説明

ノーパンクチューブ

【課題】
タイヤの側面耐力とクッション性との相反する性質を兼備させたうえで、軽量化を図ったノーパンクチューブの提供である。
【解決手段】
チューブC1 は、エラストマーから成形され、横断面視において接地部1の両側に側面部2がそれぞれ接続されて、各側面部2の間が開口された略U字状を有していて、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長よりも僅かに長い長さを有するように直状に形成されて、前記タイヤ外皮21の環状空間部22に前記チューブC1 を直状のままで、原形状で開口の側がリム23と対向するように配置させて、横断面視で前記各側面部2を大きく弾性変形させて嵌め込んだ状態で、当該チューブC1 の長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーを原材料としていて、両端部の接合が不要な直状のチューブであって、タイヤの側面耐力とクッション性との相反する性質を兼備させたうえで、軽量化を図ったノーパンクチューブに関するものである。本発明に係るノーパンクチューブは、自転車、車椅子、シニアカー等のタイヤに嵌め込まれて使用される。
【背景技術】
【0002】
釘類が刺さってもパンクをしないチューブ(ノーパンクチューブ)の一つとして、特許文献1に開示のものが知られている。このチューブは、押出成形された1本状であって、タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長の1.00〜1.03倍の長さと、前記環状空間部の横断面積に対して1.0〜1.3倍の横断面積を有していて、当該チューブを前記環状空間部に嵌め込むことにより、横断面で僅かに圧縮させることにより、周方向で僅かに伸長させて、チューブの両端面を互いに突き合わせた状態で収容されることにより、チューブの両端部を熱融着により接合することを不要にすると共に、リング状のチューブのように、種々のタイヤサイズに対応したものを個々に製作する必要をなくして、押出成形されたチューブ長尺材をタイヤ外皮の周長に切断することにより、各種サイズのタイヤに対して嵌込み可能にしたものである。
【0003】
しかし、嵌込み前のチューブの横断面形状は、断面円形の中実構造か、或いは多数の小孔が長手方向に連続して形成された孔付き構造であって、当該チューブを横断面視で圧縮変形させることにより、当該チューブをタイヤ外皮の内周面のほぼ全面に密着させる構造であった。よって、タイヤ外皮の環状空間部は、その全体が圧縮変形されたチューブで充満される構造となるため、当該チューブの重量が大きくなって、チューブの軽量化が図れない問題があった。例えば、サイズ(26×1 3/8)のタイヤに対応した熱可塑性エラストマーを使用した中実構造のチューブであると、チューブの重量は、約1300gとなって、自転車のチューブとしては、やや重たくなるため、この種の直状のチューブの軽量化が望まれていた。ここで、多数の小孔を設けることにより、多少の軽量化は図られるが、チューブの横断面積に対する小孔の面積の割合である空隙率は、25%を超えると、使用時に接地面から圧力を受けて変形するチューブの変形度合が大きくなり過ぎて、乗り心地性が悪くなると共に、チューブ自体が脆くなって、耐久性が低下する問題がある。このため、チューブの空隙率を余り大きくすることはできず、この点も、チューブの軽量化を阻害していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4392055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、接地部の両側に各側面部がそれぞれ接続された断面略U字状、或いは断面リング状のチューブの全体の弾性変形の利用により、タイヤの側面耐力とクッション性との相反する性質を兼備させたうえで、軽量化を図ったノーパンクチューブの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に直状のまま横断面視で変形されて嵌め込まれるチューブであって、当該チューブは、エラストマーから成形され、横断面視において接地部の両側に側面部がそれぞれ接続されて、各側面部の間が開口された略U字状を有していて、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直状に形成されて、前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブを直状のままで、原形状で開口の側が前記リムと対向するように配置させて、横断面視で前記各側面部を大きく弾性変形させて嵌め込んだ状態で、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴としている。
【0007】
請求項1のチューブは、直状のままタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれるため、その両端部は接合されておらず、よって、直状のままで、リング状をなしていない。タイヤのリムからタイヤ外皮を取り外して、チューブの各側面部の間に形成された開口が当該タイヤ外皮の開口の側(組付け状態でリムの側)を向くように、当該チューブの各側面部が近接するように内方に大きく弾性変形させて、当該タイヤ外皮の環状空間部に嵌め込む。これにより、チューブの接地部、及び当該接地部の両側の各側面部は、それぞれタイヤ外皮の内周面に密着する。チューブの長さは、タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有しているために、タイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれたチューブは、周方向に沿って僅かの「重り代」を有するが、当該「重り代」は、チューブの両端面が互いに突っ張り合って圧縮されることにより、消失される。これにより、直状のままタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれたチューブは、その両端部が互いに接合されていなくても、当該チューブの両端部は周方向に沿って分離されたり、或いは横断面視において各端が互いにずれたりすることなく、リング状を保持する。なお、タイヤ外皮の環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態で、当該タイヤ外皮をリムの引掛り部に引っ掛けて、リムとタイヤ外皮を組み付けてタイヤとする。
【0008】
