説明

ハニカムフィルタ

【課題】圧力損失を低減しつつ燃焼再生において生じる熱応力を低減することが可能なハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタ100は、隔壁120により仕切られた流路110を有し、流路110が複数の流路110aと複数の流路110bとを有しており、複数の流路110bにおける一の流路110bと他の流路110bとが互いに隣接しており、流路110bの断面が長辺150aと短辺150bとを有しており、流路110aの辺140のそれぞれが、流路110bの長辺150aと対向しており、流路110bの短辺150bのそれぞれが、隣接する流路110bの短辺150bと対向しており、各流路110bにおける、流路110bの断面を形成する辺のそれぞれの長さと、流路110bの軸方向の長さとの積の合計をSとしたときに、ハニカムフィルタ100に含まれる全ての流路110bにおける上記Sの総和が所定値以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムフィルタは、被捕集物を含む流体から当該被捕集物を除去するセラミックスフィルタとして用いられており、例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関から排気される排気ガスを浄化するための排ガスフィルタとして用いられている。このようなハニカムフィルタは、多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を有している(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−537741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被捕集物を含む流体がハニカムフィルタ内に供給されるに伴い、ハニカムフィルタにおける隔壁の表面や隔壁の内部に被捕集物が堆積する。この場合、被捕集物がハニカムフィルタ内に過剰に堆積すると、ハニカムフィルタ内における流体の移動が妨げられてハニカムフィルタの浄化性能が低下する。そのため、ハニカムフィルタ内に一定量の被捕集物を堆積させた後に、被捕集物を燃焼除去するためにハニカムフィルタの燃焼再生が行われる。
【0005】
ここで、燃焼再生においてハニカムフィルタに過度の熱応力が負荷されると、ハニカムフィルタの熱破損や溶損が引き起こる場合がある。そのため、ハニカムフィルタに対しては、燃焼再生において生じる熱応力を低減することが求められている。
【0006】
また、ハニカムフィルタに対しては、当該ハニカムフィルタ内に被捕集物が捕集されるに伴い圧力損失が増加することを充分に抑制することが求められている。そのため、ハニカムフィルタに対しては、圧力損失を低減しつつ、燃焼再生において生じる熱応力を低減することが求められている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、圧力損失を低減しつつ、燃焼再生において生じる熱応力を低減することが可能なハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るハニカムフィルタは、多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を有するハニカムフィルタであって、複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、第1の流路におけるハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、第2の流路におけるハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、第2の流路の軸方向に垂直な第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、第1の流路の軸方向に垂直な第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、第2の流路の第1の辺と対向しており、第2の流路の第2の辺のそれぞれが、隣接する第2の流路の第2の辺と対向しており、第1の流路が複数配置されており、各第2の流路における、第2の流路の断面を形成する辺のそれぞれの長さと、第2の流路の軸方向における第2の流路の長さとの積の合計をSとしたときに、ハニカムフィルタ1リットルあたりに含まれる全ての第2の流路におけるSの総和が1.1m以上である。
【0009】
本発明に係るハニカムフィルタでは、圧力損失を低減しつつ、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。本発明において上記効果が得られる原因は詳細には不明であるが、本発明者は以下のように推測している。但し、原因が以下の内容に限定されるものではない。
【0010】
すなわち、本発明に係るハニカムフィルタでは、複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、第1の流路におけるハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、第2の流路におけるハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、第2の流路の軸方向に垂直な第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、第1の流路の軸方向に垂直な第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、第2の流路の第1の辺と対向しており、第2の流路の第2の辺のそれぞれが、隣接する第2の流路の第2の辺と対向している。このような構成を備える本発明では、例えば、被捕集物を含む流体をハニカムフィルタの一端側から第2の流路内に流入させた場合、被捕集物は、第2の流路の内壁に堆積し、第2の流路の軸方向に垂直な第2の流路の断面における第1の辺及び第2の辺のそれぞれに堆積する。このように被捕集物が堆積した状態においてハニカムフィルタの燃焼再生を行う場合、ハニカムフィルタ内に流入した酸素ガス等の支燃性ガスが、被捕集物が堆積した部分に供給される。そして、支燃性ガスの存在下で被捕集物が燃焼することにより、二酸化炭素ガスや一酸化炭素ガス等(以下、単に「二酸化炭素ガス等」という)が発生する。
【0011】
ここで、本発明では、被捕集物の燃焼速度が、被捕集物の燃焼により発生する二酸化炭素ガス等のガス流出側の流路への拡散し易さに依存する傾向があるものと推測される。すなわち、本発明では、互いに隣接する第2の流路間の圧力差に比して、互いに隣接する第1の流路及び第2の流路間の圧力差が大きくなる傾向がある。これにより、一の第2の流路において被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、隣接する他の第2の流路に比して、隣接する第1の流路へ流れ易い。
【0012】
そして、本発明では、第1の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、第2の流路の断面と第1の辺を共有する断面を有する第1の隔壁内を移動して第1の流路へ達する傾向があり、第2の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、第2の流路の断面と第2の辺を共有する断面を有する第2の隔壁内を当該隔壁に沿って移動して第1の流路へ達する傾向がある。この場合、第1の隔壁を通過する経路が第2の隔壁を通過する経路に比して短いことから、第1の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の方が、第2の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等よりもガス流出側の流路へ拡散し易い。
【0013】
このような流路間の圧力差及び隔壁内の流通経路の長さの差に起因して、本発明では、第1の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の方が、第2の辺に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等よりもガス流出側の流路へ拡散し易い。したがって、第1の辺に堆積した被捕集物が、第2の辺に堆積した被捕集物に比して燃焼し易くなり、第1の辺に堆積した被捕集物と第2の辺に堆積した被捕集物とで燃焼速度が異なるものとなる。
【0014】
以上の本発明では、被捕集物が堆積した部位に応じて被捕集物の燃焼速度が異なるものとなることから、燃焼再生に際し被捕集物の燃焼が多くの部位において急激に生じてハニカムフィルタ内の温度が急激に変化することが抑制されている。そして、このような現象は、ハニカムフィルタ1リットルあたりに含まれる全ての第2の流路における上記積の合計Sの総和が1.1m以上であることにより顕著に生じているものと推測される。これにより、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。
【0015】
また、本発明に係るハニカムフィルタでは、ハニカムフィルタ1リットルあたりに含まれる全ての第2の流路における上記積の合計Sの総和が1.1m以上であることにより、被捕集物を含む流体を当該ハニカムフィルタの内部に供給した場合における圧力損失を低減しつつ、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。このような効果が得られる原因は詳細には不明であるが、本発明者は、濾過面積が充分に確保されると共に、被捕集物が局所的に堆積して流路を塞いでしまうことが抑制されていることに起因して、圧力損失が低減されているものと推測している。但し、原因が当該内容に限定されるものではない。
【0016】
隔壁は、チタン酸アルミニウムを含むことが好ましい。この場合、圧力損失を低減しつつ、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減し易くなる。
【0017】
第1の流路の断面及び第2の流路の断面は、六角形状であってもよい。
【0018】
第1の態様として、一つの第2の流路が、互いに隣接する第1の流路の間に配置されている構成であってもよい。この場合、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減することができる。
【0019】
