界面活性剤のpH調整については、記載されていない。
【0004】
ところで、ノニオン界面活性剤である、前記エステル型の脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの合成方法としては、脂肪酸アルキルエステルにアルキレンオキサイドを直接付加する反応が知られている。該反応に用いられる触媒としては、例えば金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等が挙げられる。
しかし、上記のような触媒で合成した脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、アルキレンオキサイドの付加モル分布が著しく広いため、未反応の原料エステルが残存しやすい。
そこで、アルキレンオキサイドの付加モル分布を狭くするために、例えば特許文献2には、金属水酸化物で表面改質した複合金属酸化物触媒を用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−279595号公報
【特許文献2】特許第3558900号公報
【特許文献3】特開平11−323386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のような金属水酸化物で表面改質した複合金属酸化物触媒を用いて脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドの付加反応を行うと、得られる脂肪酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(アルキレンオキサイド付加物)が、保存中に加水分解や着色しやすいといった液性劣化の問題が生じることがある。特に、ノニオン界面活性剤の濃度が高い場合は、液性劣化の問題は顕著である。
【0006】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、複合金属酸化物触媒を用いて合成したアルキレンオキサイド付加物の、保存中の液性劣化を抑制したノニオン界面活性剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、保存中にアルキレンオキサイド付加物が著しく劣化したものは、pHが低下する傾向にあることに着目した。そこで、アルキレンオキサイド付加物に酸化防止剤を添加し、得られるノニオン界面活性剤組成物のpHを調整することにより、アルキレンオキサイド付加物の、保存中の液性劣化を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のノニオン界面活性剤組成物は、複合金属酸化物触媒の存在下、脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドとを付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物を85〜95質量%含有すると共に、酸化防止剤を含有し、かつpHが4.0〜7.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複合金属酸化物触媒を用いて合成したアルキレンオキサイド付加物の、保存中の液性劣化を抑制したノニオン界面活性剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のノニオン界面活性剤組成物は、当該ノニオン界面活性剤組成物100質量%中、85〜95質量%のアルキレンオキサイド付加物と、酸化防止剤とを含有し、pHが4.0〜7.0である。
【0011】
[アルキレンオキサイド付加物]
アルキレンオキサイド付加物は、複合金属酸化物触媒の存在下、脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドの付加反応で得られる。
【0012】
<複合金属酸化物触媒>
複合金属酸化物触媒は、後述する付加反応に用いられる触媒である。
複合金属酸化物触媒としては、酸化マグネシウム系複合酸化物が好ましく、特に好ましくは水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、及びその表面改質物から選択される1種又は2種以上の非層状化合物である。中でも、表面改質物が好ましい。
水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物としては、例えば、nMgO・Al・mHO(n:特に限定されないが2.5程度が好適、m:特に限定されない。)で表わされる水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの共沈物を焼成し、Al−Mg系複合酸化物としたものである。この焼成温度は400〜950℃が好ましく、より好ましくは400〜800℃である。
【0013】
また、水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物の表面改質物としては、例えば、上記水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物を金属水酸化物または金属アルコキシドで表面改質した、改質焼成水酸化アルミナ・マグネシウム触媒が挙げられる。
金属水酸化物としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。金属アルコキシドとしては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドが好ましく、より好ましくはナトリウムアルコキシドまたはカリウムアルコキシドである。改質に使用する金属水酸化物または金属アルコキシドの量は、触媒の酸点の一部を中和できる量が好ましく、具体的には水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物に対し1〜20質量%使用するのが好ましく、さらに好ましくは2〜10質量%である。
