説明

ハロゲン化銀乳剤、写真感光材料、ハロゲン化銀粒子の成長方法およびフィルター材料

【課題】高感度、高画質を与えるハロゲン化銀乳剤を提供する。
【解決手段】少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子(AgX。)を有するハロゲン化銀乳剤において、該粒子の投影面積の合計の60〜100%の粒子が、AgI含率が85〜100モル%であり、該粒子形状が直角6面体、あるいは、その角及び/又はエッジが丸みを帯びた形状であり、該粒子の円相当投影直径が、0.01〜20μmである粒子(AgX1)、であるハロゲン化銀乳剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は写真の分野で有用なハロゲン化銀(以下、「AgX」と記す)乳剤、ハロゲン化銀粒子の製造方法、及び写真感光材料(以下、「感材」と記す)に関する。またUV光、及び/又は、青光を吸収するフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
I−1)従来、次の技術が公開されている。
1)AgIの結晶構造として、α型、β型、γ型、δ型が存在する事が、それらのX線回折データから確認されており、後記文献1の第1章と、文献2〜5の記載を参考にできる。
α型は体心立方構造で、約150℃以上の高温域で存在する事。それ以下の温度では、六方晶構造のβ型と、面心立方構造のγ型(Cubic−Phaseと呼ばれる)が存在する事、両者を完全に作り分ける事は困難である事。δ型はNaCl型結晶構造で、高温高圧の特殊な条件で存在する事。
2)文献6には、14面体、12面体、6角柱形状のAgI粒子が記載されている。
3)文献7には、平板状のAgI粒子が記載されている。
4)27℃以下にすると、不安定で消滅するα型AgIに関しては、文献3に記載されている。該消滅して、β型とγ型になる。しかし、27℃以下で該変化する材料は、実用できない。27℃以上で保存された該α型AgI乳剤粒子の、粉末法X線回折図が文献3に掲載されていて、β型相の(002)面の回折ピーク(β2)と、α型相の(110)面の回折ピーク(α1)の強度比=「α1のピーク強度/β2のピーク強度」が、0.35以下である。即ち、α型の含率が非常に低い態様である。
5)25℃以下でも、固有光吸収端波長が、β型よりも10nm以上、長波長側にあるAgI乳剤粒子に関しては、文献10に記載されている。該粒子はα型でも、β型でも、γ型でもなく、その混合物でもない、と記載されている。
6)AgI粒子形成を(Ag+濃度>I―濃度)条件で行うと、γ含率の高い粒子が得られ、(Ag+濃度<I―濃度)条件で行うと、β含率の高い粒子が得られる事が、文献3に記載されている。AgI結晶を温度変化させた時の挙動については、文献5に記載されている。
従来のAgI乳剤粒子の調整、その特性、およびその写真感光材料への利用に関しては、文献1〜10、及びその引用文献に記載されている。
7)β型とγ型の400〜430nm領域の光吸収は、直接遷移型である為に、その吸収係数がAgBrの該領域の吸収係数の約100倍大きい。これは青紫光を効率良く吸収
するという利点を有する。これに関しては文献8に記載されている。
該特性を利用して、カラー写真のUVフィルター層へ、UV吸収剤としてAgI粒子を用いる事に関しては、米国特許第2327764号に記載されている。
8)AgI粒子にエピタキシャルAgX部(以下、「エピ部」と略称する)を形成し、エピ部に化学増感核を形成し、そこに潜像を効率よく形成する態様が提案されている。これに関しては文献9に記載されている。
9)感光材料の分散媒層に高屈折率微粒子、及び/又は、原子、分子、イオンの1種以上を混入して、分散媒層の屈折率を上げて、AgX粒子の光散乱強度を減少させる事に関しては、文献11に記載されている。
10)高被覆率で分光増感したAgX平板粒子(AgBr含率が50モル%以上)の近傍に、高AgI含率の微粒子を存在させて、現像処理時のDye Stainの発生量を抑制する事に関しては、文献12に記載されている。
しかし、以上の文献には、本発明の直角6面体AgI粒子に関する記載はない。該6面体粒子比率の高い乳剤に関する記載はない。
【特許文献1】米国特許第2327764号明細書
【特許文献2】米国特許第4672026号明細書
【非特許文献1】B.L.J.Byerleyら、J.Photographic Science,1970年、18巻、53〜59頁(総説)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のAgX乳剤に対して、より高感度、高画質を与えるAgX乳剤、及び写真感光材料を提供する事。また、青紫光吸収特性の優れた青紫光吸収フィルター材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は次の実施態様によって達成された。
I−2)実施態様。
(1) 少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子(AgX0)を有するハロゲン化銀乳剤において、該粒子の投影面積の合計の50〜100、好ましくは60〜100、より好ましくは80〜100、更に好ましくは90〜100、特に好ましくは95〜100%の粒子が、AgI含率が80〜100、好ましくは85〜100、より好ましくは90〜100、更に好ましくは95〜100モル%であり、該粒子の形状が直角6面体(直方体を意味し、立方体も含む)、又は、その角及び/又はエッジが丸みを帯びた形状であり、該粒子の円相当投影直径(以下、直径、と記す)が、0.01〜20、0.02〜10、0.03〜3μmである粒子(AgX1)、である事を特徴とするハロゲン化銀乳剤(AgX4)。
(2) 該6面体の辺長比=「1個の粒子の1つの面で、(最長辺の辺長/最短辺の辺長)を指す」、又は、該丸みを帯びた粒子の辺の直線部又は面の平坦部を延長する事により、形成される直角6面体の該辺長比が、1.0〜1.4、好ましくは1.0〜1.3、より好ましくは1.0〜1.2、更に好ましくは1.0〜1.1、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(3) 支持体の一方または両面上に1層以上、好ましくは1〜20層のハロゲン化銀乳剤を塗布した写真感光材料において、少なくとも1層、好ましくは1〜10層のハロゲン化銀乳剤が、(1)記載のハロゲン化銀乳剤である事を特徴とする写真感光材料。
(4) 少なくとも分散媒と水とハロゲン化銀種晶粒子(AgX10)を有するハロゲン化銀種晶乳剤(AgX11)に、AgI含率が80〜100、好ましくは85〜100、より好ましくは90〜100、更に好ましくは95〜100モル%のハロゲン化銀微粒子乳剤(AgX12)を添加し、添加した該微粒子を溶解させ、該種晶粒子上に沈積させる事によ
り、ハロゲン化銀種晶粒子を成長させる方法において、該微粒子が(1)記載のAgX1 を含有する事を特徴とするハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
【0005】
(5) 該AgX12が該AgX4の態様である事、好ましくは、AgX12の平均直径(μm)が0.005〜0.3、好ましくは、0.02〜0.2である事、を特徴とする(4)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(6) 該丸みを帯びた部分の曲率半径が、粒子の該直径の0.01〜20、好ましくは0.05〜10、より好ましくは0.2〜5倍、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(7) 該直角6面体の各面の角の角度が、84〜96、好ましくは86〜94、より好ましくは88〜92度、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(8) 該AgX1粒子、又は該AgX0粒子の該直径の分布の変動係数(標準偏差/平均値)=CVが、0.01〜0.5、好ましくは0.02〜0.3、より好ましくは0.03〜0.2、更に好ましくは0.03〜0.15である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(9) 該6面体粒子の1つの面を、基板面に対して平行にして基板面上に設置し、−100℃以下に冷却して、該面の上方から電子線を照射し、透過型電子顕微鏡像を撮影した時、該粒子の上面の直角4辺形の対角線方向に、線の両側でコントラストが異なる線が、1つの粒子中に1〜105本、好ましくは2〜104本、より好ましくは2〜103本観測される粒子が存在する事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(10) 該線が、結晶欠陥面である事を特徴とする(9)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0006】