上記第1態様では、第2の流路の断面において互いに対向する辺の長さが互いに等しくてもよい。また、第2の流路の断面は、互いに長さの等しい二つの長辺と、互いに長さの等しい四つの短辺と、を有していてもよい。
【0020】
第2の態様として、二つの第2の流路が、互いに隣接する第1の流路の間に配置されていると共に当該第1の流路の配列方向に直交する方向に互いに隣接している態様であってもよい。この場合、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減することができると共に、被捕集物を濾過する面積(有効濾過面積)が増加するために圧力損失を低減し易くなる。
【0021】
上記第2態様において、第2の流路の断面は、互いに長さの等しい三つの長辺と、互いに長さの等しい三つの短辺と、を有しており、長辺及び短辺が互いに対向していてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るハニカムフィルタによれば、圧力損失を低減しつつ、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。熱応力を低減することにより、燃焼再生においてハニカムフィルタの熱破損や溶損が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図面である。
【図2】図2は、図1のII−II矢視図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図面である。
【図4】図4は、図3のIV−IV矢視図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図面である。
【図6】図6は、流路内に配置された被覆部を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、流路内に配置された被覆部を模式的に示す図面である。
【図8】図8は、隔壁の壁面の形状を模式的に示す図面である。
【図9】図9は、比較例で用いたフィルタを模式的に示す図面である。
【図10】図10は、圧力損失測定装置を模式的に示す図面である。
【図11】図11は、圧力損失の測定結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<ハニカムフィルタ>
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図面であり、図1(b)は、図1(a)における領域A1の拡大図である。図2は、図1のII−II矢視図である。ハニカムフィルタ100は、図1,2に示すように、互いに略平行に配置された複数の流路110を有する円柱体である。複数の流路110は、ハニカムフィルタ100の中心軸に略平行に伸びる隔壁120により仕切られている。複数の流路110は、複数の流路(第1の流路)110aと、流路110aに隣接する複数の流路(第2の流路)110bとを有している。流路110a及び流路110bは、ハニカムフィルタ100の両端面に略垂直に伸びている。
【0026】
流路110のうちの一部を構成する流路110aの一端は、ハニカムフィルタ100の一端面100aにおいて封口部130により封口されており、流路110aの他端は、ハニカムフィルタ100の他端面100bにおいて開口している。一方、複数の流路110のうちの残部を構成する流路110bの一端は、一端面100aにおいて開口しており、流路110bの他端は、他端面100bにおいて封口部130により封口されている。ハニカムフィルタ100において、例えば、流路110bにおける一端面100a側の端部はガス流入口として開口しており、流路110aにおける他端面100b側の端部はガス流出口として開口している。
【0027】
流路110a及び流路110bの軸方向(長手方向)に略垂直な断面は、六角形状である。流路110aの断面は、被捕集物を含む流体がガス流入側の流路からガス流出側の流路へ均等に流れ易くなることにより被捕集物の堆積時の圧力損失を低減し易くなる観点から、当該断面を形成する辺140の長さが互いに略等しい正六角形状が好ましいが、扁平六角形状であってもよい。流路110bの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路110bの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに略等しい。流路110bの断面は、当該断面を形成する辺150として、互いに長さの略等しい二つ(一対)の長辺(第1の辺)150aと、互いに長さの略等しい四つ(二対)の短辺(第2の辺)150bと、を有している。短辺150bは、長辺150aの両側にそれぞれ配置されている。長辺150a同士は、互いに略平行に対向しており、短辺150b同士は、互いに略平行に対向している。長辺150aの長さは、短辺150bの長さよりも長く調整されている。
【0028】
隔壁120は、流路110a及び流路110bを仕切る部分として隔壁120aを有している。すなわち、流路110a及び流路110bは、隔壁120aを介して互いに隣接している。隣接する流路110aの間に一つの流路110bが配置されることにより、流路110aは、流路110aの配列方向(辺140に略直交する方向)において流路110bと交互に配置されている。
【0029】
流路110aの辺140のそれぞれは、複数の流路110bのいずれか一つの流路の長辺150aと略平行に対向している。すなわち、流路110aを形成する壁面のそれぞれは、流路110a及び流路110bの間に位置する隔壁120aにおいて、流路110bを形成する一壁面と略平行に対向している。また、流路110は、1つの流路110aと、当該流路110aを囲む6つの流路110bとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路110aの辺140の全てが流路110bの長辺150aと対向している。ハニカムフィルタ100では、被捕集物の捕集効率を更に向上させる観点から、流路110aの辺140の少なくとも一つの長さが、対向する長辺150aの長さと略等しいことが好ましく、辺140のそれぞれの長さが、対向する長辺150aの長さと略等しいことがより好ましい。
【0030】
隔壁120は、互いに隣接する流路110b同士を仕切る部分として隔壁120bを有している。すなわち、流路110aを囲む流路110b同士は、隔壁120bを介して互いに隣接している。
【0031】
流路110bの短辺150bのそれぞれは、隣接する流路110bの短辺150bと略平行に対向している。すなわち、流路110bを形成する壁面は、隣接する流路110bの間に位置する隔壁120bにおいて互いに略平行に対向している。ハニカムフィルタ100では、被捕集物の捕集効率を更に向上させる観点から、隣接する流路110bの間において、流路110bの短辺150bの少なくとも一つの長さが、対向する短辺150bの長さと略等しいことが好ましく、短辺150bのそれぞれの長さが、対向する短辺150bの長さと略等しいことがより好ましい。
【0032】
流路110a,110bの長手方向におけるハニカムフィルタ100の長さは、例えば50〜300mmである。ハニカムフィルタ100の外径は、例えば50〜250mmである。流路110a,110bの密度(セル密度)は、例えば50〜400cpsi(cell per square inch)である。なお、「cpsi」は、1平方インチ当たりの流路(セル)の数を表す。流路110a,110bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ100の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路110bの合計面積は、流路110aの合計面積よりも大きいことが好ましい。
【0033】
1つの流路110aと当該流路110aを囲む流路110bとを含む構成単位において、辺140の長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましい。辺140の長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましい。上記構成単位における流路110bの長辺150aの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.4mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。流路110bの長辺150aの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましい。上記構成単位における流路110bの短辺150bの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。流路110bの短辺150bの長さは、圧力損失を更に低減させる観点から、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。
【0034】
上記構成単位における隔壁120の厚み(セル壁厚)は、圧力損失を更に低減する観点から、0.8mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。隔壁120の厚みは、被捕集物の捕集効率及びハニカムフィルタ100の強度を高く維持する観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0035】
上記構成単位における隔壁120の気孔率は、圧力損失を更に低減する観点から、20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましく、40体積%以上が更に好ましい。隔壁120の気孔率は、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましい。隔壁120の気孔率は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0036】
上記構成単位における隔壁120の気孔径(細孔直径)は、圧力損失を更に低減させる観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。隔壁120の気孔径は、すすの捕集性能を向上させる観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。隔壁120の気孔径は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0037】
