説明

ハイパースペクトル画像の隆起パターンを調整する装置と方法。

本発明は、少なくとも1つのハイパースペクトル画像の隆起パターンを調整する装置であって、少なくとも2つの波長において少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサ(1)と、2つの状態の分類関係に基づき、センサ(1)から生じたハイパースペクトル画像の画素を類別することができる計算手段(2)と、計算手段(2)から分類された画素に基づき少なくとも1つの画像を表示することができる表示手段(3)とを含む、装置に関する。計算手段(2)は、少なくとも1つの基準画像に基づき隆起パターンを調整する手段(6)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像の解析に関し、具体的には画像の画素の統計的分類に関する。本発明は、さらに具体的には、にきび、しみ、酒さ等の皮膚損傷の検出を目的とした画像の画素の統計的分類に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質および元素は所与の波長の放射に晒されると大なり小なり反応する。放射範囲を走査することにより、相互作用における材料の差異を手段として被写体の組成物に寄与する材料を区別することが可能である。この原理は風景にまたは被写体の一部に一般化されてもよい。
【0003】
異なる波長の同じ場面の写真から生じる一組の画像の全体は、ハイパースペクトル画像またはハイパースペクトル立方体(hyperspectral cube)と呼ばれる。
【0004】
ハイパースペクトル画像は、その各画素が放射により観察される場面の相互作用の強度の特徴である一組の画像からなる。様々な種類の放射による材料の相互作用プロフィールを知ることにより、存在する材料を決定することが可能である。用語「材料」は、より広い意味で理解されなければならなく、固体、液体、ガス状物質に同様に適用可能であり、また分子または高分子の複雑な組み合わせと同様に純粋な化学元素にも適用可能である。
【0005】
ハイパースペクトル画像の獲得はいくつかの方法に従って行なわれることができる。
【0006】
スペクトル走査と呼ばれるハイパースペクトル画像の獲得方法は、空間画像を形成するためにCCDタイプのセンサを使用することと、画像毎に1つの波長を選択するようにセンサの前に異なるフィルタを適用することにその本質がある。様々なフィルタ技術により、このような画像の要件を満たすことができる。例えば結晶の電気刺激により1つの波長を分離する液晶フィルタあるいは電位差(ピエゾ効果)によりプリズムを変形させることにより波長を選択する音響光学フィルタを挙げることができる。これらの2つのフィルタは、光学機器における脆弱性の源となることがある可動部品を有しないという利点を有する。
【0007】
空間走査と呼ばれるハイパースペクトル画像の獲得方法は、CCDタイプのセンサ上のスペクトルのすべての波長を同時に獲得または「撮像」することを目標とする。スペクトルの分解成分を取得するためにセンサの前にプリズムが置かれる。その後、完全なハイパースペクトル立方体を形成するために、行毎の空間走査が行われる。
【0008】
時間走査と呼ばれるハイパースペクトル画像獲得方法は、干渉測定を行なうことと、次に干渉測定に高速フーリエ変換(すなわちFFT)を適用することによりスペクトルを再構成すること、にその本質がある。干渉は、放射を引き起こしその時間シフトと干渉させるMichelson型システムにより生成される。
【0009】
最後のハイパースペクトル画像獲得方法は、スペクトル走査と空間走査を組み合わせることを目的とする。したがってCCDセンサはブロック形式に区分化される。CCDセンサの各ブロックは同じ空間領域を異なる波長で処理する。次にスペクトルおよび空間走査が完全なハイパースペクトル画像を作成できるようにする。
【0010】
このようにして取得されたハイパースペクトル画像を解析し類別するための、特にはヒト組織内の損傷または病気の検出のためのいくつかの方法が存在する。
【0011】
国際公開第99/44010号パンフレットには、皮膚の組織の特性評価のためのハイパースペクトル撮像方法と装置が記載されている。この特許文献では、黒色腫を検出することを目的とする。この方法は、様々な周波数範囲における光の吸収と散乱が皮膚の状態に依存する皮膚の関心領域の状態を特性評価する方法である。この方法は、少なくとも3つのスペクトル帯内の関心領域を含む皮膚のデジタル画像を生成することを含む。この方法は損傷の分類と特性評価を行う。この方法は、波長の関数として損傷の異なる吸収に依存する損傷と正常組織間の識別と、テキスチャ、対称性または輪郭等のパラメータの解析による損傷の識別と、を行うために使用されるセグメンテーション工程を含む。最後に、分類自体は分類パラメータLに基づき実行される。
【0012】
