説明

ノーズ可動クロッシング構造

【課題】可動ノーズレールが下面に設けた支点を中心に回動する機能を有する場合に、転換された可動ノーズレールに接続される固定ノーズレールのふく進を防止することができるノーズ可動クロッシング構造の提供。
【解決手段】一対の固定ウイングレール31,32と、前記固定ウイングレール31,32間に位置する可動ノーズレール10と、該可動ノーズレール10の両側位置にそれぞれ連結可能な一対の固定ノーズレール21,22を床板40上に備えたノーズ可動クロッシング構造であって、可動ノーズレール10は、下面に設けた支点を中心に床板40に対して回動可能に配置され、各固定ノーズレール21,22の軌間側に円弧状の凹部212を形成し、凹部212に嵌合する円弧状の凸部を側面に形成した座金を床板40に対して固定することで固定ノーズレール21,22のふく進を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路で使用される分岐器内のクロッシング構造に関し、特に、可動ノーズレールが下面に設けた支点を中心に回動する機能を有するノーズ可動クロッシング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路で使用される分岐器内のクロッシング構造としては、全てのレールが固定される固定クロッシング構造と、一部レールが可動する可動クロッシング構造に分けられる。
【0003】
固定クロッシング構造は、図6に示すように、両端側に開く2本のウイングレール100と、ウイングレール100間に位置させた先細状の1本のノーズレール101とで構成され、ウイングレール長の中間部付近にノーズレール101の先端が配置するように、また、各ウイングレール100とノーズレール101との間隔が一定になるように、間隔材102を介して各レールが固定されている。
【0004】
この固定クロッシング構造によれば、列車車輪が走行する際に、構造上ウイングレール100とノーズレール101との間に欠線部が存在するため、反対側に敷設される主レールに対して、異線進入防止のためのガードレール(図示せず)の設置が必要であった。しかし、ガードレールを設置した場合においては、列車速度によって設置したガードレールに大きな背面横圧が発生するので、列車の高速通過ができないという問題があった。
【0005】
また、欠線部の存在により、列車車輪がウイングレール100とノーズレール101との間を乗り移る際に、レール踏面の幅が狭いことから序々に大きな凹部を作り、クロッシングの耐久寿命を低下させる他、その凹部の成長に合わせて列車通過時の騒音と振動が増加するという問題があった。
【0006】
可動クロッシング構造のうち、ノーズレールが可動するものはノーズ可動クロッシング構造と呼ばれている。このノーズ可動クロッシング構造は、図7に示すように、両端側に開く2本のウイングレール103と、ウイングレール103間に位置させた先細状の1本の可動ノーズレール104と、1本の燕尾端105で構成されている。
【0007】
そして、可動ノーズレール104先端のレール底部下に取り付けられた転てつ棒1が左右(図7では上下方向)に動くことにより、左右どちらかのウイングレール103に密着するように動作する。したがって、固定クロッシング構造のような欠線部が存在しないので、列車の高速走行を行うに際して列車通過時の騒音及び振動を抑制できる。
【0008】
近年、鉄道の高速化及び鉄道沿線の環境対策面から、鉄道線路において低騒音及び低振動の敷設構造が要求されている。この要求から、既に固定クロッシング構造が敷設されている箇所において、騒音及び振動の発生が少ない可動クロッシング構造を敷設することが望まれていた。
【0009】
しかしながら、ノーズ可動クロッシング構造を構成する可動ノーズレールは、可動を容易にするため後端部に弾性部106を設け、又は、燕尾端105の後端部に揺動部や回転部を配置しているので、固定クロッシング構造より全長が長くなり、固定クロッシング構造が敷設されている箇所にそのまま敷設することができないという問題があった。
【0010】
そこで、出願人は、可動ノーズレールの長さを短くし、可動ノーズレールの下面に設けた支点を中心に回動可能に形成することで、全体を固定クロッシングと同等の全長で構成可能とした短ノーズ可動クロッシング構造(特許文献1)を提案した。