ハニカムフィルタ100の有効濾過面積は、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減すると共に圧力損失を低減する観点から、1.1m/L以上であり、1.2m/L以上が好ましく、1.3m/L以上がより好ましい。「ハニカムフィルタの有効濾過面積」とは、ハニカムフィルタ1L(1リットル=10−3:例えば10cm×10cm×10cmの立方体)あたりのガス流入側流路の内壁の面積の合計(封口部に接している部分を除く)を意味し、各ガス流入側流路における、ガス流入側流路の断面を形成する辺のそれぞれの長さと、ガス流入側流路の軸方向におけるガス流入側流路の長さとの積の合計をSとしたときに、ハニカムフィルタ1リットルあたりに含まれる全てのガス流入側流路における上記Sの総和を意味する。例えば、ハニカムフィルタ100における積の合計Sは、流路110bの長辺150aの長さと流路110bの長手方向の長さとの積、及び、流路110bの短辺150bの長さと流路110bの長手方向の長さとの積の合計を意味する。なお、有効濾過面積の上限値は、例えば2.0m/Lである。
【0038】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るハニカムフィルタを模式的に示す図面であり、図3(b)は、図3(a)における領域A2の拡大図である。図4は、図3のIV−IV矢視図である。ハニカムフィルタ200は、図3,4に示すように、互いに略平行に配置された複数の流路210を有する円柱体である。複数の流路210は、ハニカムフィルタ200の中心軸に略平行に伸びる隔壁220により仕切られている。複数の流路210は、複数の流路(第1の流路)210aと、流路210aに隣接する複数の流路(第2の流路)210bとを有している。流路210a及び流路210bは、ハニカムフィルタ200の両端面に略垂直に伸びている。
【0039】
流路210のうちの一部を形成する流路210aの一端は、ハニカムフィルタ200の一端面200aにおいて封口部230により封口されており、流路210aの他端は、ハニカムフィルタ200の他端面200bにおいて開口している。一方、複数の流路210のうちの残部を形成する流路210bの一端は、一端面200aにおいて開口しており、流路210bの他端は、他端面200bにおいて封口部230により封口されている。ハニカムフィルタ200において、例えば、流路210bにおける一端面200a側の端部はガス流入口として開口しており、流路210aにおける他端面200b側の端部はガス流出口として開口している。
【0040】
流路210a及び流路210bの軸方向(長手方向)に略垂直な断面は、六角形状である。流路210aの断面は、被捕集物を含む流体がガス流入側の流路からガス流出側の流路へ均等に流れ易くなることにより被捕集物の堆積時の圧力損失を低減し易くなる観点から、当該断面を形成する辺240の長さが互いに略等しい正六角形状が好ましいが、扁平六角形状であってもよい。流路210bの断面は、例えば扁平六角形状であるが、正六角形状であってもよい。流路210bの断面において互いに対向する辺の長さは、互いに異なっている。流路210bの断面は、当該断面を形成する辺250として、互いに長さの略等しい三つの長辺(第1の辺)250aと、互いに長さの略等しい三つの短辺(第2の辺)250bと、を有している。長辺250a及び短辺250bは、互いに略平行に対向しており、短辺250bは、長辺250aの両側にそれぞれ配置されている。長辺250aの長さは、短辺250bの長さよりも長く調整されている。
【0041】
隔壁220は、流路210a及び流路210bを仕切る部分として隔壁220aを有している。すなわち、流路210a及び流路210bは、隔壁220aを介して互いに隣接している。隣接する流路210aの間には、当該流路210aの配列方向に略直交する方向に隣接する二つの流路210bが配置されており、当該隣接する二つの流路210bは、隣接する流路210aの断面の中心同士を結ぶ線を挟んで対称に配置されている。
【0042】
流路210aの辺240のそれぞれは、複数の流路210bのいずれか一つの流路の長辺250aと略平行に対向している。すなわち、流路210aを形成する壁面のそれぞれは、流路210a及び流路210bの間に位置する隔壁220aにおいて、流路210bを形成する一壁面と略平行に対向している。また、流路210は、1つの流路210aと、当該流路210aを囲む6つの流路210bとを含む構成単位を有しており、当該構成単位において、流路210aの辺240の全てが流路210bの長辺250aと対向している。流路210aの断面の各頂点は、隣接する流路210aの頂点と流路210aの配列方向に対向している。ハニカムフィルタ200では、被捕集物の捕集効率を更に向上させる観点から、流路210aの辺240の少なくとも一つの長さが、対向する長辺250aの長さと略等しいことが好ましく、辺240のそれぞれの長さが、対向する長辺250aの長さと略等しいことが好ましい。
【0043】
隔壁220は、互いに隣接する流路210b同士を仕切る部分として隔壁220bを有している。すなわち、流路210aを囲む流路210b同士は、隔壁220bを介して互いに隣接している。
【0044】
流路210bの短辺250bのそれぞれは、隣接する流路210bの短辺250bと略平行に対向している。すなわち、流路210bを形成する壁面は、隣接する流路210bの間に位置する隔壁220bにおいて互いに略平行に対向している。また、1つの流路210bは、3つの流路210aに囲まれている。ハニカムフィルタ200では、被捕集物の捕集効率を更に向上させる観点から、隣接する流路210bの間において、流路210bの短辺250bの少なくとも一つの長さが、対向する短辺250bの長さと略等しいことが好ましく、短辺250bのそれぞれの長さが、対向する短辺250bの長さと略等しいことがより好ましい。
【0045】
流路210a,210bの長手方向におけるハニカムフィルタ200の長さは、例えば50〜300mmである。ハニカムフィルタ200の外径は、例えば50〜250mmである。流路210a,210bの密度(セル密度)は、例えば50〜400cpsiである。流路210a,210bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ200の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路210bの合計面積は、流路210aの合計面積よりも大きいことが好ましい。
【0046】
1つの流路210aと当該流路210aを囲む流路210bとを含む構成単位において、辺240の長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましい。辺240の長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましい。上記構成単位における流路210bの長辺250aの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.4mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましい。流路210bの長辺250aの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、2.0mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましい。上記構成単位における流路210bの短辺250bの長さは、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。流路210bの短辺250bの長さは、圧力損失を更に低減させる観点から、2.0mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。
【0047】
上記構成単位における隔壁220の厚み(セル壁厚)は、圧力損失を更に低減する観点から、0.8mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。隔壁220の厚みは、被捕集物の捕集効率及びハニカムフィルタ200の強度を高く維持する観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0048】
上記構成単位における隔壁220の気孔率は、圧力損失を更に低減する観点から、20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましく、40体積%以上が更に好ましい。隔壁220の気孔率は、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を更に低減する観点から、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましい。隔壁220の気孔率は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0049】
上記構成単位における隔壁220の気孔径(細孔直径)は、圧力損失を更に低減させる観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。隔壁220の気孔径は、すすの捕集性能を向上させる観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。隔壁220の気孔径は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0050】
ハニカムフィルタ200の有効濾過面積は、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減すると共に圧力損失を低減する観点から、1.1m/L以上であり、1.2m/L以上が好ましく、1.3m/L以上がより好ましい。なお、有効濾過面積の上限値は、例えば2.0m/Lである。
【0051】
上記ハニカムフィルタ100,200において隔壁は、多孔質であり、例えば多孔質セラミックス(多孔質セラミックス焼結体)を含んでいる。隔壁は、流体(例えば、すす等の微粒子を含む排ガス)が透過できるような構造を有している。具体的には、流体が通過し得る多数の連通孔(流通経路)が隔壁内に形成されている。
【0052】
