説明

ノボラック型フェノール樹脂の製造方法

【課題】残存触媒がほとんどないノボラック型フェノール樹脂を高収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】
予めガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入し、酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノボラック型フェノール樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、ガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入して反応させるノボラック型フェノール樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノボラック型フェノール樹脂は、良好な電気特性、耐熱性、難燃性を有しており、電子材料や他の工業材料用として幅広く使用されている。
一般にノボラック型フェノール樹脂は、塩酸、硫酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸などの酸性触媒下、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて製造する。こうして得られるフェノール樹脂中には、残存触媒や(強酸触媒の場合に生ずる)反応装置材溶出物などの不純物が含まれており、これらの量を低減するため、各種の方法が提案されている(たとえば、特許文献1)が、それらによっても、夾雑物などを除去しきれないのが実態である。
【0003】
【特許文献1】特開2007−112909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ごく微量の触媒存在下でも高い反応率で反応させることができる結果、残存触媒がほとんどない高純度のノボラック型フェノール樹脂を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フェノール樹脂を製造する方法において、予めガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入し、微量の触媒存在下で反応させることで上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、予めガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入し、酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、ごく微量の触媒存在下でアルデヒド類とフェノール類とを反応させてノボラック型フェノール樹脂を高収率に製造することができ、残存触媒がほとんどなく、分子量分布がせまいノボラック型フェノール樹脂を得ることができるので、このノボラック型フェノール樹脂を用いた硬化物は、高純度で物性的に優れたものであり、電子材料等に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、アルデヒド類とフェノール類とを反応させフェノール樹脂を製造する方法において、アルデヒド類を予めガス化し、かつ、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入し、微量の触媒存在下で反応させることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法である。
本発明に用いられるフェノール類は、ノボラック型フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物であれば、特に、限定されるものではない。好ましくは、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノール類、レゾルシンなどから選ばれた少なくとも1種以上のフェノール類である。本発明においてフェノール類は、加温して液状化し、ガス状アルデヒド類と反応させてフェノール樹脂を製造する。
本発明に用いられるアルデヒド類は、ノボラック型フェノール樹脂の製造に用いられるアルデヒド化合物であれば、特に、限定されるものではないが、ガス状で液状フェノール類と反応させるものであり、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等が好ましく、取り扱いの容易性からパラホルムアルデヒドが特に好ましい。このアルデヒド類をガス化させるために、たとえば、80〜200℃の温度で加熱するが、この時、発生するガスを希釈する目的で、窒素ガス等を併用することができる。
【0008】
本発明のノボラック型フェノール樹脂を製造するときに用いるフェノール類とアルデヒド類との反応モル比は、フェノール類1モルに対してアルデヒド類0.3〜1.5、好ましくは、0.5〜1.1モルである。
【0009】
本発明に用いられる触媒は、無機酸や有機酸など酸性を示す物質であれば、特に、限定されないが、残存触媒の分解し易さ、あるいは後処理の容易さから、シュウ酸、クエン酸などの有機酸が好ましい。
【0010】
本発明に用いられる触媒の使用量は、残存触媒量を少なくするため、反応活性が得られる限りにおいて少量であることが好ましく、フェノール類1モルに対して0.0005〜0.01モルの範囲で選ばれる。これは、ガス化アルデヒド類を超微細気泡発生装置によって微細な気泡にして液状フェノール類と反応させることで可能なことであり、従来のノボラック型フェノール樹脂の製造において用いられる触媒量の1/10以下の微小量である。
【0011】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の製造は、予めガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置中で酸性触媒を含有する液状フェノール類モノマー層に導入し、ナノ(nm)からマイクロ(μm)サイズの微細気泡にして反応させることが特徴である。
ナノからマイクロサイズのアルデヒド微細気泡は、反応液中で上昇速度が極めて遅く、その表面電位によって気泡同士が反発するので、微細気泡状態で高濃度に安定に存在し、また、微細気泡ゆえに気泡に加わる界面張力による圧力が高く、気泡は一層小さくなり、気泡内圧力は高まる。
本発明においては、アルデヒドがこのようなナノからマイクロサイズの微細気泡で存在するため、通常のホルマリン液使用やアルデヒドガスバブリングの場合に比して、高濃度、高活性状態が出現して、微小量の触媒存在下にもかかわらず高反応率が実現するものと推定される。
【0012】
本発明に用いられる「超微細気泡発生装置」とは、ナノからマイクロサイズの微細気泡を発生させる装置であり、一般に市販されている装置を用いることができる。「超微細気泡発生装置」は、気体せん断法、加圧溶解法などによる装置が市販されているが、できるだけ微細な気泡を生成できることが望ましく、気体せん断法による装置がより好ましい。
【0013】
本発明のノボラック型フェノール樹脂の製造は、主反応槽と外部に設けた超微細気泡発生装置とをつなぎ、循環系を形成した反応装置を用いて行われる。主反応槽に酸性触媒を存在させたフェノール類を仕込み、加温して液状化し、超微細気泡発生装置に循環させる。超微細気泡発生装置にガス化したアルデヒド類を導入し、該装置中、液状フェノール類モノマー層の中で微細気泡化し、循環反応系を所定の温度で反応させ、フェノール樹脂を製造する。
【実施例】
【0014】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1
次のような反応装置を使用した。
ガス導入口及び液体循環ポンプを備える超微細気泡発生装置(株式会社アスプ社製 超微細気泡発生装置AS−MM3S)と1Lの撹拌機付き三口フラスコとの間を2つのチューブでつなぎ、超微細気泡発生装置の液体循環ポンプによって、反応液が両者の間を循環するようになっている。
【0016】
三口フラスコにフェノール470gを入れ、ここにシュウ酸0.46gを加え、90℃に加熱し撹拌した。この触媒入り液状フェノール類モノマーの撹拌液を90℃に保温した超微細気泡発生装置に循環した。一方、パラホルムアルデヒドを130℃に加熱することで得たホルムアルデヒドガス90gを2時間かけてガス導入口から超微細気泡発生装置内に導入した。
その後、超微細気泡発生装置への循環を停止し、三口フラスコ中で100℃に温度を上げて、2時間撹拌しながら反応を続行させてフェノール樹脂を得た。
フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および遊離フェノール分の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行った。GPCの測定条件については、第1表に示す。
本実施例で得られたフェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および樹脂分中の遊離フェノール分率(%)を第2表に示した。極めて効率的に反応が行われ、分子量分布も狭いものであった。また、イオンクロマトグラフィー法により測定したこの樹脂中の残存触媒量は、検出限界(0.1ppm)以下であった。
【0017】
【表1】

