説明

ハケ

【課題】汚れの掻き出し性能、塗料、洗浄液などの液体の保持性能、耐久性等に優れたハケを提供する。
【解決手段】ハケ21は、毛材を束ねてなるハケ部23と、取っ手部22を有するものであって、前記ハケ部23は、合成樹脂モノフィラメントからなり、繊維軸方向において複数の径大部12を有し、前記径大部12内に芯材14を配した毛材11を有するもので、複数の径大部12と、それらの間に必然的に形成される径小部15により、汚れの掻き出し性能や、塗料、洗浄液などの液体の保持性能が向上すると共に、径大部12内に芯材14が配されているので、毛材11を被洗浄面(図示せず)に強く押し当てても折れ難く、耐久性に優れたハケ21を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる毛材を有し、洗浄、清掃、液体の塗布等に用いられるハケに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のハケには様々なものがあり、ハケを構成する毛材としては、合成樹脂モノフィラメントからなる毛材を構成したハケが広く使用されている。
【0003】
そして、近年では、清掃性の向上などを目的として、様々な加工を施した毛材が発明されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
図4(a)は、上記特許文献1に記載された従来の毛材の側面図で、図4(b)は、図4(a)のI−I断面図である。
【0005】
同図において、毛材1は、芯鞘複合モノフィラメントからなり、断面形状が異形断面で、先端部2は、芯鞘複合モノフィラメントの芯部が鞘部に覆われずに露出した部分から構成されている。
【0006】
上記毛材1の製造は、例えば、芯鞘複合モノフィラメントを溶融紡糸して得た後、芯鞘複合モノフィラメントをブラシ用途に応じた長さにカットし、カットした芯鞘複合モノフィラメントの少なくとも片方の先端部において、酸やアルカリなどによる溶解法や研磨処理法により、芯部2aを露出せしめることによって得るようにしている。
【0007】
図5は、上記特許文献2に記載された従来の他の毛材の側面図である。同図において、従来の毛材3は、丸断面のポリエステル系モノフィラメントからなり、繊維軸方向にクリンプ加工を施したカットブリッスル3aの少なくとも一端に、先鋭状のテーパー部4を形成している。
【0008】
図6は、上記特許文献3に記載された従来の他の毛材の部分側面図である。同図において、従来の毛材6は、テトラフルオロエチレン系共重合体を主成分とするモノフィラメントから形成されると共に、表面には、表面凹凸率Sが0.010〜0.040%の凹部6aと凸部6bが複数設けられている。
【0009】
また、ホルダーとホルダーに支持されたハケ毛材群より成る食品用つや出し剤塗りハケに於て、前記ハケ毛材群の各毛材は化学繊維毛材であって、その先端領域が端部に行くに従い次第に先細りになるように形成されている食品用つや出し剤塗りハケであって、上記各毛材の表面に、各毛材間の間隙液分が溜まり易いように細かい凹部が多数形成されていることを特徴とする食品用つや出し剤塗りハケが開示されてある(特許文献4)。
【0010】
【特許文献1】特開2006−136524号公報
【特許文献2】特開2003−225123号公報
【特許文献3】特開2006−112008号公報
【特許文献4】特許第2879424号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の毛材1は、製造工程が極めて複雑になるため、生産コストが大幅に上がるという課題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載された従来の毛材3は、モノフィラメントが波形状になっているため、毛腰が弱く洗浄性能が劣るという課題があった。
【0013】
また、特許文献3に記載された毛材6は、表面に形成された凹部6a、凸部6bにより、汚れの掻き出し性能は優れているものの、凸部6bの内部に芯材などが無いため、ブラシ用毛材6を被洗浄面などに強く押し付けると、毛折れしやすいという課題があった。
【0014】
また、特許文献4に記載されてある毛材は、各毛材の表面に細かい凹部が多数形成されている為、毛腰が弱くなり、毛折れしやすくなるという課題があった。また、一度凹部に保持された液分は凹部の外部の液分と容易に交換される事が無く、液分が凹部に滞留するという課題があった。また、毛材が被洗浄面に付着した汚れを効率よく掻き出すには、毛材の摩擦力を向上させる必要があるという課題があった。