この短ノーズ可動クロッシング構造によれば、固定クロッシングと同等の全長で構成することで、固定クロッシング敷設箇所に容易に交換して敷設可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−162242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した短ノーズ可動クロッシング構造(特許文献1)によれば、可動ノーズレールを支点で回動させることで車両走行方向に転換しなければならないため、その転換ストロークは、可動ノーズレールが形成する軌間線(軌道の軌間を形成する内面ライン)に対して、軌間内に設置されるガードレール以外のレールは、車輪フランジ背面がレールに接触しないように、最小フランジウェー幅が65mm+S以上と規定されている。そのため、可動ノーズレールと固定ウイングレールとの間の、最小フランジウェー幅を65mm+Sと設定し、可動ノーズレールの転換ストローク及び回動中心位置を算定することとなるため、回動中心位置が可動ノーズクロッシングレールの後端側となる。また、既設の固定クロッシングとクロッシング長を同一とし、既敷設品との交換を容易にするためには、固定ノーズレールを短尺レールとすることが必要となり、床板に対して固定ノーズレールを締結する箇所が限定される。
【0013】
そのため、固定ノーズレールについてレール軸力によるふく進が生じた場合、固定ノーズレールの位置の変動が生じ易く、転換された可動ノーズレールとの接続部分において位置ずれが生じ、列車通過時において騒音及び振動の発生要因となるという新たな問題が生じるに至った。
【0014】
また、固定レールの前端側へのふく進作用は、可動ノーズレールの回動中心位置に配置される床板に、固定レール先端部が介在するので、回動に支障を来たす場合が生じることが考えられる。
【0015】
本発明は上記実情に鑑みて提案されたもので、可動ノーズレールが下面に設けた支点を中心に回動する機能を有する場合に、転換された可動ノーズレールに接続される固定ノーズレールのふく進を防止することができるノーズ可動クロッシング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため請求項1は、一対の固定ウイングレールと、前記固定ウイングレール間に位置する可動ノーズレールと、該可動ノーズレールの両側位置にそれぞれ連結可能な一対の固定ノーズレールを床板上に備えたノーズ可動クロッシング構造であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記可動ノーズレールは、下面に設けた支点を中心に前記床板に対して回動可能に配置される。
前記各固定ノーズレールの軌間側に凹部を形成し、該凹部に嵌合する凸部を側面に形成した座金を前記床板に対して固定する。
【0017】
請求項2は、請求項1のノーズ可動クロッシング構造において、前記凹部及び凸部は円弧状であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
上記したノーズ可動クロッシング構造によれば、各固定ノーズレールの軌間側に設けた凹部と、座金に設けた凸部とが嵌合することで固定ノーズレールのレール長方向のふく進を確実に防止することができる。
【0019】
また、凹部及び凸部を円弧状に形成することで、応力集中を少なくすることができる。
【0020】
その結果、可動ノーズレールが支点を中心に回動する構造であっても車両の走行時における固定ノーズレールのふく進を防止することができ、騒音及び振動の発生を防止することができる。
また、このことにより固定レールの前端側へのふく進作用が防止できることで、可動ノーズレールの回動中心位置に配置される床板に、固定レール先端部が介在することなく、回動が保持される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のノーズ可動クロッシング構造の概略構成を示す平面説明図である。
【図2】本発明のノーズ可動クロッシング構造のふく進防止を実現するための固定ノーズレール及び座金の構成を説明するための平面説明図である。
【図3】本発明のノーズ可動クロッシング構造のふく進防止を実現するための固定ノーズレール及び座金の構成を説明するための側面説明図である。
【図4】本発明のノーズ可動クロッシング構造における固定ノーズレール及び座金の構成(嵌合状態)を示す平面説明図である。
