説明

ハロゲン化銀粒子の製造方法、感光性ハロゲン化銀粒子及びそれを用いた熱現像感光材料

【課題】化学増感時の温度上昇に伴う粒子サイズの増加が抑制され、かつ、化学増感や分光増感に阻害を起こすことなく、微細な粒子形成が可能な子感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法及び該製造方法により得られ感光性ハロゲン化銀粒子を提供する。
【解決手段】銀供給化合物とハロゲン供給化合物を反応させてハロゲン化銀を形成させる粒子形成工程において、保護コロイドとして使用するゼラチン100質量部に対し、2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加し、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する工程を有し、得られたハロゲン化銀粒子の平均球円相当径が35nm以下である感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法、該製造方法で得られた感光性ハロゲン化銀粒子、およびそれを用いた熱現像感光材料(以下、熱現像感材ということがある)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこでレーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、解像度および鮮明さが良好な黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。このような感光性熱現像写真材料によれば、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを提供することができる。
【0003】
しかしながら、これらの熱現像感光材料においては、溶液処理の場合と異なり、現像主薬(還元剤)や未現像銀の定着が行われないために、処理後のハロゲン化銀のプリントアウトが画像を変質させるという問題がある。これを回避するためには、ハロゲン化銀粒子を微粒子化したり、ハロゲン化銀粒子の塗布銀量を下げたりすることが有効であるが、そのような手段をとると、一方で、感度や画像濃度が顕著に低下してしまうことが判った。
【0004】
また、従来方法によりハロゲン化銀の粒子サイズを著しく低下させて40nm以下の領域にすると、化学増感時に温度を上昇させると一部のハロゲン化銀粒子の再溶解による粒子サイズの増大などの弊害が起こり、最高濃度の低下を起こすことは当業界で良く知られた事実である。一方、感度を向上させるに伴い、同時に所望されない領域に「かぶり」が発生することが多く、熱現像感材においては、感度とかぶりを両立することが困難な課題であった。
この課題に対し、乳化剤の物理性を改良して高感度とかぶりの抑制とを両立するため、画像形成層に特定の合成高分子化合物を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)
しかしながら、これらの特許文献に記載の技術では、合成高分子を、画像形成層中にバインダーとして用いるものであり、このような使用方法ではハロゲン化銀粒子の粒子サイズの減少及び化学増感時の粒子サイズ拡大の抑制には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−110539号公報
【特許文献2】特開平11−352627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化学増感時の温度上昇に伴う粒子サイズの増加が抑制され、かつ、化学増感や分光増感に阻害を起こすことなく、微細な粒子形成が可能な感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法及び該製造方法により得られた感光性ハロゲン化銀粒子を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、本発明の感光性ハロゲン化銀粒子を画像形成層に含有し、高感度で記録可能であり、且つ、かぶりが抑制された熱現像感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果以下の手段で前述の課題を達成した。
<1> 銀供給化合物とハロゲン供給化合物を反応させてハロゲン化銀を形成させる粒子形成工程において、保護コロイドとして使用するゼラチン100質量部に対し、2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加し、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する工程を有し、得られたハロゲン化銀粒子の平均球円相当径が35nm以下である感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法である。
前記高分子化合物の添加は、得られたハロゲン化銀粒子の沈降/脱塩工程に先だって行われ、沈降/脱塩工程を行わない場合は、化学増感、もしくは、分光増感工程に先だって行われる。
<2> 前記合成高分子が、部分鹸化型のポリビニルアルコール(PVA)である<1>に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法である。
<3> 前記部分鹸化型のPVAの鹸化度が70mol%以上である<2>に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法である。
【0008】
<4> 形成された粒子を分光増感する工程をさらに有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法である。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法により得られた感光性ハロゲン化銀粒子である。
<6> 支持体の少なくとも一方の面上に、<5>に記載の感光性ハロゲン化銀粒子、非感光性ハロゲン化銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を備えてなる熱現像感光材料である。
<7> 前記感光性ハロゲン化銀微粒子は、画像形成層の塗布液調整時に塗布液中に添加される<6>に記載の熱現像感光材料である。
<8> 前記熱現像のための還元剤は、下記一般式(R1)で表される化合物である<6>又は<7>に記載の熱現像感光材料である。
【0009】
【化1】