【0015】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、汚れの掻き出し性能、塗料、洗浄液などの液体の保持性能、耐久性に優れたハケを安価に提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明のハケは、合成樹脂モノフィラメントからなる毛材を有し、繊維軸方向において複数の径大部を有し、前記径大部内に芯材を配したもので、複数の径大部と、それらの間に必然的に形成される径小部により、汚れの掻き出し性能や、塗料、洗浄液などの液体の保持性能が向上すると共に、径大部内に芯材が配されているので、毛材を被洗浄面に強く押し当てても折れ難く、耐久性に優れたハケを提供することが出来る。
【0017】
又、本発明のハケに使用する毛材の製造方法は、第1〜3のいずれか一つの発明の合成樹脂モノフィラメント用の合成樹脂を溶融紡糸する際に、前記合成樹脂に芯材を混入させるもので、毛材を、1ラインで一貫生産することが出来るようになり、生産コストを下げることが出来る。
【発明の効果】
【0018】
本発明のハケは、汚れの掻き出し性能、塗料、洗浄液などの液体の保持性能、耐久性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1の発明は、合成樹脂モノフィラメントからなり、繊維軸方向において複数の径大部を有し、前記径大部内に芯材を配したもので、複数の径大部と、それらの間に必然的に形成される径小部により、汚れの掻き出し性能や、塗料、洗浄液などの液体の保持性能が向上すると共に、径大部内に芯材が配されているので、毛材を被洗浄面に強く押し当てても折れ難く、耐久性に優れたハケを提供することが出来る。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明の芯材の材料として、無機物或いは、合成樹脂モノフィラメントに使用される合成樹脂より融点の高い合成樹脂を使用するもので、モノフィラメントの溶融紡糸時に芯材を予め混入させておいても、芯材が溶融せずそのままの形状で紡糸後の合成樹脂モノフィラメント内に残るので、毛材の製造が容易になり、安価に形成できる。又、芯材の材料として、無機物を用いると、研削力が向上するので、製品や部品のエッジ部に形成されたバリの除去に有効である。又、芯材の材料として、合成樹脂を用いると、被洗浄面に傷をつけること無く、汚れを除去することが出来る。
【0021】
第3の発明は、特に、第2の発明の無機物として、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化クロム、ダイヤモンド、タルク、カオリン、珪藻土、珪石、あるいは炭酸カルシウムを用いるもので、研削力に優れ、製品や部品のエッジ部に形成されたバリの除去に極めて有効なハケを提供することが出来る。特に、酸化鉄、酸化クロムは、高い研磨力を有している。
【0022】
第4の発明は、第1〜3のいずれか一つの発明の合成樹脂モノフィラメント用の合成樹脂を溶融紡糸する際に、前記合成樹脂に芯材を混入させるもので、毛材を、1ラインで一貫生産することが出来るようになり、生産コストを下げることが出来る。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例におけるハケの正面図である。
【0025】
図1において、ハケ21は、取っ手部22と、ハケ部23とが接合部24によって連結されている。ハケ部23は、合成樹脂モノフィラメントの毛材11からなるものであり、接合部24に植設されて形成されている。このハケ21は、洗浄、清掃、液体の塗布等に使用するものであり、本発明のハケ21に使用される毛材は以下の特徴を有するものである。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施例における毛材の断面図である。
【0027】
図2において、毛材11は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等からなり、繊維軸方向において複数の径大部12を有する合成樹脂モノフィラメント13と、その径大部12内に配された芯材14から構成されている。
【0028】
芯材14には、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化クロム、ダイヤモンド、タルク、カオリン、珪藻土、珪石、炭酸カルシウム等の無機物あるいは、合成樹脂モノフィラメント13に使用される合成樹脂より融点の高い合成樹脂を用いるようにする。融点の高い合成樹脂としては、例えば、粒状あるいはパウダー状のフッ素樹脂、シリコーン樹脂等がよい。
【0029】
なお、カオリンは、珪酸アルミニウムを主成分とする天然に産出する粘土鉱物で、タルクは、珪酸マグネシウムを主成分とする鉱石である。
【0030】
図3は、毛材11の製法を示す概略図で、合成樹脂モノフィラメント13用の合成樹脂ペレット13aと、所定の大きさの粒状の芯材14を良く混合させた後、材料ホッパー16に投入し、合成樹脂ペレット13aが溶融する程度の温度で溶融紡糸する。この時点では、図2(b)に示すように、合成樹脂モノフィラメント13の太さは略均一で、内部に、溶融温度が高いため溶けなかった粒状の芯材14が原形のまま拡散している。
【0031】