また、特に限定するものではないが、この改質操作はアルキレンオキサイド付加反応用容器の中で、原料脂肪酸アルキルエステル存在下でも実施でき、この際金属水酸化物または金属アルコキシドは、水もしくはアルコール類、または水とアルコール類の混合物に溶解しておいても良い。
水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物の表面改質物は、アルキレンオキサイドの付加モル分布をシャープにできるので、付加反応に用いられる複合金属酸化物触媒として好適である。
【0014】
<使用原料>
(脂肪酸アルキルエステル)
脂肪酸アルキルエステルとしては、下記一般式(I)で表されるものが使用される。
COOR・・・(I)
前記一般式(I)において、Rは、炭素数が1〜40個、好ましくは3〜30個、特に好ましくは6〜22個のアルキル基またはアルケニル基である。Rは、炭素数1〜20個、好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜4個のアルキル基またはアルケニル基である。
このような脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数8〜20の脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。具体的には、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ラウリン酸メチル、カプリン酸メチル、カプリル酸メチル、ステアリン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、ミリスチン酸エチル、ラウリン酸エチル、カプリン酸エチル、カプリル酸エチルが好ましく、さらにステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸メチル、ラウリン酸メチル、カプリン酸メチルが好ましく、特にラウリン酸メチルが好ましい。
これら脂肪酸アルキルエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(アルキレンオキサイド)
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜8個が好ましく、炭素数2〜3個がより好ましい。このようなアルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜8のものが好ましく、さらに炭素数が2〜4のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが好ましく、特にエチレンオキサイドが好ましい。
これらアルキレンオキサイドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
<付加反応>
上述した脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドを、複合金属酸化物触媒の存在下に反応させる。付加反応は常法に従って行うことができる。
具体的には、オートクレーブ等の反応容器内を減圧にできる反応装置に、原料の脂肪酸アルキルエステルと複合金属酸化物触媒を添加し、窒素ガス等で反応容器内を置換した後、昇温して減圧下で脱水反応を行う。次いで、原料のアルキレンオキサイド導入し、熟成させてアルキレンオキサイド付加物を得る。
この際、昇温温度は95〜120℃が好ましく、反応容器内は0.66〜6.66kPaになるように減圧するのが好ましい。熟成温度は160〜190℃が好ましく、熟成時間は0.25〜2時間が好ましい。
【0017】
アルキレンオキサイドの量は、反応に使用する疎水基1モルに対してそれぞれの合計が、1〜50モルとなるように調整するのが好ましく、より好ましくは3〜30モル、特に好ましくは5〜20モルである。
また、付加反応に用いられる触媒量は、主反応が充分に進行し、ポリエチレングリコール等の副生物の発生量が問題ない範囲であればよく、後述する使用原料に対し0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0018】
このようにして得られるアルキレンオキサイド付加物は、問題のない範囲内で、付加反応で生じる副生成物を含んでいてもよい。
【0019】
[ノニオン界面活性剤組成物]
本発明のノニオン界面活性剤組成物は、前記アルキレンオキサイド付加物と、酸化防止剤とを含有し、pHが4.0〜7.0である。
ノニオン界面活性剤組成物は、アルキレンオキサイド付加物を主成分とする。アルキレンオキサイド付加物の含有量は、ノニオン界面活性剤組成物100質量%中、85〜95質量%であり、好ましくは85〜90質量%である。アルキレンオキサイド付加物の含有量が上記範囲内であると、高濃度洗剤組成物の原料として好適である。含有量が95質量%を超えると、流動点、粘度が上がり取扱いが困難となり好ましくない。
なお、アルキレンオキサイド付加物が、前記付加反応で生じる副生成物を含んでいる場合は、該副生成物も、本発明におけるアルキレンオキサイド付加物の含有量に含まれるものとする。
【0020】
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、ノニオン界面活性剤組成物の保存時の劣化に伴う着色を防止する目的で添加される。
酸化防止剤としては、着色を防止できるものであれば特に制限されないが、例えば、2,6−ジ−tert‐ブチル−4−メチルフェノール(ジブチルヒドロキシトルエン。以下「BHT」と略す。)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、4−メトキシフェノール、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、エリソルビン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸パルミテート、ハイドロキノン、三級ブチルハイドロキノン、天然のトコフェロール系化合物、カテコール、カロチノイド、オルトトリルビグアナイド、チオジプロピオン酸ジラウリル等が挙げられるが、好ましくはフェノール系酸化防止剤およびアスコルビン酸類であり、さらに安全性の観点から食品添加物に分類されるものがより好ましく、この中でもBHT、アスコルビン酸が好ましく、特にBHTが好ましい。
