説明

ハロゲン化窒素の合成方法

【課題】
CVD装置等の半導体製造装置の内部洗浄に有用なNFや低級ノルマルアルキル水銀化合物からジフルオロアミノアルカン合成の原料として有用なハロゲン化窒素の合成法を提供する。
【解決手段】
一般式(NFxL3−x)で表されるハロゲン化窒素を合成するに際し、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物、またはインターハロゲン化合物とFガスとの混合物とを反応させる。
ただし、Lは、F以外のハロゲン、1≦x≦3、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置等の半導体製造装置の内部洗浄に有用なNFや低級ノルマルアルキル水銀化合物からジフルオロアミノアルカン合成の原料として有用なハロゲン化窒素の合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲン化窒素を製造する方法は、A.V.PANKRATOVらによりNHClとFからNFCl、NFClが生成すること等が報告されている(非特許文献1)。インターハロゲンを用いたNFCl、NFの合成に関しては、固体状のNHFとNなどで35%以下に希釈したClFを−40℃から室温で反応させる方法(特許文献1)、固体状のNHFもしくは固体状のNHHFをフルオロカーボンオイルに分散させて50〜75℃の温度範囲でClFと反応させる方法(特許文献2)等がある。前者の方法は固気反応であり、反応の制御や連続的な合成が困難であるという問題があり、後者の方法は、フルオロカーボンオイルが局部的な反応熱の発生によりClFと反応し爆発する危険性が有り、さらに製造したNFCl中にカーボンオイルミストや蒸気が混入して純度低下を招く恐れがあった。またHNFとClFとの反応からNFClが、ClFとHNFとの反応からNFが生成することが知られている(非特許文献2)。しかし、これらの方法にはHNF自体の合成が困難という問題がある。またNFCl、NFBr、NFBrなどのハロゲン化窒素化合物も知られている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。またハロゲン化窒素の一つであるNFを製造する方法として、(a)液状の酸性フッ化アンモニウムやアンモニウム錯化合物のHF付加物にガス状のFを吹き込む方法(特許文献3、特許文献4)、(b)酸性フッ化アンモニウムのHF溶液の電気分解による方法(特許文献5)、(c)気体状NHと気体状Fとを反応させる方法(特許文献6)、(d)NとFの混合気のグロー放電による方法(特許文献7)、(e)FNとNOFあるいはClFとの気相反応による方法(特許文献8)、(f)固体の(NHAlFとFとの反応による方法(特許文献9)などが知られている。しかし、(a)の方法は気体のFと液体との接触効率を高めるため高エネルギーの動力で液攪拌を行う必要があり、反応器の構造が機械的に複雑になることや多大なエネルギーを必要とする問題があった。また、反応熱の発生が大きく、装置の大型化が困難であること、さらには合成可能な温度範囲が狭いという問題があった。(b)の電気分解法は、多大な電気エネルギーを必要とすることやNi電極が溶けだしスラッジが発生することやHとNFが混合することで爆発の危険性が有るなどの問題がある。(c)の方法は、爆発の危険性が伴い、(d)の方法は収率が低いため好ましい方法ではない。また(e)、(f)の方法はFNや(NHAlF自体の合成が必要であり煩雑で困難である。
【特許文献1】米国特許第3084025号明細書
【特許文献2】米国特許第3314770号明細書
【特許文献3】特公昭55−8326号公報
【特許文献4】特開平9−221307号公報
【特許文献5】特公昭47−16418号公報
【特許文献6】特開平02−255513号公報
【特許文献7】米国特許第3304248号明細書
【特許文献8】米国特許第4001380号明細書
【特許文献9】特開昭60−71503号公報
【非特許文献1】ドクラドウイ・アカジエミー・ナウク・エスエスエスエル、182巻、1号(1968)
【非特許文献2】Pilipovich,Donald, Schack, Carl J., Inorganic Chem., 7(2), 386-7,(1968)
【非特許文献3】EXTON,D.B., Williams S.A., et al., J. Phys. Chem., 1993
【非特許文献4】Edward W.L.and Ivan C.S.,Inorganic High−Energy Oxidizers.,MARCEL DEKKER,INC.,New York, p86(1968)
【非特許文献5】Edward W.L.and Ivan C.S.,Inorganic High−Energy Oxidizers.,MARCEL DEKKER,INC.,New York, p89(1968)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、安全に簡便に工業的なハロゲン化窒素化合物の合成法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、鋭意検討の結果、液体状態の酸性フッ化アンモニウム(NHF・nHF、1<n)、酸性フルオロアンモニウム錯体((NH)yMFz・mHF、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦m)及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物、または該化合物とFとを混合して反応させることで収率良くハロゲン化窒素が得られることを見出し本発明に至った。
【0005】
すなわち、本発明は、一般式(NFxL3−x)で表されるハロゲン化窒素を合成するに際し、液状のNHF・mHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物、またはインターハロゲン化合物とFガスとの混合物をとを反応させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法であり(ただし、Lは、F以外のハロゲン、1≦x≦3、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。)、また、2元素以上のハロゲンを含むハロゲン化窒素と、FまたはHFとを反応させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法であり、さらに、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物とを反応させながら、NH、NHとHF、またはNHFを反応させることにより、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHFを再生させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法(ただし、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。)を提供するものである。
【0006】
以下、本発明について詳細に述べる。
本発明は、上記アンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物の溶融塩もしくはアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF溶液にインターハロゲン化合物を反応させると、インターハロゲン化合物はほぼ100%利用され、ハロゲン化窒素(NFxL3−x)(L=ハロゲン)が生成する。また、生成したハロゲン化窒素ガスをFまたはHFと反応させることにより、NFとインターハロゲン化合物が生成する。さらに生成したインターハロゲン化合物は、さらに前記反応工程に再利用が図れる。
【0007】