(11) 該欠陥面が、AgI結晶のα型相、β型相、γ型相間のいずれかの相界面である事、を特徴とする(10)記載のハロゲン化銀乳剤。
(12) 該AgX。粒子の粉末法X線回折を測定した時、β型相の(002)面の回折ピーク(β2)と(101)面の回折ピーク(β3)の角度間に、回折ピーク(α1)を有する事、更に、「α1のピーク強度/β3のピーク強度」比が1.0〜106、好ましくは2.0〜105、より好ましくは5〜104、更に好ましくは10〜103 である事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(13) 該α1のピーク位置が、(該α1のピーク角度―該β2のピーク角度)/(該β3のピーク角度―該β2のピーク角度)=0.1〜0.9、好ましくは、0.2〜0.8、より好ましくは0.3〜0.7の領域にある事、を特徴とする(12)記載のハロゲン化銀乳剤。
(14) 該乳剤(AgX4)を25℃以下、好ましくは0〜20℃、より好ましくは0〜10℃で、2日以上、好ましくは10日以上、より好ましくは30日以上、保存しても、(12)記載のピーク強度比が保持されている事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0007】
(15) 該保存が、該乳剤を支持体上に塗布され、乾燥された塗布物の態様で成される事、を特徴とする(14)記載のハロゲン化銀乳剤。
(16) 該AgX1又はAgX0の固有光吸収の長波長端波長が、β型結晶相の該波長よりも、8〜50、好ましくは15〜50、より好ましくは25〜45nmだけ、長波側にある事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(17) 該AgX0 が、少なくとも該AgX1とAgX2粒子を含有し、AgX2粒子のAgI含率(モル%)が、80〜100、好ましくは85〜100、より好ましくは90〜100、更に好ましくは95〜100モル%であり、該粒子がβ型結晶構造を含有し、該β型の含有率(モル%)が30〜100、好ましくは50〜100、より好ましくは80〜100である事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(18) 該AgX2粒子の平均直径が、該AgX1粒子の平均直径の0.5〜5、好ましくは0.7〜2、より好ましくは0.9〜1.5倍である事、を特徴とする(17)記載のハロゲン化銀乳剤。
(19) 該AgX1粒子とAgX2粒子の投影面積比=(該AgX2粒子の投影面積の合計/該AgX1粒子の投影面積の合計)=A1、又は両者の粒子数比=(該AgX2粒子の粒子数の合計/該AgX1粒子の粒子数の合計)=A2が、10-5〜0.4、好ましくは10-4〜0.2、より好ましくは10-4〜0.1、更に好ましくは10-3〜0.01、である事を特徴とする(17)又は(18)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0008】
(20) 該AgX1粒子とAgX2粒子の投影面積比=A1、又は両者の粒子数比=A2が、10-5、より小さい事を特徴とする(17)記載のハロゲン化銀乳剤。
(21) 該AgX2粒子の形状が12個の平行四辺形状の外表面を有する12面体、又はその角および/またはエッジが丸みを帯びた形状、である事を特徴とする(17)記載のハロゲン化銀乳剤。
(22) 該AgX2粒子の少なくとも1つの面が、該β型結晶構造の{002}面である事、少なくとも1つの面が、該β型結晶構造の{101}面である事、を特徴とする(21)記載のハロゲン化銀乳剤。
(23) 該AgX2粒子の形状が12個の台形状の外表面と互いに平行な6角形の面を2個有する14面体、あるいはその角および/またはエッジが丸みを帯びた形状であり、両者の投影面積比=(該AgX2粒子の投影面積の合計/該AgX1粒子の投影面積の合計)=A1、又は両者の粒子数比=(該AgX2粒子の粒子数の合計/該AgX1粒子の粒子数の合計)=A2が、10-5〜0.4、好ましくは10-4〜0.2、より好ましくは10-4〜0.1、更に好ましくは10-4〜0.01、である事を特徴とする(17)記載のハロゲン化銀乳剤。
(24) 該AgX2粒子の該6角形の面が、該β型結晶構造の{002}面である事、該台形状の面の少なくとも1つが該β型結晶構造の{101}面である事、を特徴とする(23)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0009】
(25) 該6角形状の面の大きさが、1つの粒子中において異なり、(小さい6角形の面積/大きい6角形の面積)=A3が、0.05〜0.90、好ましくは0.1〜0.80、より好ましくは0.2〜0.7、更に好ましくは0.3〜0.6である事、を特徴とする(23)記載のハロゲン化銀乳剤。
(26) 該14面体粒子が、粒子表面上に更に、トラフ(樋状のくぼみ)を1〜10本有する事、を特徴とする(23)記載のハロゲン化銀乳剤。
(27) 該6面体の最大辺長比=「1個の粒子で、(最長辺の辺長/最短辺の辺長)を指す」、又は、該丸みを帯びた粒子の辺の直線部又は面の平坦部を延長する事により、形成される直角6面体の該最大辺長比が、1.0〜1.3、好ましくは1.0〜1.2、より好ましくは1.0〜1.1、更に好ましくは1.0〜1.05、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(28) 該AgX2粒子が、該12面体粒子と該14面体粒子である事、好ましくは、(該12面体粒子数/該14面体粒子数)=0.1〜100、好ましくは0.5〜50、
より好ましくは1.0〜30、である事を特徴とする(17)記載のハロゲン化銀乳剤

(29) (該12面体粒子の直径/該14面体粒子の直径)=0.1〜5、好ましくは0.2〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8、である事を特徴とする(28)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0010】
(30) 該成長方法において、該AgX12以外に、他の1種以上のAgX微粒子(AgX13)、Ag+、X-、の1種以上が添加される事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(31) 該AgX13のAgX組成が、AgCl、AgBr、AgI、およびそれらの2種以上のあらゆる比率の混晶である事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(32) 該種晶粒子のAgX組成が、AgCl、AgBr、AgI、およびそれらの2種以上のあらゆる比率の混晶である事、を特徴とする(4)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(33) 該方法で成長させた粒子が、アスペクト比(投影直径/厚さ)が、2〜1000、好ましくは、4〜500の平板粒子である事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(34) 該平板粒子が、互いに平行な双晶面を有する平行双晶平板粒子である事、または主平面が{100}面である平板粒子である事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
【0011】
(35) 該沈積により、該種晶上にエピ部が形成される事、該エピ部が、該粒子表面上の総面積の0.1〜70、好ましくは0.5〜40%を占める事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(36) 該エピ部との界面に、1種以上の結晶格子欠陥が導入される事、を特徴とする(35)記載の種晶粒子の成長方法。
(37) 該沈積により、該種晶に1種以上の結晶格子欠陥が導入される事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(38) 該欠陥が少なくとも、刃状転位線を1粒子あたり、1〜50、好ましくは2〜30本含有する事、を特徴とする(36)、(37)記載の種晶粒子の成長方法。
(39) 該(AgX12)の直径が、1〜200、好ましくは5〜100、より好ましくは10〜50nmである事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
