説明

ハウジング形管継手

【課題】主にハウジングの構造工夫により、部品の寸法誤差や製品誤差、或いはそれらの複合に拘らずに、ハウジングどうしを互いに接近する方向に強制的に押圧した装着状態においては、ガスケットを十分圧縮して強度不足無く管どうしをしっかりと連結できて品質を向上させることが可能となるよう、改善されたハウジング形管継手を提供する。
【解決手段】ハウジング形管継手において、一対のハウジング1,1の両端面8a,8aどうしを互いに当接させた状態では、一対のハウジング1,1夫々の内周面9a,10aが連設されて形成されるハウジング幅方向視のループ形状が、そのハウジング開口方向の径Raは環状溝5の許容寸法誤差範囲内での最大径Dmaxより若干大きく、かつ、ハウジング奥行き方向の径Rbは環状溝5の許容寸法誤差範囲内での最小径Dminより若干小さい略楕円状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水、消火、冷却水、冷温水、排水等の各種配管に適用され、接合する管の両端にガスケットを嵌め、その上からハウジングを被せ、ボルト・ナットによる締付け手段で締め付けて流体を密封し、離脱防止機構を有するハウジング形管継手に係り、詳しくは管の端部外周に周方向で連続する環状溝(グルーブ)を形成し、離脱防止をするグルーブ形接合構造を持つハウジング形管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のハウジング形管継手としては、特許文献1や特許文献2において開示されたものが知られている。特許文献1において開示されるハウジング形管継手は、一対のハウジングにおける管への装着時において互いに対向する座面に、互いに嵌り合う略半円状の凸状係合部と凹状係合部とが、ハウジングの中心線(管長手方向に直交する方向の線)に対して横ずれする状態で振り分けて形成してある。そのため、一対のハウジングどうしをボルト・ナットを用いて管端部に締め付けて行くと、凸状係合部と凹状係合部との嵌り込みによる位置定め機能により、ハウジングどうしが横方向へ(管長手方向に)互いに位置ずれしながら固定されるようになる。
【0003】
特許文献2において開示されるハウジング形管継手は、ハウジングにおける一対の半円弧状の締付部の両端部における内外に、周方向の所定角度範囲において横方向(管長手方向に)に出っ張る突出部を、周方向の各端部に互いに反対向きに突出する状態で一体的に形成する構成が採られている。この構成によれば、ボルト・ナットを締め込んでの一対のハウジングの管端部への装着に伴い、内外に突出する突出部が環状溝の側壁に擦り寄り移動するようになる。
【0004】
つまり、これら特許文献1,2のものは、ハウジングのボルト・ナットによる締込み装着に伴って環状溝と締付部との溝幅方向(管長手方向)のガタつきが無くなるように機能するのであり、その機能により、内部圧力による配管の推力や熱膨張収縮が生じた際に、管と管継手とが管長手方向に相対移動する不都合、即ち、ハウジング形管継手を用いた管同士の連結部は剛性に欠けるという不都合を軽減することができる利点を有している。
【0005】
上述のように種々の利点を有するハウジング形管継手ではあるが、各部品の寸法精度や誤差の蓄積によっては、うまく連結できないことが考えられる。即ち、ハウジング内周面の径(内径)が環状溝の径(外径)よりも小さく仕上がっているとか、ハウジング端面の位置が相手側ハウジングに必要以上に寄っていたりすると、ガスケットを介して対向する管端部どうしに一対のハウジングを被せてボルト・ナットで締付けて装着しも、ガスケットを十分に圧縮できないとか、環状溝とハウジングにおける環状溝に嵌り込む部分との間に隙間ができて締め切ることができないといった不都合のおそれがある。このように、ハウジング形管継手を用いて管どうしを強度十分にしっかりと連結させるには、更なる改善の余地が残されているものであった。
【特許文献1】特許第2538261号
【特許文献2】特開平11−241793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、主にハウジングの構造工夫により、部品の寸法誤差や製品誤差、或いはそれらの複合に拘らずに、ハウジングどうしを互いに接近する方向に強制的に押圧した装着状態においては、ガスケットを十分圧縮して強度不足無く管どうしをしっかりと連結できて品質を向上させることが可能となるよう、改善されたハウジング形管継手を実現して提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、端部Ktの外周に環状溝5を有する管Kの一対における前記端部Ktどうしを、前記両端部Kt,Ktに跨る状態にリング状のガスケット2が外嵌装備される状態で対向させてシール状態で接続連結すべく、前記ガスケット2を配置させる空間部6の両側に前記環状溝5,5に嵌り込み可能な内周端部9t,10tを有するフランジ爪9,10が形成された断面が略コ字状で、かつ、全体形状が略半円形を呈するハウジング1の一対と、これらハウジング1,1どうしを互いに接近する方向に強制的に押圧された状態の維持が可能な維持手段Iと、を有して成るハウジング形管継手において、