【0010】
前記一般式(R1)中、Xはカルコゲン原子またはCHRを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、または複素環基を表す。Rはアルキル基を表す。但し、該Rの少なくとも一方は、2級または3級のアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rはアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rは1価の置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。分子内にRが2つ以上存在する場合、それらは同一でも互いに異なっていてもよい。
<9> 前記画像形成層は、さらに、下記一般式(A−1)または一般式(A−2)で表される現像促進剤を含有する<6>〜<8>のいずれか1つに記載の熱現像感光材料である。
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(A−1)中、Qは炭素原子で−NHNH−Qと結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Qはカルバモイル基を表す。)
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(A−2)中、Rはアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、または炭酸エステル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に1価の置換基を有し、RとRは互いに連結して縮合環を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、化学増感時の温度上昇に伴う粒子サイズの増加が抑制され、かつ、化学増感や分光増感の阻害が起こらない微粒子感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法及び該製造方法により得られ微粒子感光性ハロゲン化銀粒子が提供される。また、本発明によれば、前記本発明の感光性ハロゲン化銀粒子を感光性層に含有する高感度で記録可能であり、且つ、かぶりが抑制された熱現像写真感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法>
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法は、銀供給化合物とハロゲン供給化合物を反応させてハロゲン化銀を形成させる粒子形成工程において、保護コロイドとして使用するゼラチン100質量部に対し、2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加し、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する工程を有することを特徴とし、この製造方法により平均球円相当径が35nm以下である感光性ハロゲン化銀微粒子が容易に製造される。なお、保護コロイドであるゼラチンへの前記合成高分子の添加は、形成されたハロゲン化銀粒子の沈降/脱塩工程の前であればいずれのタイミングで行ってもよく、予め銀供給化合物の水溶液又はハロゲン供給化合物の水溶液に添加されていてもよく、また、銀供給化合物の水溶液とハロゲン供給化合物の水溶液との混合後に添加されてもよい。
【0017】
以下、本発明の製造方法及びそれにより得られる感光性ハロゲン化銀粒子について説明する。
(ハロゲン組成)
本発明の製造方法により得られる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。その中でも臭化銀およびヨウ臭化銀が好ましい。
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでも良く、あるいは連続的に変化したものでも良い。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。
また、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、塩ヨウ臭化銀、ヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0018】
本発明の製造方法により得られる微粒子感光性ハロゲン化銀は、光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑えるため、また、良好な画質を得るために粒子サイズが小さいことが好ましく、本発明においては平均粒子サイズ、具体的には、平均球円相当径が35nmに規定している。ハロゲン化銀粒子の粒子サイズは小さすぎてもハンドリング性が低下するなどの問題があるため、そのような観点から粒子サイズは好ましくは10nm〜35nmであり、さらに好ましくは15nm〜35nmである。
後述する熱現像写真感光材料の画像形成層における感光性ハロゲン化銀粒子としては、本発明に規定する平均球円相当径が35nm以下の粒子の含有率は、画像形成層に含まれる全粒子中70%以上であることが好ましい。
なお、画像形成層には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、本発明の製造方法により得られる平均球円相当径が35nm以下の感光性ハロゲン化銀粒子以外の粒子を含有していてもよい。例えば、感度や階調を調整する目的で、やや大きい粒子を併用することもできる。やや大きめのハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、100nm以下、好ましくは40nm〜100nm、特に50nm〜80nmが好ましい。ただし、画像形成層に含まれる大サイズの粒子の含有率は30%以下であることが好ましい。
本発明における平均球円相当径(本明細書において、粒子サイズと言うことがある)は、電子顕微鏡により観察し、投影面積(平板状粒子の場合は主平面の投影面積)と同面積の円に換算したときの直径の平均をいう。本明細書中に記載の粒子サイズは、電子顕微鏡を用いて粒子を観察して測定した前記直径の1000個を平均した値を用いている。
【0019】
本発明の製造方法における必須の工程は、銀供給化合物とハロゲン供給化合物を反応させてハロゲン化銀を形成させる粒子形成工程において、保護コロイドとして使用するゼラチン100質量部に対し、2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加し、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する工程であり、特に、ゼラチンに対し2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加する工程は、粒子形成工程において形成された粒子の沈降/脱塩工程前に行われればよく、また、沈降/脱塩工程を行わない場合は、化学増感工程、もしくは、分光増感工程を行う前までに行われる。即ち、形成された粒子を沈降したり、増感したりする前の、粒子が形成され、粒子サイズが確定する時までのいずれかにおいて保護コロイド中に合成高分子が存在することで本発明の効果を奏するものである。
前記ハロゲン組成の項において説明したように、特にそのハロゲン化銀の組成に制限はないため、銀供給化合物としては、汎用の硝酸銀をはじめ、公知の銀含有化合物を用いればよい。
銀供給化合物は、通常は、反応時には水溶液として用いられる。本発明に用いる銀供給化合物を含む溶液(例えば硝酸銀水溶液)の銀イオン濃度は、任意に決定されるが、モル濃度として、0.03mol/L以上、6.5mol/L以下が好ましく、より好ましくは、0.1mol/L以上、5mol/L以下である。
【0020】
本発明に用いうるハロゲン供給化合物としては、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属のハロゲン化物など公知のハロゲン含有化合物を適宜選択して用いればよく、ハロゲン供給化合物もまた、銀供給化合物と同様に、一般に水溶液として用いられる。
本発明で記載する粒子形成工程とは、銀供給化合物とハロゲン供給化合物とを反応させてハロゲン化銀化合物を形成する工程のことであり、沈降/脱塩工程を行う前までの工程を指す。沈降/脱塩工程を行わない場合は、化学増感、もしくは、分光増感を行う前までの工程を指す。
【0021】
本発明においては、ハロゲン化銀乳剤は、反応母液となる保護コロイド(ゼラチン)中に合成高分子が存在する溶液中で核生成及び結晶成長されてもよく、ある程度、核成長、結晶成長が進行した後、沈降工程の前までにゼラチン中に合成高分子を添加してもよい。
なお、ハロゲン供給化合物を含有する水溶液であるハロゲン化物水溶液や銀供給化合物の水溶液である銀塩水溶液の添加法としては、ダブルジェット法が一般的である。この中でもpAgやpHを制御しつつ各成分を混合し上記核生成及び結晶成長を行うコントロールドダブルジェット法が代表的である。
また、まず、種粒子を調製(核生成)した後、この成長を引き続き同じ条件で、または別の条件下で行う(結晶成長あるいは熟成)といった2段階で行う方法等、様々なヴァリエーションを含んでいるが、このいずれのタイミングで保護コロイド水溶液中に合成高分子を添加してもよい。。
保護コロイド水溶液中での混合工程において、銀塩水溶液とハロゲン化物水溶液の混合条件を規定することにより、その晶癖やサイズを様々にコントロールすることは当業界でよく知られている。
【0022】
(ゼラチン)
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤の製造に使用されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持することが必要であり、分子量は、10,000〜1000,000のゼラチンを使用することが好ましい。また、ゼラチンの置換基をフタル化処理することも好ましい。これらのゼラチンは粒子形成時に溶液(反応媒体)として使用される。
【0023】
(合成高分子)
本発明において反応溶液に用いられる合成高分子は、ゼラチンとの親和性の観点から親水性あるいは水溶性の合成高分子が好ましく、なかでも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリルアミド/ポリオキシプロピレンモノメタクリレート/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート共重合体などが挙げられる。PVAは変性品であってもよく、なかでも保護コロイド能の観点から部分鹸化型のPVAが好ましく、より好ましくは鹸化度が70mol%以上の部分鹸化型のPVAである。また、重合度によっては特に影響を受けない。
合成高分子は、粉末のまま添加しても、水溶液として添加してもよい。ただし、粒子形成の後半で添加する場合は、溶液に迅速に溶解させる観点から、水溶液として添加することが好ましい。
【0024】
銀供給化合物とハロゲン供給化合物とを反応させる際に用いられる溶液は、ゼラチンと該ゼラチン100質量部に対して、合成高分子を2質量部以上10質量部以下の量で含むものであるが、合成高分子の含有量は、4質量部以上8質量部以下であることが好ましい。合成高分子の含有量が10質量部を超えると沈降性の悪化等の問題が生じ、好ましくない。また、含有量が2質量%未満であると本発明の効果が得難い。
【0025】
本発明の熱現像感光性材料の画像形成層に用いられるハロゲン化銀粒子には、電子トラップ性ドーパントとして機能するように、或いはホールトラップ性ドーパントとして機能するように18族周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させても良い。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが更に好ましい。本発明においては、これらの金属ドープは粒子の内部に行う。内部というのは粒子1つの銀量の0mol%〜99mol%までのところを指す。好ましくは0mol%〜50mol%である。