【0012】
(40) 該(AgX12)が、形成された後に、その1〜99.99、好ましくは10〜99.9、より好ましくは30〜99、更に好ましくは60〜97%の水分が除去された後に、添加される事、を特徴とする(4)記載の種晶粒子の成長方法。
(41) 該水分除去が、(限外ろ過処理)、(凝集沈降させ、上澄み液を除去する方法)、(遠心分離して、上澄み液を除去する)、のいずれかの方法でなされる事、を特徴とする(39)記載の種晶粒子の成長方法。
(42) 該AgX。粒子の粉末法X線回折を測定した時、β型相の(100)面の回折ピークを(β1)とすると、粒子の「α1のピーク強度/(β1)のピ―ク強度」比が1.0〜106、好ましくは2.0〜105、より好ましくは5〜104、更に好ましくは10〜103 である事、を特徴とする(12)記載のハロゲン化銀乳剤。
(43) 該AgX。粒子がAgI粒子である時、該粒子をCuKβ線で粉末法X線回
折を測定した時、該α1のピーク位置が、2θ=22.0〜22.7、好ましくは22.1〜22.6、より好ましくは22.15〜22.5度、の領域にある事、を特徴とする(12)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0013】
(50) 該乳剤が、反応容器内の分散媒溶液中へ、攪拌しながら、Ag+塩溶液と、X-塩溶液をダブルジェット添加するバッチ方式で形成された乳剤、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(51) 該乳剤が、少なくとも分散媒と水とAgI含率が80〜100、好ましくは85〜100、より好ましくは90〜100、更に好ましくは95〜100モル%のハロゲン化銀種晶粒子(AgX6)を有するハロゲン化銀種晶乳剤(AgX7)に、AgI含率が80〜100、好ましくは85〜100、より好ましくは90〜100、更に好ましくは95〜100モル%のハロゲン化銀微粒子(AgX13)を添加し、添加した該微粒子を溶解させ、該種晶粒子上に沈積させる事により、形成された粒子である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(52) 該乳剤が、連続法混合容器内へAg+塩溶液と、X-塩溶液を供給し、混合容器内で両者が混合され、混合液が送液管を通して連続的に排出される連続製造方式で形成された粒子、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(53) 該Ag+塩溶液と、X-塩溶液が、中空管を通して、分散媒溶液中に液中添加される事、添加された後、迅速に両者が混合される事、好ましくは10-6〜1、より好ましくは10-6〜10-1、更に好ましくは10-6〜10-2秒の間に混合される事、を特徴とする(50)又は(52)記載のハロゲン化銀乳剤。
(54) 該Ag+塩溶液と、X-塩溶液の少なくとも一方、好ましくは両方に分散媒を0.01〜10、好ましくは0.1〜7、より好ましくは0.5〜3質量%含有させる事、を特徴とする(50)、(52)、(53)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
【0014】
(55) 該分散媒溶液の温度と、該添加溶液の温度との差が、0〜20、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5℃である事、を特徴とする(50)又は(52)記載のハロゲン化銀乳剤。
(56) 該Ag+塩溶液と、X-塩溶液の少なくとも一方、好ましくは両方の添加
が、添加孔数が2〜1015、好ましくは6〜1010、より好ましくは10〜1010 個である多孔添加系を用いて、成される事、を特徴とする(50)又は(52)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0015】
(60) 該AgX12が、反応容器内の分散媒溶液中へ、攪拌しながら、Ag+塩溶液と、X-塩溶液をダブルジェット添加するバッチ方式で形成された微粒子、である事を特徴とする(4)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(61) 該AgX12が、連続法混合容器内へAg+塩溶液と、X-塩溶液を供給し、混合容器内で両者が混合され、混合液が送液管を通して連続的に排出される連続製造方式で形成された微粒子、である事を特徴とする(4)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(62) 該Ag+塩溶液と、X-塩溶液が中空管を通して供給され、該中空管〜混合容器〜送液管系の内部が、外気から遮断された閉鎖系、である事を特徴とする(61)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(63) 該Ag+塩溶液と、X-塩溶液の少なくとも一方、好ましくは両方に分散媒を0.01〜10、好ましくは0.1〜7、より好ましくは0.5〜3質量%含有させる
事、を特徴とする(61)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
(64) 該混合が 磁気攪拌を用いて成される事、好ましくは、互いに逆方向に回転する攪拌羽根を用いて成される事、を特徴とする(61)記載のハロゲン化銀種晶粒子の成長方法。
【0016】
(71) (1)記載のAgX1粒子が、該粒子表面上(面、稜、角の1つ以上の部位)に、AgX1とはハロゲン組成の異なるエピ部を有する事、該ハロゲン組成が、I-含率で10〜100、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜100モル%だけ異なる事、エピ部が、該粒子表面上の総面積の0.1〜70、好ましくは0.5〜40%を占める事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤(AgX6)。
(72) 該エピ部のAgCl含率(mol%)が0〜100、好ましくは30〜100、より好ましくは60〜100、である事を特徴とする(71)記載のハロゲン化銀乳剤。
(73) 該エピ部のAgBr含率(mol%)が0〜100、好ましくは30〜100、より好ましくは60〜100、である事を特徴とする(71)記載のハロゲン化銀乳剤。
(74) (該エピ部のAgXmol量/ホスト粒子のAgXmol量)比が10-5〜2、好ましくは10-4〜0.6、より好ましくは10-3〜0.3、である事を特徴とする(71)記載のハロゲン化銀乳剤。
(75) (1)記載のAgX1粒子が、該粒子表面上に、AgX1とはハロゲン組成の異なるシェル層(AgX8)を有し、該ハロゲン組成が、I-含率で10〜100、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜100モル%だけ異なるシェル層である事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤(AgX9)。
【0017】
(76) 該シェル層の該組成が、段階的に、又は連続的に変化した態様、である事を特徴とする(75)記載のハロゲン化銀乳剤。
(77) 該(AgX1)粒子の内部、シェル層、該シェル層(AgX8)、該エピ部の1つ以上に、銀、ハロゲン以外に原子番号が1〜92の原子の単体または化合物の1種以上をドープ剤として、合計量で10-9〜10-1、好ましくは10-8〜10-2(mol/molAgX)だけ含有する事、を特徴とする(1)、(71)、(75)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
(78) 該ドープ剤が、金属原子「元素の長周期表においてホウ素BとAtを結ぶ線よりも左側にある原子」の単体、または該金属原子含有化合物の中性体またはイオン体である事、を特徴とする(77)記載のハロゲン化銀乳剤。
(79) 該化合物が該金属原子を1〜3個と、配位子を2〜20個を含有する金属錯体で、該配位子の1個〜全部が、無機配位子および/または、炭素数1〜30個を含有する有機配位子、である事を特徴とする(78)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0018】
(80) 該金属錯体が、テトラまたはヘキサ配位錯体、である事を特徴とする(79)記載のハロゲン化銀乳剤。
(81) 該金属錯体が該有機配位子を1または2個有し、残りの配位子が無機配位子である事、を特徴とする(79)又は(80)記載のハロゲン化銀乳剤。