前記一対のハウジング1,1の両端面8a,8aどうしを互いに当接させた状態においては、前記一対のハウジング1,1夫々の前記内周面9a,10aが連設されて形成されるハウジング幅方向視のループ形状が、そのハウジング開口方向の径Raは前記環状溝5の許容寸法誤差範囲内での最大径Dmaxより若干大きく、かつ、ハウジング奥行き方向の径Rbは前記環状溝5の許容寸法誤差範囲内での最小径Dminより若干小さい略楕円状に形成されている。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のハウジング形管継手において、
前記内周面9a,10aが、前記内周端部9t,10tの周方向での全長又はほぼ全長に亘って前記ハウジング1の幅方向で中心となる基準ラインZに対して傾く傾斜面に形成され、
前記一対のハウジング1,1における周方向での端部の夫々には、互いに嵌り合うことで前記一対のハウジング1,1どうしの相対位置決めが可能な凹部16と凸部17とが振り分けて形成され、
前記凹部16のハウジング幅方向での寸法を前記凸部17のハウジング幅方向での寸法よりも長く設定して、前記凹部16と前記凸部17とが嵌り合った嵌合状態における前記一対のハウジング1,1どうしの相対位置を互いに捻る方向にずらし移動可能で、かつ、そのずらし移動された状態で前記維持手段Iを機能させることを可能とする相対位置調節手段Bが設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のハウジング形管継手において、前記内周面9a,10aの幅hが、前記環状溝5の最小幅よりも小さく、かつ、周方向で一定となる状態に設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載のハウジング形管継手において、前記維持手段Iが、前記ハウジング1の周方向両端部のそれぞれに形成される取付片7のボルト挿通用孔11と、前記嵌合状態における前記各取付片7,7のボルト挿通用孔11,11どうしを通しての螺着が可能なボルト3及びナット4とから構成されており、
前記相対位置調節手段Bは、前記ボルト挿通用孔11をハウジング幅方向でのボルト通し位置に融通の効く大きさに設定する構成を含んでいることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のハウジング形管継手において、前記取付片7における相手方ハウジング側の面7aが、前記ハウジング1の周方向の端面8aよりも後退する位置に設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、ハウジング端面どうしが当接して維持手段による力、例えば、締め付けトルクが頭打ちになることが回避され、ボルトナット等による維持手段によるハウジングどうしを押圧維持させるための力が、その強弱に拘らずに確実にガスケットの圧縮力として有効に活用することができ、ガスケットの圧縮による良好なシール性が得られるようになる。その結果、主にハウジングの構造工夫により、部品の寸法誤差や製品誤差、或いはそれらの複合に拘らずに、ハウジングどうしを互いに接近する方向に強制的に押圧した装着状態においては、ガスケットを十分圧縮して強度不足無く管どうしをしっかりと連結できて品質を向上させることが可能となるよう、改善されたハウジング形管継手を提供することができる。
【0013】
ところで、前述の特許文献1,2において開示されている管継手においては、次のような問題点もある。即ち、上記二種の技術(特許文献1,2)により、ハウジング形管継手を用いた管どうしの接続連結部の連結剛性が向上するはずであるが、実際にはその効果が有効に得られないことがあった。その原因は次のようである。管の端部に形成される環状溝の製作手段には大別して、転造によるものと切削によるものとがあり、図11(a)は、転造によって形成された環状溝5を示している。転造による環状溝5は、ロール加工機(図示省略)を用いて管壁を強制的に内径側に変形させる作り方であり、溝開口幅溝d1は溝底幅d2よりも大きく(d1>d2)、左右の側周壁5a,5bは傾斜したテーパ壁になるとともに、溝底5Cと左右の側周壁5a,5bとの隅部5d及び、左右の側周壁5a,5bと管外周面Kbとの角部5eは、いずれも丸みを帯びた形状(隅R、角R)になる。
【0014】
図11(b)は切削によって形成された環状溝5を示している。切削による環状溝5は、管壁Kcを管外周面Kbから削り取ることで形成されるので、溝底5c及び左右の側周壁5a,5bはほぼ完全に平らな面になり、かつ、隅部5dや角部5eは丸みを帯びた形状ではなく、直角(所謂ピン隅やピン角)となる状態に形成される。この切削による環状溝5は、コストは高くなるが、加工精度に優れて誤差の少ない設計通りの寸法に仕上げることが可能であるに対して、前述の転造による環状溝5は、転造用ロールの摩耗等による寸法誤差や製品誤差が比較的大きくなり易いが、加工コストは廉価で生産性に優れている。
【0015】
特許文献1,2において示される管継手では、環状溝が所期通りの寸法精度に作成されていることが前提の技術であるが、実際には転造によるものも切削によるものも存在するため、前記特許文献1や2に示される技術をもってしても、環状溝と管継手とのガタつきが解消されず、連結剛性に劣る状態のものが認められることがあった。このように、ハウジング形管継手における管どうしの連結剛性を高めるに関しても改善の余地が残されていたのである。
【0016】
