説明

ハイブリッド種子における目的産物の安全な産生

第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド種子(F1種子)における高収率で安全な目的産物の産生方法に関する。また、本発明は、それにより産生される種子及び前記種子から単離される目的産物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の最近の遺伝子工学的方法における主な問題は、以下のように要約することができる:
1. 通常、目的産物の収率が低い。例は薬用タンパク質、酵素、他のタンパク質、ポリマー、糖、多糖類などである。低収率とは、精製/後処理費用が高いことを意味する。
2. 遺伝子改変植物と非トランスジェニック亜種又は野生型相対物との自由な交雑、及び収穫後の農場における「自生」植物の存在による遺伝子汚染。植物は自己複製生物であるため、又はヒトの過ち若しくは故意の行動のため、そのようなイベントは自然発生的に容易に起こる。
【0003】
2つの問題は同一問題の全く反対の側面である:低収率は、通常、完全な発育及び生殖サイクルを経由する能力も同時に保持する産生体である植物を構築したいという欲求の結果である。発育及び生殖の工程と導入遺伝子発現工程との組み合わせは解決策を与えない。誘導性システム(US05187287号;US05847102号;Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.、90.4567−4571;Aoyama&Chua、1997、Plant J.、11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.、14、247−257;US06063985号;Caddickら、1997、Nature Biotech.、16、177−180;WO09321334号;Weinmannら、1994、Plant J.、5、559−569)も器官特異的導入遺伝子発現システム(US05955361号;WO09828431号;De Jaegerら、2002、Nature Biotech.、20、1265−1268)も遺伝子汚染の問題に対する解決策を提供せず、高収率の目的産物も提供しない。上記システムに用いる誘導性プロモーター及び組織特異的プロモーターは全て、例えば「漏出性」の定常活性を有し、これは発生の過程で導入遺伝子サイレンシングを引き起こし、必然的に目的産物の収率が減少する。更に、そのような誘導性システムの制御下にある組換え遺伝子を有するトランスジェニック植物は、例えば組換え生物医薬品を産生する場合に、厳格な生物安全性の基準を満たさないため、収率が唯一の問題ではない。
【0004】
植物ウイルス配列に基づいた増幅ベクターの使用は、上記問題、特にそのようなベクターを一過性の発現に用いた場合の部分的解決策を潜在的に提供することができる(US5491076号;US5977438号;US5316931号;US5589367号;US5866785号;WO0229068号)。しかしながら、一過性発現実験用ベクターの多くは、選択された植物種、大部分はタバコファミリーのために開発されている(US5466788号;US5670353号;US5866785号;WO02088369号)。目的の組換えタンパク質/RNAを産生するためのウイルスベクターの効率性は、効率的な細胞間移行及び全体移行の能力によっても決定される。後者のパラメータは、種及び亜種依存的であり、したがって、一過性発現のために宿主を選択する自由を厳しく制限する。この問題の潜在的解決策は、染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスベクターを有するトランスジェニック植物を設計することである。形質移入又は植物染色体DNAへの安定な組み込みを介して外来配列を植物で発現させるために設計されたウイルスベクターの使用について多くの総説に記載されている(Stanley,J.1993、Curr Opin Genet Dev.、3、91−96;Schlesinger,S.1995、Mol Biotechnol.、3、155−165;Porta,C.&Lomonossoff,G.2002、Biotechnol.&Genet.Eng.Rev.、19、245−291;Awramら、2002、Adv Virus Res.、58、81−124)。しかしながら、染色体DNAに安定に組み込まれたアンプリコンベクターを有するトランスジェニック植物を設計する試みは、通常、導入遺伝子サイレンシングの問題に直面し、このアプローチを役に立たないものにしている。最良の場合、GUS遺伝子及びNPT遺伝子に関してHayesと同僚によって80年代後半に示されたように、強力な構成的プロモーターによって提供されるよりもわずかに高い収率を提供する(Hayesら、1989、Nucl.Acids Res.、17.2391−2403)。それ以来、ウイルスレプリコンに基づいたトランスジェニック植物における高収率で生物学的に安全な組換えタンパク質の産生を達成する上で特筆すべき突破口は無かった。
【0005】
ハイブリッド植物が転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)のサプレッサーを提供する、ハイブリッド植物のアンプリコンに関するMalloryと同僚の研究(2002、Nature Biotechnol.、20、622−625)は、問題の部分的解決策を与える。しかしながら、このアプローチは目的産物の収率が高くなく、正常な植物の発育とは両立しなかった。更に、バイオセイフティ問題に対処していなかった。Goodingと同僚(1999、Nucleic Acids Res.、27、1709−1718)は、科学的研究で単離コムギ胚におけるジェミニウイルスベクターの複製について報告している。可能な技術応用に取り組んでいなかった。更に、この方法は規模を大きくすることができず、したがって、技術応用に使用されていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、植物産生システムにおいて目的タンパク質のような目的産物を、特に高収率で産生するための新規方法を提供することである。本発明の他の目的は、植物産生システムにおいて目的産物、特に目的タンパク質を産生するための生物学的に安全な方法を提供することであり、この方法に関与するトランスジェニック遺伝物質の環境への分布は厳しく制御され、発生する可能性が低い。本発明の更なる目的は、植物産生システムにおいて目的タンパク質のような目的産物を産生する方法を提供することであり、目的産物の収率又は品質を損なうことなく、植物の生長と目的産物の単離とを空間的且つ時間的に切り離すことができる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概説
これらの目的は、F1種子において目的産物を産生する方法によって達成され、この方法は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによってF1種子を得ることを含み、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生ずる。次に目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔くことができる。
【0008】
更に、本発明は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法を提供し、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1又は第2の親植物では発現せず、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く。
【0009】
更に、本発明は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法を提供し、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1又は第2の親植物では発現せず、目的産物は目的タンパク質であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く。
【0010】
更に、上記方法によって産生されるか又は産生可能な種子、及び前記種子から単離される目的産物が提供される。好ましくは、前記種子から生長した植物の有性生殖は損なわれており、より好ましくは前記植物は性的に不稔である。
【0011】
発明者らは、植物種子(F1種子)において目的産物を産生する方法を見出した。前記方法に必要な遺伝子供与は、親植物をハイブリダイズすることによって前記種子で生ずる。即ち、いずれの親植物も前記方法に必要な完全な遺伝子供与を有していない。目的産物を産生する種子は、目的産物をそこから単離するときに破壊される。その結果として、本発明の方法は、前記方法に必要な遺伝子供与物が環境に分布する可能性が非常に低いため、生物学的安全性が高い。更に、前記種子から生長する植物は生殖できないため、生物学的安全性を更に高めるためにF1種子は不稔であり得る。更に、本発明の方法は、目的産物を産生する上で遺伝子サイレンシングは問題ではないという驚くべき利点を有する。これは、種子における親植物の部分的遺伝子供与物の共存が短いことによるかもしれない。特に、目的産物の産生が基本的に親植物では起こらないため、導入遺伝子サイレンシングを種子に伝達することができない。導入遺伝子サイレンシングがほとんど起こらないため、目的産物を高収率で産生することができる。通常、目的産物は他の植物組織におけるよりも種子においてより安定であるため、植物の生長と目的産物の単離とを空間的且つ時間的に切り離すことができることが本発明の更なる利点である。これは、本発明の方法全体に柔軟性を与える。
【0012】
第1及び第2のトランスジェニック親植物は、それぞれ第1及び第2の部分的遺伝子供与物を含有する。部分的遺伝子供与物はトランスジェニックであることが好ましい。第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において遺伝子供与を生ずる。種子において遺伝子供与が生ずると、種子における目的産物の産生が誘発される。ハイブリダイズとは、第1及び第2のトランスジェニック親植物の人工受粉を意味することが好ましい。ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2の部分的遺伝子供与物を組み合わせ、F1種子に遺伝子供与物を供与する。第1及び第2の遺伝子供与物はともに種子における目的産物の産生に必要である。したがって、目的産物は第1又は第2の親植物では発現しない。例えば第1又は第2の部分的供与物からの漏出性発現により、親植物において微量レベルの目的産物の産生が起こり得る。そのような漏出性の発現は、目的産物の経済的産生に対して非常に弱い。しかしながら、第1及び第2の親植物のいずれにおいても目的産物の産生は起こらないことが好ましい。
【0013】
前記方法によって産生される目的産物は、目的タンパク質、例えば薬用タンパク質であることが好ましい。本発明にしたがい、2、3以上の目的タンパク質を種子で産生することもできる。目的タンパク質は、種子の植物に対して異種タンパク質であることが好ましい。目的タンパク質は酵素でもよい。種子で酵素を産生する場合、産物は、とりわけ前記酵素の作用によって種子で産生される化学化合物でもよい。化学化合物の産生には2、3以上の酵素が必要とされるかもしれない。本発明を用いて産生し得る化学化合物の例としては、ビタミン、ポリマー(例えばポリヒドロキシブチル酸及び他の生分解性ポリエステル)、脂肪酸、脂肪、油、炭水化物、高級イソプレノイドなどが挙げられる。公知の手順にしたがい、目的産物を含有する種子を親植物から収穫し、目的タンパク質又は化学化合物を種子から単離することができる。目的産物が単離される種子発芽していてもよい。目的産物は発育胚、胚乳、子葉又は発芽種子に蓄積し得る。
【0014】
遺伝子供与が生ずることによる目的産物又はタンパク質の産生は、多くのさまざまな方法で達成することができる。タンパク質が産生される場合、それぞれの部分的遺伝子供与物はタンパク質のコード配列の一部を提供することができ、前記部分は例えばDNAレベルでの組換え、RNAレベルでのRNAトランススプライシング、又はタンパク質レベルでのタンパク質トランススプライシングによって種子で組み合わせられることができる。他の一般的なアプローチは、目的タンパク質のコード配列にタンパク質が発現不可能な形態で第1の部分的供与を提供し、遺伝子成分にタンパク質の発現を誘発する第2の部分的供与を提供することである。例えば、植物に固有のポリメラーゼには認識されない異種プロモーターからのコード配列の転写を可能にするRNAポリメラーゼに第2の部分的供与を提供することによって、又は例えばコード配列をプロモーターの制御下に置くことによってコード配列を発現可能にするリコンビナーゼに第2の部分的供与を提供することによって、発現を誘発することができる。種子における目的産物の産生に対する制御を更に増加させるために、産生を誘発するリコンビナーゼ又は他の酵素のコード配列を2つの断片に分割することができる。一方の断片を第1親植物によって種子に提供し、他方の断片を第2親植物によって種子に提供することができる。2つの断片は、2つの異なる発生学的に調節されたプロモーターの制御下で発現させ、F1種子においてインテイン介在性トランススプライシングによって活性リコンビナーゼ又は酵素に組み立てることができる。このようにして、目的産物の産生開始を制御することができ、例えば種子発育の後期にシフトさせることができる。インテイン介在性トランススプライシングについての詳細は、PCT/EP03/02986号に見出すことができる。
【0015】
重要な態様では、遺伝子供与は、ハイブリダイゼーションによって生ずる複製DNA又は複製RNAを含む。複製DNA又は複製RNAは目的産物の産生に関与する。目的タンパク質が複製DNA又は複製RNAから発現することが好ましい。複製DNAはレプリコンであり得る。即ち、種子において機能性の複製起点を有することができる。レプリコンはウイルスレプリコンであることが好ましい。即ち、DNAウイルスレプリカーゼ又はウイルスレプリコンの細胞間伝播に関与するタンパク質をコードする配列のようなDNAウイルス成分を有し得る。同様に、複製RNAはRNAレプリコンであり得る。即ち、種子において機能性の複製起点を有し得る。RNAレプリコンはウイルスレプリコンであることが好ましい。即ち、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ又はウイルスレプリコンの細胞間伝播に関与するタンパク質をコードする配列のようなRNAウイルス成分を有し得る。最も好ましくは、DNAウイルスレプリコン又はRNAウイルスレプリコンは目的タンパク質をコードすることができる。
【0016】
複製DNA又は複製RNAは植物ウイルスを起源とすることができる。複製DNAはジェミニウイルスに基づくことができる。複製RNAの場合、複製RNAは1本鎖の+鎖RNAウイルスに基づくことが好ましい。好ましい1本鎖の+鎖RNAウイルスはトバモウイルスである。複製RNAはタバコモザイクウイルスに基づくことが最も好ましい。
【0017】
複製DNA又は複製RNAは、F1種子において第1の部分的遺伝子供与成分及び第2の部分的遺伝子供与成分から生ずることができる。DNAレプリコンは、第1の部分的遺伝子供与物としてそのゲノムにレプリコンの前駆体を組み込ませた第1親植物を、前駆体からレプリコンを生じさせること(又は複製をもたらすこと)が可能な成分を含有するか又はコードすることができる第2親植物とハイブリダイズさせることによって種子において生ずることができる。第2親植物によって提供される成分は、レプリコンの前駆体を再構築することによってレプリコンを生じさせることが可能な酵素(部位特異的リコンビナーゼ、フリッパーゼ又はインテグラーゼのような)であり得る。この態様の例を図3、図7及び図9に示す。
【0018】
複製RNAは、第1の部分的遺伝子供与成分及び第2の部分的遺伝子供与成分からRNA特異的組換えによって生ずることができる。あるいは、第1の部分的遺伝子供与は、複製RNAの前駆体を含むことができる。前駆体は、第1親植物のゲノムに組み込まれた複製RNAのDNAコピーであり得る。次に、複製RNAは、第2の部分的遺伝子供与物にコードされる成分、特にRNAポリメラーゼによる複製RNAのDNAコピーの転写によって種子において生ずることができる。RNAポリメラーゼを前記成分として用いる場合、RNAポリメラーゼは、複製RNAのDNAコピーを転写するために用いるプロモーターに適応させる必要がある。
【0019】
目的産物、特に目的タンパク質が第1の部分的遺伝子供与物にコードされ、第2の部分的遺伝子供与物が例えば産生のための調節機能を提供する場合、雌性親植物によるハイブリダイゼーションに第1の部分的遺伝子供与物を提供することが好ましい。より好ましくは、雌性親植物は雄性不稔である。このようにして、第1(雌性)トランスジェニック親植物由来の花粉は環境に分布せず、第2(雄性)親植物由来の花粉は目的産物をコードしないため、生物学的安全性を更に高めることができる。同様に、遺伝子供与物が複製DNA又は複製RNAを含む場合は、複製DNA又はRNAは雌性親植物の部分的遺伝子供与によって提供されることが好ましい。
【0020】
第1の部分的遺伝子供与物及び第2の部分的遺伝子供与物は、種子に伝達できるようにそれぞれの親植物に組み込まれていることが好ましい。この目的のため、これらは親植物のゲノムに安定に組み込まれていることが好ましい。親植物は、植物バイオテクノロジーの公知の方法にしたがって所望の部分的遺伝子供与物を含有するベクターで植物を形質転換することによって産生することができる。親植物は、部分的遺伝子供与物に関して同型であることが好ましい。親植物株は維持されて、自殖によって繁殖することができる。
【0021】
本発明の種子(F1種子)を収穫して目的産物の単離に用いることができる。したがって、種子に含有される遺伝子供与物を含めたトランスジェニック材料は環境に分布せず、種子の子孫への移行による繁殖はしない。トランスジェニック材料が種子の子孫へ移行するのを妨げるため、好ましくは、種子から生長する植物の有性生殖は損なわれており、好ましくは排除され、より好ましくはF1種子は不稔である。好ましい態様では、目的産物の強力な発現のために、あるいは複製DNA又はRNAの強力な複製のために、種子から生長する植物の有性生殖は損なわれているか又は種子は不稔である。あるいは又は更に、種子から生長する植物の発育は遺伝子操作によって生殖生長期に達する前にブロックされており、これは正常な植物の発育を妨げる毒性物質又は毒性タンパク質の組織特異的発現によって達成することができる。そのような毒性タンパク質は、バルナーゼ、志賀タンパク質、植物転写因子、又は植物のホルモン状態を制御する酵素から成る群より選択することができる。好ましくは、植物発育は開花期前にブロックされ、より好ましくは第1葉形成前にブロックされる。
【0022】
毒性タンパク質(バルナーゼなど、実施例5を参照されたい)はタンパク質断片として発現させることができ、タンパク質断片のタンパク質トランススプライシングによって毒性タンパク質の融合物を生じ、機能性毒性タンパク質を形成する。毒性タンパク質を2つの断片として発現させる場合、これら2つの断片は、2つの異なるプロモーター、特に2つの異なる組織特異的プロモーター又は2つの異なる発生学的に活性なプロモーターの制御下で転写させることができる。したがって、機能性毒性タンパク質の形成は、組織特異性が異なる2つのプロモーターに依存し得る。即ち、毒性タンパク質は、2つのプロモーターが活性な組織において活性型で形成される。このアプローチは、しばしば漏出性発現をする1つの組織特異的プロモーターによって達成されるよりも、機能性毒性タンパク質の発現に対してより厳格な制御を可能にする。更に、このアプローチは、新規発現パターン、例えば公知の組織特異的プロモーターでは達成できない発現パターンの達成を可能にする;2つの断片のために異なる組織特異的プロモーターを組み合わせることにより、可能な発現パターンの組み合わせの多様性を広げる。
【0023】
本発明の方法は、大規模適用に完全な可能性を示す。大規模とは、多くの植物を同時に、例えば温室で適用することを意味する。最も好ましくは、大規模とは農場での適用を意味する。大規模適用では、第1親植物株の多くの植物と第2親植物株の多くの植物は、第1親植物株の植物と第2親植物株の植物との効率的な人工受粉を可能にするために、互いに近接して蒔かれるか又は植えられる。自家受粉を避けるために、例えば第1又は第2の親植物のいずれかの雄性不稔を用いる公知のハイブリッド種子産生方法を本発明の方法と組み合わせることができる。そのような方法の1例は、PCT/EP03/02986号に記載のものである。
【0024】
本特許出願の優先権証明書DE 103 25 814号は、本明細書中にその全体が援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の最良の形態及び詳細な説明
本発明の発明者らは、驚くべきことに、高率細胞分裂は、少なくとも双子葉植物の胚におけるウイルス複製を提供するのに単独では十分でなく、その上、胚発育期に依存し、通常、種子発育のより後期にシフトするすることを発見した。他の驚くべき発見は、染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスに基づくレプリコン前駆体がトランスジェニック種子(F1種子)における活性化によって複製する能力である。我々の知る限りでは、この現象について記載する先行技術ない。
【0026】
本発明の方法では、植物の生殖と植物に基づいた目的産物の産生とは厳密に分離しており、産物の収率が大幅に向上する。目的産物を産生するために植物の発育及び生殖に通常必要とされる資源を、例えば、好ましくは特定の最も好適な発育期又は初期発芽期に、種子において目的産物を産生することによって利用することは、遺伝子汚染を制御することに役立つ。
【0027】
発育期、より詳細には配偶子融合及び受精期を、種子生長期を産生期に変換する遺伝子スイッチとして用いることを提唱する。遺伝子供与の異なる成分を異なる親植物へ操作した。前記成分(部分的遺伝子供与物)は、親植物内では不活性であるが、ハイブリダイゼーション行程後に遺伝子供与を生じ、それにより目的産物の産生を誘発する。好ましい態様では、複製DNA又はRNA(増幅工程)を産生に使用し、それにより胚及び/又は胚乳産生を支配する高収率産生システムが作製され、発育種子に目的産物の蓄積をもたらし、一方で、種子をその後の有性生殖ができないようにすることが好ましい。目的産物が蓄積し、発育種子、成熟種子、又は発芽種子から単離することができる。
【0028】
本発明の基礎は、以下の驚くべき発見にある:
(a) ウイルスベクターは、種子発育のより後期及び種子発芽の初期に植物種子において複製可能であるが、特に双子葉植物では、種子形成の初期段階には全く又はほとんど不可能である;
(b) 染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスベクター前駆体は、アクチベーター配列を提供する植物との交雑によって、ハイブリッド種子内で効率的に活性化されることができる。
【0029】
植物発育の費用で染色体DNAに安定に組み込まれたレプリコンを種子において活性化することはこれまでに示されていない。これは本発明の方法を厳重に制御することを可能にし、導入遺伝子サイレンシングを誘発するか又は種子発育を極初期に妨げ得る漏出性の複製を妨げる。