【図5】本発明のノーズ可動クロッシング構造における固定ノーズレール及び座金の構成(嵌合状態)を示す側面説明図である。
【図6】従来の固定クロッシング構造の構成を示す平面説明図である。
【図7】従来のノーズ可動クロッシング構造の構成を示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態の一例としてのノーズ可動クロッシング構造について、図1〜図3を参照しながら説明する。
ノーズ可動クロッシング構造は、図1に示すように、前端側が転てつ棒1に連結される可動ノーズレール10と、2本の固定ノーズレール21,22と、2本の固定ウイングレール31,32をそれぞれ床板40上に設置して構成されている。
【0023】
可動ノーズレール10は、複数のボルト2とナット3で結合された後端側左部11及び後端側右部12に対して、更に前端側部13を結合した合体部材で構成されている。
前端側部13は、各固定ウイングレール31,32の傾斜レール面31a,32aにそれぞれ連結可能な斜面13a,13aを有したくさび状となる三角形状平面を有して構成されている。
後端側左部11及び後端側右部12は、後端側が固定ノーズレール21,22の傾斜レール面21a,22aに連結可能な斜面11a,12aと、前端側部13に連結する面11b,12bと、前端側部13の各斜面13aに対して直線状又は曲線状となる側面11c,12cとを有して構成されている。
したがって、可動ノーズレール10は、前端側部13と一対の後端側左部11,後端側右部12との各部材を連結することで四辺の連結面となる斜面11a,12a,13a,13aを有する形状の合体部材から構成されている。
【0024】
可動ノーズレール10を前端側部13と一対の後端側左部11,後端側右部12との各部材を連結する合体部材から形成することで、それぞれを別個に作製することが可能となる。
その結果、前端側部13における各固定ウイングレール31,32の傾斜レール面31a,32aに連結する斜面13a,13a、及び、後端側左部11,後端側右部12における側面11c,12cや固定ノーズレール21,22の傾斜レール面21a,22aに連結する斜面11a,12aの加工容易性を向上させることができる。
【0025】
可動ノーズレール10の前端側の先端部下面には、可動ノーズレール10に対して転てつ棒1の端部が略直交するように装着されている。
また、可動ノーズレール10の中央に対して後端寄り位置の下面には、支点となる円柱部4を備えた円柱付き床板が装着され、この円柱付き床板の円柱部4が床板40側に設けた円形穴部に嵌合することで可動ノーズレール10が転てつ棒1の転換動作に応じて回動可能に構成されている。
【0026】
2本の固定ウイングレール31,32は、両端側に開くような形状を有して敷設され、2本の固定ノーズレール21,22は、可動ノーズレール10の後端側を挟む位置に敷設されている。2本の固定ノーズレール21,22の間には、間隔材5を配置することで、クロッシング角の保持及び敷設位置のずれを防止している。
【0027】
そして、可動ノーズレール10が図1において左方向に転換されている状態(図1の状態)では、固定ウイングレール32の傾斜レール面32aと可動ノーズレール10の斜面13aが連結することで固定ウイングレール32の前端側と、可動ノーズレール10と、固定ノーズレール21とが直線状又は曲線状に配置されるようになっている。この時、各固定ノーズレール21の前端側の傾斜レール面21aは可動ノーズレール10の斜面11aに連結している。上述の例では、可動ノーズレール10と固定ノーズレール21とが直線状に配置したが、可動ノーズレール10に対して固定ノーズレール21が曲線状に接続するように配置される構造であってもよい。
【0028】
次に、本発明のノーズ可動クロッシング構造の特徴部分であるふく進防止の構成について、図2〜図5を参照しながら説明する。
固定ノーズレール21のノーズ可動レール10に当接する側と反対側(軌間側)におけるフランジ部211に、固定ノーズレール21の前端側位置C及び中間よりやや後端側位置Dの二か所に、図2に示すような凹部212をそれぞれ形成する。同様に、固定ノーズレール22のノーズ可動レール10に当接する側と反対側(軌間側)においても、その前端側位置C及び中間よりやや後端側位置Dの二か所に凹部222をそれぞれ形成する。
各凹部212(222)は、図2及び図3に示すように、固定ノーズレール21(22)のフランジ部211(221)の一部が円弧状に欠落した円弧状凹部212(222)で構成されている。
