説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】従来よりも簡易であり、貫通孔からの封口材の脱離を抑制できるハニカム構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔70aが形成された柱状体70の貫通孔70aが開いている端面に、複数のマスク部270b及び開口部270aを有するマスク200aを設置し、マスク部270bで一部の貫通孔70aを塞ぐ工程と、端面に設置されたマスク200aにスラリー状の封口材304を塗布する工程と、マスク200aに塗布された封口材304にブレード300を押し当て、ブレード300をマスク200aの表面に略平行に移動させる工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるカーボン粒子等の微細粒子を捕集するためのセラミックスフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)として、多孔質のセラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
DPF用のハニカム構造体は通常柱状体であり、柱状のハニカム構造体には、その対向する端面間を貫通する複数の貫通孔が形成されている。ハニカム構造体の一方の端面(第一端面)では、開いた貫通孔の端部と封口部で塞がれた貫通孔の端部とが、格子状に交互に配置されている。第一端面において端部が開いている貫通孔は、第一端面と反対側の第二端面において封口部で塞がれている。また、第一端面において端部が封口部で塞がれている貫通孔は、第二端面において開いている。したがって、DPF用のハニカム構造体の製造では、柱状体に形成された貫通孔の端部の一方だけを封口材で塞ぐ工程(以下、「封口工程」という。)が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、上記の封口工程の一例として、複数の貫通孔が形成されたコージェライトの柱状体をシリンダー内に設置し、柱状体の端面に開いた一部の貫通孔をフィルムで塞ぎ、当該端面にスラリー状の封口材を塗り、ピストンをシリンダー内に押し込むことにより、封口材をピストンで一部の貫通孔内に導入する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された封口工程は、フィルムに穴を開ける針治具、封口用のピストン及びシリンダー等を備える複雑な装置を必要とするため煩雑であった。また、上記特許文献1に開示された封口工程では、封口材をピストンで貫通孔内に導入する際に、ピストンと柱状体の端面とが封口材を介して密着する。そのため、ピストンにより貫通孔内に導入された封口材が、ピストンのシリンダー内からの引き抜きに伴って貫通孔から引き出されてしまう。したがって、上記特許文献1に開示された封口工程を用いて製造したDPFでは、両端部が封口部で塞がれていない貫通孔内を微細粒子が通過してしまい、微細粒子の捕集率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡易であり、貫通孔からの封口材の脱離を抑制できるハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、複数の貫通孔が形成された柱状体の貫通孔が開いている端面に、複数のマスク部及び開口部を有するマスクを設置し、マスク部で一部の前記貫通孔を塞ぐ工程と、端面に設置されたマスクにスラリー状の封口材を塗布する工程と、マスクに塗布された封口材にブレードを押し当て、ブレードをマスクの表面に略平行に移動させる工程と、を備える。
【0009】
上記本発明では、マスクに塗布された封口材にブレードを押し当て、ブレードをマスクの表面に略平行に移動させることにより、マスクの開口部を通じて一部の貫通孔の端部に封口材が充填される。つまり、本発明では、封口材をブレードによって一部の貫通孔の端部に押し込む。このように、本発明では、少なくともブレードとマスクさえあれば、貫通孔の端部に封口材を充填することでき、複雑な装置系を要する従来の製造方法に比べて封口工程が簡易化される。
【0010】
上記特許文献1に示す封口工程では、上述のように、ピストンを柱状体の端面に垂直に押し当て、端面に垂直に延びる貫通孔に封口材を導入した後、ピストンを柱状体の端面に垂直な方向に移動させて柱状体から分離させる。そして、このピストンの垂直移動に伴って貫通孔内の封口材が貫通孔から脱離しまうことがある。貫通孔の長軸方向とピストンの移動方向とが一致すると、ピストンの移動に伴って貫通孔から封口材が引き抜かれ易いからである。しかし、上記本発明では、ブレードを柱状体の端面に平行な方向(すなわち、貫通孔の長軸に直交する方向)に移動させるため、ブレードの移動に伴う封口材の貫通孔からの脱離が生じ難い。
【0011】
上記本発明では、柱状体の端面と略同一の形状の底穴が形成された底板を有する枠の底穴に柱状体を嵌め込んでマスクが設置された端面を枠で囲い、マスクに塗布された封口材にブレードを押し当て、ブレードをマスクの表面に略平行に移動させることが好ましい。枠を用いることにより、マスクに塗布された封口材のうち貫通孔に導入されない余分な封口材が柱状体の側面に付着することを防止できる。また、枠を用いることにより、余分な封口材を枠内に回収して封口工程で再利用することができる。すなわち、上記本発明では、封口材の再利用によってハニカム構造体の製造コストを低減することも可能である。
【0012】
上記本発明では、柱状体がAl及びTiを含むことが好ましい。Al及びTiを含む柱状体から形成されるハニカム構造体は、チタン酸アルミニウム焼結体からなり、熱膨張係数が極めて小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、煤の限界堆積量が大きいDPFとして好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも簡易であり、貫通孔からの封口材の脱離を抑制できるハニカム構造体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造過程で形成される柱状体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の柱状体の端面図である。
【図2】図2(a)は、図1(a)の柱状体と当該柱状体の端面に設置されたマスクの斜視図であり、図2(b)は、図2(a)に示すマスクの上面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程で用いるブレード、枠及び両端面にマスクが設置された柱状体の斜視図である。
【図4】図4は、図3に示すブレード、枠及び両端面にマスクが設置された柱状体のIV−IV線断面に対応し、封口工程の一部を示す模式図である。