【0030】
Bean Golden モザイクウイルス(BGMV)に基づいたレプリコンの設計は、実施例1に記載され、図2及び図3に示されている。GFP(緑色蛍光タンパク質)をレポーター遺伝子として有するベクターpICH4300を用いて、ジェミニウイルスを複製するために胚のさまざまな発育期の能力を試験した。これらの実験の結果を図4に示す。照射した若いマメの胚の表面に可視化したウイルス複製の兆候はない(GFP発現なし)が、多くの進行した発育後期の細胞に明瞭なGFP発現が検出されたことは明らかである(図4)。種子発芽のあいだにも効率的複製が起こる(図5)。コムギDwarfウイルス(WDV)に基づいたベクターの設計は実施例2に記載されている。図7は、一過性発現実験のためのWDVベクターを概略的に示す。コムギ及びトウモロコシの種子を用いた実験結果を図8に示す。WDVベクターはコムギ及びトウモロコシの胚において効率的に複製するが、トウモロコシの胚乳ではより効率が低いことが明らかである。種子発育の望ましくない段階(極初期)での漏出性の複製は、種子生長及びこのアプローチの技術適用性を危うくするため、これらのデータは本発明の実行可能性を確立する上で重要である。また、部位特異的組換えによる複製行程を誘発するための種子特異的プロモーターの幅広い選択を可能にする。胚発育初期段階においてウイルスベクターをその部分の組換え介在反転によって活性化することは(図3及び図9)、レプリコン前駆体を複製適格期にし得るが、胚が発育のより進行した段階(「複製適格期」)に達するまで複製は起こらないことが好ましい。
【0031】
プロモーターの選択はこの技術の効率に影響する。誘導性プロモーター及び組織特異的プロモーターを用いて、種子における高収率産生を誘発することができる。誘導性プロモーターは、誘導条件によって2つのカテゴリーに分けることができる:非生物的因子(温度、光、化学物質)によって誘導されるもの、及び生物的因子、例えば病原体又は害虫の攻撃によって誘導できるもの。第1カテゴリーの例は、とりわけ熱誘導性プロモーター(US05187287号)及び低温誘導性プロモーター(US05847102号)、銅誘導性システム(Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.、90、4567−4571)、ステロイド誘導性システム(Aoyama&Chua、1997、Plant J.、11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.、14、247−257;US06063985号)、エタノール誘導性システム(Caddickら、1997、Nature Biotech.、16、177−180;WO09321334号)、及びテトラサイクリン誘導性システム(Weinmannら、1994、Plant J.、5、559−569)である。植物の化学的に誘導可能なシステムの分野における最近の発展の1つは、グルココルチコイド デキサメサゾンによってスイッチを入れ、テトラサイクリンによってスイッチを切ることができるキメラプロモーターである(Bohnerら、1999、Plant J.、19、87−95)。化学的に誘導可能なシステムの総説としては:Zuo&Chua(2000、Current Opin.Biotechnol.11、146−151)を参照されたい。しかしながら、本発明を実施する上で最も好適なプロモーターは種子特異的プロモーターである。
【0032】
本発明の実施に有用であり得る種子特異的プロモーターには幅広い選択肢がある。そのようなプロモーターには、とりわけ、エンドウマメ レクチン(Psl1)遺伝子のプロモーター(de Paterら、1996、Plant Mol.Biol.、32、515−523)、USPと呼ばれるVicia faba非貯蔵性種子タンパク質遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、オーツムギ グロブリン遺伝子asglo5の胚乳特異的プロモーター(Schubertら、1994、Plant Mol.Biol.、26、203−210)、トウモロコシ O2遺伝子のプロモーター(Gallusciら、1994、Mol.Gen.Genet.、15、391−400)、後期胚形成において豊富な遺伝子(lea)、具体的にはシロイヌナズナ胚のいたるところに発現するAtEm6のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシ rab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)、β−ファセオリン及びβ−コングリシニンのプロモーター(Odellら、1994、Plant Physiol.、106、447−458)、インゲンマメのarcelin−5遺伝子のプロモーター(Gossensら、1999、Plant Physiol、120、1095−1104)、D−ホルデイン遺伝子プロモーター(Horwathら、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、1914−1919)、オオムギ リポキシゲナーゼ1(Lox1)遺伝子のプロモーター(Rousterら、1998、Plant J.15.435−440)などが含まれる。
【0033】
目的タンパク質の発現を駆動するために選択したプロモーターの適用性を予備的に評価するため、pIC01由来の構築体(図6)を用いた一過性発現実験に、GUSレポーター遺伝子を使用した。ここで、34Sプロモーターは種子特異的プロモーターに置換されている。インテグラーゼ PhiC31の発現を駆動するため、Vicia faba由来のUSP遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、AtEm6遺伝子のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシ rab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)、並びにシロイヌナズナ アクチン2遺伝子及びコメ アクチン1遺伝子の構成的プロモーター(それぞれ構築体pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH10881及びpICH14530、図6を参照されたい)を含めたいくつかの単子葉植物及び双子葉植物の種子特異的プロモーターを選択した。他の部位特異的リコンビナーゼの多くは本発明に用いることができる。そのようなシステムの例としては、とりわけ、バクテリオファージP1由来のCre−Loxシステム(Austinら、1981、Cell、25、729−736)、サッカロミセス・セレビジエ由来のFlp−Frtシステム(Broachら、1982、Cell、29、227−234)、チゴサッカロミセス・rouxii由来のR−RSシステム(Arakiら、1985、J.Mol.Biol.182、191−203)が挙げられる。
【0034】
天然宿主及び非宿主植物種の胚におけるウイルスレプリコンに関する先行技術文献がある(Wang&Maule、1994、Plant Cell、6、777−787;Goodingら、1999、Nucleic Acids Res.、27、1709−1718;Escalerら、2000、Virology、267、318−325;Ugakiら、1991、19、371−377)。細胞間移行及び全体移行などの宿主特異性を決定するウイルスレプリコンの特定の特性を犠牲にすれば、宿主範囲が著しく増加すると思われる。そのようなウイルスレプリコンは、種子細胞を含めた広範な植物種の細胞で効率的に複製することができると思われる。ここで、前記植物種はウイルスレプリコンに対する天然宿主ではない。そのような場合、ウイルスレプリコンの全体移行及び細胞間移行は影響を受けるが、複製能は影響を受けない。実際に、本発明の原理にしたがって、ウイルスに基づいたベクターを構築するために、さまざまな分類群に属するウイルスを用いることができる。これは、RNA含有ウイルス及びDNA含有ウイルスの両方にあてはまる。それらの例を以下に示す(本明細書にわたり、それぞれの基準種名はそれが属する目、ファミリー及び属の名称によって先行される。目、ファミリー及び属の名称は、ICTVに承認されている場合はイタリック体である。引用符付きの分類群名(イタリック体ではない)は、この分類群にはICTVで国際的に承認された名称がないことを示す。種名(俗名)は標準体で示す。属又はファミリーについて正式命名ないウイルスが示されている):
DNAウイルス:
環状dsDNAウイルス:ファミリー:Caulimoviridae、属:Badnavirus、基準種:commelina yellow mottleウイルス、属:Caulimovirus、基準種:カリフラワーモザイクウイルス、属“SbCMV様ウイルス”、基準種:ダイズchloroticmottleウイルス、属“CsVMV様ウイルス”、基準種:Cassava vein モザイクウイルス、属“RTBV様ウイルス”、基準種:コメtungro bacilliformvirus、属:“Petunia vein clearing様ウイルス”、基準種:Petunia vein clearingウイルス;
環状ssDNAウイルス:ファミリー:Geminiviridae、属:Mastrevirus(サブグループI ジェミニウイルス)、基準種:トウモロコシ streakウイルス、属:Curtovirus(サブグループII ジェミニウイルス)、基準種:beet curly topウイルス、属:Begomovirus(サブグループIII ジェミニウイルス)、基準種:bean golden モザイクウイルス;
RNAウイルス:
ssRNAウイルス:ファミリー:Bromoviridae、属:Alfamovirus、基準種:アルファルファ モザイクウイルス、属:Ilarvirus、基準種:タバコstreakウイルス、属:Bromovirus、基準種:bromeモザイクウイルス、属:Cucumovirus、基準種:キュウリモザイクウイルス;
ファミリー:Closteroviridae、属:Closterovirus、基準種:beet yellowsウイルス、属:Crinivirus、基準種:レタス infectious yellowsウイルス、ファミリー:Comoviridae、属:Comovirus、基準種:cowpeaモザイクウイルス、属:Fabavirus、基準種:broad bean wilt ウイルス 1、属:Nepovirus、基準種:タバコringspotウイルス;
ファミリー:Potyviridae、属:Potyvirus、基準種:ジャガイモウイルスY、属:Rymovirus、基準種:ryegrass モザイクウイルス、属:Bymovirus、基準種:オオムギ縞萎縮ウイルス;
ファミリー:Sequiviridae、属:Sequivirus、基準種:parsnip yellow fleckウイルス、属:Waikavirus、基準種:コメ tungro sphericalウイルス;ファミリー:Tombusviridae、属:Carmovirus、基準種:carnation mottleウイルス、属:Dianthovirus、基準種:carnation ringspotウイルス、属:Machlomovirus、基準種:トウモロコシ chlorotic mottleウイルス、属:Necrovirus、基準種:タバコnecrosisウイルス、属:Tombusvirus、基準種:トマトbushy stuntウイルス、
Unassigned Genera of ssRNAウイルス、属:Capillovirus、基準種:リンゴstem groovingウイルス;
属:Carlavirus、基準種:carnation latentウイルス;属:Enamovirus、基準種:pea enation モザイクウイルス、
属:Furovirus、基準種:soil−borne コムギ モザイクウイルス、属:Hordeivirus、基準種:オオムギ斑葉モザイクウイルス、属:Idaeovirus、基準種:raspberry bushy dwarfウイルス;
属:Luteovirus、基準種:オオムギ yellow dwarfウイルス;属:Marafivirus、基準種:トウモロコシ rayado finoウイルス;属:Potexvirus、基準種:ジャガイモウイルス X;属:Sobemovirus、基準種:Southern bean モザイクウイルス、属:Tenuivirus、基準種:イネ縞葉枯ウイルス、
属:トバモウイルス、基準種:タバコモザイクウイルス、
属:Tobravirus、基準種:タバコrattleウイルス、
属:Trichovirus、基準種:リンゴchlorotic leaf spotウイルス;属:Tymovirus、基準種:turnip 黄斑モザイクウイルス;属:Umbravirus、基準種:carrot mottleウイルス;Negative ssRNAウイルス:目:Mononegavirales、ファミリー:Rhabdoviridae、属:Cytorhabdovirus、基準種:レタス壊死性黄変病ウイルス、属:Nucleorhabdovirus、基準種:ジャガイモ黄萎病ウイルス;
Negative ssRNAウイルス:ファミリー:Bunyaviridae、属:Tospovirus、基準種:トマト黄化壊疽ウイルス;
dsRNAウイルス:ファミリー:Partitiviridae、属:Alphacryptovirus、基準種:white クローバー crypticウイルス1、属:Betacryptovirus、基準種:white クローバー crypticウイルス2、ファミリー:Reoviridae、属:Fijivirus、基準種:Fiji diseaseウイルス、属:Phytoreovirus、基準種:wound tumorウイルス、属:Oryzavirus、基準種:コメragged stuntウイルス;
未命名ウイルス:ゲノムssDNA:種:バナナ bunchy topウイルス、種:coconut foliar decayウイルス、種:subterranean クローバー stuntウイルス、
ゲノム:dsDNA、種:キュウリ vein yellowingウイルス;ゲノム:dsRNA、種:タバコ矮化ウイルス、
ゲノム:ssRNA、種:GarlicウイルスA、B、C、D、種:grapevine fleckウイルス、種:トウモロコシ white line モザイクウイルス、種:olive latent virus 2、種:ourmia メロンウイルス、種:Pelargonium zonate spotウイルス;
Satellites及びViroids:Satellites:ssRNA Satelliteウイルス:サブグループ2 Satelliteウイルス、基準種:タバコnecrosis satellite、
Satellite RNA、サブグループ2 B型mRNA Satellites、サブグループ3 C型線状RNA Satellites、サブグループ4 D型環状RNA Satellites、
Viroids、基準種:ジャガイモspindle tuber viroid。
【0035】
大部分は、植物ウイルス起源のベクターは、植物において自律複製可能なプラスミド(レプリコン)として本発明に用いられる。しかしながら、非ウイルス配列を用いるそのようなプラスミドの操作に必要な原理は公知である。例えば、植物細胞に由来する多くの推定複製起点が記載されている(Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11、161−162;Hernandesら、1988、Plant Mol.Biol.、10、413−422;Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11、173−182;Eckdahlら、1989、Plant Mol.Biol.、12、507−516)。高等植物ゲノム由来の自律複製配列(ARS配列)は、酵母及び高等動物のARS配列と共通した構造的特長及び配列的特徴を有することが示されている(Eckdahlら、1989、Plant Mol.Biol.、12、507−516)。植物ARS配列はサッカロミセス・セレビジエ中のプラスミドに自律複製能を付与可能である。酵母においてプラスミドの自律複製を促進可能なトウモロコシの核DNA配列の研究により、トウモロコシゲノム内に2つのファミリーの高度反復配列を表すことが示された。それらの配列は特徴的なゲノムハイブリダイゼーションパターンを有する。典型的には、それぞれの12〜15kbのゲノム断片上にARS相同配列のコピーがたった1つ存在した(Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11:161−162)。植物起源のレプリコンの他の供給源は、植物において異種遺伝子の増幅及び発現を刺激することができる植物リボソームDNAスペーサー配列である(Borisjukら、2000、Nature Biotech.、18、1303−1306)。高率増幅による所望の効果は、強力なプロモーターを用いることによっ達成することもできる。そのようなプロモーターは高コピー数の目的転写物を提供することができ、複製ベクターに類似の最終結果を生ずる。
【0036】
したがって、本発明で意図するレプリコン又は前駆体ベクターは必ずしも植物ウイルスに由来する必要はない。植物DNAウイルスは、標的DNAの形質転換に特に有用なレプリコン(ベクター)を操作する容易な方法を提供するが、植物RNAウイルス又は非植物ウイルスであっても、全体的に又は部分的にこれに由来する配列で作製されるベクターは可能である。植物ウイルスに基づいたレプリコンは明らかに有益である。そのようなレプリコンは、複製に加えて、例えば細胞間移行及び長距離移行のための更なる有用な機能を提供することができる。更に、それらは、感染植物からウイルスを根絶するための公知の方法を用いることによって、しばしば植物細胞から帰納的により容易に除去することができる。
【0037】
本発明では、ウイルスベクターの特定部分の部位特異的組換え(反転)によって活性化することができるウイルスレプリコンを用いることが好ましい(図3、図9及び図11を参照されたい)。これらのレプリコンはDNAウイルス(BGMV、WDV)及びRNAウイルス(TMV)に基づくことができる。部位特異的組換えによるDNAウイルスベクターの再構築は、ウイルスDNAの複製開始に十分であることは図面から明らかである。TMVに基づくベクターの場合、DNAの再構築のみでは複製開始に通常十分でないため、状況が異なる。そのようなRNAレプリコンの増幅を誘発するためには転写が必要とされる。転写を駆動する構成的プロモーター(図11を参照されたい)は誘導性プロモーター又は種子特異的プロモーターに置換し得るため、こうした必要性は、RNAに基づいたアンプリコンの発現のために更なる制御工程の使用を可能にし、、増幅の空間的及び一時的制限方法を厳重に制御し、より柔軟性を与える。
【0038】
発明を効率的に実施するには、可能な最高収率を提供する最良の可能な組み合わせを見出すために、それぞれのウイルスレプリコンのタイプについて種子特異的プロモーターの多くの異なる組み合わせを解析することが好ましい。
【0039】
本発明の重要な要素は、ハイブリッド種子が子孫を作れないということである。即ち、例えば稔性植物への発育が不可能であることにより、種子は不稔であることが好ましい。多くの場合、ウイルスベクターの複製はこの所望の効果を提供し、したがって更なる種子の発育を損なうことが期待される。しかしながら、目的産物を提供するベクターの複製十分でない場合、所望の効果を達成するために追加の技術を適用することができる。実施例5には、ハイブリッド種子においてインテイン介在性トランススプライシングによってくみ立てられる細胞毒性遺伝子(バルナーゼ)の使用について記載されている。インテインが融合したバルナーゼ断片は異なる親植物中に局在し、異なる発生学的に調節されたプロモーターの制御下にあることができる。断片はともにハイブリダイゼーションによってもたらされ、インテイン介在性トランススプライシングの結果として細胞毒性産物を形成することができる。異なるが部分的に重複する発現パターンを有する異なるプロモーターの使用により、バルナーゼ活性を、バルナーゼ断片の発現をともに駆動する同一の組織特異的プロモーターを用いるよりも、必要とする組織に正確な方法で制限することができる。シロイヌナズナ遺伝子STMの茎頂分裂組織特異的プロモーター(Longら、1996、Nature、379、66−69)とシロイヌナズナ遺伝子ATHB5の発芽特異的プロモーター(Johannessonら、2003、Plant Mol.Biol.、51、719−729)を実施例5で使用し、2つのバルナーゼ断片の発現を駆動させた(図15を参照されたい)。これらのプロモーターは、活性が発芽種子の頂端分裂組織に重複するため、好適なバルナーゼ活性パターンを提供する。多くの他の発生学的に調節されたプロモーター及び組織特異的プロモーターを本態様の実施に用いることができるため、本発明はこれら2つのプロモーターの使用に限定されない。本態様に有用なプロモーターの例としては、光合成の活性な組織で発現されるシロイヌナズナHBP−1a遺伝子のプロモーター(Mikamiら、1995、Mol.Gen.Genet.、248、573−582)、種子特異的napin遺伝子プロモーター(Ellerstromら、1996、Plant Mol.Biol.、32、1019−1027)、発生学的に調節されたrbcS遺伝子のプロモーター(Manzaraら、1991、Plant Cell、3、1305−1316)、などが挙げられる。
【0040】
実施例では、主に植物細胞におけるアグロバクテリウム介在T−DNA送達を使用し、T−DNAは第1及び/又は第2の部分的遺伝子供与物をベクターとして含有する。植物細胞にベクターを送達するために、微粒子銃、エレクトロポーレーション又はプロトプラストのPEG介在形質転換による細胞へのベクターの直接導入のような異なる方法を用いてもよい。アグロバクテリウム介在植物形質転換が好ましい。したがって、アグロバクテリウムによって運搬されるTi−プラスミドベクター(US5,591,616号;US4,940,838号;US5,464,763号)、粒子又は微粒子銃(US05100792号;EP00444882B1号;EP00434616B1号)などのさまざまな好適な技術によってDNAで植物細胞を形質転換することができる。原理上、例えばマイクロインジェクション(WO09209696号;WO09400583A1号;EP175966B1号)、エレクトロポーレーション(EP00564595B1号;EP00290395B1号;WO08706614A1号)などの他の植物形質転換法を用いることもできる。形質転換法の選択は、形質転換すべき植物種に依存する。例えば、単子葉植物の形質転換には微粒子銃が好ましく、双子葉植物には通常アグロバクテリウム介在形質転換がより良い結果与えることができる。
【0041】
本発明は、高等多細胞植物を用いて実施することが好ましい。本発明での使用に好ましい植物には、農学的及び園芸学的に重要な種に関連した植物種が含まれる。本発明に使用するための一般的な作物には、アルファルファ、オオ麦、インゲン豆、カノーラ、ササゲ、綿、トウモロコシ、クローバー、ハス、レンズ豆、ルピナス、キビ、オート麦、エンドウ豆、落花生、米、ライ麦、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、大豆、sorghum triticale、クズイモ、ハッショウ豆、ソラ豆、コムギ、フジ、及びnut plantsが含まれる。本発明を実施するのに好ましい植物種には、限定されるものではないが、イネ科、キク科、ナス科及びバラ科の代表的なものが挙げられる。
【0042】
本発明での使用に更に好ましい種は、以下の属に由来する植物である:シロイヌナズナ、Agrostis、ネギ、キンギョソウ、オランダミツバ、ナンキンマメ、アスパラガス、ロウトウ、カラスムギ、ホウライチク、アブラナ、Bromus、Browaalia、ツバキ、アサ、トウガラシ、ヒヨコマメ、ケノポジ、Chichorium、カンキツ、Coffea、ジュズダマ、キュウリ、Curcubita、Cynodon、Dactylis、チョウセンアサガオ、ウリミバエ、ジギタリス、Dioscorea、アブラヤシ、オオシバ、フェスキュ、イチゴ、フクロウソウ、ダイズ、ヒマワリ、Heterocallis、パラゴムノキ、オオムギ、ヒヨス、サツマイモ、レタス、Lens、ユリ、アマ、ライグラス、ハス、Lycopersicon、マヨラナ、リンゴ、マンゴー、イモノキ、ウマゴヤシ、Nemesia、タバコ、Onobrychis、イネ、キビ、テンジクアオイ、チカラシバ、ツクバネアサガオ、エンドウ、インゲン、Phleum、イチゴツナギ、サクラ、キンポウゲ、ラディッシュ、スグリ、トウゴマ、キイチゴ、サトウキビ、Salpiglossis、Secale、セネシオ、セタリア、Sinapis、ナス、ソルガム、Stenotaphrum、カカオ、ジャジクソウ、Trigonella、コムギ、ソラマメ、ササゲ、ブドウ、トウモロコシ、及びOlyreae、Pharoideae並びにその他多くのもの。
【0043】
好ましいのは、ハイブリッド種子産生システムが存在する植物である。第1及び第2の親植物のハイブリッドである種子を高率で産生するためには、これらのシステムを、本発明とともに使用することが好ましい。最も好ましいのは、トウモロコシ、コムギ、チカラシバ、ダイズ、ナタネ種子、カノーラ、タバコ、及びコメである。
【0044】
本発明を用いてセンス方向又はアンチセンス方向に発現させることができる目的タンパク質、又はその断片には以下が含まれる:デンプン修飾酵素(デンプン合成酵素、デンプンリン酸化酵素、脱分岐酵素、デンプン分岐酵素、デンプン分岐酵素II、顆粒結合性デンプン合成酵素)、ショ糖リン酸合成酵素、ショ糖ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、polyfructanスクラーゼ、ADPグルコース ピロホスフォリラーゼ、シクロデキストリン グリコシルトランスフェラーゼ、フルクトシル トランスフェラーゼ、グリコーゲン合成酵素、ペクチン エステラーゼ、アプロチニン、アビジン、細菌レバンスクラーゼ、大腸菌glgAタンパク質、MAPK4及び相同分子種、窒素同化/代謝酵素、グルタミン合成酵素、植物オスモチン、2Sアルブミン、タウマチン、部位特異的リコンビナーゼ/インテグラーゼ(FLP、Cre、Rリコンビナーゼ、Int、SSVIインテグラーゼR、インテグラーゼphiC31、又はその活性断片又は変異体)、イソペンテニル トランスフェラーゼ、Sca M5(ダイズ カルモジュリン)、甲虫型毒素又は殺虫活性断片、ユビキチン結合酵素(E2)融合タンパク質、脂質、アミノ酸、糖、核酸及び多糖類を代謝する酵素、スーパオキシド・ジスムターゼ、不活性なプロ酵素型プロテアーゼ、植物タンパク質毒素、繊維産生植物における形質変更繊維(traits altering fiber)、バチルス・チューリンゲンシス由来の甲虫活性毒素(Bt2毒素、殺虫性結晶タンパク質(ICP)、CryIC毒素、δエンドトキシン、ポリオペプチド毒素、プロトキシンなど)、昆虫特異的毒素AaIT、セルロース分解酵素、acidothermus celluloticus由来のE1セルラーゼ、リグニン修飾酵素、シナモイル アルコールデヒドロゲナーゼ、トレハロース−6−リン酸合成酵素、サイトカイニン代謝経路の酵素、HMG−CoA レダクターゼ、大腸菌無機ピロホスファターゼ、種子貯蔵タンパク質、エルウィニア herbicola リコピン合成酵素、ACCオキシダーゼ、pTOM36にコードされるタンパク質、フィターゼ、ketohydrolase、アセトアセチル CoA レダクターゼ、PHB(ポリヒドロキシブタノエート)合成酵素、アシルキャリアータンパク質、napin、FA9、非高等植物フィトエン合成酵素、pTOM5にコードされるタンパク質、ETR(エチレン受容体)、色素体ピルビン酸 リン酸 ジキナーゼ、線虫誘導性膜貫通ポアタンパク質、trait enhancing 光合成 or 植物細胞のプラスチド機能、スチルベン合成酵素、フェノールをヒドロキシル化可能な酵素、カテコール ジオキシゲナーゼ、カテコール 2,3−ジオキシゲナーゼ、chloromuconate シクロイソメラーゼ、アントラニル酸合成酵素、アブラナAGL15タンパク質、フルクトース 1,6−ビホスファターゼ(FBPアーゼ)、AMV RNA3、PVYレプリカーゼ、PLRVレプリカーゼ、ポチウイルスコートタンパク質、CMVコートタンパク質、TMVコートタンパク質、luteovirus レプリカーゼ、MDMVメッセンジャーRNA、変異ジェミニウイルス レプリカーゼ、ウンベルラリア californica C12:0 preferring アシル−ACPチオエステラーゼ、植物C10又はC12:0 preferring アシル−ACPチオエステラーゼ、C14:0 preferring アシル−ACPチオエステラーゼ(luxD)、植物合成酵素因子A、植物合成酵素因子B、6−不飽和化酵素、植物細胞における脂肪酸のperoxysomal−oxidationにおいて酵素活性を有するタンパク質、アシル−CoAオキシダーゼ、3−ケトアシル−CoA チオラーゼ、リパーゼ、トウモロコシ アセチル−CoA−カルボキシラーゼ、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSP)、phosphinothricin アセチルトランスフェラーゼ(BAR、PAT)、CP4タンパク質、ACCデアミナーゼ、リボザイム、翻訳後切断部位を有するタンパク質、Gal4転写アクチベーターのDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインから成るタンパク質融合物、オレオシンタンパク質と融合タンパク質を脂質相に標的化可能な目的タンパク質との翻訳融合物、スルホンアミド耐性を付与するDHPS遺伝子、細菌ニトリラーゼ、2,4−D モノオキシゲナーゼ、アセトラクテート合成酵素又はアセトヒドロキシ酸合成酵素(ALS、AHAS)、ポリガラクツロナーゼ、細菌ニトリラーゼ、プラスチドの内側エンベロープ膜にある成熟リン酸輸送体タンパク質のアミノ末端疎水性領域と前記膜に標的化された目的タンパク質との融合物など。
【0045】
ヒト又は動物のいかなるタンパク質も、特に本発明のシステムを用いたハイブリッド種子において発現させることができる。そのような目的タンパク質の例としては、とりわけ、以下のタンパク質(薬用タンパク質)が挙げられる:免疫応答タンパク質(モノクローナル抗体、1本鎖抗体、T細胞受容体など)、抗原、コロニー刺激因子、レラキシン、ポリペプチドホルモン、サイトカイン及びその受容体、インターフェロン、成長因子及び凝固因子、酵素的に活性なリソソーム酵素、線維素溶解ポリペプチド、血液凝固因子、トリプシノーゲン、1−アンチトリプシン(AAT)、並びに上記タンパク質の融合体、変異体型及び合成誘導体のような機能保存的タンパク質。
【0046】
本発明の方法は、トランスジェニックコード配列の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を抑制するために、PTGSサプレッサータンパク質又はその機能保存的変異体若しくは断片をコードする遺伝子を植物において発現させることを更に含むことができる。PTGSサプレッサータンパク質遺伝子又はその機能保存的変異体若しくは断片を、トランスジェニックコード配列を有する同一ベクター上で又は余分のベクター上で植物に提供することができる。PTGSサプレッサータンパク質は、ウイルス又は植物起源であることが好ましい。PTGSサプレッサータンパク質の例は、ジャガイモウイルスX p25タンパク質、アフリカ キャッサバモザイクウイルス AC2タンパク質、コメ yellow mottleウイルスP1タンパク質、トマトbushy stuntウイルス 19Kタンパク質、rgs CAM、又はこれらのタンパク質のうちの1つの機能保存的変異体若しくは断片である。機能保存的変異体又は断片は、上記タンパク質の1つに対し、75%の配列同一性を有することが好ましく、好ましくは少なくとも75%同一である。PTGSサプレッサータンパク質及びその使用に関する詳細は、WO0138512号に見出すことができる。
【実施例1】
【0047】
BGMVベクター
GFPを有するジェミニウイルス複製ベクターのクローニング
pUC19 DNAを、dnaapr7プライマー(aac tgc agt cta gac tgg ccg tcg ttt tac aac)及びdnaapr8プライマー(aac tgc aga aca att gct cga ggc gta atc atg gtc a)を用いて増幅し、増幅断片をPstIで消化し、再連結した。得られたプラスミドpICH1144は、pUC19に類似するが、ポリリンカーがXhoI、MfeI、及びPstIで置換されている。ドイツ微生物・培養細胞コレクション(DSMZ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から入手したインゲンgolden モザイクウイルス(BGMV)単離物DSMZ PV−0094を感染させたインゲンマメ組織から、DNAを抽出した。BGMV共通領域を包含するゲノムの断片(CR;BGMVの複製起点を含有)を、dnaapr3プライマー(ggg aat tca cta gta aag atc tgc cgt cga ctt gga att g)及びdnaapr4プライマー(caa tgc atc atg gcg cat cac gct tag g)を用いてPCRで増幅し、MfeI及びPstIで消化したpICH1144中にEcoRI−NsiI断片としてクローニングし、プラスミドpICH1156を得る。pICH1156中のBGMV挿入物を配列決定した。他の2つのBGMV DNAAゲノム断片を、BGMVを感染させたインゲンマメDNAから、dnaapr9プライマー(aag ctg cag aag gat cct ctg gac tta cac gtg gaa tgg)/dnaapr13プライマー(cgc tcg agg ccg tcg act tgg aat tgt c)ペア、及びdnaapr5プライマー(gaa gat ctg caa gag gag gtc agc a)/dnaapr10プライマー(aag ctg cag atc tat ttc tat gat tcg ata acc)ペアを用いて増幅させた。これらの断片の合計は、コートタンパク質のない完全長BGMVゲノムになる。これらの断片をそれぞれXhoI/PstI及びPstI/BglIIで消化し、XhoI及びBglIIで消化したpICH1156に、3通りの連結法でクローニングした。得られたプラスミドは、重複したBGMV DNAA共通領域に隣接するコートタンパク質遺伝子のない1つの完全長BGMV DNAAゲノムを含有する。試験のために3つのクローン:pICH1663、1664及び1667を保存した。コートタンパク質遺伝子がBamHI及びPstIを含有するマルチクローニング部位に置換されている。pIC011(pUC18内にHbtプロモーター−合成GFPコード配列−Nosターミネーター)由来の合成GFP(SGFP)コード配列を、pICH1663、pICH1664及びpICH1667のBamHI−PstI部位にBamHI−PstI断片としてクローニングし、プラスミドpICH1693、pICH1694及びpICH1697を得る。GFPをコートタンパク質プロモーターの制御下に置く。クローンpICH1693、pICH1694及びpICH1697の機能性に関して試験するために、ベンサミアナタバコ及びインゲンマメの切除葉に、Biolistic粒子送達システム1000/HE(バイオラッド)を用いて照射した。翌日、3つの構築体全てに関し、両方の種の葉においてGFP発現上皮細胞が検出されるであろう。
【0048】
バイナリーベクターでのクローニング
pICH1694のXhoI−NarI断片を、XhoI及びClaIで消化したpICBV11にサブクローニングすることによって、pICH1694のプロレプリコン部分を含有するバイナリーベクターを作製した。得られたクローンpICH4300(図2)は、BGMVコートタンパク質プロモーターの制御下にあるGFP遺伝子、及び重複CR間にAI1/2/3遺伝子を含有する。
【0049】
「反転した」ジェミニウイルスプロベクターのクローニング
pICH7300はpICH4300に類似するが、いくつかの制限酵素部位(SalI、NcoI、MfeI、及びBglII)が、制限部位が重複する変異プライマーを用いたPCRで除去されている。レプリカーゼの部分と共通領域うちの1つを含有する断片の転置によって複製不可能なクローンpICH1500(図3)を作製するための開始点としてpICH7300を用いた。AttP及びAttB組換え部位を転置の先端に置き、インテグラーゼを提供することによって転置領域の反転を可能にし、それにより機能性ベクターを得る。AttB及びAttB部位は人工イントロン配列に隣接しており、インテグラーゼ介在性組換えによって生ずるAttR配列の、Al1転写物からのスプライシングを可能にする。
【0050】
ジェミニウイルスを複製するために胚の適格性を試験する:
pICH4300プラスミドDNAを一連の植物組織に照射した。インゲンマメの葉、成熟種子、水分補給したマメの子葉及び発芽苗、並びに未成熟胚において明るい蛍光細胞が検出されるであろう。GFP蛍光によってアッセイしたように、胚発育期の全てにおいてジェミニウイルスの複製を起こしやすいわけではない。長さ4〜5mmまでの子葉がある小さな白い胚にはGFP発現細胞がなかった。逆に、より緑色したより大きな子葉はジェミニウイルスの複製に非常に適していた。
【0051】
タバコ、ベンサミアナタバコ、シロイヌナズナ、Orychophragmus violaces及びマングビーンを含めた他の種も、少なくとも葉において、ジェミニウイルスの複製を起こしやすかった。
【0052】
PhiC31インテグラーゼクローンのクローニング
pICP1010は、シロイヌナズナ アクチン2プロモーター(プロモーター、第1エクソン、第1イントロン、及びアクチン2遺伝子の第1エクソンの10ヌクレオチドを含有する1344ヌクレオチド断片)に融合したストレプトミセスファージC31インテグラーゼ(from David Ow、植物遺伝子発現センター、US Department of Agriculture−Agricultural Research Service、Albany、CA94710、USA)を含有するバイナリーベクターである。核へのインテグラーゼの輸送を増加させるために、SV40 T抗原由来の核局在シグナル(Pro−Lys−Lys−Lys−Arg−Lys−Val、Andreasら、2002、Nucleic Acids Res.、30、2299−2306)を、PhiC31インテグラーゼのC末端に融合させた。c31pr1プライマー(gca cgc cga agg cga cga ag)及びNLS配列(31nls1:gga tcc taa acc ttc ctc ttc ttc tta ggc gcc gct acg tct tcc gtg)を含有する伸長部を含有するPCRプライマーを用いたpICP1010からのPCR増幅によってNLS配列をインテグラーゼ配列に付加し、BspEI−BamHI断片としてpICP1010にサブクローニングし、プラスミドpICH10881(図6)を得る。異なるプロモーターを容易にサブクローニングするために、pICH10881からインテグラーゼ及びNosターミネーターをPstI/ApaI断片としてpICH13901へサブクローニングし、プラスミドpICH13901(示していない)を得た。このベクターは、Nosプロモーター−NptIIコード配列−Nosターミネーター 選択カセット及びポリリンカーKpnI−XhoI−PstI−ApaI−HindIIIを含有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターである。適当な種のゲノムDNAから、遺伝子特異的プライマーを用いていくつかのプロモーターを増幅し、KpnI/XhoI断片としてpICH13901にクローニングした。前記プロモーターを更にEcoRI/XhoI断片としてpIC01にサブクローニングし(図6)、発育種子の微粒子銃を用いてGUSレポーター遺伝子との融合物としてそれらの活性について試験した(示していない)。
【0053】
インテグラーゼPhiC31の発現を駆動するために、Vicia faba由来のUSP遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、AtEm6遺伝子のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシrab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)並びにシロイヌナズナ アクチン2遺伝子及びコメ アクチン1遺伝子の構成的プロモーターを含めたいくつかの単子葉植物及び双子葉植物の種子特異的プロモーターを選択した(それぞれ構築体pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH10881及びpICH14530、図6を参照されたい)。
【0054】
安定な形質転換実験及びハイブリダイゼーション実験
ベンサミアナタバコの葉ディスクを、構築体pICH1500、pICH4550及びpICH4540(インテグラーゼ)で形質転換し、各構築体について独立した形質転換体を得た。pICH1500の10個の形質転換体を、各インテグラーゼ構築体の少なくとも5つの形質転換体と交雑させた。未成熟発育種子を切開し、GFP蛍光を顕微鏡を用いて青色光下で観察した。
【実施例2】
【0055】
WDVベクター
ドイツ微生物・培養細胞コレクション(DSMZ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から入手したコムギdwarfウイルス(WDV)を感染させたコムギ葉サンプルからDNAを抽出した。互いに逆向きでゲノムのユニークEcoRI部位が重複するプライマーを用いて、WDVの完全長ゲノム(ca.2.8kb)をPCRで増幅させた:
FwdvE1 aGAATTCacaccgatgggctc
RewdvE1 tGAATTCtgcacactcccacg
増幅断片をpGEM−Tベクター(プロメガ)にクローニングした。2つのクローンについて塩基配列を決定した。BLAST解析は、増幅配列が、EMBL/Genbankデータベースに存在する完全に配列決定した4つのWDV株(GEWDVXX、WDVGNS、WDW311031、NC 003326)とは著しく異なるが、ハンガリーで単離された部分的に配列決定した(1.2kb)ウイルス(AJ311038;Arch.Virol.147(1):205−216、2002)とは密接に適合することを示した。
【0056】
コートタンパク質遺伝子を除いた完全長ゲノムを増幅するために、得られた配列データに基づいて2つのプライマーを設計した(ttC CAT Gga gtt acc tcg gg agt cct tgt tg 及び ttG CAT GCG GCC Gca aaa tag tat ttt att cat ctc atg tc)。上記感染葉DNAからPCRを行った。
【0057】
PCR増幅産物を、SphI及びNcoIで消化したGFPの変異型(S65TGFP)を含有するpUC19ベクターにSphI−NcoI断片としてクローニングした。得られたクローンpICH10680は、CPをGFPで置換した唯一のWDVゲノムを含有する(図13)。
【0058】
重複LIRを有する完全長ゲノムを2工程でバイナリーベクターにクローニングした。第1に、pICH10680のBamHI−ApaI断片を、BglII及びApaIで消化したバイナリーベクターにサブクローニングした。この中間体クローンは、CPのかわりにGFPを有する部分WDVゲノムを含有するが、PspoMI及びPciIで消化し(Klenowで平滑末端化)、pICH10680のSmaI−NotI断片をクローニングする第2工程に用いた。得られたクローンpICH10830(図7)は、CPをGFPで置換した完全長WDVゲノムを含有し、重複LIRに隣接し、allowing WDV−GFPレプリコンの切り出し及び増幅を可能にする。
【0059】
ジェミニウイルスを複製するために胚の適合性を試験する:
pICH10830をコムギ及びトウモロコシの発育胚に照射した。胚に強力なGFP蛍光を発する細胞が観察されたが、胚乳でも検出されるであろう(図8)。
【0060】
「反転した」WDVプロベクターのクローニング
BGMVベクターに関して記載したのと同一のストラテジーを用いて、「反転した」WDVベクターpICH14520を作製した(図9)。このクローンが複製開始可能になるのは、PhiC31インテグラーゼに曝露して反転させた後のみである。このクローンの機能性を試験するため、トウモロコシの胚に単独で、又はインテグラーゼクローンpICH14530若しくはpICH14560とともに照射した。pICH14520をインテグラーゼとともに照射したときのみGFP蛍光細胞が検出されるであろう。
【0061】
安定な形質転換実験及びハイブリダイゼーション実験
pICH14520及びインテグラーゼクローンをトウモロコシに形質転換した。
両方の構築体から選択した形質転換体を両方向で交雑させ、さまざまな発育期で未成熟種子を切開し、顕微鏡又は携帯UVランプを用いて青色光下で観察した。
【実施例3】
【0062】
CR−TMVベクター
GFPを有するcr−TMV複製ベクターのクローニング:
pICH4351(図10)はcr−TMV、アブラナ感染トバモウイルス(Dorokhovら、1994、FEBS Letters、350、5−8)に基づいたウイルスベクターである。pICH4351は、Cr−TMVの5’非翻訳配列、続いてRdRp及びMPを含有し(Genbank受託番号Z29370のヌクレオチド1〜5629、MPの最後の16アミノ酸を、MP機能を喪失することなく切断し、Z29370中の5605位のTをCに変異させた)、シロイヌナズナ アクチン2プロモーター(787ヌクレオチド断片、転写開始の5’側、Genbank受託番号U41998、Anら、1996、Plant J.、10、107−121)に融合している。MPの後にLoxP部位が続く。この部位は、この構築体の使用に関して機能的に意味がなく、それを構築するために用いたプラスミドにも存在しているために存在している。LoxPの後にはcr−TMV由来のIRES配列(Genbank 受託番号Z29370のヌクレオチド4804〜4873)、及びGFP ORFが続く。GFP発現を増加させるための翻訳エンハンサーとしてIresをこの位置にクローニングした。GFPの後にはcr−TMV 3’非翻訳配列(Genbank 受託番号Z29370のヌクレオチド6083〜6312)、アグロバクテリウム Nosターミネーターが続く。この構築体を、植物でカナマイシン選択するためのカセットを有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターpICBV10にクローニングする(Nosプロモーター−NPTIIコード配列s−Nosターミネーター)。この構築体では、GFPはMPの末端に局在するCPサブゲノムプロモーターから発現される。照射又はagroinfiltrationによる核への送達後、核においてアクチン2プロモーターから作製された第1転写物は、複製が起こる細胞質へ輸送される。
【0063】
「反転した」cr−TMVプロベクターのクローニング
pICH10921はpICH4351から作製したウイルスプロベクターである(図11)。これは、IresからNosターミネーターまで伸びたDNA断片が逆方向に反転して構築体を複製不可能にしているという事実によってpICH4351とは異なっている。この断片の反転を可能にするために、PhiC31のAttP部位(gta gtg ccc caa ctg ggg taa cct ttg agt tct ctc agt tgg ggg cgt aga)及びAttB部位(tcg aag ccg cgg tgc ggg tgc cag ggc gtg ccc ttg ggc tcc ccg ggc gcg tac tcc acc tca ccc atc)を転置の末端にで位置付ける。
【0064】
転置部分の反転が機能性ベクターをもたらすか同化を試験するため、pICH10921でアグロバクテリウム株GV3101を形質転換し、ベンサミアナタバコの葉のagroinfiltrationに用いた。pICH10921を単独で浸潤させたときはGFPスポットは検出されなかったが、pICH10921をpICH10881(インテグラーゼ発現ベクターを含有)で形質転換したアグロバクテリウムとともに共浸潤させたときは非常に多くのGFP複製フォーカスが見られるであろう。
【0065】
安定な形質転換及びハイブリダイゼーション実験
50mg/Lのカナマイシンを形質転換体の選択に用いて、pICH10921、pICH10881、pICH14540及びplCH14550で、ベンサミアナタバコを葉ディスク形質転換によって個別に形質転換した(Horshら、1985、Science、227、1229−1231)。両構築体から選択した形質転換体を両方向で交雑させ、未成熟種子を切開し、顕微鏡を用いて青色光下で観察した。ハイブリッド種子においてGFP発現が検出された。
【実施例4】
【0066】
トランスジェニックトウモロコシ植物の作製
トウモロコシのユビキチンプロモーターの制御下で、ハイグロマイシン ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(HPT)を単子葉植物形質転換のための選択可能マーカーとして用いた(図12)。選択薬剤としてハイグロマイシンBを25〜100mg/lの濃度で適用した。
【0067】
トランスジェニックトウモロコシ植物を作製するために以下の方法を用いた:
A188株、Hill株などの成熟及び未成熟胚からカルス培養を誘導した。培地はChu(N6)塩及びビタミンに基づいている(Chuら、Scientia Sinica、18(5):659−68,1975)。
カルス誘導培地及び繁殖培地には30g/lのショ糖、600mg/lのL−プロリン、2.0mg/lの2,4−D及び0.3%ゲルライトが添加されている。
プレ再生培地は使用しなかった。再生培地は、N6塩及びビタミン、30g/lのショ糖、2mg/lのゼアチン及び0.05mg/lの2,4−Dを含有する。再生培地にはチオ硫酸銀が0.01〜0.06mMの濃度で含まれている。
【0068】
微粒子銃
Biolistic PDS−1000/He粒子送達システム(バイオラッド)を用いて微粒子銃を実施した。細胞を、900〜1100psiで、マクロキャリアー発射点から停止スクリーンまで15mmの距離で、及び停止スクリーンから標的組織まで60mmの距離で照射した。破裂ディスクとマクロキャリアーの発射点との距離は12mmであった。細胞を、4時間の浸透圧前処理後に照射した。
【0069】
DNA−金コーティングを、バイオラッドのオリジナルプロトコール(Sanfordら、1993、Methods in Enzymology、R.Wu編、217、483−509)にしたがって以下のように行なった:25μlの金粉末(0.6、1.0mm)を50%グリセロール(60mg/ml)中で、0.2μg/μlのプラスミドDNA5μl、25μlのCaCl(2.5M)及び10μlの0.1M スペルミジンと混合した。混合物を2分間ボルテックスし、続いて室温で30分間インキュベーションし、遠心(2000rpm、1分)し、70%及び99.5%のエタノールで洗浄した。最後に、沈殿を30μlの99.5%エタノール(6μl/ショット)に再懸濁した。
【0070】
新規のDNA−金コーティング法(PEG/Mg)を以下のように行った:25μlの金懸濁液(50%グリセロル中に60mg/ml)をエッペンドルフチューブ中で5μlのプラスミドDNAと混合し、次に30μlの40%PEG(1.0M MgCl中)を添加する。混合物を2分間ボルテックスし、室温で30分間、混合せずにインキュベートした。遠心(2000rpm、1分)後、沈殿を1mlの70%エタノールで2回、1mlの99.5%エタノールで1回洗浄し、最後に30μlの99.5%エタノール中に分散させた。DNA−金 エタノール懸濁液のアリコート(6μl)をマクロキャリアーディスクにロードし、5〜10分間乾燥した。
【0071】
プラスミドDNAの調製
プラスミドで大腸菌株DH10Bを形質転換し、LB培地中でmaxi prepを増殖させ、キアゲンキットを用いてDNAを精製した。
【0072】
選択
安定な形質転換実験のために、処置細胞を有するフィルターを、ろ過滅菌した適当な選択薬剤(150mg/L ハイグロマイシンB(Duchefa))、3%ショ糖を有する固形MS2培地上に移して遮光した。7日毎に材料を新鮮な選択培地に移した。プレートを暗所保存し、およそ6週間後、植物材料を再生培地及び適当な選択薬剤(150mg/L ハイグロマイシンB)の入ったペトリ皿に移した。ペトリ皿を強い光度でインキュベートした。日照時間16時間。
【実施例5】
【0073】
ハイブリッド種子の発育を制御するためのバルナーゼに基づいたシステム
バルナーゼ遺伝子を、Synechocystis種PCC6803 DnaB インテインを用いて分割した。適当な制限部位に隣接したバルナーゼのN端部分及びC端部分のDNA断片を営利なDNA合成会社で化学的に合成した。
【0074】
N末端の配列は以下の通りである:
5’gcaatcgatg gcacaggtta tcaacacgtt tgacggggtt gcggattatc ttcagacata tcataagcta cctgataatt acattacaaa atcagaagca caagccctcg gctgggacgt ccgc 3’。
【0075】
C末端の配列は以下の通りである:
5’cgccatgggg tggcatcaaa agggaacctt gcagacgtcg ctccggggaa aagcatcggc ggagacatct tctcaaacag ggaaggcaaa ctcccgggca aaagcggacg aacatggcgt gaagcggata ttaactatac atcaggcttc agaaattcag accggattct ttactcaagc gactggctga tttacaaaac aacggaccat tatcagacct ttacaaaaat cagataagga tccgc 3’。
【0076】
バルナーゼのN末端をDnaBインテインのN端部分に融合させた。DnaBインテイン−N断片をSynechocystis DNAから、DnaBintNpr1プライマー(5’gtAAGCTTGA CGTcagagag agtggatgca tcagtggaga tag3’)及びDnaBintNpr2プライマー(5’caCTGCAGct ataattgtaa agaggagctt tctag3’)を用いて増幅した。バルナーゼ断片(ClaI/AatII断片)及びインテイン断片(AatII/PstI断片)をアイコン・ジェネティクス バイナリーベクターにクローングし、pICH12794クローンを得た(図14)。
【0077】
バルナーゼのC末端をDnaBインテインのC端部分に融合させた。DnaBインテイン−C断片を、Synechocystis DNAから、dnaBintCpr1プライマー(gt GAG CTC G ATC GAT TCA TGA gcc cag aaa tag aaa agt tgt ctc)及びdnaBintCpr2プライマー(tc AAG CTT CCA TGG tct tgc tct tca ctg tta tgg aca atg atg tca t)を用いて増幅した。インテイン断片(SacI/NcoI断片)及びバルナーゼ断片(NcoI/BamHI断片)をアイコン・ジェネティクスバイナリーベクターにクローニングし、クローンpICH12820を得た(図14)。
【0078】
ベンサミアナタバコの葉のagroinfiltrationによって、N端及びC端 バルナーゼ−インテイン融合クローンの機能性を試験した。予想通り、両構築体をともに浸潤させた葉領域は壊死したが、いずれかの構築体を単独で浸潤させた領域は健常のままであった。
【0079】
PICH12794及びpICH12820をpICBV16にサブクローニングした。これは植物形質転換体をカナマイシンで選択するためのNptIIカセットを有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターである。得られたプラスミドはpICH14780及びplCH14770である(図14)。
【0080】
シロイヌナズナ遺伝子STMの茎頂分裂組織特異的プロモーター(Longら、1996、Nature、379、66−69)を、STMfwdプライマー(cg caattg gtggcaagaggtctaccatct)及びSTMrevプライマー(gc gagctcttctctttctctcactagtatt)を用いてシロイヌナズナゲノムDNAから増幅し、MfeI/SacI断片としてpICH14770及びpICH14780(EcoRI SacIで消化)にサブクローニングし、プラスミドpICH14790及びpICH14800を得た(図15)。2つのプラスミドのプロモーター領域を配列決定した。pICH14790及びpICH14800は、STMプロモーターの制御下にあるC末端及びN末端バルナーゼ−インテイン融合体から成る。
【0081】
シロイヌナズナ遺伝子ATHB5の発芽特異的プロモーター(Johannessonら、2003、Plant Mol.Biol.、51、719−729)を、ATHB5Fwdプライマー(cg gaatt ccagctcatcaaccaaactctgt)及びATHB5revプライマー(gc gagctctttgctctgtgtctagactatcc)を用いてシロイヌナズナゲノムDNAから増幅し、EcoRI/SacI断片としてpICH14770にサブクローニングし、プラスミドpICH14810を得た(図15)。pICH14810から増幅した断片を配列決定し、EcoRI/SacI断片としてpICH14780にサブクローニングし、pICH14820を得た(図15)。pICH14810及びpICH14820は、発芽特異的プロモーターの制御下にある5’及び3’バルナーゼ−インテイン融合体から成る。
【0082】
4つのプラスミド全てをアグロバクテリウム株GV3101に導入し、シロイヌナズナの形質転換に用いた。全てのトランスジェニック植物は表現型が正常である。トランスジェニック植物を、同一のプロモーター又は異なるプロモーターを有する相補的バルナーゼ構築体を含有する植物と交雑させた。異なるプロモーターの使用により、バルナーゼ活性を用いたプロモーターの重複領域まで制限することが可能である。F1種子を乾燥させて種を蒔いた後に収穫した。これらは発芽したが、成長点の欠失により拘束された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】図1は、ハイブリッド種子(本発明のF1種子)において目的産物を高収率で産生する本発明の方法の一般的スキームを示す。図1A−本発明の一般的原理。第1親植物株Aを第2親植物株BとハイブリダイズさせてF1種子を産生する。親株の種子は目的産物を産生しないが、生育可能である。F1種子では遺伝子供与が生じ、目的産物の産生を可能にする。この場合はその蛍光によって観察されるGFPである(写真中の光の点)。場合により目的産物をコードするウイルスベクターの強力な複製と組み合わせた、目的産物の強力な発現の結果、F1種子は生育不可能である。
【図1B】図1は、ハイブリッド種子(本発明のF1種子)において目的産物を高収率で産生する本発明の方法の一般的スキームを示す。図1B−植物発育期(フレーム内)。精細胞と雌性配偶体とのハイブリダイゼーション後、目的産物(左の囲み)を発現する種子(F1種子)が産生される。F1種子からの植物の発育はブロックされている。右の囲みは、F1種子が稔性植物に生長できないことを示す。
【図2】図2は、プラスミドpICH4300のT−DNA領域、及びハイブリッド種子におけるBGMV(Bean Golden モザイクウイルス)に基づいたDNAレプリコンの形成を示すスキームである(実施例1を参照されたい)。
【図3】図3は、プラスミドpICH1500のT−DNA領域、及びインテグラーゼ活性の存在下におけるDNAレプリコンの形成を示すスキームである(実施例1を参照されたい)。pICH1500の遺伝要素は、第1の部分的遺伝子供与によって種子に提供することができる。インテグラーゼPhiC31はコードされ、第2の部分的遺伝子供与によって種子に提供されることができる。
【図4】図4は、プラスミドpICH5184を照射した、インゲンマメの未成熟胚(A、左の大きな写真)、及びマングビーン Vigna radiataの発芽種子からの子葉(B、右の小さな写真)を示す。GFPを目的産物として発現するマメの胚が円で囲まれている。
【図5】図5は、pICH5184ベクターを照射したマングビーンの発芽種子の苗条を日光下(左)及びUV光下(右)で示す。
【図6】図6は、構築体pICH10881、pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH14530、及び構築体pIC01のT−DNA領域のスキームを示す。
【図7】図7は、プラスミドpICH10830のT−DNA領域、及びWDV(コムギDwarfウイルス)に基づいたDNAレプリコンの形成のスキームを示す(実施例2を参照されたい)。
【図8】図8は、コムギ胚(A)及びトウモロコシ種子組織(B)においてコムギdwarfウイルス(WDV)−GFP発現カセットを含有するプラスミドpIH10830を照射し、形質転換後4日の結果を示す。
【図9】図9は、プラスミドpICH14520のT−DNA領域、及びインテグラーゼPhiC31活性の存在下におけるレプリコン形成のスキームを示す。LIR及びSIRはコムギdwarfウイルスの長い及び短い遺伝子間領域である;MP−移行タンパク質;Rep−ウイルスレプリカーゼ;RepA−ウイルスレプリカーゼA。
【図10】図10は、プラスミドpICH4351のT−DNA領域及びRNAレプリコンの形成を示す。GFPに隣接するグレーのドット領域はIRES(配列内リボソーム進入部位)配列を示す。
【図11】図11は、プラスミドpICH10921のT−DNA領域、及びインテグラーゼPhiC31活性の存在下におけるRNAレプリコンの形成を示す。
【図12】図12はプラスミドpICH1600の略図を示す。
【図13】図13は構築体pICH10680の略図を示す。
【図14】図14は、構築体pICH12784、pICH12820、pICH14780及びpICH14770の略図を示す。
【図15】図15は、構築体pICH14800、pICH14790、pICH14820及びpICH14810の略図を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド種子(F1種子)における高収率で安全な目的産物の産生方法に関する。また、本発明は、それにより産生される種子及び前記種子から単離される目的産物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の最近の遺伝子工学的方法における主な問題は、以下のように要約することができる:
1. 通常、目的産物の収率が低い。例は薬用タンパク質、酵素、他のタンパク質、ポリマー、糖、多糖類などである。低収率とは、精製/後処理費用が高いことを意味する。
2. 遺伝子改変植物と非トランスジェニック亜種又は野生型相対物との自由な交雑、及び収穫後の農場における「自生」植物の存在による遺伝子汚染。植物は自己複製生物であるため、又はヒトの過ち若しくは故意の行動のため、そのようなイベントは自然発生的に容易に起こる。
【0003】
2つの問題は同一問題の全く反対の側面である:低収率は、通常、完全な発育及び生殖サイクルを経由する能力も同時に保持する産生体である植物を構築したいという欲求の結果である。発育及び生殖の工程と導入遺伝子発現工程との組み合わせは解決策を与えない。誘導性システム(US05187287号;US05847102号;Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.、90.4567−4571;Aoyama&Chua、1997、Plant J.、11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.、14、247−257;US06063985号;Caddickら、1997、Nature Biotech.、16、177−180;WO09321334号;Weinmannら、1994、Plant J.、5、559−569)も器官特異的導入遺伝子発現システム(US05955361号;WO09828431号;De Jaegerら、2002、Nature Biotech.、20、1265−1268)も遺伝子汚染の問題に対する解決策を提供せず、高収率の目的産物も提供しない。上記システムに用いる誘導性プロモーター及び組織特異的プロモーターは全て、例えば「漏出性」の定常活性を有し、これは発生の過程で導入遺伝子サイレンシングを引き起こし、必然的に目的産物の収率が減少する。更に、そのような誘導性システムの制御下にある組換え遺伝子を有するトランスジェニック植物は、例えば組換え生物医薬品を産生する場合に、厳格な生物安全性の基準を満たさないため、収率が唯一の問題ではない。
【0004】
植物ウイルス配列に基づいた増幅ベクターの使用は、上記問題、特にそのようなベクターを一過性の発現に用いた場合の部分的解決策を潜在的に提供することができる(US5491076号;US5977438号;US5316931号;US5589367号;US5866785号;WO0229068号)。しかしながら、一過性発現実験用ベクターの多くは、選択された植物種、大部分はタバコ科のために開発されている(US5466788号;US5670353号;US5866785号;WO02088369号)。目的の組換えタンパク質/RNAを産生するためのウイルスベクターの効率性は、効率的な細胞間移行及び全体移行の能力によっても決定される。後者のパラメータは、種及び亜種依存的であり、したがって、一過性発現のために宿主を選択する自由を厳しく制限する。この問題の潜在的解決策は、染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスベクターを有するトランスジェニック植物を設計することである。形質移入又は植物染色体DNAへの安定な組み込みを介して外来配列を植物で発現させるために設計されたウイルスベクターの使用について多くの総説に記載されている(Stanley,J.1993、Curr Opin Genet Dev.、3、91−96;Schlesinger,S.1995、Mol Biotechnol.、3、155−165;Porta,C.&Lomonossoff,G.2002、Biotechnol.&Genet.Eng.Rev.、19、245−291;Awramら、2002、Adv Virus Res.、58、81−124)。しかしながら、染色体DNAに安定に組み込まれたアンプリコンベクターを有するトランスジェニック植物を設計する試みは、通常、導入遺伝子サイレンシングの問題に直面し、このアプローチを役に立たないものにしている。最良の場合、GUS遺伝子及びNPT遺伝子に関してHayesと同僚によって80年代後半に示されたように、強力な構成的プロモーターによって提供されるよりもわずかに高い収率を提供する(Hayesら、1989、Nucl.Acids Res.、17.2391−2403)。それ以来、ウイルスレプリコンに基づいたトランスジェニック植物における高収率で生物学的に安全な組換えタンパク質の産生を達成する上で特筆すべき突破口は無かった。
【0005】
ハイブリッド植物が転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)のサプレッサーを提供する、ハイブリッド植物のアンプリコンに関するMalloryと同僚の研究(2002、Nature Biotechnol.、20、622−625)は、問題の部分的解決策を与える。しかしながら、このアプローチは目的産物の収率が高くなく、正常な植物の発育とは両立しなかった。更に、バイオセイフティ問題に対処していなかった。Goodingと同僚(1999、Nucleic Acids Res.、27、1709−1718)は、科学的研究で単離コムギ胚におけるジェミニウイルスベクターの複製について報告している。可能な技術応用に取り組んでいなかった。更に、この方法は規模を大きくすることができず、したがって、技術応用に使用されていない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、植物産生システムにおいて目的タンパク質のような目的産物を、特に高収率で産生するための新規方法を提供することである。本発明の他の目的は、植物産生システムにおいて目的産物、特に目的タンパク質を産生するための生物学的に安全な方法を提供することであり、この方法に関与するトランスジェニック遺伝物質の環境への分布は厳しく制御され、発生する可能性が低い。本発明の更なる目的は、植物産生システムにおいて目的タンパク質のような目的産物を産生する方法を提供することであり、目的産物の収率又は品質を損なうことなく、植物の生長と目的産物の単離とを空間的且つ時間的に切り離すことができる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概説
これらの目的は、F1種子において目的産物を産生する方法によって達成され、この方法は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによってF1種子を得ることを含み、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生ずる。次に目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔くことができる。
【0008】
更に、本発明は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法を提供し、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1及び第2の親植物では発現せず、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く。
【0009】
更に、本発明は、第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法を提供し、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1及び第2の親植物では発現せず、目的産物は目的タンパク質であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く。
【0010】
更に、上記方法によって産生されるか又は産生可能な種子、及び前記種子から単離される目的産物が提供される。好ましくは、前記種子から生長した植物の有性生殖は損なわれており、より好ましくは前記植物は性的に不稔である。
【0011】
発明者らは、植物種子(F1種子)において目的産物を産生する方法を見出した。前記方法に必要な遺伝子供与は、親植物をハイブリダイズすることによって前記種子で生ずる。即ち、いずれの親植物も前記方法に必要な完全な遺伝子供与物を有していない。目的産物を産生する種子は、目的産物をそこから単離するときに破壊される。その結果として、本発明の方法は、前記方法に必要な遺伝子供与物が環境に分布する可能性が非常に低いため、生物学的安全性が高い。更に、前記種子から生長する植物は生殖できないため、生物学的安全性を更に高めるためにF1種子は不稔であり得る。更に、本発明の方法は、目的産物を産生する上で遺伝子サイレンシングは問題ではないという驚くべき利点を有する。これは、種子における親植物の部分的遺伝子供与物の共存が短いことによるかもしれない。特に、目的産物の産生が基本的に親植物では起こらないため、導入遺伝子サイレンシングを種子に伝達することができない。導入遺伝子サイレンシングがほとんど起こらないため、目的産物を高収率で産生することができる。通常、目的産物は他の植物組織におけるよりも種子においてより安定であるため、植物の生長と目的産物の単離とを空間的且つ時間的に切り離すことができることが本発明の更なる利点である。これは、本発明の方法全体に柔軟性を与える。
【0012】
第1及び第2のトランスジェニック親植物は、それぞれ第1及び第2の部分的遺伝子供与物を含有する。部分的遺伝子供与物はトランスジェニックであることが好ましい。第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において遺伝子供与を生ずる。種子において遺伝子供与が生ずると、種子における目的産物の産生が誘発される。ハイブリダイズとは、第1及び第2のトランスジェニック親植物の人工受粉を意味することが好ましい。ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2の部分的遺伝子供与物を組み合わせ、F1種子に遺伝子供与物を供与する。第1及び第2の遺伝子供与物はともに種子における目的産物の産生に必要である。したがって、目的産物は第1及び第2の親植物では発現しない。例えば第1又は第2の部分的供与物からの漏出性発現により、親植物において微量レベルの目的産物の産生が起こり得る。そのような漏出性の発現は、目的産物の経済的産生に対して非常に弱い。しかしながら、第1及び第2の親植物のいずれにおいても目的産物の産生は起こらないことが好ましい。
【0013】
前記方法によって産生される目的産物は、目的タンパク質、例えば薬用タンパク質であることが好ましい。本発明にしたがい、2、3以上の目的タンパク質を種子で産生することもできる。目的タンパク質は、種子の植物に対して異種タンパク質であることが好ましい。目的タンパク質は酵素でもよい。種子で酵素を産生する場合、産物は、とりわけ前記酵素の作用によって種子で産生される化学化合物でもよい。化学化合物の産生には2、3以上の酵素が必要とされるかもしれない。本発明を用いて産生し得る化学化合物の例としては、ビタミン、ポリマー(例えばポリヒドロキシブチル酸及び他の生分解性ポリエステル)、脂肪酸、脂肪、油、炭水化物、高級イソプレノイドなどが挙げられる。公知の手順にしたがい、目的産物を含有する種子を親植物から収穫し、目的タンパク質又は化学化合物を種子から単離することができる。目的産物が単離される種子は発芽していてもよい。目的産物は発育胚、胚乳、子葉又は発芽種子に蓄積し得る。
【0014】
遺伝子供与が生ずることによる目的産物又はタンパク質の産生は、多くのさまざまな方法で達成することができる。タンパク質が産生される場合、それぞれの部分的遺伝子供与物はタンパク質のコード配列の一部を提供することができ、前記部分は例えばDNAレベルでの組換え、RNAレベルでのRNAトランススプライシング、又はタンパク質レベルでのタンパク質トランススプライシングによって種子で組み合わせられることができる。他の一般的なアプローチは、目的タンパク質のコード配列に、タンパク質が発現不可能な形態で第1の部分的供与物を提供し、遺伝子成分に、タンパク質の発現を誘発する第2の部分的供与物を提供することである。例えば、植物に固有のポリメラーゼには認識されない異種プロモーターからのコード配列の転写を可能にするRNAポリメラーゼに第2の部分的供与物を提供することによって、又は例えばコード配列をプロモーターの制御下に置くことによってコード配列を発現可能にするリコンビナーゼに第2の部分的供与物を提供することによって、発現を誘発することができる。種子における目的産物の産生に対する制御を更に増加させるために、産生を誘発するリコンビナーゼ又は他の酵素のコード配列を2つの断片に分割することができる。一方の断片を第1親植物によって種子に提供し、他方の断片を第2親植物によって種子に提供することができる。2つの断片は、2つの異なる発生学的に調節されたプロモーターの制御下で発現させ、F1種子においてインテイン介在性トランススプライシングによって活性リコンビナーゼ又は酵素に組み立てることができる。このようにして、目的産物の産生開始を制御することができ、例えば種子発育の後期にシフトさせることができる。インテイン介在性トランススプライシングについての詳細は、PCT/EP03/02986号に見出すことができる。
【0015】
重要な態様では、遺伝子供与物は、ハイブリダイゼーションによって生ずる複製DNA又は複製RNAを含む。複製DNA又は複製RNAは目的産物の産生に関与する。目的タンパク質が複製DNA又は複製RNAから発現することが好ましい。複製DNAはレプリコンであり得る。即ち、種子において機能性の複製起点を有することができる。レプリコンはウイルスレプリコンであることが好ましい。即ち、DNAウイルスレプリカーゼ又はウイルスレプリコンの細胞間伝播に関与するタンパク質をコードする配列のようなDNAウイルス成分を有し得る。同様に、複製RNAはRNAレプリコンであり得る。即ち、種子において機能性の複製起点を有し得る。RNAレプリコンはウイルスレプリコンであることが好ましい。即ち、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ又はウイルスレプリコンの細胞間伝播に関与するタンパク質をコードする配列のようなRNAウイルス成分を有し得る。最も好ましくは、DNAウイルスレプリコン又はRNAウイルスレプリコンは目的タンパク質をコードすることができる。
【0016】
複製DNA又は複製RNAは植物ウイルスを起源とすることができる。複製DNAはジェミニウイルスに基づくことができる。複製RNAの場合、複製RNAは1本鎖の+鎖RNAウイルスに基づくことが好ましい。好ましい1本鎖の+鎖RNAウイルスはトバモウイルスである。複製RNAはタバコモザイクウイルスに基づくことが最も好ましい。
【0017】
複製DNA又は複製RNAは、F1種子において第1の部分的遺伝子供与成分及び第2の部分的遺伝子供与成分から生ずることができる。DNAレプリコンは、第1の部分的遺伝子供与物としてそのゲノムにレプリコンの前駆体を組み込ませた第1親植物を、前駆体からレプリコンを生じさせること(又は複製をもたらすこと)が可能な成分を含有するか又はコードすることができる第2親植物とハイブリダイズさせることによって種子において生ずることができる。第2親植物によって提供される成分は、レプリコンの前駆体を再構築することによってレプリコンを生じさせることが可能な酵素(部位特異的リコンビナーゼ、フリッパーゼ又はインテグラーゼのような)であり得る。この態様の例を図3、図7及び図9に示す。
【0018】
複製RNAは、第1の部分的遺伝子供与成分及び第2の部分的遺伝子供与成分からRNA特異的組換えによって生ずることができる。あるいは、第1の部分的遺伝子供与は、複製RNAの前駆体を含むことができる。前駆体は、第1親植物のゲノムに組み込まれた複製RNAのDNAコピーであり得る。次に、複製RNAは、第2の部分的遺伝子供与物にコードされる成分、特にRNAポリメラーゼによる複製RNAのDNAコピーの転写によって種子において生ずることができる。RNAポリメラーゼを前記成分として用いる場合、RNAポリメラーゼは、複製RNAのDNAコピーを転写するために用いるプロモーターに適応させる必要がある。
【0019】
目的産物、特に目的タンパク質が第1の部分的遺伝子供与物にコードされ、第2の部分的遺伝子供与物が例えば産生のための調節機能を提供する場合、雌性親植物によってハイブリダイゼーションに第1の部分的遺伝子供与物を提供することが好ましい。より好ましくは、雌性親植物は雄性不稔である。このようにして、第1(雌性)トランスジェニック親植物由来の花粉は環境に分布せず、第2(雄性)親植物由来の花粉は目的産物をコードしないため、生物学的安全性を更に高めることができる。同様に、遺伝子供与物が複製DNA又は複製RNAを含む場合は、複製DNA又はRNAは雌性親植物の部分的遺伝子供与によって提供されることが好ましい。
【0020】
第1の部分的遺伝子供与物及び第2の部分的遺伝子供与物は、種子に伝達できるようにそれぞれの親植物に組み込まれていることが好ましい。この目的のため、これらは親植物のゲノムに安定に組み込まれていることが好ましい。親植物は、植物バイオテクノロジーの公知の方法にしたがって、所望の部分的遺伝子供与物を含有するベクターで植物を形質転換することによって産生することができる。親植物は、部分的遺伝子供与物に関して同型であることが好ましい。親植物株は維持されて、自殖によって繁殖することができる。
【0021】
本発明の種子(F1種子)を収穫して目的産物の単離に用いることができる。したがって、種子に含有される遺伝子供与物を含めたトランスジェニック材料は環境に分布せず、種子の子孫への移行による繁殖はしない。トランスジェニック材料が種子の子孫へ移行するのを妨げるため、好ましくは、種子から生長する植物の有性生殖は損なわれており、好ましくは排除され、より好ましくはF1種子は不稔である。好ましい態様では、目的産物の強力な発現のために、あるいは複製DNA又はRNAの強力な複製のために、種子から生長する植物の有性生殖は損なわれているか又は種子は不稔である。あるいは又は更に、種子から生長する植物の発育は遺伝子操作によって生殖生長期に達する前にブロックされており、これは正常な植物の発育を妨げる毒性物質又は毒性タンパク質の組織特異的発現によって達成することができる。そのような毒性タンパク質は、バルナーゼ、志賀タンパク質、植物転写因子、又は植物のホルモン状態を制御する酵素から成る群より選択することができる。好ましくは、植物発育は開花期前にブロックされ、より好ましくは第1葉形成前にブロックされる。
【0022】
毒性タンパク質(バルナーゼなど、実施例5を参照されたい)はタンパク質断片として発現させることができ、タンパク質断片のタンパク質トランススプライシングによって毒性タンパク質の融合物を生じ、機能性毒性タンパク質を形成する。毒性タンパク質を2つの断片として発現させる場合、これら2つの断片は、2つの異なるプロモーター、特に2つの異なる組織特異的プロモーター又は2つの異なる発生学的に活性なプロモーターの制御下で転写させることができる。したがって、機能性毒性タンパク質の形成は、組織特異性が異なる2つのプロモーターに依存し得る。即ち、毒性タンパク質は、2つのプロモーターが活性な組織において活性型で形成される。このアプローチは、しばしば漏出性発現をする1つの組織特異的プロモーターによって達成されるよりも、機能性毒性タンパク質の発現に対してより厳格な制御を可能にする。更に、このアプローチは、新規発現パターン、例えば公知の組織特異的プロモーターでは達成できない発現パターンの達成を可能にする;2つの断片のために異なる組織特異的プロモーターを組み合わせることにより、可能な発現パターンの組み合わせの多様性が広がる。
【0023】
本発明の方法は、大規模適用に完全な可能性を示す。大規模とは、多くの植物を同時に、例えば温室で適用することを意味する。最も好ましくは、大規模とは農場での適用を意味する。大規模適用では、第1親植物株の多くの植物と第2親植物株の多くの植物は、第1親植物株の植物と第2親植物株の植物との効率的な人工受粉を可能にするために、互いに近接して蒔かれるか又は植えられる。自家受粉を避けるために、例えば第1又は第2の親植物のいずれかの雄性不稔を用いる公知のハイブリッド種子産生方法を本発明の方法と組み合わせることができる。そのような方法の1例は、PCT/EP03/02986号に記載のものである。
【0024】
本特許出願の優先権証明書DE 103 25 814号は、本明細書中にその全体が援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の最良の形態及び詳細な説明
本発明の発明者らは、驚くべきことに、高率細胞分裂は、少なくとも双子葉植物の胚におけるウイルス複製を提供するのに単独では十分でなく、その上、胚発育期に依存し、通常、種子発育のより後期にシフトするすることを発見した。他の驚くべき発見は、染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスに基づくレプリコン前駆体がトランスジェニック種子(F1種子)における活性化によって複製する能力である。我々の知る限りでは、この現象について記載する先行技術ない。
【0026】
本発明の方法では、植物の生殖と植物に基づいた目的産物の産生とは厳密に分離しており、産物の収率が大幅に向上する。目的産物を産生するために植物の発育及び生殖に通常必要とされる資源を、例えば、好ましくは特定の最も好適な発育期又は初期発芽期に、種子において目的産物を産生することによって利用することは、遺伝子汚染を制御することに役立つ。
【0027】
発育期、より詳細には配偶子融合及び受精期を、種子生長期を産生期に変換する遺伝子スイッチとして用いることを提唱する。遺伝子供与の異なる成分を異なる親植物へ操作した。前記成分(部分的遺伝子供与物)は、親植物内では不活性であるが、ハイブリダイゼーション行程後に遺伝子供与を生じ、それにより目的産物の産生を誘発する。好ましい態様では、複製DNA又はRNA(増幅工程)を産生に使用し、それにより胚及び/又は胚乳産生を支配する高収率産生システムが作製され、発育種子に目的産物の蓄積をもたらし、一方で、種子をその後の有性生殖ができないようにすることが好ましい。目的産物が蓄積し、発育種子、成熟種子、又は発芽種子から単離することができる。
【0028】
本発明の基礎は、以下の驚くべき発見にある:
(a) ウイルスベクターは、種子発育のより後期及び種子発芽の初期に植物種子において複製可能であるが、特に双子葉植物では、種子形成の初期段階には全く又はほとんど不可能である;
(b) 染色体DNAに安定に組み込まれたウイルスベクター前駆体は、アクチベーター配列を提供する植物との交雑によって、ハイブリッド種子内で効率的に活性化されることができる。
【0029】
植物発育の費用で染色体DNAに安定に組み込まれたレプリコンを種子において活性化することはこれまでに示されていない。これは本発明の方法を厳重に制御することを可能にし、導入遺伝子サイレンシングを誘発するか又は種子発育を極初期に妨げる、漏出性の複製を妨げる。
【0030】
インゲンマメモザイクウイルス(BGMV)に基づいたレプリコンの設計は、実施例1に記載され、図2及び図3に示されている。GFP(緑色蛍光タンパク質)をレポーター遺伝子として有するベクターpICH4300を用いて、ジェミニウイルスを複製するために胚のさまざまな発育期の能力を試験した。これらの実験の結果を図4に示す。照射した若いマメの胚の表面に可視化したウイルス複製の兆候はない(GFP発現なし)が、多くの進行した発育後期の細胞に明瞭なGFP発現が検出されたことは明らかである(図4)。種子発芽のあいだにも効率的複製が起こる(図5)。コムギ萎縮ウイルス(WDV)に基づいたベクターの設計は実施例2に記載されている。図7は、一過性発現実験のためのWDVベクターを概略的に示す。コムギ及びトウモロコシの種子を用いた実験結果を図8に示す。WDVベクターはコムギ及びトウモロコシの胚において効率的に複製するが、トウモロコシの胚乳ではより効率が低いことが明らかである。種子発育の望ましくない段階(極初期)での漏出性の複製は、種子生長及びこのアプローチの技術適用性を危うくするため、これらのデータは本発明の実行可能性を確立する上で重要である。また、部位特異的組換えによる複製行程を誘発するための種子特異的プロモーターの幅広い選択を可能にする。胚発育初期段階においてウイルスベクターをその部分の組換え介在反転によって活性化することは(図3及び図9)、レプリコン前駆体を複製適格期にし得るが、胚が発育のより進行した段階(「複製適格期」)に達するまで複製は起こらないことが好ましい。
【0031】
プロモーターの選択はこの技術の効率に影響する。誘導性プロモーター及び組織特異的プロモーターを用いて、種子における高収率産生を誘発することができる。誘導性プロモーターは、誘導条件によって2つのカテゴリーに分けることができる:非生物的因子(温度、光、化学物質)によって誘導されるもの、及び生物的因子、例えば病原体又は害虫の攻撃によって誘導できるもの。第1カテゴリーの例は、とりわけ熱誘導性プロモーター(US05187287号)及び低温誘導性プロモーター(US05847102号)、銅誘導性システム(Mettら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.、90、4567−4571)、ステロイド誘導性システム(Aoyama&Chua、1997、Plant J.、11、605−612;McNellisら、1998、Plant J.、14、247−257;US06063985号)、エタノール誘導性システム(Caddickら、1997、Nature Biotech.、16、177−180;WO09321334号)、及びテトラサイクリン誘導性システム(Weinmannら、1994、Plant J.、5、559−569)である。植物の化学的に誘導可能なシステムの分野における最近の発展の1つは、グルココルチコイド デキサメサゾンによってスイッチを入れ、テトラサイクリンによってスイッチを切ることができるキメラプロモーターである(Bohnerら、1999、Plant J.、19、87−95)。化学的に誘導可能なシステムの総説としては:Zuo&Chua(2000、Current Opin.Biotechnol.11、146−151)を参照されたい。しかしながら、本発明を実施する上で最も好適なプロモーターは種子特異的プロモーターである。
【0032】
本発明の実施に有用であり得る種子特異的プロモーターには幅広い選択肢がある。そのようなプロモーターには、とりわけ、エンドウマメ レクチン(Psl1)遺伝子のプロモーター(de Paterら、1996、Plant Mol.Biol.、32、515−523)、USPと呼ばれるソラマメ非貯蔵性種子タンパク質遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、オーツムギ グロブリン遺伝子asglo5の胚乳特異的プロモーター(Schubertら、1994、Plant Mol.Biol.、26、203−210)、トウモロコシ O2遺伝子のプロモーター(Gallusciら、1994、Mol.Gen.Genet.、15、391−400)、後期胚形成において豊富な遺伝子(lea)、具体的にはシロイヌナズナ胚のいたるところに発現するAtEm6のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシ rab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)、β−ファセオリン及びβ−コングリシニンのプロモーター(Odellら、1994、Plant Physiol.、106、447−458)、インゲンマメのアルセリン−5遺伝子のプロモーター(Gossensら、1999、Plant Physiol、120、1095−1104)、D−ホルデイン遺伝子プロモーター(Horwathら、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、97、1914−1919)、オオムギ リポキシゲナーゼ1(Lox1)遺伝子のプロモーター(Rousterら、1998、Plant J.15.435−440)などが含まれる。
【0033】
目的タンパク質の発現を駆動するために選択したプロモーターの適用性を予備的に評価するため、pIC01由来の構築体(図6)を用いた一過性発現実験に、GUSレポーター遺伝子を使用した。ここで、34Sプロモーターは種子特異的プロモーターに置換されている。インテグラーゼφC31の発現を駆動するため、ソラマメ由来のUSP遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、AtEm6遺伝子のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシ rab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)、並びにシロイヌナズナ アクチン2遺伝子及びイネ アクチン1遺伝子の構成的プロモーター(それぞれ構築体pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH10881及びpICH14530、図6を参照されたい)を含めたいくつかの単子葉植物及び双子葉植物の種子特異的プロモーターを選択した。他の部位特異的リコンビナーゼの多くは本発明に用いることができる。そのようなシステムの例としては、とりわけ、バクテリオファージP1由来のCre−Loxシステム(Austinら、1981、Cell、25、729−736)、サッカロミセス・セレビジエ由来のFlp−Frtシステム(Broachら、1982、Cell、29、227−234)、チゴサッカロミセス・ルキシー由来のR−RSシステム(Arakiら、1985、J.Mol.Biol.182、191−203)が挙げられる。
【0034】
天然宿主及び非宿主植物種の胚におけるウイルスレプリコンに関する先行技術文献がある(Wang&Maule、1994、Plant Cell、6、777−787;Goodingら、1999、Nucleic Acids Res.、27、1709−1718;Escalerら、2000、Virology、267、318−325;Ugakiら、1991、19、371−377)。細胞間移行及び全体移行などの宿主特異性を決定するウイルスレプリコンの特定の特性を犠牲にすれば、宿主範囲が著しく増加すると思われる。そのようなウイルスレプリコンは、種子細胞を含めた広範な植物種の細胞で効率的に複製することができると思われる。ここで、前記植物種はウイルスレプリコンに対する天然宿主ではない。そのような場合、ウイルスレプリコンの全体移行及び細胞間移行は影響を受けるが、複製能は影響を受けない。実際に、本発明の原理にしたがって、ウイルスに基づいたベクターを構築するために、さまざまな分類群に属するウイルスを用いることができる。これは、RNA含有ウイルス及びDNA含有ウイルスの両方にあてはまる。それらの例を以下に示す(本明細書にわたり、それぞれの基準種名はそれが属する目、科及び属の名称によって先行される。目、科及び属の名称は、ICTVに承認されている場合はイタリック体である。引用符付きの分類群名(イタリック体ではない)は、この分類群にはICTVで国際的に承認された名称がないことを示す。種名(俗名)は標準体で示す。属又は科について正式命名のないウイルスが示されている):
DNAウイルス:
環状2本鎖DNAウイルス:科:カリモウイルス科、属:バドナウイルス属、基準種:ツユクサ黄斑ウイルス、属:カリモウイルス属、基準種:カリフラワーモザイクウイルス、属:“SbCMV様ウイルス”、基準種:ダイズchlorotic mottleウイルス、属:“CsVMV様ウイルス”、基準種:キャッサバ葉脈モザイクウイルス、属:“RTBV様ウイルス”、基準種:イネtungro bacilliformvirus、属:“ペユニア葉脈clearing様ウイルス”、基準種:ペチュニア葉脈clearingウイルス
環状1本鎖DNAウイルス:科:ジェミニウイルス科、属:Mastrevirus(サブグループI ジェミニウイルス)、基準種:トウモロコシ条斑ウイルス、属:Curtovirus(サブグループII ジェミニウイルス)、基準種:ビートカーリートップウイルス、属:ベゴモウイルス属(サブグループIII ジェミニウイルス)、基準種:インゲンマメモザイクウイルス;
RNAウイルス:
1本鎖RNAウイルス:科:ブロモウイルス科、属:アルファモウイルス属、基準種:アルファルファモザイクウイルス、属:イラルウイルス属、基準種:タバコ条斑ウイルス、属:ブロモウイルス属、基準種:ブロムモザイクウイルス、属:ククモウイルス属、基準種:キュウリモザイクウイルス;
科:クロステロウイルス科、属:クロステロウイルス属、基準種:ビート黄斑ウイルス、属:クリニウイルス属、基準種:レタス伝染性黄斑ウイルス、科:コモウイルス科、属:コモウイルス属、基準種:ササゲモザイクウイルス、属:ファバウイルス属、基準種:ソラマメ壊疽ウイルス1、属:ネポウイルス属、基準種:タバコ輪点ウイルス;
科:ポティウイルス科、属:ポティウイルス属、基準種:ジャガイモYウイルス、属:ライモウイルス属、基準種:ライグラスモザイクウイルス、属:バイモウイルス属、基準種:オオムギ縞萎縮ウイルス;
科:セキウイルス科、属:セキウイルス属、基準種:パースニップyellow fleckウイルス、属:ワイカウイルス属、基準種:イネtungro sphericalウイルス;科:トンブスウイルス科、属:カルモウイルス属、基準種:カーネーション斑紋ウイルス、属:ダイアントウイルス属、基準種:カーネーション輪点ウイルス、属:マクロモウイルス属、基準種:トウモロコシchlorotic mottleウイルス、属:ネクロウイルス属、基準種:タバコ壊死ウイルス、属:トンブスウイルス属、基準種:トマトbushy stuntウイルス、
属が未分類の1本鎖RNAウイルス、属:カピロウイルス科、基準種:リンゴstem groovingウイルス;
属:カーラウイルス属、基準種:カーネーション潜在ウイルス;属:エナモウイルス属、基準種:エンドウひだ葉モザイクウイルス、
属:フロウイルス属、基準種:土壌伝染性コムギモザイクウイルス、属:ホルデイウイルス属、基準種:オオムギ斑葉モザイクウイルス、属:イダエオウイルス属、基準種:ラズベリーbushy dwarfウイルス;
属:ルテオウイルス属、基準種:オオムギ黄萎ウイルス;属:マラフィウイルス属、基準種:トウモロコシrayado finoウイルス;属:ポテクスウイルス属、基準種:ジャガイモXウイルス;属:ソベモウイルス属、基準種:Southern bean モザイクウイルス、属:テヌイウイルス属、基準種:イネ縞葉枯ウイルス、
属:トバモウイルス属、基準種:タバコモザイクウイルス、
属:トブラウイルス属、基準種:タバコ茎壊疽ウイルス、
属:トリコウイルス属、基準種:リンゴchlorotic leaf spotウイルス;属:ティモウイルス属、基準種:カブ黄斑モザイクウイルス;属:アンブラウイルス属、基準種:ニンジンmottleウイルス;マイナス1本鎖RNAウイルス:目:モノネガウイルス目、科:ラブドウイルス科、属:サイトラブドウイルス属、基準種:レタス壊死性黄変病ウイルス、属:ヌクレオラブドウイルス属、基準種:ジャガイモ黄萎病ウイルス;
マイナス1本鎖RNAウイルス:科:ブニヤウイルス科、属:トスポウイルス属、基準種:トマト黄化壊疽ウイルス;
2本鎖RNAウイルス:科:パーティティウイルス科、属:アルファクリプトウイルス属、基準種:シロツメクサcrypticウイルス1、属:ベータクリプトウイルス属、基準種:シロツメクサcrypticウイルス2、科:レオウイルス科、属:フィジーウイルス属、基準種:フィジー病ウイルス、属:ファイトレオウイルス属、基準種:創傷 腫瘍ウイルス、属:オリザウイルス属、基準種:イネragged stuntウイルス;
未分類ウイルス:ゲノム1本鎖DNA:種:バナナbunchy topウイルス、種:ココナッツfoliar decayウイルス、種:サブタレニアン・クローバー矮化ウイルス、
ゲノム:2本鎖DNA、種:キュウリ葉脈黄化ウイルス;ゲノム:2本鎖RNA、種:タバコ矮化ウイルス、
ゲノム:1本鎖RNA、種:ニンニクウイルスA、B、C、D、種:grapevine fleckウイルス、種:トウモロコシwhite lineモザイクウイルス、種:オリーブ潜在ウイルス2、種:ourmia メロンウイルス、種:ペラルゴニウムzonate spotウイルス;
サテライト及びウイロイド:サテライト:1本鎖RNAサテライトウイルス:サブグループ2 サテライトウイルス、基準種:タバコ壊死サテライト、
サテライトRNA、サブグループ2 B型mRNAサテライト、サブグループ3 C型線状RNAサテライト、サブグループ4 D型環状RNAサテライト、
ウイロイド、基準種:ジャガイモやせいも病ウイロイド
【0035】
多くの場合、植物ウイルス起源のベクターは、植物において自律複製可能なプラスミド(レプリコン)として本発明に用いられる。しかしながら、非ウイルス配列を用いるそのようなプラスミドの操作に必要な原理は公知である。例えば、植物細胞に由来する多くの推定複製起点が記載されている(Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11、161−162;Hernandesら、1988、Plant Mol.Biol.、10、413−422;Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11、173−182;Eckdahlら、1989、Plant Mol.Biol.、12、507−516)。高等植物ゲノム由来の自律複製配列(ARS配列)は、酵母及び高等動物のARS配列と共通した構造的特長及び配列的特徴を有することが示されている(Eckdahlら、1989、Plant Mol.Biol.、12、507−516)。植物ARS配列はサッカロミセス・セレビジエ中のプラスミドに自律複製能を付与可能である。酵母においてプラスミドの自律複製を促進可能なトウモロコシの核DNA配列の研究により、トウモロコシゲノム内に2つのファミリーの高度反復配列を表すことが示された。それらの配列は特徴的なゲノムハイブリダイゼーションパターンを有する。典型的には、それぞれの12〜15kbのゲノム断片上にARS相同配列のコピーがたった1つ存在した(Berlaniら、1988、Plant Mol.Biol.、11:161−162)。植物起源のレプリコンの他の供給源は、植物において異種遺伝子の増幅及び発現を刺激することができる植物リボソームDNAスペーサー配列である(Borisjukら、2000、Nature Biotech.、18、1303−1306)。高率増幅による所望の効果は、強力なプロモーターを用いることによって達成することもできる。そのようなプロモーターは高コピー数の目的転写物を提供することができ、複製ベクターに類似の最終結果を生ずる。
【0036】
したがって、本発明で意図するレプリコン又は前駆体ベクターは必ずしも植物ウイルスに由来する必要はない。植物DNAウイルスは、標的DNAの形質転換に特に有用なレプリコン(ベクター)を操作する容易な方法を提供するが、植物RNAウイルス又は非植物ウイルスであっても、全体的に又は部分的にこれに由来する配列で作製されるベクターは可能である。植物ウイルスに基づいたレプリコンは明らかに有益である。そのようなレプリコンは、複製に加えて、例えば細胞間移行及び長距離移行のための更なる有用な機能を提供することができる。更に、それらは、感染植物からウイルスを根絶するための公知の方法を用いることによって、しばしば植物細胞から帰納的に、より容易に除去することができる。
【0037】
本発明では、ウイルスベクターの特定部分の部位特異的組換え(反転)によって活性化することができるウイルスレプリコンを用いることが好ましい(図3、図9及び図11を参照されたい)。これらのレプリコンはDNAウイルス(BGMV、WDV)及びRNAウイルス(TMV)に基づくことができる。部位特異的組換えによるDNAウイルスベクターの再構築は、ウイルスDNAの複製開始に十分であることは図面から明らかである。TMVに基づくベクターの場合、DNAの再構築のみでは複製開始に通常十分でないため、状況が異なる。そのようなRNAレプリコンの増幅を誘発するためには転写が必要とされる。転写を駆動する構成的プロモーター(図11を参照されたい)は誘導性プロモーター又は種子特異的プロモーターに置換し得るため、こうした必要性は、RNAに基づいたアンプリコン発現のための更なる制御工程の使用を可能にし、増幅の空間的及び一時的制限方法を厳重に制御し、より柔軟性を与える。
【0038】
発明を効率的に実施するには、可能な最高収率を提供する最良の可能な組み合わせを見出すために、それぞれのウイルスレプリコンのタイプについて種子特異的プロモーターの多くの異なる組み合わせを解析することが好ましい。
【0039】
本発明の重要な要素は、ハイブリッド種子が子孫を作れないということである。即ち、例えば稔性植物への発育が不可能であることにより、種子は不稔であることが好ましい。多くの場合、ウイルスベクターの複製はこの所望の効果を提供し、したがって更なる種子の発育を損なうことが期待される。しかしながら、目的産物を提供するベクターの複製が十分でない場合、所望の効果を達成するために追加の技術を適用することができる。実施例5には、ハイブリッド種子においてインテイン介在性トランススプライシングによって組み立てられる細胞毒性遺伝子(バルナーゼ)の使用について記載されている。インテインが融合したバルナーゼ断片は異なる親植物中に局在し、異なる発生学的に調節されたプロモーターの制御下にあることができる。断片はともにハイブリダイゼーションによってもたらされ、インテイン介在性トランススプライシングの結果として細胞毒性産物を形成することができる。異なるが部分的に重複する発現パターンを有する異なるプロモーターの使用により、バルナーゼ活性を、バルナーゼ断片の発現をともに駆動する同一の組織特異的プロモーターを用いるよりも、必要とする組織に正確な方法で制限することができる。シロイヌナズナ遺伝子STMの茎頂分裂組織特異的プロモーター(Longら、1996、Nature、379、66−69)とシロイヌナズナ遺伝子ATHB5の発芽特異的プロモーター(Johannessonら、2003、Plant Mol.Biol.、51、719−729)を実施例5で使用し、2つのバルナーゼ断片の発現を駆動させた(図15を参照されたい)。これらのプロモーターは、活性が発芽種子の頂端分裂組織に重なるため、好適なバルナーゼ活性パターンを提供する。多くの他の発生学的に調節されたプロモーター及び組織特異的プロモーターを本態様の実施に用いることができるため、本発明はこれら2つのプロモーターの使用に限定されない。本態様に有用なプロモーターの例としては、光合成の活性な組織で発現されるシロイヌナズナHBP−1a遺伝子のプロモーター(Mikamiら、1995、Mol.Gen.Genet.、248、573−582)、種子特異的ナピン遺伝子プロモーター(Ellerstromら、1996、Plant Mol.Biol.、32、1019−1027)、発生学的に調節されたrbcS遺伝子のプロモーター(Manzaraら、1991、Plant Cell、3、1305−1316)、などが挙げられる。
【0040】
実施例では、主に植物細胞におけるアグロバクテリウム介在T−DNA送達を使用し、T−DNAは第1及び/又は第2の部分的遺伝子供与物をベクターとして含有する。植物細胞にベクターを送達するために、微粒子銃、エレクトロポーレーション又はプロトプラストのPEG介在形質転換による細胞へのベクターの直接導入のような異なる方法を用いてもよい。アグロバクテリウム介在植物形質転換が好ましい。したがって、アグロバクテリウムによって運搬されるTi−プラスミドベクター(US5,591,616号;US4,940,838号;US5,464,763号)、粒子又は微粒子銃(US05100792号;EP00444882B1号;EP00434616B1号)などのさまざまな好適な技術によってDNAで植物細胞を形質転換することができる。原理上、例えばマイクロインジェクション(WO09209696号;WO09400583A1号;EP175966B1号)、エレクトロポーレーション(EP00564595B1号;EP00290395B1号;WO08706614A1号)などの他の植物形質転換法を用いることもできる。形質転換法の選択は、形質転換すべき植物種に依存する。例えば、単子葉植物の形質転換には微粒子銃が好ましく、双子葉植物には通常アグロバクテリウム介在形質転換がより良い結果与えることができる。
【0041】
本発明は、高等多細胞植物を用いて実施することが好ましい。本発明での使用に好ましい植物には、農学的及び園芸学的に重要な種に関連した植物種が含まれる。本発明に使用するための一般的な作物には、アルファルファ、オオ麦、インゲン豆、カノーラ、ササゲ、綿、トウモロコシ、クローバー、ハス、レンズ豆、ルピナス、キビ、オート麦、エンドウ豆、落花生、イネ、ライ麦、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、大豆、モロコシ、ライコムギ、クズイモ、ハッショウ豆、ソラ豆、コムギ、フジ、及び堅果植物が含まれる。本発明を実施するのに好ましい植物種には、限定されるものではないが、イネ科、キク科、ナス科及びバラ科の代表的なものが挙げられる。
【0042】
本発明での使用に更に好ましい種は、以下の属に由来する植物である:シロイヌナズナ、コヌカグサ、ネギ、キンギョソウ、オランダミツバ、ナンキンマメ、アスパラガス、ロウトウ、カラスムギ、ホウライチク、アブラナ、ブロムグラス、ルリマガリバナ、ツバキ、アサ、トウガラシ、ヒヨコマメ、ケノポジ、キクニガナ、カンキツ、コーヒーノキ、ジュズダマ、キュウリ、カボチャ、ギョウギシバ、カモガヤ、チョウセンアサガオ、ウリミバエ、ジギタリス、ヤマノイモ、アブラヤシ、オオシバ、フェスキュ、イチゴ、フクロウソウ、ダイズ、ヒマワリ、キスゲ、パラゴムノキ、オオムギ、ヒヨス、サツマイモ、レタス、ヒラマメ、ユリ、アマ、ライグラス、ハス、トマト、マヨラナ、リンゴ、マンゴー、イモノキ、ウマゴヤシ、アフリカウンラン、タバコ、イガマメ、イネ、キビ、テンジクアオイ、チカラシバ、ツクバネアサガオ、エンドウ、インゲン、アワガエリ、イチゴツナギ、サクラ、キンポウゲ、ラディッシュ、スグリ、トウゴマ、キイチゴ、サトウキビ、サルメンバナ、ライムギ、セネシオ、セタリア、シロガラシ、ナス、ソルガム、イヌシバ、カカオ、ジャジクソウ、レイリョウコウ、コムギ、ソラマメ、ササゲ、ブドウ、トウモロコシ、及びOlyreae、Pharoideae並びにその他多くのもの。
【0043】
好ましいのは、ハイブリッド種子産生システムが存在する植物である。第1及び第2の親植物のハイブリッドである種子を高率で産生するためには、これらのシステムを、本発明とともに使用することが好ましい。最も好ましいのは、トウモロコシ、コムギ、チカラシバ、ダイズ、ナタネ種子、カノーラ、タバコ、及びイネである。
【0044】
本発明を用いてセンス方向又はアンチセンス方向に発現させることができる目的タンパク質、又はその断片には以下が含まれる:デンプン修飾酵素(デンプン合成酵素、デンプンリン酸化酵素、脱分岐酵素、デンプン分岐酵素、デンプン分岐酵素II、顆粒結合性デンプン合成酵素)、ショ糖リン酸合成酵素、ショ糖ホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ポリフルクタンスクラーゼ、ADPグルコース ピロホスフォリラーゼ、シクロデキストリン グリコシルトランスフェラーゼ、フルクトシル トランスフェラーゼ、グリコーゲン合成酵素、ペクチン エステラーゼ、アプロチニン、アビジン、細菌レバンスクラーゼ、大腸菌glgAタンパク質、MAPK4及び相同分子種、窒素同化/代謝酵素、グルタミン合成酵素、植物オスモチン、2Sアルブミン、タウマチン、部位特異的リコンビナーゼ/インテグラーゼ(FLP、Cre、Rリコンビナーゼ、Int、SSVIインテグラーゼR、インテグラーゼφC31、又はその活性断片又は変異体)、イソペンテニル トランスフェラーゼ、Sca M5(ダイズ カルモジュリン)、甲虫型毒素又は殺虫活性断片、ユビキチン結合酵素(E2)融合タンパク質、脂質、アミノ酸、糖、核酸及び多糖類を代謝する酵素、スーパオキシド・ジスムターゼ、不活性なプロ酵素型プロテアーゼ、植物タンパク質毒素、繊維産生植物における形質変更繊維(traits altering fiber)、バチルス・チューリンゲンシス由来の甲虫活性毒素(Bt2毒素、殺虫性結晶タンパク質(ICP)、CryIC毒素、δエンドトキシン、ポリオペプチド毒素、プロトキシンなど)、昆虫特異的毒素AaIT、セルロース分解酵素、acidothermus celluloticus由来のE1セルラーゼ、リグニン修飾酵素、シナモイル アルコールデヒドロゲナーゼ、トレハロース−6−リン酸合成酵素、サイトカイニン代謝経路の酵素、HMG−CoA レダクターゼ、大腸菌無機ピロホスファターゼ、種子貯蔵タンパク質、エルウィニア ヘルビコラ リコピン合成酵素、ACCオキシダーゼ、pTOM36にコードされるタンパク質、フィターゼ、ケトヒドロラーゼ(ketohydrolase)、アセトアセチルCoA レダクターゼ、PHB(ポリヒドロキシブタノエート)合成酵素、アシルキャリアータンパク質、ナピン、FA9、非高等植物フィトエン合成酵素、pTOM5にコードされるタンパク質、ETR(エチレン受容体)、色素体ピルビン酸 リン酸 ジキナーゼ、線虫誘導性膜貫通ポアタンパク質、植物細胞の光合成又はプラスチド機能を高める形質、スチルベン合成酵素、フェノールをヒドロキシル化可能な酵素、カテコール ジオキシゲナーゼ、カテコール 2,3−ジオキシゲナーゼ、クロロムコネート シクロイソメラーゼ、アントラニル酸合成酵素、アブラナAGL15タンパク質、フルクトース 1,6−ビホスファターゼ(FBPアーゼ)、AMV RNA3、PVYレプリカーゼ、PLRVレプリカーゼ、ポチウイルスコートタンパク質、CMVコートタンパク質、TMVコートタンパク質、ルテオウイルス レプリカーゼ、MDMVメッセンジャーRNA、変異ジェミニウイルス レプリカーゼ、カリホルニアウンベルラリア C12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、植物C10又はC12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、C14:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ(luxD)、植物合成酵素因子A、植物合成酵素因子B、6−不飽和化酵素、植物細胞における脂肪酸のペルオキシソームでの酸化において酵素活性を有するタンパク質、アシル−CoAオキシダーゼ、3−ケトアシル−CoA チオラーゼ、リパーゼ、トウモロコシ アセチル−CoA−カルボキシラーゼ、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSP)、ホスフィノスリシン アセチルトランスフェラーゼ(BAR、PAT)、CP4タンパク質、ACCデアミナーゼ、リボザイム、翻訳後切断部位を有するタンパク質、Gal4転写アクチベーターのDNA結合ドメイン及び転写活性化ドメインから成るタンパク質融合物、オレオシンタンパク質と融合タンパク質を脂質相に標的化可能な目的タンパク質との翻訳融合物、スルホンアミド耐性を付与するDHPS遺伝子、細菌ニトリラーゼ、2,4−D モノオキシゲナーゼ、アセトラクテート合成酵素又はアセトヒドロキシ酸合成酵素(ALS、AHAS)、ポリガラクツロナーゼ、細菌ニトリラーゼ、プラスチドの内側エンベロープ膜にある成熟リン酸輸送体タンパク質のアミノ末端疎水性領域と前記膜に標的化された目的タンパク質との融合物など。
【0045】
ヒト又は動物のいかなるタンパク質も、特に本発明のシステムを用いたハイブリッド種子において発現させることができる。そのような目的タンパク質の例としては、とりわけ、以下のタンパク質(薬用タンパク質)が挙げられる:免疫応答タンパク質(モノクローナル抗体、1本鎖抗体、T細胞受容体など)、抗原、コロニー刺激因子、レラキシン、ポリペプチドホルモン、サイトカイン及びその受容体、インターフェロン、成長因子及び凝固因子、酵素的に活性なリソソーム酵素、線維素溶解ポリペプチド、血液凝固因子、トリプシノーゲン、1−アンチトリプシン(AAT)、並びに上記タンパク質の融合体、変異体型及び合成誘導体のような機能保存的タンパク質。
【0046】
本発明の方法は、トランスジェニックコード配列の転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を抑制するために、PTGSサプレッサータンパク質又はその機能保存的変異体若しくは断片をコードする遺伝子を植物において発現させることを更に含むことができる。PTGSサプレッサータンパク質遺伝子又はその機能保存的変異体若しくは断片を、トランスジェニックコード配列を有する同一ベクター上で又は余分のベクター上で植物に提供することができる。PTGSサプレッサータンパク質は、ウイルス又は植物起源であることが好ましい。PTGSサプレッサータンパク質の例は、ジャガイモウイルスX p25タンパク質、アフリカ キャッサバモザイクウイルス AC2タンパク質、イネyellow mottleウイルスP1タンパク質、トマトbushy stuntウイルス 19Kタンパク質、rgs CAM、又はこれらのタンパク質のうちの1つの機能保存的変異体若しくは断片である。機能保存的変異体又は断片は、上記タンパク質の1つに対し、75%の配列同一性を有することが好ましく、好ましくは少なくとも75%同一である。PTGSサプレッサータンパク質及びその使用に関する詳細は、WO0138512号に見出すことができる。
【実施例1】
【0047】
BGMVベクター
GFPを有するジェミニウイルス複製ベクターのクローニング
pUC19 DNAを、dnaapr7プライマー(aac tgc agt cta gac tgg ccg tcg ttt tac aac)及びdnaapr8プライマー(aac tgc aga aca att gct cga ggc gta atc atg gtc a)を用いて増幅し、増幅断片をPstIで消化し、再連結した。得られたプラスミドpICH1144は、pUC19に類似するが、ポリリンカーがXhoI、MfeI、及びPstIで置換されている。ドイツ微生物・培養細胞コレクション(DSMZ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から入手したインゲンゴールデンモザイクウイルス(BGMV)単離物DSMZ PV−0094を感染させたインゲンマメ組織から、DNAを抽出した。BGMV共通領域を包含するゲノムの断片(CR;BGMVの複製起点を含有)を、dnaapr3プライマー(ggg aat tca cta gta aag atc tgc cgt cga ctt gga att g)及びdnaapr4プライマー(caa tgc atc atg gcg cat cac gct tag g)を用いてPCRで増幅し、MfeI及びPstIで消化したpICH1144中にEcoRI−NsiI断片としてクローニングし、プラスミドpICH1156を得た。pICH1156中のBGMV挿入物を配列決定した。他の2つのBGMV DNAAゲノム断片を、BGMVを感染させたインゲンマメDNAから、dnaapr9プライマー(aag ctg cag aag gat cct ctg gac tta cac gtg gaa tgg)/dnaapr13プライマー(cgc tcg agg ccg tcg act tgg aat tgt c)ペア、及びdnaapr5プライマー(gaa gat ctg caa gag gag gtc agc a)/dnaapr10プライマー(aag ctg cag atc tat ttc tat gat tcg ata acc)ペアを用いて増幅させた。これらの断片の合計は、コートタンパク質のない完全長BGMVゲノムになる。これらの断片をそれぞれXhoI/PstI及びPstI/BglIIで消化し、XhoI及びBglIIで消化したpICH1156に、3通りの連結法でクローニングした。得られたプラスミドは、重複したBGMV DNAA共通領域に隣接するコートタンパク質遺伝子のない1つの完全長BGMV DNAAゲノムを含有する。試験のために3つのクローン:pICH1663、1664及び1667を保存した。コートタンパク質遺伝子がBamHI及びPstIを含有するマルチクローニング部位に置換されている。pIC011(pUC18内にHbtプロモーター−合成GFPコード配列−Nosターミネーター)由来の合成GFP(SGFP)コード配列を、pICH1663、pICH1664及びpICH1667のBamHI−PstI部位にBamHI−PstI断片としてクローニングし、プラスミドpICH1693、pICH1694及びpICH1697を得た。GFPをコートタンパク質プロモーターの制御下に置く。クローンpICH1693、pICH1694及びpICH1697の機能性に関して試験するために、ベンサミアナタバコ及びインゲンマメの切除葉に、遺伝子銃粒子送達システム1000/HE(バイオラッド)を用いて照射した。翌日、3つの構築体全てに関し、両方の種の葉においてGFP発現上皮細胞が検出されるであろう。
【0048】
バイナリーベクターでのクローニング
pICH1694のXhoI−NarI断片を、XhoI及びClaIで消化したpICBV11にサブクローニングすることによって、pICH1694のプロレプリコン部分を含有するバイナリーベクターを作製した。得られたクローンpICH4300(図2)は、BGMVコートタンパク質プロモーターの制御下にあるGFP遺伝子、及び重複CR間にAL1/2/3遺伝子を含有する。
【0049】
「反転した」ジェミニウイルスプロベクターのクローニング
pICH7300はpICH4300に類似するが、いくつかの制限酵素部位(SalI、NcoI、MfeI、及びBglII)が、制限部位が重複する変異プライマーを用いたPCRで除去されている。レプリカーゼの部分と共通領域うちの1つを含有する断片の転置によって複製不可能なクローンpICH1500(図3)を作製するための開始点としてpICH7300を用いた。AttP及びAttB組換え部位を転置の先端に置き、インテグラーゼを提供することによって転置領域の反転を可能にし、それにより機能性ベクターを得る。AttB及びAttB部位は人工イントロン配列に隣接しており、インテグラーゼ介在性組換えによって生ずるAttR配列の、AL1転写物からのスプライシングを可能にする。
【0050】
ジェミニウイルスを複製するために胚の適格性を試験する:
pICH4300プラスミドDNAを一連の植物組織に照射した。インゲンマメの葉、成熟種子、水分補給したマメの子葉及び発芽苗、並びに未成熟胚において明るい蛍光細胞が検出されるであろう。GFP蛍光によってアッセイしたように、胚発育期の全てにおいてジェミニウイルスの複製を起こしやすいわけではない。長さ4〜5mmまでの子葉がある小さな白い胚にはGFP発現細胞がなかった。逆に、より緑色したより大きな子葉はジェミニウイルスの複製に非常に適していた。
【0051】
タバコ、ベンサミアナタバコ、シロイヌナズナ、ショカツサイ及びマングビーンを含めた他の種も、少なくとも葉において、ジェミニウイルスの複製を起こしやすかった。
【0052】
φC31インテグラーゼクローンのクローニング
pICP1010は、シロイヌナズナ アクチン2プロモーター(プロモーター、第1エクソン、第1イントロン、及びアクチン2遺伝子の第1エクソンの10ヌクレオチドを含有する1344ヌクレオチド断片)に融合したストレプトミセスファージC31インテグラーゼ(David Owより、植物遺伝子発現センター、米国農務省−農業研究サービス、アルバニー、CA94710、USA)を含有するバイナリーベクターである。核へのインテグラーゼの輸送を増加させるために、SV40 T抗原由来の核局在シグナル(Pro−Lys−Lys−Lys−Arg−Lys−Val、Andreasら、2002、Nucleic Acids Res.、30、2299−2306)を、φC31インテグラーゼのC末端に融合させた。c31pr1プライマー(gca cgc cga agg cga cga ag)及びNLS配列を含有する伸長部を含有するPCRプライマー(31nls1:gga tcc taa acc ttc ctc ttc ttc tta ggc gcc gct acg tct tcc gtg)を用いたpICP1010からのPCR増幅によってNLS配列をインテグラーゼ配列に付加し、BspEI−BamHI断片としてpICP1010にサブクローニングし、プラスミドpICH10881(図6)を得た。異なるプロモーターを容易にサブクローニングするために、pICH10881からインテグラーゼ及びNosターミネーターをPstI/ApaI断片としてpICH13901へサブクローニングし、プラスミドpICH13901(示していない)を得た。このベクターは、Nosプロモーター−NptIIコード配列−Nosターミネーター 選択カセット及びポリリンカーKpnI−XhoI−PstI−ApaI−HindIIIを含有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターである。適当な種のゲノムDNAから、遺伝子特異的プライマーを用いていくつかのプロモーターを増幅し、KpnI/XhoI断片としてpICH13901にクローニングした。前記プロモーターを更にEcoRI/XhoI断片としてpIC01にサブクローニングし(図6)、発育種子への微粒子銃によってGUSレポーター遺伝子との融合物としてそれらの活性について試験した(示していない)。
【0053】
インテグラーゼφC31の発現を駆動するために、ソラマメ由来のUSP遺伝子のプロモーター(Fiedlerら、1993、Plant Mol.Biol.、22、669−679)、AtEm6遺伝子のプロモーター(Vicientら、2000、J.Exp.Botany、51、1211−1220)、トウモロコシrab17遺伝子のプロモーター(Buskら、1997、Plant J.、11、1285−1295)並びにシロイヌナズナ アクチン2遺伝子及びイネ アクチン1遺伝子の構成的プロモーターを含めたいくつかの単子葉植物及び双子葉植物の種子特異的プロモーターを選択した(それぞれ構築体pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH10881及びpICH14530、図6を参照されたい)。
【0054】
安定な形質転換実験及びハイブリダイゼーション実験
ベンサミアナタバコの葉ディスクを、構築体pICH1500、pICH4550及びpICH4540(インテグラーゼ)で形質転換し、各構築体について独立した形質転換体を得た。pICH1500の10個の形質転換体を、各インテグラーゼ構築体の少なくとも5つの形質転換体と交雑させた。未成熟発育種子を切開し、GFP蛍光を顕微鏡を用いて青色光下で観察した。
【実施例2】
【0055】
WDVベクター
ドイツ微生物・培養細胞コレクション(DSMZ、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から入手したコムギ萎縮ウイルス(WDV)を感染させたコムギ葉サンプルからDNAを抽出した。互いに逆向きでゲノムのユニークEcoRI部位が重複するプライマーを用いて、WDVの完全長ゲノム(ca.2.8kb)をPCRで増幅させた:
FwdvE1 aGAATTCacaccgatgggctc
RewdvE1 tGAATTCtgcacactcccacg
増幅断片をpGEM−Tベクター(プロメガ)にクローニングした。2つのクローンについて塩基配列を決定した。BLAST解析は、増幅配列が、EMBL/Genbankデータベースに存在する完全に配列決定した4つのWDV株(GEWDVXX、WDVGNS、WDW311031、NC 003326)とは著しく異なるが、ハンガリーで単離された部分的に配列決定した(1.2kb)ウイルス(AJ311038;Arch.Virol.147(1):205−216、2002)とは密接に適合することを示した。
【0056】
コートタンパク質遺伝子を除いた完全長ゲノムを増幅するために、得られた配列データに基づいて2つのプライマーを設計した(ttC CAT Gga gtt acc tcg gg agt cct tgt tg 及び ttG CAT GCG GCC Gca aaa tag tat ttt att cat ctc atg tc)。上記感染葉DNAからPCRを行った。
【0057】
PCR増幅産物を、SphI及びNcoIで消化したGFPの変異型(S65TGFP)を含有するpUC19ベクターにSphI−NcoI断片としてクローニングした。得られたクローンpICH10680は、CPをGFPで置換した唯一のWDVゲノムを含有する(図13)。
【0058】
重複LIRを有する完全長ゲノムを2工程でバイナリーベクターにクローニングした。第1に、pICH10680のBamHI−ApaI断片を、BglII及びApaIで消化したバイナリーベクターにサブクローニングした。この中間体クローンは、CPのかわりにGFPを有する部分WDVゲノムを含有するが、PspoMI及びPciIで消化し(Klenowで平滑末端化)、pICH10680のSmaI−NotI断片をクローニングする第2工程に用いた。得られたクローンpICH10830(図7)は、CPをGFPで置換した完全長WDVゲノムを含有し、重複LIRに隣接し、WDV−GFPレプリコンの切り出し及び増幅を可能にする。
【0059】
ジェミニウイルスを複製するために胚の適合性を試験する:
pICH10830をコムギ及びトウモロコシの発育胚に照射した。胚に強力なGFP蛍光を発する細胞が観察されたが、胚乳でも検出されるであろう(図8)。
【0060】
「反転した」WDVプロベクターのクローニング
BGMVベクターに関して記載したのと同一のストラテジーを用いて、「反転した」WDVベクターpICH14520を作製した(図9)。このクローンが複製開始可能になるのは、φC31インテグラーゼに曝露して反転させた後のみである。このクローンの機能性を試験するため、トウモロコシの胚に単独で、又はインテグラーゼクローンpICH14530若しくはpICH14560とともに照射した。pICH14520をインテグラーゼとともに照射したときのみGFP蛍光細胞が検出されるであろう。
【0061】
安定な形質転換実験及びハイブリダイゼーション実験
pICH14520及びインテグラーゼクローンでトウモロコシを形質転換した。
両方の構築体に由来する選択した形質転換体を両方向で交雑させ、さまざまな発育期で未成熟種子を切開し、顕微鏡又は携帯UVランプを用いて青色光下で観察した。
【実施例3】
【0062】
CR−TMVベクター
GFPを有するcr−TMV複製ベクターのクローニング:
pICH4351(図10)はcr−TMV、アブラナ感染トバモウイルス(Dorokhovら、1994、FEBS Letters、350、5−8)に基づいたウイルスベクターである。pICH4351は、Cr−TMVの5’非翻訳配列、続いてRdRp及びMPを含有し(Genbank受託番号Z29370のヌクレオチド1〜5629、MPの最後の16アミノ酸を、MP機能を喪失することなく切断し、Z29370中の5605位のTをCに変異させた)、シロイヌナズナ アクチン2プロモーター(787ヌクレオチド断片、転写開始の5’側、Genbank受託番号U41998、Anら、1996、Plant J.、10、107−121)に融合している。MPの後にLoxP部位が続く。この部位は、この構築体の使用に関して機能的に意味がなく、それを構築するために用いたプラスミドにも存在しているために存在している。LoxPの後にはcr−TMV由来のIRES配列(Genbank 受託番号Z29370のヌクレオチド4804〜4873)、及びGFP ORFが続く。GFP発現を増加させるための翻訳エンハンサーとしてIresをこの位置にクローニングした。GFPの後にはcr−TMV 3’非翻訳配列(Genbank 受託番号Z29370のヌクレオチド6083〜6312)、アグロバクテリウム Nosターミネーターが続く。この構築体を、植物でカナマイシン選択するためのカセットを有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターpICBV10にクローニングする(Nosプロモーター−NPTIIコード配列s−Nosターミネーター)。この構築体では、GFPはMPの末端に局在するCPサブゲノムプロモーターから発現される。照射又はアグロインフィルトレーション(agroinfiltration)による核への送達後、核においてアクチン2プロモーターから作製された第1転写物は、複製が起こる細胞質へ輸送される。
【0063】
「反転した」cr−TMVプロベクターのクローニング
pICH10921はpICH4351から作製したウイルスプロベクターである(図11)。これは、IresからNosターミネーターまで伸びたDNA断片が逆方向に反転して構築体を複製不可能にしているという事実によってpICH4351とは異なっている。この断片の反転を可能にするために、φC31のAttP部位(gta gtg ccc caa ctg ggg taa cct ttg agt tct ctc agt tgg ggg cgt aga)及びAttB部位(tcg aag ccg cgg tgc ggg tgc cag ggc gtg ccc ttg ggc tcc ccg ggc gcg tac tcc acc tca ccc atc)を転置の末端に位置付ける。
【0064】
転置部分の反転が機能性ベクターをもたらすかどうかを試験するため、pICH10921でアグロバクテリウム株GV3101を形質転換し、ベンサミアナタバコの葉のagroinfiltrationに用いた。pICH10921を単独で浸潤させたときはGFPスポットが検出されなかったが、pICH10921をpICH10881(インテグラーゼ発現ベクターを含有)で形質転換したアグロバクテリウムとともに共浸潤させたときは非常に多くのGFP複製フォーカスが見られるであろう。
【0065】
安定な形質転換及びハイブリダイゼーション実験
pICH10921、pICH10881、pICH14540及びplCH14550で、ベンサミアナタバコを葉ディスク形質転換によって個別に形質転換し、50mg/Lのカナマイシンを形質転換体の選択に用いた(Horshら、1985、Science、227、1229−1231)。両構築体に由来する選択した形質転換体を両方向で交雑させ、未成熟種子を切開し、顕微鏡を用いて青色光下で観察した。ハイブリッド種子においてGFP発現が検出された。
【実施例4】
【0066】
トランスジェニックトウモロコシ植物の作製
トウモロコシのユビキチンプロモーターの制御下で、ハイグロマイシン ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(HPT)を単子葉植物形質転換のための選択可能マーカーとして用いた(図12)。選択薬剤としてハイグロマイシンBを25〜100mg/lの濃度で適用した。
【0067】
トランスジェニックトウモロコシ植物を作製するために以下の方法を用いた:
A188株、Hill株などの成熟及び未成熟胚からカルス培養を誘導した。培地はChu(N6)塩及びビタミンに基づいている(Chuら、Scientia Sinica、18(5):659−68,1975)。
カルス誘導培地及び繁殖培地には30g/lのショ糖、600mg/lのL−プロリン、2.0mg/lの2,4−D及び0.3%ゲルライトが添加されている。
プレ再生培地は使用しなかった。再生培地は、N6塩及びビタミン、30g/lのショ糖、2mg/lのゼアチン及び0.05mg/lの2,4−Dを含有する。再生培地にはチオ硫酸銀が0.01〜0.06mMの濃度で含まれている。
【0068】
微粒子銃
遺伝子銃PDS−1000/He粒子送達システム(バイオラッド)を用いて微粒子銃を実施した。細胞を、900〜1100psiで、マクロキャリアー発射点から停止スクリーンまで15mmの距離で、及び停止スクリーンから標的組織まで60mmの距離で照射した。破裂ディスクとマクロキャリアーの発射点との距離は12mmであった。細胞を、4時間の浸透圧前処理後に照射した。
【0069】
DNA−金コーティングを、バイオラッドのオリジナルプロトコール(Sanfordら、1993、Methods in Enzymology、R.Wu編、217、483−509)にしたがって以下のように行なった:25μlの金粉末(0.6、1.0mm)を50%グリセロール(60mg/ml)中で、0.2μg/μlのプラスミドDNA5μl、25μlのCaCl(2.5M)及び10μlの0.1M スペルミジンと混合した。混合物を2分間ボルテックスし、続いて室温で30分間インキュベーションし、遠心(2000rpm、1分)し、70%及び99.5%のエタノールで洗浄した。最後に、沈殿を30μlの99.5%エタノール(6μl/ショット)に再懸濁した。
【0070】
新規のDNA−金コーティング法(PEG/Mg)を以下のように行った:25μlの金懸濁液(50%グリセロル中に60mg/ml)をエッペンドルフチューブ中で5μlのプラスミドDNAと混合し、次に30μlの40%PEG(1.0M MgCl中)を添加する。混合物を2分間ボルテックスし、室温で30分間、混合せずにインキュベートした。遠心(2000rpm、1分)後、沈殿を1mlの70%エタノールで2回、1mlの99.5%エタノールで1回洗浄し、最後に30μlの99.5%エタノール中に分散させた。DNA−金 エタノール懸濁液のアリコート(6μl)をマクロキャリアーディスクにロードし、5〜10分間乾燥した。
【0071】
プラスミドDNAの調製
プラスミドで大腸菌株DH10Bを形質転換し、LB培地中でmaxi prepを増殖させ、キアゲンキットを用いてDNAを精製した。
【0072】
選択
安定な形質転換実験のために、処置細胞を有するフィルターを、ろ過滅菌した適当な選択薬剤(150mg/L ハイグロマイシンB(Duchefa))、3%ショ糖を有する固形MS2培地上に移して遮光した。7日毎に材料を新鮮な選択培地に移した。プレートを暗所保存し、およそ6週間後、植物材料を再生培地及び適当な選択薬剤(150mg/L ハイグロマイシンB)の入ったペトリ皿に移した。ペトリ皿を強い光度でインキュベートした。日照時間16時間。
【実施例5】
【0073】
ハイブリッド種子の発育を制御するためのバルナーゼに基づいたシステム
バルナーゼ遺伝子を、ラン藻PCC6803 DnaB インテインを用いて分割した。適当な制限部位に隣接したバルナーゼのN端部分及びC端部分のDNA断片を営利なDNA合成会社で化学的に合成した。
【0074】
N末端の配列は以下の通りである:
5’gcaatcgatg gcacaggtta tcaacacgtt tgacggggtt gcggattatc ttcagacata tcataagcta cctgataatt acattacaaa atcagaagca caagccctcg gctgggacgt ccgc3’。
【0075】
C末端の配列は以下の通りである:
5’cgccatgggg tggcatcaaa agggaacctt gcagacgtcg ctccggggaa aagcatcggc ggagacatct tctcaaacag ggaaggcaaa ctcccgggca aaagcggacg aacatggcgt gaagcggata ttaactatac atcaggcttc agaaattcag accggattct ttactcaagc gactggctga tttacaaaac aacggaccat tatcagacct ttacaaaaat cagataagga tccgc3’。
【0076】
バルナーゼのN末端をDnaBインテインのN端部分に融合させた。DnaBインテイン−N断片をラン藻DNAから、DnaBintNpr1プライマー(5’gtAAGCTTGA CGTcagagag agtggatgca tcagtggaga tag3’)及びDnaBintNpr2プライマー(5’caCTGCAGct ataattgtaa agaggagctt tctag3’)を用いて増幅した。バルナーゼ断片(ClaI/AatII断片)及びインテイン断片(AatII/PstI断片)をアイコン・ジェネティクス バイナリーベクターにクローングし、pICH12794クローンを得た(図14)。
【0077】
バルナーゼのC末端をDnaBインテインのC端部分に融合させた。DnaBインテイン−C断片を、ラン藻DNAから、dnaBintCpr1プライマー(gt GAG CTC G ATC GAT TCA TGA gcc cag aaa tag aaa agt tgt ctc)及びdnaBintCpr2プライマー(tc AAG CTT CCA TGG tct tgc tct tca ctg tta tgg aca atg atg tca t)を用いて増幅した。インテイン断片(SacI/NcoI断片)及びバルナーゼ断片(NcoI/BamHI断片)をアイコン・ジェネティクス バイナリーベクターにクローニングし、クローンpICH12820を得た(図14)。
【0078】
ベンサミアナタバコの葉のアグロインフィルトレーションによって、N端及びC端 バルナーゼ−インテイン融合クローンの機能性を試験した。予想通り、両構築体をともに浸潤させた葉領域は壊死したが、いずれかの構築体を単独で浸潤させた領域は健常のままであった。
【0079】
pICH12794及びpICH12820をpICBV16にサブクローニングした。これは植物形質転換体をカナマイシンで選択するためのNptIIカセットを有するアイコン・ジェネティクスのバイナリーベクターである。得られたプラスミドはpICH14780及びplCH14770である(図14)。
【0080】
シロイヌナズナ遺伝子STMの茎頂分裂組織特異的プロモーター(Longら、1996、Nature、379、66−69)を、STMfwdプライマー(cg caattg gtggcaagaggtctaccatct)及びSTMrevプライマー(gc gagctcttctctttctctcactagtatt)を用いてシロイヌナズナゲノムDNAから増幅し、MfeI/SacI断片としてpICH14770及びpICH14780(EcoRI SacIで消化)にサブクローニングし、プラスミドpICH14790及びpICH14800を得た(図15)。2つのプラスミドのプロモーター領域を配列決定した。pICH14790及びpICH14800は、STMプロモーターの制御下にあるC末端及びN末端バルナーゼ−インテイン融合体から成る。
【0081】
シロイヌナズナ遺伝子ATHB5の発芽特異的プロモーター(Johannessonら、2003、Plant Mol.Biol.、51、719−729)を、ATHB5Fwdプライマー(cg gaatt ccagctcatcaaccaaactctgt)及びATHB5revプライマー(gc gagctctttgctctgtgtctagactatcc)を用いてシロイヌナズナゲノムDNAから増幅し、EcoRI/SacI断片としてpICH14770にサブクローニングし、プラスミドpICH14810を得た(図15)。pICH14810から増幅した断片を配列決定し、EcoRI/SacI断片としてpICH14780にサブクローニングし、pICH14820を得た(図15)。pICH14810及びpICH14820は、発芽特異的プロモーターの制御下にある5’及び3’バルナーゼ−インテイン融合体から成る。
【0082】
4つのプラスミド全てをアグロバクテリウム株GV3101に導入し、シロイヌナズナの形質転換に用いた。全てのトランスジェニック植物は表現型が正常である。トランスジェニック植物を、同一のプロモーター又は異なるプロモーターを有する相補的バルナーゼ構築体を含有する植物と交雑させた。異なるプロモーターの使用により、バルナーゼ活性を用いたプロモーターの重複領域まで制限することが可能である。F1種子を乾燥させて種を蒔いた後に収穫した。これらは発芽したが、成長点の欠失により拘束された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】図1は、ハイブリッド種子(本発明のF1種子)において目的産物を高収率で産生する本発明の方法の一般的スキームを示す。図1A−本発明の一般的原理。第1親植物株Aを第2親植物株BとハイブリダイズさせてF1種子を産生する。親株の種子は目的産物を産生しないが、生育可能である。F1種子では遺伝子供与が生じ、目的産物の産生を可能にする。この場合はその蛍光によって観察されるGFPである(写真中の光の点)。場合により目的産物をコードするウイルスベクターの強力な複製と組み合わせた、目的産物の強力な発現の結果、F1種子は生育不可能である。
【図1B】図1は、ハイブリッド種子(本発明のF1種子)において目的産物を高収率で産生する本発明の方法の一般的スキームを示す。図1B−植物発育期(フレーム内)。精細胞と雌性配偶体とのハイブリダイゼーション後、目的産物(左の囲み)を発現する種子(F1種子)が産生される。F1種子からの植物の発育はブロックされている。右の囲みは、F1種子が稔性植物に生長できないことを示す。
【図2】図2は、プラスミドpICH4300のT−DNA領域、及びハイブリッド種子におけるBGMV(インゲンマメモザイクウイルス)に基づいたDNAレプリコンの形成を示すスキームである(実施例1を参照されたい)。
【図3】図3は、プラスミドpICH1500のT−DNA領域、及びインテグラーゼ活性の存在下におけるDNAレプリコンの形成を示すスキームである(実施例1を参照されたい)。pICH1500の遺伝要素は、第1の部分的遺伝子供与によって種子に提供することができる。インテグラーゼφC31はコードされ、第2の部分的遺伝子供与によって種子に提供されることができる。
【図4】図4は、プラスミドpICH5184を照射した、インゲンマメの未成熟胚(A、左の大きな写真)、及びマングビーン リョウトクの発芽種子からの子葉(B、右の小さな写真)を示す。GFPを目的産物として発現するマメの胚が円で囲まれている。
【図5】図5は、pICH5184ベクターを照射したマングビーンの発芽種子の苗条を日光下(左)及びUV光下(右)で示す。
【図6】図6は、構築体pICH10881、pICH14540、pICH14550、pICH14560、pICH14530、及び構築体pIC01のT−DNA領域のスキームを示す。
【図7】図7は、プラスミドpICH10830のT−DNA領域、及びWDV(コムギ萎縮ウイルス)に基づいたDNAレプリコンの形成のスキームを示す(実施例2を参照されたい)。
【図8】図8は、コムギ胚(A)及びトウモロコシ種子組織(B)においてコムギ萎縮ウイルス(WDV)−GFP発現カセットを含有するプラスミドpIH10830を照射し、形質転換後4日の結果を示す。
【図9】図9は、プラスミドpICH14520のT−DNA領域、及びインテグラーゼφC31活性の存在下におけるレプリコン形成のスキームを示す。LIR及びSIRはコムギ萎縮ウイルスの長い及び短い遺伝子間領域である;MP−移行タンパク質;Rep−ウイルスレプリカーゼ;RepA−ウイルスレプリカーゼA。
【図10】図10は、プラスミドpICH4351のT−DNA領域及びRNAレプリコンの形成を示す。GFPに隣接するグレーのドット領域はIRES(配列内リボソーム進入部位)配列を示す。
【図11】図11は、プラスミドpICH10921のT−DNA領域、及びインテグラーゼφC31活性の存在下におけるRNAレプリコンの形成を示す。
【図12】図12はプラスミドpICH1600の略図を示す。
【図13】図13は構築体pICH10680の略図を示す。
【図14】図14は、構築体pICH12784、pICH12820、pICH14780及びpICH14770の略図を示す。
【図15】図15は、構築体pICH14800、pICH14790、pICH14820及びpICH14810の略図を示す。
【誤訳訂正3】
【訂正対象書類名】図面
【訂正対象項目名】図6
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項2】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1又は第2の親植物では発現せず、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項3】
目的産物がRNA、タンパク質、酵素、又は前記酵素がその合成に関与しているポリマーのような化学化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1又は第2の親植物では発現せず、目的産物は目的タンパク質であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項5】
遺伝子供与物が、目的産物の産生に関与する複製DNA又は複製RNAを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、遺伝子供与物は目的産物の産生に関与する複製DNA又は複製RNAを含み、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項7】
複製DNA又は複製RNAが目的産物をコードする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
複製DNA又は複製RNAが、F1種子において第1の部分的遺伝子供与成分と第2の部分的遺伝子供与成分から生ずる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複製DNAが、ハイブリダイゼーションによって生ずるか又は複製をもたらすDNAウイルスレプリコンである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複製DNAがDNA部位特異的組換えによって生ずる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
DNA部位特異的組換えが、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、又はフリッパーゼによって触媒される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複製DNAが、F1種子において、第1親植物由来の部位特異的リコンビナーゼと第2親植物由来の複製DNAの前駆体とを組み合わせることによって生ずる、請求項10〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
複製DNAが自律的プラスミドである、請求項5〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
複製RNAが、ハイブリダイゼーションによって生ずるか又は複製をもたらすRNAウイルスレプリコンである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
複製RNAが、第1の部分的遺伝子供与成分と第2の部分的遺伝子供与成分からRNA特異的組換えによって生ずる、請求項5〜8又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複製RNAが第1の部分的遺伝子供与のDNAの転写によって生じ、転写は第2の部分的遺伝子供与の成分又は発現産物によって引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複製RNAがハイブリダイゼーションに関与する雌性親植物によってコードされている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複製DNA又はRNAの形成に必要なRNA又はタンパク質の転写が、構成的プロモーター、種子特異的プロモーター、又は化学的に調節されるプロモーターによって制御される、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
複製DNA又は複製RNAが植物ウイルスを起源とする、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
複製DNAがジェミニウイルスに基づいている、請求項5〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複製RNAが1本鎖の+鎖RNAウイルスに基づいている、請求項5〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
複製RNAがトバモウイルスに基づいている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
トバモウイルスがタバコモザイクウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
複製DNA又はRNAの複製が、有性生殖不可能なF1種子の植物生長をもたらす、請求項5〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
F1種子から生長した植物の有性生殖は損なわれており、好ましくは排除されており、より好ましくはF1種子は不稔である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、F1種子は有性生殖不可能であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項27】
F1種子から生長した植物が、生殖生長期に達する前に植物の発育をブロックするために有性生殖不可能である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
植物発育のブロックは、正常な植物の発育を妨げる毒性物質又はタンパク質の組織特異的発現によって達成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質が、バルナーゼ、志賀タンパク質、植物転写因子、又は植物のホルモン状態を制御する酵素から成る群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
目的産物が、発育胚、胚乳、子葉又は発芽種子の中に蓄積する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
植物が単子葉植物又は双子葉植物である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ハイブリダイゼーションの雌性親植物が雄性不稔である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
目的産物が、ハイブリダイゼーションの雌性親植物によって提供される部分的遺伝子供与物によってコードされ、目的産物は好ましくは目的タンパク質である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
種子における目的産物の産生が、遺伝子供与を生ずることによって誘発される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法にしたがって得られる又は得ることが可能な産物。
【請求項36】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法にしたがって産生される又は産生可能な種子。
【請求項37】
種子から生長した植物の有性生殖が損なわれており、好ましくは植物は性的に不稔である、請求項36に記載の種子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項2】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1及び第2の親植物では発現せず、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項3】
目的産物がRNA、タンパク質、酵素、又は前記酵素がその合成に関与しているポリマーのような化学化合物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、目的産物は第1及び第2の親植物では発現せず、目的産物は目的タンパク質であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項5】
遺伝子供与物が、目的産物の産生に関与する複製DNA又は複製RNAを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
第1と第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、遺伝子供与物は目的産物の産生に関与する複製DNA又は複製RNAを含み、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項7】
複製DNA又は複製RNAが目的産物をコードする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
複製DNA又は複製RNAが、F1種子において第1の部分的遺伝子供与成分と第2の部分的遺伝子供与成分から生ずる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複製DNAが、ハイブリダイゼーションによって生ずるか又は複製をもたらすDNAウイルスレプリコンである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
複製DNAがDNA部位特異的組換えによって生ずる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
DNA部位特異的組換えが、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、又はフリッパーゼによって触媒される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複製DNAが、F1種子において、第1親植物由来の部位特異的リコンビナーゼと第2親植物由来の複製DNAの前駆体とを組み合わせることによって生ずる、請求項10〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
複製DNAが自律的プラスミドである、請求項5〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
複製RNAが、ハイブリダイゼーションによって生ずるか又は複製をもたらすRNAウイルスレプリコンである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
複製RNAが、第1の部分的遺伝子供与成分と第2の部分的遺伝子供与成分からRNA特異的組換えによって生ずる、請求項5〜8又は14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
複製RNAが第1の部分的遺伝子供与のDNAの転写によって生じ、転写は第2の部分的遺伝子供与の成分又は発現産物によって引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複製RNAがハイブリダイゼーションに関与する雌性親植物によってコードされている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
複製DNA又はRNAの形成に必要なRNA又はタンパク質の転写が、構成的プロモーター、種子特異的プロモーター、又は化学的に調節されるプロモーターによって制御される、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
複製DNA又は複製RNAが植物ウイルスを起源とする、請求項5〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
複製DNAがジェミニウイルスに基づいている、請求項5〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
複製RNAが1本鎖の+鎖RNAウイルスに基づいている、請求項5〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
複製RNAがトバモウイルスに基づいている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
トバモウイルスがタバコモザイクウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
複製DNA又はRNAの複製が、有性生殖不可能なF1種子の植物生長をもたらす、請求項5〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
F1種子から生長した植物の有性生殖は損なわれており、好ましくは排除されており、より好ましくはF1種子は不稔である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
第1及び第2のトランスジェニック親植物のハイブリダイゼーションによって得られるF1種子において目的産物を産生する方法であって、ハイブリダイゼーションは、F1種子において第1及び第2のトランスジェニック親植物の第1及び第2の部分的遺伝子供与を組み合わせることによって、F1種子において産生のための遺伝子供与物を生じ、F1種子は有性生殖不可能であり、続いて目的産物をF1種子から単離するか又はF1種子を蒔く、前記方法。
【請求項27】
F1種子から生長した植物が、生殖生長期に達する前に植物の発育をブロックするために有性生殖不可能である、請求項24〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
植物発育のブロックは、正常な植物の発育を妨げる毒性物質又はタンパク質の組織特異的発現によって達成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
タンパク質が、バルナーゼ、志賀タンパク質、植物転写因子、又は植物のホルモン状態を制御する酵素から成る群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
目的産物が、発育胚、胚乳、子葉又は発芽種子の中に蓄積する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
植物が単子葉植物又は双子葉植物である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ハイブリダイゼーションの雌性親植物が雄性不稔である、請求項1〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
目的産物が、ハイブリダイゼーションの雌性親植物によって提供される部分的遺伝子供与物によってコードされ、目的産物は好ましくは目的タンパク質である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
種子における目的産物の産生が、遺伝子供与を生ずることによって誘発される、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法にしたがって得られる又は得ることが可能な産物。
【請求項36】
請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法にしたがって産生される又は産生可能な種子。
【請求項37】
種子から生長した植物の有性生殖が損なわれており、好ましくは植物は性的に不稔である、請求項36に記載の種子。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【誤訳訂正書】
【提出日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】

【公表番号】特表2006−526984(P2006−526984A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508281(P2006−508281)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006069
【国際公開番号】WO2004/108934
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503128043)アイコン ジェネティクス アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】