チューブの接地部がタイヤ外皮の接地部分の内側に配置されていると共に、当該チューブの各側面部は、大きく弾性変形されてタイヤ外皮の両側部分の内側に配置されて内周面に弾接している。チューブの各側面部がタイヤ外皮の内周面に弾接する力によって、チューブの接地部もタイヤ外皮の内周面に弾接する。タイヤ外皮の環状空間部にチューブを嵌め込んだ状態で、当該チューブの各側面部の間に形成されている開口は、各側面部の内方への弾性変形により狭められた状態で残存している。このため、弾性変形されたチューブの各側面部の弾性復元力は、タイヤ外皮の両側部分に対して突張り力として作用し続けるために、通常の接地圧ではタイヤの両側面形状が容易に崩れるのを防止する力である「側面耐力」が得られる。チューブの各側面部の上記突張り作用によって、タイヤ外皮の両側部分の形状を保持し得ると共に、各側面部が大きく内方に弾性変形された状態でタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれているチューブの全体は、走行中のタイヤが地面から受ける接地力により、当該接地力を吸収すべく弾性変形するため、タイヤ全体としては、快適な反発弾性であるクッション性を有することとなって、自転車等の快適な乗り心地性を確保できる。また、チューブ全体としては、横断面が略U字状を保持したままで、各側面部が自身の突張り力によりタイヤ外皮の両側部分の内周面に弾接すると共に、両端面が互いに突っ張りあっているために、リング状となったチューブの横断面形状は、接地力により僅かに弾性変形されるが、当該チューブの全体形状であるリング形状は、横断面が略U字状であるが故に、全体形状を保持する形状保持剛性を有しているために、接地力が作用しても全体のリング形状は全く崩されることなく、しっかりと維持される。
【0009】
このように、請求項1の発明に係るチューブは、タイヤ外皮に嵌め込んだ場合には、タイヤとしての側面耐力を有していると共に、接地力を吸収しながら弾性変形するというクッション性を有し、チューブの本来的な機能を維持したままで、当該チューブの横断面視における中空部の割合を大きくできるため、チューブの軽量化が可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態で、当該チューブの中空部の開口は狭められて残存していることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、残存した開口の存在によって、各側面部が大きく内方に弾性変形した状態で、タイヤ外皮の環状空間部に嵌め込まれているチューブの当該各側面部の弾性変形を最大に許容する構造であるために、一層にクッション性が増す。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態で、横断面視において当該チューブの各側面部の端部は、互いに当接していることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、チューブの各側面部の端部が互いに当接していても、各側面部は外側に変形しようとするので、弾性力によりチューブの各側面部が復元しようとする作用、即ち、チューブの各側面部によるタイヤ外皮の各側面部分に対する突張り力は、全く減殺されないと共に、チューブの各側面部の端部が互いに当接していて、弾性変形されたチューブの形状が安定するために、タイヤとしての前記側面耐力が増す。この結果、チューブとタイヤ外皮との一体性が高まって、タイヤとしてのクッション性が増す。また、チューブをタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込む際に、チューブの外側の部分は周方向に沿って引っ張られて伸長されると共に、内側の部分である各側面部の端部は、周方向に沿って圧縮されるために、当該周方向に沿った皺が発生して、タイヤ外皮の内周面との間に僅かの隙間が発生しようとするが、チューブの各側面部の端部が互いに当接しているために、当該皺の発生を抑制できて、チューブの各側面部の全面がタイヤ外皮の側面部分の内周面に密着し易くなる。この結果、チューブとタイヤ外皮との一体性が高まって、タイヤとしてのクッション性が増す。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記チューブは、横断面視において接地部の中央から両端に向けて肉厚で漸次小さくなっていることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明によれば、最も大きな接地力が作用するチューブの接地部の肉厚が大きくて、各側面部の先端に向けて肉厚が漸次小さくなっているために、側面耐力が大きくなると共に、接地圧に対してタイヤの両側面部分が変形し易くなって、乗り心地性が高まる。
【0016】
請求項5の発明は、環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に直状のまま横断面視で変形されて嵌め込まれるチューブであって、当該チューブは、中空パイプ状をなしていて、当該チューブは、エラストマーから成形されて、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直状に形成されて、前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブを直状のままで、横断面視で各側面部を弾性変形させて嵌め込んだ状態で、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明に係る中空パイプ状のチューブをタイヤ外皮の環状空間部に嵌め込んだ状態では、嵌込み前に横断面視でリング状をなしていた各部分は、タイヤ外皮の開口部に対応する部分のみの圧縮変形率が僅かに小さな状態で、全体が圧縮変形されて、当該タイヤ外皮の内周面に密着する。この状態は、実質的には、タイヤ外皮の環状空間部に嵌め込んだ状態で、各側面部の両端が当接する請求項3の発明に係るチューブと同様の状態となって、横断面視においてチューブの各部分は、タイヤの接地部分に対応する接地部、当該接地部の両側に接続された各側面部、及び当該側面部を接続する連結部として機能する。各側面部を連結する連結部の存在により、側面耐力が大きくなって、大きな、或いは急激な接地力を受けても、タイヤの両側面部分が弾性変形の限度を超えて形状崩れしなくなるので、側面耐力が大きいのに加えて、クッション性が良好となると共に、1本状のチューブをリング状にわん曲させてタイヤ外皮に嵌め込む際に、皺の発生がなくなる利点がある。