【図5】図5は、図3に示すブレード、枠及び両端面にマスクが設置された柱状体のIV−IV線断面に対応し、封口工程の一部を示す模式図である。
【図6】図6は、図3に示すブレード、枠及び両端面にマスクが設置された柱状体のIV−IV線断面に対応し、封口工程の一部を示す模式図である。
【図7】図7(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法により製造したハニカム構造体の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のハニカム構造体の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付す。また、上下左右の位置関係は図面に示す通りであるが、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。まず、柱状体に対する封口工程について説明し、続いて他の工程について説明する。
【0016】
(柱状体)
図1(a)及び図1(b)に示すように、柱状体70は、ハニカム構造を有する円柱体である。柱状体70は、その中心軸に平行であり、互いに直交する複数の隔壁70cを有する。つまり、柱状体70は、その中心軸方向に垂直な断面において格子構造を有する。換言すれば、柱状体70には、同一方向(中心軸方向)に延びる多数の貫通孔70a(流路)が形成されており、隔壁70cが各貫通孔70aを隔てる。各貫通孔70aは柱状体70の両端面に垂直である。なお、柱状体70が有する複数の隔壁70cが互いになす角は特に限定されず、例えば120°であってもよい。柱状体70は、例えば、チタン酸アルミニウム焼結体等からなる多孔質のセラミックスであればよい。なお、本実施形態において、「チタン酸アルミニウム焼結体」は「チタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体」を含意する。つまり、チタン酸アルミニウム焼結体は、マグネシウムを含有してもよい。また、チタン酸アルミニウム焼結体はケイ素を含有してもよい。チタン酸アルミニウム焼結体は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウム(AlTiO)またはチタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgTi(1+x))の結晶パターンのほか、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。柱状体70の形成方法については後述する。なお、柱状体70は、セラミックスの原料の無機化合物粉末(Al,TiO等)及び有機バインダ等から形成されたグリーン成形体(未焼成の成形体)であってもよい。以下では、チタン酸アルミニウム焼結体からなる多孔質のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0017】
[封口工程]
図1,2に示すように、封口工程では、柱状体70において複数の貫通孔70aが開いている第一端面に第一マスク200aを貼り付ける。第一マスク200aでは、図2(b)に示すように、貫通孔70aと略同様の寸法を有する複数のマスク部270aと開口部270bとが千鳥状に配置されている。各貫通孔70aと各マスク部270a及び開口部270bとが重なるように、柱状体70の第一端面に第一マスク200aを貼り付ける。また、柱状体70において第一端面とは反対側の第二端面に、第二マスク200bを貼り付ける。第二マスク200bが有する開口部とマスク部の配置関係は第一マスク200aとは真逆である。したがって、第一端面側で第一マスク200aのマスク部270bに塞がれた貫通孔70aは、第二端面側で第二マスク200bの開口部と重なる。第二端面側で第二マスク200bのマスク部に塞がれた貫通孔70aは、第一端面側で第一マスク200aの開口部270aと重なる。したがって、柱状体70に形成された複数の貫通孔70aのいずれも、第一端面又は第二端面のいずれか一方において開き、他方においてマスク部で塞がれる。なお、第一マスク200aを用いる代わりに、開口部が形成されていない(透明の)樹脂製のフィルムを柱状体70の第一端面(貫通孔70a)に貼り付け、加熱した金属棒又はレーザー光線等の熱線により、市松模様状に並ぶ複数の開口部270aをフィルムに形成してもよい。
【0018】
図3に示すように、封口工程では、ブレード300(へら)及び四角形状の枠302を用いる。枠302は底板302aを備える。底板302aには、柱状体70の第一端面と形状が略同様である円状の底穴302bが形成されている。第一マスク200a及び第二マスク200bが貼り付けられた柱状体70を枠302の底穴302bに嵌め込む。これにより、第一マスク200aが貼り付けられた第一端面を枠302で囲う。なお、枠302の形状は特に限定されない。粘着テープや治具を用いて柱状体70に枠302を固定してもよい。
【0019】
枠302内に配置された第一マスク200aの表面全体に、スラリー状の封口材304を略均一な厚さで塗布する。封口材304としては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。封口材304が含有する無機化合物粉末の組成は、柱状体70を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、例えば枠302に嵌められた柱状体70全体を振動器に設置し、第一マスク200aに塗布された封口材304を振動させてもよい。この振動により、第一マスク200a上の封口材304が平坦化し、封口材304中の気泡が除去される。
【0020】
図4〜6に示すように、第一マスク200aの表面全体に塗布された封口材304にブレード300の先端を押し当てながら、ブレード300を第一マスク200aの表面に平行に移動させ、ブレード300で第一マスク200aの表面全体を走査する。これにより、図5,6に示すように、第一マスク200aの開口部と重なる各貫通孔70aの端部内に開口部を通じて封口材304が略均一に導入される。このとき、貫通孔70aの端部内に導入されずに余った封口材304は、枠302内に回収される。つまり、枠302は余分な封口材304の受け皿として機能する。なお、封口工程では、貫通孔70aに封口材304を導入した後、柱状体70全体を振動器により振動させてもよい。これにより、貫通孔70aの端部の隙間に隈なく封口材304が充填され易くなる。
【0021】
