説明

ハイブリドーマ、ハイブリドーマの取得方法および該ハイブリドーマを用いた抗体生産方法

【課題】本発明は、免疫測定等に使用されるビオチン標識物捕捉に有用な抗体の取得を目的とする。
【解決手段】化学式I記載の化合物を結合させたキャリア蛋白を免疫原として免疫細胞を取得後、ミエローマと細胞融合して得ることを特徴とするハイブリドーマの取得方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗原−抗体反応、DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNAハイブリダイゼーション等の生物学的特異反応に基づき、特異反応に関与する物質の測定方法および該測定方法において用いられるリガンド捕捉剤および該捕捉剤に関する。
【背景技術】
【0002】
固相免疫測定法においては、測定対象とする核酸、抗原あるいは抗体に応じて、あらかじめ該当する核酸に対応する固定化プローブ、該当する抗原に対応する固定化抗体固相あるいは該当する抗体に対する固定化抗原固相を調製し、測定の都度、対象とする物質に対応した当該固相を選択する方法が従来では一般的であった。このような方法では、測定対象物質ごとに必要とされる固相の種類は無数となるため、固相の調製が煩雑を極め、かつ、測定操作も機械的あるいは用手法に関わらず、測定対象物質に応じて適当な固相ごとに選択しなければならないという煩雑さが重なっていた。
【0003】
上記の問題を解決しようとする試みはすでになされている。例えば、一種類のリガンド捕捉剤固定化固相を用い、測定対象物質に応じたリガンド標識生理活性物質を選択して、リガンド捕捉剤固定化固相上で測定時に必要とするリガンド標識生理活性物質、即ち、リガンド標識プローブ、抗原あるいは抗体を固相に捕捉することに基づく方法が知られている。また、必要な固相を調製するか、あるいは、試料中の測定対象の核酸、抗原あるいは測定対象抗体とリガンド標識抗体もしくはリガンド標識抗原をリガンド捕捉剤固定化固相上に添加し、捕捉することにより、免疫的に測定される任意の測定対象物質の測定を可能にする方法も知られている。(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)さらに極めて短い時間で、1ml当たりナノグラム量のレベルでの測定感度を得る方法も知られている。(例えば特許文献3参照)またリガンド捕捉剤と生理活性物質を同一の第一の結合用粒子担体上に固定化して検出試薬と免疫学的な反応を行わせ、第二の担体上に固定化したリガンドで結合用粒子担体自体を捕捉させることで従来イムノクロマト法よりも高感度とする方法も知られている。(例えば、特許文献4参照)
【0004】
また、ビオチンに対する抗体についてポリクローナル抗体、モノクローナル抗体が知られている。(例えばモノクローナル抗体であれば 非特許文献1、非特許文献2参照。これら文献には免疫原はビオチン−N−ヒドロキシスクシイミドエステルをウシ血清アルブミンあるいはキーホールリンペットヘモシアニンに結合させて調製した記述がある。) ビオチンに対する結合性を有するものとして、アビジン、ストレプトアビジンなどが知られており、特にアビジンとビオチンの複合体は極めて安定で、その解離定数は10−15Mと非常に高いことが知られている。
【特許文献1】特公平4−49657号公報
【特許文献2】特開平2−145967号公報
【特許文献3】特開2001−235471号公報
【特許文献4】特開2004−219241号公報
【非特許文献1】Dakshinamurtiら Biochemical Journal 1986年,237巻,p477
【非特許文献2】Methods in Enzymology 1997年、279巻,p451
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高感度が必要とされる免疫測定でリガンド標識にビオチンを用いる場合、リガンド捕捉剤にビオチンに対して高い結合性を有するアビジンやストレプトアビジンを使用しても、測定に十分な感度が得られない場合があった。市販されている既存のビオチンに対するモノクローナル抗体でも十分な感度が得られず、リガンド捕捉剤として高い反応性を有する抗体の取得が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、キャリア蛋白と結合させる化合物としてビオチン部分と活性基との間のスペーサー部分が従来用いられていた化合物よりも長い化学式I記載の化合物を結合させたキャリア蛋白を免疫原として免疫しハイブリドーマを作製したところ、ビオチンを結合させた抗体に対する反応性が高く、かつ遊離のビオチンに対する反応性の低いモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得るに至り、本発明に到達した。
【0007】
即ち本発明は、以下の(1)から(6)に関する。
(1)化学式I
【0008】
【化2】

【0009】
記載の化合物を結合させたキャリア蛋白を免疫原として動物を免疫して得られた免疫細胞を細胞融合に用いることを特徴とするハイブリドーマの取得方法
(2)(1)記載の方法で得られたハイブリドーマ
(3)独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20979として寄託されている(2)記載のハイブリドーマ
(4)(3)記載のハイブリドーマを利用して抗体あるいは抗体断片を得ることを特徴とする抗体生産方法
【発明の効果】
【0010】
本発明記載のハイブリドーマの取得方法により得られたハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体はビオチンで標識化した物質に対する高い捕捉能力を有している。本特性は生物学的特異反応に基づき、特異反応に関与する物質の測定方法および該測定方法において用いられるリガンド捕捉剤に有用で、リガンド捕捉試薬に適用すれば診断・鑑別を迅速・簡易・高感度することが可能と考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のハイブリドーマの取得方法では、免疫原として化学式I
【0012】
【化3】

【0013】