更に、チューブが中空パイプ状であって、横断面視における肉厚は、前記側面耐力、及び良好なクッション性を確保できる厚さであればよく、当該厚さを超える肉厚の場合には、側面耐力が過剰に大きくなって、クッション性が低下すると共に、接地部の肉厚が過剰に厚くなることにより、振動発生の原因となって、乗り心地性も悪くなると共に、自転車等の車体の耐久性も低下する。よって、チューブの横断面視における肉厚は、前記側面耐力、及び良好なクッション性を確保できる厚さであれば十分であるので、横断面視における中空部の割合(空隙率)を大きくできて、チューブの軽量化が図られる。なお、チューブの長手方向の両端面の突き合わせ状態は、請求項1のチューブとほぼ同一である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記チューブは、横断面形状がリング状であって、中空部の中心は、中実部の中心に対して偏心して、全周に亘って肉厚が変化していて、肉厚の最も大きな部分がタイヤ外皮の接地部分に配置される接地部となっていることを特徴としている。
【0019】
請求項6の発明によれば、接地部の肉厚が他の部分の肉厚よりも厚くなっているために、空隙率、及び材料が同一の場合には、全体の中心と中空部の中心とが同一の中空パイプ状の形状に比較して、側面耐力を大きくできる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記チューブの外周面における接地部と対向する部分には、タイヤ外皮に嵌め込む際の周方向の位置決めを行う位置決め突条が長手方向に連続して形成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項6の発明に係るチューブは、タイヤ外皮に嵌め込む際に方向性を有しているため、請求項7の発明のように、チューブの外周面に長手方向の突条を設けておくと、当該突条は、タイヤ外皮の開口部に配置されるために、中空パイプ状であって、周方向に沿った肉厚の異なるチューブの嵌込み状態における配置を視覚的に特定できる。また、チューブの外周面に設けられる突条は、当該チューブの押出成形時に自動成形可能である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明において、前記チューブの周方向の両端部の各中空部には、当該チューブの硬度よりも小さな硬度のエラストマーから成る連結芯材が嵌め込まれて、前記チューブの周方向の両端面は、当該チューブの両端部が前記連結芯材を介して互いに連結された状態で、互いに突き合わされていることを特徴としている。
【0023】
請求項8の発明によれば、環状のタイヤ外皮の環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態において、当該チューブの周方向の両端部は、その各中空部に当該チューブの硬度よりも小さな硬度のエラストマーから成る連結芯材が嵌め込まれて、当該連結芯材を介して互いに連結されている。このため、チューブの周方向の両端面は、当該チューブの周方向の両端部が前記連結芯材を介して互いに連結れさた状態で、互いに反対方向に押し合って突き合わされている。このため、チューブの両端部の形状保持力が高められて、その横断面形状は、他の一般部と同様な形状をしっかりと保持できるため、チューブの両端面の密着部が接地面に達する毎に微妙な違和感が生ずる現象を払拭できて、自転車のタイヤ等に使用された場合の乗り心地性が高められる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記連結芯材の長手方向の中央部には、前記チューブの周方向に沿って当該連結芯材がずれるのを防止するずれ防止鍔部が一体に形成されていることを特徴としている。
【0025】
請求項9の発明によれば、連結芯材の長手方向の中央部に一体に形成されたずれ防止鍔部がチューブの両端面で挟持された状態で、当該連結芯材を介してチューブの長手方向の両端部が連結されるため、長期間の使用によっても、チューブとは別体の連結芯材が当該チューブの周方向にずれなくなる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの発明において、エラストマーが熱可塑性エラストマーであることを特徴としている。
【0027】
請求項10の発明では、一般的に熱可塑性エラストマーは、弾性、及び押出成形性の双方に優れているので、請求項1ないし9のいずれかのチューブの材料として好適である。
【0028】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの発明において、エラストマーのショアA硬度が40ないし90であることを特徴としている。
【0029】
請求項1ないし10のいずれかに記載のチューブは、断面略U字状又は中空パイプ状をなしていて、空隙率を大きくしてあるので、タイヤ外皮に嵌め込んだ場合において必要な側面耐力を得るには、チューブの材料としては、ある程度の硬さを必要とする。しかし、チューブの材料の硬度が大き過ぎると、側面耐力は大きくなるが、タイヤとしてのクッション性は低下して、衝撃力が大きくなる。このように、タイヤとしての側面耐力とクッション性の双方を備えるチューブの材料の硬度としては、ショアA硬度が40ないし90の範囲となる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1ないし4の発明に係るチューブは、横断面U字状をなしていて、接地部の両側に接続された各側面部が内方に大きく弾性変形することにより、タイヤ外皮の内周面に嵌め込まれ、当該各側面部が外方に復元しようとする弾性復元力、及びチューブを成形する材料であるエラストマーの弾性を有する範囲の硬度とにより側面耐力が確保されると共に、当該弾性復元力及びチューブの材料であるエラストマーの弾性とによって、クッション性が得られる構造である。このように、横断面U字状のチューブの利用により、空隙率を大きくできて、チューブの軽量化が図られる。
【0031】
請求項5ないし7の発明に係るチューブは、中空パイプ状をなしていて、タイヤ外皮の環状空間部に横断面視で僅かに圧縮成形されて嵌め込まれた状態において、横断面視で連続していると共に、チューブを成形する材料であるエラストマーの弾性を有する範囲の硬度とにより、タイヤとしての側面耐力とクッション性とを得ることができるので、チューブの空隙率を大きくできて、チューブの軽量化が図られる。
【0032】