(82) 該ドープされたものが、カルコゲン原子(S、Se、Teの1種以上)であり、ドープ量が10-8〜10-2、好ましくは10-7〜10-3(mol/molAgX)、である事、を特徴とする(77)記載のハロゲン化銀乳剤。
(83) 該エピ部形成が、該粒子にゼラチン以外の吸着剤を飽和吸着量の10〜100、好ましくは30〜97、より好ましくは60〜95%だけ吸着させた状態で、Ag+とX-を添加して、形成された事、及び/又は、X-を添加してハロゲン変換させる事により形成された事、を特徴とする(71)記載のハロゲン化銀乳剤。
(84) 該吸着剤がシアニン色素、かぶり記載のハロゲン化銀乳剤。
(85) 該AgX。が、該ホスト粒子内、該エピ部内、該シェル層内の1つ以上に還元銀を10-8〜10-2、好ましくは10-7〜10-3(モル/モルAgX)だけ含有する事、を特徴とする(1)、(71)、(75)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
【0019】
(86) 該乳剤に化学増感剤を添加して化学熟成する時、または増感色素を添加し、分光増感する時、該乳剤を支持体上に塗布する時、乳剤のpAgが3〜11、pHが3〜11、温度10〜90℃の最も好ましい組合せを選んで用いられる事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(87) 該乳剤が1種以上の化学増感剤が添加され、化学増感された乳剤である事、化学増感剤が、カルコゲン増感剤(イオウ、セレン、テルル増感剤)、貴金属増感剤(金、第8族金属化合物)、還元増感剤、の単独またはその2種以上(添加量比率はあらゆる比率)である事、各々の添加量(モル/モルAgX)が好ましくは10-9〜10-2、より好ましくは10-8〜10-3である事、を特徴とする(1)、(71)、(75)、(83)のいずれかに記載のハロゲン化銀乳剤。
(88) 該乳剤が1種以上のシアニン色素が添加され、分光増感された乳剤であり、該色素のAgXに対する吸着量が、飽和吸着量の1〜100、好ましくは10〜98、より好ましくは30〜95%である事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(89) 該乳剤に該粒子の格子間銀イオン(Agi+)濃度を低下させる化合物を添加し、粒子に吸着させる事により、粒子の該濃度を、添加前の0.9〜10、好ましくは0.5〜0.01倍に低下させた態様である事、を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0020】
(90) 該エピ部に優先的に該化学増感で化学増感核が形成され、(該エピ部/非エピ部)の化学増感核量比が1.2〜105、好ましくは2〜104、より好ましくは5〜104である事、を特徴とする(71)記載のハロゲン化銀乳剤。
(91) 該乳剤の製造において、粒子形成後で、乳剤の脱塩工程前の乳剤の銀量(モル/L)が0.05〜3、好ましくは0.1〜2、である事を特徴とする(1)記載のハロゲン化銀乳剤。
(92) 該シェル層のAgCl含率が1〜100、好ましくは10〜100、より好ましくは60〜100mol%である事を特徴とする(75)記載のハロゲン化銀乳剤。
(93) 該シェル層のAgBr含率が1〜100、好ましくは10〜100、より好ましくは60〜100mol%である事を特徴とする(75)記載のハロゲン化銀乳剤。
【0021】
(100) 該感光材料が非感光性有機銀塩、熱現像剤及びバインダーを有する熱現像写真感光材料である事、を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
(101) 該感光材料が、露光し、感光させた後に、該材料を80〜200、好ましくは90〜150℃に加熱して現像させる熱現像写真感光材料である事、を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
(102) 該感光材料が青感層、緑感層、赤感層を有する感光材料である事、を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
(103)該感光材料がカラー発色剤を含有するカラー感光材料である事、を特徴とする(102)記載の写真感光材料。
(104) 該(1)記載の乳剤が、該感光材料の紫外線吸収剤として用いられる事、好ましくは支持体からの距離が青感層よりも遠い層に用いられる事を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
【0022】
(105) 該(1)記載の乳剤が、該感光材料のイエローフィルター層(青光除去層)として用いられる事、好ましくは該層が青感層と緑感層の間に設置されている事を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
(106) 該感光材料が、露光され、現像され、白黒像を与える感光材料である事、を特徴とする(3)記載の写真感光材料。
(107) 支持体上に1層以上のハロゲン化銀乳剤を塗布した短波長光カットフィルター材料において、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤が、(1)記載のハロゲン化銀乳剤である事を特徴とするフィルター材料。
(108) 該短波長光が、200〜600、好ましくは220〜500、より好ましくは230〜490、更に好ましくは250〜480nm波長光、である事を特徴とする(107)記載のフィルター材料。
(109) 該フィルター材料が、透過光型フィルター材料である事、を特徴とする(107)記載のフィルター材料。
(110) 該フィルター材料が、反射光型フィルター材料である事、を特徴とする(107)記載のフィルター材料。
(111) 該乳剤に、可視光領域に光吸収を有する色材が添加されている事を特徴とする(107)記載のフィルター材料。
(112) 該色材が、シアニン色素である事、を特徴とする(111)記載のフィルター材料。
(113) 該フィルター層(AgX0)粒子が、490nm以下の短波長光に対して非感光性であり、該感光材料の現像処理時に、実質的に現像されない事、定着処理時に、実質的に溶解除去される事、を特徴とする(105)記載の写真感光材料。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高感度、高画質を与えるAgX乳剤、及び写真感光材料を得るする事が出来、また、青紫光吸収特性の優れた青紫光吸収フィルター材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この明細書、特許請求の範囲における「左数値」〜「右数値」は「左数値」以上「右数値」以下を意味するものとする。
(II)次に本発明を詳細に説明する。
(II−1)AgX粒子構造。
AgXの粒子構造例を図に示した。図1は、AgI含率が100モル%であるAgI粒子のカーボンレプリカ膜の透過型電子顕微鏡写真像(以下、TEM像と記す)である。乳剤を遠心分離し、ゼラチンを除去した粒子を、水で再分散した後、コロジオン膜を張った電顕メッシュ上にのせ、乾燥させる。次に真空中でAu−Pdでシャドウイングし、カーボン蒸着する。コロジオン膜を溶解除去し、定着液でAgX粒子を除去し、乾燥し、これをTEM撮影したものである。立方体状粒子の角とエッジが少し丸みを帯びている。該粒子の平坦面、又はエッジの直線部を延長する事により形成される6面体の該辺長比は、全てが1.0〜1.05である。更には、該最大辺長比も全てが1.0〜1.05である。吸着したゼラチンも残っているだろうし、レプリカ膜の収縮、粒子のかたむき等による変形もあるだろうが、いずれも、ほぼ1.0である。
又、粒子の面の角の角度は、全てが86〜94°であった。レプリカ膜の該変形もあるだろうが、いずれも、ほぼ90°である。
該粒子を、−150〜−100℃に冷却して、そのTEM像を撮影すると、図2に示す態様の縞模様が観察される。該6面体の主たる相を、α相とすると、α相上に他の結晶構造相が積層欠陥として、入っている事を示している。
該粒子に、前記12面体粒子や14面体粒子が、(19)〜(23)の態様で混入する事が多い。該粒子の詳細に関しては、特願2002−81020号の記載を参考にできる。これらの粒子は(17)の態様でβ型結晶構造を含有する。該12面体粒子や14面体粒子を、−150〜−100℃に冷却して、そのTEM像を撮影すると、縞模様が観察される。
これらの縞模様はα、β、γ型、AgI結晶のα型相、β型相、γ型相間のいずれかの相界面であると考えられる.
円相当投影直径とは、粒子を基板上に置き、それを真上から観察した時の投影面積と等しい面積の円の直径、を指す。
【0025】
(II−2)粒子のX線回折特性。