本発明において、原料として液体状の酸性フッ化アンモニウム(NHF・nHF)が、使用される。nは、1<nであるが、好ましくは、2.0≦n≦20である。また、もうひとつの原料である酸性フルオロアンモニウム錯体((NH)yMFz・mHF)が、使用される。ただし、y、z、mは、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mの範囲で、Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。具体的には、Mは、Al、Be、Cd、Ce、Cr、Co、Cu、Ga、Ge、Ho、In、Fe、Pb、Mn、Nb、Ni、P、Sb、Si、Sn、Th、Ti、V、Zn、Zr、W、Mg、Li、K、Naである。これらを用いた化合物は、(NHAlF、NHAlF、NHMgAlF、NHBeF、NHLiBeF、NHNaBeF、NHCdF、NHCeF、(NHCeF、(NHCeF、(NHCeF、(NHCrF、NHCrF、NHCrF、(NHCoF、(NHCoF、NHCoF、NHCuF、(NHCuF、(NHCuF、(NHGaF、(NHGaF、NHGaF、(NHGeF、(NHGeF、NHHoF、(NHIn、(NHFeF、NHFe、NHFeF、(NHNaFeF、(NHKFeF、(NHPbF、NHMnF、(NHMnF、NHNbF、(NHNiF、NHNiF、NHPF、NHSbF、NHSbF、NHSb、(NHSiF、(NHSiF、NHLiSiF、(NHSnF、(NHThF、(NHThF、(NHTiF、(NHTiF、(NHVF、NHZnF、(NHZnF、(NHZrF、NHZrF、(NHZrF、NHWF、等が挙げられる。また、これらの化合物を混合して使用しても良い。これらの化合物の中でも(NHAlF、NHAlF、NHCuF、(NHCuF、(NHCuF、(NHFeF、NHFe、NHFeF、(NHNiF、NHNiF、(NHSiFが、特に好ましい。
【0008】
本発明の合成方法において、上記アンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物の溶融塩もしくはアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF溶液の揮発性を抑制するため、アルカリ金属フッ化物やアルカリ土類金属フッ化物を添加してもよい。さらにアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩を再生するためには、NHもしくはNHとHFの混合ガスあるいは混合液、もしくはNHFをハロゲン化窒素の合成反応とともに反応器に導入することで達成できる。
【0009】
本発明で用いるインターハロゲン化合物とは、ClF、ClF、ClF、BrF、BrF、BrF、IF、IF、IF、IF等が挙げられる。特に、ClF、BrF、BrF、IF、IF、IFが好ましい。
【0010】
また、本発明で用いる上記アンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物の溶融塩もしくはアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF溶液の揮発性を抑制するためのアルカリ金属フッ化物としては、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、FrF等が挙げられ、アルカリ土類金属フッ化物としては、BeF、MgF、CaF、SrF、BaF、RaF等が挙げられる。特に、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF、CaF、BaFが好ましい。
【0011】
反応の方法としては、反応器に予め仕込んだアンモニウム塩、またはフルオロアンモニウム錯体塩の溶融塩もしくはHF溶液に、インターハロゲン化合物をガス状あるいは液状で反応器に供給して反応させる方法、インターハロゲン化合物溶液のHF溶液中に上記アンモニウム塩、またはフルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物の溶融塩もしくはHF溶液を滴下する方法やそれらの固体そのものを投入する方法も選択できる。
【0012】
この方法の大きな利点として、反応温度範囲が広いことが挙げられる。例えば、酸性フッ化アンモニウム溶融塩とFとの反応では、120℃から200℃以下の比較的狭い温度でしかハロゲン化窒素(三弗化窒素)の合成ができないが、当該発明の方法では以下に述べる広い範囲での合成が可能になる。
【0013】
反応温度の下限は、液状のアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物にインターハロゲン化合物を導入する場合は、アンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物ならびにインターハロゲン化合物の融点のうち、どちらか高い方以上の温度であれば良い。液状のインターハロゲン化合物もしくはそのHF溶液に固体あるいは液体のアンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物を投入する場合は、インターハロゲン化合物もしくはアンモニウム塩のHF溶液が固化しない温度以上であれば良い。反応温度の上限は、250℃以下が好ましい。250℃を超えると装置材料の腐食性が激しいため好ましくない。以上が反応温度の範囲であるがより好ましくは0℃以上200℃以下がよい。
【0014】
フルオロアンモニウム錯体塩のHF付加物とインターハロゲン化合物との反応で合成を行う場合は、20℃以上250℃以下の温度が好ましく、より好ましくは50℃以上200℃以下が良い。温度が低いと反応が殆ど進まず、温度が高いとNの生成率が高くなるため好ましくない。
また、反応させる圧力は、アンモニウム塩、フルオロアンモニウム錯体塩の蒸気圧を鑑みて適宜決めれば良い。
【0015】
また、インターハロゲン化合物のうちフッ素以外のハロゲンは、大部分が塩素、臭素、沃素あるいはハロゲン化窒素として生成する。そのため、反応器から排出されたガスをFと反応させることでフッ素を含むインターハロゲン化合物に再生でき、合成原料として再利用が図れる。
【0016】
次に、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHFの再生は、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物とを反応させながら、NHを導入することで行われる。具体的には、(NH)AlFとClFとの反応でNFClやNFを生成した溶液中にはNHAlFが分散したHF溶液が残る。この中にNHを吹き込むことで(NH)AlFが再生される。また、再生では、必要に応じてHFも同時に流入させても良いし、予め合成したNHFやNHF・nHFを導入しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法により、CVD装置等の半導体製造装置の内部洗浄に有用なクリーニングガスであるNFや低級ノルマルアルキル水銀化合物からジフルオロアミノアルカン合成の原料として有用なハロゲン化窒素を容易にかつ安価に製造が可能になる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0019】
比較例1〜3
液状の(NH)AlF・6HFをステンレス鋼製容器に入れ、攪拌しながら下記の条件で100%Fをバブリングさせた。排出されたガスを冷却トラップ(0℃)に通過させた後、FT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析したところ微量のNFの生成が確認できたが、殆どは未反応のFであった(表1)。なお表1中の濃度はHFを除外している。その理由は、溶融塩が揮発によるHF濃度増加とガス流による搬送で物質収支が取れない結果となるためである。
【0020】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
(NH)AlF・6HF: 162g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度: 60℃、100℃、120℃
【0021】
【表1】

