ハウス防風機構
【課題】比較的脆弱なビニールハウスなどの栽培ハウスに併設し、烈風または強い季節風などを受けても栽培ハウスが倒壊することが少ないハウス防風機構を提供する。
【解決手段】単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むこと
を通風部と邪魔板で緩和する。
【解決手段】単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むこと
を通風部と邪魔板で緩和する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的脆弱な太陽光併用型の栽培ハウスに併設すると、台風のような熱帯低気圧による烈風または強い季節風などを受けても栽培ハウスが倒壊することが少ないハウス防風機構に関する。本発明の他の目的は植物の生育を促進させる環境を発現するハウス防風機構に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培ハウスでは、ハウス内の野菜は外気の影響を直接的に受けないため、温度、湿度、気流、水やりなどの太陽光以外の環境をコントロールすることができ、気温や風雨の影響を直接受けてしまう開放型の露地栽培よりも生産と品質が安定する。栽培ハウスは、太陽光によらず人工光源だけで光合成を行う完全制御型の植物工場よりも、太陽光だけを使用する太陽光利用型および太陽光による光合成を一部利用する太陽光併用型であると、旬をずらして栽培して高値で販売できるので人気がある。栽培ハウスには、大別してビニールハウスとガラスハウスがあり、日本国内の寒冷地だけでなく、現在ではあらゆる地域で設置されている。
【0003】
ビニールハウスは、鉄パイプまたは木材を躯体とし、ポリエチレンやポリ塩化ビニールなど合成樹脂フィルムで外壁を被覆している。ビニールハウスは、樹脂フィルムが太陽光の紫外線によって劣化して透光率が低下するために、該フィルムの定期的な交換を要するけれども、大寸で重いガラス板を取り付けるガラスハウスと比べて安価であり、ガラスハウスよりも広範囲に使用されている。ビニールハウスは、樹脂フィルムの定期的な交換が必要であるほかに、ビニールハウスにおいて、強風でビニールフィルムが破損すると内部の作物が損傷され、ハウス自体が倒壊することが問題であり、この問題はガラスハウスでも少なからず発生する。
【0004】
ビニールハウスの倒壊の対策として、特開平9−51729号では、支柱と同様に梁なども厚肉の鉄パイプで構成し、ハウス外方に張設用ワイヤと一体化したネットまたはビニールシートを取り付けている。特開2001−95397号は、台風の直前に、ハウスに取り付けたフィルムないしネットを全て取り除くかまた上方に巻き揚げることが可能であり、2枚のフィルムを重ねて張設するとともに、畝に合わせて配列したアーチパイプの中央部を補強兼用ロープで縛り、該ロープの両端を垂直の骨パイプに結合する。特開2002−78421号は、ハウスの骨組を構成する外周ポールと間隔を置いて外側にポールを立設するとともに、両ポール間にパイプを連結して相互に補強し、この骨組をハウスの周方向に適宜の間隔で配置して連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−51729号公報
【特許文献2】特開2001−95397号公報
【特許文献3】特開2002−78421号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「植物工場の基礎と実際」、高辻正基著、裳華書房発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビニールハウスに関する強風や暴風に対する対策は、前記のように躯体を補強するものが大部分である。この際に、ビニールフィルムは二重や三重に重ねる場合が多く、ガラスハウスでもガラス板を二重にするだけであるから、強風はビニールハウスのビニールフィルムまたはネットに直接当たり、躯体が補強されて倒壊を免れても、ビニールフィルムやネットが破損されやすい。フィルムの破損を防ぐために、特開平9−51729号のように張設用ワイヤと一体化したビニールシートを使用したり、劣化しやすいポリ塩化ビニールフィルムの代わりに、農業用ポリオレフィン系フィルムまたはフッ素樹脂のフィルムを張設しても問題は解決せず、ガラスハウスでもガラス板の破損が生じることがある。
【0008】
本発明は、従来のビニールハウスに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、強風が発生しても栽培ハウスが倒壊することを回避するハウス防風機構を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、強風状態下にあっても、ハウス内に微風に近い外気を常に取り入れられるハウス防風機構を提供することである。本発明の他の目的は、植物の生育を促進させる木漏れ日に近い環境を発現できるハウス防風機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のハウス防風機構は、単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むことを通風部と邪魔板で緩和することを特徴とする。
第2発明のハウス防風機構は、第1発明において、通風部は防風塀の上端から50〜200mmの縦幅で形成していることを特徴とする。
第3発明のハウス防風機構は、第1発明において、強風が邪魔板を通過した時に、その平均風速値が24〜32%に低下することを特徴とする。
第4発明のハウス防風機構は、第1発明において、邪魔板の横幅は防風塀の通風部の縦幅よりも大きいことを特徴とする。
第5発明のハウス防風機構は、第1発明において、ハウス防風機構の上方平面における邪魔板の配置について、邪魔板は、全体的に縦横方向および筋交い状に等間隔で並置することを特徴とする。
第6発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁が透明または半透明素材からなることを特徴とする。
第7発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁は、地面に垂直に立設した支柱によって垂直に固定することを特徴とする。
第8発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁の一部に開閉自在の風通し戸を取り付けることを特徴とする。
第9発明のハウス防風機構は、光形態形成の赤色光効果を有する波長領域での分光放射輝度を赤色光R、光形態形成の強光下反応に属する青色光の波長領域での分光放射輝度を青色光Bおよび光形態形成の遠赤色光効果を有する波長領域の分光放射輝度を遠赤色光FRと規定し、防風壁、柱、邪魔板、そしてハウス防風機構内に設置したビニールハウスやガラスハウスの、ビニールやガラスを、赤色光Rを反射させる色および遠赤色光FRを反射させる色以外の可視光の分光放射輝度が、赤色光Rと遠赤色光FRのそれぞれよりも小さくなる色のスペクトルを有する色で着色し、ハウス内で栽培する野菜類の光合成速度飽和光強度の明るさを確保し、さらにハウス内の栽培環境における赤色光R/青色光Bの比が裸地よりも大きく、且つ赤色光R/遠赤色光FRの比が裸地よりも小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るハウス防風機構は、台風のような熱帯低気圧による烈風または強い季節風などを受けてハウス作物が損傷したり栽培ハウスが倒壊することを解消し、悪天候が多い年度であっても野菜の安定供給を可能とする。本発明のハウス防風機構により、通常のビニールハウスでも強風に耐えることができ、耐久性の高いハウスをガラスハウスよりも安い価格で提供することが可能である。塀の中に建てるハウスの高さは2mぐらいで縦幅も3mぐらいのハウスであり、通常のハウスよりも反当りのハウス内容積が小さくなるから、冬期における暖房用の燃料費が容積が小さい分だけ安くなるという利点もある。
太陽光が塀や柱や邪魔板に当り反射することによって、太陽光スペクトルのR/B比が裸地よりも大きくなりR/FR比は小さくなる。したがって、太陽光のスペクトルを変化させて、収穫量を向上させる効果が生じるのである。さらに塀や柱や邪魔板などを赤色光(R)と遠赤色光(FR)の混合色にすることによって、光の比をさらに大きく変化させることができる。このことによって更なる効果を得る装備として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るハウス防風機構の一例を示す概略斜視図である。
【図2】軸流ファンを用いる防風実験の装置を概略的に示す側面図および平面図である。
【図3】邪魔板の間隔を3000mmに設置した際の風の方向変化を考慮に入れた概略説明図である。
【図4】防風塀内部における穴開き部と邪魔板との位置関係を示す概略説明図である。
【図5】図2と類似の防風実験の装置を概略的に示す側面図および平面図である。
【図6】穴開き邪魔板の一例を示す部分平面図である。
【図7】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図8】穴開き邪魔板の別の例を示す部分平面図である。
【図9】穴開き邪魔板のさらに別の例を示す部分平面図である。
【図10】邪魔板を対角線に配置した防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図11】邪魔板を対角線に配置した他の防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図12】測定点を防風壁の上端部から下向きに200mm、400mm、600mm、800mmに定めた防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図13】本発明に係るハウス防風機構において、40個の栽培ハウスを防風塀で囲んだ状態を示す概略説明図である。
【図14】図13のハウス防風機構における縦方向の柱列毎の軸組図である。
【図15】図13のハウス防風機構における横方向の柱列毎の軸組図である。
【図16】図13のハウス防風機構における邪魔板の対角線方向を含む配置図である。
【図17】図13のハウス防風機構における防風壁が必要な強さを得るためのブレース配置図である。
【図18】対角線方向の邪魔板の取り付け詳細図である。
【図19】邪魔板相互および邪魔板と防風塀の取り付けを示す部分平面図である。
【図20】防風塀と柱を拡大して示す部分側面図である。
【図21】防風塀と柱の他の部分を拡大して示す部分側面図である。
【図22】ハウス防風機構において風の吹き込みを示す説明図である。
【図23】吹き込み風の風速を測定するための説明図である。
【図24】穴開き邪魔板の一例を示す部分平面図である。
【図25】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図26】穴開き邪魔板の別の例を示す部分平面図である。
【図27】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図28】穴開き邪魔板のさらに別の例を示す部分平面図である。
【図29】栽培ハウスG−B:ビニールに赤色ペンキを透光率46.4%になるまで吹き付けたもの。
【図30】赤色の水性ペンキのスペクトル
【図31】薄いピンクのビニールのスペクトル
【図32】栽培ハウス[8]:普通のビニールハウス
【図33】植物の光反応の作用スペクトル
【図34】栽培ハウス[14]
【図35】赤色の油性ペンキのスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明に係るハウス防風機構1を例示している。ハウス防風機構1は、単数または複数のビニールハウス2またはガラスハウスを取り囲む矩形状平面の防風塀3または防風壁を有し、該防風塀の高さはハウス2よりも相当に高く定める。防風塀3は、通常、地面に垂直に据え付けた柱を含む金属フレーム(図示しない)に固着し、垂直設置の通常、全体が同じ高さであるけれども、部分的に高さを変更することも可能である。
【0013】
防風塀3には、その上方部において所定の縦幅の通風部5または穴開き部を形成する。通風部5は、防風塀3の上方部に多数の貫通孔6を直接設けて穴開き部としても、または防風壁と別個に細長い穴開き邪魔板を水平に取り付けてもよい。防風塀3は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネートなどの波板やシートからなり、ハウス3への日差しを妨害しないように透明または半透明であり、特定の可視光線を多く通過させて植物生育を促進するために適宜に着色してもよい。
【0014】
邪魔板7は、全面または部分的に多数の貫通孔8を形成した細長い板材であり、防風塀3の上端においてそれぞれを横置き垂直に並べ、全体として大きな間隙を有することにより、強風が上下方向に通過可能にするとともに、ハウス2への日差しが必要以上に妨げられないように構成する。邪魔板7は、図1において矩形と対角線の平面配置を組み合わせているけれども、これ以外に単なる平行状、格子状、ジグザグ状などに平面配置することも可能である。邪魔板7は、所望の色に着色した金属板やベニヤ板などからなり、貫通孔を設けた透明のプラスチック板でもよい。
【0015】
ハウス防風機構1を提案するに際して、防風対象として季節風とともに台風の風を考慮に入れた。台風は、上昇気流である熱帯低気圧であるから、広域で判断すれば斜め上へ吹き上がるイメージであるけれども、局地的には平地であると地面と平行に水平に吹き、季節風とほぼ同様である。このため、ビニールハウスを高い壁で取り囲むと、壁が強風を防ぎ、壁近傍の風は微風になるけれども、壁から遠ざかるにつれて強風は壁内部へ回り込んで吹き込む。回り込みによる吹き込み傾向は、壁で囲まれた面積が広いほど強くなる。仮に、植林によって壁内部を森の状態にすると、木の枝や葉によって風は遮られて壁の内側へ吹き込みにくくなるのは当然であるから、植林の代わりに邪魔板を一定の間隔で取りつけ、邪魔板によって防風効果があるか否かを実験によって確認した。
【0016】
(台風モデルによる実験)
実験に際して、市販の軸流ファン50(図2)によって水平の強風を発生させる。図2では水平方向に軸流ファン50と穴開き板と邪魔板(※印参照)との概略側面位置を示し、縦方向にその平面位置を示している。図2において、直径800mmの軸流ファン50の前方に、所定の距離をおいて横幅1000mmの穴開き板を垂直に立て、最前方の穴開き板の下端辺は防風壁52(防風塀に相当)の上端辺と当接する。この穴開き板が防風壁52の穴開き部54であり、その後方に位置する穴開き板が邪魔板56,56に相当する。穴開き部54および両邪魔板56の先端辺をファンの周上端の185.4mm下方にして防風効果を測定する。軸流ファン50は、ファン中心と周辺の風力が弱くなるので、穴開き部54と邪魔板56は軸流ファン50の中心からずらし、その表面がファン表面と平行になるように配置する。
【0017】
前記の穴開き鉄板は、厚さ3mm、穴径が直径10mm、穴ピッチが15mmであり、穴開き部54および邪魔板56に相当する。この穴開き鉄板に関して、風をどの程度減速できるかを調べるため、横幅600mmおよび縦幅1800mmの穴開き鉄板を軸流ファン50の前方400mmに平行且つ垂直に設置し、該穴開き鉄板の後方50mmに風速計を設置して該穴開き鉄板前後の風速を測定する。この測定の結果、穴開き鉄板直後では風速5.23〜4.36m/sで平均4.80m/sであり、一方、穴開き鉄板直前では風速10.5m/sであるから、平均通過風速率は45.71%であった。この結果、用いる穴開き鉄板は、通常、風速を約半分以下に下げうることが判明する。
【0018】
図2は、穴開き部54および邪魔板56を1000mm感覚で3枚(※印参照)取り付けた場合を示す。穴開き部54と邪魔板56の縦幅は、100mm(表1)、200mm(表2)または300mm(表3)であり、これらの上端辺は軸流ファン50の周上端より185.4mm下方である。高さ方向において、測定点Aは、防風壁52の上端辺より50mm上方つまり軸流ファン50の周上端の135.4mm下方である。測定点Cは防風壁52の1/2の高さであり、測定点Bは測定点AとBの中間の高さである。表1において、左欄の長さは防風壁52からの水平距離を示し、いずれも風速の測定位置である。それぞれの場合において、邪魔板56の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを測定する。
【0019】
図2に示す装置による風速の測定結果を下記の表1〜3に示す。この結果は、穴開き部54と邪魔板56を全く設置せず、防風壁52が存在するだけの装置構成である表4の場合と比較すればよい。データを減速率(%)に変換し、明瞭に比較出来る様にする。減速率(%)=(測定値B、又はC÷測定値A)×100 表1左の減速率変換表は表1右、表2左の減速率変換表は表2右、表3左の減速率変換表は表3右、表4左の減速率変換表は表4右側である。
【0020】
邪魔板の縦幅:100mm
【表1】
【0021】
邪魔板の縦幅:200mm
【表2】
【0022】
邪魔板の縦幅:300mm
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
表1の縦幅100mmであると、穴開き部54を通過した風は、測定位置50mmにおいて測定点Bで7.01m/sから0.69m/sに減速され、さらに1枚目の邪魔板56を通過した風は、測定位置1050mmにおいて測定点Bで3.63m/sから1.27m/sに減速される。縦幅100mmの邪魔板56は、縦幅200mmのそれよりも測定点Bの部分で風の減速がやや少ない。縦幅300mmの邪魔板56の場合には、測定点Bで穴開き邪魔板を通過した風速は通過前のほぼ半分にすぎない。この理由は、測定点Bの高さ位置が、縦幅300mmの邪魔板56の下端辺よりも上方に配置されるために、該邪魔板を通過した風が直接当たるので測定値が不正確になっている。また、測定点Bにおいて、縦幅100mmの邪魔板56が、縦幅200mmの邪魔板56よりも風速を減速させる効果が大きい結果になっているが、これは測定点Bが邪魔板56の下端辺からより遠くなるからであり、風速を減速させる効果が大きいわけではない。
【0025】
表1〜3を表4と比較すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれも、風速を減速させる効果があることが判明した。穴開き部54と邪魔板56の下端辺から最も遠い測定点Cにおいて、減速効果の大きい順に並べると縦幅100mm、200mm、300mmとなる。表4を参照すると、風を防いでいる防風壁52の近傍は風を減速させる効果が高いけれども、該防風壁から遠ざかるにつれて外部から吹き込む風が増えるということが判明した。例えば、測定点Bでは、防風壁52から3.5m遠ざかると外部(測定点)Aとほとんど同じ風速になり、測定点Cでも防風壁からさらに遠ざかると測定点Bと同様になると予想できる。穴開き部54および邪魔板56の近傍で風速が急減することから、外部の風を吹き込みにくくするには、穴開き部54を有する防風壁に近づけて邪魔板56の間隔を狭くすればよく、極論すれば各邪魔板56の間隔を可能な限りゼロに近づければよい。
【0026】
図2では、穴開き部54と邪魔板56を1000mm間隔で設置したのに対し、防風壁52から1500mm間隔で取り付けた場合を実験した。下記の表5は、縦幅100mmの穴開き部54および邪魔板56を1500mm間隔で設置した実験結果である。表5左の風速値を減速率(%)に変換したものが表5右である。計算式は段落0019記載の式による。以後は減速率の式が同一である為に省略する。
【0027】
【表5】
【0028】
実際には、穴開き部54および邪魔板56の縦幅は、表1〜3と同様に、100mm、200mm、300mmと変え、それぞれにおいて防風壁52の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを確認した。表5を含むこれらの結果を表4と比較すると、邪魔板の間隔1500mmにおいて、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれでも、風速を減速させる効果があることが判明した。表1〜3における邪魔板の間隔1000mmと同じ理由により、縦幅300mmが風速を減速させる効果が最も小さく、縦幅100mmと200mmはほぼ同等である。