図1に示したAgI粒子をガラス基板上に載せて、25℃でCuKβ特性X線(波長1.39217Å)を用いて通常の粉末法X線回折測定した結果を図3(a)に示した。θは入射X線ビームと基板との角度を表す。回折特性は、(12)、(13)記載の特性を有する。
該粒子を180℃以上で約1時間アニールした後に、室温にゆっくりと冷却し、そのX線回折を測定すると、該α1のピーク強度が大きく減少し、β型結晶構造の(002)面の回折ピークが大きく増加する。
該粒子を平坦なガラス基板上に載せ、図1の粒子のように、基板面に平行に粒子表面を配向させた態様の粒子を多くして、測定したものを、図3(b)に示した。載せる粒子密度を更に低くして、該態様粒子の比率を増して測定したものを図3(b)に示した。該α1のピークがメインピークである事から、該α1ピークは、該立方体粒子の表面に平行な面の回折である。該ピークは、α型AgIの(110)面回折角度=22.424°に近い値である。
α1がこれだとすると、他の面は(100)面になるが、α型AgIの(200)面
回折角度=31.941°がない。α型AgIの(211)面回折角度=39.380°に近い39.95°の強い回折は存在するが、この面と該(110)面で立方体粒子を構成する事は両者の面角が90°ではないからできない。更なる検討が必要である。
【0026】
(II−3)粒子の光吸収特性。
図1に示した粒子からなる乳剤を無色透明のTAC支持体上に塗布し、その光吸収スペクトルを測定した結果を、図4に示した。試料の後面に反射板(白色酸化Mg板)を置き、日立カラーアナライザーを用いて、その光反射スペクトルを測定したものである。従来公知のβ型含率が90%以上であるAgI粒子の測定結果も示した。図4中、横軸は光の波長を、縦軸は反射%を表す。吸収端波長が、β型に比べて、長波長側にシフトしている。また、β型にはエキシトンピークに基づくこぶが見られるが、AgX0にはそれが見られない。
【0027】
(II−4)AgX乳剤の調整。
少なくとも水と分散媒を含む分散媒水溶液B1(好ましくは、pAg=1〜8、より好ましくは2〜6)中に、Ag+を含む水溶液(Ag+塩水溶液)と、X-を含む水溶液(X-塩水溶液)をダブルジェット添加して、形成される。反応容器内での極めて均一な、高速混合攪拌により得られ、(53)の態様が好ましい。Ag+とX-を、該混合する方法としては、次の方法が有効である。1)反応容器中に、小さい混合箱を設けて、両者をその混合箱中に添加し混合した後に、反応容器のバルク溶液中に吐出す方式。2)添加孔数が(56)記載の多孔添加系を用いて、添加される事。これに関しては文献23の記載を参考にできる。
Ag+塩水溶液は25℃の水1Lに対する溶解量(モル量)が、0.1〜∞、好ましくは0.3〜∞である銀塩の水溶液である。例えば硝酸銀、硫酸銀、シュウ酸銀があり、硝酸銀がより好ましい。X-塩水溶液は、ヨウ化物塩を主体とするハロゲン塩溶液である。例えばNaI、KI、NH4Iがある。これにCl-、Br-の塩の1種以上を、必要な量だけ添加する事ができる。
該反応容器の温度(℃)は、10〜70が好ましく、30〜65がより好ましく、38〜60が更に好ましい。該粒子の種晶が形成されると、その後の成長はより広い領域(pAg、pH、温度領域)で可能である。
該分散媒溶液の温度の均一性を高める為に、添加溶液の温度を予め調節し、反応容器または分散媒溶液の温度と、添加溶液の温度との差を、(55)の態様にする事が好ましい。その具体的な方法は次の通り。1)添加液用の中空管を分散媒溶液中に長く配置し、そこを通った後に、液中に添加する方式で、文献23の記載を参考にできる。2)分散媒溶液に入るまでの領域で、添加系の中空管を保温装置に通す。そこを通過する時に、添加溶液は温度調節される。該態様は(60)〜(64)の態様に対しても有効である。
粒子形成時のpHは2〜11が好ましく、4〜10がより好ましい。(該Ag+塩溶液の濃度/該X-塩溶液の濃度)=0.9〜1.1が好ましく、0.96〜1.04がより好ましく、0.98〜1.02が更に好ましい。
粒子形状が不明瞭な場合は、該粒子を該粒子表面のAgX組成とほぼ同じ組成で、45〜55℃で、pAg2〜8、好ましくは3〜6で高過飽和成長(臨界成長速度の20〜100、好ましくは50〜98%)で、1.1〜3、好ましくは1.3〜2倍長に成長させた時の形状が(1)の態様を示す。
(AgX1)粒子の比率の高い製造条件は、次のトライアンドエラー法で見つける事ができる。製造の各条件因子(温度、pAg、均一混合性)を高精度で制御する条件で、各因子を細かく、系統的に変化させ、その中の特に好適な条件を見つける事。粒子形成時、特にその種晶形成時の銀電位の振れ幅(mV)は、0〜60が好ましく、0〜30がより好ましく、0〜10がより好ましい。
【0028】
(II−5)分散媒。
該分散媒として従来公知のあらゆる分散媒を用いる事ができ、その具体例に関しては、文献1,2、17、19、24の記載を参考にできる。分散媒の重量平均分子量は3000〜106が好ましく、6000〜30万がより好ましい。該濃度(質量%)は0.1〜20が好ましく、0.3〜10がより好ましい。ゼラチンが好ましく、牛、ブタの骨、皮、または魚の骨、皮、うろこから採取したゼラチンを用いる事ができる。
ゼラチンには、アルカリ処理ゼラチンと、酸処理ゼラチンがある。更にそれらを酸、アルカリ、加水分解酵素の1種以上を用いて低分子量化したゼラチン(その重量平均分子量が3000〜7万)。該分子量が10万〜30万の高分子量ゼラチン(β鎖含率を高くしたものや、硬膜剤で分子間架橋して高分子量化したもの)がある。それらの不純物含量を従来の0.9〜10-8、好ましくは0.1〜10-8倍に減じたEmptyゼラチンが好ましい。アミノ基、カルボン酸基、イミダゾール基、水酸基、チオエーテル基の1つから全部を化学修飾したゼラチン。該修飾率(%)は1〜100、好ましくは10〜98、より好ましくは30〜92である。好ましくは、炭素数1〜50、好ましくは2〜20、の有機化合物基(R1)で化学修飾したゼラチンである。例えば、アミノ基をフタル化、コハク化、トリメリト化、アセチル化したゼラチン。カルボン酸基を修飾したエステル化ゼラチン。メチオニン基(Met)のチオエーテル基にアルキル基を導入したゼラチン、該基をスルホニウム化したゼラチン。酸化剤を添加し、該基をスルフィニル基やスルホニル基に変化させたものが好ましい。Met含量(μmol/g)は0〜100のものを使う事ができるが、0〜30がより好ましい。
熱現像感材に該乳剤を適用する場合には、分散媒としてはアミノ基を前記R1で修飾したゼラチンが好ましい。その他、文献23の記載を参考にできる。
粒子形成前〜粒子形成後〜乳剤塗布直前、のいずれの時間においても、目的の分散媒を必要な量だけ添加する事ができる。
【0029】
(II−6)乳剤の増感等。
本発明の乳剤に化学増感剤を添加し、化学増感する事ができる。化学増感剤としては、カルコゲン増感剤(イオウ、セレン、テルル増感剤)、貴金属増感剤(金、第8族金属化合物)、還元増感剤、の単独またはその2種以上をあらゆる比率で用いる事ができる。各々の添加量(モル/モルAgX)は10-9〜10-2が好ましく、10-8〜10-3がより好ましい。
該乳剤に1〜20種の青感層用増感色素を添加し、光の吸収率を高め、その青感度を更に高めて、青感層に用いる事ができる。緑感層に用いる時には、1〜20種の緑感層用増感色素を添加し、赤感層に用いる時には、1〜20種の赤感層用増感色素を添加し、分光増感する事ができる。
(77)〜(82)の態様で、ドープ剤をドープする事ができる。該ドープ、ドープ剤の詳細に関しては、文献2、24の記載を参考にできる。
また、乳剤粒子に吸着させ、光を照射した時に、1光子を吸収して2〜4個の電子をAgX粒子に与える化合物(PA)を10-8〜10-1、好ましくは10-6〜10-2の添加量で、添加する事が好ましい。該化合物の詳細に関しては、文献13 の記載を参考にできる。
本発明の乳剤、使用する化合物種と添加量、製法と装置、その応用に関して、その他、文献14の記載を採用する事ができる。
本発明の乳剤の熱現像感材への適用に関しては、文献15の記載を、他の感材への適用に関しては、文献7、10の記載を採用する事ができる。
(100)記載の非感光性有機銀塩、熱現像剤(還元剤)、バインダー、支持体、色調剤に関しては、文献15の記載を採用する事ができる。
【0030】
(II−7)その他。
1)(36)〜(38)記載の結晶格子欠陥。結晶格子の配列が乱れた状態を、結晶格子欠陥といい、点欠陥、線欠陥、面欠陥、体積欠陥がある。点欠陥の集合物を特に複合欠陥という。線欠陥は転位線であり、刃状転位線とらせん転位線、転位ループがある。面欠陥には、積層欠陥、双晶面、粒界がある。該格子欠陥は、その1種〜全部を指し、好ましくは少なくとも転位線、刃状転位線を含むものであり、好ましくは(38)の態様である。これらの欠陥の詳細に関しては、文献16、22の記載を参考にできる。