米国特許第5,782,770号明細書には、癌組織を診断するための装置と診断方法が記載されており、この装置と方法は、組織の試料のハイパースペクトル画像を生成することと、光源との相互作用を容易にする特定の薬品を導入することなく癌を診断するためにこのハイパースペクトル画像と基準画像とを比較すること、を含む。
【0013】
国際公開第2008/103918号パンフレットには、皮膚癌の検出のための画像分光法の使用について記載されている。これは、画像の補正調整、画像歪みの問題、または機構部品の動きを回避する一方で高分解能画像を迅速に獲得できるようにするハイパースペクトル撮像システムを含む。これは、診断される皮膚の領域を照射する多スペクトラム光源と、画像センサと、皮膚の領域から光を受光し、様々な領域から跳ね返る光のマッピングを画像センサ上に生成する光学系と、画像センサ上に別個の領域のスペクトルを投影するために画像センサと光学系間に配置される分散プリズムと、を含む。画像処理プロセッサはスペクトルを受信し、癌性異常を特定するようにスペクトルを解析する。
【0014】
国際公開第02057426号パンフレットには、患者の子宮の頚部の走査画像を表す三次元ハイパースペクトルデータの立方体に基づき二次元の組織学的マップを生成する装置について記載されている。これは、ハイパースペクトルデータの立方体から収集された蛍光スペクトル信号を正規化し、頚部の組織の分類を示すスペクトル信号から画素を抽出する入力を備えたプロセッサを含む。これはまた、組織のカテゴリを各画素に対応させる分類装置と、子宮の頚部の組織の分類を表す色コードを使用して符号化された領域を含む画素からの子宮の頚部の二次元画像を生成する、分類装置と接続された画像処理プロセッサと、を含む。
【0015】
米国特許出願公開第20060247514号明細書には、ハイパースペクトル画像により癌の検出と評価を行う医療器具と方法について記載されている。医療器具は特に、組織を照射する第1の光学ステージ、スペクトル分離器、1つまたは複数の偏波器、画像検出器、診断プロセッサ、およびフィルタ制御インタフェースを含む。この方法はカメラにより接触無しに使用されることができ、情報を実時間で取得できるようにする。これは特に、ハイパースペクトル情報を前処理すること、視覚画像を構築すること、組織の関心領域を定義すること、ハイパースペクトル画像の強度を光学濃度の単位に変換すること、各画素のスペクトルをいくつかの独立成分に分解することと、を含む。
【0016】
米国特許出願公開第20030030801号明細書には、画像毎に重み付けられた基準スペクトル分布により目標試料を照射することにより未知の試料から1つまたは複数の画像を取得できるようにする方法について記載されている。この方法は結果として得られる1つまたは複数の画像を解析するか、あるいは目標特性を特定する。このように生成された重み付けスペクトル関数は、基準画像の試料から取得されることができ、例えばその主成分の解析、投影追跡(projection tracking)、あるいは独立成分ACIの解析により決定されることができる。この方法は生体組織の試料の解析に使用可能である。
【0017】
これらの特許文献では、ハイパースペクトル画像を、個々に処理される画像の集合として、あるいは各画素のスペクトルを取得するようにハイパースペクトル立方体の断面を撮影することにより、のいずれかで処理し、その後スペクトルは基準データベースと比較される。当業者は、これらの方法の欠陥を、方法論および処理速度の両方に関し明確に理解する。さらにこれらの方法は、表現CIEL*a*bのシステムと、分光解析方法特には反射率の測定に基づく方法と吸収スペクトルの解析に基づく方法と、に基づき記載されていると考えられる。しかしながらこれらの方法は、ハイパースペクトル画像とそれらを特徴付けるデータの量とに適合されていない。
【0018】
ハイパースペクトル画像の分類は起伏を含む画像の領域内の非検出に関連した誤差による欠陥があるということが観察された。
【0019】
したがって投影追跡とサポートベクターマシン(support vector machine)によりあるいは独立成分解析により類別されるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの主題は、投影追跡とサポートベクターマシンにより類別されるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置である。
【0021】
本発明の別の主題は、投影追跡とサポートベクターマシンにより類別されるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法である。
【0022】
本発明の別の主題は、独立成分解析により類別されるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置である。
【0023】