【0022】
比較例4〜6
液状のNHF・2.5HFをステンレス鋼製容器に入れ、攪拌しながら下記の条件で100%Fをバブリングさせた。排出されたガスを冷却トラップ(0℃)を通過させた後、FT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析したところ微量のNFの生成が確認できたが、殆どは未反応のFであった(表2)。なお表2中の濃度はHFを除外している。その理由は、溶融塩の揮発によるHF濃度増加とガス流による搬送並びにNHを液層に追加充填せずに合成を行った場合には揮発してくるHF濃度が経時的に変化し物質収支が取れない結果となるためである。
【0023】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
NHF・2.5HF: 120g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度: 60℃、100℃、120℃
【0024】
【表2】

【0025】
実施例1〜6
液状の(NH)AlF・6HFをステンレス鋼製容器に入れ、攪拌しながら下記の条件で100%ClFをバブリングさせた。排出されたガスをFT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析した(表3)。その結果、ClFは0℃でも85%の反応しておりNFCl、NFなどのハロゲン化窒素が得られることが分かった。なお表3中の濃度はHFを除外している。その理由は、溶融塩が揮発によるHF濃度増加とガス流による搬送で物質収支が取れない結果となるためである。またHFと表3中の物質以外にHCl、Clが生成する。
【0026】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
(NH)AlF・6HF: 162g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度:0℃、20℃、60℃、100℃、120℃、150℃
【0027】
【表3】

【0028】
実施例7〜13
液状のNHF・2.5HFをステンレス鋼製容器に入れ、攪拌しながら下記の条件で100%ClFをバブリングさせた。排出されたガスを、FT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析した(表4)。その結果、NFCl、NFCl、NFなどのハロゲン化窒素が得られることが分かった。なお表4中の濃度はHFを除外している。その理由は、溶融塩が揮発によるHF濃度増加とガス流による搬送で物質収支が取れない結果となるためである。またHFと表4中の物質以外にHCl、Clが生成する。またArを希釈ガスに用いて20%にClFを希釈した場合もほぼ同様の結果が得られた。
【0029】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
NHF・2.5HF: 120g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度:−15℃、0℃、20℃、60℃、100℃、120℃、150℃
【0030】
【表4】