2)(33)記載の平板粒子。該平板粒子には、次の粒子がある。
a)NaCl型結晶構造で、主平面が{111}面である平板粒子。主平面に平行な双晶面を2〜3枚、好ましくは2枚有する粒子。その詳細は文献2、17、20の記載を参考にできる。
b)NaCl型結晶構造で、主平面が{100}面である平板粒子。その詳細は文献2,18,20の記載を参考にできる。AgCl、AgBr、AgBrIの単独、又はその2種以上のあらゆる比率の混晶。
c)AgI含率が80〜100モル%で、主平面に平行な積層欠陥面を2〜300枚有する粒子。その詳細は、文献2,7、19の記載を参考にできる。
3)エピタキシャルAgX部。1つの結晶が、それとは異なる他のホスト結晶の表面上に、ある定まった方位関係をとって成長する時、その状態をエピタクシーといい、該成長部をエピタキシャル部、という。該部がAgX結晶であるものを、エピタキシャルAgX部という。両者のAgX組成は、AgCl、AgBr、AgI含率の少なくとも1つの含率が、5〜100、好ましくは10〜100、より好ましくは20〜100モル%だけ異なる。
粒子に吸着剤を吸着させた状態で、粒子の特定部分にエピ部を形成し、次に、化学増感すると、エピ部が選択的に化学増感される。潜像形成場所が限定され、高感度になり、好ましい。まずエピ部が現像されるので、ホスト部が現像され難い粒子であっても、許容される利点がある。該エピ部を有する粒子に関しては文献9、22の記載を参考にできる。
AgXの溶解度の大きさ順は、(AgI<AgBr<AgCl)、であるが、これは、該分子の極性の大きさ順と対応しており、極性が大きい程、溶解度は大きくなる。AgI分子は極性が小さく、親油性有機物に近い為に、溶解度が小さい。この為に通常の現像処理では現像され難い。しかし、有機溶剤を1〜100、好ましくは10〜100、より好ましくは30〜100%だけ含有する現像処理液で処理すると、処理速度が速められて、好ましい。
該(AgX1)粒子は他の形状粒子に比べて、溶解度が高い。従って(4)及び、該関連の態様で添加した場合、すみやかに溶解、消失する利点がある。
(113)の態様で、実質的に現像されない事、とは、現像される粒子のモル%が、0〜20、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜1を指す。また、実質的に溶解除去される事、とは、除去される粒子のモル%が、80〜100、好ましくは95〜100、より好ましくは99〜100を指す。該粒子を非感光性にする為には、減感剤を添加すればよい。減感剤をドープしたり、減感色素を吸着させるとよい。ここで用いられる該粒子の直径は、小さい為、該溶解速度は速い。該粒子は、該層から動かない為、他の層に害を加える事がなく、好ましい。該粒子に足りない光吸収特性は、(111)、(112)の態様で、色材を添加して、補正する事が好ましい。
(AgX4)乳剤にAgNO3、臭化物塩、塩化物塩の1種以上を添加し、過剰のI-の残留を抑制する事ができる。
【0031】
(文献)下記文献とその引用文献。
1.T.H.James編、The Theory of The Photographic Process、第4版、Macmillan、New York(1077年)。
2.Research Disclosure誌、item17643(1978年12月)、同item38957(1996年9月)。
3.B.L.J.Byerleyら、J. Photographic Science,18巻、53〜59(1970年)。総説。
4.JCPDSカード(従来公知の粉末X線回折データ集。日本では理学電気社から購入できる)。
5.α、β、γ型AgI。S.Hoshino、J.Phys.Soc.Japan、12、315〜326(1957)。J.E.Maskasky、Physical Review,B43巻、5769〜5772(1991年)。温度変化挙動。
6.12面体、14面体粒子等、米国特許第4094684号、特開平2004−4586号。
7.アスペクト比が8以上のAgI平板粒子に関しては、特開昭59−119350号を、γ含率が90モル%以上で、アスペクト比が8以上のAgI平板粒子に関しては、特開昭59−119344号の記載を参考にできる。
8.光吸収。G.C.Farnell、J.Photographic Science,22巻、228〜237(1974年)。
9.エピ。J.E.Maskasky、Photogr.Sci.Eng.25巻、96〜101(1981年)、米国特許第4094084号、同第4142900号、同第4459353号。
10.黄色のAgI粒子。25℃以下。米国特許第4672026号。
12.米国特許第4520098号。
13.PED。特願2001−800号、特開2002−287293号、同2000−22162号、米国特許第5747235号、同5747236号、同6054260号、同5994051号。
14.化合物等。特開2001−201810号、同2001−255611号、同2003−172983号。
15.熱現像。特開2001−33911号、同2003−162025号、同2004−233397号、特願2001−349031号、同2001−342983号。
16.格子欠陥。理化学辞典(岩波書店)、化学辞典(東京化学同人)、結晶成長ハンドブック(共立出版)。
17.(111)平板。米国特許第4433048号、同5210013号、同5494788号、特開平2−838号、同8−82883号。同8−227117号、特開2000−171928号。
18.(100)平板。特開平6−308648号、同7−234470号、同7−146522号、同8−339044号、米国特許第5908739号、欧州特許第0534395A号。
19.AgI平板。特願2004−309505号。
20.微粒子添加、装置。特開平4−34544号、同2−222940号、特開2003−172983号。
21.現像。T.H.Jamesら、Phot.Sci.Eng.,5巻、21〜29(1961年)。
22.エピ、転位線。特公平6−12404号、同6−93080号、米国特許第4865962号、同4435501号、同6607874B2号、同6114105号、同5275930号、同5695923号、欧州特許出願公開第699944〜699951(A1)号、同932077(A2)号、Maskasky、J.Imaging Science.,32,160〜177(1988).Sugimotoら、J.Colloid and Interface Science、140巻、335、348(1990年).特開平11−223895号、同11−184029号、特開昭63−220238号、同58−108526号。
23.装置。特開2004−305809号。特願2004−309505号、特開平4−193336号。
24.添加剤等。特開2003−172983号、同2004−233397号、同2004−240182号、特開平8−101473号、特開2003−15246号。
【0032】
[実施例]
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
反応容器に分散媒溶液1(水1.3L、Empty型のアルカリ処理牛骨ゼラチン1を25gを含み、NaOHでpH=6に調節)を入れ、温度を50℃に保ち、高速攪拌しながら、Ag−1液(AgNO3 34g/Lの水溶液)とX−1液(KI 33.2g/Lの水溶液)を同時添加法で、4.0mL/分で10分間、定量添加した。
2分間攪拌した後、次にAg−2液(AgNO3 10g/L水溶液)と、X−2液(KI9.765g/L水溶液)を、銀電位を180mVに保ちながら、同時添加した。Ag−2は初期流量2.5mL/分、加速流量0.2mL/分で30分間、添加した。次に、Ag−3液(AgNO3 200g/L水溶液)と、X−3液(KI、195.3g/L水溶液)を、銀電位を180mVに保ちながら、CDJ添加した。Ag−3は初期流量4.2mL/分、加速流量0.12mL/分で65分間、添加した。銀電位の振れ幅はいずれも、5mV以下であった。2分間攪拌した後、温度を40℃に下げ、増感色素1を飽和吸着量の90%量で添加し、吸着させた。
乳剤を2mL採取し、遠心分離処理をした後、生成した粒子を電子顕微鏡で観察した。図2に粒子のカーボンレプリカのTEM像を示した。粒子数の99%以上が立方体状(辺長比が1.0〜1.1)の粒子であった。従ってその最大辺長比も1.0〜1.1である。その平均粒子直径は、約0.1μm、該AgX1粒子のCVは約0.05であり、該AgX0粒子のCVは約0.06であった。約1%の12面体粒子が存在した。