これら酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤は、ノニオン界面活性剤組成物中での濃度が10〜5000ppmになるように添加するのが好ましく、より好ましくは100〜1000ppmである。10ppm以上であれば、保存中の液性劣化の抑制効果を充分に発現することができる。一方、5000ppmを超えたとしても5000ppm以下の時と比較して保存中の液性劣化の抑制効果に差がないので、製造コストを考慮した場合5000ppm以下が好ましい。
【0021】
<pH調整>
本発明においてノニオン界面活性剤組成物のpHは、4.0〜7.0であり、より好ましくは4.5以上7.0未満である。pHが4.0未満であることにより、保存中に液性劣化が生じ、特に着色が著しくなり、一方、pHが7.0を超えることによっても、保存中に液性劣化が生じ、特に加水分解が著しくなる。
また、必要に応じてpH調整剤を添加してもよい。
【0022】
(pH調整剤)
ノニオン界面活性剤組成物のpH調整に用いられるpH調整剤は、任意の無機又は有機の酸及びアルカリを使用することができる。このようなpH調整剤としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸等の他、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸等のカルボン酸、アクリル酸などの高分子アクリル酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、トリポリリン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−シアノエチル)アミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、2,3−ジヒドロキシ−N,N−ジメチルプロピルアミン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン等の短鎖アミン化合物又はそれらのアルキレンオキシド付加物、また窒素に連結する炭素数が8〜36の長鎖アミン化合物又はそれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。さらに、上記記載の無機酸及び有機酸の塩等も用いることもできる。
また、アルカリとして、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩等も使用することができる。
これらの中でも、クエン酸、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましく、クエン酸が特に好ましい。
これらpH調整剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<その他>
ノニオン界面活性剤組成物には、必要に応じて水を配合することができる。水は、ノニオン界面活性剤組成物100質量%中の配合量が85〜95質量%であることが好ましい。
【0024】
<製造方法>
本発明のノニオン界面活性剤組成物は、例えば以下の方法で製造できる。
まず、上述した付加反応によりアルキレンオキサイド付加物を生成する。
次いで、アルキレンオキサイド付加物に酸化防止剤を添加して、ノニオン界面活性剤組成物を得る。
必要に応じて、アルキレンオキサイド付加物と酸化防止剤の混合物に水を加えてもよい。水を加える場合、アニオン界面活性剤組成物の固形分濃度が85〜95質量%になるように加えるのが好ましい。
また、必要に応じてpH調整剤でノニオン界面活性剤組成物のpHを所定の値に調整する。さらに、pH調整前にろ過してもよい。
【0025】
このようにして得られる本発明のノニオン界面活性剤組成物は、酸化防止剤を含有し、pHを調整することにより、保存時の劣化に伴う加水分解や着色を防止できる。
特に、表面改質した複合金属酸化物触媒を用いて付加反応を行う場合は、生成するアルキレンオキサイド付加物の加水分解が起こりやすい。本発明によれば、アルキレンオキサイド付加物に前記酸化防止剤を添加して得られるノニオン界面活性剤組成物のpHを4.0〜7.0に調整することによって、保存中の液性劣化を防止でき、特に加水分解を良好に抑えることができる。
【0026】
また、本発明のノニオン界面活性剤組成物は、洗剤組成物の原料となる。近年、高濃度洗剤組成物の需要が高まっているが、当該ノニオン界面活性剤組成物は、85〜95質量%のアルキレンオキサイド付加物を含有しているため、高濃度洗剤組成物の原料として好適である。例えば、界面活性剤を50〜80質量%含むような高濃度洗剤組成物に用いることができる。
なお、アルキレンオキサイド付加物の含有量が多くなるほど、すなわちアニオン系面活性剤の純度が高くなるほど、保存時の劣化に伴う着色は顕著になるが、本発明によれば、酸化防止剤を含有しているため、着色を防止できる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「%」は、特に断らない限り、質量%を示す。
【0028】
[実施例1]
<ノニオン界面活性剤組成物の製造>
(使用原料)
・ラウリン酸メチル:ライオンケミカル(株)製、「パステルM12」。
・40%水酸化カリウム水溶液:ライオンケミカル(株)製。
・エチレンオキサイド:三菱化学(株)製。
・プロピレンオキサイド:関東化学(株)製。
・精製水:和光純薬(株)製。
・BHT:東京化成工業(株)製。
・アスコルビン酸:関東化学(株)製。
・クエン酸:東京化成工業(株)製。
・メタノール(HPLC用):関東化学(株)製。
【0029】
(表面改質した複合金属酸化物触媒の調製)
2.5MgO・Al・mHOからなる化学組成の水酸化アルミニウム・マグネシウム(協和化学工業社製、「キョーワード300」)を750℃で3時間焼成して、マグネシウム・アルミニウム複合金属酸化物触媒粉末を得た。これに40質量%水酸化カリウム水溶液を(触媒に対して水酸化カリウム純分で5質量%)噴霧し、乾燥させることにより、アルカリ変性処理を施した複合金属酸化物触媒を得た。なお、調製された触媒平均粒子径は50μmであった。