請求項8及び9の発明に係るチューブは、周方向の両端部の中空部に連結芯材が嵌め込まれて、当該チューブの両端部は、当該連結芯材を介して連結されていて、チューブの周方向の両端部分も、他の一般部と同様な形状保持力を有することになって、自転車等に使用された場合において、乗り心地性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a),(b)は、それぞれチューブ長尺材C0 の正面図、及び部分拡大斜視図である。
【図2】チューブ長尺材C0 を設定長に切断したチューブC1 の非変形時の横断面図である。
【図3】リム23から外されたタイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 が変形されて嵌め込まれた断面図である。
【図4】チューブC1 を嵌め込んだタイヤ外皮21がリム23に組み付けられてタイヤT1 となった状態の断面図である。
【図5】タイヤT1 の一部を破断した正面図である。
【図6】断面視で変形されると共に、全体がリング状にわん曲させられてタイヤ外皮21に嵌め込まれたチューブC1 の全体斜視図である。
【図7】チューブ長尺材C0 が押出成形される状態の模式図である。
【図8】チューブC2 が用いられたタイヤT1 の横断面図である。
【図9】チューブC3 が用いられたタイヤT1 の横断面図である。
【図10】チューブC4 が用いられたタイヤT1 の横断面図である。
【図11】シニアカーのタイヤT2 の横断面図である。
【図12】チューブの横断面視における肉厚の変化と、チューブの諸特性との関係を示す図である。
【図13】(a),(b),(c)は、チューブC1 〜C4 ,C11の周方向の両端部の連結に使用される連結芯材E1 〜E3 の斜視図である。
【図14】パイプ状のチューブC3 の周方向の両端部と中空短パイプ状の連結芯材E1 との斜視図である。
【図15】タイヤ外皮21内においてパイプ状のチューブC3 の周方向の両端部が中空短パイプ状の連結芯材E1 を介して連結された状態の縦断面図である。
【図16】同じく横断面図である。
【図17】タイヤ外皮21内においてパイプ状のチューブC3 の周方向の両端部が横断面星形の連結芯材E2 を介して連結された状態の縦断面図である。
【図18】タイヤ外皮21内において横断面が略U字状のチューブC1 の周方向の両端部が連結芯材E3 を介して連結された状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、複数の断面形状のチューブC1 〜C4 を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明に係るチューブC1 は、図1及び図2に示されるように、自転車のタイヤT1 のタイヤ外皮21内に形成される環状空間部22(図3参照)に嵌め込まれる。チューブC1 は、横断面がU字状をなしていて、タイヤ外皮21の接地部分の内側に配置される接地部1と、当該接地部1の両側に一体に接続されていて、タイヤ外皮21の両側部分の内側に配置される側面部2とから成る。チューブC1 の肉厚は、接地部1の中央部が最大肉厚(t1 )となっていて、当該接地部1の中央部から各側面部2の端部に向けて漸次肉厚が小さくなっていて、各側面部2の端面の部分で最小肉厚(t2 )となっている。また、図2に示されているように、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれる前のチューブC1 の断面形状は、当該環状空間部22の断面形状(内周面形状)に対して全体が僅かに大きくなっていて、各側面部2の端部の間隔が狭くなるように、当該各側面部2を内側に大きく弾性変形させたうえで、接地部1を含む全体を僅かに弾性変形させることにより、チューブC1 がタイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれる形状になっている。
【0036】
チューブC1 は、エラストマーを材料として押出成形されたチューブ長尺材C0 を、前記タイヤ外皮21の環状空間部22の中心K(嵌め込まれてリング状となったチューブC1 の中立面の存在する位置)〔図4参照〕の周長に対応する長さ(L)を有する長尺状をなしている。ここで、「タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長に対応する長さ(L)」とは、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L0)に対して〔(1.01〜1.03)×L0 〕の長さを意味する。チューブC1 の切断長さ(L)は、理論上は、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L0)でもよいが、押出成形されたチューブ長尺材の切断誤差を考慮すると、上記したように長めに切断することが望ましい。
【0037】
チューブC1 の材料としてのエラストマーは、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込んでタイヤT1 とした場合に、必要な側面耐力と、良好な乗り心地性を有する弾性(クッション性)を有するものであれば、ゴムを含む全てのエラストマーが使用可能であるが、本来の弾性特性、軽量性、生産性、原材料入手の容易性等を考慮すると、TPE(熱可塑性エラストマー)が好適であり、特にスチレン系熱可塑性エラストマーが好適である。本発明に対して好適なスチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成されたブロック重合体であって、ポリスチレン―ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック(SEP)及びポリスチレン―ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック―ポリスチレン(SEEPS)が挙げられる。なお、上述したスチレン系熱可塑性エラストマー以外でも、SBS(スチレン―ブタジエン―スチレン共重合体)、SEBS(スチレン―エチレン―ブタジエン―スチレン共重合体)、SEBC(スチレン―エチレン―ブタジエン―高結晶エチレン共重合体)、SEPS(スチレン―エチレン―プロピレン―スチレン共重合体)等でも同様に用いることができる。また、他のTPEとしては、ウレタン系(TPU)、オレフィン系(TPO)、アミド系(TPAE)、エステル系(TPEE)、塩ビ系(TPVC)等が使用できる。
【0038】