に示されるビオチン部分と活性基との間にスペーサー部分を有する化合物(ビオチン化試薬)をキャリア蛋白に結合させた抗原を使って公知の方法により免疫動物に免疫を行い、公知の方法により免疫細胞を取得した後、公知の方法によりミエローマと細胞融合実施し、公知の方法により融合細胞と非融合細胞との選択実施し、公知の方法により目的の抗体を産生する細胞のスクリーニング・クローニングを実施する。
キャリア蛋白としてビオチン化試薬が反応できる官能基を有していて免疫原性があれば特に限定しないが、高純度品か精製により高純度化できるものが望ましく、例えば牛血清アルブミン(Bovine Serum Albmin 以下 BSAと略)、キーホールリンペットヘモシアニン(Keyhole Limpet Hemocyanin 以下 KLHと略)、ヤギイムノグロブリンGなどを用いることができる。
ビオチン化試薬は化学式I
【0014】
【化4】

【0015】
に示される市販のビオチン化試薬が使用できる。キャリア蛋白のアミノ基と反応するスルホスクシイミジル基に換えてスルホン酸基がないスクシイミジル基を有する化学式II
【0016】
【化5】

【0017】
で示される化合物でもキャリア蛋白との結合した構造は変わらないことから同様な効果が得られると考える。抗原ビオチン化手順は公知の方法でビオチン化することができ、例えば予め50mM炭酸緩衝液pH8で透析したキャリア蛋白を用意し、ビオチン化試薬を適当な溶媒で溶解後、キャリア蛋白モル比として過剰となる量、例えば20倍量をキャリア蛋白溶液に添加・攪拌の後25℃2時間反応させ、その後未反応のビオチン化試薬を10mM燐酸生理緩衝液で透析することにより除去し、ビオチン化抗原を得ることができる。抗原ビオチン化に際しては市販のビオチン標識化キットを使用することもできる。従来技術とは異なっている点であるビオチンとアミノ基とのスペーサー距離が、免疫細胞への抗原提示に重要と考えられ、マレイミド基やヒドラジド基を有する同様な構造をもつ化合物であってもキャリア蛋白と結合させて免疫に使用すれば、本発明と同様な効果が得られると考えられる。
【0018】
本発明のモノクローナル抗体およびハイブリドーマは上述の免疫原で免疫を行った後、公知のモノクローナル抗体作成法例えば単クローン抗体実験マニュアル 富田朔ニ・安東民衛/編 講談社サイエンティフィク 1987年、免疫研究法ハンドブック 藤原大美・淀井淳司/編 中外医学社 1996年、組織培養の技術[第3版]応用編 日本組織培養学会/編 朝倉書店 1999年記載内容に従い、作製することができる。抗体はIgM,IgGのいずれでもよいが、公知の蛋白分解酵素や遺伝子組み換え技術を用いて低分子化、例えばFabフラグメント、F(ab‘)2フラグメント、一本鎖Fvフラグメントなどにして使用することもできる。
【0019】
動物の免疫に使用する被免疫動物としては、公知のハイブリドーマ作製法に用いられる哺乳動物を使用することができる。具体的には、例えばマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマなどである。ただし摘出した抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性などの観点からは、マウスおよびラットを被免疫動物とするのが好ましい。また、実際に使用するマウスおよびラットの系統は特に制限はないが、マウスの場合には、例えばBALB/c メス 4〜12週令を用いることができる。
【0020】
動物の免疫は、上述の免疫原を動物の皮内、腹腔内、筋肉内または投与することによって行うことができる。投与スケジュールは被免疫動物の種類、個体差により異なるが、一般には、抗原投与回数2〜6回、投与間隔1〜2週間が好ましい。また抗原の投与量は動物の種類、個体差等により異なる。一般には10―100μg/匹・回程度といわれているが、投与量を変えて免疫を実施し血清中や血漿中抗体価の最も高い被免疫動物を選択することもできる。投与する際はアジュバントとよばれる免疫活性化物質と共に投与してもよい。たとえばアジュバントとして、フロイント完全アジュバンド、フロイント不完全アジュバント、CpG DNA,ムラミルジペプジド、リポポリサッカライドなどが挙げられる。
【0021】
細胞融合に際して、生体内免疫の場合では上記の抗原投与スケジュールの最終免疫日から1〜5日後に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞またはリンパ細胞を無菌的に取り出す。これらの脾臓細胞またはリンパ細胞からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法に従って行うことができる。
【0022】
細胞融合には上記の抗体産生細胞とミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞には特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜に選択して用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考慮して、その選択手続きが確立しているHGPRT(Hypoxanthine−guanine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが好ましい。すなわち、マウス由来のX63−Ag8(X63),NS1−Ag4/1(NS−1),P3X63−Ag8.U1(P3U1),X63−Ag8.653(X63.653),SP2/0−Ag14(SP2/0),F0等などである。
【0023】
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件で適宜実施することができる。そのような方法は、例えば、ポリエチレングリコールなどの高濃度ポリマー溶液中で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法などを用いることができる。
【0024】