【0031】
実施例14
液状のNHF・2.5HFをステンレス鋼製容器に入れ、温度100℃に加温して、攪拌しながら下記の条件で1%ClF(He希釈ガス)をバブリングさせた。排出されたガスを、FT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、NFが85%の収率(ClFベース)で得られた。
【0032】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
NHF・2.5HF: 120g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
【0033】
実施例15
実施例3と同様の実験で得られたガスをNaF管を流通させてHFを100ppm以下に低下させた後、100℃に加熱したステンレス管(1/2インチφ×500mmL)にFを100SCCM混合しながらFT−IR分析を行った。その結果、NFClが消失しNFとClFが得られた。また加熱温度を300℃に上げてもNFとClFが得られた。さらに加熱したガスを冷媒で−78℃に冷却したトラップを通過させたところ、トラップ中にClFが得られ、NFはトラップを通過させることができた。なお捕集したClFは再度合成に利用した。
【0034】
実施例16
実施例14で使用したステンレス鋼製容器にClFのHF溶液300CC(混合比率 ClF:HF=1:10)を入れ、攪拌しながら0℃で液状のNHF・10HFを滴下したところ、NF、NFClが1:2の割合で得られた。なお、Nの生成率は全体の30%であった。なお、ClFに変えてBrF、BrF、IF、IF、IFを用いてもほぼ同等の結果が得られた。
【0035】
実施例17
実施例14で使用したステンレス鋼製容器にNHF・2HF溶液(300CC)を入れ、攪拌しながら60℃でClFとFを20SCCMと10SCCM混合して吹き込んだところ、NFClが殆ど得られずNFが得られた。なお、この時のNの生成率は全体の5%であった。
【0036】
実施例18
液状のNHF・2.5HFをステンレス鋼製容器に入れ、攪拌しながら下記の条件でNFで希釈した10%ClFをバブリングさせると同時に、ClFをバブリングさせた管と別の管から10%に希釈したNHをバブリングさせた。排出されたガスを、FT−IR、UV、ガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、NFとClが得られた。
【0037】
[条件] ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
NHF・2.5HF:120g
ガス吹き込み口から3cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度:125℃
ClF流量: 12SCCM
NH流量 : 4SCCM
【0038】
実施例19
液状のNHF・2.5HFにClFを下記条件で吹き込み、反応器から排出されたガスをFT−IRとUVで分析したところNFCl、NFCl、HF、ClF、Clが混合したガスであることが確認できた。このガスを100℃に加熱したNi管中にF(100SCCM)と共に導入し、Ni管から排出されたガスを分析したところNFCl、NFClが消失しNFが生成していた。また酸性フッ化アンモニウムを(NH)AlF・6HFに変えても同様の結果が得られた。
[条件]ステンレス鋼製容器:φ55mm×H220mm、500ml
NHF・2.5HF:240g
ガス吹き込み口から6cm液浸
反応器内圧力:93.3kPa
反応温度:40℃(室温でガス導入を開始し、自熱で40℃まで温度上昇し安定)
ClF流量: 50SCCM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(NFxL3−x)で表されるハロゲン化窒素を合成するに際し、液状のNHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物とを反応させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法。
ただし、Lは、F以外のハロゲン、1≦x≦3、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、
Mは、元素周期律表の1族から16族の元素、並びにそれらの混合元素を表す。
【請求項2】
一般式(NFxL3−x)で表されるハロゲン化窒素を合成するに際し、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物とFガスとの混合物を反応させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法。
ただし、Lは、F以外のハロゲン、1≦x≦3、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、
Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法で合成された2元素以上のハロゲンを含むハロゲン化窒素と、FまたはHFとを反応させることを特徴とするハロゲン化窒素の合成方法。
【請求項4】
NHF・nHF、(NH)yMFz・mHF、及びこれらの混合物からなる群から選ばれたアンモニウム錯化合物と、インターハロゲン化合物とを反応させながら、NH、NHとHF、またはNHFを反応させることにより、NHF・nHF、(NH)yMFz・mHFを再生させることを特徴とする請求項1又は2記載のハロゲン化窒素の合成方法。
ただし、1<n、1≦y≦4、2≦z≦8、0.1≦mを表し、
Mは、元素周期律表の1族から16族までの元素、並びにそれらの混合元素を表す。

【公開番号】特開2007−308357(P2007−308357A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153015(P2006−153015)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)