【0029】
次に、防風壁52から2000mm間隔および3000mm間隔で取り付けた場合を実験した。下記の表6は縦幅200mmの穴開き部54および邪魔板56を2000mm間隔で設置し、および下記の表7は縦幅200mmの穴開き部54および邪魔板56を3000mm間隔で設置した実験結果であり、邪魔板56の使用枚数はいずれも1枚である。表6左の風速値を減速率(%)に変換したものが表6右であり、表7左を同様に変換したものが表7右である。
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
実際には、穴開き部54と邪魔板56の縦幅は、表1〜3と同様に、100mm、200mm、300mmと変え、それぞれにおいて防風壁の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを確認した。表5右、表6右、および表7右の結果を表4右と比較すると、邪魔板の間隔2000mmおよび3000mmにおいて、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれでも、風速を減速させる効果があることが判明した。
表1〜3における邪魔板の間隔1000mmと同じ理由により、縦幅300mmが風速を減速させる効果が最も小さく、縦幅100mmと200mmはほぼ同等である。
【0033】
穴開き部54と邪魔板56に関する実験結果の考察するに際し、防風壁52だけを設置する場合の表4の測定結果が基準になる。表4を参照すると、測定点AとBとの比率(減速率という、100−(B÷A)×100)から、減速率が50%以下になる測定位置は1500mm以下であり、減速率50%によって風速が50m/sの風を25m/s以下にできる防風壁からの距離である。風速50m/sの風を20m/sにする減速率60%の測定位置は、500mmまたは1000mmである。
【0034】
(有効な邪魔板間隔について)
これに対し、穴開き部54を形成し邪魔板56を設置すると、表1、2および表5〜7から明らかなように、縦幅が100mmまたは200mmであると、全ての間隔における全ての測定位置で、防風壁52だけが存在する表4の測定結果よりも減速率が大きい。邪魔板の間隔が2000mmおよび3000mmであると、測定点Bでは原則率50%にならない場合がかなりあるけれども、測定点Cでは全ての測定位置で減速率が50%以上になる。
【0035】
表1〜3に示すように、穴開き部54と邪魔板56を設置する場合には、その縦幅が100mmや200mmであると邪魔板の間隔が1500mm以内ならは、測定点BとCの双方において防風効果の高い安価なハウス建設が可能である(表1右、表2右および表5右参照)。また、測定点Cであれば邪魔板の間隔2000〜3000mm以内において、防風効果の高い安価なビニールハウスを建設できる(表6右と表7右参照)。
【0036】
表1〜3および5〜7を参照すると、防風壁52から水平位置50mmの測定点Bは、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mmと200mmが最も減速率が大きく、縦幅300mmが最も小さい。理由は縦幅300mmでは、穴開き部54や邪魔板56の下端辺よりも測定点Bの垂直方向位置が高いため、穴開き部54や邪魔板56の貫通孔を通過した風が測定点Bに直接当たるためである。防風壁52から水平位置50mmの測定点Bが、防風壁52だけの場合よりも穴開き部54の縦幅100mmと200mmの方が大きな減衰率となっている理由は、縦幅100mm又は200mmの穴開き部54の場合でも防風壁52だけの場合と同様に、風は巻き込むように吹き込もうとするけれども、その風は同時に穴開き部54の貫通孔を通過した風によって吹き飛ばされて防風壁内部に吹き込むことができないからである。ここで防風壁52から50mm離れた測定点での風速発生理由は、縦幅100mm又は200mmの穴開き部54の貫通孔を吹き抜けた風が巻き込んだ風である。
【0037】
結論として、図2に示すように防風壁52の上端部に穴開き部54を形成することにより、防風壁52の後方に巻き込まれる風の風速を減速させることが可能である。この際に、穴開き部54を通過した風速は、巻き込もうとする風速よりも速いことが条件になる。穴開き部54の穴開き率が大きくなるほど通過した風速が速くなるけれども、速すぎると貫通孔を通過した風の巻き込み量が多くなり、それでも防風壁52だけよりも巻き込んだ風速は減速されている。
【0038】
下記の表8右は、穴開き部を有しない防風壁52に加えて、縦幅200mmの穴なし邪魔板を該防風壁から1000mm間隔で2枚設置した場合である。この邪魔板は貫通孔を有しない単なる板材であり、さらに穴開き部を有しない防風壁52が存在する。表8右の風速測定値は、対応する穴開き邪魔板による表2右の測定値よりも、邪魔板を設置しない場合の表4右の測定値と近似する。表8右を参照すると、穴なし邪魔板の減速能力は穴開き邪魔板のそれと比較すると明らかに劣り、防風壁52だけの表4右と比較すると、縦幅100mmまたは200mmの穴なし邪魔板は設置しても防風壁52だけの場合とほぼ同じであり、減速能力はないに等しい。表8左の風速値を減速率(%)に変換したものが表8右である。
【0039】
邪魔板の縦幅:200mm
【表8】
【0040】
縦幅200mmの穴なし邪魔板について、表9では防風壁52から1500mm間隔で2枚、表10では防風壁52から2000mm間隔で1枚、表11では防風壁52から3000mm間隔で1枚設置した場合の風速測定値である。この邪魔板は貫通孔を有しない単なる板材であり、さらに穴開き部を有しない防風壁52が存在する。測定結果は、穴なし邪魔板の間隔1500mm(表9)と間隔2000mm(表10)ともに間隔1000mmと同様であり、その減速率は穴開き邪魔板に比較すると明らかに劣り、減速能力はないに等しい。また、穴なし邪魔板の縦幅が100mmや300mmであっても、縦幅200mmのそれ(表8)の場合と同様に殆ど減速されない。この結果、穴の開いていない邪魔板には減速効果がないことが判明する。表9左の風速値を減速率(%)に変換したものが表9右であり、表10左を同様に変換したものが表10右である。そして表11左を変換したものが表11右である。
【0041】
邪魔板の縦幅:200mm
【表9】
【0042】
邪魔板の縦幅:200mm
【表10】
【0043】
邪魔板の縦幅:200mm
【表11】
【0044】
(上部から吹き込む風を防止する効果の大きい縦幅の邪魔板に関する実験)
図2において、測定点Bは防風壁52の高さの3/4に相当し、測定点Cは防風壁52の高さの1/2に相当する。外部の風速が50m/sの場合を想定すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmの全てにおいて、防風壁52の高さの3/4(測定点B)のハウスを建設するとすれば、減速率(段落0031参照)が50%に満たない個所が生じるので高強度の資材を必要として高価になる。一方、防風壁52の高さの半分(測定点C)のハウスを建設するとすれば、穴開き部54と邪魔板56の縦幅200mmで間隔3000mm以内、縦幅100mmで間隔1500mm前後以内において、全ての個所で減速率が60%を超えるので、比較的強度の低い資材を用いて安価なハウスの建設が可能である。外部の風速40m/sを想定するならば、穴開き部54と邪魔板56の縦幅が100mmで間隔3000mm以下であると、防風壁52の高さの半分のハウスについて、全ての個所で減速率が50%を超えるので、比較的強度の低い資材を用いて安価なハウスの建設が可能であり、防風壁52の高さの3/4のハウスであれば邪魔板の縦幅200mmで間隔1500mm以内ならば安価なハウスの建設が可能である。
【0045】
外部の風速50m/sを想定するならば、防風壁52の高さの3/4のハウスを建設すると、安価なハウス建設に関して十分なメリットがないという結論となってしまう。これを解決するために、段落0034で解説した測定位置50mmにおける風の巻き込み防止効果を利用すべきである。また、表1と表2を参照すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mmよりも縦幅200mmの方が減速効果が大きい。この点に関し、測定点Bの高さ位置から穴開き部54や邪魔板56の下端辺までの距離が近い方が減速測定の点で不利であり、この点で縦幅200mmは縦幅100mmよりも明らかに不利であるにもかかわらず、縦幅200mmの方が減速効果を有する。したがって、通常、穴開き部54と邪魔板56の縦幅が広い方が減速能力が大きいことを示す。縦幅300mmは測定点の高さ位置が邪魔板のすぐ後である事から比較できない。
【0046】
表12および表13は、防風壁52に風が巻き込まれるのを防ぐために、穴開き部54として、縦幅100mmのものを設置した場合の風速測定値を示す。さらに表12では間隔1500mmをおいて縦幅300mmの邪魔板56を2枚取り付け、表13では間隔2000mmをおいて縦幅300mmの邪魔板56を1枚取り付け、上部を吹いている風が拡散して広がることにより吹き込んでくる風を減速させる。表12左の風速値を減速率(%)に変換したものが表12右であり、表13左を同様に変換したものが表13右である。
【0047】
【表12】
【0048】
【表13】
【0049】
表12右と表13右を参照すると、上部から吹き込む風を防止するためには、邪魔板56,56間の間隔が広いほどかつ防風壁52からの距離が長くなるほど風が拡散し広がる幅が大きくなるから、邪魔板56の縦幅を広くしなければならないことが推測できる。表12右と表13右では、測定点Bが縦幅300mmの邪魔板56の下端辺のすぐ後方に位置するので比較検討できず、測定点Cについて比較すると邪魔板56,56の間隔が狭い方が減速効果が大きいことが判る。邪魔板56の縦幅が同じで、その設置間隔を変化させると、その間隔が狭い方が減速効果が大きいから、前記の推測が正しいことの証明になる。測定値BとCのAに対する減速率を算出し比較すると違いは明瞭である。
【0050】
表12右に対して、防風壁52だけを設置した場合データの表4右および縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔1500mmで設置した場合のデータの表5右とを比較する。表5右と表12右は、ともに防風壁52だけの表4右の場合よりも減速能力が強くなっている。表5右と表12右を比較すると、測定点Bの50〜1450mmの区間は、表5右と表12右の実験条件は同じであるから、両方のデータは近似し、ほとんど同じである。測定点Bの測定位置1550mmでは、表5右は邪魔板56の縦幅100mmであり、表12右は縦幅300mmである。邪魔板56の縦幅300mmの方は、測定点Bが邪魔板56のすぐ後であるという不利な条件であるのにかかわらず、その減速率が大幅に改善させている。
測定点Bの2000〜2950mmの区間でも、邪魔板56の縦幅300mmの表12右の方が表5右のそれよりも減速率が高くなっている。一方、表5右と表12右における測定点Cでは、50〜2950mmの区間の全ての測定位置においてのデータが近似し、ほとんど同じである。
【0051】
次に、表13右に対して、表4右および縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータ(表の表示なし)とを比較する。縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右は、表4右の場合よりも減速能力が強くなっている。縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右を比較すると、測定点Bの50〜1950mmの区間は、両者の実験条件が同じであるために両方のデータは近似しており、ほとんど同じである。測定点Bの特定位置2050mmにおいて、縦幅100mmの邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータは、邪魔板56の縦幅が300mmである場合の表13右と比べると、縦幅300mmの邪魔板56の方は、測定点Bが邪魔板のすぐ後という不利な条件であるにもかかわらず、表13右において減速率が大幅に改善され、測定点Bの2500〜3500mmの区間でも縦幅300mmの邪魔板56の方が減速率が高くなっている。一方、縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右における測定点Cでは、50〜3500mmの区間の全ての測定位置においてデータが近似していて、ほとんど同じである。
【0052】
邪魔板56の間隔1500mmの表12右と間隔2000mmの表13右とを比較すると、表12右において穴開き部54と邪魔板56との間隔1500mm(図4における距離xに相当)が減速率57.7%であり、外部の風速が50m/sの時に21.2mの風速に相当する。一方、表13右において穴開き部54と邪魔板56の間隔2000mm(図4における距離xに相当)は減速率が51.4%であり、風速が50m/sの時に24.3mに相当する。いずれも相当な強風であるが、防風壁52からの邪魔板距離x(図4)を1500mmよりも少し短かく設定すれば,50m/sの風速でも18〜19m/s以下に減速でき、安価なハウス建設が可能になりうることを示している。
【0053】
邪魔板56相互間の間隔(図4における距離x´に相当)について考察する。表12右では、防風壁52における穴開き部54の縦幅は100mmであるから、塀の中へ吹き込む風量が表2右、表3右、表6右、表7右のような縦幅200mmや300mmの場合よりも本質的に少ないので、この点を考慮して距離x´を比較すると表12右の場合が最も減速能力が強い。相互間の間隔が2000mmである表13右の場合には、間隔が2000mmであるために上部から吹き込む風量が加算され、結果的に表12右よりも劣るが、表12右以外よりは多少改善されている。
【0054】
表12右と表13右に関して、表1右、表5右のような邪魔板56の縦幅100mmの場合と比較すると、防風壁52の中へ吹き込む風量は同じでも、上から拡散して吹き込んでくる風を防止する効果が邪魔板56の縦幅100mmと300mmでは比較にならないほど違い、表12右と表13右の方が減速能力が強くなっている。これらの結果により、表12右や表13右のように、巻き込み防止用の穴開き部54を防風壁52に取り付け、該穴開き部よりも大きな縦幅の邪魔板56を使用することにより、測定点Bにおける減速能力が向上することが判明した。
【0055】
前記の説明により、防風壁52における巻き込み防止用の穴開き部54の縦幅よりも、邪魔板56の縦幅を大きくすることによって、減速能力を向上させることができる。しかしながら、防風壁52からの邪魔板距離xを1500mmよりも少し短かく設定したり、邪魔板相互間の距離x´を1500mmにすることは、栽培ハウスの上部に数多くの邪魔板が配置されることで太陽光がさえぎられるので、農作物の育成上好ましくない。少なくとも穴開き部と邪魔板との間隔および邪魔板相互間の間隔は3000mm以上が必要であり、且つ外部の風速が50m/sの時に内部の風速を18〜19m/sに下げるには、邪魔板相互間の間隔を4242mmにしなければならない。その理由は、図3のように邪魔板56の間隔を3000mmに設置した際に、風の方向によって最大4242mm(3000×√2)の間隔になるからである。
【0056】
邪魔板56の縦幅と間隔を選定することにより、邪魔板間の間隔4242mmで減速率を64%以上にすることが可能か否かについて考察する。この際に、外部の風が防風壁の内側へ進入する経路は2つであると推定できる。そのひとつは、防風壁の上端部を巻き込むように進入する経路である。これに対しては前記の「有効な邪魔板間隔について」から解決済みである。ふたつめは、図4に示すように、上部を吹く風が塀の内部へ拡散して広がることによって吹き込んで来る経路である。表12右において、穴開き部54と邪魔板56との間隔が1500mmの時に、測定点Bにおける1550〜2950の区間では、外部の風速50m/sの時に13.2m/sに相当する。表13右のように穴開き部54と邪魔板56との間隔を2000mmにすると、測定点Bにおける2050〜3500の区間では外部の風速50m/sの時に18.6m/sの風が吹き込むことになる。したがって間隔x(図4)は1500mmよりも少し狭くしなければならないが、実際には間隔x´(図4)は1500mm程度でもよいことが判明する。
【0057】
間隔x´が4242mmであれば、減速率を64%以上にするには邪魔板56の縦幅を何mmにすればよいかを実験することが必要である。同時に測定点Bが邪魔板下端辺のすぐ後ろに位置していたので、この測定点Bを防風壁52の上端から450mm下に変更する。次に、間隔xに関しては、その間隔が1500mmであれば、外部の風速50m/sの時に21.2m/sの暴風が吹き込み、間隔が2000mmならば24.3m/sの暴風となる。これを減速率64%以上に上げる手段の実験も必要である。この手段として、下記の4つの方法が推定される。
1.防風壁52の内側に建設するハウスの高さを低くする。
2.防風壁52に最も近い邪魔板56のみを該防風壁との間隔1500mmよりも狭くした際に、邪魔板相互間を適切な間隔に定める。
3.防風壁52に形成する穴開き部54の縦幅を100mmより狭くする。
4.邪魔板56の穴開き率を小さくして、風を通しにくくする。
【0058】
(穴開き部54の縦幅が100mmである際に、図4の間隔xおよびx´の適切な間隔)
防風壁52における穴開き部54の縦幅を100mmと定めた際に、図4の間隔xを1200mmとするのが適切か否かを確認する。また、邪魔板56の縦幅(図4における距離yに相当)を300mm、400mm、500mmと変えた時に、図4の間隔x´の適切な値を調べる。この際に、距離yが300mmと400mmにおける測定点Bは、防風壁52の上端から450mm下に変更し、測定点Bは表中にB´と記す。距離yが500mmである場合は測定点Cのみを測定する。
【0059】
表14右〜表16右は、いずれも穴開き部54の縦幅を100mm且つ間隔xを1200mmに定め、この際に邪魔板56(穴開き鉄板)の縦幅を300mm(表14)、400mm(表15右)、500mm(表16右)と変えた時に風速の測定結果である。表14右および表15右において、測定点Bは防風壁52の上端辺から450mmであり、表16右では測定点Bで測定しない。表14左の風速値を減速率(%)に変換したものが表14右であり、表15左を同様に変換したものが表15右である。そして表16左を変換したものが表16右である。
【0060】
【表14】
【0061】
【表15】
【0062】
【表16】
【0063】
表12右から明らかなように、間隔xが1500mmである場合には、測定位置1450mmにおける測定点Bにおいて、外部が50m/sの時に21.15m/sの強風に相当する。一方、表14右のように間隔xを1200mmにすると、測定位置1150mmにおける測定点Bは15.1mに相当する。表14右〜表16右から、測定位置3000mmまでは減速効果があるが、それ以上遠ざかると急に効果が減少し、邪魔板56(穴開き鉄板)の縦幅が広いほど減速効果が高いことが判明する。また、邪魔板から1800〜2300mmの所で上部から風が吹き込む、そしてこれは縦幅を広くしても妨げないことが判明した。但し、測定点Bを上端から284.9mm下とし、図4の間隔xを1500mm、2000mmで判断していた表12右と表13右に対し、表14右と表15右は測定点Bを上端から450mm下とし、間隔xを1200mmとしている以上これらを単純に比較することはできない。
【0064】
