説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】 従来よりも簡易であるハニカム構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体の封口すべき箇所に飛ばして封口部を形成する封口工程と、を有するハニカム構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるカーボン粒子等の微細粒子を捕集するためのセラミックスフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)として、多孔質のセラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。
【0003】
DPF用のハニカム構造体は通常柱状体であり、柱状のハニカム構造体には、その対向する端面間を貫通する複数の貫通孔が形成されている。ハニカム構造体の一方の端面(第一端面)では、開いた貫通孔の端部と封口部で塞がれた貫通孔の端部とが、格子状に交互に配置されている。第一端面において端部が開いている貫通孔は、第一端面と反対側の第二端面において封口部で塞がれている。また、第一端面において端部が封口部で塞がれている貫通孔は、第二端面において開いている。したがって、DPF用のハニカム構造体の製造では、柱状体に形成された貫通孔の端部の一方だけを封口材で塞ぐ工程(以下、「封口工程」という。)が必要となる。
【0004】
下記特許文献1には、上記の封口工程の一例として、複数の貫通孔が形成されたコージェライトの柱状体をシリンダー内に設置し、柱状体の端面に開いた一部の貫通孔をフィルムで塞ぎ、当該端面にスラリー状の封口材を塗り、ピストンをシリンダー内に押し込むことにより、封口材をピストンで一部の貫通孔内に導入する工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−24731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された封口工程は、フィルムの所定部分に穴を開ける針治具等を備える装置を必要とするなど、工程が煩雑であるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡易であるハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、上記原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体の封口すべき箇所に飛ばして封口部を形成する封口工程と、を有するハニカム構造体の製造方法を提供する。
【0009】
かかる製造方法によれば、インクジェット法により封口部の形成を行うため、円形や四角形、オーバル形状などのハニカム成形体の端面の外形形状の違いや、四角形、六角形、四角形と八角形の組み合わせ、不完全セル形状などの同一端面内又は一方の端面と他端面との間での貫通孔の端面形状の違い、同一端面内又は一方の端面と他端面との間での格子間隔(格子密度)の違い等に柔軟に対応することができる。また、上記製造方法によれば、インクジェット法により封口部の形成を行うため、封口のパターン及び封口の長さ等を任意に選択した封口が可能となる。更に、上記製造方法によれば、インクジェット法により封口部の形成を行うため、ハニカム成形体の端面に開いた一部の貫通孔をフィルムで塞ぐ必要がなく、フィルムの所定部分に穴を開ける針治具等を備える装置も不要であり、従来よりも簡易にハニカム構造体を製造することができる。また、インクジェット法を用いることで、封口部を精度良く、且つ効率的に形成することができる。なお、封口すべき貫通孔に、穴を開けたメタル板、プラスチック板を介して封口材(原料スラリー)を導入するマスク法では、マスクとハニカム成形体との位置合わせ、マスク洗浄や剥離工程が必要となるが、本発明の製造方法では、これらの作業が不要となる。但し、本発明の製造方法では、上記のようなマスクを用いつつインクジェット法により封口を行ってもよい。
【0010】
また、本発明の製造方法は、上記封口工程後、封口された上記ハニカム成形体を焼成する焼成工程を更に有することが好ましい。焼成前のグリーン成形体(未焼成の成形体)に対して封口工程を行い、その後に焼成工程を行うことで、焼成工程が1回で済むとともに、封口部とハニカム構造体との良好な密着性が得られる。
【0011】
更に、本発明の製造方法において、上記原料スラリーの23℃での粘度は、0.1〜10Pa・sであることが好ましい。原料スラリーの粘度を上記範囲に調整することにより、インクジェット法により液滴を飛ばしやすく、且つ、飛ばした液滴をハニカム成形体に付着させやすくなり、所望の位置に封口部を容易に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも簡易であるハニカム構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造過程で形成されるハニカム成形体の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のハニカム成形体の端面図である。
【図2】図2は、原料スラリーをインクジェットヘッドに供給する手段を示す模式図である。
【図3】図3は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例(バブルジェット(登録商標)方式)を示す部分破断斜視図である。
【図4】図4は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の他の一例(ピエゾ方式)を示す部分破断斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法の封口工程により封口部が形成されたハニカム成形体を示す模式断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法における封口工程の一部を示す模式断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカム構造体の製造方法により製造したハニカム構造体の斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のハニカム構造体の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体の封口すべき箇所に飛ばして封口部を形成する封口工程と、を有する方法である。また、本発明の製造方法は、封口工程後、封口されたハニカム成形体を焼成する焼成工程を更に有することが好ましい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0016】
原料スラリー調製工程において調製する原料スラリーとしては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。原料スラリーが含有する無機化合物粉末の組成は、後述するハニカム成形体を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、原料スラリーが含有する有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等は、後述するハニカム成形体を形成するための材料と同様のものを用いることができる。