【0026】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種或いは異種の化合物若しくは錯体を2種以上併用してもよい。ただし、少なくとも1種は、熱現像後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0027】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10−9モル〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10−8モル〜1×10−1モルの範囲がより好ましい。さらに、1×10−6モル〜1×10−2モルが好ましい。
【0028】
但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0029】
本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0030】
一般式〔ML
式中、Mは18族元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、1−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0031】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に、核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0032】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0033】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することが出来る。
【0034】
また本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、微粒子の溶解を防止する目的で六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)4−、[Fe(CN)3−、[Ru(CN)4−、[Os(CN)4−、[Co(CN)3−、[Rh(CN)3−、[Ir(CN)3−、[Cr(CN)3−、および[Re(CN)3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体を使用することが好ましい。
【0035】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン及びリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン( 例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、またはテトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン) を用いることが好ましい。
【0036】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒( 例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、またはアミド類等) との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0037】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−5モル以上1×10−3モル以下である。
【0038】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感及びテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込み工程終了前、水洗工程中、分散工程中、又は化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましい。
【0039】
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となる。
【0040】
なお、調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0041】
次に、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて、55℃以上の雰囲気下で化学増感される。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7−128768号等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0042】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、上記カルコゲン増感と組み合わせて、あるいは単独で金増感法にて化学増感されていることが好ましい。金増感剤としては、金の価数が+1価または+3価が好ましく、金増感剤としては通常用いられる金化合物が好ましい。代表的な例としては塩化金酸、臭化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムブロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、またはピリジルトリクロロゴールドなどが好ましい。また、米国特許第5858637号、特開2002−278016号に記載の金増感剤も好ましく用いられる。
【0043】
化学増感を行う際の雰囲気温度は55℃以上であることを要するが、微粒子高感化の観点からは、60℃以上70℃以下であることが好ましい。通常は、55℃以上、例えば有効な化学増感を行うために、化学増感処理中に55℃〜70℃程度に昇温すると、粒子が溶解・再吸着して所望されない粒子サイズの増大が生じるが、本発明においては、既述のようにゼラチンと合成高分子とを含有する溶液中でハロゲン化銀粒子の核形成、粒子成長が行われるために、粒子サイズの増大が抑制され、化学増感後のハロゲン化銀粒子の粒子サイズは35nm以下に維持される。
【0044】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で、後述する画像形成層形成のための塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
本発明で用いられる硫黄、セレンおよびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8モル〜10−2モル、好ましくは10−7モル〜10−4モル程度、さらに好ましくは10−6モル〜10−4モル程度を用いる。金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モルから10−3モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−4モルである。
【0045】
<ハロゲン化銀粒子>
本発明のハロゲン化銀粒子は、前記本発明の製造方法により得られた、平均球円相当径が35nm以下である感光性ハロゲン化銀粒子である。得られた感光性ハロゲン化銀粒子は熱現像感光性材料の画像形成層に好適に用いられる。
【0046】
<熱現像感光材料>
本発明の熱現像感光材料は、支持体上の少なくとも一方の面上に、前記本発明の製造方法により得られた感光性ハロゲン化銀粒子と、非感光性ハロゲン化銀塩と、熱現像のための還元剤とバインダーと、を含有する画像形成層を備えてなることを特徴とする。
【0047】
本発明の熱現像感光材料を構成するに際し、画像記録層に含まれる各成分について説明する。
(分光増感色素)
本発明の熱現像感光材料の画像形成層には分光増感色素を含んでもよい。増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I)で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特開2001−272747号、特開2001−290238号、特開2002−23306号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する分光増感工程を実施する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成が終了する前までの時期である。
本発明における増感色素の添加量は、感度やかぶりの性能に合わせて所望の量にすることができるが、画像形成層のハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−2モルが好ましく、さらに好ましくは10−6モル〜10−2モル、特に好ましくは10−5モル〜10−3モルである。
【0048】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる
【0049】
本発明の熱現像感光性材料の画像形成層に用いられるハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上、例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるものを併用してもよい。
【0050】
画像形成層の形成に際しては、ハロゲン化銀粒子を含む塗布液組成物の塗布量は、銀量で示して0.01g/m〜0.25g/m、好ましくは0.05g/m〜0.2g/m、さらに好ましくは0.05g/m〜0.15g/mである。後述する非感光性有機銀塩の銀1モルに対しては、0.01モル以上0.5モル以下、好ましくは0.02モル以上0.3モル以下、さらに好ましくは0.03モル以上0.2モル以下である。
【0051】
別々に調製した感光性ハロゲン化銀と後述する非感光性有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0052】
(非感光性有機銀塩)
1)組成
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀イオン供給体として機能し、銀画像を形成せしめる銀塩である。有機銀塩は還元剤により還元されうる銀イオンを供給できる任意の有機物質であってよい。
【0053】
2)粒子サイズ
本発明における非感光性有機銀塩は、好ましくは、平均粒子サイズは0.2μm以下の微粒子である。より好ましくは、平均粒子サイズが0.01μm以上0.2μm以下、さらに好ましくは平均粒子サイズは0.02μm以上0.15μm以下である。
【0054】
本発明において、粒子サイズは粒子の容積と等しい球の直径で表した球相当直径であって、球相当直径の測定方法は、電子顕微鏡を用いて直接サンプルを撮影し、その後、ネガを画像処理することによって求められる。
【0055】
3)添加量
本発明における非感光性有機銀塩は所望の量で使用できるが、ハロゲン化銀も含めた全塗布銀量として0.05g/m〜3.0g/mが好ましく、より好ましくは0.1g/m〜1.8g/m、さらに好ましくは0.2g/m〜1.2g/mである。
【0056】
本発明に用いられる非感光性有機銀塩の製造及びその分散法については、上記の他にも特開平10−62899号、欧州特許公開第0803763A1、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号、同2001−163889号、同2001−163890号、同200
1−163827号、同2001−33907号、同2001−188313号、同2001−83652号、同2002−6442、同2002−49117号、同2002−31870号、同2002−107868号等を参考にすることができる。
【0057】
(還元剤)
本発明の熱現像感光材料には銀イオンのための還元剤である熱現像剤を含む。還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質(好ましくは有機物質)であってよい。このような還元剤の例は、特開平11−65021号の段落番号0043〜0045や、欧州特許公開第0803764A1号の第7ページ第34行〜第18ページ第12行に記載されている。
【0058】
本発明において、還元剤としてはフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R1)で表される化合物がより好ましい。
【0059】
【化4】