結論として、穴開き邪魔板の場合には、図4の間隔xは1200mmで適切であることが明らかになる。また、測定位置3000mmつまり邪魔板からの距離1800mmまでは減速効果があり、該邪魔板の縦幅に関係なしに測定位置3500mmで急に効果が少なくなる。この点に関し、間隔x´は1800〜2300mmで適切であるのではない。その理由は、表14右における測定点Bの測定位置3000mmでは、外部が50m/sの時に20.05mの強風が吹き込むからである。
【0065】
邪魔板の縦幅の長さに関係なく、該邪魔板から1800〜2300mm離れると減速効果が著しく減少することが判明する。
【0066】
一方、表14右〜表16右から、穴開き邪魔板の縦幅が広いほど減速効果が大きいことが判明する。表14右〜表16右によると、外部が50m/sの時に内側の風速を十数mに減速させるには、縦幅300mmの邪魔板では、測定位置1500mmにおける測定点Bで14.65m/s、縦幅400mmならば測定位置3000mmで16.95m/sであり、縦幅500mmならば測定位置3000mmにおける測定点Cで15.05m/sに相当する。この結果、図4の間隔x´は、縦幅300mmの邪魔板ならば300mm(1500−1200=300)であり、縦幅400mmと500mmの邪魔板ならば1800mm(3000−1200=1800)となる。但し、邪魔板の縦幅を500mmにすれば、ハウス上で太陽光を遮る面積が大きく、植物を栽培する場合に不利になる。したがって、邪魔板の縦幅は400mmが適切であることが判明する。
【0067】
表14右〜表16右の実験結果により、前記の方法2(段落0055)に関する解答を得る。つまり、防風壁と邪魔板との間隔を1200mmにすれば、該防風壁から1150mmにおける測定点Bでは、外部が50m/sの時に内側が15.1m/sに相当し、該防風壁との間隔は1200mmが適切である。また、邪魔板相互間の間隔は、縦幅300mmでは邪魔板から2300mmにおいて測定点Bで、外部が50m/sの時に30.95m/sの暴風であり、縦幅400mmでは測定点Bで31.8m/s、縦幅500mmでは測定点Cで24.85m/sに相当し、いずれも暴風である。邪魔板の縦幅を無限に長くすれば減速率は向上するが、太陽光を遮ることで植物栽培に適さず且つ内部へ建てるハウスのスペースが減少するので縦幅を無限に長くすることはできない。この点から、図4の間隔x´は、邪魔板の縦幅400mmで1800mmとしたいところであるが、1800mmの対角線長さは2545.2mmとなるために、この点を考慮して1272.98mmが適切である。
【0068】
(穴開き部の縦幅を100mm以下にすることの可否)
下記の表17右〜表21右は、防風壁における穴開き部54の縦幅を、100、80、50、30、10mmと変えた際に風速の測定結果である。表17右〜表21右を比較すると縦幅100mmが最も減速効果が大きいことが解かる。縦幅100mmと200mmでは、表1右と表2右における測定位置950mmまでの区間を比較すればよく、その結果は縦幅200mmよりも100mmの方が大きな減速効果を示している。測定点Cで比較するならば、表1右〜表3右において、測定位置1000mmまでの区間では、100mm、200mm、300mmと縦幅が広くなるほど減速効果が小さい。結論として、穴開き部54は、縦幅100mm前後が最も減速効果が大きくなる。表17左、表18左、表19左、表20左、表21左のそれぞれの風速値を減速率(%)に換算したものがそれぞれ順番に表17右、表18右、表19右、表20右、表21右である。
【0069】
穴開き部の縦幅:100m
【表17】
【0070】
穴開き部の縦幅:80mm
【表18】
【0071】
穴開き部の縦幅:50mm
【表19】
【0072】
穴開き部の縦幅:30mm
【表20】
【0073】
穴開き部の縦幅:10mm
【表21】
【0074】
(邪魔板56の穴開き率を小さくして、風を通しにくくすることの可否)
図6、図7、図8、図9に示す表面を有する穴開き率の異なる邪魔板を用いて平均風速値(m/s)と平均通過風速率(%)を測定する。平均風速値は穴開き邪魔板の風下側200mmの位置での風速を測定し、これを単純平均した値である。平均通過風速率(%)=(平均風速値÷穴開き邪魔板を風上で通過直前の風速値)×100で算出される。その結果を表25に示す。又、これらの穴あき率の異なる邪魔板を用いて、図5に示す実験装置によって風速を測定する。その結果は、図7の邪魔板(穴開き率27.27%)では表22、図8の邪魔板(穴開き率18.18%)では表23、図9の邪魔板(穴開き率14.14%)では表24に示す。これらの測定結果から減速率を算出し、防風壁の外が風速50m/sの時の内側の風速を算出する。その結果を表25に示す。この実験により、図6の穴開き鉄板の邪魔板(穴開き率40.28%)を使用した際に、図4の間隔xが1200mmが適切であった点について、穴開き率や穴の太さ、そして穴の配列や平均風速値が異なる場合も1200mmが適切であるかどうかを確認することができる。
【0075】
【表22】
【0076】
【表23】
【0077】
【表24】
【0078】
下記の表25は、測定位置1150mmにおける減速率と、外部が50m/sの暴風の時の内側の風速を、各邪魔板の平均風速値毎に示したものである。穴開き率はそれぞれの邪魔板を実測して算出する。内側の風速はそれぞれ減速率から算出する。表22左の風速値を減速率(%)に変換したものが表22右であり、表23左の風速値を減速率(%)に変換したものが表23右である。そして表24左を同様に変換したものが表24右である。1300mm以上の位置での測定データがないので、適切な邪魔板の設置位置かどうかは不明であるが、少なくとも測定位置1150mmは有効であることが判る。一方、穴開き率を小さくして風を通しにくくする事で減速率が改善するかという問題に関しては、表25では平均風速値が大きくなると減速率も共に大きくなっている。この件については後述するが、極大値が存在する。従って表25だけで判断出来ない。
【0079】
【表25】
【0080】
次に、穴開き邪魔板について、測定位置2300mmで上部から風が吹き込んでくるか否かを確認する。表22〜24において、測定位置3000mmと3500mmとで減速率の差が急激に変化している。この理由は、測定位置3000mm迄は風速の上昇はゆるやかであった。しかし測定位置3500mmの位置で急激に外部の暴風が防風壁52内に拡散し、吹き込んだ事を意味する。つまり、図4の間隔x´において、風上側の邪魔板から2300mmの位置前後で上部から風が吹き込んで来ることが判明した。防風壁だけの場合の表4右でも、測定位置2000mmで風の吹き込みが発生する。
【0081】
平均風速値が変化すると減速率も変化するかどうかについては、前記の表25に示すように変化することが判明した。その変化は、平均風速値が大きくなると減速率も大きくなる。しかしながら、平均風速値を際限なく大きくすると、邪魔板が無い場合と同様の状態に近づくから、つまり、平均風速値を大きくすると表4の値に近づき、小さくすると穴なし邪魔板の値に近づく。したがって、平均風速値には最も減速率を大きくする最大値が存在することが判明する。ここで穴開き率を数値制限の基準とせず、平均風速値を基準とする理由を説明する。表25によると、穴開き鉄板の穴開き率が最も大きくて40.28%である。しかし穴開き率27.27%の穴開きベニヤの方が減速率(%)は大きい。この様に減速率(%)は穴開き率に比例しない事が解った。次に基準とする平均風速値の問題点を記す。段落0017の測定と段落0074の測定の異なる点は、穴開き邪魔板の風下側50mmでの測定値と200mmでの測定値という点のみである。この測定条件による測定結果の違いは、50mmが4.80m/sであり200mmは2.34m/sである。以上の理由により、穴開き邪魔板の風下側何mmという条件は重要である。従って本明細書と特許請求の範囲についての平均風速値は、穴開き邪魔板の風下側の距離が200mmの位置での測定値とする。
【0082】
この結論として、図4の間隔x、間隔x´ともに、邪魔板の平均風速値が2.33m/sから2.34m/sを経て2.55m/sと増加するにつれて、減速効果が大きくなる。図4の間隔xは1200mmが適切であり、邪魔板の穴開き率、穴の直径および穴の配列などに関係なく、平均風速値が減速効果に影響することが判明する。この平均風速値には、最も減速率を大きくする最大値が存在することが判明した。この最大値を特定するデータとして表25は有効であるが不十分である。減速率の極大値を特定する為に、表25のデータを補強する。図24、図25、図26、図27、図28に示す表面を有する穴開き率の異なる邪魔板を用いて、段落0074の記載方法で平均風速値(m/s)と平均通過風速率(%)を特定し、その結果を表36に示す。又、これらの穴開き率の異なる邪魔板を用いて、図5に示す実験装置によって風速測定する。その結果はそれぞれ、図24の邪魔板の測定値は表31、図25の邪魔板の測定値は表32、図26の邪魔板の測定値は表33、図27の邪魔板の測定値は表34、図28の邪魔板の測定値は表35に示した。表31左、表32左、表33左、表34左、表35左のそれぞれの風速値を減速率(%)に変換したものが、それぞれ順番に表31右、表32右、表33右、表34右、表35右である。これらの測定結果から減速率を算出し、防風壁の外が風速50m/sの時の内側の風速を算出する。その結果を表36に示す。表25と表36を参照すると、平均風速値が2.55m/sの時の減速率(74.3%)が極大値である。
【0083】
また、防風壁の上端から450〜570mmの部分は、邪魔板の穴開き率の穴の直径、縦幅の広さおよび平均風速値に関係なく、表22〜24を参照すると、風上の邪魔板から2300mm前後の個所で上部からの風が吹き込んで来る。しかし、図4の間隔x´は、表14〜16を参照すると、これまでの実験結果によって邪魔板の縦幅400mmの時に1800mmであると適切になる。
【0084】
前記の結論を総合すると、最も減速効果の良い条件は、図4の間隔xが1200mmおよび間隔x´が1800mmであり、穴開き部54の縦幅100mmであると平均風速値は2.55m/s(表25参照)になる。間隔x´でも、平均風速値が2.55m/s(表25、表36参照)で邪魔板の縦幅は広いほどよいけれども、植物を栽培するうえで日当りを考慮すれば、邪魔板の縦幅が広くなるほど不利になる。邪魔板の縦幅100mmでも減速効果はあるが、縦幅を狭くするほど邪魔板相互間の間隔および防風壁との間隔を狭くしなければならない。このため、邪魔板の縦幅を適当に選択すればよく、以下では縦幅400mmが適当であると仮定して実験を行なう。
【0085】
上記の条件の防風壁で囲まれた壁内部の光環境は、縦幅400mmの邪魔板が1800mm間隔で取り付けられているため、太陽光が邪魔板に遮られて日当りが悪くなる。日当りを改善するために邪魔板の平面配置を変え、図10と図11に示すように邪魔板の縦幅を300mmにするとともに、防風壁を含めて3000mm間隔で矩形状平面に設置し、その対角線に別の邪魔板60,60を取り付け、測定点Dの測定位置は図10と図11においてそれぞれ6ヶ所で定める。さらに、前記の各結論を基づいた構造では減速能力が不十分であることから、防風壁の上端部から1.5m下(測定点E)で測定する。
【0086】
下記の表26は図10における測定点DとEで測定した風速を示し、且つ表27は図11における測定点DとEで測定した風速を示し、この値から測定点DとEにおける減速率を算出する。表26右および表27右において、測定点D,Eの全てである測定点24ヶ所について、最も減速効果の小さい部分でも、風速50m/sの暴風を11.45m/sに減速することが可能となり、測定点Eの場合には9.25m/sに相当する。このように邪魔板が3000mm間隔で十分すぎる効果があることが判ったので、さらに日当たりを改善するために図10と同様に4000mm間隔で設置し、その対角線に別の邪魔板を設置した。表26左の風速値を減速率(%)に変換したものが表26右であり、表27左の風速値を減速率(%)に変換したものが表27右である。
【0087】
【表26】
【0088】
【表27】
【0089】
下記の表28は、図10と同様で間隔が4000mmである測定点DとEで測定した風速を示し、且つ表29は図11と同様で間隔が4000mmである測定点DとEで測定した風速を示し、この値から測定点DとEにおける減速率を算出する。表28および表29において、測定点Eの全てである測定点16ヶ所について、最も減速効果が小さい部分で
は、風速50m/sの暴風を13.15m/sにすることが可能となり、風速40m/sならば10.25m/sに相当する。この風速は暴風ではないが決して弱い風速ではなく、13.15mは強風の部類に属する。したがって、図7のような穴開き邪魔板を使って図10や図11に示すような構造にする場合には、対角線に設置した別の邪魔板60を除く邪魔板相互の間隔、および邪魔板と防風壁との間隔は、対象とする暴風が50m/sと仮定すると、防風壁の高さと内側に建てるハウスの高さの差が1.5mであれば邪魔板間隔を4000mm前後に定めるのが限界である。表28左の風速値を減速率(%)に変換したものが表28右であり、表29左を減速率に変換したものが表29右である。
【0090】
【表28】
【0091】
【表29】
【0092】
表26〜29の風速データにより、防風壁で囲まれた内側のハウスの高さを該防風壁よりも低くすればするほど、該防風壁と邪魔板との間隔および邪魔板相互間の間隔とを広くできることが判明する。この傾向を確認するため、図12に示すように、測定点を防風壁の上端部から下向きに200mm、400mm、600mm、800mmに定め、表30において測定点F、G、H、Iの測定点Aに対する減速率(表30)を算出する。
【0093】
表30の減速率データを参照すると、前記の結論(段落0064参照)と同様の傾向が明瞭に表われている。防風壁の上端から200mm下、400mm下、600mm下、800mm下の全ての測定値が1500mmから2000mmにかけて減速効果が減少している。前記の結論は邪魔板から1800〜2300mm離れた場所で減速効果が減少する現象であり、邪魔板とは異なり防風壁の穴開き部の場合の結論は、穴開き部54から1500〜2000mmの場所で減速効果が減少する現象である。この現象は、穴開き部54の縦幅を100mm、200mm、300mm、および80mm、50mm、30mm、10mmと変えた実験データの全てに現われている。この減少効果は、防風壁の上端に近いほど小さく、該防風壁の上端から下へ遠ざかるほど大きくなる。
【0094】
【表30】
【0095】
【表31】
【0096】
【表32】
【0097】
【表33】
【0098】
【表34】
【0099】
【表35】
【0100】
【表36】
【0101】
邪魔板による減速率は、該邪魔板に設けた穴の形状や大きさおよびその並び方などに関係なく、強風の平均風速値によって決定する。減速率の最も大きい平均風速値は、2.3〜3.0m/sの範囲内にあり、2.55m/s前後であることが判明した。
【0102】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図13は40個のビニールハウス80たまはガラスハウスを防風塀82で囲んだ状態を示す概略説明図である。図14および図15は各柱84の列毎の軸組図であり、防風塀82の高さが3.3mとなっているが、図20および図21の詳細図を参照すると、その上に4.5mmの鉄板と130mmの邪魔板86(穴開き部に相当)があるので、防風塀82の高さは3434.5mmである。130mmの邪魔板86は、60×30×1.6のリップミゾ形鋼に取り付けているために、ミゾ形鋼の30mmの部分が邪魔板の穴を塞ぎ、このために邪魔板86の有効縦幅は100mmである。
【0103】
図13に示すように、防風塀82の中に多数のハウス80を建設し、該ハウスの高さは図示していないが高さ2mである。したがって、ハウス80の頂部から防風塀82の頂部までの間隔は1434.5mmである。図20と図21に示すように、防風塀82では、風速50m/sに耐えるために必要な壁ブレース87を配置する。その配置図が図17である。図16は、邪魔板88の取付場所を示し、取り付けの詳細は図18と図19に示す。
図16における小四角形は柱84であり、柱以外の実線部は全て邪魔板88である。この防風塀82は、ポリ塩化ビニール波板90貼りである。該波板の色は、透明または無農薬栽培ができるように赤色光と遠赤色光を反射する色に塗布する。
【0104】
透明のポリ塩化ビニール波板90は、一般的に明り取りのために工場や倉庫の屋根、壁材として使用されている。したがって風通しを良くするために風通し持上げ戸92(図13参照)を取り付ける。各ハウス80について、図13のように規則正しく配列し風が通る道を作り、その道の両端に風通し戸を取り付ける。図16に示す邪魔板88は、4m角に配置して取り付けている。そのままでは上部から暴風が拡散して吹き込む。特に図22に示す対角線方向の風が吹いた時は、4mだから5.656mになる。したがってほとんど減速能力が無くなることになる。
【0105】
これに対し、図16のように、それぞれの正方形の対角線上に邪魔板88を設置することによって、図22のA方向からの風は最大間隔が2000mmでD方向は最大間隔2828mmとなる。表28右を参照すると測定位置2000mmにおける風速は{(100−72.3)÷100}×50=13.85m/sとなり、50m/sの暴風を13.85m/sに減速させる。しかも、この値は防風塀82の頂部から450mm下方向での値であるのに対し、本実施例では頂部から下へ1434.5mmであるから、測定位置2000mmの風速は{(100−80.9)÷100}×50=9.55m/sに近似する風速にまで減速されることになる。
【0106】
図22のA´方向からの風についても、表29Aを参照すると頂部から450mm下方向の風速は、(100−74)÷100}×50=13m/sである。そして1.5m下方向は、50m/sの風速が{(100−82.3)÷100}×50=8.85m/sとなる。図22の邪魔板Fから測定点E(穴開き部54から3500mm離れた測定点)までの間隔を知るために、邪魔板F付近の寸法などに基づいて図23を作成した。x=500−300で200mmであり邪魔板Bと直線A´Eは平行であるから直角三角形である。したがってyも200mmとなり邪魔板Fから測定点Eまでの間隔は3200mmとなる。直線Gを邪魔板Bと平行に引き、K点から邪魔板Bに直交する線を引くことによってZ=150となる。したがって図22の邪魔板Bに平行で邪魔板Bから150mm離れた所の邪魔板Fと測定点Eの間隔は3000+200+150=3350mmになる。これは表29右の測定点3500mmは邪魔板Fからの間隔が3200mmであるから、表29右の測定点よりも150mm離れる事によって150mm間隔が広くなるという事である。表28右、表29右を参照しても150mm程度では大差がないことが解かる。
【0107】
邪魔板を設置することによって、4mの間隔の時に、間隔が4mの所は邪魔板Bの近傍部でしかないことが判るが、前記の実験と比べて最大で4000−3200=800mm広いにすぎず、しかもそのエリアは邪魔板Bの近傍である。防風塀82に付けた邪魔板86(穴開き部)と内部の邪魔板88とは、その減速能力が異なることが前記の測定実験によって明らかになっているから、区別して考察する必要がある。つまり表26右〜表29右を参照すると、1m程度間隔が広くなっても、防風塀内部の邪魔板の場合(表26右,表28右)は防風塀82からの距離が2000mm以上のエリアであり、表29右,表27右では防風塀からの距離が500mm以上のエリアであるから、いずれも問題にならない程度の値である。次に、防風塀82から邪魔板88までのエリアについては、最大間隔が1500mmと2000mmであり、表27右では最大間隔3000mmであるので問題外である。
【0108】