また、エラストマーの硬度に関しては、ショアA硬度が40ないし90の範囲内であることが望ましく、50ないし80の範囲が好適である。このエラストマーの硬度は、特許文献1に開示の断面円形の中実状、或いは複数の小孔が長手方向に連続して設けられた準中実状のチューブに使用されるエラストマーの硬度よりも高くする必要がある。その理由は、特許文献1のチューブは、断面が上記形状であるために、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込んだ場合に、断面のほぼ全体が圧縮変形されて、断面が中実状又は準中実状をなしているために、エラストマーの硬度が比較的小さくてもタイヤの側面耐力が得られるのに対して、本発明のチューブC1 の断面形状は、U字状となっていて、接地部1及び各側面部2(特に、各側面部2)の弾性復元力に大きく依存して、タイヤの側面耐力を得ている構造のためである。換言すると、エラストマーの硬度自体も、チューブC1 の接地部1及び各側面部2の弾性復元力のみならず、タイヤの側面耐力の確保に寄与する構造にせざるを得ないからである。但し、タイヤT1 は、当該タイヤT1 が接地圧を受けた場合の乗り心地性を本来的に考慮する必要があり、上記したタイヤT1 の必要側面耐力の確保と、乗り心地性(クッション性)との双方を確保するには、エラストマーの硬度は、上記のようになるのである。なお、エラストマーは、その硬度がショアA硬度で40ないし90の範囲内に確保されていれば、発泡の有無は問わない。
【0039】
次に、図3〜図6を参照して、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L0)に対して〔(1.01〜1.03)×L0 〕の長さ(L)に切断されたチューブC1 をタイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込む方法について簡単に説明する。図3に示されるように、リム23からタイヤ外皮21を取り外しておいて、1本状のチューブC1 を断面視で弾性変形させながら、前記タイヤ外皮21の環状空間部22に順次嵌め込んで、その両端面を互いに当接させる。図4に示されるように、断面視でチューブC1 の各側面部2が大きく内方に弾性変形されるのに加えて、接地部1及びその両端部の各側面部2との接続部を含めた全体が弾性変形されることにより、チューブC1 は、横断面の全周に亘って、タイヤ外皮21の環状空間部22の内周面に弾性復元力(F1 )によりしっかりと密着する。一方、チューブC1 の長さ(L)は、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長(L0)よりも僅かに長くなっているために、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれたチューブC1 の両端面は、互いに反対方向の押圧力(F2 )により押し合って、突き合わされた状態となる。タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 が嵌め込まれた状態で、当該タイヤ外皮21の開口の両側に形成された各被係止部21aを、それぞれリム23の各係止部23aに係止させて、タイヤT1 とする。なお、図5及び図6において、3は、チューブC1 の両端の突合せ面を示し、24は、車輪25のスポークを示す。
【0040】
このように、チューブC1 は、軽量化を図るために横断面形状がU字状をなしているが、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれてリング状となった状態では、上記したように、横断面視で弾性変形されることにより、タイヤ外皮21の内周面に弾性復元力(F1 )で弾接していると共に、周方向に沿っては、その両端面には、互いに逆方向の押圧力(F2 )が作用して、突き合わされた状態となっているために、換言すると、全体がリング状となった状態では、上記弾性復元力(F1 )及び押圧力(F2 )により、全体形状であるリング形状、及び断面形状であるU字状が崩れない状態となっていて、高い「形状保持剛性」を有している。特に、チューブC1 は、横断面視において、接地部1の中央部の肉厚(t1 )が最も厚くなっていて、当該接地部1の中央部から各側面部2の両端に向けて漸次、肉厚が小さくなっているために、嵌め込み状態において、チューブC1 の各側面部2の端部の間に空間が形成されていても、十分な側面耐力を確保できると共に、クッション性の確保も可能となる。
【0041】
このように、チューブC1 を断面視で弾性変形させてタイヤ外皮21に嵌め込むことにより、タイヤT1 としての側面耐力とクッション性とを具備させる構成である。換言すると、弾性変形されたチューブC1 には、大きな中空部4(図4参照)が残存したままで、タイヤとして必要な側面耐力とクッション性とを具備させられ、結果として、チューブC1 の空隙率を大きくできるため、チューブC1 の軽量化が図られる。
【0042】
ここで、チューブC1 は、タイヤ外皮21に嵌め込んだ状態で、各側面部2の端部の間には所定の隙間が形成されるために、当該各側面部2の端部は、長手方向に沿ってタイヤ外皮21の内周面に連続して密着せずに、皺が発生した状態(長手方向に沿って僅かに蛇行している状態)となる恐れがあるが、図7に示されるように、押出成形機30のダイス31から押し出された直後であって、未硬化状態でチューブ長尺材C0 を回転ガイド体32に沿わせることにより、わん曲癖を付与した後に、冷却水槽33の冷却水W内に浸入させて、急激に冷却硬化させることにより、前記皺の発生を無くすことが可能となる。
【0043】
また、前記皺の発生を無くす他の方法としては、タイヤ外皮の中心部の周長に対応する長さに切断されたチューブをロール状にわん曲させた状態で、所定温度まで加熱して、当該所定温度で設定時間だけ加熱を継続させた後に、冷却させる方法もある。これにより、チューブをロール状にわん曲させた状態で、側面部の端部の皺の発生がなくなるので、タイヤ外皮に嵌め込んだ場合にも、側面部の端部に皺は発生しなくなる。
【0044】
また、図8に示されるタイヤT1 に使用されているチューブC2 は、断面視で接地部1’の両側に側面部2’が接続された形状であって、断面視で連続していない点において前記チューブC1 と共通するが、その断面形状は、リング体の一部が欠落された形状となっていて、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込むことにより、両側面部2’の端部が所定の弾接力により弾接している点が異なる。チューブC2 の各部の肉厚に関しては、接地部1’の中央部の肉厚が最も大きくて、各側面部2’の端部に向かうに従って、肉厚が漸次小さくなって、当該端部で最小の肉厚となっており、断面視での肉厚の変化に関しては、前記チューブC1 と同様となっている。
