説明

ハリス

【課題】細いハリスのような沈みの早さと、太いハリスの様な擦れに対する強さの両立を実現したハリスを提供する。
【解決手段】合成樹脂モノフィラメントからなり、一端を道糸側、他端を釣り針側にそれぞれ連結して使用するハリスであって、少なくとも前記釣り針側に、本体部1よりも直径が大きい太径部2を形成し、かつ、この太径部2の長さを前記本体部1の長さより短くしたことを特徴とするハリス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中での沈みの早さと擦れに対する強さの両立を実現したハリスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂モノフィラメントは多くの有用な特性を備えているため、釣り糸や漁網などの水産資材用途や、種々の産業資材用途などの用途に従来から広く使用されている。なかでもナイロン樹脂モノフィラメントやポリフッ化ビニリデン樹脂モノフィラメントは、強靱性、透明性、柔軟性などの特性が優れていることから、これらの特性を活かした釣り糸用途、特にハリス用途として適用されてきた。
【0003】
しかるに、これら従来のハリスを用いる場合には、歯の鋭い尾長グレ、石鯛、真鯛などの魚を釣るときに、あわせのタイミングが遅れて魚に針を飲み込まれてしまうと、魚の鋭い歯に擦られて針の結び目またはその直ぐ上の部分(以下、チモトという)からハリスが切られてしまい、せっかく掛けた魚を釣り逃がしてしまうという不具合があるため、ハリスを太くして対応しているのが通常である。
【0004】
しかし、ハリス全体を太くすると、仕掛を沈ませる時に水の抵抗が大きくなり、仕掛の沈みが極端に遅くなるため、釣り餌が魚の居る深さまで沈む頃にはポイントを通りすぎてしまい、結果として釣果が下がってしまうという問題があった。
【0005】
太いハリスを早く沈める方法としては、従来からハリスの途中に重りを付ける方法が広く用いられているが、この方法では重りの部分が先に沈んでしまい、ハリスが重りを付けた所を支点にしてVの字に折れ曲がって沈んでいくため、ハリスの沈みが不自然な形となり、その結果釣果が著しく下がってしまうことから、必ずしも満足し得る方法ではなかった。
【0006】
また、各部の直径を変化させた釣り糸としては、バット部、テーパー部、ティペット部を有したフライフィッシング用テーパーリーダー(例えば、特許文献1参照)、およびポリフッ化ビニリデン系樹脂からなり、バット部、テーパー部、ティペット部で構成されたフライフィッシング用テーパーリーダー(例えば、特許文献2参照)などが提案されているが、これらはいずれもフライフィッシング用テーパーリーダーに用途が限定されたものであり、フライラインに直径の大きいバット部をつなぎテーパー部により徐々に直径を小さくし細くなったティペット部分の先にフライと呼ばれる疑似針をつなぐことにより、フライを静かに水面に落下させる効果を狙ったものである。そして、このフライフィッシング用テーパーリーダーは、ハリスとしての使用が困難であり、例え無理にハリスに適用したとしても、沈みの早さと擦れに対する強さの改良効果を得ることができず、ハリスとしての要求性能を満たすことはできなかった。
【0007】
さらに、テーパー部の長さを5〜15m、小径部の径を0.1mm以上、太径部の径を1.0mm以下、バット部の長さを5〜10mとした投げ釣り用テーパー力糸(例えば、特許文献3参照)も提案されているが、このテーパー力糸もまたハリスとは使用方法、要求特性など全く異とする投げ釣り用に用途が限定されたものであり、太径部は天秤と呼ばれる遠投に必要な大きな重り部分につながれ、投げ釣りにおいて、竿を振る力と弾力を利用して重りを遠くへ飛ばすために機能するものである。そして、この投げ釣り用テーパー力糸は、遠投時瞬間的に糸にかかる力に耐え、重りをより遠くへ飛ばすために道糸側に行くほど糸径が細くなるように設計されたものであって、ハリスに使用するのは困難であり、例え無理にハリスに適用したとしても、沈みの早さと擦れに対する強さの改良効果を得ることができず、ハリスとしての要求性能を満たすことはできなかった。
【0008】
さらにまた、テーパー部の長さを0.2〜5m、テーパー部の小径を0.09mm以上、太径部の太さを1.0mm以下かつ小径部より0.05mm以上太くしたPVDFテーパーモノフィラメント(例えば、参考文献4参照)も提案されているが、これもまたハリスとは使用方法、要求特性など全く異とするフライフィッシング用テーパーリーダーとして設計されたものであり、上記の従来技術と同様に、ハリスに使用するのは困難であり、例え無理にハリスに適用したとしても、ハリスとしての要求性能を満たすことはができないものであった。
【特許文献1】特開平9−28253号公報
【特許文献2】特許第3165389号
【特許文献3】特開平9−262047号公報