【0029】
前記凹部212(222)に対しては、座金支持部50のレール側部分を覆うように配置し、ボルト60により床板40上に固定される座金70のレール側の下部側面に形成された凸部75が嵌合するようになっている。すなわち、座金70は、レール側の下部側面にレールに沿った方向に方形状の切欠部71が形成され、この切欠部71が固定ノーズレール21(22)のフランジ端部の上面及び側面を覆うように配置される構成となっている。そして、切欠部71の中央にレール側に円弧状となる凸部75が形成され、この凸部75が凹部212(222)に嵌合するようになっている。また、切欠部71が形成された側と反対側の座金の下面には、座金支持部と一体化するための凸部73がレールに沿って形成されている。
【0030】
固定ノーズレール21(22)に形成した凹部212(222)及び座金70に形成した凸部75をそれぞれ円弧状に形成するのは、凹凸部が直角部分を有することで応力が集中する現象を防いで、応力を分散させるためである。
【0031】
座金支持部50は、上面の中央付近にレールに沿った溝部51が形成され、下面は床板40に一体とするべく平らに形成されている。そして、座金支持部50の溝部51に座金70の凸部73が嵌合するように配置し、座金70及び座金支持部50を貫通するボルト60及びナット61,ワッシャー62により、座金70を座金支持部50と一体となる床板40に固定する。
図4及び図5は、固定ノーズレール21(22)の凹部212(222)に対して、座金70の凸部75が嵌合された状態で座金支持部50と一体化した床板40上に固定された状態を示している。
【0032】
上記したノーズ可動クロッシング構造によれば、固定ノーズレール21(22)の外側のフランジ部211(221)に設けた円弧状凹部212(222)に対して、床板40に固定される座金70の凸部75が嵌合することにより、床板40に対する固定ノーズレール21(22)のレール方向の移動を防止できるので、レール軸力により発生するふく進を抑制し、固定ノーズレール21(22)と可動ノーズレール10の接触位置について、レール敷設時の状態を維持することができ、この部分における列車通過時の騒音及び振動の発生を軽減することができる。
また、固定ノーズレール21(22)のふく進が抑制されることにより、可動ノーズレール10に結合している円柱付き床板の円柱部4の回動に支障を来たすことを防止する。
【符号の説明】
【0033】
1…転てつ棒、 2…ボルト、 3…ナット、 4…円柱部、 5…間隔材、 6…ボルト、 7…ナット、 10…可動ノーズレール、 11…後端側左部、 12…後端側右部、 13…前端側部、 15,16…フランジ、 17,18…突部、 21,22…固定ノーズレール、 31,32…固定ウイングレール、 40…床板、 50…座金支持部、 70…座金、 73…凸部、 100
ウイングレール、 101…ノーズレール、 102…間隔材、 103…ウイングレール、 104…可動ノーズレール、 105…燕尾端、 212,222…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の固定ウイングレールと、前記固定ウイングレール間に位置する可動ノーズレールと、該可動ノーズレールの両側位置にそれぞれ連結可能な一対の固定ノーズレールを床板上に備えたクロッシング構造であって、
前記可動ノーズレールは、下面に設けた支点を中心に前記床板に対して回動可能に配置される一方、
前記各固定ノーズレールの軌間側に凹部を形成し、
該凹部に嵌合する凸部を側面に形成した座金を前記床板に対して固定して成る
ことを特徴とするノーズ可動クロッシング構造。
【請求項2】
前記凹部及び凸部は円弧状である請求項1に記載のノーズ可動クロッシング構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−7015(P2011−7015A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154403(P2009−154403)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(391023725)株式会社峰製作所 (10)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)