本発明の別の主題は、独立成分解析により類別されるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法である。
【0024】
本発明の別の主題は、分類されたハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置の皮膚損傷の検出への応用である。
【0025】
少なくとも1つのハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置は、少なくとも2つの波長内の少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサと、2つの状態との分類関係に従ってセンサから生ずるハイパースペクトル画像の画素を類別することができる計算手段と、計算手段から生ずる分類された画素の少なくとも1つの画像関数を表示することができる表示手段と、含む。
【0026】
計算手段は、少なくとも1つの基準画像の関数として起伏を補償する手段を含む。
【0027】
起伏の補償手段はハイパースペクトル画像と基準画像を線形的に合成することができる。
【0028】
起伏の補償手段は、ハイパースペクトル画像の各波長の画素のそれぞれの強度を基準画像の対応する画素の強度と線形的に合成することにより、ハイパースペクトル画像と基準画像を線形的に合成することができる。
【0029】
基準画像は、センサにより生成されるハイパースペクトル画像に含まれる所与の波長の画像であってよい。
【0030】
基準画像は、計算手段により生成される縮小ハイパースペクトル画像(reduced hyperspectral image)に含まれる画像であってよい。
【0031】
計算手段は、投影追跡のための少なくとも1つの計算手段とサポートベクターマシンを生成するための少なくとも1つの手段とを含むことができる。
【0032】
計算手段は少なくとも1つの独立成分解析手段を含むことができる。
【0033】
本発明の別の態様によると、補償装置は人間の皮膚損傷の検出に適用され、基準画像は赤外線領域に位置する波長においてセンサにより獲得される。
【0034】
本発明の別の態様によると、補償装置は人間の皮膚損傷の検出に適用され、基準画像は近赤外線領域に位置する波長においてセンサにより獲得される。
【0035】
本発明の別の態様によると、補償装置は人間の皮膚損傷の検出に適用され、基準画像は、赤外線と近赤外線において行なわれる画像ベクトル上への投影に対応する投影追跡から生ずる合成画像に対応する。
【0036】
本発明の別の態様によると、少なくとも2つの波長内の少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサから生ずる少なくとも1つのハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法は、2つの状態との分類関係に従ってセンサから生ずるハイパースペクトル画像の画素を類別することができる少なくとも1つの計算工程と、計算工程から生ずる分類された画素の少なくとも1つの画像関数を表示することができる表示工程と、を含む。計算工程は、少なくとも1つの基準画像の関数として起伏を補償する工程を含む。
【0037】
起伏の補償工程中、少なくとも1つのハイパースペクトル画像を基準画像の関数として正規化することができる。
【0038】
ハイパースペクトル画像は、基準画像の対応する画素の強度によりハイパースペクトル画像を作成する画素のそれぞれの強度を分割することにより、基準画像の関数として正規化されることができる。
【0039】
起伏の補償工程中、基準画像をハイパースペクトル画像と線形的に合成することができる。
【0040】
基準画像は、基準画像の対応する画素の強度とハイパースペクトル画像の各波長の画素のそれぞれの強度を線形的に合成することにより、ハイパースペクトル画像と線形的に合成されることができる。
【0041】
基準画像は、センサにより生成されるハイパースペクトル画像に含まれる所与の波長の画像であってよい。
【0042】
基準画像は、投影追跡の計算工程から生ずる縮小ハイパースペクトル画像に含まれる画像であってよい。
【0043】
計算工程は、投影追跡の計算のための少なくとも1つの工程とサポートベクターマシンの生成のための少なくとも1つの工程とを含むことができる。
【0044】
計算工程は、独立成分解析のための少なくとも1つの工程を含むことができる。
【0045】
他の目的、特徴および利点は、もっぱら非限定的な例により提示されるそして添付図面を参照した以下の説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施形態の一変形態様によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置の主要構成要素を例示する。