融合細胞と非融合細胞の選択は、例えば、公知のHAT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法により行うのが好ましい。HAT培地や後述のクローニングなど細胞培養に使用する培地は、公知のものを使用すればよく、例えばRPMI1640、DMEM、eRDF、IMDMなどが使用できる。同時に動物血清や増殖因子、コンディションドメディウム、抗生物質等、蛋白質などを添加してもよいが、限界希釈などでクローニングを行う場合はこれらを組み合わせて添加することが好ましい。動物血清であれば例えばウシ胎児血清を0.1乃至20%添加してもよい。IgG含量を予め低減させた血清を使用してもよい。増殖因子であれば例えばIL−6、インシュリン、エタノールアミン、セレン、2メルカプトエタノール、ピルビン酸、非必須アミノ酸類を添加してもよいし、コンデションメディウムであれば例えば胸腺細胞培養後の培養上清5%乃至20%を添加してもよいし、抗生物質であれば例えばゲンタマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリンを添加してもよいし、蛋白であれば例えばウシ血清アルブミン、カゼイン、トランスフェリンを添加してもよい。細胞を培養する温度は細胞が増殖する温度であればよいが例えば37℃でおこなうことができる。培地中に炭酸水素ナトリウムを加える場合には炭酸ガス存在下例えば培地中のpHが中性となる炭酸ガス5%乃至10%で培養するのが好ましい。
【0025】
目的とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞のスクリーニングは、公知の抗体スクリーニング方法が使用でき、例えば酵素免疫検定法(EIA:Enzyme Immunoassay)、凝集法、セルソーター等により行うことができる。EIAであればビオチンを固定化した担体を用いて得られた細胞培養上清に含まれるビオチン結合活性を有する抗体の有無を検知することにより、また例えば凝集法であれば、ビオチンを固定化した粒子、例えば羊赤血球をビオチン化試薬と反応させて得られたビオチン化羊血球と細胞培養液を丸底プレートで反応させて観察される凝集阻止像の有無によりビオチン結合活性を有する抗体の有無を検知することにより、セルソーターであれば蛍光標識したビオチン試薬をハイブリドーマと混合し細胞表面の蛍光有無により識別分離することにより、所望の抗体を産生する細胞をスクリーングすることができる。
【0026】
スクリーニングにより選択されたハイブリドーマ細胞は、メチルセルロース法、軟アガロース法、限界希釈法などの公知の方法によりクローニングし、抗体産生に用いる。
【0027】
以上の通りの方法によって得たハイブリドーマ細胞は、液体窒素中または−80℃以下の冷凍庫中に凍結状態で保存することができる。細胞凍結時の細胞濃度は1x10/ml乃至1x10/mlの範囲が好ましく、凍結時安定化剤として培地に5乃至10%(v/v)ジメチルスルホキシドを添加してもよいし、市販の細胞凍結保存剤を用いて凍結保存してもよい。
【0028】
本発明の抗体生産方法は上記の方法で作製したハイブリドーマ細胞を公知の方法、例えば 動物細胞大量培養と有用物質生産 大石道夫監修 株式会社シーエムシー 1986年 記載の方法を用いて培養・精製することによって所望のモノクローナル抗体を得ることができる。例えばBALB/cAマウスに免疫しBALB/cA由来のミエローマと細胞融合したハイブリドーマであれば、あらかじめプリスタン等の鉱物油を投与した同系統マウスの腹腔に該細胞を移植すると1乃至3週間でモノクローナル抗体を含んだ腹水が得られる。また例えばハイブリドーマを培地中で培養するとハイブリドーマからモノクローナル抗体が分泌され、該抗体を含んだ培養上清が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ腹水や培養上清は公知の抗体精製手法でより純度の高いモノクローナル抗体を得ることができる。培養時に使用する培地は血清を含まない市販の無血清培地、無血清無蛋白培地を使用するとさらに純度の高いモノクローナル抗体を得ることができる。必要により培地に公知の抗生物質・抗真菌剤、糖質、脂質やアミノ酸を追加することができる。抗生物質・抗真菌剤であれば例えば、硫酸ゲンタマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンBを細胞生育に影響しない程度添加することができる。糖質であれば例えば、グルコース、マルトース、キシロースを添加することができる。アミノ酸であれば、例えばL−グルタミンを添加することができる。L−グルタミンは培養液中で不安定であるため8mM程度まで添加することもできるが、溶液中で安定なグルタミン誘導体であるL−グリシル−L−グルタミン、L−アラニル−L−グルタミンを添加してもよい。これらの結果としてハイブリドーマ培養環境の良好化、培養液中の抗体分泌量を高めることができる。ハイブリドーマ作成時と異なる培地を適用して細胞培養抗体生産を行う場合は、同培地に予め馴化させたハイブリドーマを使用することが好ましい。例えば同培地に直接ハイブリドーマをけん濁し、遠心分離操作により細胞と培地を分離、次いで同培地で比較的高い細胞濃度0.5乃至1x10/mlとなるよう再けん濁し、倍化速度と生存率など細胞の状況を観察しながら培養を繰り返す。直接同培地に馴化できない場合は従来の培地から混合比を段階的に上げながら行うこともできる。
【0029】
また本発明の抗体生産方法は上述のハイブリドーマで発現している抗体をコードする遺伝子あるいは遺伝子断片を公知の技術で取得し、公知の遺伝子組換え技術により発現ベクターを組み込んだ形質転換体を培養することにより所望の抗体を得ることができる。抗体生産により抗体が形質転換体内に蓄積される場合は公知の方法により形質転換体を回収し破砕することにより抗体を含んだ破砕液が得られる。抗体生産により形質転換体を培養した培地中に抗体が分泌される場合には形質転換体培養により該抗体を含んだ培養上清が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ破砕液や培養上清は公知の抗体精製方法でより純度の高い抗体を得ることができる。
また本発明の抗体生産方法は上述のハイブリドーマで発現している抗体をコードする遺伝子あるいは遺伝子断片を公知の技術で取得し、該抗体遺伝子あるいは遺伝子断片から結合活性を有する蛋白部分をコードするメッセンジャーRNAを公知の方法で合成し公知の無細胞蛋白合成方法により抗体生産することもできる。抗体生産により該抗体を含んだ蛋白合成反応液が得られる。必要に応じて該抗体を含んだ蛋白合成反応液は公知の抗体精製方法でより純度の高い抗体を得ることができる。