【0017】
原料スラリーの23℃での粘度は、0.1〜10Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sであることがより好ましい。この粘度が0.1Pa・s未満であると原料スラリーの液滴がハニカム成形体の隔壁に衝突後に拡散してしまい、堆積しにくくなる傾向があり、10Pa・sを超えると原料スラリーがノズルに詰まりやすく、ノズル先端に堆積しやすくなり、飛滴しにくくなる傾向がある。
【0018】
封口工程では、原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体の封口すべき箇所に飛ばして封口部を形成する。
【0019】
ハニカム成形体は、例えば図1に示すような構造を有するものである。図1(a)及び図1(b)に示すように、ハニカム成形体70は、ハニカム構造を有する円柱体である。ハニカム成形体70は、その中心軸に平行であり、互いに直交する複数の隔壁70cを有する。つまり、ハニカム成形体70は、その中心軸方向に垂直な断面において格子構造を有する。換言すれば、ハニカム成形体70には、同一方向(中心軸方向)に延びる多数の流路70a(貫通孔)が形成されており、隔壁70cが各流路70aを隔てる。各流路70aはハニカム成形体70の両端面に略垂直である。なお、ハニカム成形体70が有する複数の隔壁70cが互いになす角は特に限定されず、例えば120°であってもよい。
【0020】
ハニカム成形体70は、例えば、原料混合物を押出成形して、隔壁70cにより区画された複数の流路70a(貫通孔)を有するハニカム成形体70を得る押出成形工程を経て作製することができる。
【0021】
ハニカム成形体を形成するための原料混合物は、後で焼成することにより多孔性セラミックスとなる材料であり、セラミックス原料を含む。セラミックス原料は特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0022】
原料混合物は、好ましくは、セラミックス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0023】
例えば、セラミックスがチタン酸アルミニウムの場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末、及び/又は、チタン酸アルミニウム粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末、及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0024】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩を例示できる。
【0025】
添加物としては、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、溶媒が挙げられる。
【0026】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。
【0027】
潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0029】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。
【0030】
原料混合物は、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を混練機等により混合することで調製することができる。
【0031】
ハニカム成形体70は、上記原料混合物を隔壁70cの断面形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し、必要に応じて乾燥をし、所望の長さに切ることにより得ることができる。
【0032】
封口工程において、インクジェット法により封口部を形成する装置としては、例えばインクジェットプリンタが用いられる。インクジェットプリンタの印字方式は、インクが空中を飛ぶ非接触型である。インクジェットプリンタは、通常、ヘッドが走査する機構を有し、ヘッドが複数のノズルを有する。封口工程では、ヘッドに設けられた複数のノズルから、原料スラリーの液滴を吐出する。
【0033】
図2は、原料スラリーをインクジェットプリンタのノズルに供給する手段を示す模式図である。図2に示すように、原料スラリーは、スラリー貯槽101から電磁弁102を介して供給ポンプ103により吸い上げられ、調圧弁104により圧力調整されながら、複数のノズルを有するインクジェットヘッド105に供給される。
【0034】
図3及び4は、原料スラリーを液滴として飛ばす手段の一例を示す部分破断斜視図であり、図3はバブルジェット(登録商標)方式(サーマル方式)のインクジェットヘッドを、図4はピエゾ方式のインクジェットヘッドをそれぞれ示している。図3に示したバブル(登録商標)ジェット方式は、インク室12に収容された原料スラリーをヒーター16により加熱することで、原料スラリーに気泡(バブル)18を発生させ、ノズル14から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。一方、図4に示したピエゾ方式は、ピエゾ素子26に電圧を加えて変形させることで、インク室22に収容された原料スラリーに変形圧力を伝え、ノズル24から原料スラリーの液滴10を噴射させる方式である。本発明においては、いずれの方式も好適に使用することができる。また、本発明においては、バブルジェット(登録商標)方式及びピエゾ方式以外にも、加熱式のピエゾ駆動方式等の公知の方式を使用することができる。
【0035】
インクジェットヘッドを走査させる際の走査方向は、1次元であってもよく、2次元であってもよい。また、ノズルから吐出される液滴10の量は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、1〜20pLであることが好ましい。更に、ノズルから吐出される液滴10の吐出速度は特に制限されないが、封口部の形成のし易さから、0.5〜5m/sであることが好ましい。
【0036】
封口部の形成は、例えば図5〜7に示した手順で行うことができる。すなわち、図5に示すように、ハニカム成形体70を端面が横向きになるように配置し、インクジェットヘッド105を用いて原料スラリーの液滴10を水平方向に飛ばす方法を用いることができる。これにより、図6(a)に示すように、ハニカム成形体70の封口すべき流路70aに封口層70b1を形成する。封口層70b1は、多数の液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させることで形成することができる。また、封口層70b1の形成が容易になるため、60〜110℃程度の温度で乾燥しながら液滴10を飛ばすことが好ましい。続いて、図6(b)及び(c)に示すように、同様の手順で封口層70b2,70b3を順次積層していくことで、所望の長さの封口部70bを形成することができる。なお、封口層の積層数は特に限定されず、必要な長さの封口部70bが得られるまで積層数を増やすことができる。この方法により、ハニカム成形体70の一方の端面(第一端面)の所望の位置に封口部70bを形成した後、他方の端面(第二端面)における第一端面側で封口部70bが形成されていない流路70aに封口部70bを形成することで、図7に示した構造を有するハニカム成形体を得ることができる。第一端面側で封口部70bが形成された流路70aと、第二端面側で封口部70bが形成された流路70aとは、格子状に交互に配置される。