【図2】一実施形態の別の変形によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置の主要構成要素を例示する。
【図3】別の実施形態によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置の主要構成要素を例示する。
【図4】一実施形態の一変形態様によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法の主要工程を例示する。
【図5】一実施形態の別の変形によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法の主要工程を例示する。
【図6】別の実施形態によるハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法の主要工程を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
先に説明したように、ハイパースペクトル画像を取得するいくつかの方法が存在する。しかしながら獲得方法が何であろうと、獲得に応じてハイパースペクトル画像に対し分類を直接行なうことは可能ではない。
【0048】
ここでは、ハイパースペクトル立方体は所与の波長においてそれぞれ形成された一組の画像であることを想起されたい。各画像は二次元であり、画像は、その対応する波長の変化に従って第3の方向に積み重ねられる。取得される三次元構造のため、全体構造はハイパースペクトル立方体と呼ばれる。用語「ハイパースペクトル画像」はまた、同じエンティティを表すために採用されてもよい。
【0049】
ハイパースペクトル立方体は有意量のデータを含む。しかしながらこのような立方体では、情報という意味で大きな空き空間(empty spaces)と多くの情報を含むサブ空間とが見出される。したがってより低次元の空間内へのデータの投影は、情報の極僅かな損失だけを発生する一方で有益情報を縮小空間内に組み立てることができるようにする。この縮小は分類にとって重要である。
【0050】
分類の目的は、ハイパースペクトル画像を作成する一組の画素の中から、2つの状態との分類関係に有利にまたは不利に応答するものを決定することであるということを想起されたい。したがって特徴または実体を有する場面の部分を決定することは可能である。分類は、投影追跡とサポートベクターマシンにより、あるいは独立成分に分解することにより、少なくとも2つの異なる方法で行なうことができる。
【0051】
分類が投影追跡とサポートベクターマシンにより行なわれる場合、分類は本質的に2つの工程を含む。第1の工程は、縮小ハイパースペクトル画像を取得するためにハイパースペクトル立方体が投影ベクトル上への投影により縮小される投影追跡工程に対応する。第2の工程は、縮小ハイパースペクトル画像の画素が2つの状態との分類関係に従って類別されるサポートベクターマシン工程に対応する。
【0052】
分類が独立成分(ACI)への分解(あるいはソースの分離と呼ばれる)により行なわれる場合、その成分が統計的に互いに独立したものとなるやり方で、ハイパースペクトル画像を、ハイパースペクトル画像を形成する画像とせいぜい同数の成分に分解することを目的とする方法が適用される。
【0053】
数学的には、線形ソース分離(linear source separation)は次の形式をとる。
【0054】
ij=A.Sij+Bij (式1)
このモデルでは、スペクトル情報だけが重要であるので、解析は各画素ベクトルに対し個々に実行される。スペクトル情報は所与(換言すれば、画素の座標(x;y)が固定された場合)の画素の波長の関数としての強度の変化を意味するように理解される。したがってハイパースペクトル画像の独立成分解析を行なうことは、画像から雑音を除去した後の混合行列Aを決定することになる。
【0055】
行列Aは、各列k内に、純粋なK番目成分を再生できるようにするスペクトル帯の組み合わせを含む。
【0056】
ベクトルXijを形成する純粋な成分のそれぞれの割合を含むベクトルSijは次の条件に従わなければならない。
【0057】
【数1】

【0058】
実際は、ベクトル上に負値を有する成分は意味をなさない(所与の波長において測定される強度は少なくとも0であり、負の強度は物理的な意味を有しない)。同様に、その割合の和が1と異なる成分は、その一部が欠けていると考えられ意味を有しないであろう。
【0059】
上に定義された線形ソース分離モデル(linear source separation model)は2つの不確定性を呈する。これは、Aの列の置換がソースの順序を変更するからである。したがってモデルの定義は1つの置換において不確定である。さらに、Aの列に非零定数を掛けると、モデルの第2の不確定性(ソースの振幅に関係する)が生じる。この第2の不確定性は、一定の乗数が−1に等しい特定の場合には、負のソースの出現につながる。
【0060】