問題となるのは、図22において、間隔が4mの図22と図23の邪魔板Bの近傍部のみであり、この部分は測定していないが防風塀と邪魔板までのエリアについては表28右の50〜2000mmのエリアが該当する。表28右によると、800mm(4000−3200=800)間隔が広がった時は、50mmと1000mmの差(0.8%)、500mmと1500mmの差(9.6%)、1000mmと2000mmの差(9.5%)であり、これだけの減速率が低下する。これだけ低下することにより、50m/sの風速において、減速しない風速分は(9.6÷100)×50=4.8m/sである。したがって計算上は8.85+4.8=13.65m/sの風速となる。内部の邪魔板88の場合は、表29右の500〜3500mmのエリアが該当する。500と1500mmの差(9.2%)、1000と2000mmの差(12.6%)、1500mmと2500mmの差(4.3%)、2000と3000mmの差(−0.2%)、2500と3500mmの差(1.9%)であり、これらの減速率の中で2000mmと3000mmの差がマイナスになっている。これは対角線上に邪魔板をX状に設置した場合の効果であるようであり、前記の実験でも同様の現象が現われている。減速率がこれだけ低下することにより、風速は(12.6÷100)×50=6.3m/s速くなるため、8.85+6.3=15.15m/sの風速となる。
【0109】
風速15.15m/sは強風ではあるけれども、この程度の強風を阻止するだけならば十分に安価なハウスを設置することができる。さらに、この風速は、邪魔板から10〜30mmぐらい離れた個所でしかないので、該邪魔板の両側において20〜60mmの範囲しかなく、風速50m/sの暴風が正しくこの角度から吹く確率はむしろ非常に小さい。図22のA´の方向が少しでも斜めに傾けば、図22において邪魔板F,I間を吹く風の通る距離は短かくなる。本実施例では、これらの点を考慮して邪魔板間4m角を採用したが建設後に問題が発生すれば邪魔板縦幅を450または500mmにしたり、防風塀の高さをより高くしてハウス頂部と防風塀頂部の間隔を広げるなどの対策を行えばよい。
【0110】
植物の主要な光反応のスペクトル・バランスについて、非特許文献1の78、79ページに以下のように記載されている。
【0111】
「植物の主要な光反応のスペクトルを図33に示す。これは単位エネルギー当たりの効果の相対値を示したものである。植物は基本的には光合成〔8〕によって成長するが、それ以外の重要な光反応に光形態形成がある。これには弱光反応〔10〕、〔11〕と強光反応〔9〕があり、フィトクロームという色素の働きを介して種子発芽、花芽分化、開花、子葉の展開、葉緑素合成、節間伸長などの植物の質的な変化を誘起する。強光下における葉緑素合成は青色光によって促進され、赤色光によって阻害される傾向がある。光合成に対しては赤色光の効果が最も大きいが、葉の正常な形態形成には青色光が必要とされる。要するにだいたい640〜690nmの範囲の赤色光と、420〜470nmの範囲の青色光が有効である。スペクトル分布を変えた生育実験によれば、植物の健全な生育には、赤色光と青色光がバランスよく配合されていることが望ましい。この二つのスペクトルの比はR/B比と呼ばれるが、この値は一般に1〜10の範囲がよいようである。
【0112】
最近、図33の右端に見られる730nmを中心にした遠赤色光(FR)の顕著な節間伸長効果が見出されており、赤色を遠赤色との割合R/FRも生育に無視できない効果をもつことがわかってきた。一般にR/FR<1の場合に伸長が促進され、逆の場合はわい化の傾向になる。植物群落内では可視光が通りにくいため、遠赤色の割合が大きく、R/FRは1より小さくなる。植物がこの条件に適応したため、遠赤色光は植物の伸長成長を促進するように働く。光形態形成の多くは赤色光によって促進され、遠赤色光によって可逆的に阻害される。」
【0113】
光形態形成の赤色光効果の波長領域615〜680nmの分光放射輝度を赤色光Rとし、光形態形成の強光下反応の青色光の波長領域420〜470nmの分光放射輝度を青色光Bとし、光形態形成の遠赤色光効果の波長領域700〜750nmの分光放射輝度を遠赤色光FRとしたとき、反射によって太陽光が減衰しR/B比は大きくなる様に変化し、R/FR比は小さくなる様に変化している。この赤色光Rと青色光Bそして遠赤色光FRの比を以後は光の比と記す。光の比の変化は光の波長が大きい程エネルギーが大きいという物理現象によって発生する。つまり光の波長は(B)が最も小さくて(R)、(FR)の順に大きくなるので、光のエネルギーも(B)、(R)、(FR)の順に大きくなり(FR)が最も大きいので、太陽光が植物群落内に差し込む時に木の枝や葉に衝突しR/B比は(R)よりも(B)の方の減衰が大きくなるので大きくなるのであり、R/FR比は(FR)よりも(R)の方の減衰が大きくなるので小さくなる。
【0114】
C3植物はその種毎に植物群落内に最も適した場所、つまり適した光の比がある事も実験によって明らかにした。C3植物にはそれぞれの種毎に光合成速度飽和光強度が異なっている事と、植物群落内の入口と奥とでは太陽光の照度が異なる事を考え合せれば、C3植物はその種毎に植物群落内に最も適した場所がある事を示唆している。C3植物の陰性植物は日陰に自生し、C3植物の半陰性植物は木漏れ日の日向と日陰が混ざり合う所に自生する。陰性、半陰性植物を除くC3植物の農作物の原種は、木漏れ日の日向に自生していたのである。これを人間が裸地で栽培し、品種改良を繰り返したものが陰性、半陰性植物を除くC3植物の農作物である。従って、陰性、半陰性を除くC3植物の農作物を無農薬栽培する事が出来る光環境は、日陰でも裸地でも無くて、木漏れ日の日向の光の比のスペクトルである。
【0115】
このことは陰性植物の朝鮮ニンジンを裸地へ定植すると萎れてしまうし、半陰性植物のワサビも裸地へ定植すると萎れてしまうことからも明らかである。陰性、半陰性以外のC3植物を木漏れ日の日向から裸地へ出すと、病気になったり害虫に食われたりすることの原因となっている。つまり、萎れ防止や病害虫の防止をしたければ生れ故郷とも言える植物群落内のそれぞれの光環境の場所へ戻してやれば良いということになる。
【0116】
本発明のハウス防風機構は多数の邪魔板と柱等で構成されているので、太陽光がこれに衝突反射する。つまり植物群落に近い光環境を得る事が可能である。
【0117】
実験(1)
1.実験の目的
赤色光(R)の波長領域は615〜680nmであるが、これは光合成の機能波長と一致している。この赤色光(R)の赤ペンキで透光率が50%とか70%になるまでスプレーし、着色する事によって、栽培空間の光合成機能波長の割合が裸地よりも大きくなっている事と、光形態形成の赤色光(R)と青色光(B)と遠赤色光(FR)のバランスを変えて植物の生命力を強くしている事によって、植物の成長速度にも影響を与えているのではないかと言う事を確認する事を目的とする。
2.実験地
高知県高知市東雲町
3.実施期間
平成20年1月11日〜3月27日
【0118】
4.栽培条件
ハウスG−a:図29参照。材質ポリエチレン厚さ0.05ミリのビニールに水性ペンキ(赤色、図30参照、スプレータイプ)を透光率が、平均46.4%になるまで吹き付けたハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。
ハウスG−b:図29参照。材質ポリエチレン厚さ0.05ミリのビニールに水性ペンキ(赤色、図30参照、スプレータイプ)を透光率が、平均67.9%になるまで吹き付けたハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。
ハウスG−c:ハウスG−bに白い光の蛍光灯を取り付けて、ビニ−ルの赤色は透光率平均66.7%である。白い光の蛍光灯の照射時間帯は朝AM5:40〜AM8:30、夕方PM4:40〜PM6:30 ハウスG−d:図29参照。赤ビニール(符号12)は使用しない。そのかわりに、薄いピンクのビニールを使用したハウス。太陽光が差し込まない様に天井と周囲をこの薄いピンクのビニールで囲んだビニールハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。薄いピンクのビニールの色のスペクトルは図31参照の事。
上記のハウスG−a,G−b,G−c,G−dを暖房する為に、天井と周囲をビニールで囲んだビニールハウス内に入れて電気ストーブを設置した。
ハウス[8]:普通のビニールハウスを赤いハウスや赤い反射板から遠く離れた所へ設置したもの。図32参照。長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。太陽光が差し込まない様に天井と周囲をビニールで囲んだビニールハウス。ビニールハウス内に暖房の為に電気ストーブを設置した。
【0119】
5.光環境
ハウス[8]は暖房の為に電気ストーブを設置した普通のビニールハウスである。ハウスG−a,G−b,G−c,G−dは普通のビニールハウスの中に設置しているのである。従って太陽光は普通のビニールを透過してから、更に赤色ペンキをスプレーしたビニールを透過して栽培スペースへ入る。上記条件下での平均透光率は表37に示す。栽培スペース内の(A),(B),(C)の3ヶ所を測定した。
【0120】
【表37】
【0121】
6.作業手順
毎日1回水やり2リットル
ハウス内温度測定 AM8:25,AM10:10,PM1:00,PM3:10
7.栽培植物
ホーレン草、サニーレタス、葉大根。
【0122】
8.栽培記録
平成20年1月11日 ホーレン草、葉大根、サニーレタスをハウスG−a,G−b,G−c,G−d,ハウス[8]にそれぞれ播種した。
1月15日 ハウスG−a,G−b,G−c,はホーレン草、葉大根、サニーレタスの発芽があった。ハウスG−dは葉大根、サニーレタスが発芽した。ハウス[8]は発芽していない。
1月18日 全てのハウスに播種した全ての種類が発芽したが、ハウスG−a,G−b,G−c,の方がハウスG−d,ハウス[8]よりも発芽数が多い。一見するだけで解かる。数えるまでもないほど差が大きい。
3月6日 葉大根とホーレン草を収穫した。
3月27日 サニーレタスを収穫した。
【0123】
9.実験結果
【表38】
普通のハウス栽培と成育スピードを比較してまとめたものが下表である。
【表39】
【0124】
以上より、野菜の種類によって多少の相違はあるものの、いずれのハウスも普通のハウスよりも成育スピードが早いという結果となった。これは、赤色ペンキをスプレーしたハウスの平均透光率はそれぞれ異なっているが、いずれも必要とする光合成速度飽和光強度を満たしている。従って光強度の要因に関しては同一条件であるが、光の質に関しては図33を参照すれば解かる様に光形態形成の赤色光効果のピーク波長領域と光合成のピーク波長領域が重複している。この為に赤色ペンキをスプレーしたハウスは、栽培空間の光合成機能波長の割合が大きくなっているので普通のハウスよりも光合成速度が早くなる為に、成育が早くなった事が証明されたのである。同時に、ハウスG−a〜ハウス G−dはそれぞれの光の比が異なっている。従って実験結果から、葉大根、ホーレン草、サニーレタスそれぞれにおいて、光の比を木漏れ日の日向のスペクトルにすれば成育が早くなることがいえる。
【0125】
ここで植物群落内の入り口側と奥側とでは、光の比が異なるものであり、このことを考え合わせれば、上記実験結果から、葉大根、ホーレン草、サニーレタスをはじめとするC3植物は、その種毎に最も適した光の比があるということが理解される。最も適した光の比があるといえども、その光の比を探す必要はない。何故ならば前述の如く、太陽光が反射や透過をする事によって光の比は変化するのである。従って植物群落の入口の光環境に適応して自生する種は、反射の少ない太陽光に適応している。つまり光の比の裸地との差が小さくて、光合成速度飽和光強度が強い環境を好むのである。一方植物群落の奥、又はうっそうと茂った植物群落などの光環境に適応して自生する種は、非常に多くの反射を繰り返した太陽光に適している。つまり光の比の裸地との差が大きくて、光合成速度飽和光強度は非常に弱い環境を好むのである。
【0126】
従って太陽光の380〜780nmの波長領域の可視光線を透光させる材質からなり、その色のスペクトルが赤色光(R)と遠赤色光(FR)にそれぞれピーク値を持ち、赤色光(R)と遠赤色光(FR)以外の波長領域の分光放射輝度が、ゼロであるか或いは赤色光(R)と遠赤色光(FR)の分光放射輝度よりも小さい事を特徴とする透光資材によって、栽培ハウスを形成し透光資材の所定の透光率によって栽培ハウス内が、栽培する野菜の光合成速度飽和光強度の明るさを確保すれば良いのである。又、透明な透光資材でも、その材質や厚さそして色の濃度等によって光の比は変化するのであるから、透光資材の所定の透光率によって栽培ハウス内が、栽培するC3植物の農作物の光合成速度飽和光強度の明るさを確保すれば良いのである。
【0127】
実験(2)
1.目的
太陽が明るい夏期は赤い色の付いたビニールを透過させても充分明るいので、赤い色のビニールを使用したビニールハウスであって、ビニールハウス内の明るさがナスの光合成速度飽和光強度の明るさを確保しているビニールハウスでナスを栽培し収穫数を比較する。
2.実験地
高知県高知市東雲町
3.実験期間
平成20年7月15日〜平成20年8月30日
【0128】
4.実験条件
4−1栽培ハウスの装備:ハウスの内側の、ビニール以外の全てと鉢の外側を赤く塗った栽培ハウスの事を以後は「赤いハウス」と記す。
栽培ハウス[2]:普通のビニールを使用せずに赤いビニールを張った赤いハウス
栽培ハウス[14]:普通のビニールを使用した赤いハウスに反射板と赤いネット取り付けたもの(図34参照)
栽培ハウス[8]:普通のビニールハウスを赤いハウスから遠く離れた所へ設置したもの(図32参照)
4−2:栽培ハウス内の光環境を4−3の如くにする為に使用した材料のスペクトル
反射板と赤いビニールを赤くするために水性ペンキ(赤色スプレー)を使用した。図30参照。
栽培ハウス内を赤くする為と、ネットを赤くする為に使用した油性ペンキのスペクトル図35参照。
4−3:各ハウス内の照度と裸地の照度
PM3:00前後の裸地とハウス[2][14]内の照度を下表に示す。ナスの光合成速度飽和光強度は4万lxである。
【0129】
【表40】
【0130】
5.実験(2)栽培方法
5−1:ナス(千両2号/トナシム)
作業手順
午前8:25、10:10、午後1:00,3:10、の1日4回、温度、湿度を測定する。
午後1:00 反射板を西から東に変える。温度、湿度測定、花の数をチェックしてトマトトーンをつける。水をやる。各2リットル。(休日の前日は2倍)
日の入り前後 水をやる。各2リットル。(休日の前日は2倍)
東の反射板を下ろし、西の反射板を上げる。
【0131】
6.実験(2)実験結果
7/15(火)栽培スタート
7/19(土)花が咲き始めた。ハウス[2]の室温が40℃に達した。
7/21(月)ハウス[2][14]の室温が40℃に達した。
ハウス[14][8]の花が落花した。
7/26(土)ハウス内の温度が高すぎるのでハウス[2][14][8]に扇風機を設置した。
扇風機によって5℃ぐらい室温が低下した。
8/ 7(木)ハウス[2]から1個、ハウス[8]は2個収穫した。今日までの花咲き累計と落花の累計、そして花咲きから落花を差し引いた有効花咲き累計を下記する。
【表41】
8/30(土)
【表42】
ハウス[8]に害虫発生、ハウス[2]と[14]には害虫の発生は見られない。ハウス[2]と[8]の収穫量に充分な差異が生じている。つまり実験の目的が達成されたので、本日をもって実験を終了する。
【0132】
ハウス[2][14][8]のハウス内の明るさは、いずれもナスの光合成速度飽和光強度の4万lx以上である。ハウス内の明るさは、ハウス[8]が最も明るくて次はハウス[2]であり、ハウス[14]が最も暗くなっている。従って最も暗いハウス[14]の収穫量が最も少なくなっているのは当然である。しかし最も明るいハウス[8]よりも、約10%暗いハウス[2]の方が8/30の時点でハウス[8]の約1.44倍の収穫量となっている。R/B比を裸地よりも大きくし、R/FR比を裸地よりも小さくする事によって、明るさが約10%暗くても収穫量が多くなる。そして明るさが約24%暗いハウス[14]の収穫量は、ハウス[8]の方がハウス[14]よりも1.42倍多くなっている。
【0133】
しかし光通過率が最も小さい、つまりハウス[2][14][8]の中でR/B比が裸地よりも最も大きくなりR/FR比が裸地よりも最も小さくなっているハウス[14]が、最も元気である。これは落花が最も少ない事によって証明される。次に元気なのはハウス[2]である事から、病害虫防止効果は光の比の変化量が多い程強くなる事が解かった。8/30の時点でハウス[8]は落花が多い為に、花咲き数から落花数を差し引いた有効花数がハウス[14]と同数になっている。ナスは花が咲くと必ず結実して果実となるという特長を持っている。
【0134】
従って有効花数が同数という事は、ハウス[8]の収穫量がハウス[14]の1.42倍多いという数字は途中経過の数字であり、最終的には収穫量の差は1.42よりも小さくなる事を示している。
本実験によって、R/B比を裸地よりも大きくしR/FR比を裸地よりも小さくした光環境で、同時に栽培植物の光合成速度飽和光強度の明るさを保持して栽培する事によって、病害虫防止効果以外にも収穫量が増加する効果が有る事が解かった。
【符号の説明】
【0135】
1 ハウス防風機構
2 ビニールハウス
3 防風塀
5 通風部
7 邪魔板
12 赤ビニール(水性ペンキ:赤色)
13 赤ビニール支持具(油性ペンキ:赤色)
14 栽培用のトロ箱2個(油性ペンキ:赤色)
15 遮光板(光が入らない様に周囲を囲む。ベニヤ板、着色せず)
16 周囲と天井をビニールで張った(ビニール:透明)普通のビニールハウスの天井部のみに赤ネットをかぶせたハウス(赤ネット:油性ペンキ)
17 反射板(水性ペンキ:赤色)
18 反射板支持具(油性ペンキ:赤色)
19 栽培用の鉢6個(油性ペンキ:赤色)
20 周囲と天井をビニールで張った普通のビニールハウス。(透明)
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的脆弱な太陽光併用型の栽培ハウスに併設すると、台風のような熱帯低気圧による烈風または強い季節風などを受けても栽培ハウスが倒壊することが少ないハウス防風機構に関する。本発明の他の目的は植物の生育を促進させる環境を発現するハウス防風機構に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培ハウスでは、ハウス内の野菜は外気の影響を直接的に受けないため、温度、湿度、気流、水やりなどの太陽光以外の環境をコントロールすることができ、気温や風雨の影響を直接受けてしまう開放型の露地栽培よりも生産と品質が安定する。栽培ハウスは、太陽光によらず人工光源だけで光合成を行う完全制御型の植物工場よりも、太陽光だけを使用する太陽光利用型および太陽光による光合成を一部利用する太陽光併用型であると、旬をずらして栽培して高値で販売できるので人気がある。栽培ハウスには、大別してビニールハウスとガラスハウスがあり、日本国内の寒冷地だけでなく、現在ではあらゆる地域で設置されている。
【0003】
ビニールハウスは、鉄パイプまたは木材を躯体とし、ポリエチレンやポリ塩化ビニールなど合成樹脂フィルムで外壁を被覆している。ビニールハウスは、樹脂フィルムが太陽光の紫外線によって劣化して透光率が低下するために、該フィルムの定期的な交換を要するけれども、大寸で重いガラス板を取り付けるガラスハウスと比べて安価であり、ガラスハウスよりも広範囲に使用されている。ビニールハウスは、樹脂フィルムの定期的な交換が必要であるほかに、ビニールハウスにおいて、強風でビニールフィルムが破損すると内部の作物が損傷され、ハウス自体が倒壊することが問題であり、この問題はガラスハウスでも少なからず発生する。
【0004】
ビニールハウスの倒壊の対策として、特開平9−51729号では、支柱と同様に梁なども厚肉の鉄パイプで構成し、ハウス外方に張設用ワイヤと一体化したネットまたはビニールシートを取り付けている。特開2001−95397号は、台風の直前に、ハウスに取り付けたフィルムないしネットを全て取り除くかまた上方に巻き揚げることが可能であり、2枚のフィルムを重ねて張設するとともに、畝に合わせて配列したアーチパイプの中央部を補強兼用ロープで縛り、該ロープの両端を垂直の骨パイプに結合する。特開2002−78421号は、ハウスの骨組を構成する外周ポールと間隔を置いて外側にポールを立設するとともに、両ポール間にパイプを連結して相互に補強し、この骨組をハウスの周方向に適宜の間隔で配置して連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−51729号公報