隔壁は、チタン酸アルミニウムを含むことが好ましく、マグネシウムやケイ素を更に含んでいてもよい。隔壁は、例えば、主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる多孔性のセラミックスから形成されている。「主にチタン酸アルミニウム系結晶からなる」とは、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を構成する主結晶相がチタン酸アルミニウム系結晶相であることを意味し、チタン酸アルミニウム系結晶相は、例えば、チタン酸アルミニウム結晶相、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶相等であってもよい。
【0053】
隔壁がマグネシウムを含有する場合、隔壁の組成式は、例えばAl2(1−x)MgTi(1+x)であり、xの値は、0.03以上が好ましく、0.03〜0.20がより好ましく、0.03〜0.18が更に好ましい。隔壁は、原料由来の微量成分又は製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0054】
隔壁がケイ素を含有する場合、隔壁は、ケイ素源粉末由来のガラス相を含んでいてもよい。ガラス相は、SiOが主要成分である非晶質相を指す。この場合、ガラス相の含有量は、4質量%以下であることが好ましい。ガラス相の含有量が4質量%以下であることにより、パティキュレートフィルタ等のセラミックスフィルタに要求される細孔特性を充足するチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体が得られ易くなる。ガラス相の含有量は、2質量%以上であることが好ましい。
【0055】
隔壁は、チタン酸アルミニウム系結晶相やガラス相以外の相(結晶相)を含んでいてもよい。このようなチタン酸アルミニウム系結晶相以外の相としては、チタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体の作製に用いる原料由来の相等を挙げることができる。原料由来の相とは、より具体的には、ハニカムフィルタの製造に際してチタン酸アルミニウム系結晶相を形成することなく残存したアルミニウム源粉末、チタン源粉末及び/又はマグネシウム源粉末由来の相である。原料由来の相としては、アルミナ、チタニア等の相が挙げられる。隔壁を形成する結晶相は、X線回折スペクトルにより確認することができる。
【0056】
上記ハニカムフィルタは、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれるすす等の被捕集物を捕集するパティキュレートフィルタとして適する。例えば、ハニカムフィルタ100では、図2に示すように、一端面100aから流路110bに供給されたガスGが隔壁120内の連通孔を通過して隣の流路110aに到達し、他端面100bから排出される。このとき、ガスG中の被捕集物が隔壁120の表面や連通孔内に捕集されてガスGから除去されることにより、ハニカムフィルタ100はフィルタとして機能する。ハニカムフィルタ200についても、同様にフィルタとして機能する。
【0057】
従来のハニカムフィルタでは、隔壁の表面や隔壁の内部(連通孔内)に被捕集物が一旦堆積すると、被捕集物が堆積した流路と同一の流路に、新たな被捕集物が堆積し易いと考えられる。この場合、被捕集物が大量に堆積した流路では、ハニカムフィルタを燃焼再生させたときに被捕集物が短時間に燃焼して発熱量が大きくなり易いため、ハニカムフィルタに過度の熱応力が負荷されてしまう。
【0058】
一方、ハニカムフィルタ100,200では、以下で述べるように、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。例えば、ハニカムフィルタ100では、被捕集物の燃焼速度が、被捕集物の燃焼により発生する二酸化炭素ガス等のガス流出側の流路110aへの拡散し易さに依存する傾向があるものと推測される。すなわち、ハニカムフィルタ100では、互いに隣接する流路110b間の圧力差に比して、互いに隣接する流路110a及び流路110b間の圧力差が大きくなる傾向がある。これにより、一の流路110bにおいて被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、隣接する他の流路110bに比して、隣接する流路110aへ流れ易い。
【0059】
そして、ハニカムフィルタ100では、流路110bの軸方向に垂直な流路110bの断面において、長辺150aに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、流路110bの断面と長辺150aを共有する断面を有する隔壁120a内を移動して流路110aへ達する傾向があり(図1(b)中の経路R11)、短辺150bに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、流路110bの断面と短辺150bを共有する断面を有する隔壁120b内を当該隔壁に沿って移動して流路110aへ達する傾向がある(図1(b)中の経路R12)。この場合、隔壁120aを通過する経路R11が、隔壁120bを通過する経路R12に比して短いことから、長辺150aに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の方が、短辺150bに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等よりもガス流出側の流路110aへ拡散し易い。
【0060】
このような流路間の圧力差及び隔壁内の流通経路の長さの差に起因して、ハニカムフィルタ100では、長辺150aに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の方が、短辺150bに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等よりも流路110aへ拡散し易い。したがって、長辺150aに堆積した被捕集物が、短辺150bに堆積した被捕集物に比して燃焼し易くなり、長辺150aに堆積した被捕集物と短辺150bに堆積した被捕集物とで燃焼速度が異なるものとなる。
【0061】
また、ハニカムフィルタ100では、隣接する流路110b間の圧力差に比して流路110a及び流路110b間の圧力差が大きくなる傾向があることから、流路110bの断面において短辺150bに比して長辺150aに支燃性ガスが供給され易い。そのため、長辺150aに堆積した被捕集物が、短辺150bに堆積した被捕集物に比して燃焼し易くなり、長辺150aに堆積した被捕集物と短辺150bに堆積した被捕集物とで燃焼速度が更に異なるものとなり易い。
【0062】
以上のように、ハニカムフィルタ100では、被捕集物が堆積した部位(長辺150a及び短辺150b)に応じて被捕集物の燃焼速度が異なるものとなることから、燃焼再生に際し被捕集物の燃焼が多くの部位において急激に生じてハニカムフィルタ100内の温度が急激に変化することが抑制されている。そして、このような現象は、ハニカムフィルタ100の有効濾過面積がハニカムフィルタ1リットルあたり1.1m以上であることにより顕著に生じているものと推測される。これにより、燃焼再生においてハニカムフィルタ100に生じる熱応力を低減することができる。なお、ハニカムフィルタ100の有効濾過面積がハニカムフィルタ1リットルあたり1.1m未満であると、隔壁120aを通過する経路R11の長さと隔壁120bを通過する経路R12の長さとが充分に異なるものとはならず、熱応力を充分に低減し難くなる。
【0063】
また、ハニカムフィルタ100では、ハニカムフィルタ100の有効濾過面積がハニカムフィルタ1リットルあたり1.1m以上であることにより、被捕集物を含む流体をハニカムフィルタの内部に供給した場合における圧力損失を低減しつつ、燃焼再生においてハニカムフィルタに生じる熱応力を低減することができる。濾過面積が充分に確保されると共に、被捕集物が局所的に堆積して流路を塞いでしまうことが抑制されていることに起因して、圧力損失が低減されているものと推測される。なお、ハニカムフィルタ100の有効濾過面積がハニカムフィルタ1リットルあたり1.1m未満であると、圧力損失を充分に低減し難くなる。
【0064】
上記のハニカムフィルタ100では、ハニカムフィルタ100内に大量に被捕集物が堆積している状態で被捕集物を燃焼再生させた場合であっても、その際に発生する熱に起因する熱応力によってハニカムフィルタ100が損傷することを抑制することができる。そのため、ハニカムフィルタ100を頻繁に燃焼再生させる必要がないことから、被捕集物が大量に堆積するまで長時間連続してフィルタを使用することができる。したがって、メンテナンス性を向上させると共に、被捕集物の捕集効率を向上させることもできる。
【0065】
なお、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0066】
例えば、ハニカムフィルタ100において流路110a及び流路110bの配置構成や断面構成は上記に限られるものではない。上記ハニカムフィルタ100では、辺140と長辺150aとが対向すると共に、隣接する流路110bにおいて短辺150b同士が互いに対向しているが、辺140と短辺150bとが対向すると共に、隣接する流路110bにおいて長辺150a同士が互いに対向していてもよい。また、流路110a,110bの数は図1,2に示すものに限定されない。
【0067】
さらに、互いに対向する辺140及び長辺150aの長さが互いに異なっていてもよく、互いに対向する短辺150bの長さが互いに異なっていてもよい。互いに対向する辺140及び長辺150aが略平行に対向しておらず、互いに交差する方向にそれぞれ伸びていてもよい。互いに対向する短辺150bが略平行に対向しておらず、互いに交差する方向にそれぞれ伸びていてもよい。流路110bの断面が扁平六角形状である場合、当該流路110bの断面において、互いに対向する辺の長さが互いに異なっていてもよい。
【0068】
ハニカムフィルタ200において流路210a及び流路210bの配置構成や断面構成は上記に限られるものではない。例えば、上記ハニカムフィルタ200では、辺240と長辺250aとが対向すると共に、隣接する流路210bにおいて短辺250b同士が互いに対向しているが、辺240と短辺250bとが対向すると共に、隣接する流路210bにおいて長辺250a同士が互いに対向していてもよい。また、流路210a,210bの数は図3,4に示すものに限定されない。
【0069】
さらに、互いに対向する辺240及び長辺250aの長さが互いに異なっていてもよく、互いに対向する短辺250bの長さが互いに異なっていてもよい。互いに対向する辺240及び長辺250aが略平行に対向しておらず、互いに交差する方向にそれぞれ伸びていてもよい。互いに対向する短辺250bが略平行に対向しておらず、互いに交差する方向にそれぞれ伸びていてもよい。流路210bの断面が扁平六角形状である場合、当該流路210bの断面において、互いに対向する辺の長さが互いに略等しくてもよい。