【0030】
抗体精製方法として例えば、硫安塩析、UF膜濃縮、カラムクロマトが挙げられる。カラムクロマトに使用できる樹脂担体として例えば陰イオン交換樹脂やプロテインAやプロテインG、ProteinL、ビオチン化合物が結合されたアフィニティクロマト樹脂、ハイドロキシアパタイト樹脂、疎水クロマト樹脂などの抗体吸着性のあるものや、架橋デキストラン樹脂やアガロース樹脂など分子量で樹脂内移動度の異なることを利用したゲルろ過担体が挙げられる。特にアフィニティクロマト樹脂を使用する際、樹脂に抗体吸着させてから抗体溶出までのプロセスにおけるカラム洗浄操作が重要であり、カラムサイズに対して5倍量以上の緩衝液を通液することが望ましく、より好ましくは10倍乃至20倍通液することが望ましい。これら精製操作を行う前にモノクローナル抗体のサブタイプを調べておき適切な精製手段を選択することが望ましい。精製後の抗体は透析などの方法でpH中性の緩衝液にバッファー交換を行うことが好ましく、pH中性の緩衝液として例えば生理的食塩濃度のリン酸緩衝液(PBS(−))や生理的食塩濃度のトリス緩衝液(TBS)を用いることができる。本緩衝液のpHは5.5〜8.5の間が好ましい。
【0031】
このようにして得られたモノクローナル抗体は溶液状態や凍結状態で保存することができる。液状で保存する場合は防腐剤を添加したり、0.22μmメッシュの滅菌メンブランフィルターなどで無菌ろ過後滅菌容器中に保存することが好ましい。防腐剤として例えば0.05%アジ化ナトリウムを添加することができる。容器の滅菌方法は公知の方法で実施すればよく、例えばγ線照射滅菌、UV照射滅菌、オートクレーブ滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌などが挙げられる。保存容器は保存中抗体と反応しない不活性な素材を使用したものが使用でき、例えば、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレンである。抗体の結合活性を損なわない方法であれば保存容器表面に吸着しないよう表面加工を行った容器を使用してもよい。液状での保存温度は凍結しない温度であればよいが、蛋白変性を抑えるためできるだけ低温であることが好ましく、より好ましくは2乃至10℃である。また凍結を防止することのできる濃度で凍結防止剤を添加するとさらに低温で保存することもでき、例えば終濃度50%のグリセロールを添加すると−20℃でも凍結することなく液状で保存することができる。凍結状態で保存する場合は−20℃以下、より好ましくは−30℃以下で保存することが好ましい。保存時の抗体濃度は沈殿を生じない濃度で設定することができるが、好ましくは0.1乃至5mg/mlである。また安定化剤として蛋白質、水溶性ポリマー高分子、界面活性剤、糖類、糖アルコールを添加することもできる。安定化蛋白質の例としてウシ血清アルブミンやゼラチンなどが挙げられ、保存中沈殿が生じない濃度で添加することができる。濃度範囲としてより好ましくは0.1乃至5mg/mlである。
【0032】
モノクローナル抗体の等電点は公知の分析手段で分析することができ、例えばポリアクリリアミドゲル等電点電気泳動によって分析することができる。またモノクローナル抗体のアイソタイプは、公知の分析手段で分析することができ、例えばマウスであればIgG1IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgA、カッパー鎖、ラムダ鎖各アイソタイプに特異的に結合する抗体の結合性有無により確認することができ、市販の抗体アイソタイピングキットを使用してもよい。
【0033】
本発明の抗体はリガンド捕捉試薬として担体に結合された形態で使用することができる。担体は公知の素材が使用でき、例えばポリスチレン、ガラス、シリカ、セルロース、ポリビニル、ナイロン、ニトロセルロース、PVDF、マグネタイト、金、白金、水晶、脂質、蛋白質、ラテックスなどが挙げられる。抗体の固定化方法は、一旦固定化された抗体の脱離が使用上問題ないレベルであれば適用することができ、公知の方法が適用できる。固定化に使用する抗体液に使用する緩衝液は特に限定しないが、調製工程で抗体が失活することなく、固定化反応を阻害しないものであれば使用することができ、例えばpHであれば3乃至10の範囲、濃度であれば1mM乃至200mMの範囲のものを使用することができる。例えばポリスチレン製エライザプレートであればダルベッコのリン酸生理緩衝液(PBS(−))、燐酸緩衝液 pH7、炭酸緩衝液 pH9.6で適当な濃度に希釈した抗体液を2〜40℃の範囲で30分乃至一晩固相と接触させて固定化することができる。また例えばガラス繊維上に固定化するのであればクエン酸緩衝液 pH3にて適当な濃度に希釈した抗体液を2〜40℃の範囲で0.5分乃至一晩、より好ましくは5分乃至30分固相と接触させて固定化することができる。またグルタルアルデヒドやカルボジイミドといった架橋試薬を使用し共有結合的に担体表面の官能基と抗体を結合させてもよいし、また本発明の抗体を捕捉しうる物質、例えば、第二の抗体、プロテインA,プロテインG,プロテインL、ビオチン化物質を予め担体に固定化しておき、その親和性により捕捉させ固定化してもよい。形状は公知の形状が使用でき、例えば96穴エライザプレート、シリカビーズ、ポリスチレンビーズ、イムノクロマトストリップ用膜、ガラス繊維、多孔性膜、磁性ビーズ、ラテックス粒子、デキストラン粒子、アガロース粒子、金コロイド、血球、細胞、ウイルス、リポソーム、水晶振動子、金薄膜などが挙げられる。これらの担体は必要により着色されていてもよい。