【特許文献2】特開2001−95397号公報
【特許文献3】特開2002−78421号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「植物工場の基礎と実際」、高辻正基著、裳華書房発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビニールハウスに関する強風や暴風に対する対策は、前記のように躯体を補強するものが大部分である。この際に、ビニールフィルムは二重や三重に重ねる場合が多く、ガラスハウスでもガラス板を二重にするだけであるから、強風はビニールハウスのビニールフィルムまたはネットに直接当たり、躯体が補強されて倒壊を免れても、ビニールフィルムやネットが破損されやすい。フィルムの破損を防ぐために、特開平9−51729号のように張設用ワイヤと一体化したビニールシートを使用したり、劣化しやすいポリ塩化ビニールフィルムの代わりに、農業用ポリオレフィン系フィルムまたはフッ素樹脂のフィルムを張設しても問題は解決せず、ガラスハウスでもガラス板の破損が生じることがある。
【0008】
本発明は、従来のビニールハウスに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、強風が発生しても栽培ハウスが倒壊することを回避するハウス防風機構を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、強風状態下にあっても、ハウス内に微風に近い外気を常に取り入れられるハウス防風機構を提供することである。本発明の他の目的は、植物の生育を促進させる木漏れ日に近い環境を発現できるハウス防風機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のハウス防風機構は、単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むことを通風部と邪魔板で緩和することを特徴とする。
第2発明のハウス防風機構は、第1発明において、通風部は防風塀の上端から50〜200mmの縦幅で形成していることを特徴とする。
第3発明のハウス防風機構は、第1発明において、強風が邪魔板を通過した時に、その平均風速値が24〜32%に低下することを特徴とする。
第4発明のハウス防風機構は、第1発明において、邪魔板の横幅は防風塀の通風部の縦幅よりも大きいことを特徴とする。
第5発明のハウス防風機構は、第1発明において、ハウス防風機構の上方平面における邪魔板の配置について、邪魔板は、全体的に縦横方向および筋交い状に等間隔で並置することを特徴とする。
第6発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁が透明または半透明素材からなることを特徴とする。
第7発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁は、地面に垂直に立設した支柱によって垂直に固定することを特徴とする。
第8発明のハウス防風機構は、第1発明において、防風壁の一部に開閉自在の風通し戸を取り付けることを特徴とする。
第9発明のハウス防風機構は、光形態形成の赤色光効果を有する波長領域での分光放射輝度を赤色光R、光形態形成の強光下反応に属する青色光の波長領域での分光放射輝度を青色光Bおよび光形態形成の遠赤色光効果を有する波長領域の分光放射輝度を遠赤色光FRと規定し、防風壁、柱、邪魔板、そしてハウス防風機構内に設置したビニールハウスやガラスハウスの、ビニールやガラスを、赤色光Rを反射させる色および遠赤色光FRを反射させる色以外の可視光の分光放射輝度が、赤色光Rと遠赤色光FRのそれぞれよりも小さくなる色のスペクトルを有する色で着色し、ハウス内で栽培する野菜類の光合成速度飽和光強度の明るさを確保し、さらにハウス内の栽培環境における赤色光R/青色光Bの比が裸地よりも大きく、且つ赤色光R/遠赤色光FRの比が裸地よりも小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るハウス防風機構は、台風のような熱帯低気圧による烈風または強い季節風などを受けてハウス作物が損傷したり栽培ハウスが倒壊することを解消し、悪天候が多い年度であっても野菜の安定供給を可能とする。本発明のハウス防風機構により、通常のビニールハウスでも強風に耐えることができ、耐久性の高いハウスをガラスハウスよりも安い価格で提供することが可能である。塀の中に建てるハウスの高さは2mぐらいで縦幅も3mぐらいのハウスであり、通常のハウスよりも反当りのハウス内容積が小さくなるから、冬期における暖房用の燃料費が容積が小さい分だけ安くなるという利点もある。
太陽光が塀や柱や邪魔板に当り反射することによって、太陽光スペクトルのR/B比が裸地よりも大きくなりR/FR比は小さくなる。したがって、太陽光のスペクトルを変化させて、収穫量を向上させる効果が生じるのである。さらに塀や柱や邪魔板などを赤色光(R)と遠赤色光(FR)の混合色にすることによって、光の比をさらに大きく変化させることができる。このことによって更なる効果を得る装備として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るハウス防風機構の一例を示す概略斜視図である。
【図2】軸流ファンを用いる防風実験の装置を概略的に示す側面図および平面図である。
【図3】邪魔板の間隔を3000mmに設置した際の風の方向変化を考慮に入れた概略説明図である。
【図4】防風塀内部における穴開き部と邪魔板との位置関係を示す概略説明図である。
【図5】図2と類似の防風実験の装置を概略的に示す側面図および平面図である。
【図6】穴開き邪魔板の一例を示す部分平面図である。
【図7】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図8】穴開き邪魔板の別の例を示す部分平面図である。
【図9】穴開き邪魔板のさらに別の例を示す部分平面図である。
【図10】邪魔板を対角線に配置した防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図11】邪魔板を対角線に配置した他の防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図12】測定点を防風壁の上端部から下向きに200mm、400mm、600mm、800mmに定めた防風実験の装置を示す図2と同様の図面である。
【図13】本発明に係るハウス防風機構において、40個の栽培ハウスを防風塀で囲んだ状態を示す概略説明図である。
【図14】図13のハウス防風機構における縦方向の柱列毎の軸組図である。
【図15】図13のハウス防風機構における横方向の柱列毎の軸組図である。
【図16】図13のハウス防風機構における邪魔板の対角線方向を含む配置図である。
【図17】図13のハウス防風機構における防風壁が必要な強さを得るためのブレース配置図である。
【図18】対角線方向の邪魔板の取り付け詳細図である。
【図19】邪魔板相互および邪魔板と防風塀の取り付けを示す部分平面図である。
【図20】防風塀と柱を拡大して示す部分側面図である。
【図21】防風塀と柱の他の部分を拡大して示す部分側面図である。
【図22】ハウス防風機構において風の吹き込みを示す説明図である。
【図23】吹き込み風の風速を測定するための説明図である。
【図24】穴開き邪魔板の一例を示す部分平面図である。
【図25】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図26】穴開き邪魔板の別の例を示す部分平面図である。
【図27】穴開き邪魔板の他の例を示す部分平面図である。
【図28】穴開き邪魔板のさらに別の例を示す部分平面図である。
【図29】栽培ハウスG−B:ビニールに赤色ペンキを透光率46.4%になるまで吹き付けたもの。
【図30】赤色の水性ペンキのスペクトル
【図31】薄いピンクのビニールのスペクトル
【図32】栽培ハウス[8]:普通のビニールハウス
【図33】植物の光反応の作用スペクトル
【図34】栽培ハウス[14]
【図35】赤色の油性ペンキのスペクトル
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明に係るハウス防風機構1を例示している。ハウス防風機構1は、単数または複数のビニールハウス2またはガラスハウスを取り囲む矩形状平面の防風塀3または防風壁を有し、該防風塀の高さはハウス2よりも相当に高く定める。防風塀3は、通常、地面に垂直に据え付けた柱を含む金属フレーム(図示しない)に固着し、垂直設置の通常、全体が同じ高さであるけれども、部分的に高さを変更することも可能である。
【0013】
防風塀3には、その上方部において所定の縦幅の通風部5または穴開き部を形成する。通風部5は、防風塀3の上方部に多数の貫通孔6を直接設けて穴開き部としても、または防風壁と別個に細長い穴開き邪魔板を水平に取り付けてもよい。防風塀3は、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニール、ポリカーボネートなどの波板やシートからなり、ハウス3への日差しを妨害しないように透明または半透明であり、特定の可視光線を多く通過させて植物生育を促進するために適宜に着色してもよい。
【0014】
邪魔板7は、全面または部分的に多数の貫通孔8を形成した細長い板材であり、防風塀3の上端においてそれぞれを横置き垂直に並べ、全体として大きな間隙を有することにより、強風が上下方向に通過可能にするとともに、ハウス2への日差しが必要以上に妨げられないように構成する。邪魔板7は、図1において矩形と対角線の平面配置を組み合わせているけれども、これ以外に単なる平行状、格子状、ジグザグ状などに平面配置することも可能である。邪魔板7は、所望の色に着色した金属板やベニヤ板などからなり、貫通孔を設けた透明のプラスチック板でもよい。
【0015】
ハウス防風機構1を提案するに際して、防風対象として季節風とともに台風の風を考慮に入れた。台風は、上昇気流である熱帯低気圧であるから、広域で判断すれば斜め上へ吹き上がるイメージであるけれども、局地的には平地であると地面と平行に水平に吹き、季節風とほぼ同様である。このため、ビニールハウスを高い壁で取り囲むと、壁が強風を防ぎ、壁近傍の風は微風になるけれども、壁から遠ざかるにつれて強風は壁内部へ回り込んで吹き込む。回り込みによる吹き込み傾向は、壁で囲まれた面積が広いほど強くなる。仮に、植林によって壁内部を森の状態にすると、木の枝や葉によって風は遮られて壁の内側へ吹き込みにくくなるのは当然であるから、植林の代わりに邪魔板を一定の間隔で取りつけ、邪魔板によって防風効果があるか否かを実験によって確認した。
【0016】
(台風モデルによる実験)
実験に際して、市販の軸流ファン50(図2)によって水平の強風を発生させる。図2では水平方向に軸流ファン50と穴開き板と邪魔板(※印参照)との概略側面位置を示し、縦方向にその平面位置を示している。図2において、直径800mmの軸流ファン50の前方に、所定の距離をおいて横幅1000mmの穴開き板を垂直に立て、最前方の穴開き板の下端辺は防風壁52(防風塀に相当)の上端辺と当接する。この穴開き板が防風壁52の穴開き部54であり、その後方に位置する穴開き板が邪魔板56,56に相当する。穴開き部54および両邪魔板56の先端辺をファンの周上端の185.4mm下方にして防風効果を測定する。軸流ファン50は、ファン中心と周辺の風力が弱くなるので、穴開き部54と邪魔板56は軸流ファン50の中心からずらし、その表面がファン表面と平行になるように配置する。
【0017】
前記の穴開き鉄板は、厚さ3mm、穴径が直径10mm、穴ピッチが15mmであり、穴開き部54および邪魔板56に相当する。この穴開き鉄板に関して、風をどの程度減速できるかを調べるため、横幅600mmおよび縦幅1800mmの穴開き鉄板を軸流ファン50の前方400mmに平行且つ垂直に設置し、該穴開き鉄板の後方50mmに風速計を設置して該穴開き鉄板前後の風速を測定する。この測定の結果、穴開き鉄板直後では風速5.23〜4.36m/sで平均4.80m/sであり、一方、穴開き鉄板直前では風速10.5m/sであるから、平均通過風速率は45.71%であった。この結果、用いる穴開き鉄板は、通常、風速を約半分以下に下げうることが判明する。
【0018】
図2は、穴開き部54および邪魔板56を1000mm感覚で3枚(※印参照)取り付けた場合を示す。穴開き部54と邪魔板56の縦幅は、100mm(表1)、200mm(表2)または300mm(表3)であり、これらの上端辺は軸流ファン50の周上端より185.4mm下方である。高さ方向において、測定点Aは、防風壁52の上端辺より50mm上方つまり軸流ファン50の周上端の135.4mm下方である。測定点Cは防風壁52の1/2の高さであり、測定点Bは測定点AとBの中間の高さである。表1において、左欄の長さは防風壁52からの水平距離を示し、いずれも風速の測定位置である。それぞれの場合において、邪魔板56の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを測定する。
【0019】
図2に示す装置による風速の測定結果を下記の表1〜3に示す。この結果は、穴開き部54と邪魔板56を全く設置せず、防風壁52が存在するだけの装置構成である表4の場合と比較すればよい。データを減速率(%)に変換し、明瞭に比較出来る様にする。減速率(%)=(測定値B、又はC÷測定値A)×100 表1左の減速率変換表は表1右、表2左の減速率変換表は表2右、表3左の減速率変換表は表3右、表4左の減速率変換表は表4右側である。
【0020】
邪魔板の縦幅:100mm
【表1】
【0021】
邪魔板の縦幅:200mm
【表2】
【0022】
邪魔板の縦幅:300mm
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】
表1の縦幅100mmであると、穴開き部54を通過した風は、測定位置50mmにおいて測定点Bで7.01m/sから0.69m/sに減速され、さらに1枚目の邪魔板56を通過した風は、測定位置1050mmにおいて測定点Bで3.63m/sから1.27m/sに減速される。縦幅100mmの邪魔板56は、縦幅200mmのそれよりも測定点Bの部分で風の減速がやや少ない。縦幅300mmの邪魔板56の場合には、測定点Bで穴開き邪魔板を通過した風速は通過前のほぼ半分にすぎない。この理由は、測定点Bの高さ位置が、縦幅300mmの邪魔板56の下端辺よりも上方に配置されるために、該邪魔板を通過した風が直接当たるので測定値が不正確になっている。また、測定点Bにおいて、縦幅100mmの邪魔板56が、縦幅200mmの邪魔板56よりも風速を減速させる効果が大きい結果になっているが、これは測定点Bが邪魔板56の下端辺からより遠くなるからであり、風速を減速させる効果が大きいわけではない。
【0025】
表1〜3を表4と比較すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれも、風速を減速させる効果があることが判明した。穴開き部54と邪魔板56の下端辺から最も遠い測定点Cにおいて、減速効果の大きい順に並べると縦幅100mm、200mm、300mmとなる。表4を参照すると、風を防いでいる防風壁52の近傍は風を減速させる効果が高いけれども、該防風壁から遠ざかるにつれて外部から吹き込む風が増えるということが判明した。例えば、測定点Bでは、防風壁52から3.5m遠ざかると外部(測定点)Aとほとんど同じ風速になり、測定点Cでも防風壁からさらに遠ざかると測定点Bと同様になると予想できる。穴開き部54および邪魔板56の近傍で風速が急減することから、外部の風を吹き込みにくくするには、穴開き部54を有する防風壁に近づけて邪魔板56の間隔を狭くすればよく、極論すれば各邪魔板56の間隔を可能な限りゼロに近づければよい。
【0026】
図2では、穴開き部54と邪魔板56を1000mm間隔で設置したのに対し、防風壁52から1500mm間隔で取り付けた場合を実験した。下記の表5は、縦幅100mmの穴開き部54および邪魔板56を1500mm間隔で設置した実験結果である。表5左の風速値を減速率(%)に変換したものが表5右である。計算式は段落0019記載の式による。以後は減速率の式が同一である為に省略する。
【0027】
【表5】
【0028】
実際には、穴開き部54および邪魔板56の縦幅は、表1〜3と同様に、100mm、200mm、300mmと変え、それぞれにおいて防風壁52の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを確認した。表5を含むこれらの結果を表4と比較すると、邪魔板の間隔1500mmにおいて、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれでも、風速を減速させる効果があることが判明した。表1〜3における邪魔板の間隔1000mmと同じ理由により、縦幅300mmが風速を減速させる効果が最も小さく、縦幅100mmと200mmはほぼ同等である。
【0029】
次に、防風壁52から2000mm間隔および3000mm間隔で取り付けた場合を実験した。下記の表6は縦幅200mmの穴開き部54および邪魔板56を2000mm間隔で設置し、および下記の表7は縦幅200mmの穴開き部54および邪魔板56を3000mm間隔で設置した実験結果であり、邪魔板56の使用枚数はいずれも1枚である。表6左の風速値を減速率(%)に変換したものが表6右であり、表7左を同様に変換したものが表7右である。
【0030】
【表6】
【0031】
【表7】
【0032】
実際には、穴開き部54と邪魔板56の縦幅は、表1〜3と同様に、100mm、200mm、300mmと変え、それぞれにおいて防風壁の内側へ吹き込んでくる風の風速がどの様に変化するかを確認した。表5右、表6右、および表7右の結果を表4右と比較すると、邪魔板の間隔2000mmおよび3000mmにおいて、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmのいずれでも、風速を減速させる効果があることが判明した。
表1〜3における邪魔板の間隔1000mmと同じ理由により、縦幅300mmが風速を減速させる効果が最も小さく、縦幅100mmと200mmはほぼ同等である。
【0033】
穴開き部54と邪魔板56に関する実験結果の考察するに際し、防風壁52だけを設置する場合の表4の測定結果が基準になる。表4を参照すると、測定点AとBとの比率(減速率という、100−(B÷A)×100)から、減速率が50%以下になる測定位置は1500mm以下であり、減速率50%によって風速が50m/sの風を25m/s以下にできる防風壁からの距離である。風速50m/sの風を20m/sにする減速率60%の測定位置は、500mmまたは1000mmである。
【0034】
(有効な邪魔板間隔について)
これに対し、穴開き部54を形成し邪魔板56を設置すると、表1、2および表5〜7から明らかなように、縦幅が100mmまたは200mmであると、全ての間隔における全ての測定位置で、防風壁52だけが存在する表4の測定結果よりも減速率が大きい。邪魔板の間隔が2000mmおよび3000mmであると、測定点Bでは原則率50%にならない場合がかなりあるけれども、測定点Cでは全ての測定位置で減速率が50%以上になる。
【0035】
表1〜3に示すように、穴開き部54と邪魔板56を設置する場合には、その縦幅が100mmや200mmであると邪魔板の間隔が1500mm以内ならは、測定点BとCの双方において防風効果の高い安価なハウス建設が可能である(表1右、表2右および表5右参照)。また、測定点Cであれば邪魔板の間隔2000〜3000mm以内において、防風効果の高い安価なビニールハウスを建設できる(表6右と表7右参照)。
【0036】