以上の第一端面に対する封口工程後、枠302の底穴302bから柱状体70を取り外す。次に、第一端面に対する上記の封口工程と同様に、第二マスク200bが貼られた第二端面に対する封口工程を実施する。両端面に封口工程を施した後に、各端面から各マスクを剥がす。なお、第二マスク200bを用いる代わりに、開口部が形成されていない(透明の)樹脂製のフィルムを柱状体70の第二端面(貫通孔70a)に貼り付け、加熱した金属棒又はレーザー光線等の熱線により、市松模様状に並ぶ複数の開口部をフィルムに形成してもよい。
【0022】
第一端面及び第二端面に対する上記の封口工程を行った後に、乾燥させた柱状体を焼成し、貫通孔70aの一端を塞ぐ封口材304を焼結させる。封口材304の焼結により、図7に示すように、貫通孔70aの一端を塞ぐセラミックスの封口部70bが形成され、円柱状のハニカム構造体170が完成する。
【0023】
(ハニカム構造体)
ハニカム構造体170では、第一端面側で封口部70bに塞がれた貫通孔70aは、第二端面側で開いている。第二端面側で封口部70bに塞がれた貫通孔70aは、第一端面側で開いている。このような構造を有するハニカム構造体(多セル型セラミックモノリス)はDPFに好適である。特にチタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなるDPFは、SiC、コージェライト又はチタン酸アルミニウム単体からなるDPFに比べて、熱膨張係数が極めて小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、煤の限界堆積量が大きい点において優れている。なお、DPF用のハニカム構造体170の隔壁表面に、アルミナ等の担体に担持された白金系金属触媒や、セリア又はジルコニア等の助触媒を付着させてもよい。
【0024】
チタン酸アルミニウム焼結体におけるアルミニウムの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム換算で40〜60モル%である。チタン酸アルミニウム焼結体におけるチタンの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。チタン酸アルミニウム焼結体におけるマグネシウムの含有率は酸化マグネシウム換算で1〜5質量%であることが好ましい。チタン酸アルミニウム焼結体におけるケイ素の含有率は酸化ケイ素換算で2〜5質量%であることが好ましい。なお、チタン酸アルミニウム焼結体の組成は、原料混合物の組成により適宜調整すればよい。チタン酸アルミニウム焼結体は、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0025】
貫通孔70aの長手方向に垂直な断面の内径(正方形の一辺の長さ)は特に限定されないが、例えば0.8〜2.5mmである。貫通孔70aが延びる方向におけるハニカム構造体170の長さは特に限定されないが、例えば40〜350mmである。また、ハニカム構造体170の外径も特に限定されないが、例えば10〜320mmである。封口部70bの長さDは特に限定されないが、例えば1〜20mmである。ハニカム構造体170の端面に開いている貫通孔70aの数(セル密度)は特に限定されないが、例えば150〜450cpsiである。cpsiとの単位は「/inch」を意味し、「/(0.0254m)」に等しい。貫通孔70aの隔壁の厚さは特に限定されないが、例えば0.15〜0.76mmである。
【0026】
[柱状体の形成方法]
(原料混合物の調製)
柱状体を形成するために、無機化合物粉末、有機バインダ及び溶媒等を混練機等により混合して調製した原料混合物を成形して、グリーン成形体を得る。無機化合物粉末は、チタン源粉末及びアルミニウム源粉末を含む。無機化合物粉末は、更にマグネシウム源粉末及びケイ素源粉末を含んでもよい。
【0027】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、チタン酸アルミニウム焼結体を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0028】
アルミニウム源は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0029】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。具体的なアルミニウム無機塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0030】
アルミニウムアルコキシドとして具体的には、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0031】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0032】
アルミニウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記のなかでも、アルミニウム源としては、アルミナが好ましく用いられ、より好ましくは、α型のアルミナである。なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0034】
アルミニウム源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するアルミニウム源粉末の粒子径は20〜60μmの範囲内であればよい。なお、この粒子径は、D50又は平均粒子径とも呼ばれる。焼成時の収縮率低減の観点からは、D50が30〜60μmの範囲内であるアルミニウム源粉末を用いることが好ましい。
【0035】
原料混合物にはアルミナゾルや後述のシリカゾルを添加することができる。このように、アルミナゾル、シリカゾル等を添加することにより、原料混合物中の微小な粒子同士を吸着させ、グリーン成形体中の粒子径0.1μm以下の粒子の量を、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して1〜5重量部とすることができ、これにより500℃における脱脂後の成形体の強度を例えば0.2kgf以上とすることができる。
【0036】
アルミナゾルとは、微粒子状のアルミナを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。アルミナゾルは、単独でアルミニウム源とすることもできるが、他のアルミニウム源と共に併用されることが好ましい。アルミナゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0037】
アルミナゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、塩酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。アルミナゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状アルミナゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するアルミナゾルを用いることにより、原料混合物中の粒子同士を吸着させられるといった利点がある。また、アルミナゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」、シーアイ化成製「NanoTekAl」等が挙げられる。このうち、日産化学工業社製「アルミナゾル200」を用いることが好ましい。
【0038】
アルミナゾルは、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して固形分で0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部用いることができる。アルミナゾルは、2種以上混合して用いてもよい。
【0039】
(チタン源)
チタン源は、チタン酸アルミニウム焼結体を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、例えば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0040】
チタン源は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、チタン塩、チタンアルコキシド、水酸化チタン、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0041】
チタン塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタンアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0042】
チタン源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記のなかでも、チタン源としては、酸化チタンが好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)である。なお、チタン源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0044】
チタン源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%に相当するチタン源粉末の粒子径(D50)は0.5〜25μmの範囲内であればよい。十分に低い焼成収縮率の達成のためには、チタン源粉末のD50が1〜20μmの範囲内であることが好ましい。なお、チタン源粉末は、バイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタン源粉末を用いる場合においては、レーザー回折法により測定される粒径分布における、粒径が大きい方のピークの粒径が20〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0045】
レーザー回折法により測定されるチタン源粉末のモード径は、特に限定されないが、0.3〜60μmの範囲内であればよい。
【0046】
(マグネシウム源)
原料混合物は、マグネシウム源を含有していてもよい。マグネシウム源を含むグリーン成形体から製造されたチタン酸アルミニウム焼結体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶の焼結体である。
【0047】
マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。後者の例としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0048】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0049】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0050】
マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いることもできる。このような化合物としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl)が挙げられる。
【0051】
マグネシウム源として、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するマグネシウム源粉末の粒子径(D50)は0.5〜30μmの範囲内であればよい。焼成時の収縮率低減の観点からは、D50が3〜20μmの範囲内であるマグネシウム源粉末を用いることが好ましい。
【0053】
グリーン成形体中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源のモル量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO(チタニア)換算でのチタン源との合計モル量に対して、0.03〜0.15であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性がより向上された、大きい細孔径および開気孔率を有するチタン酸アルミニウム焼結体を比較的容易に得ることができる。
【0054】
(ケイ素源)
原料混合物は、ケイ素源をさらに含有していてもよい。ケイ素源は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム焼結体に含まれる化合物である。ケイ素源の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム焼結体を得ることが可能となる。ケイ素源としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0055】
ケイ素源は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることもできる。
【0056】
ケイ素源がガラスフリットである場合、得られるチタン酸アルミニウム焼結体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0057】
ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸(SiO)を主成分(全成分中50重量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ(Al)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、マグネシア(MgO)等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrOを含有していてもよい。
【0058】
ケイ素源として、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するケイ素源の粒子径(D50)は0.5〜30μmの範囲内であればよい。グリーン成形体の比重をより向上させ、機械的強度のより高い焼成体を得るためには、ケイ素源のD50が1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
原料混合物がケイ素源を含む場合、原料混合物中におけるケイ素源の含有量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO(チタニア)換算でのチタン源との合計量100重量部に対して、SiO(シリカ)換算で、通常0.1重量部〜10重量部であり、好ましくは5重量部以下である。また、原料混合物中におけるケイ素源の含有量は、原料混合物中に含まれる無機化合物源中、2重量%以上5重量%以下とすることがより好ましい。ケイ素源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0061】
マグネシアスピネル(MgAl)などの複合酸化物のように、チタン、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料として用いることができる。
【0062】
原料混合物中の無機化合物粉末100重量部における粒子径0.1μm以下の粒子の含有量を1〜5重量部とする場合、上述のように、原料混合物にアルミナゾルおよび/またはシリカゾルを添加して混合することが好ましい。シリカゾルとは、微粒子状のシリカを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。シリカゾルは、単独でケイ素源とすることもできるが、他のシリカ源と共に併用されることが好ましい。シリカナゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0063】
シリカゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、アンモニア水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、トリグリセリドなどが挙げられる。シリカゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状シリカゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するシリカゾルを用いることにより、原料混合物中の粒子同士を吸着させ、焼成時に融解し結合させることができるといった利点がある。
【0064】
シリカゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「スノーテックス20、30、40、50、N、O、S、C、20L、OL、XS、XL、YL、ZL、QAS−40、LSS−35、LSS−45」、旭電化社製「アデライトAT−20、AT−30、AT−40、AT−50、AT−20N、AT−20A、AT−30A、AT−20Q、AT−300、AT−300Q」、触媒化成工業社製「Cataloid S−20L、S−20H、S−30L、S−30H、SI−30、SI−40、SI−50、SI−350、SI−500、SI−45P、SI−80P、SN、SA、SC−30」、デュポン社製「ルドックスHS−40、HS−30、LS、SM−30、TM、AS、AM」等が挙げられる。このうち、中性域でコロイド状態が安定な「スノーテックスC」を用いることが好ましい。
【0065】
原料混合物におけるシリカゾルの含有量は、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して固形分で0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部であればよい。2種以上のシリカゾルを混合して用いてもよい。
【0066】
原料混合物は、チタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムを含んでもよい。例えば、原料混合物の構成成分としてチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタン源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
【0067】
(有機バインダ)
有機バインダとしては、水溶性の有機バインダが好ましい。水溶性の有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩などが挙げられる。
【0068】
有機バインダの量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常20重量部以下であり、好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部である。また、有機バインダの下限量は、通常0.1重量部、好ましくは3重量部である。
【0069】
(溶媒)
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、および水などの極性溶媒を用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、10重量部〜100重量部、好ましくは20重量部〜80重量部である。なお、溶媒として非極性溶媒を用いてもよい。
【0070】
(その他の添加物)
原料混合物は、有機バインダ以外の有機添加物を含むことができる。その他の有機添加物とは、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤である。
【0071】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類、でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料、氷、及びドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜40重量部であり、好ましくは0〜25重量部である。造孔剤はグリーン成形体の焼成時に消失する。したがって、チタン酸アルミニウム焼結体では、造孔剤が存在していた箇所に微細孔が形成される。この微細孔の孔径はディーゼル燃料に由来する微細粒子の粒子径よりも小さい。したがって、気体は微細孔中を通過できるが、微細粒子は通過できない。
【0072】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜10重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0073】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜20重量部であり、好ましくは2〜8重量部である。
【0074】
(グリーン成形体の形成)
格子状の開口を有するダイを備える押出成形機を用いて、上述の原料混合物を成形することにより、グリーン成形体を形成する。なお、成形前の原料混合物を混練してもよい。
【0075】
(グリーン成形体の仮焼き及び焼成)
上述のグリーン成形体を仮焼き(脱脂)し、且つ焼成することにより、柱状体を得ることができる。得られる柱状体は、主にチタン酸アルミニウムの結晶粒子の焼結体から構成される。本実施形態では、原料混合物を成形してから焼成を行なうことにより、原料混合物を直接焼成する場合と比較して、焼成中の収縮を抑えることができ、得られるチタン酸アルミニウム焼結体の割れを効果的に抑制でき、また、焼成により生成した多孔質性のチタン酸アルミニウム結晶の細孔形状が維持されたチタン酸アルミニウム焼結体を得ることができる。なお、上述のように、グリーン成形体を焼成することなく、柱状体として用いてもよい。
【0076】
仮焼(脱脂)は、グリーン成形体中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程である。典型的な仮焼き工程は、焼成工程の初期段階、すなわちグリーン成形体が焼成温度に至るまでの昇温段階(例えば、300〜900℃の温度範囲)に相当する。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0077】
グリーン成形体の焼成温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。この温度範囲でグリーン成形体を加熱することにより、グリーン成形体中の無機化合物粉末が確実に焼結する。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。
【0078】
焼成は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末、すなわちアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0079】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0080】
焼成に要する時間は、グリーン成形体がチタン酸アルミニウム結晶に遷移するのに十分な時間であればよく、グリーン成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0081】
なお、グリーン成形体の仮焼きと焼成を個別に行ってもよい。仮焼き工程では、有機バインダその他の有機添加物の熱分解温度以上であり無機化合物粉末の焼結温度よりも低い温度でグリーン成形体を加熱すればよい。焼成工程では、仮焼き工程後のグリーン成形体を無機化合物粉末の焼結温度以上の温度で加熱すればよい。
【0082】
以上のようにして、ハニカム構造を有する柱状体70を得ることができる。このような柱状体70は、成形直後のグリーン成形体の形状をほぼ維持した形状を有する。得られた柱状体70は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0083】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0084】
例えば、枠302を用いずに封口工程を実施した場合であっても、本発明の効果を奏することは可能である。
【0085】
ハニカム構造体170は、コージェライトやシリコンカーバイド等からなる多孔質のセラミックスであってもよい。この場合、柱状体がコージェライト若しくはシリコンカーバイド又はこれらの原料粉末を含む。ハニカム構造体170の形状は円柱に限定されず、用途に応じて任意の形状をとることができる。例えば、ハニカム構造体170の形状が、多角柱や楕円柱等であってもよい。
【0086】
ハニカム構造体の用途はDPFに限定されない。ハニカム構造体は、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルター又は触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分(例えば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素等)を選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。なかでも、セラミックスフィルターなどとして用いる場合、チタン酸アルミニウム焼結体は、高い細孔容積および開気孔率を有することから、良好なフィルター性能を長期にわたって維持することができる。
【符号の説明】
【0087】
70・・・柱状体、70a・・・貫通孔、70b・・・封口部、70c・・・隔壁、200a・・・第一マスク、200b・・・第二マスク、270a・・・開口部、270b・・・マスク部、300・・・ブレード、302・・・枠、302a・・・底板、302b・・・底穴、304・・・封口材、170・・・ハニカム構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成された柱状体の前記貫通孔が開いている端面に、複数のマスク部及び開口部を有するマスクを設置し、前記マスク部で一部の前記貫通孔を塞ぐ工程と、
前記端面に設置された前記マスクにスラリー状の封口材を塗布する工程と、
前記マスクに塗布された前記封口材にブレードを押し当て、前記ブレードを前記マスクの表面に略平行に移動させる工程と、
を備える、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記端面と略同一の形状の底穴が形成された底板を有する枠の前記底穴に前記柱状体を嵌め込んで前記マスクが設置された前記端面を前記枠で囲い、前記マスクに塗布された前記封口材にブレードを押し当て、前記ブレードを前記マスクの表面に略平行に移動させる、
請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記柱状体がAl及びTiを含む、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−245396(P2011−245396A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119456(P2010−119456)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】