次に、合成樹脂モノフィラメント13が硬化する前に、それに所定の治具を用いて延伸をかけると、図2(c)に示すように、芯材14が位置する部分は径大部12となり、隣り合う径大部12間では、合成樹脂モノフィラメント13が伸びて径小部15が形成されて、毛材11が完成する。
【0032】
本実施例における毛材11は、以上のように構成されているので、それを洗浄用のハケ21に用いた場合、複数の径大部12の表面で汚れを掻き出したり、同表面を汚れに叩きつけることができるので、汚れの掻き出し性能が大幅に向上する。又、洗浄液などの液体が、隣り合う2つの径大部12の間に形成された径小部15の外周面に保持されるので、液体の保持性能も向上する。特に、多数本の毛材11を密集させた場合には、径大部12が密集するため、液体の保持性能が格段に向上する。
【0033】
さらに、径大部12内に芯材14が配されているので、毛材11を被洗浄面に強く押し当てても折れ難く、耐久性に優れたハケ21を提供することが出来る。
【0034】
又、芯材14の材料として、無機物或いは、合成樹脂モノフィラメント13に使用される合成樹脂より融点の高い合成樹脂を使用することにより、合成樹脂モノフィラメント13を溶融紡糸する際に、合成樹脂モノフィラメント13用の合成樹脂に予め芯材4を混入させておいても、融け難い芯材14がそのままの形状で紡糸後の合成樹脂モノフィラメント13内に残って、本実施例の毛材11が容易に形成されるので、毛材11を、1ラインで一貫生産することが出来るようになり、生産コストを大幅に下げることが出来るものである。
【0035】
なお、芯材14の材料として、無機物を用いると、芯材14が露出する形態にてハケ21を使用した場合においては、研削力が向上するので、製品や部品のエッジ部に形成されたバリの除去に有効である。又、芯材14の材料として、合成樹脂を用いると、被洗浄面に傷をつけることが無く、汚れを確実に除去することが出来る。
【0036】
また、無機物として、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化クロム、ダイヤモンド、タルク、カオリン、珪藻土、珪石、あるいは炭酸カルシウムを用いることにより、研削力に優れ、製品や部品のエッジ部に形成されたバリの除去に極めて有効なハケ21を提供することが出来る。特に、酸化鉄、酸化クロムは、高い研磨力を有している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかるハケは、汚れの除去性能、洗浄性能、塗料の塗付性能、耐久性等に優れたもので、各種用途に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施例におけるハケの正面図
【図2】第1の実施例における毛材の断面図
【図3】(a)〜(c)同ブラシ用毛材の製法を示す概略図
【図4】(a)従来のブラシ用毛材の側面図、(b)図3(a)のI−I断面図
【図5】従来の他のブラシ用毛材の側面図
【図6】従来の他のブラシ用毛材の部分側面図
【符号の説明】
【0039】
11 ブラシ用毛材
12 径大部
13 合成樹脂モノフィラメント
14 芯材
15 径小部
21 ハケ
22 取っ手部
23 ハケ部
24 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装等に使用されるハケにおいて、該ハケは、毛材を束ねてなるハケ部と、取っ手部とを有するものであって、前記ハケ部は、合成樹脂モノフィラメントからなり、繊維軸方向において複数の径大部を有し、前記径大部内に芯材を配した毛材を有することを特徴とするハケ。
【請求項2】
合成樹脂モノフィラメントからなる毛材は、芯材の材料として、無機物あるいは、合成樹脂モノフィラメントに使用される合成樹脂より融点の高い合成樹脂を使用したことを特徴と特徴とする請求項1に記載のハケ。
【請求項3】
合成樹脂モノフィラメントからなる毛材は、無機物として、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化鉄、酸化クロム、ダイヤモンド、タルク、カリオン、珪藻土、珪石、あるいは炭酸カルシウムを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハケ。
【請求項4】
合成樹脂モノフィラメント用の合成樹脂を溶融紡糸する際に、前記合成樹脂に芯材を混入させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハケ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−104621(P2008−104621A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289684(P2006−289684)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】