独立成分への分解の成功に関する極めて重要な要素は混合行列Aの評価にある。このAの評価を行なうために、2つのアルゴリズム群を区別することができる。
【0061】
第1のものは、成分間の独立性の判定基準を最適化することにより、勾配降下手順(gradient descent procedure)と同類の方法によりAを反復して推定することにその本質がある。したがってこのタイプの方法は、投影追跡で先に使用したものに非常に近い。
【0062】
第2のアルゴリズム群は、キュミュラントの行列により成分間の独立性を定義することによりAを推定できるようにする。したがってAはキュミュラントの行列の対角化により構築される。非特許文献≡High order contrasts for independent component Analysis≡,Neural Computation,Vol.11,No.1,pp157−192,(January 1999),J.F.Cardoso et alにおいて、Cardosoは、「第2と第4次のキュミュラントを選択することで、Kullback−Leibler指標を最小化することにより独立成分解析と数学的に等価な方法を開発できるようにする」と示している。
【0063】
独立成分解析によりハイパースペクトルデータを低減する方法は、縮小ハイパースペクトル画像立方体を取得できるようにする。しかしながら投影追跡とサポートベクターマシンの方法に関しては、起伏または影の存在が検出問題となる可能性がある。
【0064】
したがってハイパースペクトル立方体のデータの低減方法が何であっても、起伏の領域に位置する、あるいは起伏の領域により影響を受ける画素の分類を有利にするように、これらの起伏の影響を最も良く補償するようなやり方でハイパースペクトル立方体に対し前処理を実行することが重要である。
【0065】
投影追跡とサポートベクターマシンによる低減を考える場合、2つの補償方法を適用することができる。第1の方法は正規化による補償方法である。
【0066】
サポートベクターマシン(SVM)に従う投影追跡アルゴリズムがデータ立方体に直接適用される場合、起伏が画像内に存在する領域に非検出が発生する。したがってこれらの領域の特徴を検出することができるために、これらの起伏の影響を最も良く補償するようなやり方で画像立方体に対し前処理を行なわなければならない。
【0067】
起伏の影響を補償するために、起伏に関係する情報だけを含む画像であって、SVMにより類別されることができる情報に欠けた画像が使用される。例えば、電磁波が解析中の場面の成分と反応しないスペクトルの領域へ移動することが可能である。このとき立方体の画像のそれぞれは基準画像による画素により分割された画素である。これは、画像の端への影の影響の良好な補償となる。
【0068】
第2の方法は減算による補償方法である。
【0069】
依然として起伏に関係する情報だけを含む基準画像に基づき、立方体の画像の全体集合から起伏を減算することにより正規化する方法が提供される。起伏のモデルを実施するために、基準画像の最大値と基準画像の画素のすべてとのレベルの差異を測定する画像Cが導入される。
【0070】
C(i,j)=Max(IR)−IR(i,j) (式1)
IRは近赤外画像を表し、i、jは画像内の各画素の位置指標を表す。
【0071】
その後、立方体の画像のそれぞれをこの画像Cにより補正することができる。
【0072】
【数2】

【0073】
λは立方体の画像を表し、Iλcは補償後のこの同じ画像を表す。画像間のスケールの差異を考慮するように係数zが導入される。係数zは、λで表されるハイパースペクトル立方体の画像の最大強度と最小強度の差異と、IRで表される基準画像の最大強度と最小強度の差異と、の比である。
【0074】
式(2)の理由により線形合成による補償方法と呼ばれる減算による補償方法は、擬似検出の数を正規化による補償方法に対しさらに低減できるようにする。
【0075】
変形態様として、この補償を初期の立方体よりむしろ投影追跡により縮小された立方体に適用することも可能である。したがって補償は、単一基準画像ではなく周波数の隣接範囲内に位置するいくつかの基準画像の線形合成により行なわれ、観測場面内の起伏にだけ反応する完全な能力を示す。
【0076】
独立成分解析による縮小が採用される場合、前処理により起伏を補償することは可能ではない。前処理による補償が行なわれる場合、画像のそれぞれは単に平行移動させられるかあるいは同じ画像を掛けられ(減算による補償の場合の係数zを除いて)、これによりACIの観点から第1のものと等価な立方体を生成する。
【0077】
したがって起伏の影響を低減するために、補償は選択されたソースに後処理モード(post−processing mode)で適用される。
【0078】
ソースが所与のバンドによる正規化により補正された場合、投影追跡とSVMに関しては、起伏による擬似検出ではなく影による擬似検出の数が減少する。最後に、減算による補償は、起伏による擬似検出と影による擬似検出の両方を低減できるようにする。