【特許文献4】特開平9−268425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の目的は、細いハリスのような沈みの早さと、太いハリスの様な擦れに対する強さの両立を実現したハリスであって、魚の歯による釣り針のチモト切れを防ぎ、釣り餌を早く自然に沈めることを可能にしたハリスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明によれば、合成樹脂モノフィラメントからなり、一端を道糸側、他端を釣り針側にそれぞれ連結して使用するハリスであって、少なくとも前記釣り針側に、本体部よりも直径が大きい太径部を形成し、かつ、この太径部の長さを前記本体部の長さより短くしたことを特徴とするハリスが提供される。
【0012】
なお、本発明のハリスにおいては、
前記道糸側端部の直径が、前記本体部の直径よりも大きいこと、
前記道糸側端部の直径が、前記本体部の直径と同等であること
前記合成樹脂モノフィラメントがポリフッ化ビニリデンからなること、および
前記本体部の直径が0.1〜0.8mmであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たすことによって一層優れた効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下に説明する通り、少なくとも釣り針側の直径をハリス本体の直径よりも大きくし、かつこの太径部の長さを本体部の長さより短く構成したため、水中での沈みの早さと擦れに対する強さの両立を実現可能であり、細いハリスをそのまま使った時よりも、魚の歯に擦られてチモト切れを起こすことが少なく、しかも太いハリスをそのまま使ったときよりも、早く自然に餌を沈めることができ、これにより優れた釣果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のハリスについて、図面にしたがって具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明のハリスの第1実施例を示す側面図、図2は同じく第2実施例を示す側面図である。
【0016】
図1に示した第1実施例において、本発明のハリスは、合成樹脂モノフィラメントからなる一体構造から形成されており、本体部1の一端Xを釣り針側、他端Yを道糸側にそれぞれ連結して使用するようになっている。
【0017】
そして、釣り針側の端部Xには、本体部1よりも直径が大きい太径部2が形成されており、この太径部2は、釣り針と連結するための結節部として機能する。
【0018】
また、この太径部2の長さaは、本体部1の長さbよりも短くなるように構成されている。
【0019】
本体部1の道糸側端部Yの形状については特に制限はないが、本第1実施例においては、上記釣り針側の端部Xと同様に、太径部3が形成されており、この太径部3は道糸と連結するための結節部として機能する。そして、この太径部3の長さcもまた、本体部1の長さbよりも短くなっており、前記釣り針側太径部2の長さaと道糸側太径部3の長さcを足した長さが、本体部1の長さbよりも短くなるように構成されている。
【0020】
また、図2に示した第2実施例では、道糸側端部Yには太径部は形成されておらず、本体部1の直径と同等となっている。
【0021】
これら第1および第2実施例に共通して、両太径部2,3は、いずれも本体部1から両端に向かって徐々に拡径するテーパー部4,5を介して、本体部1よりも太径化していることが好ましい。
【0022】
また、両太径部2,3は、所定の長さ範囲内であれば、小径部を介して複数の太径部を連続的に並べた形であってもよく、その外周に道糸や釣り針の結束糸を沿わせるための周溝を形成したものであってもよい。
【0023】
さらに、本体部1の直径は、0.1〜0.8mm、特に0.14〜0.5mmの範囲にあることが好ましい。本体部1の直径が0.1mmより細い場合は、両大径部2,3の直径を太くしても、本体部1の強力が低すぎてハリスとしての使用が困難になり、逆に0.8mmより太くなると、釣り針側太径部2の直径がさらに太くなって糸の剛性が高くなり、その結果釣り針の結び付けが困難になるため好ましくない。
【0024】
本体部1と両大径部2、3の直径の比については特に制限しないが、1:1.05〜1:2、特に1:1.1〜1:1.5の範囲にあることが好ましい。
【0025】
本体部1から両太径部2、3への直径変更の方法については特に限定するものではなく、モノフィラメントを押出紡糸する際の吐出量を所望の形状になるよう経時的に変化させて大径部を形成する方法や、例えば1.5Gのハリスと3Gのハリスを直接結びつけまたは編み付けにより連結する方法などを適用することができる。前者の方法の場合のテーパー部の適正長さは、ハリス全長、本体部と太径部の直径差により変わるが、その長さを0.5m以下にすることが、水の抵抗を受けにくくする上で好ましい条件であるといえる。
【0026】