【0060】
前記一般式(R1)中、Xはカルコゲン原子またはCHRを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、または複素環基を表す。Rはアルキル基を表す。但し、該Rの少なくとも一方は、2級または3級のアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rはアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rは1価の置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。分子内にRが2つ以上存在する場合、それらは同一でも互いに異なっていてもよい。
【0061】
より好ましくは、Rの少なくとも一方が、ヒドロキシ基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基、または脱保護されることによりヒドロキシ基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基である。
【0062】
一般式(R1)において、Xで表されるカルコゲン原子は、元素周期表の16族元素であり、具体的には、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子、ポロニウム原子等が挙げられるが、中でも、好ましく用いられるのは、硫黄原子である。
【0063】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0064】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるアルキル基としては、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
【0065】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基等が挙げられる。
【0066】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、エテニル−2−プロペニル基、ブテニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、3−ペンテニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、1−メ
チル−3−プロペニル、1−メチル−3−ブテニル等が挙げられる。
【0067】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるアリール基(芳香族炭化水素基等ともいう)としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
【0068】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表される芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナ
ゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等が挙げられる。
【0069】
一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表される複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等等が挙げられる。
【0070】
一般式(R1)において、Rで表されるアルキル基は、上記Xで表されるCHRのRで表されるアルキル基と同義であり、また、Rで表されるアルキル基の少なくとも一方は、2級または3級のアルキル基を表すが、2級のアルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。また、本発明に係る2級のアルキル基としては、上記Xで表されるCHRのRで表されるシクロアルキル基の中で、シクロヘキシル基、シクロペンチル基である。
【0071】
3級のアルキル基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、本発明に係る3級のアルキル基としては、上記Xで表されるCHRのRで表されるシクロアルキル基の中で、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基等が挙げられる。
【0072】
また、一般式(R1)において、Rで表されるアルキル基は、いずれも2級または3級の炭素数2〜20のアルキル基であることが好ましく、更に好ましくは、いずれもが3級のアルキル基であり、中でも、tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基等が好ましく、特に好ましくは用いられるは、tert−ブチル基である。
【0073】
一般式(R1)において、Rで表されるアルキル基の好ましい態様の1つは、一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるアルキル基と同義である。
で表されるアルキル基の好ましい別の態様は、該Rで表されるアルキル基の少なくとも一つが、ヒドロキシ基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基、または脱保護されることによりヒドロキシ基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基である。好ましくは、ヒドロキシ基を置換基として有する炭素数3〜10のアルキル基または脱保護されることによりヒドロキシ基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜10のアルキル基であり、特に好ましくは、ヒドロキシ基を置換基として有する炭素数3〜5のアルキル基(例えば、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基等)が挙げられる。
【0074】
これらの基は更に置換基を有していてもよく、置換基としては後述するRで表される置換基が挙げられる。
【0075】
一般式(R1)において、Rで表されるアルキル基の炭素数を上記の範囲に調製することにより、画像が硬調化することがなく、平均階調が1.8〜6.0の範囲内にある診断に適した画像をうることができる点で好ましい。
【0076】
一般式(R1)において、Rで表される、脱保護されてヒドロキシ基を形成しうる基を置換基として有する炭素数3〜20のアルキル基としては、好ましくは酸および/または熱の作用により脱保護してヒドロキシ基を形成する基が挙げられる。
【0077】
ここで、酸および/または熱の作用により脱保護された後に、ヒドロキシ基を有する基としては、好ましくは、炭素数3〜5の第1級アルキル基が挙げられ、中でも好ましく用いられるのは、例えば3−ヒドロキシプロピル基である。
【0078】
また、一般式(R1)において、R及びRの最も好ましい組合せは、Rが第3級アルキル基(tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基等)であり、Rがヒドロキシ基またはそのプレカーサー基を有する炭素数3〜10の第1級アルキル基(3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル等)である。ここで、複数のR、Rは同じでも異なっていてもよい。
【0079】
また、ヒドロキシ基の保護基としては、3置換シリル基(例えば、トリメチルシリル基)、アシル基(アセチル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基、ホルミル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、p−トルエンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、カルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基等)が挙げられる。
【0080】
一般式(R1)において、Rで表される置換基としては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、エテニル−2−プロペニル基、ブテニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、3−ペンテニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、1−メチル−3−プロペニル、1−メチル−3−ブテニル等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)等が挙げられる。なかでも、特に好ましい置換基は水素原子である。
【0081】
尚、これらの置換基は、上記の置換基によって更に置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。n及びmは0〜2の整数を表すが、最も好ましくはnm共に0の場合である。
【0082】
また、RはR、Rと飽和環を形成してもよい。Rは好ましくは水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0083】
本発明においては、熱現像特性を制御するために上記一般式(R1)で表される化合物と下記一般式(RD2)で表される化合物とを併用することもできる。
【0084】
【化5】