そこで、請求項2の発明を用いれば、次のような効果を得ることができる。即ち、詳しくは実施形態の項にて説明するが、一対の凹部と凸部とが嵌り合う構造の採用により、一対のハウジングを管に外嵌させての組付け時の位置決めが簡単、確実に行い易いものとしながら、しかもハウジングどうしの捻り移動によって転造等による環状溝の比較的大きな寸法誤差に拘らずに、一対のフランジ爪の内周面をハウジングの中心線である基準ラインに対して傾斜する面として、緩い角度でもってフランジ爪の内周端部の両週報後端部と環状溝の側周壁とを当接させて、従来に比べてより剛直に管どうしをしっかりとシール状態で接続連結することができるハウジング形管継手を実現できる。つまり、転造や切削といった溝形成方法の如何に拘らずにハウジングと環状溝とのガタつきを回避できて、管どうしの連結部における連結剛性が増して品質を向上させることが可能となる改善されたハウジング形管継手を提供することができる。
そして、ハウジング端面どうしが当接して維持手段による力、例えば、締め付けトルクが頭打ちになることが回避され、ボルトナット等による維持手段によるハウジングどうしを押圧維持させるための力が、その強弱に拘らずに確実にガスケットの圧縮力として有効に活用することができ、ガスケットの圧縮による良好なシール性が得られる利点もある。
【0017】
その結果、請求項1の発明による前記効果に加えて、転造や切削といった溝形成方法の如何に拘らずにハウジングと環状溝とのガタつきを回避できて、管どうしの連結部における連結剛性が増して品質を向上させることが可能となる改善されたハウジング形管継手を提供できる、という効果も発揮することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、環状溝の溝幅の寸法誤差が大きなものであっても、環状溝の両側の側周壁とフランジ爪との当接角度条件を互いに同じ状態としながら、請求項2による前記効果を得ることができる利点がある。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項2又は3による前記いずれかの効果に加えて、ボルトとナットとによるハウジングどうしの引き寄せ機能付で、かつ、廉価で確実に機能する合理的な維持手段が実現できるとともに、そのハウジング両端の取付片に形成されるボルト挿通用孔を、例えばバカ孔や長孔といった具合にハウジング幅方向におけるボルト通し位置に融通の効く大きさに設定する簡単な構造工夫により、ハウジングどうしの捻り移動の如何に拘らずに、前記効果(合理的な維持手段)が発揮できる利点も有するハウジング形管継手を提供することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明による前記効果に加えて、ボルトナットの締め付け力トルクの増大により、取付片が撓み変位して互いに向き合う取付片どうしが当接してしまう不都合が生じないので、ボルトナットによる締め付け力を一対のハウジングどうしを押付け合う力として有効に活かすことができて、一対の管どうしのシール状態での剛直な接続連結状態が良好に実現されるハウジング形管継手を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明によるハウジング形管継手の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1はハウジング形管継手の分解斜視図、図2は環状溝部分での断面図等、図3は一対のハウジングを重ね合わせた状態の側面図等、図4はハウジング単品の斜視図、図5はハウジング内周側の展開図、図6〜図9は夫々、標準状態、幅狭状態、幅広状態、特殊幅広状態におけるハウジングと環状溝との係合状態を示す側面図、図10は標準、幅狭、及び幅広の各状態を誇張して描いた模式図、図11は製作手段別の環状溝を示す図である。
【0022】
〔実施例1〕
実施例1によるハウジング形管継手Aは、図1〜図3に示すように、対向配備される一対の管K,Kをシール状態で接続連結する手段であって、互いに同一な一対のハウジング1,1と、リング状のガスケット2と、二組のボルト3及びナット4とから構成されている。即ち、端部Ktの外周に環状溝5を有する管Kの一対における前記端部Ktどうしを、両端部Kt,Ktに跨る状態にガスケット2が外嵌装備される状態で突き合せ(「対向させ」の一例)てシール状態で接続連結すべく、ガスケット2を位置させる(収容させる)空間部6の両側に、環状溝5に嵌り込み自在(「嵌り込み可能」の一例)な内周端部9t、10tを有するフランジ爪9,10が形成された断面が略コ字状で、かつ、全体形状が略半円形を呈するハウジング1の一対と、これらハウジング1,1どうしを互いに接近する方向に強制的に押圧された状態の維持が自在(「維持が可能」の一例)な維持手段Iと、を有してハウジング形管継手Aが構成されている。維持手段Iは、螺着が自在(「可能」の一例)なボルト3及びナット4で構成されている。
【0023】
管Kの端部処理の一例としては、端部Ktに転造(又は切削でも良い)によって形成される環状溝5は、その溝幅dが8.1mm(正確には、溝開口幅d1が8.7mmで、溝底幅d2が7.5mm)で、かつ、環状溝5の管端Ka側の外側端の管端Kaからの距離cが15.9mmに設定される状態に形成される〔図11(a)も参照〕。管Kの外径サイズとしては、一般に2〜6インチのものが使用される。ガスケット2は、断面リップ溝形状で、全体形状がリング状に形成された一般的なセルフシール形のものであり、合成ゴム等から形成される。
【0024】