【0045】
このように、チューブC2 は、タイヤ外皮21に組み込まれた状態で、各側面部2’の端部が互いに弾接し合うことにより、非変形時に存在していた各側面部2’の隙間が解消されて、断面視で全周に亘って連続したリング形状となる。このため、各側面部2’の端部が互いに弾接することが主因となって、タイヤT1 としての側面耐力が増大されると共に、前記弾接により、チューブC2 の各側面部2’の端部に皺が発生することもなくなり、この点も、タイヤT1 としての側面耐力が増す副因となっている。また、タイヤT1 としてのクッション性に関しては、各側面部2’の端部が弾接して、断面視でリング状をなしていて、全体変形が可能となるために、クッション性も確保できる。なお、チューブC2 は、タイヤ外皮21に組み込んだ状態で、断面視でリング状をなすために、接地部1’の中央部の肉厚が最大で、各側面部2’の端部に向けて肉厚が漸次小さくなるという肉厚の変化に関しては、当該変化の度合が小さくても(接地部1’の中央部と各側面部2’の端部の各肉厚の差が小さくても)、タイヤT1 としての側面耐力とクッション性を確保できる。
【0046】
このため、チューブC2 を使用したタイヤT1 は、当該チューブC2 の断面視での弾性変形と材料の硬度との併用によって、側面耐力とクッション性とを確保する構造であるために、当該チューブC2 の中空部4’の割合を大きく確保できて、チューブC2 としての空隙率を多くできるので、チューブの軽量化が可能となる。
【0047】
また、図9に示されるチューブC3 は、断面視において、全周に亘って肉厚が均一のリング状をなしている。このため、タイヤ外皮21に嵌め込んだ場合には、断面視でのリング形状は、僅かに変化させられるが、前記チューブC2 と異なって、全体が一体となっていて、断面視での弾接部が存在しない分だけ、タイヤT1 としての側面耐力とクッション性が高まる。横断面視においてチューブC2 の各部分は、タイヤ外皮21の接地部分に対応する接地部11、当該接地部11の両側に接続されて、タイヤ外皮21の側面に配置される各側面部12、及びタイヤ外皮21の開口に配置されて、前記各側面部12を連結する連結部13として機能する。チューブC3 においても、断面視での弾性変形と材料の硬度との併用によって、側面耐力とクッション性とを確保する構造であるために、チューブC2 の中空部5の割合を大きくできるため、空隙率を大きくできるので、チューブの軽量化が可能となる。このチューブC3 は、断面視における方向性がないために、タイヤ外皮21に嵌め込む際においてチューブC3 の断面視での方向性を考慮する必要がない分、嵌め込みが容易となる利点がある。なお、図9においてAは、断面視におけるチューブC3 の中心を示す。
【0048】
図10に示されるチューブC4 は、前記チューブC3 において、断面視における全体の中心A1 に対して中空部5’の中心A2 を偏心させた形状であって、肉厚の最も大きな部分が接地部11’となり、当該接地部11’の両側が側面部12’となり、各側面部12’を連結する部分は、タイヤ外皮21の開口部に配置されて、前記各側面部12’を連結する連結部13’となっている。このように、チューブC4 は、断面視における方向性が存在するために、連結部13’における最も肉厚の小さい部分の外周面には、長手方向に沿って位置決め突条14が形成され、タイヤ外皮21に対してチューブC4 を組み込む際には、当該位置決め突条14がタイヤ外皮21の開口部に配置されるようにする。この位置決め突条14は、押出成形機30のダイス31に凹条を形成することにより、容易に成形可能となる。
【0049】
このように、チューブC4 は、肉厚の大きな部分を接地部11’にして、当該接地部11’の両側の各側面部12’は、タイヤ外皮21の開口に向けて肉厚が漸次小さくなり、同じく断面視でリング形状であっても、断面視での周方向に沿って肉厚変化を付与できる分だけ、チューブC3 よりも高い側面耐力が得られる利点がある。
【0050】
また、チューブC1 ,C2 では、接地部1、1’の中心部から各側面部2,2’の端部に向けて、チューブC4 では、接地部11’の中央部から連結部13’に向けて、当該チューブC1 ,C2 ,C4 の肉厚が漸次小さくなっているが、この小さくなる程度は、材料の硬度との関係において、適宜変化させると、タイヤとして最適な「側面耐力」と「クッション性」が得られる。
【0051】
更に、チューブの横断面視での各部分の肉厚に関しては、上記した「側面耐力」と「クッション性」とを確保できることを条件にして、上記各実施例とは逆に、断面略U字状のチューブでは、接地部の中央部から両端に向けて、中空パイプ状のチューブでは、接地部の中央部から連結部の中央部に向けて、それぞれ漸次肉厚を小さくすることも可能である。このチューブを使用したタイヤは、前記各チューブC1 ,C2 ,C4 に比較して、柔らかめの「乗り心地性」となる。
【0052】
また、図11は、シニアカーのタイヤT2 の断面図である。シニアカーのタイヤT2 は、自転車のタイヤT1 に比較して、全体の直径が遥かに小さくて、しかもシニアカーのタイヤT2 の横断面の大きさは、自転車のタイヤT1 に比較して大きいために、タイヤ外皮51自体の形状保持性は、自転車のタイヤT1 のタイヤ外皮21の形状保持性に比較して遥かに大きいという特徴を有している。シニアカーのタイヤT2 に使用されるチューブC11は、上記特徴の存在により、タイヤ外皮51に嵌め込んだ状態において、断面略U字状を呈する程度に、接地部41の両側の各側面部42の間の開口が大きくても、タイヤT2 としての側面耐力を保持できるので、本発明に係るチューブは、シニアカーのタイヤに対しては好適である。なお、図11において、52は、二つ割り構造のリムを示す。
【0053】
次に、図12を参照して、自転車のチューブの横断面視における肉厚の変化と、チューブの諸特性との関係について考察する。図12において、X1 ,X2 ,X3 は、それぞれタイヤ外皮に嵌め込んだ状態で、各側面部の両端に開口が形成される開口型チューブであって、断面視における肉厚の変化は、図示の通りである。一方、Y1 ,Y2 ,Y3 は、それぞれタイヤ外皮に嵌め込んだ状態で、各側面部の両端が当接する当接型チューブであって、断面視における肉厚の変化は、図示の通りである。
【0054】