【0030】
マックスブレンド翼付きの金属製オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、有効容積:2L、常用圧:0.49Mpa)中に、ラウリン酸メチル441g(2.1モル)と、上記表面改質した複合金属酸化物触媒3.7gを仕込み、攪拌混合しながらオートクレーブ内を窒素で置換した後、昇温して100℃にて減圧下(1.33kPa以下)で30分間脱水を行った。
次いで、エチレンオキサイド1359g(30.9モル)を、180℃にて、330分間かけて導入した。
熟成反応を行った後、冷却して抜き出し、アルキレンオキサイド付加物を得た。
次いで、アルキレンオキサイド付加物に精製水317g及びBHT(2,6‐ジtert‐ブチル‐4‐メチルフェノール)0.21gを加え、80℃でろ過を行い、クエン酸でpHを7に調整し、ノニオン界面活性剤組成物を得た。なお、pHは純分が5%となるように希釈した水溶液にて測定した。
得られたノニオン界面活性剤組成物のAI含量(AI%)を、下記式にて求めた。結果を表1に示す。
AI%=(付加反応時の脂肪酸アルキルエステルの質量+アルキレンオキサイドの質量)/(ノニオン界面活性剤組成物の質量)
【0031】
<評価>
70℃で4週間保存した後のノニオン界面活性剤組成物の色調および加水分解の評価を以下のようにして行った。結果を表1に示す。
(色調評価)
以下の装置を用い、色調測定を行い、APHAを求めた。評価基準は20未満を良好、20以上40未満をやや良好、40以上80未満をやや不良、80以上を不良とする。
装置:石油製品測定装置「OEM−2000」(日本電色工業製)。
測定温度:60℃。
【0032】
(加水分解評価)
以下の条件で、液体クロマトグラフ質量分析測定を行い、ノニオン界面活性剤組成物中の脂肪酸量を測定し、脂肪酸がアルキレンオキサイド付加物の加水分解により生じたものとみなして加水分解率を質量%として求めた。評価基準は加水分解率0.5%未満を良好、0.5%以上1.0%未満をやや不良、1.0%以上を不良とする。
装置:NANOSPACE SI−2(SHISEIDO社製)。
検出器:FINNIGEN LCQ DUO Mass Spectrometer System(Thermo Quest社製)。
カラム:PEGASIL ODS(直径2mm×長さ150mm)(センシュー科学社製)。
移動相:精製水/メタノール=85/15(体積比)。
流速:0.1mL/分。
温度:40℃。
注入量:10μL。
【0033】
[実施例2]
BHTの代わりにアスコルビン酸0.21gを用いた以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例3]
実施例1において、ラウリン酸メチルの使用量を430g(2.0モル)に変更した他は、脱水までの工程を実施例1と同様にして行った。
次いで、エチレンオキサイド1192g(27.1モル)を、180℃にて、290分間かけて導入した。
熟成反応を行った後、さらにプロピレンオキサイド178g(3.0モル)を、180℃にて、40分間かけて導入した。
熟成反応を行った後、実施例1と同様の工程を行ってノニオン界面活性剤組成物を得た。
得られたノニオン界面活性剤組成物のAI含量(AI%)、及び評価を、実施例1と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
クエン酸でpHを4に調整した以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
アルキレンオキサイド付加物に加える精製水の量を95gに変更した以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1]
アルキレンオキサイド付加物にBHTを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例2]
クエン酸でpHを9に調整した以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例3]
クエン酸でpHを3に調整した以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例4]
アルキレンオキサイド付加物にBHTを添加せず、クエン酸でpHを9.1に調整した以外は、実施例1と同様にしてノニオン界面活性剤組成物を製造し、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1から明らかなように、実施例のノニオン界面活性剤組成物は、70℃で4週間保存した場合でも、着色しにくく、また、加水分解も抑制できた。
一方、酸化防止剤を含まない比較例1のノニオン界面活性剤組成物は、液性劣化が大きく、特に色調が大きく変化した。
比較例2及び3のノニオン界面活性剤組成物は、pHを9.0及び3.0の調整したため、実施例に比べて加水分解率が高かった。また、酸化防止剤を添加したにもかかわらず、着色して、実施例に比べて色調が大きく変化した。
比較例4のノニオン界面活性剤組成物は、酸化防止剤を含まず、また、pHを9.1に調製したため、色調が大きく変化し、加水分解率も高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属酸化物触媒の存在下、脂肪酸アルキルエステルとアルキレンオキサイドとを付加反応させて得られるアルキレンオキサイド付加物を85〜95質量%含有すると共に、酸化防止剤を含有し、かつpHが4.0〜7.0であることを特徴とするノニオン界面活性剤組成物。

【公開番号】特開2008−156456(P2008−156456A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346007(P2006−346007)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】