表1〜3および5〜7を参照すると、防風壁52から水平位置50mmの測定点Bは、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mmと200mmが最も減速率が大きく、縦幅300mmが最も小さい。理由は縦幅300mmでは、穴開き部54や邪魔板56の下端辺よりも測定点Bの垂直方向位置が高いため、穴開き部54や邪魔板56の貫通孔を通過した風が測定点Bに直接当たるためである。防風壁52から水平位置50mmの測定点Bが、防風壁52だけの場合よりも穴開き部54の縦幅100mmと200mmの方が大きな減衰率となっている理由は、縦幅100mm又は200mmの穴開き部54の場合でも防風壁52だけの場合と同様に、風は巻き込むように吹き込もうとするけれども、その風は同時に穴開き部54の貫通孔を通過した風によって吹き飛ばされて防風壁内部に吹き込むことができないからである。ここで防風壁52から50mm離れた測定点での風速発生理由は、縦幅100mm又は200mmの穴開き部54の貫通孔を吹き抜けた風が巻き込んだ風である。
【0037】
結論として、図2に示すように防風壁52の上端部に穴開き部54を形成することにより、防風壁52の後方に巻き込まれる風の風速を減速させることが可能である。この際に、穴開き部54を通過した風速は、巻き込もうとする風速よりも速いことが条件になる。穴開き部54の穴開き率が大きくなるほど通過した風速が速くなるけれども、速すぎると貫通孔を通過した風の巻き込み量が多くなり、それでも防風壁52だけよりも巻き込んだ風速は減速されている。
【0038】
下記の表8右は、穴開き部を有しない防風壁52に加えて、縦幅200mmの穴なし邪魔板を該防風壁から1000mm間隔で2枚設置した場合である。この邪魔板は貫通孔を有しない単なる板材であり、さらに穴開き部を有しない防風壁52が存在する。表8右の風速測定値は、対応する穴開き邪魔板による表2右の測定値よりも、邪魔板を設置しない場合の表4右の測定値と近似する。表8右を参照すると、穴なし邪魔板の減速能力は穴開き邪魔板のそれと比較すると明らかに劣り、防風壁52だけの表4右と比較すると、縦幅100mmまたは200mmの穴なし邪魔板は設置しても防風壁52だけの場合とほぼ同じであり、減速能力はないに等しい。表8左の風速値を減速率(%)に変換したものが表8右である。
【0039】
邪魔板の縦幅:200mm
【表8】
【0040】
縦幅200mmの穴なし邪魔板について、表9では防風壁52から1500mm間隔で2枚、表10では防風壁52から2000mm間隔で1枚、表11では防風壁52から3000mm間隔で1枚設置した場合の風速測定値である。この邪魔板は貫通孔を有しない単なる板材であり、さらに穴開き部を有しない防風壁52が存在する。測定結果は、穴なし邪魔板の間隔1500mm(表9)と間隔2000mm(表10)ともに間隔1000mmと同様であり、その減速率は穴開き邪魔板に比較すると明らかに劣り、減速能力はないに等しい。また、穴なし邪魔板の縦幅が100mmや300mmであっても、縦幅200mmのそれ(表8)の場合と同様に殆ど減速されない。この結果、穴の開いていない邪魔板には減速効果がないことが判明する。表9左の風速値を減速率(%)に変換したものが表9右であり、表10左を同様に変換したものが表10右である。そして表11左を変換したものが表11右である。
【0041】
邪魔板の縦幅:200mm
【表9】
【0042】
邪魔板の縦幅:200mm
【表10】
【0043】
邪魔板の縦幅:200mm
【表11】
【0044】
(上部から吹き込む風を防止する効果の大きい縦幅の邪魔板に関する実験)
図2において、測定点Bは防風壁52の高さの3/4に相当し、測定点Cは防風壁52の高さの1/2に相当する。外部の風速が50m/sの場合を想定すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mm、200mm、300mmの全てにおいて、防風壁52の高さの3/4(測定点B)のハウスを建設するとすれば、減速率(段落0031参照)が50%に満たない個所が生じるので高強度の資材を必要として高価になる。一方、防風壁52の高さの半分(測定点C)のハウスを建設するとすれば、穴開き部54と邪魔板56の縦幅200mmで間隔3000mm以内、縦幅100mmで間隔1500mm前後以内において、全ての個所で減速率が60%を超えるので、比較的強度の低い資材を用いて安価なハウスの建設が可能である。外部の風速40m/sを想定するならば、穴開き部54と邪魔板56の縦幅が100mmで間隔3000mm以下であると、防風壁52の高さの半分のハウスについて、全ての個所で減速率が50%を超えるので、比較的強度の低い資材を用いて安価なハウスの建設が可能であり、防風壁52の高さの3/4のハウスであれば邪魔板の縦幅200mmで間隔1500mm以内ならば安価なハウスの建設が可能である。
【0045】
外部の風速50m/sを想定するならば、防風壁52の高さの3/4のハウスを建設すると、安価なハウス建設に関して十分なメリットがないという結論となってしまう。これを解決するために、段落0034で解説した測定位置50mmにおける風の巻き込み防止効果を利用すべきである。また、表1と表2を参照すると、穴開き部54と邪魔板56の縦幅100mmよりも縦幅200mmの方が減速効果が大きい。この点に関し、測定点Bの高さ位置から穴開き部54や邪魔板56の下端辺までの距離が近い方が減速測定の点で不利であり、この点で縦幅200mmは縦幅100mmよりも明らかに不利であるにもかかわらず、縦幅200mmの方が減速効果を有する。したがって、通常、穴開き部54と邪魔板56の縦幅が広い方が減速能力が大きいことを示す。縦幅300mmは測定点の高さ位置が邪魔板のすぐ後である事から比較できない。
【0046】
表12および表13は、防風壁52に風が巻き込まれるのを防ぐために、穴開き部54として、縦幅100mmのものを設置した場合の風速測定値を示す。さらに表12では間隔1500mmをおいて縦幅300mmの邪魔板56を2枚取り付け、表13では間隔2000mmをおいて縦幅300mmの邪魔板56を1枚取り付け、上部を吹いている風が拡散して広がることにより吹き込んでくる風を減速させる。表12左の風速値を減速率(%)に変換したものが表12右であり、表13左を同様に変換したものが表13右である。
【0047】
【表12】
【0048】
【表13】
【0049】
表12右と表13右を参照すると、上部から吹き込む風を防止するためには、邪魔板56,56間の間隔が広いほどかつ防風壁52からの距離が長くなるほど風が拡散し広がる幅が大きくなるから、邪魔板56の縦幅を広くしなければならないことが推測できる。表12右と表13右では、測定点Bが縦幅300mmの邪魔板56の下端辺のすぐ後方に位置するので比較検討できず、測定点Cについて比較すると邪魔板56,56の間隔が狭い方が減速効果が大きいことが判る。邪魔板56の縦幅が同じで、その設置間隔を変化させると、その間隔が狭い方が減速効果が大きいから、前記の推測が正しいことの証明になる。測定値BとCのAに対する減速率を算出し比較すると違いは明瞭である。
【0050】
表12右に対して、防風壁52だけを設置した場合データの表4右および縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔1500mmで設置した場合のデータの表5右とを比較する。表5右と表12右は、ともに防風壁52だけの表4右の場合よりも減速能力が強くなっている。表5右と表12右を比較すると、測定点Bの50〜1450mmの区間は、表5右と表12右の実験条件は同じであるから、両方のデータは近似し、ほとんど同じである。測定点Bの測定位置1550mmでは、表5右は邪魔板56の縦幅100mmであり、表12右は縦幅300mmである。邪魔板56の縦幅300mmの方は、測定点Bが邪魔板56のすぐ後であるという不利な条件であるのにかかわらず、その減速率が大幅に改善させている。
測定点Bの2000〜2950mmの区間でも、邪魔板56の縦幅300mmの表12右の方が表5右のそれよりも減速率が高くなっている。一方、表5右と表12右における測定点Cでは、50〜2950mmの区間の全ての測定位置においてのデータが近似し、ほとんど同じである。
【0051】
次に、表13右に対して、表4右および縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータ(表の表示なし)とを比較する。縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右は、表4右の場合よりも減速能力が強くなっている。縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右を比較すると、測定点Bの50〜1950mmの区間は、両者の実験条件が同じであるために両方のデータは近似しており、ほとんど同じである。測定点Bの特定位置2050mmにおいて、縦幅100mmの邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータは、邪魔板56の縦幅が300mmである場合の表13右と比べると、縦幅300mmの邪魔板56の方は、測定点Bが邪魔板のすぐ後という不利な条件であるにもかかわらず、表13右において減速率が大幅に改善され、測定点Bの2500〜3500mmの区間でも縦幅300mmの邪魔板56の方が減速率が高くなっている。一方、縦幅100mmの穴開き部54と邪魔板56を間隔2000mmで設置したデータと表13右における測定点Cでは、50〜3500mmの区間の全ての測定位置においてデータが近似していて、ほとんど同じである。
【0052】
邪魔板56の間隔1500mmの表12右と間隔2000mmの表13右とを比較すると、表12右において穴開き部54と邪魔板56との間隔1500mm(図4における距離xに相当)が減速率57.7%であり、外部の風速が50m/sの時に21.2mの風速に相当する。一方、表13右において穴開き部54と邪魔板56の間隔2000mm(図4における距離xに相当)は減速率が51.4%であり、風速が50m/sの時に24.3mに相当する。いずれも相当な強風であるが、防風壁52からの邪魔板距離x(図4)を1500mmよりも少し短かく設定すれば,50m/sの風速でも18〜19m/s以下に減速でき、安価なハウス建設が可能になりうることを示している。
【0053】
邪魔板56相互間の間隔(図4における距離x´に相当)について考察する。表12右では、防風壁52における穴開き部54の縦幅は100mmであるから、塀の中へ吹き込む風量が表2右、表3右、表6右、表7右のような縦幅200mmや300mmの場合よりも本質的に少ないので、この点を考慮して距離x´を比較すると表12右の場合が最も減速能力が強い。相互間の間隔が2000mmである表13右の場合には、間隔が2000mmであるために上部から吹き込む風量が加算され、結果的に表12右よりも劣るが、表12右以外よりは多少改善されている。
【0054】
表12右と表13右に関して、表1右、表5右のような邪魔板56の縦幅100mmの場合と比較すると、防風壁52の中へ吹き込む風量は同じでも、上から拡散して吹き込んでくる風を防止する効果が邪魔板56の縦幅100mmと300mmでは比較にならないほど違い、表12右と表13右の方が減速能力が強くなっている。これらの結果により、表12右や表13右のように、巻き込み防止用の穴開き部54を防風壁52に取り付け、該穴開き部よりも大きな縦幅の邪魔板56を使用することにより、測定点Bにおける減速能力が向上することが判明した。
【0055】
前記の説明により、防風壁52における巻き込み防止用の穴開き部54の縦幅よりも、邪魔板56の縦幅を大きくすることによって、減速能力を向上させることができる。しかしながら、防風壁52からの邪魔板距離xを1500mmよりも少し短かく設定したり、邪魔板相互間の距離x´を1500mmにすることは、栽培ハウスの上部に数多くの邪魔板が配置されることで太陽光がさえぎられるので、農作物の育成上好ましくない。少なくとも穴開き部と邪魔板との間隔および邪魔板相互間の間隔は3000mm以上が必要であり、且つ外部の風速が50m/sの時に内部の風速を18〜19m/sに下げるには、邪魔板相互間の間隔を4242mmにしなければならない。その理由は、図3のように邪魔板56の間隔を3000mmに設置した際に、風の方向によって最大4242mm(3000×√2)の間隔になるからである。
【0056】
邪魔板56の縦幅と間隔を選定することにより、邪魔板間の間隔4242mmで減速率を64%以上にすることが可能か否かについて考察する。この際に、外部の風が防風壁の内側へ進入する経路は2つであると推定できる。そのひとつは、防風壁の上端部を巻き込むように進入する経路である。これに対しては前記の「有効な邪魔板間隔について」から解決済みである。ふたつめは、図4に示すように、上部を吹く風が塀の内部へ拡散して広がることによって吹き込んで来る経路である。表12右において、穴開き部54と邪魔板56との間隔が1500mmの時に、測定点Bにおける1550〜2950の区間では、外部の風速50m/sの時に13.2m/sに相当する。表13右のように穴開き部54と邪魔板56との間隔を2000mmにすると、測定点Bにおける2050〜3500の区間では外部の風速50m/sの時に18.6m/sの風が吹き込むことになる。したがって間隔x(図4)は1500mmよりも少し狭くしなければならないが、実際には間隔x´(図4)は1500mm程度でもよいことが判明する。
【0057】
間隔x´が4242mmであれば、減速率を64%以上にするには邪魔板56の縦幅を何mmにすればよいかを実験することが必要である。同時に測定点Bが邪魔板下端辺のすぐ後ろに位置していたので、この測定点Bを防風壁52の上端から450mm下に変更する。次に、間隔xに関しては、その間隔が1500mmであれば、外部の風速50m/sの時に21.2m/sの暴風が吹き込み、間隔が2000mmならば24.3m/sの暴風となる。これを減速率64%以上に上げる手段の実験も必要である。この手段として、下記の4つの方法が推定される。
1.防風壁52の内側に建設するハウスの高さを低くする。
2.防風壁52に最も近い邪魔板56のみを該防風壁との間隔1500mmよりも狭くした際に、邪魔板相互間を適切な間隔に定める。
3.防風壁52に形成する穴開き部54の縦幅を100mmより狭くする。
4.邪魔板56の穴開き率を小さくして、風を通しにくくする。
【0058】
(穴開き部54の縦幅が100mmである際に、図4の間隔xおよびx´の適切な間隔)
防風壁52における穴開き部54の縦幅を100mmと定めた際に、図4の間隔xを1200mmとするのが適切か否かを確認する。また、邪魔板56の縦幅(図4における距離yに相当)を300mm、400mm、500mmと変えた時に、図4の間隔x´の適切な値を調べる。この際に、距離yが300mmと400mmにおける測定点Bは、防風壁52の上端から450mm下に変更し、測定点Bは表中にB´と記す。距離yが500mmである場合は測定点Cのみを測定する。
【0059】
表14右〜表16右は、いずれも穴開き部54の縦幅を100mm且つ間隔xを1200mmに定め、この際に邪魔板56(穴開き鉄板)の縦幅を300mm(表14)、400mm(表15右)、500mm(表16右)と変えた時に風速の測定結果である。表14右および表15右において、測定点Bは防風壁52の上端辺から450mmであり、表16右では測定点Bで測定しない。表14左の風速値を減速率(%)に変換したものが表14右であり、表15左を同様に変換したものが表15右である。そして表16左を変換したものが表16右である。
【0060】
【表14】
【0061】
【表15】
【0062】
【表16】
【0063】
表12右から明らかなように、間隔xが1500mmである場合には、測定位置1450mmにおける測定点Bにおいて、外部が50m/sの時に21.15m/sの強風に相当する。一方、表14右のように間隔xを1200mmにすると、測定位置1150mmにおける測定点Bは15.1mに相当する。表14右〜表16右から、測定位置3000mmまでは減速効果があるが、それ以上遠ざかると急に効果が減少し、邪魔板56(穴開き鉄板)の縦幅が広いほど減速効果が高いことが判明する。また、邪魔板から1800〜2300mmの所で上部から風が吹き込む、そしてこれは縦幅を広くしても妨げないことが判明した。但し、測定点Bを上端から284.9mm下とし、図4の間隔xを1500mm、2000mmで判断していた表12右と表13右に対し、表14右と表15右は測定点Bを上端から450mm下とし、間隔xを1200mmとしている以上これらを単純に比較することはできない。
【0064】
結論として、穴開き邪魔板の場合には、図4の間隔xは1200mmで適切であることが明らかになる。また、測定位置3000mmつまり邪魔板からの距離1800mmまでは減速効果があり、該邪魔板の縦幅に関係なしに測定位置3500mmで急に効果が少なくなる。この点に関し、間隔x´は1800〜2300mmで適切であるのではない。その理由は、表14右における測定点Bの測定位置3000mmでは、外部が50m/sの時に20.05mの強風が吹き込むからである。
【0065】
邪魔板の縦幅の長さに関係なく、該邪魔板から1800〜2300mm離れると減速効果が著しく減少することが判明する。
【0066】
一方、表14右〜表16右から、穴開き邪魔板の縦幅が広いほど減速効果が大きいことが判明する。表14右〜表16右によると、外部が50m/sの時に内側の風速を十数mに減速させるには、縦幅300mmの邪魔板では、測定位置1500mmにおける測定点Bで14.65m/s、縦幅400mmならば測定位置3000mmで16.95m/sであり、縦幅500mmならば測定位置3000mmにおける測定点Cで15.05m/sに相当する。この結果、図4の間隔x´は、縦幅300mmの邪魔板ならば300mm(1500−1200=300)であり、縦幅400mmと500mmの邪魔板ならば1800mm(3000−1200=1800)となる。但し、邪魔板の縦幅を500mmにすれば、ハウス上で太陽光を遮る面積が大きく、植物を栽培する場合に不利になる。したがって、邪魔板の縦幅は400mmが適切であることが判明する。
【0067】
表14右〜表16右の実験結果により、前記の方法2(段落0055)に関する解答を得る。つまり、防風壁と邪魔板との間隔を1200mmにすれば、該防風壁から1150mmにおける測定点Bでは、外部が50m/sの時に内側が15.1m/sに相当し、該防風壁との間隔は1200mmが適切である。また、邪魔板相互間の間隔は、縦幅300mmでは邪魔板から2300mmにおいて測定点Bで、外部が50m/sの時に30.95m/sの暴風であり、縦幅400mmでは測定点Bで31.8m/s、縦幅500mmでは測定点Cで24.85m/sに相当し、いずれも暴風である。邪魔板の縦幅を無限に長くすれば減速率は向上するが、太陽光を遮ることで植物栽培に適さず且つ内部へ建てるハウスのスペースが減少するので縦幅を無限に長くすることはできない。この点から、図4の間隔x´は、邪魔板の縦幅400mmで1800mmとしたいところであるが、1800mmの対角線長さは2545.2mmとなるために、この点を考慮して1272.98mmが適切である。
【0068】
(穴開き部の縦幅を100mm以下にすることの可否)
下記の表17右〜表21右は、防風壁における穴開き部54の縦幅を、100、80、50、30、10mmと変えた際に風速の測定結果である。表17右〜表21右を比較すると縦幅100mmが最も減速効果が大きいことが解かる。縦幅100mmと200mmでは、表1右と表2右における測定位置950mmまでの区間を比較すればよく、その結果は縦幅200mmよりも100mmの方が大きな減速効果を示している。測定点Cで比較するならば、表1右〜表3右において、測定位置1000mmまでの区間では、100mm、200mm、300mmと縦幅が広くなるほど減速効果が小さい。結論として、穴開き部54は、縦幅100mm前後が最も減速効果が大きくなる。表17左、表18左、表19左、表20左、表21左のそれぞれの風速値を減速率(%)に換算したものがそれぞれ順番に表17右、表18右、表19右、表20右、表21右である。
【0069】
穴開き部の縦幅:100m
【表17】
【0070】
穴開き部の縦幅:80mm
【表18】
【0071】
穴開き部の縦幅:50mm
【表19】