ハウジング1は、図1〜図6に示すように、略半周状のウェブ8と、ウェブ8の幅方向の両側から内径側に延びる状態で一体形成される一対のフランジ爪9,10と、ウェブ8の周方向の両端部に一体形成される取付片7,7とから成り、左右のフランジ爪9,10とウェブ8とで囲まれた部分が空間部6に形成される。双方のウェブ8の周方向の両端面8a,8aは、ハウジング軸心(管Kの軸心に同じ)Pと平行な仮想水平面の一部として定義される面であり、図2に示す組付け状態において、対向する取付片7,7の間に空間が形成されるように(離間するように)、ハウジング軸心Pに対して外径方向に突出する各取付片7,7は、その対向面7aが対応する端面8aから(仮想水平面から)明確に後退した位置となるように形成されている。又、各取付片7,7には、管長手方向に長い長孔形状のボルト挿通用孔11が形成されている。
【0025】
各フランジ爪9,10の内周面9a,10aは、内周端部9t,10tの周方向での全長(又はほぼ全長でも良い)に亘ってハウジング1の幅方向(図5,6の矢印ロ方向)で中心となる基準ラインZに対して角度θで傾き、かつ、幅がhで一定の傾斜面に形成されている。図5のハウジング1は、内周面9a,10aを含む内側部分を平面状に展開して描いた状態を示しており、この展開図や図6において、基準ラインZは、ハウジング1の両端に形成されるボルト挿通用孔11の中心点どうしを結ぶ線のことである。
【0026】
ハウジング1の左右の外側周面12,12は、ハウジング軸心Pに対して広がり方向に傾斜する面である外径側面12a,12aと、ハウジング軸心Pに対して狭まり方向に傾斜する面である内径側面(「側周面部分」の一例)12b,12bとから成り、これら内外の側面12a,12bの境界線である稜線e,eは、側面視(ハウジング軸心Pに対する径方向視)において基準ラインZと平行となるように設定されている。従って、図5に示すように、各内周面9a,10aは、側面視における稜線eに対して角度θ傾き、かつ、幅がhで一定の面(傾斜面)として定義することができる。そして、内周面9a,10aの外端縁fは、ハウジング軸心Pを中心とする円弧(又はほぼ円弧でも良い)である稜線e上の一点とハウジング軸心Pとを結ぶ線分の内向き(ハウジング幅方向で内向き)角度βを、周方向において漸変させることによって形成される。
【0027】
つまり、左右の外側周面12,12の稜線e,eに対する傾斜角度βは、一端(図5の左側の内周面9aでは紙面下側の端で、右側の内周面10aでは紙面上側の端)における0度に近い小角度(成形型の抜き勾配程度で可)と、他端における大角度とに亘って線形に漸増(他端側から見れば漸減)する状態に形成されており、稜線eと外端縁fとで囲まれる面が前述の内径側面12bである。また、内周端部9t,10tの内側周面13,13は、各内周面9a,10aの内端縁gから前記抜き勾配程度の小さな角度を有する面に形成されている。空間部6は、左右の内側周面13,13から若干内側に寄った側周壁14,14と、内周壁15とで囲まれた部分であり、管Kへの組付け時にガスケット2を内径側に圧縮させてシール性を向上できるよう、ガスケット2の大きさよりも小さく形成しておけば好都合である。
【0028】
一対のハウジング1,1における周方向での端部である端面8a,8aの夫々に、組付け状態において互いに嵌り合って相対位置決めを行うための凹部16と凸部17とを振り分けて形成してある。凹部16は、側周壁14,14に対応したサイド壁16a,16aと、内周壁15に対応した背面壁16bとを有して凹入形成され、凸部17は、側周壁14,14に対応したサイド突部17a,17aと、内周壁15に対応した主突部17bとを有する略コ字状の突起に形成されている。図5,6等に示すように、凹部16は凸部17より若干大きく形成してある。具体的には凹部16に凸部17が挿入された嵌合状態において、サイド壁16aとサイド突部17aとの間には明確な横間隙s1が、そして、背面壁16bと主突部17bとの間には僅かな縦間隙s2が形成されている(s1≧s2)。
【0029】
このように、凹部16のハウジング幅方向での寸法を凸部17のハウジング幅方向での寸法よりも長く設定して、凹部16と凸部17とが嵌り合った嵌合状態における一対のハウジング1,1どうしの相対位置を互いに捻る方向にずらし移動可能で、かつ、そのずらし移動された状態で維持手段Iを機能させることを可能とする相対位置調節手段Bが設けられている。即ち、図6等に示すように、一対のボルト挿通用孔11,11を、ハウジング幅方向(矢印ロ方向であり、管Kへの組付け時には管軸心方向と一致する)でのボルト通し位置に融通の効く大きさの長孔に設定する構成と、前述の凹部16をハウジング幅方向において凸部17よりも長くする構成とによって相対位置調節手段Bが成立する。
【0030】
これは、図2,7,8に示すように、ハウジング軸心Pと基準ラインZとの交点を通り前述の仮想水平面に直交する(ハウジング軸心Pと基準ラインZとの双方に直交する)軸心である回動軸心X回りに、ハウジング1,1どうしを互いに回動移動させて位置ずれさせることを可能とする手段であり、その捻りずらしされた状態でもボルト3及びナット4を用いて管継手として管Kに装着固定することが可能である。回動方向(捻り方向)は右向き(図6の矢印ハ方向)でも左向き(図6の矢印ニ方向)でも可能である。この相対位置調節手段Bにより、詳しくは後述するが、環状溝5,5の幅が標準幅よりも狭いとか広いといった場合には、ハウジング1,1どうしを僅かに捻り移動させることによって、フランジ爪9,10の周方向の両端部を環状溝5,5の左右側周壁5a,5bに当接させ、剛性に富む状態でハウジング形管継手Aを組付けて装着することができる。
【0031】