【0085】
一般式(RD2)において、Xは2価の基を表し、該2価の基は、一般式(R1)において、Xで表される基と同義である。
【0086】
一般式(RD2)において、Rはアルキル基を表し、該アルキル基は、一般式(R1)において、Xで表されるCHRのRで表されるアルキル基と同義であり、各々同一でも異なってもよいが、2級アルキル基(例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、イソペンチル基等)、及び/または、3級のアルキル基(例えば、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基等)は除く。
【0087】
一般式(RD2)において、Rは水素原子または置換基を表し、該置換基は、該一般式(R1)において、Rで表される置換基と同義である。
【0088】
としては、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が好ましく、更に好ましくは、メチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0089】
また、一般式(RD2)において、Rは(R及び(Rと飽和環を形成してもよい。Rとしては、好ましくはメチル基である。
【0090】
一般式(R2)で表される化合物として、中でも好ましく用いられる化合物の一例としては、欧州特許第1,278,101号明細書に記載の一般式(S)、一般式(T)を満足する化合物であり、具体的にはp21〜p28に記載の(1−24)、(1−28)〜(1−54)、(1−56)〜(1−75)の化合物等が挙げられる。
【0091】
(一般式(R1)、(RD2)で各々表される化合物との併用比率)
本発明の熱現像感光材料において、上記一般式(R1)で表される化合物と、上記一般式(RD2)との質量比は、[(R1)の化合物]:[一般式(RD2)の化合物]が5:95〜45:55であることが好ましく、より好ましくは10:90〜40:60である。
【0092】
以下に、一般式(R1)または一般式(RD2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0093】
【化6】