本発明のハリスは、上記のように少なくとも釣り針側の直径をハリス本体の直径よりも大きくしたため、ハリスと釣り針との結節強度を高めると共に、魚の歯による擦れでチモト切れを起こし、魚を釣り逃がしてしまうという不具合が解消されるばかりか、この太径部の長さを本体部の長さより短く構成したため、ハリス全体を細く形成することができ、その結果水の抵抗を受けずに釣り餌を自然に早く沈めることができ、釣果の著しい向上を図ることができる。
【0027】
また、上記第1実施例では、道糸側端部Yにも太径部3が形成されているため、道糸との結節強度が高められて、耐久性が一層向上するという望ましい効果が得られる。
【0028】
なお、釣り針側端部の直径がハリス本体の直径と同等かそれよりも小さい場合には、従来のハリスと変わらず、ハリス全体が細い場合は早く自然に釣り餌を沈めることはできるが、魚の歯による擦れでチモト切れを起こして魚を釣り逃がしてしまい、逆に、ハリス全体が太い場合は、魚の歯に擦られてチモト切れを起こすことは少なくなるが、水の抵抗により釣り餌を自然に早く沈めることができなくなり、結果として釣果が悪くなってしまうため好ましくない。
【0029】
また、釣り針側太径部2の長さaおよび道糸側太径部3の長さcが、本体部1の長さbよりも長くなってしまうと、ハリスの水の抵抗を受ける部分が大きくなってしまい、早く自然に釣り餌を沈めていく効果が薄れてしまうため好ましくない。
【0030】
なお、本発明のハリスには、必要に応じて赤系、青系、黄色系、またその中間色への着色、カット位置を表示したマーキング処理、親水処理、撥水処理、表面硬化処理、柔軟化処理など各種表面処理を、単独または複合で施すことができる。
【0031】
本発明のハリスを構成する合成樹脂は、特に限定されるものではないが、各種ポリアミド樹脂およびその共重合体、フッ素系樹脂およびその共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびその共重合体の中から選ばれた合成樹脂、なかでも特にフッ素系樹脂が好ましく、さらに好ましくはポリフッ化ビニリデン樹脂が、高比重、高強度、低吸水率、光の屈折が水に近く魚に見えにくいなどの特徴をバランス良く兼ね備えていることから好ましく選択される。
【0032】
なお、本発明のハリスを形成する合成樹脂には、必要に応じて、例えば顔料、染料、耐候剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、結晶化抑制剤、末端基封鎖剤などの各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で、その重合工程、重合後、あるいは紡糸直前に添加することができる。
【0033】
本発明のハリスの長さについては、特に限定されるものではないが、用途や釣り場の状況に応じて的宣選択することができ、通常は0.5〜10m、特に1〜5mの範囲であることが好ましい。
【0034】
ここで、本発明のハリスの商品形態としては、図1または図2に示す形態のハリスを1本ずつカットし商品化する方法、図1または図2の形態を長さ方向に連続して持つものを駒に巻いて商品化する方法、図1または図2の形態を長さ方向に連続して持つものに、カットするためのマーキングを施して商品化する方法などを適宜選択することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明のハリスは、細いハリスを使ったときのように釣り餌を早く自然に沈めていくことができ、太いハリスを使ったときのように魚の歯に擦られてチモト切れを起こすことが少なくなり、細いハリスを使うメリットと、太いハリスを使うメリットの両方を合わせ持つことから、ハリスとして極めて有用である。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、実施例におけるハリスの評価は以下の方法に準じて行った。
【0037】
[針結び強度]
試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、ハリスの本体部、太径部両方が測定できるように長さを調整してチヌ針3号に外掛け本結びで針結びし、(株)オリエンテック社製『テンシロンUTM−4−100型』引張試験機を用い、上部チャックに針を直接把持させ、下部チャックにハリス本体部を把持させ、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定し、本体部の繊度で割返して強度MPaを算出した。
【0038】
[サルカン結び強度]
試料を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、ハリスの本体部、太径部両方が測定できるように長さを調整してサルカン16号にダブルクリンチノットでサルカン結びし、(株)オリエンテック社製『テンシロンUTM−4−100型』引張試験機を用い、上部チャックにサルカンの片側を直接把持させ、下部チャックにハリス本体部を把持させ、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で強力を測定し、本体部の繊度で割返して強度MPaを算出した。