尚、図2、図3に示すように、嵌合状態においては、一対のハウジング1,1夫々の内周面9a,10aどうしが連設されて形成されるハウジング幅方向視のループ形状が、そのハウジング開口方向の径Raは環状溝5の溝底5cの径Dにおける許容寸法誤差範囲内での最大径Dmaxより若干大きく、かつ、ハウジング奥行き方向の径Rbは環状溝5の溝底5cの径Dにおける許容寸法誤差範囲内での最小径Dminより若干小さい略楕円状に形成されている〔特に図3(b)を参照〕。このような寸法設定により、図2(a)に示すように、一対のハウジング1,1を環状溝5に嵌めて装着した状態では、必ず内周面9a,10aの開口部分が環状溝5の溝底5cに当たって支えることなく内周面9a,10aの最奥部分が溝底5cに当接し、かつ、対向配備される両端面8a,8a間には明確な間隙が形成されるように構成されている。
【0032】
、図2(a)に示す装着状態において、両端面8a,8a間の間隙を第1間隙n1、凹部16の底面16dと凸部17の頂面17dとの間隙を第2間隙n2と定義すれば、これら第1,第2間隙n1,n2と、背面壁16bと主突部17bとの縦間隙s2との三者の寸法には、s2≦n1<n2という関係式が成り立つように設定するのが良い。その根拠は次のようである。まず、ボルト3及びナット4による締め付け時には端面8a,8aどうしを必ず当接させる必要があることからn1<n2が導き出される。次に、ボルト3及びナット4による締め付け力を自在に発揮させるためにはn1>0であることが必要である。また、ハウジングの捻り移動にあまり影響の無い凹部16と凸部17との軸心Pに対する径方向の間隙である縦間隙s2は、ハウジング1,1どうしの位置決めという目的からはできるだけ小さい方が良く、これらによって前述の関係式が求められる。
【0033】
次に、管Kの環状溝5の溝幅が種々に異なる場合におけるハウジング型管継手Aの装着状況について説明する。生産性に優れる転造による環状溝5は、その溝幅の寸法公差が比較的大きくなるとともに、隅Rや角Rが付いてしまう性質があるため、設定通りの基準寸法に形成されている標準状態を図6に、溝幅が基準値よりも狭い状態を図7に、そして、溝幅が基準値よりも広い場合その1を図8に、その2を図9に分けて夫々説明するものとする。ここで、簡単のため、溝幅の基準値をj、実際の溝幅をdとし、この溝幅dは、溝開口幅d1と溝底幅d2との算術平均値〔d=(d1+d2)/2〕であるとする。
【0034】
まず、標準状態は、図6に示すように、管端Kaから距離c離れて形成される環状溝5の溝幅dが、基準値通り(d=j)のときである。この標準状態では、ハウジング1の基準ラインZが、管Kの軸心P(=ハウジング軸心)に直交する方向(矢印イ方向)、及び環状溝5の周方向と一致しており、その状態で各内周端部9t,10tの周方向の端のみが環状溝5の側周壁5a,5bに当接する状態が齎されている。つまり、図6において実線で描かれている一方のハウジング1の各内周面9a,10aと、他方のハウジングの内周面9a,10a(破線で示す)とが回動軸心Xの方向視において丁度「X」を呈する状態となっており、かつ、各ハウジング1,1の外側周面12,12の稜線e,eどうしは合致していて1本の線として見えるものとなっている。また、維持手段Iであるボルト3は、ボルト挿通用孔11の丁度左右方向(ハウジング幅方向であって矢印ロ方向)で中央に位置し、かつ、凸部17は凹部16の左右方向(ハウジング幅方向であって矢印ロ方向)で丁度中央に位置する状態になっている。
【0035】
従って、回動軸心Xの方向視において、一対のハウジング1,1を、それらの稜線e,eどうしが丁度重なる状態にしてボルト3及びナット4で締め付けて管K,Kに組付けて装着すれば、各ハウジング1,1の内周面9a,10aの内奥部が各溝底5cに当接し、かつ、左右の側周壁5a,5bに当接していて各管Kとハウジング形管継手Aとが、全くガタつきのない剛直な状態(剛性のある状態)で管K,Kどうしがシール状態で接続連結されるようになる。つまり、この場合はハウジング1,1どうしの回動軸心X回りの捻り角度は0度である。
【0036】
故に、内部圧力による管Kの推力や熱膨張収縮が生じた際に、管Kと管継手Aとが管長手方向に相対移動しようとしたり、管Kと管Kどうしが互いに折れ曲がり変位しようとしたりする力に十分耐えることが可能となる。従って、管継手Aの前後複数箇所において管Kを吊下げ支持するといった専用の管継手付近での管の支持手段が省けるものとなり、従来に比べて、管の配置スペース、構造の簡素化、コストのあらゆる面で有利となるハウジング形管継手Aが実現できている。
【0037】
参考に、標準状態における環状溝5とフランジ爪9の内周端部9tとの関係を、誇張して簡単化したものとして図10(b)に示す。基準ラインZ(稜線e)に対して傾斜している内周面9aにより、基準ラインZが管Kの軸心Pに直交する正規の状態で組付ければ、その状態で内周端部9tの両端部が対応する側周壁5a,5bに丁度当接して溝幅方向(矢印ロ方向)でガタつきなく収まっている様子が理解できる。つまり、各ハウジング1,1の一対のボルト挿通用孔11,11の中心点どうしが合致する標準(基準)組付け状態であることを、回動軸心Xの方向視において稜線e,eどうしを重ね合わせるという、外観目視によっても確認することができる便利さがある。
【0038】
次に、環状溝5の溝幅が狭い幅狭状態の場合は、一対のハウジング1,1を標準状態と同じ相対捻り姿勢(図6参照)では、内周面9a,10aが傾斜しているので内周端部9t、10tの周方向端部が狭い環状溝5の溝幅以上に張り出しており、そのままでは環状溝5に嵌め入れることができない。そこで、図7に示すように、内周面9a,10aの環状溝5の溝中心に対する角度(管軸心Pに直交する方向である矢印イ方向に対する角度)が基準ラインZに対する傾斜角度θよりも小さくなる方向に、各ハウジング1,1を回動軸心X回りに回動(捻り移動)させるのである。