【0094】
【化7】

【0095】
【化8】

【0096】
【化9】

【0097】
【化10】

【0098】
【化11】

【0099】
【化12】

【0100】
【化13】

【0101】
【化14】

【0102】
【化15】

【0103】
これら一般式(R1)、一般式(RD2)で表されるビスフェノール化合物は、従来公知の方法により容易に合成することができる。
【0104】
本発明において、併用することができる還元剤としては、例えば、米国特許第3,770,448号明細書、同第3,773,512号明細書、同第3,593,863号明細書等、RD17029号及び29963号、特開平11−119372号公報、特開2002−62616号公報等に記載されている還元剤が挙げられる。
【0105】
前記一般式(R1)で表される化合物を初めとする還元剤の使用量は、好ましくは銀1モル当たり1×10−2〜10モル、特に好ましくは1×10−2〜1.5モルである。
【0106】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0107】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのア
ニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
【0108】
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
【0109】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい
【0110】
(現像促進剤)
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤として特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特開2002−278017号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物が好ましく用いられる。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられるが、特に固体分散物または乳化分散物として添加することが好ましい。乳化分散物として添加する場合、常温で固体である高沸点溶剤と低沸点の補助溶剤を使用して分散した乳化分散物として添加するか、もしくは高沸点溶剤を使用しない所謂オイルレス乳化分散物として添加することが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0111】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
【化16】

【0112】
一般式(A−1)中、Qは炭素原子で−NHNH−Qと結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。
【0113】
一般式(A−1)において、Qで表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、またはチオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0114】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0115】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチル
カルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、およびN−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0116】
で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、および2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Qで表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、およびベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0117】
で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、および4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Qで表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、および4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0118】
で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}ス
ルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、およびN−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5員〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0119】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Qとしては5員〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0120】
【化17】

【0121】
一般式(A−2)においてRはアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、または炭酸エステル基を表す。R、Rはそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。RとRは互いに連結して縮合環を形成してもよい。
【0122】
は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、またはシクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基、または4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、または2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。Rは好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、またはベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
【0123】
は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。Rは水素原子、アルキル基、またはアシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はRと同様である。Rがアシルアミノ基である場合RはRと連結してカルボスチ
リル環を形成することも好ましい。
【0124】
一般式(A−2)においてRとRが互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、Rはカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。Rはアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
以下、本発明に係る画像形成層に含まれうる現像促進剤の好ましい例を以下に挙げるが本発明はこれに制限されない。
【0125】
【化18】

