説明

ハニカムパネル

【目的】 従来のハニカムパネルの強度を大幅に上回り、乗り物の構造材として使用しても安全上全く問題のない高強度な構成のハニカムパネルを提供することを目的とする。
【構成】 ハニカムコア1の上下両主面のそれぞれに面板2を接合させて高比剛性とするとともに、各面板2上に高比強度材料を被着させたことを特徴とするハニカムパネルにより、例えば従来のろう付けアルミハニカムの上下面板に、ごく薄い繊維強化プラスチックを接着するだけで、強度を従来より飛躍的に向上させることができ、さらに疲労強度を向上させることができ、安全係数を従来より格段と小さくすることができ、超高層ビルなどの構造材としても可能となる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば自動車、電車、飛行機などの乗り物のボディ等の構造材として好適に使用されるハニカムパネルに関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】
従来、軽量で高強度であるために構造材として好適に使用されてきたアルミニウム合金製のハニカムパネルは、図3(a)に示すようにアルミ合金製の板を折り曲げ加工などにより成形し、これを組み合わせるなどして作製されたハニカムコアAと面板Bとを樹脂製の接着剤Cによって接着させたものであった。
【0003】
上記従来のハニカムパネルは、ハニカムコアと面板との間に介在させた接着剤の強度で規制される。すなわち、図3(b)に示すように、接着剤Cの部分の剪断応力は極めて小さく、上記ハニカムパネルに例えば曲げモーメントMが印加されると、面板BとハニカムコアAとの接着部にかかる剪断応力が接着剤Cの剪断応力を上回った場合に破壊する。このため、ハニカムパネルとしての性能、例えば引張強度、圧縮強度、剪断強度などの機械強度は接着剤に負うところが多く、接着剤ではそれほど高強度を維持できないため、アルミニウム合金の機械的特性を充分に生かすことができないうえ信頼性に関しても問題があった。
【0004】
そこで、ハニカムパネルの持つ優れた機械的特性を安定的なものとするためにろう付けアルミハニカムとすることが知られている。これはハニカムコアと面板との間に接着剤を介在させるかわりにろう付けを行うことによって強度を向上させたものである。
【0005】
しかしながら、上記ろう付けアルミハニカムの引張強度及び圧縮強度はともに20kg/mm 2 前後のものが使用されるのが一般的であり、また実際に構造材として設計するにあたり、繰り返し応力( 約107 回) を考慮した場合、ハニカムの溶接部の疲労強度は5kg/mm 2前後であるため、例えば自動車、電車、航空機、船舶などの人命を預かっている乗り物等の構造材としてに使用する場合には、この程度の強度では安全上問題となることがあった。
【0006】
【考案の目的】
そこで、本考案は上述の問題点を解消すべく案出されたものであり、従来のハニカムパネルの強度を大幅に上回り、乗り物の構造材として使用しても安全上全く問題のない高強度な構成のハニカムパネルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案のハニカムパネルは、ハニカムコアの上下両主面のそれぞれに面板を接合させて高比剛性とするとともに、各面板上に高比強度材料を被着させたことを特徴とする。
【0008】
ここで、高比剛性とは、単位重量当たりの剛性が極めて高いものをいい、例えば同一重量のスチールの弾性率の約2倍以上程度のものであり、各種アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金などをいう。また、高比強度材料とは単位重量当たりに引張強度や圧縮強度などの機械的強度が極めて高いものをいい、例えば同一重量のスチールの強度の約3倍以上のものをいい、各種繊維強化プラスチックや各種繊維強化金属などをいう。
【0009】
【実施例】
本考案に係る実施例を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)に示すように、本考案のハニカムパネルPはアルミニウム合金製(JIS 6951)のハニカムコア1の上下主面のそれぞれに、ハニカムコア1と同様なアルミニウム合金製の面板2をろう付けによって接合して高比剛性とし、図2に示すように各面板2上に面板2に比して充分薄い高比強度材料である繊維強化プラスチック(以下、FRPと略す)3を接着させたものである。
【0010】
すなわち、真空中または不活性ガス雰囲気中でろう材(JIS 4045)を介して圧着したハニカムコア1と面板2とを約600 ℃に15〜30分保持し、その後冷却することによって、図1(b)に示すような高さH=15mm、面板厚さT=2 mm、コア厚さt =0.2 mm、セルサイズs =19mmのろう付けアルミハニカムを作製した。次いで、面板2の上に炭素繊維をエポキシ樹脂に混入させたものを厚み0.2mm に塗布して固化させてハニカムパネルPを作製した。
【0011】
このようにしてハニカムパネルPを構成することにより、従来のろう付けアルミハニカムだけの構造では引張強度、圧縮強度が、ともに高々20kg/mm 2 程度であったのに対して、これら機械的強度はFRPの強度(80 〜200 kg/mm 2 ) 、すなわち従来の4 〜10倍程度にまで引き上げることができた。
【0012】
また、面板2の厚さのわずか1/10の厚さのFRPを接着させるだけで、印加できる曲げモーメントMは約2 倍に増加させることが可能であることがわかった。
このため、アルミニウム合金によるハニカム構造で高剛性となっているうえ、例えばアルミニウムの引張弾性率 約7 トン/ mm2 に対して、FRPの引張弾性率は約14トン/ mm2 であるので、弾性率×断面2 次モーメントで決定される剛性も一層改善することができる。
【0013】
さらに、実際に構造材として設計するにあたり、繰り返し応力( 約107 回) を考慮した場合、ハニカムパネルPの溶接部の疲労強度は15kg/mm 2 以上となり従来のろう付けアルミハニカムだけの構造に比して格段の安全性を見込むことができ、安全係数nも2 程度に低減することが可能となった。
【0014】
なお、ハニカムコア1及び面板2の材質は上記アルミニウム合金の他にチタン合金やマグネシウム合金などの各種高比剛性材料であればよく、また上記FRPは炭素FRPの他にアラミドFRP、ボロンFRPやポリエチレンFRPなどの各種高比強度材料であればよく、これら材質は本考案の要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更し実施しうる。
【0015】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案のハニカムパネルによれば、例えば従来のろう付けアルミハニカムの上下面板に、ごく薄い繊維強化プラスチックを接着するだけで、強度を従来より飛躍的に向上させることができ、さらに疲労強度を向上させることができ、安全係数を従来より格段と小さくすることができ、超高層ビルなどの構造材としても可能となる。
【0016】
また、特に本考案のハニカムパネルを自動車、電車、航空機、船舶などのボディ等に使用して軽量化を図ることにより、乗り物の安全性の向上、多大なエネルギ消費の低減、最高速度や加速性能の向上などを期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る実施例を示す図であり、(a)はハニカムコアと面板とを接合させた様子を示す斜視図、(b)はハニカムコアの拡大平面図である。
【図2】本考案に係るハニカムパネルを示す縦断面図である。
【図3】(a)は従来のハニカムパネルを示す縦断面図、(b)は(a)のハニカムパネルの縦方向の剪断応力を示す分布図である。
【符号の説明】
1 ・・・ ハニカムコア 2 ・・・ 面板
3 ・・・ FRP
P ・・・ ハニカムパネル

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ハニカムコアの上下両主面のそれぞれに面板を接合させて高比剛性とするとともに、各面板上に高比強度材料を被着させたことを特徴とするハニカムパネル。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】実開平5−39939
【公開日】平成5年(1993)5月28日
【考案の名称】ハニカムパネル
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−89918
【出願日】平成3年(1991)10月31日
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)