【0039】
図7においては、仮想線で示す管Kの向こう側に配置されるハウジング1を、標準状態における基準ラインZ’に対して矢印ニ方向に角度αで捻り移動させ、かつ、管Kの手前に位置するハウジング1(破線で示す)は、標準状態における基準ラインZに対して矢印ハ方向に角度αで捻り移動させることになる。従って、捻り移動されたハウジング1,1どうしの相対捻り移動角度は2αである。このとき、ボルト3は、実線で描かれているハウジング1のボルト挿通用孔11に対しては、回動軸心X回りに角度α分移動することになるが、破線で描かれる手前側のハウジング1に対しては反対側に移動するのでその移動量が相殺されることになる。
【0040】
従って、一対のハウジング1,1どうしを捻り移動させても、はボルト3の絶対位置は、理論上は元の位置(標準状態の基準ラインZ’上の位置)からは動かないものとなる。尚、凹部16内に存在する凸部17は、前述した横間隙s1の存在により、無理なく捻り角度2α分移動できるようになっている。実際には、ボルト3及びナット4を緩く仮締めした状態でハウジング1,1を捻り移動させ、それからボルト3ナット4を本締め操作するようになる。その結果、環状溝5の溝幅が、切削加工ではあり得ない大きな誤差によって狭くなっている場合でも、本発明によるハウジング形管継手Aは剛直に管K,Kどうしをシール状態で接続連結させるように対応でき、標準状態における前述した作用効果を同等に発揮することができるのである。
【0041】
参考に、幅狭状態における環状溝5とフランジ爪9の内周端部9tとの関係を、誇張して簡単化したものとして図10(a)に示す。図示しないハウジング1を角度αで矢印ニ方向に捻り移動させて組付けることにより、環状溝5に対する内周面9aの傾斜角度は、標準状態のθよりも小さい角度(θ−α)になる。従って、標準状態の場合と同様に、内周端部9tの両端部が対応する側周壁5a,5bに丁度当接して溝幅方向(矢印ロ方向)でガタつきなく収めることができる。
【0042】
環状溝5の溝幅が広い幅広状態の場合は、一対のハウジング1,1を標準状態と同じ相対捻り姿勢(図6参照)では、内周面9a,10aが傾斜しているも左右の側周壁5a,5bに届かず、管軸心P方向で隙間ができてしまい、管継手Aを剛直に組付けることができない。そこで、図8に示すように、内周面9a,10aの環状溝5の溝中心に対する角度(管軸心Pに直交する方向である矢印イ方向に対する角度)が基準ラインZに対する傾斜角度θよりも大きくなる方向に、各ハウジング1,1を回動軸心X回りに回動(捻り移動)させるのである。
【0043】
図8においては、仮想線で示す管Kの向こう側に配置されるハウジング1を、標準状態における基準ラインZ’に対して矢印ハ方向に角度γで捻り移動させ、かつ、管Kの手前に位置するハウジング1(破線で示す)は、標準状態における基準ラインZに対して矢印ニ方向に角度γで捻り移動させることになる。従って、捻り移動されたハウジング1,1どうしの相対捻り移動角度は2γである。このとき、ボルト3は、実線で描かれているハウジング1のボルト挿通用孔11に対しては、回動軸心X回りに角度γ分移動することになるが、破線で描かれる手前側のハウジング1に対しては反対側に移動するのでその移動量が相殺されることになる。
【0044】
従って、一対のハウジング1,1どうしを幅狭状態のときとは反対側に捻り移動させても、はボルト3の絶対位置は、理論上は元の位置(標準状態の基準ラインZ’上の位置)からは動かないものとなる。尚、凹部16内に存在する凸部17は、前述した横間隙s1の存在により、無理なく捻り角度2γ分移動できるようになっている。実際には、ボルト3及びナット4を緩く仮締めした状態でハウジング1,1を捻り移動させ、それからボルト3ナット4を本締め操作するようになる。その結果、環状溝5の溝幅が、切削加工ではあり得ない大きな誤差によって広くなっている場合でも、本発明によるハウジング形管継手Aは剛直に管K,Kどうしをシール状態で接続連結させるように対応でき、標準状態における前述した作用効果を同等に発揮することができるのである。
【0045】
参考に、幅広状態における環状溝5とフランジ爪9の内周端部9tとの関係を、誇張して簡単化したものとして図10(c)に示す。図示しないハウジング1を角度γで矢印ハ方向に捻り移動させて組付けることにより、環状溝5に対する内周面9aの傾斜角度は、標準状態のθよりも大きい角度(θ+γ)になる。従って、標準状態の場合と同様に、内周端部9tの両端部が対応する側周壁5a,5bに丁度当接して溝幅方向(矢印ロ方向)でガタつきなく収めることができる。
【0046】
また、環状溝5の溝幅が広い幅広状態であっても、環状溝5の管端Ka側の側周壁5aの管端Kaからの距離が正確に基準値通りに形成されているという特殊な場合においては、一対のハウジング1,1を図6に示す標準状態と同じ組付け状態とすることができる。即ち、図9に示すように、一対のハウジング1,1を捻り移動角が0となる状態、即ち正規の状態で管Kに組付けると、内周面9a,10aの傾斜に拘らずに内周端部9t,10tにおける内径側面12bと環状溝5の管端Kaから遠い側の側周壁5bとの間には、管軸心P方向に明確な間隙iが存在する。
【0047】