これら担体に抗体を結合させた後、非特異的な蛋白吸着を抑える目的で他の蛋白・界面活性剤やポリマー・血清などの含む溶液を固相に接触させるブロッキング工程を実施してもよい。ブロッキングに使用する蛋白としてブロッキング蛋白として公知の蛋白が使用でき、例えば牛血清アルブミン、無脂乳蛋白、カゼイン、ゼラチン、セリシンが挙げられ、0.1乃至10%溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する界面活性剤やポリマーとして、ブロッキング剤として公知の界面活性剤・ポリマーが使用でき、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイーン20)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。これらは使用する担体に応じて選択し、0.1乃至0.5%濃度溶液を調製し使用することができる。ブロッキングに使用する血清として、ビオチンを多量に含まない血清であれば使用することができ、例えば牛胎児血清、新生牛血清、ウマ血清、ヤギ血清、ウサギ血清、ラット血清、モルモット血清、ブタ血清、マウス血清が挙げられ、0.5%乃至100%溶液を使用することができ、好ましくは使用する前に血清ロットチェックを行い、リガンド捕捉能に影響しないか確認して使用することが望ましい。
本発明の抗体を使用したリガンド捕捉試薬は、調製後保存液中で乾燥させることなく保管しても、乾燥状態で保管してもよい。保存液中で保管する場合には実使用に問題のない捕捉活性を維持できるよう、必要に応じ保存液中に蛋白、高分子ポリマー、緩衝剤、塩類、防腐剤から選択される成分を添加することが望ましく、それぞれの使用担体や抗体との結合様式を勘案しこれら組み合わせの保存安定化効果を検討し、添加物質や量について設定することが望ましい。また乾燥状態で保管する場合には乾燥により捕捉活性が低下せず、かつ使用時捕捉性能が容易に復元するよう、公知の糖類、糖アルコール、アミノ酸、蛋白、高分子ポリマー、緩衝剤、塩類から選択される成分を添加した安定化液に接触させ、乾燥させることができる。添加する蛋白は例えば牛血清アルブミン、カゼインが挙げられる。糖類・糖アルコールでは、公知の安定化効果ある糖類・糖アルコールが使用でき、例えばグルコース、スクロース、ソルビトール、グリセロールが挙げられ、アミノ酸では公知の安定効果あるアミノ酸、例えばグリシン、リジン、アルギニンが挙げられる。これら濃度については0.1乃至10%溶液で調製し使用することができる。乾燥方法は、公知の乾燥方法でリガンド捕捉能が低下しない方法であれば適用することができ、例えば自然乾燥、風乾、真空乾燥、減圧乾燥、凍結真空乾燥、赤外線や遠赤外線による乾燥、またマイクロウェーブなどの高周波を利用した乾燥等が挙げられる。乾燥後は、吸湿しない条件で保管することが好ましく、シリカゲルなど乾燥剤とともに密封保管することが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示してこの発明を詳細かつ具体的に説明するが、この発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1:抗ビオチンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
(1)免疫原として使用するビオチン化KLHの調製
ガンマ線滅菌されたふた付きポリプロピレン製サンプルチューブに、10mM燐酸生理緩衝液pH7.2(以下 PBS緩衝液と略)で溶解されたKLH(EMDバイオサイエンス社製 濃度25.2mg/ml エンドドキシンフリー)200μL、1M 炭酸水素ナトリウム溶液 50μL、オートクレーブ滅菌蒸留水(以下 滅菌水と略) 205μLの順に加えて混合し、KLH溶液を調製した。次いでBiotin−(AC−Sulfo−OSu(同仁化学社製)10mgを滅菌水300μLで溶解し、速やかに溶解したうちの45μlを上述のKLH溶液に添加混合し、25℃にて2時間反応させた。未反応のビオチン試薬を除くため、滅菌済みPBS緩衝液でセファデックスG25担体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を平衡化し、同担体を3ml充填したミニカラムを予め準備した。ビオチン化反応後のKLH溶液を同カラムに添加、次いでPBS緩衝液1mlにて溶出させ、溶出全量をビオチン化KLHとして回収した。
(2)マウスの免疫および細胞融合
ビオチン化KLHを1mg/mlとなるよう注射用生理食塩水にて希釈し抗原液を調製した。抗原液0.2ml分を等量のコンプリートフロイントアジュバント(DIFCO LABORATORIES社製)と混合してエマルジョン化し、マウス(Balb/cA 、5週令、メス、日本クレア)の腹腔に1匹あたりエマルジョン100μL注入し、初回免疫を行った。さらに2週間、4週間、7週間後、ビオチン化KLHを0.5mg/mlとなるよう同様に希釈して抗原液を調製し、インコンプリートアジュバント(DIFCO LABORATORIES社製)と抗原液を等量混合・エマルジョン化し、同様に同マウスに再度免疫を施した。初回免疫から10週間後に1回、以降1ヶ月間隔で4回、ついで2週間間隔で2回、抗原液50μg/ml濃度になるよう注射用生理食塩水で希釈後、腹腔に100μl注入し、最終免疫の4日後、同マウスの脾臓を無菌的に摘出して脾臓細胞を調製(2.9x108個)した。一方、骨髄腫細胞Sp2/0−Ag14を10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地(極東製薬)で37℃5%炭酸ガス濃度下拡大培養を行い、次いで血清成分を含まないe−RDF培地に細胞けん濁した。このようにして得られたSp2/0−Ag14 5.7x10個と上述の脾臓細胞とを50ml容量の遠心管中にて混合し、200xg 10分遠心分離を行い、上清廃棄、チューブごとタッピングして細胞塊をほぐし、37℃環境下で50%ポリエチレングリコール1500液(ロシュ社)を1ml添加し細胞と混合、次いでe−RDF培地を1ml、3ml、10mlの順に添加した。200xg 10分遠心分離後、そのまま37℃で5分間放置し、その後上清を廃棄した。パスツールピペットを使って牛胎児血清5.8mlに融合細胞を縣濁し、うち2ml分を選択培養培地(100xHATサプリメント(GIBCO社)1/100容とCondimedH1(ロシュ社)1/10容、牛胎児血清1/10容を含むe−RDF培地)240mlに縣濁、ふたつき96穴浮遊細胞培養用プレート(住友ベークライト社製)20枚に120μLづつ各ウェルに無菌的に分注した。37℃5%炭酸ガス条件下でHAT選択培養を行った。融合から10日後目視でコロニーが認められ、ハイブリドーマの出現を確認した。