【0072】
穴開き部の縦幅:30mm
【表20】
【0073】
穴開き部の縦幅:10mm
【表21】
【0074】
(邪魔板56の穴開き率を小さくして、風を通しにくくすることの可否)
図6、図7、図8、図9に示す表面を有する穴開き率の異なる邪魔板を用いて平均風速値(m/s)と平均通過風速率(%)を測定する。平均風速値は穴開き邪魔板の風下側200mmの位置での風速を測定し、これを単純平均した値である。平均通過風速率(%)=(平均風速値÷穴開き邪魔板を風上で通過直前の風速値)×100で算出される。その結果を表25に示す。又、これらの穴あき率の異なる邪魔板を用いて、図5に示す実験装置によって風速を測定する。その結果は、図7の邪魔板(穴開き率27.27%)では表22、図8の邪魔板(穴開き率18.18%)では表23、図9の邪魔板(穴開き率14.14%)では表24に示す。これらの測定結果から減速率を算出し、防風壁の外が風速50m/sの時の内側の風速を算出する。その結果を表25に示す。この実験により、図6の穴開き鉄板の邪魔板(穴開き率40.28%)を使用した際に、図4の間隔xが1200mmが適切であった点について、穴開き率や穴の太さ、そして穴の配列や平均風速値が異なる場合も1200mmが適切であるかどうかを確認することができる。
【0075】
【表22】
【0076】
【表23】
【0077】
【表24】
【0078】
下記の表25は、測定位置1150mmにおける減速率と、外部が50m/sの暴風の時の内側の風速を、各邪魔板の平均風速値毎に示したものである。穴開き率はそれぞれの邪魔板を実測して算出する。内側の風速はそれぞれ減速率から算出する。表22左の風速値を減速率(%)に変換したものが表22右であり、表23左の風速値を減速率(%)に変換したものが表23右である。そして表24左を同様に変換したものが表24右である。1300mm以上の位置での測定データがないので、適切な邪魔板の設置位置かどうかは不明であるが、少なくとも測定位置1150mmは有効であることが判る。一方、穴開き率を小さくして風を通しにくくする事で減速率が改善するかという問題に関しては、表25では平均風速値が大きくなると減速率も共に大きくなっている。この件については後述するが、極大値が存在する。従って表25だけで判断出来ない。
【0079】
【表25】
【0080】
次に、穴開き邪魔板について、測定位置2300mmで上部から風が吹き込んでくるか否かを確認する。表22〜24において、測定位置3000mmと3500mmとで減速率の差が急激に変化している。この理由は、測定位置3000mm迄は風速の上昇はゆるやかであった。しかし測定位置3500mmの位置で急激に外部の暴風が防風壁52内に拡散し、吹き込んだ事を意味する。つまり、図4の間隔x´において、風上側の邪魔板から2300mmの位置前後で上部から風が吹き込んで来ることが判明した。防風壁だけの場合の表4右でも、測定位置2000mmで風の吹き込みが発生する。
【0081】
平均風速値が変化すると減速率も変化するかどうかについては、前記の表25に示すように変化することが判明した。その変化は、平均風速値が大きくなると減速率も大きくなる。しかしながら、平均風速値を際限なく大きくすると、邪魔板が無い場合と同様の状態に近づくから、つまり、平均風速値を大きくすると表4の値に近づき、小さくすると穴なし邪魔板の値に近づく。したがって、平均風速値には最も減速率を大きくする最大値が存在することが判明する。ここで穴開き率を数値制限の基準とせず、平均風速値を基準とする理由を説明する。表25によると、穴開き鉄板の穴開き率が最も大きくて40.28%である。しかし穴開き率27.27%の穴開きベニヤの方が減速率(%)は大きい。この様に減速率(%)は穴開き率に比例しない事が解った。次に基準とする平均風速値の問題点を記す。段落0017の測定と段落0074の測定の異なる点は、穴開き邪魔板の風下側50mmでの測定値と200mmでの測定値という点のみである。この測定条件による測定結果の違いは、50mmが4.80m/sであり200mmは2.34m/sである。以上の理由により、穴開き邪魔板の風下側何mmという条件は重要である。従って本明細書と特許請求の範囲についての平均風速値は、穴開き邪魔板の風下側の距離が200mmの位置での測定値とする。
【0082】
この結論として、図4の間隔x、間隔x´ともに、邪魔板の平均風速値が2.33m/sから2.34m/sを経て2.55m/sと増加するにつれて、減速効果が大きくなる。図4の間隔xは1200mmが適切であり、邪魔板の穴開き率、穴の直径および穴の配列などに関係なく、平均風速値が減速効果に影響することが判明する。この平均風速値には、最も減速率を大きくする最大値が存在することが判明した。この最大値を特定するデータとして表25は有効であるが不十分である。減速率の極大値を特定する為に、表25のデータを補強する。図24、図25、図26、図27、図28に示す表面を有する穴開き率の異なる邪魔板を用いて、段落0074の記載方法で平均風速値(m/s)と平均通過風速率(%)を特定し、その結果を表36に示す。又、これらの穴開き率の異なる邪魔板を用いて、図5に示す実験装置によって風速測定する。その結果はそれぞれ、図24の邪魔板の測定値は表31、図25の邪魔板の測定値は表32、図26の邪魔板の測定値は表33、図27の邪魔板の測定値は表34、図28の邪魔板の測定値は表35に示した。表31左、表32左、表33左、表34左、表35左のそれぞれの風速値を減速率(%)に変換したものが、それぞれ順番に表31右、表32右、表33右、表34右、表35右である。これらの測定結果から減速率を算出し、防風壁の外が風速50m/sの時の内側の風速を算出する。その結果を表36に示す。表25と表36を参照すると、平均風速値が2.55m/sの時の減速率(74.3%)が極大値である。
【0083】
また、防風壁の上端から450〜570mmの部分は、邪魔板の穴開き率の穴の直径、縦幅の広さおよび平均風速値に関係なく、表22〜24を参照すると、風上の邪魔板から2300mm前後の個所で上部からの風が吹き込んで来る。しかし、図4の間隔x´は、表14〜16を参照すると、これまでの実験結果によって邪魔板の縦幅400mmの時に1800mmであると適切になる。
【0084】
前記の結論を総合すると、最も減速効果の良い条件は、図4の間隔xが1200mmおよび間隔x´が1800mmであり、穴開き部54の縦幅100mmであると平均風速値は2.55m/s(表25参照)になる。間隔x´でも、平均風速値が2.55m/s(表25、表36参照)で邪魔板の縦幅は広いほどよいけれども、植物を栽培するうえで日当りを考慮すれば、邪魔板の縦幅が広くなるほど不利になる。邪魔板の縦幅100mmでも減速効果はあるが、縦幅を狭くするほど邪魔板相互間の間隔および防風壁との間隔を狭くしなければならない。このため、邪魔板の縦幅を適当に選択すればよく、以下では縦幅400mmが適当であると仮定して実験を行なう。
【0085】
上記の条件の防風壁で囲まれた壁内部の光環境は、縦幅400mmの邪魔板が1800mm間隔で取り付けられているため、太陽光が邪魔板に遮られて日当りが悪くなる。日当りを改善するために邪魔板の平面配置を変え、図10と図11に示すように邪魔板の縦幅を300mmにするとともに、防風壁を含めて3000mm間隔で矩形状平面に設置し、その対角線に別の邪魔板60,60を取り付け、測定点Dの測定位置は図10と図11においてそれぞれ6ヶ所で定める。さらに、前記の各結論を基づいた構造では減速能力が不十分であることから、防風壁の上端部から1.5m下(測定点E)で測定する。
【0086】
下記の表26は図10における測定点DとEで測定した風速を示し、且つ表27は図11における測定点DとEで測定した風速を示し、この値から測定点DとEにおける減速率を算出する。表26右および表27右において、測定点D,Eの全てである測定点24ヶ所について、最も減速効果の小さい部分でも、風速50m/sの暴風を11.45m/sに減速することが可能となり、測定点Eの場合には9.25m/sに相当する。このように邪魔板が3000mm間隔で十分すぎる効果があることが判ったので、さらに日当たりを改善するために図10と同様に4000mm間隔で設置し、その対角線に別の邪魔板を設置した。表26左の風速値を減速率(%)に変換したものが表26右であり、表27左の風速値を減速率(%)に変換したものが表27右である。
【0087】
【表26】
【0088】
【表27】
【0089】
下記の表28は、図10と同様で間隔が4000mmである測定点DとEで測定した風速を示し、且つ表29は図11と同様で間隔が4000mmである測定点DとEで測定した風速を示し、この値から測定点DとEにおける減速率を算出する。表28および表29において、測定点Eの全てである測定点16ヶ所について、最も減速効果が小さい部分で
は、風速50m/sの暴風を13.15m/sにすることが可能となり、風速40m/sならば10.25m/sに相当する。この風速は暴風ではないが決して弱い風速ではなく、13.15mは強風の部類に属する。したがって、図7のような穴開き邪魔板を使って図10や図11に示すような構造にする場合には、対角線に設置した別の邪魔板60を除く邪魔板相互の間隔、および邪魔板と防風壁との間隔は、対象とする暴風が50m/sと仮定すると、防風壁の高さと内側に建てるハウスの高さの差が1.5mであれば邪魔板間隔を4000mm前後に定めるのが限界である。表28左の風速値を減速率(%)に変換したものが表28右であり、表29左を減速率に変換したものが表29右である。
【0090】
【表28】
【0091】
【表29】
【0092】
表26〜29の風速データにより、防風壁で囲まれた内側のハウスの高さを該防風壁よりも低くすればするほど、該防風壁と邪魔板との間隔および邪魔板相互間の間隔とを広くできることが判明する。この傾向を確認するため、図12に示すように、測定点を防風壁の上端部から下向きに200mm、400mm、600mm、800mmに定め、表30において測定点F、G、H、Iの測定点Aに対する減速率(表30)を算出する。
【0093】
表30の減速率データを参照すると、前記の結論(段落0064参照)と同様の傾向が明瞭に表われている。防風壁の上端から200mm下、400mm下、600mm下、800mm下の全ての測定値が1500mmから2000mmにかけて減速効果が減少している。前記の結論は邪魔板から1800〜2300mm離れた場所で減速効果が減少する現象であり、邪魔板とは異なり防風壁の穴開き部の場合の結論は、穴開き部54から1500〜2000mmの場所で減速効果が減少する現象である。この現象は、穴開き部54の縦幅を100mm、200mm、300mm、および80mm、50mm、30mm、10mmと変えた実験データの全てに現われている。この減少効果は、防風壁の上端に近いほど小さく、該防風壁の上端から下へ遠ざかるほど大きくなる。
【0094】
【表30】
【0095】
【表31】
【0096】
【表32】
【0097】
【表33】
【0098】
【表34】
【0099】
【表35】
【0100】
【表36】
【0101】
邪魔板による減速率は、該邪魔板に設けた穴の形状や大きさおよびその並び方などに関係なく、強風の平均風速値によって決定する。減速率の最も大きい平均風速値は、2.3〜3.0m/sの範囲内にあり、2.55m/s前後であることが判明した。
【0102】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。図13は40個のビニールハウス80たまはガラスハウスを防風塀82で囲んだ状態を示す概略説明図である。図14および図15は各柱84の列毎の軸組図であり、防風塀82の高さが3.3mとなっているが、図20および図21の詳細図を参照すると、その上に4.5mmの鉄板と130mmの邪魔板86(穴開き部に相当)があるので、防風塀82の高さは3434.5mmである。130mmの邪魔板86は、60×30×1.6のリップミゾ形鋼に取り付けているために、ミゾ形鋼の30mmの部分が邪魔板の穴を塞ぎ、このために邪魔板86の有効縦幅は100mmである。
【0103】
図13に示すように、防風塀82の中に多数のハウス80を建設し、該ハウスの高さは図示していないが高さ2mである。したがって、ハウス80の頂部から防風塀82の頂部までの間隔は1434.5mmである。図20と図21に示すように、防風塀82では、風速50m/sに耐えるために必要な壁ブレース87を配置する。その配置図が図17である。図16は、邪魔板88の取付場所を示し、取り付けの詳細は図18と図19に示す。
図16における小四角形は柱84であり、柱以外の実線部は全て邪魔板88である。この防風塀82は、ポリ塩化ビニール波板90貼りである。該波板の色は、透明または無農薬栽培ができるように赤色光と遠赤色光を反射する色に塗布する。
【0104】
透明のポリ塩化ビニール波板90は、一般的に明り取りのために工場や倉庫の屋根、壁材として使用されている。したがって風通しを良くするために風通し持上げ戸92(図13参照)を取り付ける。各ハウス80について、図13のように規則正しく配列し風が通る道を作り、その道の両端に風通し戸を取り付ける。図16に示す邪魔板88は、4m角に配置して取り付けている。そのままでは上部から暴風が拡散して吹き込む。特に図22に示す対角線方向の風が吹いた時は、4mだから5.656mになる。したがってほとんど減速能力が無くなることになる。
【0105】
これに対し、図16のように、それぞれの正方形の対角線上に邪魔板88を設置することによって、図22のA方向からの風は最大間隔が2000mmでD方向は最大間隔2828mmとなる。表28右を参照すると測定位置2000mmにおける風速は{(100−72.3)÷100}×50=13.85m/sとなり、50m/sの暴風を13.85m/sに減速させる。しかも、この値は防風塀82の頂部から450mm下方向での値であるのに対し、本実施例では頂部から下へ1434.5mmであるから、測定位置2000mmの風速は{(100−80.9)÷100}×50=9.55m/sに近似する風速にまで減速されることになる。
【0106】
図22のA´方向からの風についても、表29Aを参照すると頂部から450mm下方向の風速は、(100−74)÷100}×50=13m/sである。そして1.5m下方向は、50m/sの風速が{(100−82.3)÷100}×50=8.85m/sとなる。図22の邪魔板Fから測定点E(穴開き部54から3500mm離れた測定点)までの間隔を知るために、邪魔板F付近の寸法などに基づいて図23を作成した。x=500−300で200mmであり邪魔板Bと直線A´Eは平行であるから直角三角形である。したがってyも200mmとなり邪魔板Fから測定点Eまでの間隔は3200mmとなる。直線Gを邪魔板Bと平行に引き、K点から邪魔板Bに直交する線を引くことによってZ=150となる。したがって図22の邪魔板Bに平行で邪魔板Bから150mm離れた所の邪魔板Fと測定点Eの間隔は3000+200+150=3350mmになる。これは表29右の測定点3500mmは邪魔板Fからの間隔が3200mmであるから、表29右の測定点よりも150mm離れる事によって150mm間隔が広くなるという事である。表28右、表29右を参照しても150mm程度では大差がないことが解かる。
【0107】
邪魔板を設置することによって、4mの間隔の時に、間隔が4mの所は邪魔板Bの近傍部でしかないことが判るが、前記の実験と比べて最大で4000−3200=800mm広いにすぎず、しかもそのエリアは邪魔板Bの近傍である。防風塀82に付けた邪魔板86(穴開き部)と内部の邪魔板88とは、その減速能力が異なることが前記の測定実験によって明らかになっているから、区別して考察する必要がある。つまり表26右〜表29右を参照すると、1m程度間隔が広くなっても、防風塀内部の邪魔板の場合(表26右,表28右)は防風塀82からの距離が2000mm以上のエリアであり、表29右,表27右では防風塀からの距離が500mm以上のエリアであるから、いずれも問題にならない程度の値である。次に、防風塀82から邪魔板88までのエリアについては、最大間隔が1500mmと2000mmであり、表27右では最大間隔3000mmであるので問題外である。
【0108】
問題となるのは、図22において、間隔が4mの図22と図23の邪魔板Bの近傍部のみであり、この部分は測定していないが防風塀と邪魔板までのエリアについては表28右の50〜2000mmのエリアが該当する。表28右によると、800mm(4000−3200=800)間隔が広がった時は、50mmと1000mmの差(0.8%)、500mmと1500mmの差(9.6%)、1000mmと2000mmの差(9.5%)であり、これだけの減速率が低下する。これだけ低下することにより、50m/sの風速において、減速しない風速分は(9.6÷100)×50=4.8m/sである。したがって計算上は8.85+4.8=13.65m/sの風速となる。内部の邪魔板88の場合は、表29右の500〜3500mmのエリアが該当する。500と1500mmの差(9.2%)、1000と2000mmの差(12.6%)、1500mmと2500mmの差(4.3%)、2000と3000mmの差(−0.2%)、2500と3500mmの差(1.9%)であり、これらの減速率の中で2000mmと3000mmの差がマイナスになっている。これは対角線上に邪魔板をX状に設置した場合の効果であるようであり、前記の実験でも同様の現象が現われている。減速率がこれだけ低下することにより、風速は(12.6÷100)×50=6.3m/s速くなるため、8.85+6.3=15.15m/sの風速となる。
【0109】
風速15.15m/sは強風ではあるけれども、この程度の強風を阻止するだけならば十分に安価なハウスを設置することができる。さらに、この風速は、邪魔板から10〜30mmぐらい離れた個所でしかないので、該邪魔板の両側において20〜60mmの範囲しかなく、風速50m/sの暴風が正しくこの角度から吹く確率はむしろ非常に小さい。図22のA´の方向が少しでも斜めに傾けば、図22において邪魔板F,I間を吹く風の通る距離は短かくなる。本実施例では、これらの点を考慮して邪魔板間4m角を採用したが建設後に問題が発生すれば邪魔板縦幅を450または500mmにしたり、防風塀の高さをより高くしてハウス頂部と防風塀頂部の間隔を広げるなどの対策を行えばよい。
【0110】
植物の主要な光反応のスペクトル・バランスについて、非特許文献1の78、79ページに以下のように記載されている。
【0111】
「植物の主要な光反応のスペクトルを図33に示す。これは単位エネルギー当たりの効果の相対値を示したものである。植物は基本的には光合成〔8〕によって成長するが、それ以外の重要な光反応に光形態形成がある。これには弱光反応〔10〕、〔11〕と強光反応〔9〕があり、フィトクロームという色素の働きを介して種子発芽、花芽分化、開花、子葉の展開、葉緑素合成、節間伸長などの植物の質的な変化を誘起する。強光下における葉緑素合成は青色光によって促進され、赤色光によって阻害される傾向がある。光合成に対しては赤色光の効果が最も大きいが、葉の正常な形態形成には青色光が必要とされる。要するにだいたい640〜690nmの範囲の赤色光と、420〜470nmの範囲の青色光が有効である。スペクトル分布を変えた生育実験によれば、植物の健全な生育には、赤色光と青色光がバランスよく配合されていることが望ましい。この二つのスペクトルの比はR/B比と呼ばれるが、この値は一般に1〜10の範囲がよいようである。
【0112】
最近、図33の右端に見られる730nmを中心にした遠赤色光(FR)の顕著な節間伸長効果が見出されており、赤色を遠赤色との割合R/FRも生育に無視できない効果をもつことがわかってきた。一般にR/FR<1の場合に伸長が促進され、逆の場合はわい化の傾向になる。植物群落内では可視光が通りにくいため、遠赤色の割合が大きく、R/FRは1より小さくなる。植物がこの条件に適応したため、遠赤色光は植物の伸長成長を促進するように働く。光形態形成の多くは赤色光によって促進され、遠赤色光によって可逆的に阻害される。」
【0113】