また、該粒子を−120℃以下の低温で、TEM像を撮影した。それが図2である。(9)記載の欠陥線が見られる。
乳剤に沈降剤を添加し、pHを4.0近傍に下げ、凝集沈降水洗法で乳剤を30℃で水洗して、脱塩した。pHを6.4にし、温度を40℃に上げ、再分散した。AgNO3 とKIを用いて、pAgを5.5に調節した。40℃でAgX量1モル当り、化学増感剤1を合計モル量で5×10-4モルと金増感剤1(塩化金酸とNaSCNが1:20モル比の水溶液)を金量で10-6モルを添加し、次に温度を60℃に上げ、50分間熟成した。
【0034】
温度を40℃に下げ、PA1化合物を10-3モル/モルAgX量で添加し、次にかぶり防止剤1を10-3 モル/モルAgX量で添加し、pH6.4、pAg5.5に調節し、20分間攪拌した。該乳剤を硬膜剤1含有(0.01g/gゼラチン)の保護層と共にPETベース上に塗布し、乾燥させた。密閉容器に入れ、40℃で15時間保持し、硬膜反応を促進した。
このようにして得られた塗布試料(実施例1)を、光学ウェッジを通して10-2秒間の青光(500nm以下の波長光)露光、又は−blue(マイナスブルー)露光し、文献21に記載のピロガロール現像液で、40℃、50分間現像した。停止液に1分間入れた後、定着液(Super Fuji Fix)に30分間入れて定着し、次に水洗し、乾燥した。そのセンシトメトリーを行い、(感度/粒状度)比の結果を表1に示した。比較試料に対し、本発明の試料が、(感度/粒状度)比で優れている事が確認された。
感度は(かぶり+0.2)の濃度を与える露光量(ルックス・秒)の逆数で表し、粒状度は、試料を(かぶり+0.2)の濃度を与える光量で0.1秒間、一様に露光し、現像処理を行い、直系48μmの円形開孔を用い、ミクロデンシトメータ濃度のばらつきを測定し、rms粒状度σを求めた。その詳細については文献1の第21章E節に記載されている。
【0035】
【化1】

【0036】
[比較例1−1]
反応容器に分散媒溶液1とKIを0.2gを入れ、温度を45℃に保ち、攪拌しながら、Ag−1液(AgNO3 34g/Lの水溶液)とX−1液(KI 33.2g/Lの水溶液)を同時添加法で、4.0mL/分で10分間、定量添加した。
2分間攪拌した後、次にAg−2液(AgNO3 10g/L水溶液)と、X−2液(KI9.765g/L水溶液)を、銀電位を−50mVに保ちながら、CDJ添加した。Ag−2は初期流量2.5mL/分、加速流量0.2mL/分で30分間、添加した。次に、Ag−3液(AgNO3 20g/L水溶液)と、X−3液(KI、19.53g/L水溶液)を、銀電位を−50mVに保ちながら、同時添加した。Ag−3は初期流量4.2mL/分、加速流量0.12mL/分で75分間、添加した。添加はすべて従来法で行った。2分間攪拌した後、温度を40℃に下げ、増感色素1を飽和吸着量の90%量で添加し、吸着させた。
乳剤を採取し、生成した粒子を電顕で観察した所、公知の14面体状の粒子であった。平均直径は約0.1μm、該AgX1粒子のCVは約0.06であった。
乳剤に沈降剤を添加し、後は実施例1と同じ処理をして、塗布銀量が同一の塗布試料(比較例1−1)を得、その写真特性を得た。結果を表1に示した。
【0037】
[比較例1−2]
文献10の実施例1に従って、AgI粒子乳剤を調製した。その後の水洗工程からは、実施例1と同じにして、塗布銀量が同一の塗布試料(比較例1−2)を得、その写真特性を得た。結果を表1に示した。
該水洗工程前に採取した乳剤を、更に、Ag−3液と、X−3液を添加して成長させた所、立方体粒子数比率は、30%以下であった。
【0038】
[比較例1−3]
文献3の(実験)項の記載に従って、温度70℃、pI2.5でゼラチン溶液にAgNO3液とKI液を25分間添加してAgI粒子乳剤を調製した。
その後の水洗工程からは、実施例1と同じにして、塗布銀量が同一の塗布試料(比較1−3)を得、その写真特性を得た。結果を表1に示した。
該水洗工程前に採取した乳剤を、更に、Ag−3液と、X−3液を添加して成長させた所、立方体粒子数比率は、30%以下であった。
【実施例2】
【0039】
実施例1でゼラチン1をゼラチン2に置換える以外は同じにして、塗布試料(実施例2)を得た。実施例1と同じ処理をして、写真特性を得、結果を表1に示した。
ゼラチン2=アルカリ処理牛骨ゼラチンで、フタル化率が83%。
【実施例3】
【0040】
実施例1で粒子形成が終了し、水洗工程に入る前に、温度を40℃に下げ、Ag−3液とX−4液(NaCl、71g/L水溶液)を銀電位を120mVに保ちながら、3分間、CDJ添加した。Ag−3液の添加速度は、32mL/分である。次にX−4液で銀電位を90mVに調節した。2分間攪拌した後、増感色素1を飽和吸着量の90%量で添加し、吸着させた。
乳剤を採取し、実施例1と同様にして、生成した粒子の該レプリカのTEM像を観察した。立方体AgI粒子上にAgClシェル層が積層され、丸みを帯びた立方体にった。該粒子のX線回折と電子線回折の測定結果から、AgIコアとAgClシェルからなるコアシェル粒子である事が分った。乳剤に沈降剤を添加し、沈降水洗法で乳剤を30℃で水洗して、脱塩した。pHを6.4にし、温度を40℃に上げ、再分散した。AgNO3液とNaCl液を用いて、pAgを6に調節した。40℃で次に化学増感剤1を合計モル量で5×10-4モル/モルAgX量で添加し、50℃に上げ、30分間熟成した。PA1化合物を10-3モル/モルAgX量で添加し、次にかぶり防止剤1を10-3モル/モルAgX量で添加し、pH6.4、pAg6に調節し、20分間攪拌した。後は実施例1と同様に、該乳剤を硬膜剤1含有の保護層と共にPETベース上に塗布し、乾燥させ、硬膜した塗布試料(実施例3)を得た。
【実施例4】
【0041】
実施例1で粒子形成が終了し、水洗工程に入る前に、Ag−3液とX−5液(KBr、142g/L水溶液)を銀電位を120mVに保ちながら、3分間、CDJ添加した。Ag−3液の添加速度は、30mL/分である。2分間攪拌した後、増感色素1を飽和吸着量の90%量で添加し、吸着させた。
乳剤を採取し、実施例1と同様にして、生成した粒子のレプリカのTEM像を観察した。立方体AgI粒子上にAgBrシェル層が積層され、丸みを帯びた立方体になった。該粒子のX線回折と電子線回折の測定結果から、AgIコアとAgBrシェルからなるコアシェル粒子である事が分った。
乳剤に沈降剤を添加し、沈降水洗法で乳剤を30℃で水洗して、脱塩した。pHを6.4にし、温度を40℃に上げ、再分散した。AgNO3液とKBr液を用いて、pAgを7に調節した。次に化学増感剤1を合計モル量で5x10-4モル/モルAgX量で添加し、40分間熟成した。PED1化合物を10-3モル/モルAgX量で添加し、次にかぶり防止剤1を10-3モル/モルAgX量で添加し、pH6.4、pAg7に調節し、20分間攪拌した。後は実施例1と同様に、該乳剤を硬膜剤1含有の保護層と共にPETベース上に塗布し、乾燥させ、硬膜した塗布試料(実施例4)を得た。
実施例3、4を、実施例1と同様に露光し、D−19現像液で20℃で16分間、現像した。停止、定着、水洗、乾燥を行い、その写真特性を得た。結果を表1に示した。いずれも、比較例に対して、(感度/粒状度)比が優っていた。
【0042】
【表1】

【実施例5】
【0043】
1)主平面が{111}面である平板種粒子の形成。
反応容器に分散媒溶液2(水1.25L、KBrを1.0g、アルカリ処理牛骨ゼラチン3を2g含み、NaOHでpH=6に調節)を入れ、温度を20℃に保ち、攪拌しながら、Ag−6液(AgNO3 50g/Lの水溶液)とX−6液(1L当り、KBr 36g、ゼラチン2を1.7g含むpH6の水溶液)を同時添加法で、20mL/分で1分間、定量添加した。Met含量が0のゼラチンの水溶液とKBr溶液を加えながら、75℃に昇温した。12分間熟成した後、Ag−3液とX−7液(KBr148g/L)を用いて、銀電位−20mVのCDJ添加した。Ag−3液の添加速度は、スタート流量(mL/分)が1.6、加速流量が0.1で10分間添加した。
次に、Ag−3液とX−8(KBr145g、KI2g/L)液を用いて、銀電位0mVのCDJ添加した。Ag−3液の添加速度は、スタート流量(mL/分)が5.0、加速流量が0.6で40分間添加した。次に、Ag−3液とX−7液を用いて、銀電位0mVのCDJ添加を、3分間行った。Ag−3液の流量は30(mL/分)。
ゼラチン3=Met含量が0μmol/gで、重量平均分子量が1.5万のゼラチン。
【0044】
2)転位平板粒子の形成。