【0037】
図8は、原料スラリーの液滴10を飛ばして封口部70bを形成する際の他の方法を示している。すなわち、図5ではハニカム成形体70を横向きに配置したが、図8に示すように、ハニカム成形体70を端面が水平面に対して斜めになるように配置し、その上方に配置したインクジェットヘッド105から原料スラリーの液滴10を下向きに飛ばす方法を用いることもできる。この場合、飛ばした液滴10をハニカム成形体70の隔壁70cに付着させ易くなる。なお、ハニカム成形体70を端面が横向き又は縦向きになるように配置し、インクジェットヘッド105からの液滴10の吐出方向をハニカム成形体70の端面に対して斜めにしてもよい。
【0038】
上記封口工程によりハニカム成形体70に封口部70bを形成した後、焼成工程を行う。焼成工程において、ハニカム成形体70及び封口部70bを仮焼(脱脂)および焼成することにより、図9(a)及び(b)に示すように、多孔質のセラミックスからなる隔壁170cにより区画され且つ一端が封口部170bで塞がれた複数の流路170aを有するハニカム構造体170を得ることができる。ハニカム構造体170では、第一端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第二端面側で開いている。第二端面側で封口部170bに塞がれた流路170aは、第一端面側で開いている。
【0039】
仮焼(脱脂)は、ハニカム成形体70及び封口部70b中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程であり、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜900℃の温度範囲)になされる。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0040】
ハニカム成形体70の焼成における焼成温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼成温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。
【0041】
焼成は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0042】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0043】
焼成に要する時間は、セラミックスが生成するのに十分な時間であればよく、ハニカム成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0044】
なお、焼成工程は、封口工程の前に行ってもよい。ただしその場合には、封口工程後に再度焼成工程を行う必要がある。
【0045】
以上の工程を経て、目的のハニカム構造体170を得ることができる。得られたハニカム構造体170は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。ハニカム構造体170において、流路170aの断面の正方形のサイズは、例えば、一辺0.5〜2.5mmとすることができる。ハニカム構造体170の寸法は、図9に示したような円柱体である場合、例えば、直径約100mm以上、長さ約100mm以上、隔壁170cの壁厚は約0.5mm以下であることが好ましい。また、ハニカム構造体170におけるセル構造は流路170aの合計数として100CPSI以上、有効気孔率は30〜60体積%、平均細孔直径は1〜20μm、細孔径分布(D90−D10)/D50は0.5未満であることが好ましい。ここで、D10、D50、D90は全細孔容積のうち累積細孔容積が各々10%、50%、90%になるときの細孔直径である。
【0046】
図9に示した構造のハニカム構造体170においては、隔壁170cは多孔質のセラミックスで構成され、この隔壁がフィルターの役割を果たす。このハニカム構造体170に対し、図9の(b)に示した側の第一端面(図9(a)における上端面)から流体を供給した場合、流体は開口している流路170aから入り、多孔質の隔壁170cを通って、第二端面側が開口している流路170aに移動し、第二端面から排出される。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、本発明の製造方法により製造するハニカム構造体の形状は特に限定されず、用途に応じて任意の形状を取ることができる。例えば、外形も、円柱に限られず、例えば、正三角柱、正方形柱、正六角柱、正八角柱等の正多角柱や、正多角柱以外の、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等の柱体とすることができる。また、各流路の断面形状も、正方形には限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等にすることができ、流路には、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。さらに、流路の配置も、正方形配置に限定されず、断面において流路の中心が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、千鳥配置等にすることができる。
【0048】
本発明の製造方法により製造されるハニカム構造体は、たとえば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…液滴、70…ハニカム成形体、70a…流路、70b…封口部、70c…隔壁、105…インクジェットヘッド、170…ハニカム構造体、170a…流路、170b…封口部、170c…隔壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料スラリーを調製する原料スラリー調製工程と、
前記原料スラリーの液滴をインクジェット法によりハニカム成形体の封口すべき箇所に飛ばして封口部を形成する封口工程と、
を有するハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記封口工程後、封口された前記ハニカム成形体を焼成する焼成工程を更に有する、請求項1記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記原料スラリーの23℃での粘度が、0.1〜10Pa・sである、請求項1又は2記載のハニカム構造体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−91368(P2012−91368A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239462(P2010−239462)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】