【0126】
(かぶり防止剤)
1)有機ポリハロゲン化合物
以下、本発明で用いることができる好ましい有機ポリハロゲン化合物について具体的に説明する。本発明の好ましいポリハロゲン化合物は下記一般式(H)で表される化合物である。
【0127】
【化19】

【0128】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0〜1を表し、ZおよびZはハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
一般式(H)においてQは好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基または窒素原子を少なくとも一つ含むヘテロ環基(ピリジン、キノリン基等)である。
【0129】
一般式(H)において、Qがアリール基である場合、Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216等を参考にすることができる。
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子、電子求引性基で置換されたアルキル基、電子求引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、およびスルファモイル基等が挙げられる。電子求引性基として特に好ましいのは、ハロゲン原子、カルバモイル基、またはアリールスルホニル基であり、特にカルバモイル基が好ましい。
【0130】
Xは好ましくは電子求引性基である。好ましい電子求引性基は、ハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、カルバモイル基であり、特に好ましくは臭素原子である。
およびZは好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは臭素原子である。
【0131】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−、−SO−、−C(=O)N(R)−、または−SON(R)−を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO−、または−C(=O)N(R)−であり、特に好ましくは−SO−、−C(=O)N(R)−である。ここでいうRとは水素原子、アリール基またはアルキル基を表し、より好ましくは水素原子またはアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0132】
一般式(H)において、Qがアルキル基の場合、好ましいYは−C(=O)N(R)−であり、Qがアリール基またはヘテロ環基の場合、好ましいYは−SO−である。
一般式(H)において、該化合物から水素原子を取り去った残基が互いに結合した形態(一般にビス型、トリス型、テトラキス型と呼ぶ)も好ましく用いることが出来る。
一般式(H)において、解離性基(例えばCOOH基またはその塩、SOH基またはその塩、POH基またはその塩等)、4級窒素カチオンを含む基(例えばアンモニウム基、ピリジニウム基等)、ポリエチレンオキシ基、水酸基等を置換基に有するものも好ましい形態である。
【0133】
以下に本発明の一般式(H)で表される化合物の具体例を示す。
【0134】
【化20】