光形態形成の赤色光効果の波長領域615〜680nmの分光放射輝度を赤色光Rとし、光形態形成の強光下反応の青色光の波長領域420〜470nmの分光放射輝度を青色光Bとし、光形態形成の遠赤色光効果の波長領域700〜750nmの分光放射輝度を遠赤色光FRとしたとき、反射によって太陽光が減衰しR/B比は大きくなる様に変化し、R/FR比は小さくなる様に変化している。この赤色光Rと青色光Bそして遠赤色光FRの比を以後は光の比と記す。光の比の変化は光の波長が大きい程エネルギーが大きいという物理現象によって発生する。つまり光の波長は(B)が最も小さくて(R)、(FR)の順に大きくなるので、光のエネルギーも(B)、(R)、(FR)の順に大きくなり(FR)が最も大きいので、太陽光が植物群落内に差し込む時に木の枝や葉に衝突しR/B比は(R)よりも(B)の方の減衰が大きくなるので大きくなるのであり、R/FR比は(FR)よりも(R)の方の減衰が大きくなるので小さくなる。
【0114】
C3植物はその種毎に植物群落内に最も適した場所、つまり適した光の比がある事も実験によって明らかにした。C3植物にはそれぞれの種毎に光合成速度飽和光強度が異なっている事と、植物群落内の入口と奥とでは太陽光の照度が異なる事を考え合せれば、C3植物はその種毎に植物群落内に最も適した場所がある事を示唆している。C3植物の陰性植物は日陰に自生し、C3植物の半陰性植物は木漏れ日の日向と日陰が混ざり合う所に自生する。陰性、半陰性植物を除くC3植物の農作物の原種は、木漏れ日の日向に自生していたのである。これを人間が裸地で栽培し、品種改良を繰り返したものが陰性、半陰性植物を除くC3植物の農作物である。従って、陰性、半陰性を除くC3植物の農作物を無農薬栽培する事が出来る光環境は、日陰でも裸地でも無くて、木漏れ日の日向の光の比のスペクトルである。
【0115】
このことは陰性植物の朝鮮ニンジンを裸地へ定植すると萎れてしまうし、半陰性植物のワサビも裸地へ定植すると萎れてしまうことからも明らかである。陰性、半陰性以外のC3植物を木漏れ日の日向から裸地へ出すと、病気になったり害虫に食われたりすることの原因となっている。つまり、萎れ防止や病害虫の防止をしたければ生れ故郷とも言える植物群落内のそれぞれの光環境の場所へ戻してやれば良いということになる。
【0116】
本発明のハウス防風機構は多数の邪魔板と柱等で構成されているので、太陽光がこれに衝突反射する。つまり植物群落に近い光環境を得る事が可能である。
【0117】
実験(1)
1.実験の目的
赤色光(R)の波長領域は615〜680nmであるが、これは光合成の機能波長と一致している。この赤色光(R)の赤ペンキで透光率が50%とか70%になるまでスプレーし、着色する事によって、栽培空間の光合成機能波長の割合が裸地よりも大きくなっている事と、光形態形成の赤色光(R)と青色光(B)と遠赤色光(FR)のバランスを変えて植物の生命力を強くしている事によって、植物の成長速度にも影響を与えているのではないかと言う事を確認する事を目的とする。
2.実験地
高知県高知市東雲町
3.実施期間
平成20年1月11日〜3月27日
【0118】
4.栽培条件
ハウスG−a:図29参照。材質ポリエチレン厚さ0.05ミリのビニールに水性ペンキ(赤色、図30参照、スプレータイプ)を透光率が、平均46.4%になるまで吹き付けたハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。
ハウスG−b:図29参照。材質ポリエチレン厚さ0.05ミリのビニールに水性ペンキ(赤色、図30参照、スプレータイプ)を透光率が、平均67.9%になるまで吹き付けたハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。
ハウスG−c:ハウスG−bに白い光の蛍光灯を取り付けて、ビニ−ルの赤色は透光率平均66.7%である。白い光の蛍光灯の照射時間帯は朝AM5:40〜AM8:30、夕方PM4:40〜PM6:30 ハウスG−d:図29参照。赤ビニール(符号12)は使用しない。そのかわりに、薄いピンクのビニールを使用したハウス。太陽光が差し込まない様に天井と周囲をこの薄いピンクのビニールで囲んだビニールハウス内に長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。薄いピンクのビニールの色のスペクトルは図31参照の事。
上記のハウスG−a,G−b,G−c,G−dを暖房する為に、天井と周囲をビニールで囲んだビニールハウス内に入れて電気ストーブを設置した。
ハウス[8]:普通のビニールハウスを赤いハウスや赤い反射板から遠く離れた所へ設置したもの。図32参照。長さ770ミリ、巾250ミリ、高さ350ミリのトロ箱2個を設置したもの。太陽光が差し込まない様に天井と周囲をビニールで囲んだビニールハウス。ビニールハウス内に暖房の為に電気ストーブを設置した。
【0119】
5.光環境
ハウス[8]は暖房の為に電気ストーブを設置した普通のビニールハウスである。ハウスG−a,G−b,G−c,G−dは普通のビニールハウスの中に設置しているのである。従って太陽光は普通のビニールを透過してから、更に赤色ペンキをスプレーしたビニールを透過して栽培スペースへ入る。上記条件下での平均透光率は表37に示す。栽培スペース内の(A),(B),(C)の3ヶ所を測定した。
【0120】
【表37】
【0121】
6.作業手順
毎日1回水やり2リットル
ハウス内温度測定 AM8:25,AM10:10,PM1:00,PM3:10
7.栽培植物
ホーレン草、サニーレタス、葉大根。
【0122】
8.栽培記録
平成20年1月11日 ホーレン草、葉大根、サニーレタスをハウスG−a,G−b,G−c,G−d,ハウス[8]にそれぞれ播種した。
1月15日 ハウスG−a,G−b,G−c,はホーレン草、葉大根、サニーレタスの発芽があった。ハウスG−dは葉大根、サニーレタスが発芽した。ハウス[8]は発芽していない。
1月18日 全てのハウスに播種した全ての種類が発芽したが、ハウスG−a,G−b,G−c,の方がハウスG−d,ハウス[8]よりも発芽数が多い。一見するだけで解かる。数えるまでもないほど差が大きい。
3月6日 葉大根とホーレン草を収穫した。
3月27日 サニーレタスを収穫した。
【0123】
9.実験結果
【表38】
普通のハウス栽培と成育スピードを比較してまとめたものが下表である。
【表39】
【0124】
以上より、野菜の種類によって多少の相違はあるものの、いずれのハウスも普通のハウスよりも成育スピードが早いという結果となった。これは、赤色ペンキをスプレーしたハウスの平均透光率はそれぞれ異なっているが、いずれも必要とする光合成速度飽和光強度を満たしている。従って光強度の要因に関しては同一条件であるが、光の質に関しては図33を参照すれば解かる様に光形態形成の赤色光効果のピーク波長領域と光合成のピーク波長領域が重複している。この為に赤色ペンキをスプレーしたハウスは、栽培空間の光合成機能波長の割合が大きくなっているので普通のハウスよりも光合成速度が早くなる為に、成育が早くなった事が証明されたのである。同時に、ハウスG−a〜ハウス G−dはそれぞれの光の比が異なっている。従って実験結果から、葉大根、ホーレン草、サニーレタスそれぞれにおいて、光の比を木漏れ日の日向のスペクトルにすれば成育が早くなることがいえる。
【0125】
ここで植物群落内の入り口側と奥側とでは、光の比が異なるものであり、このことを考え合わせれば、上記実験結果から、葉大根、ホーレン草、サニーレタスをはじめとするC3植物は、その種毎に最も適した光の比があるということが理解される。最も適した光の比があるといえども、その光の比を探す必要はない。何故ならば前述の如く、太陽光が反射や透過をする事によって光の比は変化するのである。従って植物群落の入口の光環境に適応して自生する種は、反射の少ない太陽光に適応している。つまり光の比の裸地との差が小さくて、光合成速度飽和光強度が強い環境を好むのである。一方植物群落の奥、又はうっそうと茂った植物群落などの光環境に適応して自生する種は、非常に多くの反射を繰り返した太陽光に適している。つまり光の比の裸地との差が大きくて、光合成速度飽和光強度は非常に弱い環境を好むのである。
【0126】
従って太陽光の380〜780nmの波長領域の可視光線を透光させる材質からなり、その色のスペクトルが赤色光(R)と遠赤色光(FR)にそれぞれピーク値を持ち、赤色光(R)と遠赤色光(FR)以外の波長領域の分光放射輝度が、ゼロであるか或いは赤色光(R)と遠赤色光(FR)の分光放射輝度よりも小さい事を特徴とする透光資材によって、栽培ハウスを形成し透光資材の所定の透光率によって栽培ハウス内が、栽培する野菜の光合成速度飽和光強度の明るさを確保すれば良いのである。又、透明な透光資材でも、その材質や厚さそして色の濃度等によって光の比は変化するのであるから、透光資材の所定の透光率によって栽培ハウス内が、栽培するC3植物の農作物の光合成速度飽和光強度の明るさを確保すれば良いのである。
【0127】
実験(2)
1.目的
太陽が明るい夏期は赤い色の付いたビニールを透過させても充分明るいので、赤い色のビニールを使用したビニールハウスであって、ビニールハウス内の明るさがナスの光合成速度飽和光強度の明るさを確保しているビニールハウスでナスを栽培し収穫数を比較する。
2.実験地
高知県高知市東雲町
3.実験期間
平成20年7月15日〜平成20年8月30日
【0128】
4.実験条件
4−1栽培ハウスの装備:ハウスの内側の、ビニール以外の全てと鉢の外側を赤く塗った栽培ハウスの事を以後は「赤いハウス」と記す。
栽培ハウス[2]:普通のビニールを使用せずに赤いビニールを張った赤いハウス
栽培ハウス[14]:普通のビニールを使用した赤いハウスに反射板と赤いネット取り付けたもの(図34参照)
栽培ハウス[8]:普通のビニールハウスを赤いハウスから遠く離れた所へ設置したもの(図32参照)
4−2:栽培ハウス内の光環境を4−3の如くにする為に使用した材料のスペクトル
反射板と赤いビニールを赤くするために水性ペンキ(赤色スプレー)を使用した。図30参照。
栽培ハウス内を赤くする為と、ネットを赤くする為に使用した油性ペンキのスペクトル図35参照。
4−3:各ハウス内の照度と裸地の照度
PM3:00前後の裸地とハウス[2][14]内の照度を下表に示す。ナスの光合成速度飽和光強度は4万lxである。
【0129】
【表40】
【0130】
5.実験(2)栽培方法
5−1:ナス(千両2号/トナシム)
作業手順
午前8:25、10:10、午後1:00,3:10、の1日4回、温度、湿度を測定する。
午後1:00 反射板を西から東に変える。温度、湿度測定、花の数をチェックしてトマトトーンをつける。水をやる。各2リットル。(休日の前日は2倍)
日の入り前後 水をやる。各2リットル。(休日の前日は2倍)
東の反射板を下ろし、西の反射板を上げる。
【0131】
6.実験(2)実験結果
7/15(火)栽培スタート
7/19(土)花が咲き始めた。ハウス[2]の室温が40℃に達した。
7/21(月)ハウス[2][14]の室温が40℃に達した。
ハウス[14][8]の花が落花した。
7/26(土)ハウス内の温度が高すぎるのでハウス[2][14][8]に扇風機を設置した。
扇風機によって5℃ぐらい室温が低下した。
8/ 7(木)ハウス[2]から1個、ハウス[8]は2個収穫した。今日までの花咲き累計と落花の累計、そして花咲きから落花を差し引いた有効花咲き累計を下記する。
【表41】
8/30(土)
【表42】
ハウス[8]に害虫発生、ハウス[2]と[14]には害虫の発生は見られない。ハウス[2]と[8]の収穫量に充分な差異が生じている。つまり実験の目的が達成されたので、本日をもって実験を終了する。
【0132】
ハウス[2][14][8]のハウス内の明るさは、いずれもナスの光合成速度飽和光強度の4万lx以上である。ハウス内の明るさは、ハウス[8]が最も明るくて次はハウス[2]であり、ハウス[14]が最も暗くなっている。従って最も暗いハウス[14]の収穫量が最も少なくなっているのは当然である。しかし最も明るいハウス[8]よりも、約10%暗いハウス[2]の方が8/30の時点でハウス[8]の約1.44倍の収穫量となっている。R/B比を裸地よりも大きくし、R/FR比を裸地よりも小さくする事によって、明るさが約10%暗くても収穫量が多くなる。そして明るさが約24%暗いハウス[14]の収穫量は、ハウス[8]の方がハウス[14]よりも1.42倍多くなっている。
【0133】
しかし光通過率が最も小さい、つまりハウス[2][14][8]の中でR/B比が裸地よりも最も大きくなりR/FR比が裸地よりも最も小さくなっているハウス[14]が、最も元気である。これは落花が最も少ない事によって証明される。次に元気なのはハウス[2]である事から、病害虫防止効果は光の比の変化量が多い程強くなる事が解かった。8/30の時点でハウス[8]は落花が多い為に、花咲き数から落花数を差し引いた有効花数がハウス[14]と同数になっている。ナスは花が咲くと必ず結実して果実となるという特長を持っている。
【0134】
従って有効花数が同数という事は、ハウス[8]の収穫量がハウス[14]の1.42倍多いという数字は途中経過の数字であり、最終的には収穫量の差は1.42よりも小さくなる事を示している。
本実験によって、R/B比を裸地よりも大きくしR/FR比を裸地よりも小さくした光環境で、同時に栽培植物の光合成速度飽和光強度の明るさを保持して栽培する事によって、病害虫防止効果以外にも収穫量が増加する効果が有る事が解かった。
【符号の説明】
【0135】
1 ハウス防風機構
2 ビニールハウス
3 防風塀
5 通風部
7 邪魔板
12 赤ビニール(水性ペンキ:赤色)
13 赤ビニール支持具(油性ペンキ:赤色)
14 栽培用のトロ箱2個(油性ペンキ:赤色)
15 遮光板(光が入らない様に周囲を囲む。ベニヤ板、着色せず)
16 周囲と天井をビニールで張った(ビニール:透明)普通のビニールハウスの天井部のみに赤ネットをかぶせたハウス(赤ネット:油性ペンキ)
17 反射板(水性ペンキ:赤色)
18 反射板支持具(油性ペンキ:赤色)
19 栽培用の鉢6個(油性ペンキ:赤色)
20 周囲と天井をビニールで張った普通のビニールハウス。(透明)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むことを通風部と邪魔板で緩和するハウス防風機構。
【請求項2】
通風部は防風塀の上端から50〜200mmの縦幅で形成している請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項3】
強風が邪魔板を通過した時に、その平均風速値が24〜32%に低下する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項4】
邪魔板の横幅は防風塀の通風部の縦幅よりも大きい請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項5】
ハウス防風機構の上方平面における邪魔板の配置について、邪魔板は、全体的に縦横方向および筋交い状に等間隔で並置する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項6】
防風壁が透明または半透明素材からなる請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項7】
防風壁は、地面に垂直に立設した支柱によって垂直に固定する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項8】
防風壁の一部に開閉自在の風通し戸を取り付ける請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項9】
光形態形成の赤色光効果を有する波長領域での分光放射輝度を赤色光R、光形態形成の強光下反応に属する青色光の波長領域での分光放射輝度を青色光Bおよび光形態形成の遠赤色光効果を有する波長領域の分光放射輝度を遠赤色光FRと規定し、防風壁、柱、邪魔板、そしてハウス防風機構内に設置したビニールハウスやガラスハウスの、ビニールやガラスを、赤色光Rを反射させる色および遠赤色光FRを反射させる色以外の可視光の分光放射輝度が、赤色光Rと遠赤色光FRのそれぞれよりも小さくなる色のスペクトルを有する色で着色し、ハウス内で栽培する野菜類の光合成速度飽和光強度の明るさを確保し、さらにハウス内の栽培環境における赤色光R/青色光Bの比が裸地よりも大きく、且つ赤色光R/遠赤色光FRの比が裸地よりも小さくなることを特徴とするハウス防風機構。
【請求項1】
単数または複数の栽培ハウスを取り囲み、該栽培ハウスよりも高く立設して環状に配置した防風塀と、該防風塀の上方部において上端から所定の縦幅で形成した通風部であって、分散配置された多数の貫通孔で構成する通風部と、全面または部分的に多数の貫通孔を形成し、栽培ハウスの上方において横置きした際に強風が通過する複数枚の邪魔板とを備え、強風が防風塀に衝突した際に防風塀の上端から機構内部へ回り込むことを通風部と邪魔板で緩和するハウス防風機構。
【請求項2】
通風部は防風塀の上端から50〜200mmの縦幅で形成している請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項3】
強風が邪魔板を通過した時に、その平均風速値が24〜32%に低下する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項4】
邪魔板の横幅は防風塀の通風部の縦幅よりも大きい請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項5】
ハウス防風機構の上方平面における邪魔板の配置について、邪魔板は、全体的に縦横方向および筋交い状に等間隔で並置する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項6】
防風壁が透明または半透明素材からなる請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項7】
防風壁は、地面に垂直に立設した支柱によって垂直に固定する請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項8】
防風壁の一部に開閉自在の風通し戸を取り付ける請求項1記載のハウス防風機構。
【請求項9】
光形態形成の赤色光効果を有する波長領域での分光放射輝度を赤色光R、光形態形成の強光下反応に属する青色光の波長領域での分光放射輝度を青色光Bおよび光形態形成の遠赤色光効果を有する波長領域の分光放射輝度を遠赤色光FRと規定し、防風壁、柱、邪魔板、そしてハウス防風機構内に設置したビニールハウスやガラスハウスの、ビニールやガラスを、赤色光Rを反射させる色および遠赤色光FRを反射させる色以外の可視光の分光放射輝度が、赤色光Rと遠赤色光FRのそれぞれよりも小さくなる色のスペクトルを有する色で着色し、ハウス内で栽培する野菜類の光合成速度飽和光強度の明るさを確保し、さらにハウス内の栽培環境における赤色光R/青色光Bの比が裸地よりも大きく、且つ赤色光R/遠赤色光FRの比が裸地よりも小さくなることを特徴とするハウス防風機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2010−166899(P2010−166899A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148184(P2009−148184)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【特許番号】特許第4395544号(P4395544)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(504302945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【特許番号】特許第4395544号(P4395544)
【特許公報発行日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(504302945)
【Fターム(参考)】
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