【0039】
[直径測定]
MITUTOYO製デジタルマイクロメータを使い、道糸側、本体部、針側それぞれについてランダムに5点測定し、その平均値を求めた。
【0040】
[実釣テスト]
複数の釣り人に実際に歯の鋭い尾長グレを狙って釣りをしてもらい直径0.205mmの同素材のハリスを基準に比較評価をしてもらい、次の二段階に評価した。
◎…早く自然に仕掛を沈めることができ、尾長グレに針を飲み込まれてもチモト切れすることなく大きな魚を取り込むことができ充分に満足する釣果が得られた。
×…早く自然に仕掛を沈めることができずにポイントを外してしまい魚を掛けることができなかったり、せっかく掛けた魚の歯に糸が擦られてしまい、チモト切れを起こし、魚に逃げられてしまったりと満足のいく釣果が得られなかった。
【0041】
[実施例1]
ポリフッ化ビニリデン樹脂(ソルベイソレクシス社製1012:融点176℃)をエクストルーダー型紡糸機に供給し、260℃で溶融混練した後、孔径2.0mmのノズルから押出紡出させる際の吐出量を、延伸、リラックス工程終了後に、道糸側太径部3の直径が0.287mm、テーパー部5の長さを含む道糸側太径部3の長さcが1.0m、本体部1の直径が0.205mm、本体部1の長さbが3.4m、釣り針側太径部2の直径が0.287mm、テーパー部4の長さを含む釣り針側太径部2の長さaが1.0m、太径部2、3の長さに含まれるテーパー部の長さが道糸側5、釣り針側4それぞれ0.2mになるように経時的に変化させ、短い気体ゾーンを通過させた後、直ちに温度20℃のポリエチレングリコール液中で冷却固化させることにより、道糸側端部Yから釣り針側端部Xにかけて、太径部、テーパー部、本体部、テーパー部、太径部を有する未延伸モノフィラメントを得た。
【0042】
冷却した未延伸モノフィラメントを、水洗浴を通過させ、モノフィラメントの表面に付いた冷却媒体を除去し、さらに、圧空でモノフィラメント表面の水滴を除去した後、160℃のポリエチレングリコール液中で5.6倍に延伸することにより、1段延伸糸を得た。
【0043】
引き続き、1段延伸糸を155℃に加熱した不活性気体中でリラックス率0.95倍の熱セット処理を行うことにより、道糸側端部Yから釣り針側端部Xにかけて、太径部、テーパー部、本体部、テーパー部、太径部を有するモノフィラメントを得た。
【0044】
得られたモノフィラメントの道糸側太径部3を道糸に、釣り針側を釣り針にそれぞれ結んで、ハリスとして使用したときの評価結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
ハリスの形態を、本体部1の直径が0.205mm、長さbが4.7m、釣り針側太径部2の直径が0.287mm、テーパー部4を含む釣り針側太径部2の長さaが0.5m、テーパー部4長さが0.2mになるようにし、釣り針側端部Xの両端の直径のみを太くした以外は、実施例1と同様の方法で表1に示したモノフィラメントを得た。
【0046】
[実施例3]
モノフィラメントの素材を共重合ナイロン樹脂(東レ製CM6041:融点195℃)に変更し、エクストルーダー型紡糸機に供給し、260℃で溶融混練した後、孔径2.0mmのノズルから押出紡出させる際の吐出量を、延伸、リラックス工程終了後に道糸側太径部3の直径が0.287mm、テーパー部5の長さを含む道糸側太径部3の長さcが0.5m、本体部1の直径が0.205mm、本体部の長さbが4.4m、釣り針側太径部2の直径が0.287mm、テーパー部4の長さを含む釣り針側太径部2の長さaが0.5m、太径部2、3の長さに含まれるテーパー部の長さが道糸側5、釣り針側4それぞれ0.2mになるように経時的に変化させ、短い気体ゾーンを通過した後、直ちに温度10℃の冷水中で冷却固化させることにより、太径部、テーパー部、本体部、テーパー部、太径部を有する未延伸モノフィラメントを得た。
【0047】
冷却した未延伸モノフィラメントについて、圧空でモノフィラメント表面の水滴を除去した後、190℃のポリエチレングリコール液中で4.5倍に延伸することにより、1段延伸糸を得た。
【0048】
引き続き、1段延伸糸を210℃のポリエチレングリコール液中で1.47倍に全延伸倍率6.6倍に延伸した延伸糸を得た。
【0049】
さらに、延伸糸を180℃に加熱した不活性気体中で、リラックス率0.95倍の熱セット処理を行い、太径部、テーパー部、本体部、テーパー部、太径部を有する表1に示したモノフィラメントを得た。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、本体部1の太さを、道糸側太径3の太さ、釣り針側太径部2の太さに合わせ、ハリス全体を太くした以外は、実施例1と同様の条件で表1に示したモノフィラメントを得た。
【0051】
[比較例2]
実施例1において、釣り針側太径部2の太さ、道糸側大径部3の太さを本体部1の太さに合わせ、ハリス全体を細くした以外は、実施例1と同様の条件で表1に示したモノフィラメントを得た。
【0052】
[比較例3]
実施例2で得られたモノフィラメントの釣り針側太径部2を道糸につないで使った時、すなわち、道糸側太径部3の直径を0.287mmと太くし、本体部1および釣り針側太径部2の直径を0.205mmと細くして使った時の評価結果を表1に示す。
【0053】
[比較例4]
実施例2において、本体部1の長さbを2.0m、釣り針側太径部2の長さaと道糸側太径部3の長さcを足した太径部の長さを3.4mと、ハリス本体部の長さbより、太径部の長さを長くした以外は、実施例1と同様の条件で表1に示したモノフィラメントを得た。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の結果から明らかな様に、本発明のハリス(実施例1〜3)は、いずれも細いハリスを使っているときと同様に、水の抵抗が小さく餌を自然に早く沈めることができると共に、太いハリスを使っているときと同様に、鋭い魚の歯ですられても釣り針のチモトで切られることがなく、細いハリスのメリットと、太いハリスのメリットとの両者を備えたものである。
【0056】
一方、全長にわたる直径が同一のハリス(比較例1および2)は、太いハリスを使ったときと同じで、魚の歯にすられてチモト切れをすることがなくなるが、水の抵抗が大きくなり餌を自然に早く沈めることができなくなることから、結果として釣果が落ちてしまったりするばかりか、細いハリスを使ったときと同じ様に、餌を早く自然に沈めることができ、魚を掛けることはできるものの、鋭い魚の歯で針のチモト部分を擦られるチモト切れにより、魚を釣り逃がしてしまい結果として釣果が落ちてしまうものであった。
【0057】
また、道糸側太径部3の直径を本体部1の直径より太くし、釣り針側太径部2の直径を本体部1の直径に合わせたハリス(比較例3)は、道糸とのつなぎ部分の強度が上がり、細いハリスを使ったときと同じ様に、餌を早く自然に沈めることはでき、魚を掛けることはできるが、鋭い魚の歯で針のチモト部分を擦られるチモト切れにより、魚を釣り逃がしてしまい、結果として釣果が落ちてしまうものであった。
【0058】
さらに、本体部の長さbが、釣り針側太径部の長さaと道糸側太径部の長さcをたした太径部の長さより短くしたハリス(比較例4)は、水の抵抗を小さくする部分が短く、餌を早く自然に沈める効果が薄れてしまい、結果として釣果が落ちてしまうものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明のハリスは、細いハリスを使っているときと同様に、水の抵抗が小さく、途中に重りを付けなくても餌を自然に早く沈めることができると共に、太いハリスを使っているときと同様に、鋭い魚の歯ですられても釣り針のチモトで切られることがなく、細いハリスのメリットと、太いハリスのメリットとの両方を発揮することから、食い渋った大きな魚を効率よく確実に釣り上げていくためのハリスとして極めて有用な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のハリスの第1実施例を示す側面図。
【図2】本発明のハリスの第2実施例を示す側面図。
【符号の説明】
【0061】
1 本体部
2 釣り針側太径部
3 道糸側大径部
4 テーパー部
5 テーパー部
a 釣り針側太径部の長さ
b 本体部の長さ
c 道糸側太径部の長さ
X 釣り針側端部
Y 道糸側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂モノフィラメントからなり、一端を道糸側、他端を釣り針側にそれぞれ連結して使用するハリスであって、少なくとも前記釣り針側に、本体部よりも直径が大きい太径部を形成し、かつ、この太径部の長さを前記本体部の長さより短くしたことを特徴とするハリス。
【請求項2】
前記道糸側端部の直径が、前記本体部の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のハリス。
【請求項3】
前記道糸側端部の直径が、前記本体部の直径と同等であることを特徴とする請求項1に記載のハリス。
【請求項4】
前記合成樹脂モノフィラメントがポリフッ化ビニリデンからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハリス。
【請求項5】
前記本体部の直径が0.1〜0.8mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハリス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−14679(P2006−14679A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196795(P2004−196795)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】