しかしながら、内周端部9t,10tにおける内側周面13の一端は、標準状態の場合と同様に、ガタつきなく環状溝5の管端Kaから近い側の側周壁5aに丁度当接する状態になっているから、一対の管K,Kの管端Ka,Kaどうしが隙間無くぴったりと当接している構成との協働により、やはり一対の管K,Kどうしをガタつき無く剛直にシール状態で接続連結することができるのである。尚、この図9に示す特殊な場合には、管端Ka,Kaどうしが当接していることが条件になるが、図6の標準状態、図7の幅狭状態、及び図8の一般的な幅広状態の各状態においては、管端Ka,Kaどうしの間に多少の隙間があっても本発明のハウジング形管継手Aであれば剛直に組付けるとができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によるハウジング形管継手Aによれば、一対のフランジ爪9,10の内周面9a,10aが、一対のボルト挿通用孔11,11の中心点を通るハウジング1としての幅方向での中心線である基準ラインZ、及びハウジング1としての幅方向の(ハウジング軸心Pに対する径方向視の)外郭線である稜線eに対して角度θで傾斜する傾斜面に形成し、それによって内周面9a,10aを含むフランジ爪9,10の内周端部9t、10tが、その径方向での断面形状が、内径側ほど左右方向(ハウジング幅方向)の幅が狭くなる先窄まり形状となるように形成してあるとともに、互いに捻り移動可能で、かつ、互いに同一部品であるハウジング1,1どうしの組付け易さを促進するための凹部16と凸部17との嵌合構造を採用しながらも、それら凹部16と凸部17とのハウジング幅方向の両側に必要となる間隙を設けてあることにより、次のような作用や効果を得ることができる。
【0049】
まず、フランジ爪9,10における環状溝5の溝底5cに当接される内周面9a,10aを、管Kの環状溝5の最小溝幅よりも小さい幅hを有して周方向での全長に亘る傾斜面としてあるので、環状溝5に寸法誤差がある場合には、ハウジング1の微小な捻り移動によって内周面9a,10aの環状溝5に対する傾斜角度を変更させて、内周端部9t、10tの両端部分が環状溝5の側周壁5a,5bに当接する状態を得ることができる。これにより、寸法精度にはやや劣るが生産性及びコスト上で有利な転造による環状溝5としても、従来のハウジング形管継手を用いた接続連結に比べて、各管K,Kとハウジング1,1とが管長手方向のガタつきがない剛直な状態(リジッドな状態)にしっかりと組付けて固定することができる。つまり、管どうしをシール状態で接続連結するハウジング形管継手部分の剛性を向上させることができるので、例えば、管継手前後の複数箇所における管を吊り具や支え具を用いて支持させる構成が不要になり、スペースやコストの節約が行える利点が得られる。
【0050】
この場合、環状溝5の溝幅が基準値よりも狭い場合には、内周面9a,10aの環状溝5に対する傾斜角度が基準状態〔図6や図10(b)参照)〕のときよりも小さい傾斜角度(θ−α)となる方向に一対のハウジング1,1を捻り移動させ、内周端部9t、10tの内径側面12bや内側周面13の周方向端部を、対応する側周壁5a,5bに当接させる状態〔図7や図10(a)参照)〕にすることができる。環状溝5のみぞ幅が基準値よりも広場合には、内周面9a,10aの環状溝5に対する傾斜角度が基準状態〔図6や図10(b)参照)〕のときよりも大きい傾斜角度(θ+γ)となる方向に一対のハウジング1,1を捻り移動させ、内周端部9t、10tの内径側面12bや内側周面13の周方向端部を、対応する側周壁5a,5bに当接させる状態〔図8や図10(c)参照)〕にすることができる。尚、環状溝5の溝幅が基準幅の場合には、内周面9a,10aの環状溝5に対する傾斜角度は、内周面9a,10aの基準ラインZ(及び稜線e)に対する傾斜角度θと同じであって、その状態で、即ちハウジング1,1の捻り角度が0度で、内周端部9t、10tの内径側面12bや内側周面13の周方向端部を、対応する側周壁5a,5bに当接させる状態〔図6や図10(b)参照)〕にすることができる。
【0051】
これら両方向への捻り移動の際には、凹部16と凸部17とも相対的に回動移動するようになるが、凹部16と凸部17とのハウジング幅方向の両側に設けた間隙s1,s1により、上述したハウジング1,1の捻り移動の妨げとはならないようになっている。内周面9a,10aの傾斜はその周方向の全長又はほぼ全長に亘る比較的緩い角度であるから、内周端部9t,10tと側周壁5a,5bとの当接部分が極力面接触に近い状態になり、剛直な管継手の組付け状態を安定して発揮できる利点がある。また、内周面9a,10aと環状溝5との傾斜角度は、溝幅が元も狭い場合に最も小さくなるようにしてあるから、溝幅が最も広い場合の内周面9a,10aと環状溝5との傾斜角度が極端に大きくならないように抑制できて、前述の利点(剛直な管継手の組付け状態を安定して発揮できる)が環状溝の溝幅の狭い広いに拘らずに享受できるものとなっている。
【0052】
さらに、フランジ爪9,10を環状溝5に嵌め入れて管K,Kに組付けた場合に、対向する一対のハウジング端面8a,8aどうしの間には間隙が形成される状態に設定〔図2(a)参照〕して、ボルト3及びナット4を用いて強烈に締め付けた場合には、最初に溝底5cに当接する箇所が内周溝9a,10aにおける周方向の中央部にしてあるから、規定の締め付け力を付与した場合には、ガスケットを締め付けてシール性を向上させる方向の力として有効に活用できるようになっている。例えば、先に端面8a,8aどうしが当接するような構造では、ボルト3ナット4の締め付けを増すと端面8a,8aが当接した締切り状態が早期に齎されてしまい、それ以上締め付けトルクを増してもガスケットを有効に締め付ける力には作用しない、という不都合が考えられるが、本発明によるハウジング形管継手では、そのような不都合が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ハウジング型管継手の構造を示す分解斜視図(実施例1)