【0079】
起伏の補償装置は、少なくとも2つの波長内の少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサ1と、センサから受信されたデータを処理することができる計算手段2と、を含む。表示手段3は、計算手段2から生ずる少なくとも1つの分類された画像を表示することができる。
【0080】
ハイパースペクトルデータの低減方法によると、様々な計算手段2が考えられる。
【0081】
一実施形態では、計算手段2は、投影追跡の計算のための少なくとも1つの手段4と、サポートベクターマシンを生成する少なくとも1つの手段5と、を含む。
【0082】
別の実施形態では、計算手段2は独立成分解析による計算手段12を含む。
【0083】
計算手段2は、少なくとも1つの基準画像の関数として起伏を補償する手段6をさらに含む。
【0084】
図1に示す第1の実施形態の一変形態様では、起伏の補償手段6は投影追跡を計算する手段4とサポートベクターマシンを生成する手段5との間に位置している。
【0085】
図2に示す第1の実施形態の別の変形態様では、起伏の補償手段6はセンサ1と投影追跡の計算手段4との間に位置している。
【0086】
図3に示す第2の実施形態では、起伏の補償手段6は独立成分解析により計算する手段12と表示手段3との間に位置している。
【0087】
ハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法は、少なくとも2つの波長において、獲得工程7から受信されるデータを処理することができる計算工程と、計算工程から来る少なくとも1つの類別された画像を表示することができる表示工程11と、を含む。
【0088】
ハイパースペクトルデータの低減方法によると、様々な計算工程が考えられる。
【0089】
図4と図5に示す一実施形態では、計算工程は、投影追跡を計算する少なくとも1つの工程8と、それに続くサポートベクターマシンを生成する少なくとも1つの工程10と、を含む。
【0090】
図6に示す別の実施形態では、計算工程は独立成分解析による計算工程13を含む。
【0091】
計算工程はさらに、少なくとも1つの基準画像の関数として起伏を補償する工程9を含む。
【0092】
図4に示す第1の実施形態の一変形態様では、起伏の補償工程9は少なくとも1つのセンサ1によりハイパースペクトル画像を獲得する工程7と投影追跡の計算工程8との間に位置している。
【0093】
図5に示す第1の実施形態の別の変形態様では、起伏の補償工程9は投影追跡の計算工程8とサポートベクターマシンの生成工程10との間に位置している。
【0094】
図6に示す第2の実施形態では、起伏の補償工程9は独立成分解析による計算工程13と表示工程11との間に位置している。
【0095】
さらに、起伏の補償を可能にする基準画像は、補正される起伏を表す単一画像、あるいは所与の波長における画像であって補正される起伏を代表する画像、あるいはいくつかの基準画像の線形合成であってよい。
【0096】
皮膚科応用の枠組みでは、目標は皮膚損傷の存在を確定することである。皮膚は、近赤外線における放射にほとんど反応しない。このときこれらの波長において撮影された画像は実質的には、患者(鼻、口等)の形態構造による起伏と画像端影を含むだけである。したがって基準画像は、赤外線領域で、近赤外領域で、あるいは投影ベクトル(赤外線領域に位置し、縮小ハイパースペクトル画像を補償する投影追跡工程により確定され、また投影追跡から生ずる)が選択される場合は2つの領域の線形合成の、いずれかで撮影される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのハイパースペクトル画像内の起伏を補償する装置であって、
少なくとも2つの波長における少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサ(1)と、
2つの状態との分類関係に従って前記センサ(1)から生ずる前記ハイパースペクトル画像の画素を類別することができる計算手段(2)と、
前記計算手段(2)から生ずる分類された画素の少なくとも1つの画像関数を表示することができる表示手段(3)と、を含み、
前記計算手段(2)は少なくとも1つの基準画像の関数として前記起伏を補償する手段(6)を含む、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記起伏の前記補償手段は基準画像とハイパースペクトル画像を線形的に合成することができる、請求項1に記載の補償装置。
【請求項3】
前記起伏の前記補償手段は、前記基準画像の対応する画素の強度と前記ハイパースペクトル画像の波長毎の画素のそれぞれの強度とを線形的に合成することにより、前記基準画像とハイパースペクトル画像を線形的に合成することができる、請求項2に記載の補償装置。