【0018】
実施例2〜3
超微細気泡発生装置内に導入するホルムアルデヒドガスの量を変えて、その他は、実施例1と同様の方法で合成を行った。
反応結果を第2表に示した。
【0019】
比較例1
1Lの三口フラスコにフェノール470gを入れ、ここにシュウ酸0.46gを加え、90℃に加熱し撹拌した。内径3mmのガラス管をフラスコ内の液に浸るようセットし、このガラス管からホルムアルデヒドガス90gを2時間かけて導入した。その後、100℃に温度を上げて、2時間撹拌を続け反応させた。
反応結果を第2表に示したが、反応はほとんど進行しなかった。
【0020】
比較例2
1Lの三口フラスコにフェノール470g、37%ホルマリン水溶液243.2gを入れ、ここにシュウ酸4.6gを加え、90℃に加熱し撹拌した。その後、100℃に温度を上げて、6時間攪拌を続け反応させた。
反応結果を第2表に示したが、反応は十分には進行せず、また、樹脂中の残存触媒量は少なくなかった。
【0021】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の製造方法によれば、残存触媒がほとんどなく、分子量分布がせまいノボラック型フェノール樹脂を製造する方法を提供することができ、このノボラック型フェノール樹脂を用いた硬化物は、高純度で物性的に優れたものになる。その結果、電子材料や他の工業材料用として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めガス化したアルデヒド類を、超微細気泡発生装置を通じて液状フェノール類モノマー層に導入し、酸性触媒の存在下で反応させることを特徴とするノボラック型フェノール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−57454(P2009−57454A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225580(P2007−225580)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】