開口型及び当接型のいずれのチューブにおいても、接地部から両端部に向けて漸次薄肉となっているチューブX2 ,Y2 では、クッション性の基礎となる衝撃吸収の態様は、側面部のたわみが主となって、接地部のたわみが従となるのに対して、接地部から両端部に向けて漸次薄肉となっているチューブX3 ,Y3 では、前記衝撃吸収の態様は、上記とは逆に、接地部のたわみが主となって、側面部のたわみが従となり、更に、断面視における各部の肉厚が一定のチューブX1 ,Y1 の衝撃吸収の態様は、いずれも上記した2種類のチューブの中間となる。
【0055】
上記した衝撃吸収の態様からして、開口型チューブX2 及び当接型チューブY1 ,Y2 ,Y3 は、いずれも十分な側面耐力が得られるために、タイヤチューブとして成立するが、開口型チューブX3 は、側面耐力を確保できないために、タイヤチューブとして成立せず(使用できず)、開口型チューブX1 の側面耐力は、タイヤチューブとして成立するには不十分であることが分かる。また、開口型チューブX2 及び当接型チューブY2 は、いずれも「硬めの乗り心地性」を有することが特徴であるのに対して、開口型チューブX3 及び当接型チューブY3 は、いずれも「柔らかめの乗り心地性」を有することが特徴である。なお、開口型チューブX1 及び当接型チューブY1 は、上記の中間の「乗り心地性」を有する。
【0056】
上記したことからして、チューブの用途に応じて、当該チューブの横断面形状を決定することが望ましい。
【0057】
上記したチューブC1 〜C4 ,C11は、いずれもタイヤ外皮の21の環状空間部22の中心Kの周長よりも僅かに長くなっていて、当該環状空間部22に嵌め込んだ状態で、周方向に沿って僅かの「重り代」を有するようにしてあるため、環状に変形されてタイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれた各チューブC1 〜C4 ,C11の両端部は、互いに弾性変形されている。よって、各チューブC1 〜C4 ,C11の両端面は、弾性復元力により互いに反対方向に押し合って、突き合わされているため、各チューブC1 〜C4 ,C11の周方向の両端部の形状保持力は高くて、突合せ部の横断面視において、各チューブC1 〜C4 ,C11の両端面が互いにずれたりせず、十分である。
【0058】
本発明においては、チューブの両端面の上記突合せ構造に加えて、チューブの周方向の両端部を連結芯材E1 〜E3 で互いに連結すると、チューブの両端面の上記突合せ構造は、一層に確実となる。
【0059】
図13(a)〜(c)に、連結芯材E1 〜E3 が示されている。連結芯材E1 ,E2 は、中空パイプ状のチューブC3 に使用されるものであり、連結芯材E3 は、横断面が略U字状のチューブC1 に使用されるものである。各連結芯材E1 〜E3 は、いずれもチューブC1 ,C3 の材料であるエラストマーの硬度よりも小さな硬度(ショアA硬度 10〜20)の熱可塑性エラストマーで成形されていて、その長さの制限はないが、短か過ぎると、チューブC1 ,C3 の周方向の両端部を連結する機能が低下し、長過ぎると、材料が無駄になると共に、連結操作も面倒になり、これらの観点から、30〜50mm程度が望ましい。連結芯材E1 は、中空短パイプ状であり、同E2 は、断面星形であり、同E3 は、中実短軸状であるため、3種類の連結芯材E1 〜E3 の中では、中空短パイプ状の連結芯材E1 は、上記した硬度の範囲内において最も高い硬度が必要であると共に、中実短軸状の連結芯材E3 は、最も低い硬度でよく、断面星形の連結芯材E2 は、中間の硬度である。各連結芯材E1 〜E3 は、その長手方向の中央部にずれ防止鍔部61,62,63がそれぞれ形成されている。横断面が星形の連結芯材E2 に関しては、その頂部72に対応する部分のみにずれ防止鍔部62が周方向に断続的に設けられて、谷部に対応する部分には、ずれ防止鍔部62は、設けられていない。
【0060】
図14〜図16を参照して、チューブC3 の周方向の両端部を中空短パイプ状の連結芯材E1 で連結して、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込む場合について説明する。まず、中空パイプ状したチューブ長尺材を、タイヤ外皮21の環状空間部22の中心Kの周長よりも僅かに長い長さ(L)に切断して、チューブC3 を形成し、当該チューブC3 を環状にわん曲させて、その周方向の両端部の中空部に、連結芯材E1 におけるずれ防止鍔部61により長手方向に沿って二分された各部分を圧縮させてそれぞれ嵌め込んで、当該連結芯材E1 を介して環状にわん曲されたチューブC3 の両端部を連結して、環状形状を保持させる。この状態で、環状をしたチューブC3 をタイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込むと、図15及び図16に示されるように、連結芯材E1 は、横断面視で圧縮され、チューブC3 は、周方向(縦断面視)及び横断面視の双方においてに圧縮されて、当該チューブC3 の両端面である各突合せ面3において互いに反対方向の力を及ぼしあい、この突合せ力により一体化されている。一方、連結芯材E1 は、横断面視で圧縮されることにより、長手方向に沿って横断面視での圧縮に対応する分だけ伸長される。このようにして、タイヤ外皮21の環状空間部22に嵌め込まれた環状のチューブC3 は、圧縮変形された連結芯材E1'を介して互いに連結された状態で、周方向の両端の各突合せ面3において、互いに反対方向の力を及ぼし合って、一体化されている。なお、タイヤ外皮21の環状空間部22にチューブC1 を嵌め込む際に、当該チューブC1 及び連結芯材E1 の双方が横断面視で圧縮変形されるが、連結芯材E1 の硬度は、チューブC1 の硬度よりも低いので、連結芯材E1 の方がチューブC1 よりも圧縮量が大きい。
【0061】
このため、環状のチューブC3 の周方向の両端部の形状保持力は、他の部分と同等となって、例えば、当該チューブC3 を自転車のタイヤに使用した場合には、乗り心地性の面において、環状のチューブC3 の各突合せ面3の存在を認識させない程度に、環状のチューブC3 の周方向の両端部は一体化されている。
【0062】
また、連結芯材E1 の長手方向の中央部のずれ防止鍔部61は、図15に示されるように、環状のチューブC3 の両端面である各突合せ面3により挟持されることにより、肉厚方向に沿って圧縮されて圧縮鍔部61’となるが、環状のチューブC3 の各突合せ面3におけるずれ防止鍔部61を挟持していない外周側は、直接に密着して突き合せられている。連結芯材E1 のずれ防止鍔部61がチューブC3 の両端面で挟持されることにより、経年使用によっても、当該連結芯材E1 はチューブC3 に対して位置ずれなくなって、チューブC3 の周方向の両端部の形状保持力は、当初のまま保持される。