該種平板乳剤の温度を75℃にし、KBr液を添加し、次に後記立方体AgI乳剤を、0.01モル添加した。次にAg−3液43mLとX−7液 10mLを、15分間で添加した。熟成後に沈降剤を添加し、凝集沈降水洗し、40℃で、pH6.5、pBr2.5に調節した。増感色素1を飽和吸着量の90%で吸着させ、60℃に昇温し、AgX量1モル当り、化学増感剤1を合計モル量で1×10-5モルと、金増感剤1を金量で5×10-6モルを添加し、30分間熟成した。温度を40℃に下げ、PA1化合物を10-4モル/モルAgX量で添加し、次にかぶり防止剤1を10-3モル/モルAgX量で添加し、pH6.4、pAg5.5に調節し、20分間攪拌した。後は実施例1と同様に、該乳剤を硬膜剤1含有の保護層と共にPETベース上に塗布し、乾燥させ、硬膜した塗布試料(実施例5)を得た。
該粒子のレプリカのTEM像より、平均直径が1.65μm、厚さが0.11μm、平板粒子数比率が99%以上、その直径の変動係数が0.18の平板粒子が得られた。
【0045】
[比較例5a]
実施例5で立方体AgIの代りに、後記14面体AgIを添加する以外は同じにして、塗布試料(比較例5a)を調製した。
【0046】
[比較例5b]
実施例5で立方体AgIの代りに、文献10の実施例1の水洗前の乳剤を添加する以外は同じにして、塗布試料(比較例5b)を調製した。
実施例5と比較例5a、5bを実施例1と同様に露光し、D−19現像液で、20℃で10分間、現像し、停止、定着、水洗、乾燥を行い、その写真特性を得た。結果を表2に示した。比較例5a、5bに対して、実施例5の(感度/粒状度)比が優っていた。
【0047】
【表2】

【0048】
2)立方体AgI微粒子乳剤の形成。
反応容器に分散媒溶液3(水1.5L、ゼラチン4を25gを含み、NaOHでpH=6に調節)を入れ、温度を40℃に保ち、高速攪拌しながら、Ag−8液(AgNO3 100g/Lの水溶液)とX−8液(KI 97.6g、ゼラチン4を5g/Lの水溶液)を同時添加法で、10mL/分で10分間、定量添加した。次にAg−8液とX−8液を、銀電位180mVのCDJ添加した。Ag−8液の添加速度は、スタート流量(mL/分)が16、加速流量が1.2で12分間添加した。
生成した粒子のレプリカのTEM像より、直径が約0.04μm、立方体状粒子比率が98%、12面体粒子が1%、14面体粒子が、1%であった。該比率は該粒子を更に50℃で成長させて、確認したものである。
ゼラチン4=ゼラチン1をH22で酸化し、Met含量が0μmol/gのもの。
【0049】
3)14面体AgI微粒子乳剤の形成。
反応容器に分散媒溶液3(水1.5L、KIを0.12g、ゼラチン4を25gを含み、NaOHでpH=6に調節)を入れ、温度を40℃に保ち、高速攪拌しながら、Ag−8液(AgNO3 100g/Lの水溶液)とX−8液(KI 97.6g、ゼラチン4を5g/Lの水溶液)を同時添加法で、10mL/分で10分間、定量添加した。次にAg−8液とX−8液を、銀電位180mVのCDJ添加した。Ag−8液の添加速度は、スタート流量(mL/分)が16、加速流量が1.2で12分間添加した。
生成した粒子のレプリカのTEM像より、直径が約0.04μm、14面体状粒子が90%以上を占めた。該比率は該粒子を更に50℃で成長させて、確認したものである。
【実施例6】
【0050】
実施例5で、該10分間添加した所までを、同じにした。次にAg−3液とX−7液を用いて、銀電位−20mVのCDJ添加した。Ag−3液の添加速度は、スタート流量(mL/分)が15、加速流量が0.6で40分間添加した。この時、同時並行添加で、該立方体AgI乳剤を、添加した。添加速度はAgBrI(1モル%)が形成される速度であり、(AgIの添加速度/AgNO3の添加速度)=0.01モル比、である。
次に、Ag−3液とX−7液を用いて、銀電位0mVのCDJ添加を行う所以後は、実施例5と同じにして、塗布試料を得た。
該粒子のレプリカのTEM像より、平均直径が1.7μm、厚さが0.10μm、平板粒子数比率が99%以上、その直径の変動係数が0.16の平板粒子が得られた。
【0051】
[比較例6a]
実施例6で、立方体AgI乳剤の代りに、該14面体乳剤を添加する以外は同じにして、比較試料を作った。
これらの試料を実施例5と同じ様に露光し、現像し、写真特性を求め、表2に示した。比較例6aに対する実施例6の優位性が確認された。
【0052】
[比較例6b]
実施例6で、立方体AgI乳剤の代りに、文献10の実施例1の水洗前の乳剤を添加する以外は同じにして、比較試料を作った。
これらの試料を実施例5と同じ様に露光し、現像し、写真特性を求め、表2に示した。比較例6bに対する実施例6の優位性が確認された。
【実施例7】
【0053】
実施例5の2)で調製した立方体AgI微粒子乳剤を、水洗し、ゼラチンを加えてpH6.4で再分散した。特開2003−15246号の実施例3に記載の塗布試料において、イエローフィルター層を、該再分散乳剤に置き換える以外は同じにした。露光、現像処理、濃度測定を同様に行い、結果を表3に示した。該層の塗布銀量は、0.7g/m2である。
[比較例7−1]
実施例5の3)で調製した14面体AgI微粒子乳剤を、水洗し、ゼラチンを加えてpH6.4で再分散した。特開2003−15246号の実施例3に記載の塗布試料において、イエローフィルター層を、該再分散乳剤に置き換える以外は同じにした。露光、現像処理、濃度測定を同様に行い、結果を表3に示した。該層の塗布銀量は、1g/m2である。
ここで、色分離度=青光を照射して現像処理した時の、(緑感層の濃度/青感層の濃度)、を表す。値が小さい方が、イエローフィルターの性能が良い。実施例7の試料の方が、フィルターの性能が良かった。
【0054】
【表3】

【0055】
なお、実施例のAgI粒子形成は、常に高均一性の攪拌下で行った。(Ag+塩水溶液)と、(X-塩水溶液)の定量添加はいずれも高精度定流量ポンプで添加した。該添加液はすべて、分散媒溶液と同じ温度に制御して、送液管を通して、該溶液中の混合箱中に直接に添加した。その添加孔数は50こであった。CDJ添加=Controlled Double Jet添加、を表す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】6面体AgI粒子の粒子構造を表すTEM像例を表す。倍率約5万倍。
【図2】6面体AgI粒子の粒子構造を表す低温TEM像例を表す。倍率約20万 倍。
【図3】6面体AgI粒子のCuβX線によるX線回折測定図を表す。
【図4】AgI粒子乳剤の光反射スペクトルを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも分散媒とハロゲン化銀粒子を有するハロゲン化銀乳剤において、該粒子の投影面積の合計の60〜100%の粒子が、AgI含率が85〜100モル%であり、該粒子形状が直角6面体、あるいは、その角及び/又はエッジが丸みを帯びた形状であり、該粒子の円相当投影直径が、0.01〜20μmである粒子(AgX1)、である事を特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【請求項2】
該6面体の辺長比「1個の粒子の1つの面で、(最長辺の辺長/最短辺の辺長)」、又は、該丸みを帯びた粒子の辺の直線部又は面の平坦部を延長する事により、形成される直角6面体の該辺長比が、1.0〜1.3である事を特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀乳剤。
【請求項3】
支持体の一方または両面上に1層以上のハロゲン化銀乳剤を塗布した写真感光材料において、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤が、請求項1記載のハロゲン化銀乳剤である事を特徴とする写真感光材料。
【請求項4】
少なくとも分散媒と水とハロゲン化銀種晶粒子(AgX10)を有するハロゲン化銀種晶乳剤に、AgI含率が85〜100モル%のハロゲン化銀微粒子(AgX12)を添加し、添加した該微粒子を溶解させ、該種晶粒子上に沈積させる事により、種晶粒子を成長させるハロゲン化銀粒子の成長方法において、該微粒子が請求項1記載のAgX1を含有する事を特徴とするハロゲン化銀粒子の成長方法。
【請求項5】
該感光材料が熱現像写真感光材料であり、露光し、感光させた後に、該材料を80〜200℃に加熱して現像させる事、を特徴とする請求項3記載の写真感光材料。
【請求項6】
支持体上に1層以上のハロゲン化銀乳剤を塗布した短波長光カットフィルター材料であって、少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤が、請求項1記載のハロゲン化銀乳剤である事を特徴とするフィルター材料。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate