説明

ハロゲンランプと該ランプを装着した光源装置

【課題】 本発明は、赤外線反射皮膜付着ハロゲンランプにも拘わらず、点灯時の昇温抑制が可能となるようにする事をその主目的とする。
【解決手段】発光管部(10a)内にフィラメント(3)が張設されているハロゲンランプ(1)であって、フィラメント(3)の発光部分(3a)の端部(Q)から前記発光部分(3a)の中心軸(CL)に対して直交する線(S)と前記発光管部(10a)の外面との交点間が少なくとも赤外線反射皮膜形成領域(P)となっており、前記赤外線反射皮膜形成領域(P)から外れる部分が赤外線反射皮膜非形成領域(R)とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線反射皮膜を発光管部の表面に形成したハロゲンランプにも拘わらず点灯時の昇温を大幅に抑制することができる新規なハロゲンランプに関し、更には該ランプを使用した光源装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハロゲンランプのランプ効率向上を求めて発光管部表面に赤外線反射皮膜を形成する手法、例えば、特開2002−63871に記載されているような手法が多用されている。この従来発明は、赤外線反射被膜(118)を有すると共に、管球の楕円体部分(102)[換言すれば、発光管部]の両端部に全反射被膜(120)を形成したハロゲンランプ(B)であるが、このハロゲンランプ(B)の楕円体部分(102)の両端部に設けられている全反射被膜(120)により可視光のみならず、赤外線も反射されてしまう。
【0003】
これにより、熱源である赤外線が全反射被膜(120)によって反射されて外部に放出されず楕円体部分(102)に篭ってしまい、点灯中のハロゲンランプが高温になって、例えば、樹脂製の口金に当該ハロゲンランプを装着した場合、前記熱により樹脂製口金が変形するという問題があった。甚だしい場合には、該ハロゲンランプを装着した光源装置を灯具に取り付けて点灯した場合、灯具を構成する、ハロゲンランプ近傍の樹脂部分も変形或いは溶けるということがあった。従って、赤外線反射皮膜を使用したハロゲンランプには、金属製の口金を使用せざるを得なかった。しかしながら、アダプターの形状によっては樹脂製口金を使用しなければならない場合があり、このような用途には赤外線反射皮膜付きハロゲンランプの使用は制限されていた。そこで、発明者は鋭意検討した結果、赤外線反射皮膜の付着範囲を検討することにより、ハロゲンランプの昇温を抑制することに成功した。
【特許文献1】特開2002−63871
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のように赤外線反射皮膜付着ハロゲンランプにも拘わらず、点灯時の昇温抑制が可能となるようにする事をその主目的とし、第2の目的はこれにより樹脂製口金を利用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
『請求項1』のハロゲンランプは「発光管部(10a)内にフィラメント(3)が張設されているハロゲンランプ(1)であって、フィラメント(3)の発光部分(3a)の端部(Q)から前記発光部分(3a)の中心軸(CL)に対して直交する線(S)と前記発光管部(10a)の外面との交点間が少なくとも赤外線反射皮膜形成領域(P)となっており、前記赤外線反射皮膜形成領域(P)から外れる部分が赤外線反射皮膜非形成領域(R)とされている」ことを特徴とする。
【0006】
このように赤外線反射皮膜形成領域(P)を定めることにより、赤外線反射皮膜による赤外線反射の効果(反射された赤外線がフィラメント(3)を再加熱してランプ効率向上に寄与すること)を享受することができる上、赤外線反射皮膜非形成領域(R)により効果的な放熱がなされ、ハロゲンランプ装着用口金樹脂の耐熱温度以上の昇温が抑制される。なお、本発明のハロゲンランプ(1)はダブルエンド型或いはシングルエンド型のいずれにも使用することができる。
【0007】
『請求項2』は「請求項1のハロゲンランプ(1)がシングルエンド型で、発光管部(10a)の頂部にチップ管(15)が形成されている請求項1のハロゲンランプであって、少なくとも前記チップ管(15)が赤外線反射皮膜非形成領域(R)とされている」ことを特徴とするもので、これにより赤外線反射皮膜(4)によって反射された赤外線は効率よくフィラメント(3)を最大限度で再加熱するにも拘らず、チップ管(15)の部分から放熱が効果的に行われ、最小限度でハロゲンランプ(1)の昇温を抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明では、ハロゲンランプ(1)の昇温が、例えば口金樹脂の耐熱温度である150℃以下に抑制されるので、赤外線反射皮膜(4)付きのハロゲンランプ(1)についても樹脂製口金(5)を使用することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示す実施例に従って本発明を詳細に説明する。図1は本発明にかかるシングルエンド型光源装置(A)の第1実施例(A1)の正面図で、ハロゲンランプ(1)と、これが装着されている口金(5)とで構成されている。ハロゲンランプ(1)は必要に応じてアウターバルブ(7)が設けられる。
【0010】
口金(5)はアダプター(図示せず)に合わせて形成されるものであり、種々の形状を持つ。口金(5)は金属製或いは樹脂製いずれのものもあるが、従来例で述べたように、従来の赤外線反射被膜付きハロゲンランプでは金属製のものは使用できなかった。本発明では、金属製は勿論、樹脂製のものでも使用することができるので、ここでは口金(5)には樹脂製のもの使用した例を使って説明する。
【0011】
本実施例(A1)では、樹脂製口金(5)には上面開口部(6)が形成されており、外鍔(8)が本体の外周に凸設されている。そして下面開口部がアダプターに装着されるようになっており、本実施例(A1)のシングルエンド型ハロゲンランプ(1)が樹脂製口金(5)の上面開口部(6)に装着されている。なお、アウターバルブ(7)を必要に応じて装着した場合、アウターバルブ(7)によってその外面全体或いは大部分が覆われることになる。
【0012】
シングルエンド型のハロゲンランプ(1)の外囲器(10)は、内部にフィラメント(3)が張設された発光管部(10a)とその一端から突設され、その内部にモリブデン金属箔(12)が埋設された封止部(11)とで構成され、発光管部(10a)の頂部にはチップ管(15)が凸設されている。前記発光管部(10a)は図1の場合、回転楕円状或いは球状に形成されており、図2の場合は、円筒状である。発光管部(10a)が回転楕円形の場合には、その2焦点が発光部分(3a)上に来るように設計され、球状の場合には、その中心が発光部分(3a)上に来るように設計される。
【0013】
また、フィラメント(3)の張設の仕方は、図1、2の場合、外囲器(10)の中心軸(2)に合わせてフィラメント(3)の発光部分(3a)が配置されている、図3、4の場合には外囲器(10)の中心軸(2)に対して直角に張設されている。
【0014】
フィラメント(3)はシングルコイル或いはダブルコイルが使用され、コイル部分が発光部分(3a)である。そして、その一端部が発光管部(10a)内に導出された内部リード棒(13)(14)の一端部に接続されており、これら内部リード棒(13)(14)の他端部が前記モリブデン金属箔(12)にスポット溶接されている。
【0015】
赤外線反射皮膜(4)はチタニア、シリカ等の酸化金属で形成された多重膜であり、フィラメント(3)から出射された光のうち、赤外線の一部は通過を許すとしても、そのかなりの部分をフィラメント(3)に向かって反射する働きを有する。赤外線反射皮膜(4)の形成範囲は、少なくともフィラメント(3)から出射した光のうち、赤外線がフィラメント(3)に反射して戻される範囲(領域)(P)を含む範囲であればよく[ただし、発光管部(10a)全体ではない。]、少なくともフィラメント(3)の発光部分(3a)の端部(Q)から前記発光部分(3a)の中心軸(CL)に対して直交する線(S)と前記発光管部(10a)の外面との交点間が少なくとも赤外線反射皮膜形成領域(P)となっており、この部分に赤外線反射皮膜(4)が形成される。そして、前記赤外線反射皮膜形成領域(P)から外れる部分が赤外線反射皮膜(4)が形成されない領域、即ち、赤外線反射皮膜非形成領域(R)である。
【0016】
図の実施例の場合の赤外線反射皮膜形成領域(P)は前記範囲内で、チップ管(15)を含む発光管部(10a)の頂部分と、発光管部(10a)のボトム部分を含む封止部(11)が赤外線反射膜形成非領域(R)となっているが、勿論、これに限られず、発光管部(10a)全体を赤外線反射皮膜形成領域(P)とし、チップ管(15)と封止部(11)とを赤外線反射皮膜非形成領域(R)としてもよい。前者の場合が赤外線反射被膜形成領域(P)の最小であり、後者の場合が最大であって、その間に於いて赤外線反射皮膜形成領域(P)の大きさを自由に変更することができる。
【0017】
これに対して図3、4の場合は外囲器(10)の中心軸(2)に対してフィラメント(3)の発光部分(3a)が直角方向に配置されている例である。この場合、赤外線反射皮膜形成領域(P)は発光管部(10a)の両面にて長手方向に伸びた帯状の領域となる。図の場合は、チップ管(15)には赤外線反射皮膜(4)が形成されないようになっているが、発光管部(10a)の側面から放熱することができるので、チップ管(15)にも赤外線反射被膜(4)を形成してもよい。
【0018】
図5は本発明の第2実施例(A2)で、ハロゲンランプ(1)がダブルエンド型の場合である。この場合も前述したように、前述の直線(S)と発光管部(10a)との交点間が最小の赤外線反射皮膜形成領域(P)となる。赤外線反射皮膜形成領域(P)の最大は発光管部(10a)全体に赤外線反射皮膜(4)を形成し、封止部(11)に赤外線反射皮膜(4)を形成しない場合である。発光管部(10a)の両端に若干の赤外線反射皮膜非領域(R)を設けておくことが放熱上より好ましい。
【0019】
このようにして形成されたハロゲンランプ(1)を点灯すると、フィラメント(3)の発光部分(3a)から出た光の内、赤外線のかなりの部分は赤外線反射皮膜(4)に反射されて発光部分(3a)を再加熱し、その結果、同じ光量を出光させる場合にはフィラメント(3)に対して供給される電流量は30〜40%程度低くなり、大きな省エネ効果を奏する。一方、赤外線反射皮膜非領域(R)では、前記発光部分(3a)からの光は赤外線を含めてそのまま外部に放射される。また、前述のように反射された赤外線の一部も赤外線反射皮膜非領域(R)を通って外部に放射され、発光管部(10a)内にこもる赤外線の量が減少する。その結果、発光管部(10a)の昇温が抑制され、口金(5)に樹脂を使用したとしても樹脂製口金(5)が、変形したり溶けたりするようなことがない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、本発明を採用することで赤外線反射皮膜(4)付きのハロゲンランプ(1)では従来不可能であった樹脂製口金の使用が可能となり、赤外線反射皮膜(4)付きのハロゲンランプ(1)の用途を大きく切り開くことが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例の正面図
【図2】本発明の第1実施例の変形例1の正面図
【図3】本発明の第1実施例の変形例2の正面図
【図4】図3の側面図
【図5】本発明の第2実施例の正面図
【図6】従来例の正面図
【符号の説明】
【0022】
(A)…光源装置
(1)…ハロゲンランプ
(2)…外囲器の中心軸
(3)…フィラメント
(3a)…発光部分
(10a)…発光管部
(Q)…発光部分の端部
(S)…発光部分の中心軸に対して直交する線
(CL)…発光部分の中心軸
(P)…赤外線反射皮膜形成領域
(R)…赤外線反射皮膜非形成領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管部内にフィラメントが張設されているハロゲンランプにおいて、
少なくとも、フィラメントの発光部分の端部から前記発光部分の中心軸に対して直交する線と前記発光管部の外面との交点間が赤外線反射皮膜形成領域となっており、前記赤外線反射皮膜形成領域から外れる部分が赤外線反射皮膜非形成領域とされていることを特徴とするハロゲンランプ。
【請求項2】
請求項1のハロゲンランプがシングルエンド型で、発光管部の頂部にチップ管が形成されている請求項1のハロゲンランプにおいて、
少なくとも前記チップ管が赤外線反射皮膜非形成領域とされていることを特徴とするハロゲンランプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハロゲンランプが樹脂製口金に装着されていることを特徴とする光源装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−181757(P2008−181757A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14116(P2007−14116)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(500551769)ソーラム株式会社 (13)