【0063】
連結芯材E1 は、中空短パイプ状であって、その中空部71によって、チューブC3 の中空部における連結芯材E1 を挟んで両側の部分が互いに連通されるために、当該連結芯材E1 を介してチューブC3 の両端部が連結されているにもかかわらず、チューブ或いはタイヤとしてのクッション性が阻害されずに、維持される。
【0064】
また、図17は、上記した連結芯材E1 に替えて、横断面が星形の連結芯材E2 を介してチューブC3 の周方向の両端連結部の横断面図である。連結芯材E2 におけるずれ防止鍔部62の両側の部分をそれぞれチューブC3 の周方向の両端部の中空部に圧縮させて挿入することにより、圧縮変形された連結芯材E2'を介してチューブC3 の周方向の両端部が連結される。連結芯材E2 は、上記形状であるために、頂部72は、潰されて圧縮変形され、圧縮変形された頂部72’がチューブC3 の内周面に密着すると共に、圧縮変形された隣接する頂部72’の間には、中空部73が残存する。当該中空部73は、チューブC3 の中空部における連結芯材E2'を挟んで両側の部分が互いに連通される。連結芯材E2 の頂部72に対応する部分のみに設けられたずれ防止鍔部62は、チューブC3 の各突合せ面3に挟まれて、当該チューブC3 に対する連結芯材E2 のずれが防止される。
【0065】
また、図18は、横断面が略U字状のチューブC1 の周方向の両端部が横断面星形の連結芯材E2 で連結された状態の横断面図である。チューブC1 は、横断面視で周方向の一部が開口されているため、中実短軸状の連結芯材E2 の使用が可能となり、圧縮変形された連結芯材E3'を介してチューブC1 の周方向の両端部が連結される。連結芯材E3 の他の機能は、上記した連結芯材E1 ,E2 の機能と同等である。
【符号の説明】
【0066】
0 :チューブ長尺材
1 〜C4 ,C11:タイヤチューブ
1 〜E3 :連結芯材
1 :チューブの側面部の弾性復元力
2 :チューブの両端面の押圧力
K:環状空間部の中心
L:タイヤチューブの長さ
1 ,T2 :タイヤ
1,1’,11,11’:チューブの接地部
2,2’,12,12’:チューブの側面部
3:チューブの突合せ面
4,4’:断面非リング状のチューブの中空部
5,5’:断面リング状のチューブの中空部
13,13’:断面リング状のチューブの連結部
14:断面リング状のチューブの位置決め突条
21:タイヤ外皮
22:タイヤ外皮の環状空間部
23:リム
61〜63:ずれ防止鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に直状のまま横断面視で変形されて嵌め込まれるチューブであって、
当該チューブは、エラストマーから成形され、横断面視において接地部の両側に側面部がそれぞれ接続されて、各側面部の間が開口された略U字状を有していて、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直状に形成されて、
前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブを直状のままで、原形状で開口の側が前記リムと対向するように配置させて、横断面視で前記各側面部を大きく弾性変形させて嵌め込んだ状態で、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴とするノーパンクチューブ。
【請求項2】
前記環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態で、当該チューブの中空部の開口は狭められて残存していることを特徴とする請求項1に記載のノーパンクチューブ。
【請求項3】
前記環状空間部にチューブが嵌め込まれた状態で、横断面視において当該チューブの各側面部の端部は、互いに当接していることを特徴とする請求項1に記載のノーパンクチューブ。
【請求項4】
前記チューブは、横断面視において接地部の中央から両端に向けて肉厚で漸次小さくなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のノーパンクチューブ。
【請求項5】
環状のリムに着脱可能に取付けられる同じく環状のタイヤ外皮の環状空間部に直状のまま横断面視で変形されて嵌め込まれるチューブであって、
当該チューブは、中空パイプ状をなしていて、
当該チューブは、エラストマーから成形されて、前記タイヤ外皮の環状空間部の中心の周長よりも僅かに長い長さを有するように直状に形成されて、
前記タイヤ外皮の環状空間部に前記チューブを直状のままで、横断面視で各側面部を弾性変形させて嵌め込んだ状態で、当該チューブの長手方向の両端面は互いに反対方向に押し合って突き合わされていることを特徴とするノーパンクチューブ。
【請求項6】
前記チューブは、横断面形状がリング状であって、中空部の中心は、中実部の中心に対して偏心して、全周に亘って肉厚が変化していて、肉厚の最も大きな部分がタイヤ外皮の接地部分に配置される接地部となっていることを特徴とする請求項5に記載のノーパンクチューブ。
【請求項7】
前記チューブの外周面における接地部と対向する部分には、タイヤ外皮に嵌め込む際の周方向の位置決めを行う位置決め突条が長手方向に連続して形成されていることを特徴とする請求項6に記載のノーパンクチューブ。
【請求項8】
前記チューブの周方向の両端部の各中空部には、当該チューブの硬度よりも小さな硬度のエラストマーから成る連結芯材が嵌め込まれて、前記チューブの周方向の両端面は、当該チューブの両端部が前記連結芯材を介して互いに連結された状態で、互いに突き合わされていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のノーパンクチューブ。
【請求項9】
前記連結芯材の長手方向の中央部には、前記チューブの周方向に沿って当該連結芯材がずれるのを防止するずれ防止鍔部が一体に形成されていることを特徴とする請求項8に記載のノーパンクチューブ。
【請求項10】
エラストマーが熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のノーパンクチューブ。
【請求項11】
エラストマーのショアA硬度が40ないし90であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のノーパンクチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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