【図2】(a)ハウジングと環状溝との係合構造を示す断面図、(b)ハウジング内周面と環状溝との実際の係合状態を示す模式図
【図3】(a)ハウジングどうしを合せた状態の側面図、(b)一対のハウジング内周面の楕円と環状溝の円形との形状を比較した模式図
【図4】ハウジング単品の斜視図
【図5】ハウジング内面側の展開図
【図6】環状溝が基準値である場合のハウジングと管との係合構造を示す側面図
【図7】環状溝が基準値より狭い場合の管継手装着状態を示す側面図
【図8】環状溝が基準値より広い場合の管継手装着状態を示す側面図
【図9】環状溝が基準値より広い場合の管継手装着状態の特殊例を示す側面図
【図10】内周面と環状溝との係合状態を角度が誇張された模式図を示し、(a)環状溝の幅が狭い場合、(b)環状溝の幅が標準の場合、(c)環状溝の幅が広い場合
【図11】管端部の環状溝を示し、(a)は転造溝、(b)は切削溝
【符号の説明】
【0054】
1 ハウジング
2 ガスケット
3 ボルト
4 ナット
5 環状溝
6 空間部
7 取付片
7a 相手方ハウジング側の面(対向面)
9,10 フランジ爪
9a,10a 内周面
9t,10t 内周端部
8a ハウジングの周方向の端面
11 ボルト挿通用孔
12 ハウジングの外側面
12b 側周面部分
16 凹部
17 凸部
e 側周面部分の外径側端の縁
f 内周面のハウジング幅方向で外側となる外端縁
h 内周面の幅
A ハウジング形管継手
B 相対位置調節手段
Dmax 環状溝の許容寸法誤差範囲内での最大径
Dmin 環状溝の許容寸法誤差範囲内での最小径
I 維持手段
K 管
Kt 端部
Ra ハウジング開口方向の径
Rb ハウジング奥行き方向の径
Z 基準ライン
β 側周面部分の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部の外周に環状溝を有する管の一対における前記端部どうしを、それら両端部に跨るようにリング状のガスケットを外嵌装備してのシール状態で対向させて接続連結すべく、前記ガスケットを配置させる空間部の両側に前記環状溝に嵌り込み可能な内周端部を有するフランジ爪が形成された断面が略コ字状で、かつ、全体形状が略半円形を呈するハウジングの一対と、これらハウジングどうしを互いに接近する方向に強制的に押圧された状態の維持が可能な維持手段と、を有して成るハウジング形管継手であって、
前記一対のハウジングの両端面どうしを互いに当接させた状態においては、前記一対のハウジング夫々における前記フランジ爪の内周面が連設されて形成されるハウジング幅方向視のループ形状が、そのハウジング開口方向の径は前記環状溝の許容寸法誤差範囲内での最大径より若干大きく、かつ、ハウジング奥行き方向の径は前記環状溝の許容寸法誤差範囲内での最小径より若干小さい略楕円状に形成されているハウジング形管継手。
【請求項2】
前記内周面が、前記内周端部の周方向での全長又はほぼ全長に亘って前記ハウジングの幅方向で中心となる基準ラインに対して傾く傾斜面に形成され、
前記一対のハウジングにおける周方向での端部の夫々には、互いに嵌り合うことで前記一対のハウジングどうしの相対位置決めが可能な凹部と凸部とが振り分けて形成され、
前記凹部のハウジング幅方向での寸法を前記凸部のハウジング幅方向での寸法よりも長く設定して、前記凹部と前記凸部とが嵌り合った嵌合状態における前記一対のハウジングどうしの相対位置を互いに捻る方向にずらし移動可能で、かつ、そのずらし移動された状態で前記維持手段を機能させることを可能とする相対位置調節手段が設けられている請求項1に記載のハウジング形管継手。
【請求項3】
前記内周面の幅が、前記環状溝の最小幅よりも小さく、かつ、周方向で一定となる状態に設定されている請求項2に記載のハウジング形管継手。
【請求項4】
前記維持手段が、前記ハウジングの周方向両端部のそれぞれに形成される取付片のボルト挿通用孔と、前記嵌合状態における前記各取付片のボルト挿通用孔どうしを通しての螺着が可能なボルト及びナットとから構成されており、
前記相対位置調節手段は、前記ボルト挿通用孔をハウジング幅方向でのボルト通し位置に融通の効く大きさに設定する構成を含んでいる請求項2又は3に記載のハウジング形管継手。
【請求項5】
前記取付片における相手方ハウジング側の面が、前記ハウジングの周方向の端面よりも後退する位置に設定されている請求項4に記載のハウジング形管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−32212(P2008−32212A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335780(P2006−335780)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【分割の表示】特願2006−535127(P2006−535127)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506330335)
【Fターム(参考)】