【請求項4】
前記基準画像は前記センサにより生成される前記ハイパースペクトル画像に含まれる所与の波長の画像である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項5】
前記基準画像は前記計算手段(2)により生成される前記縮小ハイパースペクトル画像に含まれる画像である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項6】
前記計算手段(2)は投影追跡のための少なくとも1つの計算手段(4)とサポートベクターマシンを生成する少なくとも1つの手段(5)とを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項7】
前記計算手段(2)は少なくとも1つの独立成分解析手段(12)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の解析装置の、人間の皮膚損傷の検出への応用であって、前記基準画像は赤外線領域に位置する波長でセンサにより獲得される、応用。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の解析装置の、人間の皮膚損傷の検出への応用であって、前記基準画像は近赤外線領域に位置する波長でセンサにより獲得される、応用。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の解析装置の、人間の皮膚損傷の検出への応用であって、前記基準画像は前記赤外線と前記近赤外線において行なわれる画像ベクトル上への前記投影に対応する前記投影追跡から生ずる合成画像に対応する、応用。
【請求項11】
少なくとも2つの波長内の少なくとも1つのハイパースペクトル画像を生成することができる少なくとも1つのセンサから生ずる少なくとも1つのハイパースペクトル画像内の起伏を補償する方法であって、前記方法は、
2つの状態との分類関係に従ってセンサから生ずるハイパースペクトル画像の画素を類別することができる少なくとも1つの計算工程と、
計算工程から生ずる分類された画素の少なくとも1つの画像関数を表示することができる表示工程と、とを含み、
前記計算工程は少なくとも1つの基準画像の関数として前記起伏を補償する工程を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記起伏の前記補償工程中、基準画像はハイパースペクトル画像と線形的に合成される、請求項11に記載の補償法。
【請求項13】
基準画像は、前記基準画像の対応する画素の強度とハイパースペクトル画像の各波長の前記画素のそれぞれの強度を線形的に合成することにより、前記ハイパースペクトル画像と線形的に合成される、請求項12に記載の補償法。
【請求項14】
前記基準画像は前記センサにより生成される前記ハイパースペクトル画像に含まれる所与の波長の画像である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の補償法。
【請求項15】
前記基準画像は投影追跡の前記計算工程から生ずる前記縮小ハイパースペクトル画像に含まれる画像である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の補償法。
【請求項16】
前記計算工程は投影追跡の計算のための少なくとも1つの工程とサポートベクターマシンの生成のための少なくとも1つの工程とを含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の補償法。
【請求項17】
前記計算工程は、独立成分解析のための少なくとも1つの工程(13)を含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の補償法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−509630(P2013−509630A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535825(P2012−535825)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066342
【国際公開番号】WO2011/051383
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【出願人】(505026125)インリア・インスティテュート・ナショナル・ドゥ・ルシェルチェ・アン・インフォマティック・エ・アン・アートマティック (10)
【氏名又は名称原語表記】INRIA INSTITUT NATIONAL DE RECHERCHE EN INFORMATIQUE ET EN AUTOMATIQUE
【Fターム(参考)】