(3)抗体産生ハイブリドーマのELISAによる一次スクリーニング:選択培養後の各ウェル培養上清50μLをPBS緩衝液200μlで希釈し、試料として用い、ビオチン化KLHを固定化したエライザプレートに対する反応性を指標としてスクリーニングを実施した。すなわち、PBS緩衝液で10μg/mlになるよう希釈したビオチン化KLH溶液50μlを96穴エライザプレート(住友ベークライト社製)の各ウェルに分注・均一になるよう攪拌した後25℃2時間放置してビオチン化KLHをプレートに固定化した。次いでビオチン化KLH溶液をエライザプレートから除去し、0.05%(W/V)ツイーン20を含むPBS緩衝液を各ウェルに0.3ml分注・廃棄を3回繰り返して洗浄を行った後、1%(W/V)ウシ血清アルブミンを含むPBS緩衝液0.3mlを各ウェルに分注して1時間25℃で放置しブロッキングを行った。次いで液を除去し洗浄後、選択培養上清50μLを分注し、25℃でビオチン化KLH固定化プレートと反応させた。液を除去し洗浄後、0.1%(W/V)ウシ血清アルブミンを含むPBS緩衝液にて4000倍に希釈して調整したペルオキシダーゼ標識羊抗マウスイムノグロブリン抗体(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)50μlを分注し25℃1時間プレートと反応させた。液を除去し洗浄後、テトラメチルベンチジンを含む発色液TMB+(ダコサイトメーション社製)を各ウェル50μL分注し25℃で10分酵素反応させ、1N硫酸50μL分注して反応停止させ、プレートリーダーにて450nmの吸光度を測定した。対照としてビオチン化KLHを固定化していないエライザプレートでも同様に作業を行った。
ウェル番号0021で着色が確認されビオチン化KLHと強い反応性が認められた。1次スクリーニングとして本ウェルを選抜し、引き続きクローニングを実施した。
(4)ハイブリドーマのクローニング:限界希釈法によりクローニングを実施した。すなわちスクリーニングで選抜した各選択培養ウェルの細胞を100個となるよう無菌的にサンプリングし、それぞれクローニング培地(CondimedH1(ロシュ社)1/10容、牛胎児血清1/10容を含むe−RDF培地)20mlに対し、最終5個/mlになるよう縣濁し、ふたつき96穴浮遊細胞培養用プレート(住友ベークライト社製)各1枚96ウェルに200μlづつ無菌的に分注した。37℃5%炭酸ガス条件下で10日間培養を行った。各ウェルのクローニング培養後上清50μlをサンプリングし、PBS緩衝液200μlで希釈しELISA試料とし、1次スクリーニングと同様にELISAを実施し、反応性が認められた培養上清をサンプリングしたウェルから1ウェル選抜し1次クローニング後のハイブリドーマ0021を得た。本細胞を拡大培養し、セルバンカー(十慈フィールド社製)に生細胞密度5x10個/mlとなるよう細胞を十分けん濁し、ガンマ線滅菌された1.8ml凍結チューブ(住友ベークライト社製)に該細胞けん濁液を1mlづつ分注し、密栓後−80℃フリーザーにて凍結保存した。なお、ハイブリドーマ0021は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成18年8月2日 受託番号FERM P−20979として寄託されている。
【0035】
実施例2:0021精製抗体の調製
(1)0021培養上清の調製:液体窒素中で凍結保存されていたハイブリドーマ0021の入ったチューブを−80℃1時間保存後、37℃の温湯中ですばやく融解させた。それぞれ10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地10mlの入った遠心管中に全量入れ、ピペット操作で細胞縣濁した。150xg 5分遠心し、上清を廃棄後、5mlの10%(v/v)牛胎児血清を含むe−RDF培地にピペット操作で細胞を浮遊させ、底面積25cm浮遊細胞培養用フラスコにそれぞれ播種し37℃5%炭酸ガス濃度下で培養した。2継代同培地で培養後、60μg/L 硫酸ゲンタマイシン、2mM L―グルタミン、6mM L−アラニル−L−グルタミンを含むCD−Hybridoma Medium(インビトロジェン社)に培地を代えて馴化を行い、さらに3継代同培地で培養した。その後培地15mlで細胞浮遊させ底面積75cm浮遊細胞培養用フラスコに継代培養し、次いで培地45mlで細胞浮遊させ底面積225cm浮遊細胞培養用フラスコに継代し、7日間培養を行い、抗体を培地中に十分分泌させた。培養により得られた細胞培養液を50ml遠心管に移し700xg 10分遠心分離し、ハイブリドーマ培養上清43.9mlを得た。
(2)モノクローナル抗体のサブタイピング:市販のイムノクロマト法を使ったサブタイピング試薬(イソストリップ:ロシュ社)を使い、得られた培養上清をPBS緩衝液で10倍希釈した希釈液150μlを試料として分析した。ハイブリドーマ0021の培養上清に含まれるモノクローナル抗体のサブタイプはIgG κであった。
(3)0021精製抗体の調製:得られた培養上清はNaCl 7.9gと1M ホウ酸緩衝液 pH9 2.3mlとを加えて溶解混合し、0.8μmのフィルターろ過を行った。あらかじめ3M NaClを含む50mMホウ酸緩衝液(pH9:以下 結合緩衝液)で平衡化されたrProteinAセファロースFastFlow(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)をカラムに1ml充填し、培養上清全量を流速1ml/分でカラムに通液した。次いで15mlの結合緩衝液でカラム洗浄後、0.1Mクエン酸緩衝液(pH3)を同流速で通液してカラムより抗体を溶出させ、抗体を含む溶出液2mlを得た。ただちに1M トリス緩衝液(pH9) 0.4mlを加え、0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS緩衝液 1lに対して透析を3回実施した。OD280nmの吸収により蛋白量を算出した結果、得られた0021精製抗体は5.8mgであった。次いでガンマ線滅菌された0.22μmの低蛋白吸着メンブランフィルター(日本ミリポア社製)で0021精製抗体を濾過し、ガンマ線滅菌済プロピレン製15mlチューブ内で4℃保管した。
(4)0021精製抗体のゲル濾過分析:FPLC Director System(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)、TSKGEL G3000SW(カラム長30cm 東ソー社製)、溶離液0.1M硫酸ナトリウムを含む50mM燐酸緩衝液pH7.0を用いた流速0.5ml/分のゲル濾過分析システムを用い、0021精製抗体1mg/ml 0.1ml 注入後の分離パターンを280nmの吸光度変化でモニターした。溶出16.7分を主ピークとするパターンが得られ、ベースラインを基準とした吸光度積算値に対する主ピークの割合は95%であった。
(5)0021精製抗体の電気泳動分析:PhastSystem(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用い、精製抗体1mg/ml 1μlをPhastGel IEF3−9(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に添加しメーカー指定のプログラムにて電気泳動した。同時にpI KIT(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を試料として泳動した。電気泳動後のゲルはクマジー染色を行ってゲル中の蛋白を可視化し、既知のpIマーカー蛋白の等電点と移動度から精製抗体0021のバンド移動度を測定した。その結果、0021精製抗体ではpI6.6を中心に6.4〜6.8の範囲で複数バンドが観察された。
【0036】
実施例3:0021精製抗体固定化エライザプレートの調製
(1)0.1M燐酸緩衝液pH7.0にて10μg/mlに0021精製抗体を希釈し、0021精製抗体希釈液を調製した。
(2)96穴エライザプレート(NUNC社 マキシソープ)の各ウェルに50μlづつ0021精製抗体希釈液を分注・均一になるよう攪拌した後25℃2時間放置してウェルに固定化した。次いで液をエライザプレートから除去し、0.05%(W/V)ツイーン20を含むPBS緩衝液を各ウェルに0.3ml分注・廃棄を3回繰り返して洗浄を行った後、1%(W/V)ウシ血清アルブミンを含むPBS緩衝液0.3mlを各ウェルに分注して1時間25℃で放置しブロッキングを行った。液廃棄した後同様に洗浄を行い、0.05%(W/V)アジ化ナトリウムと0.1%(W/V)ウシ血清アルブミンを含むPBS緩衝液0.3mlを各ウェルに分注した。液の乾燥を防ぐためウェル上部を粘着性プレートシールにてシールし、4℃で保管した。使用直前に液を廃棄し、ペーパータオルで叩きながら出来るだけウェルに残った液を除いた後、ビオチン捕捉試薬として使用した。
【0037】
比較例1:アビジン固定化プレートの調製
(1)0.1M燐酸緩衝液pH7.0にて10μg/mlになるよう卵白由来アビジン(ナカライテスク社)を溶解し、アビジン希釈液を調製した。
(2)実施例1(2)記載手順のうち0021精製抗体希釈液をアビジン希釈液に換えて作業を実施しアビジン固定化エライザプレートを調製した。液の乾燥を防ぐためウェル上部を粘着性プレートシールにてシールし、4℃で保管した。使用直前に液を廃棄し、ペーパータオルで叩きながら出来るだけウェルに残った液を除いた後、ビオチン捕捉試薬として使用した。
【0038】
比較例2:ストレプトアビジン固定化エライザプレートの調製
(1)0.1M燐酸緩衝液pH7.0にて10μg/mlになるようストレプトアビジン(ナカライテスク社)を溶解し、ストレプトアビジン希釈液を調製した。
(2)実施例1(2)記載手順のうち0021精製抗体希釈液をストレプトアビジン希釈液に換えて作業を実施しストレプトアビジン固定化エライザプレートを調製した。液の乾燥を防ぐためウェル上部を粘着性プレートシールにてシールし、4℃で保管した。使用直前に液を廃棄し、ペーパータオルで叩きながら出来るだけウェルに残った液を除いた後、ビオチン捕捉試薬として使用した。
【0039】
比較例3:ニュートラアビジン固定化エライザプレートの調製
(1)0.1M燐酸緩衝液pH7.0にて10μg/mlになるようニュートラアビジン(ピアス社)を溶解し、ニュートラアビジン希釈液を調製した。
(2)実施例1(2)記載手順のうち0021精製抗体希釈液をニュートラアビジン希釈液に換えて作業を実施しニュートラアビジン固定化エライザプレートを調製した。液の乾燥を防ぐためウェル上部を粘着性プレートシールにてシールし、4℃で保管した。使用直前に液を廃棄し、ペーパータオルで叩きながら出来るだけウェルに残った液を除いた後、ビオチン捕捉試薬として使用した。
【0040】
比較例4:市販ビオチン抗体固定化エライザプレートの調製
(1)凍結乾燥された抗ビオチンモノクローナル抗体クローン33(ロシュ社)をメーカー指定の蒸留水を添加して復元し、次いで0.1M燐酸緩衝液pH7.0にて10μg/mlになるよう希釈した。
(2)実施例1(2)記載手順のうち0021精製抗体希釈液を抗ビオチンモノクローナル抗体希釈液に換えて作業を実施し市販抗ビオチン抗体固定化エライザプレートを調製した。液の乾燥を防ぐためウェル上部を粘着性プレートシールにてシールし、4℃で保管した。使用直前に液を廃棄し、ペーパータオルで叩きながら出来るだけウェルに残った液を除いた後、ビオチン捕捉試薬として使用した。
【0041】
実施例4:CEA測定における感度比較
(1)抗CEAモノクローナル抗体のビオチン化:抗CEAモノクローナル抗体クローン5909(メディックスバイオケミカ社)0.37mgを含む0.5mlの抗体液に1M炭酸水素ナトリウム溶液を50μl添加した。次いでBiotin−Sulfo−OSu(同仁化学社製)10mgを滅菌水1mlで溶解し、溶解した内の5.5μlを速やかに上述の抗体液に添加混合し、25℃にて2時間反応させた。未反応のビオチン試薬を除くため、滅菌済みPBS緩衝液で脱塩用カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を平衡化し、ビオチン化反応後の抗体液全量を同カラムに添加、次いでPBS緩衝液にて溶出させた。溶出液のOD280nm吸光度をモニターし、最初に溶出したピークをビオチン化抗CEAモノクローナル抗体として回収し、次いで限外濾過膜による濃縮を行った。濃度1mg/mlあたりのOD280nmを1.4として抗体濃度を算出したところ、0.67mg/mlであった。
(2)抗CEAモノクローナル抗体のペルオキシダーゼ標識化:抗CEAモノクローナル抗体クローン5905(メディックスバイオケミカ社)0.2mgをペルオキシダーゼ標識キットNH(同仁化学社製)にてペルオキシダーゼ標識を行い、200μlのペルオキシダーゼ標識抗CEAモノクローナル抗体を得た。
(3)ビオチン化抗CEA抗体捕捉 サンドイッチEIAによる各ビオチン捕捉試薬捕捉能の比較:試料としてCEA標準品30ng/ml,0ng/mlを用いた。試料 25μlを実施例3、比較例1〜4記載のビオチン捕捉試薬に分注後、0.2、0.4,0.8μg/mlとなるよう0.1%(W/V)BSAを含むPBS緩衝液で希釈したビオチン化抗CEAモノクローナル抗体を各25μLづつ分注・混合を行い、37℃1時間ビオチン捕捉能とCEAとの抗原抗体反応を同時に反応させた。0.05%(W/V)ツイーン20を含むPBS緩衝液にて洗浄を行い、残った水分をプレートごとペーパータオルで叩きながら出来る限り除いた。0.1%(W/V)BSAを含むPBS緩衝液で2000倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗CEAモノクローナル抗体液を各50μlづつ分注し、さらに37℃1時間反応させた。0.05%(W/V)ツイーン20を含むPBS緩衝液にて洗浄を行い、残った水分をプレートごとペーパータオルで叩きながら出来る限り除いた。テトラメチルベンチジンを含む発色液TMB+(ダコサイトメーション社製)を各ウェル50μl分注し25℃で10分酵素反応させ、1N 硫酸50μl分注して反応停止させ、プレートリーダーにて450nmの吸光度を測定した。
CEA0ng/ml試料では吸光度0.03以下のシグナルしか認められなかった。一方CEA30ng/ml試料では表1に示すようにビオチン捕捉試薬ごとにシグナル強度が異なり、0021精製抗体を固定化した実施例3のビオチン捕捉試薬でも最も高いシグナルが得られ、検討した中でビオチン化抗CEAモノクローナル抗体捕捉能が最も高いことがわかった。
【0042】
【表1】

【0043】
(4)ビオチン共存下でのビオチン化抗CEA抗体捕捉 サンドイッチEIAによる各ビオチン捕捉試薬捕捉能の比較:試料として2μg/ml D−ビオチンを終濃度に含むCEA標準品30ng/ml,0ng/mlを用いた。それ以外は上述の(3)記載の手順に従い測定を行った。
CEA0ng/ml試料では吸光度0.03以下のシグナルしか認められなかった。一方CEA30ng/ml試料では表2に示すようにビオチン捕捉試薬ごとにシグナル強度が異なり、0021精製抗体を固定化した実施例3のビオチン捕捉試薬でも最も高いシグナルが得られ、検討した中でビオチン化抗CEAモノクローナル抗体捕捉能が最も高いことがわかった。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例5:0021精製抗体固定化ガラス繊維を含むリガンド捕捉試薬の調製
(1)吸収要素の作製:タバコフィルターを11.5mmづつ切断した。
(2)リガンド捕捉試薬に用いる容器の作製:直径9.0mm、厚さ1.0mmのガラス繊維濾紙(アドバンテック東洋社製)を円形にくりぬき、上記(1)で作製した吸収要素に積層し、図2に示すような、ポリエチレン製の液体不透過性容器内に収納した。今回使用した液体不透過性容器は内径9.0mm、測定容器の長さが15mmのものを使用した。
(3)抗体の固定化:上記(2)で作製した容器の開口部より(a)マウス抗ビオチンモノクローナル抗体 0021精製抗体 47μg/ml(100mMクエン酸緩衝液:pH3.0)を50μl、(b)5%グリセロール・1%カゼイン溶液(10mMリン酸塩―生理食塩水緩衝液pH7.4)を100μl、直前に供給された液が吸引されるのを待って順次供給した後、凍結乾燥した。乾燥後はシリカゲル乾燥剤とともにガスバリア能を有する気密ポリ袋に入れ、使用まで4℃で保管した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
同一操作での分析単位の構築は分析工数省力化に向けた自動分析システム化に必須なプロセスであり、リガンド捕捉試薬は共通の分析プラットホーム構築に利用されている。本発明記載のハイブリドーマの取得方法によれば、ビオチン標識物質捕捉性能にすぐれた抗体産生ハイブリドーマの取得が可能になる。該ハイブリドーマが産生する抗体は、生物学的特異反応に基づく特異反応に関与する物質の測定方法および該測定方法において、リガンド捕捉試薬性能向上寄与や優れたリガンド捕捉試薬開発の可能性を広げると期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は実施例3、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4で調製したビオチン捕捉試薬でビオチン化抗CEAモノクローナル抗体を捕捉させてCEA測定を行ったときのビオチン化抗体濃度依存的なシグナル感度変動を示したグラフである。
【図2】図2は本願発明の一実施例として調製したリガンド捕捉試薬容器の斜視図。
【図3】図3は図2記載のリガンド捕捉試薬容器の断面図。
【符号の説明】
【0048】
1:外郭部
2:開口部
3:ガラス繊維濾紙
4:吸収要素
5:カップ
6:つば
7:キャップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式I
【化1】

記載の化合物を結合させたキャリア蛋白を免疫原として動物を免疫して得られた免疫細胞を細胞融合に用いることを特徴とするハイブリドーマの取得方法
【請求項2】
請求項1記載の方法で得られたハイブリドーマ
【請求項3】
独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20979として寄託されている請求項2記載のハイブリドーマ
【請求項4】
請求項3記載のハイブリドーマを利用して抗体あるいは抗体断片を得ることを特徴とする抗体生産方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−92802(P2008−92802A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274275(P2006−274275)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】