【0070】
また、流路の軸方向(長手方向)に略垂直な当該流路の断面は六角形状であることに限定されず、矩形状、八角形状、三角形状、円形状、楕円形状等であってもよい。例えば、図5に示すハニカムフィルタ300は、互いに略平行に配置された複数の流路310を有している。流路310は、複数の流路(第1の流路)310aと、流路310aと隣接する複数の流路(第2の流路)310bとを有しており、複数の流路310bにおける一の流路310bと他の流路310bとが互いに隣接している。一つの流路310bは、互いに隣接する流路310aの間に配置されている。流路310aにおけるハニカムフィルタ300の一端側の端部、及び、流路310bにおけるハニカムフィルタ300の他端側の端部は、封口部330によりそれぞれ封口されている。ハニカムフィルタ300において、例えば、流路310bにおける一端側の端部はガス流入口として開口しており、流路310aにおける他端側の端部はガス流出口として開口している。流路310は、ハニカムフィルタ300の中心軸に略平行に伸びる隔壁320により仕切られている。隔壁320は、流路310a及び流路310bを仕切る部分として隔壁320aを有しており、互いに隣接する流路310b同士を仕切る部分として隔壁320bを有している。
【0071】
流路310aの軸方向に略垂直な断面は正方形状であり、流路310bの軸方向に略垂直な断面は正八角形状である。流路310bの軸方向に垂直な流路310bの断面は、第1の辺350aと、辺350aの両側にそれぞれ配置された第2の辺350bとを有している。流路310bの断面において、辺350a同士が互いに対向していると共に辺350b同士が互いに対向しており、互いに対向する辺の長さが互いに等しい。流路310aの軸方向に垂直な流路310aの断面を形成する辺340のそれぞれは、複数の流路310bのいずれか一つの流路の辺350aと対向している。流路310bの辺350bのそれぞれは、隣接する流路310bの辺350bと対向している。ハニカムフィルタ300の有効濾過面積(流路310の内壁の面積の合計)は、ハニカムフィルタ1リットルあたり1.1m以上である。また、流路310a,310bの軸方向に略垂直なハニカムフィルタ300の断面において、ガス流入側流路の合計面積はガス流出側流路の合計面積よりも大きいことが好ましく、すなわち、流路310bの合計面積は、流路310aの合計面積よりも大きいことが好ましい。
【0072】
ハニカムフィルタ300では、流路310bの断面において、辺350aに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、流路310bの断面と辺350aを共有する断面を有する隔壁320a内を移動して流路310aへ達する傾向があり(図5中の経路R31)、辺350bに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等は、流路310bの断面と辺350bを共有する断面を有する隔壁320b内を当該隔壁に沿って移動して流路310aへ達する傾向がある(図5中の経路R32)。この場合、隔壁320aを通過する経路R31が隔壁320bを通過する経路R32に比して短いことから、辺350aに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の方が、辺350bに堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等よりもハニカムフィルタ外部へ拡散し易い。したがって、辺350aに堆積した被捕集物が辺350bに堆積した被捕集物に比して燃焼し易くなり、辺350aに堆積した被捕集物と辺350bに堆積した被捕集物とで燃焼速度が異なるものとなる。
【0073】
さらに、上記ハニカムフィルタでは、隔壁の表面の少なくとも一部を覆う被覆部が配置されていてもよい。被覆部は、ガス流入側の流路において隔壁の表面上に配置されていてもよく、ガス流出側の流路において隔壁の表面上に配置されていてもよい。また、被覆部は、隔壁におけるガス流入側の流路同士を仕切る部分、又は、隔壁におけるガス流入側の流路とガス流出側の流路とを仕切る部分の少なくとも一方の表面上に配置されていてもよい。被覆部は、隔壁の一壁面の全てを覆っていてもよい。被覆部は、例えば、隔壁と同様の材料により形成されて多孔質であってもよく、ガスの拡散を遮蔽する材料により形成されていてもよい。被覆部は、例えば、ハニカムフィルタの中心軸や流路に略平行に連続的に又は断続的に伸びている。被覆部は、後述する成形工程において予め流路内に形成されてもよく、成形工程の後続の工程において流路内に形成されてもよい。
【0074】
ハニカムフィルタ100に配置される被覆部の構成としては、例えば、図6に示す構成が挙げられる。図6において、被覆部160は、ガス流入側の流路110bにおいて隔壁の表面上に配置されている。図6(a),(b)において、被覆部160は、流路110aと流路110bとを仕切る隔壁120aの表面に配置されている。図6(c),(d)において、被覆部160は、流路110b同士を仕切る隔壁120bの表面に配置されている。図6(a),(c)では、対向する隔壁の表面上にそれぞれ被覆部160が配置されており、被覆部160における長手方向に略垂直な断面は矩形状である。図6(b)における被覆部160は、一対の対向する隔壁120a間において、一方の隔壁120aから他方の隔壁120aに伸びている。図6(d)における被覆部160は、対向する隔壁120b間のそれぞれにおいて、一方の隔壁120bから他方の隔壁120bに伸びており、被覆部160同士は流路110bの略中央において互いに接続している。
【0075】
ハニカムフィルタ300に配置される被覆部の構成としては、例えば、図7に示す構成が挙げられる。図7において、被覆部360は、ガス流入側の流路310bにおいて隔壁の表面上に配置されている。図7(a),(b)において、被覆部360は、流路310b同士を仕切る隔壁320bの表面に配置されている。図7(c),(d)において、被覆部360は、流路310aと流路310bとを仕切る隔壁320aの表面に配置されている。図7(a),(c)では、対向する隔壁の表面上にそれぞれ被覆部360が配置されており、被覆部360における長手方向に略垂直な断面は矩形状である。図7(b),(d)における被覆部360は、対向する隔壁間のそれぞれにおいて、一方の隔壁から他方の隔壁に伸びており、被覆部360同士は流路310bの略中央において互いに接続している。
【0076】
被覆部を隔壁の表面上に配置した場合、以下の現象が生じるものと推測される。例えば、ハニカムフィルタ100における図6(a)の構成では、被覆部160に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の拡散経路が、当該被覆部160に被覆された隔壁120aの壁面に堆積した被捕集物の燃焼により発生した二酸化炭素ガス等の拡散経路よりも、被覆部160内の拡散経路が加わることにより長くなる傾向がある。これにより、被覆部160に堆積した被捕集物の燃焼速度が、隔壁120aの壁面に堆積した被捕集物の燃焼速度とは異なるものとなり、被捕集物の燃焼速度を流路110b内の堆積箇所に応じて異なるものに調整し易くなる。そのため、燃焼再生においてハニカムフィルタ100に生じる熱応力を低減し易くなる。
【0077】
ハニカムフィルタ100における図6(c)の構成では、被覆部160に堆積した被捕集物の燃焼速度が、隔壁120bの壁面に堆積した被捕集物の燃焼速度とは異なるものとなり、被捕集物の燃焼速度を流路110b内の堆積箇所に応じて異なるものに調整し易くなる。そのため、燃焼再生においてハニカムフィルタ100に生じる熱応力を低減し易くなる。
【0078】
また、隔壁の壁面(表面)は平坦面であることに限られず、凹凸面であってもよい。この場合、隔壁の有効濾過面積を増加させることが可能であり、圧力損失を更に低減することができる。例えば、図8に示すように、隔壁400は、隔壁本体400aと、隔壁本体400aの表面に形成された複数の突起部400bとを有している。突起部400bは、例えば、錐状(円錐状や四角錐状等)(図8(a))、球状(図8(b))又は波状(図8(c))である。隔壁本体400a及び突起部400bは、別体として形成されていてもよく、一体として形成されていてもよい。凹凸面を有する隔壁は、後述する成形工程において予め形成されてもよく、成形工程の後続の工程において形成されてもよい。
【0079】
<ハニカムフィルタの製造方法>
ハニカムフィルタの製造方法は、(a)セラミックス粉末と孔形成剤を含む原料混合物を調製する原料調製工程と、(b)原料混合物を成形して、流路を有する成形体を得る成形工程と、(c)成形体を焼成する焼成工程と、を備え、(d)成形工程と焼成工程の間、又は、焼成工程の後に、各流路の一端を封口する封口工程を更に備える。以下、各工程について説明する。
【0080】
(工程(a):原料調製工程)
工程(a)では、セラミックス粉末と孔形成剤とを混合した後に混練して原料混合物を調製する。原料混合物には、セラミックス粉末と孔形成剤の他、種々の添加剤が混合される。添加剤は、例えばバインダ、可塑剤、分散剤、溶媒である。
【0081】
以下、チタン酸アルミニウムを含む隔壁を備えるハニカムフィルタの製造方法を例として説明する。セラミックス粉末は、アルミニウム源粉末及びチタン源粉末を少なくとも含み、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末等を更に含んでいてもよい。
【0082】
(アルミニウム源粉末)
アルミニウム源粉末は、隔壁を構成するアルミニウム成分となる化合物の粉末である。アルミニウム源粉末としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型等が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アルミナの結晶型は、α型が好ましい。
【0083】
アルミニウム源粉末は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム等が挙げられる。
【0084】
アルミニウム塩は、無機酸とのアルミニウム無機塩であってもよく、有機酸とのアルミニウム有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩の具体例としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0085】
アルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシド等が挙げられる。
【0086】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型等が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド等のような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物が挙げられる。
【0087】
アルミニウム源粉末は、1種又は2種以上のいずれでもよい。アルミニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0088】
アルミニウム源粉末は、好ましくはアルミナ粉末であり、より好ましくはα型のアルミナ粉末である。
【0089】
アルミニウム源粉末において、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(中心粒径、D50)は、好ましくは20〜60μmである。アルミニウム源粉末のD50をこの範囲内に調整することにより、優れた多孔性を示すチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体が得られると共に、焼成収縮率をより効果的に低減させることができる。アルミニウム源粉末のD50は、より好ましくは25〜60μmである。
【0090】
(チタン源粉末)
チタン源粉末は、隔壁を構成するチタン成分となる化合物の粉末であり、例えば酸化チタンの粉末である。酸化チタンは、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)であり、好ましくは酸化チタン(IV)である。酸化チタン(IV)の結晶型は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型である。酸化チタンは不定形(アモルファス)であってもよい。酸化チタンは、より好ましくはアナターゼ型やルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0091】
チタン源粉末は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよく、例えば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属である。
【0092】
チタニウム塩は、例えば三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)である。チタニウムアルコキシドは、例えばチタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、及び、これらのキレート化物である。
【0093】
チタン源粉末は、1種又は2種以上のいずれでもよい。チタン源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0094】
チタン源粉末は、好ましくは酸化チタン粉末であり、より好ましくは酸化チタン(IV)粉末である。
【0095】
チタン源粉末において、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)は、好ましくは0.1〜25μmである。チタン源粉末のD50は、充分に低い焼成収縮率を達成するため、より好ましくは1〜20μmである。
【0096】
チタン源粉末は、バイモーダルな粒径分布を示すことがある。このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタニウム源粉末を用いる場合、レーザ回折法により測定される粒径が大きい方のピークを形成する粒子の粒径は、好ましくは20〜50μmである。
【0097】
レーザ回折法により測定されるチタン源粉末のモード径は、通常0.1〜60μmである。
【0098】
原料混合物中におけるAl23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタン源粉末のモル比(アルミニウム源粉末:チタン源粉末)は、好ましくは35:65〜45:55であり、より好ましくは40:60〜45:55である。このような範囲内で、チタン源粉末をアルミニウム源粉末に対して過剰に用いることにより、原料混合物の成形体の焼成収縮率をより効果的に低減させることが可能となる。
【0099】
(マグネシウム源粉末)
原料混合物は、マグネシウム源粉末を更に含有していてもよい。原料混合物がマグネシウム源粉末を含む場合、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶を含む焼成体である。マグネシウム源粉末は、マグネシア(酸化マグネシウム)の粉末のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末である。このような化合物は、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムである。
【0100】
マグネシウム塩は、例えば塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロりん酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムである。
【0101】
マグネシウムアルコキシドは、例えばマグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等である。
【0102】
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることができる。このような化合物は、例えば、マグネシアスピネル(MgAl24)である。
【0103】
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いる場合、アルミニウム源粉末のAl23(アルミナ)換算量、及び、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物粉末に含まれるAl成分のAl23(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源粉末のTiO2(チタニア)換算量とのモル比が、原料混合物中において上記範囲内となるように調整される。
【0104】
マグネシウム源粉末は、1種又は2種以上のいずれでもよい。マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0105】
マグネシウム源粉末において、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)は、好ましくは0.5〜30μmである。マグネシウム源粉末のD50は、成形体の焼成収縮率を低減する観点から、より好ましくは3〜20μmである。
【0106】
原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、好ましくは0.03〜0.15であり、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源粉末の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性がより向上された、大きい気孔径及び気孔率を有するチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を比較的容易に得ることができる。
【0107】
(ケイ素源粉末)
原料混合物は、ケイ素源粉末を更に含有していてもよい。ケイ素源粉末は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体に含まれる化合物の粉末であり、ケイ素源粉末の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体を得ることが可能となる。ケイ素源粉末は、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素等の酸化ケイ素(シリカ)の粉末である。
【0108】
ケイ素源粉末は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物は、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットであり、好ましくは長石、ガラスフリットであり、工業的に入手が容易であると共に組成が安定している点で、より好ましくはガラスフリットである。ガラスフリットは、ガラスを粉砕して得られるフレーク又は粉末状のガラスをいう。ケイ素源粉末として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることも好ましい。
【0109】
ガラスフリットを用いる場合、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、ガラスフリットの屈伏点は、600℃以上であることが好ましい。本明細書において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0110】
ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50質量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al23〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0111】
ケイ素源粉末は、1種又は2種以上のいずれでもよい。ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0112】
ケイ素源粉末において、レーザ回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(D50)は、好ましくは0.5〜30μmである。ケイ素源粉末のD50は、成形体の充填率をより向上させて機械的強度が更に高い焼成体を得るため、より好ましくは1〜20μmである。
【0113】
原料混合物がケイ素源粉末を含む場合、原料混合物中におけるケイ素源粉末の含有量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量100質量部に対して、SiO(シリカ)換算で、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.1〜5質量部である。
【0114】
ハニカムフィルタの製造では、上記マグネシアスピネル(MgAl24)等の複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素及びマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料粉末として用いることができる。この場合、化合物は、それぞれの金属源化合物を混合した原料と同じであると考えることができる。このような考えに基づき、原料混合物中におけるアルミニウム源、チタニウム源、マグネシウム源及びケイ素源の含有量が上記範囲内に調整される。
【0115】
原料混合物にはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムが含まれていてもよい。例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタニウム源、アルミニウム源及びマグネシウム源を兼ね備えた原料混合物に相当する。
【0116】
チタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムは、本製造方法により得られるハニカムフィルタから調製してもよい。例えば、本製造方法により得られたハニカムフィルタが破損した場合、破損したハニカムフィルタやその破片等を粉砕して使用することができる。粉砕して得られる粉末をチタン酸アルミニウムマグネシウム粉末とすることができる。
【0117】
(孔形成剤)
孔形成剤としては、工程(c)において成形体を焼成する焼成温度以下で消失する素材によって形成されたものを使用することができる。脱脂や焼成において、孔形成剤を含有する成形体が加熱されると、孔形成剤は燃焼等によって消滅する。これにより、孔形成剤が存在していた箇所に空間ができると共に、この空間同士の間に位置するセラミックス粉末が焼成の際に収縮することにより、流体を流すことができる連通孔をハニカムフィルタの隔壁内に形成することができる。
【0118】
ハニカムフィルタの製造方法では、所定の連通孔を形成するために、孔形成剤を使用することができる。孔形成剤は、例えば、トウモロコシ澱粉、大麦澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉、米澱粉、エンドウ澱粉、サンゴヤシ澱粉、カンナ澱粉、ポテト澱粉(馬鈴薯デンプン)である。孔形成剤の平均粒径は、好ましくは5〜25μmである。
【0119】
原料混合物における孔形成剤の含有量は、セラミックス粉末100質量部に対して、好ましくは1〜25質量部である。孔形成剤の含有量がこの範囲であると、初期圧力損失を低く抑えつつ被捕集物の漏れの発生を防ぐことが容易となる。孔形成剤の含有量がセラミックス粉末100質量部に対して1質量部より少ないと、隔壁に形成される気孔が少なくなるため圧力損失が大きくなる傾向がある。一方、孔形成剤の含有量がセラミックス粉末100質量部に対して25質量部より多いと、隔壁に形成される気孔の割合が大きくなりすぎ、被捕集物の漏れが発生する傾向がある。
【0120】
ハニカムフィルタの製造では、原料混合物に、上述したセラミックス粉末と孔形成剤に加えて、バインダ、可塑剤、分散剤、溶媒等の有機成分(添加剤)が配合されていてもよい。
【0121】
バインダは、例えば、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックスである。原料混合物におけるバインダの含有量は、アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。
【0122】
可塑剤は、例えばグリセリン等のアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。原料混合物における可塑剤の含有量は、アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常0〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0123】
分散剤は、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤である。原料混合物における分散剤の含有量は、アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常0〜20質量部であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0124】
溶媒は、通常水であり、不純物が少ない点で、好ましくはイオン交換水である。原料混合物における溶媒の含有量は、アルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常10〜100質量部、好ましくは20〜80質量部である。
【0125】
(工程(b):成形工程)
工程(b)では、複数の流路が形成されたハニカム構造体をセラミックス成形体として得る。工程(b)では、例えば、一軸押出機により原料混合物を混練しながらダイから押し出す、いわゆる押出成形法を採用することができる。
【0126】
原料混合物に添加剤として可塑剤を添加した場合、可塑剤の多くは、ダイから原料混合物を押し出す際に、原料混合物とダイとの間の摩擦を低減する潤滑剤としても機能させることができる。例えば、上述した各可塑剤であれば、潤滑剤として機能させることができる。
【0127】
(工程(c):焼成工程)
工程(c)では、成形体の焼成前に、成形体中(原料混合物中)に含まれる孔形成剤等を除去するための脱脂(仮焼)が行われてもよい。脱脂は、酸素濃度0.1%以下の雰囲気下で行われる。
【0128】
本明細書において酸素濃度の単位として用いられる「%」は、「体積%」を意味する。脱脂工程(昇温時)の酸素濃度を0.1%以下の濃度に管理することにより、有機物の発熱が抑えられ、脱脂後の割れを抑制することができる。脱脂においては、脱脂が酸素濃度0.1%以下の雰囲気中で行われることにより、孔形成剤等の有機成分の一部が除去され、残部が炭化されてセラミック成形体中に残存することが好ましい。このように、セラミックス成形体中に微量のカーボンが残存することで、成形体の強度が向上し、セラミックス成形体の焼成工程への仕込みが容易になる。このような雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気や、一酸化炭素ガス、水素ガス等のような還元性ガス雰囲気、真空中等が挙げられる。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよく、炭と一緒に蒸し込んで酸素濃度を低減させてもよい。
【0129】
脱脂の最高温度は、好ましくは700〜1100℃であり、より好ましくは800〜1000℃である。脱脂の最高温度を従来の600〜700℃程度から、700〜1100℃に上昇させることで、粒成長によって、脱脂後のセラミックス成形体の強度が向上するため、セラミックス成形体の焼成への仕込みが容易になる。また、脱脂は、セラミックス成形体の割れを防止するために、最高温度に到達するまでの昇温速度を極力抑えることが好ましい。
【0130】
脱脂は、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉、ガス燃焼炉等の通常の焼成に用いられるものと同様の炉を用いて行なわれる。脱脂は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、脱脂は静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0131】
脱脂に要する時間は、セラミックス成形体中に含まれる有機成分の一部が消失するのに充分な時間であればよく、好ましくは、セラミックス成形体中に含まれる有機成分の90〜99質量%が消失する時間である。具体的には、原料混合物の量、脱脂に用いる炉の形式、温度条件、雰囲気等により異なるが、最高温度でキープする時間は、通常1分〜10時間であり、好ましくは1〜7時間である。
【0132】
セラミックス成形体は、上記の脱脂後、焼成される。焼成温度は、通常1300℃以上であり、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常1650℃以下であり、好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常1〜500℃/時間である。ケイ素源粉末を用いる場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。これにより、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができる。
【0133】
焼成は、酸素濃度1〜6%の雰囲気下で行われることが好ましい。酸素濃度を6%以下とすることによって脱脂で発生した残存炭化物の燃焼を抑制することができるため、焼成におけるセラミックス成形体の割れが生じにくくなる。また、適度な酸素が存在するため、最終的に得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス成形体の有機成分を完全に除去することができる。酸素濃度は、得られるチタン酸アルミニウム系セラミックス焼成体中に有機成分に由来する炭化物(すす)が残存しないことから、1%以上が好ましい。原料混合物、すなわちアルミニウム源粉末、チタン源粉末、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガス等のような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0134】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉、ガス燃焼炉等の従来の装置を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、焼成は静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0135】
焼成時間は、セラミックス成形体がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、原料の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気等により異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0136】
(工程(d):封口工程)
工程(d)は、工程(b)と工程(c)の間、又は、工程(c)の後に行われる。工程(b)と工程(c)の間に工程(d)を行う場合、工程(b)において得られた未焼成のセラミックス成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後、工程(c)においてセラミックス成形体と共に封口物を焼成することにより、流路の一方の端部を封口する封口部が得られる。工程(c)の後に工程(d)を行う場合、工程(c)において得られたセラミックス成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後、セラミックス成形体と共に封口物を焼成することにより、流路の一方の端部を封口する封口部が得られる。封口物としては、上記原料混合物と同様の混合物を用いることができる。
【0137】
以上の工程によって、ハニカムフィルタを得ることができる。なお、ハニカムフィルタは、工程(b)における成形直後の成形体の形状をほぼ維持した形状を有するが、工程(b)、工程(c)又は工程(d)の後に研削加工等を行って、所望の形状に加工することもできる。
【実施例】
【0138】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0139】
(実施例1)
<原料混合物の調製>
チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al粉末、TiO粉末、MgO粉末)、SiO粉末、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミナとアルミノシリケートガラスとの複合相をもつセラミックス粉末(仕込み時の組成式:41.4Al−49.9TiO−5.4MgO−3.3SiO、式中の数値はモル比を表す。)、造孔剤、有機バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び水(溶媒)を含む原料混合物を調製した。原料混合物中の各成分の含有量は下記の値に調整した。
【0140】
[原料混合物の成分]
Al粉末:37.3質量部
TiO粉末:37.0質量部
MgO粉末:1.9質量部
SiO粉末:3.0質量部
セラミックス粉末:8.8質量部
造孔剤:馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉、12.0質量部
有機バインダ1:メチルセルロース(三星精密化学社製:MC−40H)、5.5質量部
有機バインダ2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三星精密化学社製:PMB−40H)、2.4質量部
【0141】
上記の原料混合物を混練した後に押出成形した。そして、成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後に焼成することにより、図1,2に示す構造を有する円柱状の柱状体(DPF)を作製した。
【0142】
流路(貫通孔)の長手方向における柱状体の長さは153mmであった。柱状体の端面の外径は144mmであった。流路の密度(セル密度)は290cpsiであった。正六角形状の流路の一辺の長さは0.9mmであった。扁平六角形状の流路における長辺の長さは0.9mmであり、短辺の長さは0.6mmであった。流路間の隔壁の厚みは12mil(milli-inch、0.30mm)であった。隔壁の気孔率は45体積%であった。隔壁の気孔径は15μmであった。有効濾過面積(柱状体1Lあたりのガス流入側流路(扁平六角形状の流路)の内壁の面積)は1.30m/Lであった。
【0143】
(比較例1)
実施例1と同様の原料混合物を混練した後に押出成形した。そして、成形体の各流路の一方の端部を封口物で封口した後に焼成することにより、図9に示す構造を有する柱状体(DPF)500を作製した。なお、柱状体500では、流路P1に隣接する流路P2,P3において、流路P2の辺と流路P3の辺とは対向していない。
【0144】
比較例1の柱状体において、各流路(貫通孔)510の断面は正方形状であり、隣接する流路510の端部を交互に封口部530により封口した。流路の長手方向における柱状体の長さは153mmであった。柱状体の端面の外径は144mmであった。セル密度は290cpsiであった。正方形状の流路の一辺の長さは1.1mmであった。流路間の隔壁の厚みは13mil(0.33mm)であった。有効濾過面積は1.07m/Lであった。
【0145】
<圧力損失測定>
(スス堆積時の圧力損失測定)
DPFの圧力損失測定を以下のとおり実施した。図10に、圧力損失測定装置の概略図を示す。圧力損失測定には、スス発生装置(Matter Engineering社製、商品名:REXS)600、及び、大型コンプレッサー装置610を用いた。DPFの一方の端面をスス発生装置600に接続し、DPFとスス発生装置600とを接続する配管にコンプレッサー装置610を接続した。
【0146】
スス発生装置600には、プロパンガスを流量2L/minで供給し、窒素ガスを流量2L/minで供給し、空気を流量1000L/minで供給した。スス発生装置600から発生する“スス”は、プロパンガスを不完全燃焼することによって生成する人工的なススであり、スス発生装置600では、空気流量や酸素濃度等によってススの平均粒子径を制御することができる。測定に際しては、ススの平均粒子径を約90nmに調整した。ススを含む空気の流量はコンプレッサー装置610により200Nm−1に調整した。
【0147】
スス堆積時の圧力損失挙動を把握するため、DPF内部にススを供給しつつDPF前後の差圧(図10中の圧力P1と圧力P2の差圧ΔP)を記録した。実施例1及び比較例1のDPFを用いてスス堆積量の増加に伴う圧力損失を測定した結果を図11(a)に示す。図11(a)に示されるように、実施例1では、比較例1に比して圧力損失の値が小さいことが確認される。また、実施例1では、比較例1に比してスス堆積量の増加に伴う圧力損失の増加量が小さいことが確認される。
【0148】
(スス堆積後の圧力損失測定)
スス堆積量がDPF1リットル当たり8gに到達した時点で、スス発生装置600を停止した。そして、コンプレッサー装置610から排出されるガス流量を200Nm−1から600Nm−1まで増加させつつDPF前後の差圧(図10中の差圧ΔP)を記録した。実施例1及び比較例1のDPFを用いてガス流量の増加に伴う圧力損失を測定した結果を図11(b)に示す。図11(b)に示されるように、実施例1では、比較例1に比して圧力損失の値が小さいことが確認される。また、実施例1では、比較例1に比してガス流量の増加に伴う圧力損失の増加量が小さいことが確認される。
【符号の説明】
【0149】
100,200,300…ハニカムフィルタ、100a,100b,200a,200b…ハニカムフィルタの端部、110a,210a,310a…流路(第1の流路)、110b,210b,310b…流路(第2の流路)、120,220,320…隔壁、140,240,340…流路(第1の流路)の断面を形成する辺、150a,250a,350a…流路(第2の流路)の断面を形成する辺(第1の辺)、150b,250b,350b…流路(第2の流路)の断面を形成する辺(第2の辺)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁により仕切られた互いに平行な複数の流路を有するハニカムフィルタであって、
前記複数の流路が、第1の流路と、当該第1の流路に隣接する複数の第2の流路とを有しており、
前記複数の第2の流路における一の第2の流路と他の第2の流路とが互いに隣接しており、
前記第1の流路における前記ハニカムフィルタの一端側の端部が封口されており、
前記第2の流路における前記ハニカムフィルタの他端側の端部が封口されており、
前記第2の流路の軸方向に垂直な前記第2の流路の断面が、第1の辺と、当該第1の辺の両側にそれぞれ配置された第2の辺とを有しており、
前記第1の流路の軸方向に垂直な前記第1の流路の断面を形成する辺のそれぞれが、前記第2の流路の前記第1の辺と対向しており、
前記第2の流路の前記第2の辺のそれぞれが、隣接する前記第2の流路の前記第2の辺と対向しており、
前記第1の流路が複数配置されており、
各前記第2の流路における、前記第2の流路の前記断面を形成する辺のそれぞれの長さと、前記第2の流路の軸方向における前記第2の流路の長さとの積の合計をSとしたときに、前記ハニカムフィルタ1リットルあたりに含まれる全ての前記第2の流路における前記Sの総和が1.1m以上である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記隔壁がチタン酸アルミニウムを含む、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記第1の流路の前記断面及び前記第2の流路の前記断面が六角形状である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
一つの前記第2の流路が、互いに隣接する前記第1の流路の間に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記第2の流路の前記断面において互いに対向する辺の長さが互いに等しい、請求項4に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記第2の流路の前記断面が、互いに長さの等しい二つの長辺と、互いに長さの等しい四つの短辺と、を有している、請求項5に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
二つの前記第2の流路が、互いに隣接する前記第1の流路の間に配置されていると共に当該第1の流路の配列方向に直交する方向に互いに隣接している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記第2の流路の前記断面が、互いに長さの等しい三つの長辺と、互いに長さの等しい三つの短辺と、を有しており、前記長辺及び前記短辺が互いに対向している、請求項7に記載のハニカムフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−254441(P2012−254441A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100186(P2012−100186)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】