【0135】
上記以外の本発明に用いることが出来るポリハロゲン化合物としては、US3874946号、US4756999号、US5340712号、US5369000号、US5464737号、US6506548号、特開昭50−137126号、同50−890
20号、同50−119624号、同59−57234号、特開平7−2781号、同7−5621号、同9−160164号、同9−244177号、同9−244178号、同9−160167号、同9−319022号、同9−258367号、同9−265150号、同9−319022号、同10−197988号、同10−197989号、同11−242304号、特開2000−2963、特開2000−112070、特開2000−284410、特開2000−284412、特開2001−33911、特開2001−31644、特開2001−312027号、特開2003−50441号明細書の中で当該発明の例示化合物として挙げられている化合物が好ましく用いられるが、特に特開平7−2781号、特開2001−33911、特開2001−312027号に具体的に例示されている化合物が好ましい。
【0136】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モルあたり、10−4モル〜1モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.5モルの範囲で、さらに好ましくは1×10−2モル〜0.2モルの範囲で使用することが好ましい。
本発明において、かぶり防止剤を熱現像感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0137】
2)その他のかぶり防止剤
その他のかぶり防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0138】
本発明における熱現像感光材料はかぶり防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は熱現像感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては画像形成層を有する面の層に添加することが好ましく、画像形成層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、画像形成層に加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。
また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0139】
(その他の添加剤)
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具
体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行に記載されている。その中でも特開平9−297367号、特開平9−304875号、特開2001−100358号、特開2002−303954号、特開2002−303951等に記載されているメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0140】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号の第21ページ第23〜48行、特開2000−356317号や特開2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタ
ル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフラタジン、6−クロロフタラジン、5,7−ジメトキシフタラジンおよび2,3−ジヒドロフタラジン);フタラジン類とフタル酸類との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸類の組合せが好ましい。そのなかでも特に好ましい組み合わせは6−イソプロピルフタラジンとフタル酸または4メチルフタル酸との組み合わせである。
【0141】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の画像形成層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0142】
4)染料、顔料
本発明の画像形成性層には、色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。また、特願2005−048988号に記載の一般式(I)〜(IV)で表わされる非水溶性アゾメチン染料を併用することが好ましい。
【0143】
(バインダーの説明)
本発明においては、画像形成層の形成に際し、ハロゲン化銀粒子の分散媒としてバインダーを用いる。
画像形成層に含まれるバインダーは、いかなるポリマーを使用してもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然樹脂やポリマー及びコポリマー、合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン類、ゴム類、ポリ(ビニルアルコール)類、ヒドロキシエチルセルロース類、セルロースアセテート類、セルロースアセテートブチレート類、ポリ(ビニルピロリドン)類、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)類、ポリ(メチルメタクリル酸)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(メタクリル酸)類、スチレン−無水マレイン酸共重合体類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体類、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(オレフィン)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
【0144】
水性塗布方式の場合のバインダーとしては、ガラス転移温度が0℃以上80℃以下である(以下、高Tgバインダーということあり)ことが好ましく、10℃〜70℃であることがより好ましく、15℃以上60℃以下であることが更に好ましい。
【0145】
なお、本明細書においてTgは下記の式で計算した。
【0146】
(数1)
1/Tg=Σ(X/Tg
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。
はi番目のモノマーの質量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。尚、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tg)はPolymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup,E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用した。
【0147】
バインダーは必要に応じて2種以上を併用しても良い。また、ガラス転移温度が20℃以上のものとガラス転移温度が20℃未満のものを組み合わせて用いてもよい。Tgの異なるポリマーを2種以上ブレンドして使用する場合には、その質量平均Tgが上記の範囲にはいることが好ましい。
【0148】
本発明においては、画像形成層が溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成される場合に、さらに画像形成層のバインダーが水系溶媒(水溶媒)に可溶又は分散可能である場合に、特に25℃60%RHでの平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスからなる場合に性能が向上する。最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0149】
ここでいう前記ポリマーが可溶又は分散可能である水系溶媒とは、水又は水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0150】
なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、ここでは水系溶媒という言葉を使用する。
【0151】
また「25℃60%RHにおける平衡含水率」とは、25℃60%RHの雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの質量Wと25℃で絶乾状態にあるポリマーの質量Wを用いて以下のように表すことができる。
25℃60%RHにおける平衡含水率={(W−W)/W}×100(質量%)
【0152】
含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。
【0153】
本発明におけるバインダーポリマーの25℃60%RHにおける平衡含水率は、2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上1質量%以下が望ましい。
【0154】
本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態又はミセルを形成して分散しているものなどいずれでもよいが、ラテックス分散した粒子がより好ましい。分散粒子の平均粒径は1nm以上50000nm以下、好ましくは5nm以上1000nm以下の範囲で、より好ましくは10nm以上500nm以下の範囲、さらに好ましくは50nm以上200nm以下の範囲である。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。単分散の粒径分布を持つものを2種以上混合して使用することも塗布液の物性を制御する上で好ましい使用法である。
【0155】
本発明において水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、ポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000以上1000000以下、好ましくは10000以上200000以下がよい。分子量が小さすぎるものは画像形成層の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。また、架橋性のポリマーラテックスは特に好ましく使用される。
【0156】
−ラテックスの具体例−
好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。多官能モノマーを使用した場合は架橋構造を作るため分子量の概念が適用できないので架橋性と記載し、分子量の記載を省略した。Tgはガラス転移温度を表す。
【0157】
・P−1;−MMA(70)−EA(27)−MAA(3)−のラテックス(分子量37000、Tg61℃)
・P−2;−MMA(70)−2EHA(20)−St(5)−AA(5)−のラテックス(分子量40000、Tg59℃)
・P−3;−St(50)−Bu(47)−MAA(3)−のラテックス(架橋性、Tg−17℃)
・P−4;−St(68)−Bu(29)−AA(3)−のラテックス(架橋性、Tg17℃)
・P−5;−St(71)−Bu(26)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg24℃)
・P−6;−St(70)−Bu(27)−IA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−7;−St(75)−Bu(24)−AA(1)−のラテックス(架橋性、Tg29℃)
・P−8;−St(60)−Bu(35)−DVB(3)−MAA(2)−のラテックス(架橋性)
・P−9;−St(70)−Bu(25)−DVB(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性)
・P−10;−VC(50)−MMA(20)−EA(20)−AN(5)−AA(5)−のラテックス(分子量80000)
・P−11;−VDC(85)−MMA(5)−EA(5)−MAA(5)−のラテックス(分子量67000)
・P−12;−Et(90)−MAA(10)−のラテックス(分子量12000)
・P−13;−St(70)−2EHA(27)−AA(3)のラテックス(分子量130000、Tg43℃)
・P−14;−MMA(63)−EA(35)−AA(2)のラテックス(分子量33000、Tg47℃)
・P−15;−St(70.5)−Bu(26.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg23℃)
・P−16;−St(69.5)−Bu(27.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg20.5℃)
・P−17;−St(61.3)−イソプレン(35.5)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg17℃)
・P−18;−St(67)−イソプレン(28)−Bu(2)−AA(3)−のラテックス(架橋性,Tg27℃)
【0158】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0159】
以上に記載したポリマーラテックスは市販もされていて、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル系ポリマーの例としては、セビアンA−4635,4718,4601(以上、ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811、814、821、820、857(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(エステル)類の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上、大日本インキ化学(株)製)、WD−size、WMS(以上、イーストマンケミカル製)など、ポリ(ウレタン)類の例としては、HYDRAN AP10、20、30、40(以上、大日本インキ化学(株)製)など、ゴム類の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上、大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410、438C、2507(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニル)類の例としては、G351、G576(以上、日本ゼオン(株)製)など、ポリ(塩化ビニリデン)類の例としては、L502、L513(以上、旭化成工業(株)製)など、ポリ(オレフィン)類の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0160】
これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。
【0161】
−好ましいラテックス−
本発明に用いられるポリマーラテックスとしては、特に、スチレン−ブタジエン共重合体もしくはスチレン−イソプレン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体もしくはスチレン−イソプレン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンもしくはイソプレンのモノマー単位との質量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンもしくはイソプレンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60質量%〜99質量%であることが好ましい。また、本発明のポリマーラッテクスはアクリル酸またはメタクリル酸をスチレンとブタジエンもしくはイソプレンの和に対して1質量%〜6質量%含有することが好ましく、より好ましくは2質量%〜5質量%含有する。
本発明のポリマーラテックスはアクリル酸を含有することが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。
【0162】
本発明に用いることが好ましいスチレン−ブタジエン酸共重合体のラテックスとしては、前記のP−3〜P−9,15、市販品であるLACSTAR−3307B、7132CNipol Lx416等が挙げられる。また、スチレン−イソプレン共重合体の例としては前記のP−16、17が挙げられる。
【0163】
本発明の熱現像感光材料の画像形成層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は画像形成層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0164】
本発明における画像形成層は、ポリマーラテックスを用いて形成されたものが好ましい。画像形成層のバインダーの量は、全バインダー/有機銀塩の質量比が1/10〜10/1、より好ましくは1/3〜5/1の範囲、さらに好ましくは1/1〜3/1の範囲である。
【0165】
また、このような画像形成層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(画像形成層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の質量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲である。
【0166】
本発明における画像形成層の全バインダー量は、好ましくは0.2g/m以上30g/m以下、より好ましくは1g/m以上15g/m以下、さらに好ましくは2g/m以上10g/m以下の範囲である。本発明における画像形成層には、架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0167】
(層構成および構成成分)
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0168】
また、光学フィルター層としては、(a)または(b)の層として設けられる。ハレーション防止層は、(c)または(d)の層として熱現像感光材料に設けられる。
【0169】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。
表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特開2000−171936号に記載されている。
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全鹸化物であるPVA−105、部分鹸化物であるPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m当たり)としては0.3g/m〜4.0g/mが好ましく、0.3g/m〜2.0g/mがより好ましい。
【0170】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m当たり)としては0.3g/m〜5.0g/mが好ましく、0.3g/m〜2.0g/mがより好ましい。
【0171】
2)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましく、マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は感光材料1m当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m〜400mg/m、より好ましくは5mg/m〜300mg/mである。
【0172】
本発明においてマット剤の形状は定型、不定形のいずれでもよいが好ましくは定型で、球形が好ましく用いられる。平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜8.0μm、さらに好ましくは2.0μm〜6.0μmの範囲である。また、サイズ分布の変動係数としては50%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは、30%以下である。ここで変動係数とは(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100で表される値である。また、変動係数が小さいマット剤で平均粒径の比が3より大きいものを2種併用することも好ましい。
【0173】
また、画像形成層面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度は、30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0174】
本発明においてバック層のマット度としては、ベック平滑度が、1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0175】
本発明において、マット剤は熱現像感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0176】
3)ポリマーラテックス
特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、表面保護層やバック層にポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%)/ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0
質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0177】
さらに、表面保護層用のバインダーとして、特願平11−6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特開2000−267226号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11−6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特開2000−19678号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。表面保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%以上90質量%以下が好ましく、特に20質量%以上80質量%以下が好ましい。
【0178】
4)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特開2000−284399号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0179】
5)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION」(MacmillanPublishing Co.,Inc.刊、1977年刊)、77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0180】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳「液体混合技術」(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0181】
6)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132、溶剤については同号段落番号0133、支持体については同号段落番号0134、帯電防止又は導電層については同号段落番号0135、カラー画像を得る方法については同号段落番号0136に、滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0182】
本発明においてはフッ素系の界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載された化合物があげられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。
本発明の熱現像感光材料においては特開2002−82411号、特開2003−57780号および特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤の使用が好ましい。特に特開2003−57780号および特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は水系の塗布液で塗布製造を行う場合、帯電調整能力、塗布面状の安定性、スベリ性の点で好ましく、特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は帯電調整能力が高く使用量が少なくてすむという点で最も好ましい。
【0183】
本発明においてフッ素系界面活性剤は画像形成層面、バック面のいずれにも使用することができ、両方の面に使用することが好ましい。また、前述の金属酸化物を含む導電層と組み合わせて使用することが特に好ましい。この場合には導電層を有する面のフッ素系界面活性剤の使用量を低減もしくは除去しても十分な性能が得られる。
フッ素系界面活性剤の好ましい使用量は画像形成層面、バック面それぞれに0.1mg/m〜100mg/mの範囲で、より好ましくは0.3mg/m〜30mg/mの範囲、さらに好ましくは1mg/m〜10mg/mの範囲である。特に特開2001−264110号記載のフッ素系界面活性剤は効果が大きく、0.01mg/m〜10mg/mの範囲が好ましく、0.1mg/m〜5mg/mの範囲がより好ましい。
【0184】
7)帯電防止剤
本発明においては金属酸化物あるいは導電性ポリマーを含む導電層を有することが好ましい。帯電防止層は下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねてもよく、また別途設けてもよい。帯電防止層の導電性材料は金属酸化物中に酸素欠陥、異種金属原子を導入して導電性を高めた金属酸化物が好ましく用いられる。金属酸化物の例としてはZnO、TiO、SnOが好ましく、ZnOに対してはAl、Inの添加、SnOに対してはSb、Nb、P、ハロゲン元素等の添加、TiOに対してはNb、Ta等の添加が好ましい。
特にSbを添加したSnOが好ましい。異種原子の添加量は0.01モル%〜30モル%の範囲が好ましく、0.1モル%〜10モル%の範囲がより好ましい。金属酸化物の形状は球状、針状、板状いずれでもよいが、導電性付与の効果の点で長軸/単軸比が2.0以上、好ましくは3.0〜50の針状粒子がよい。金属酸化物の使用量は好ましくは1mg/m〜1000mg/mの範囲で、より好ましくは10mg/m〜500mg/mの範囲、さらに好ましくは20mg/m〜200mg/mの範囲である。
【0185】
本発明の帯電防止層は画像形成層面側、バック面側のいずれに設置してもよいが、支持体とバック層との間に設置することが好ましい。本発明の帯電防止層の具体例は特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載されている。
【0186】
8)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130℃〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。支持体に画像形成層もしくはバック層を塗布するときの、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
【0187】
9)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、画像形成層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0188】
本発明の熱現像感光材料は成膜性を向上させるために塗布、乾燥直後に加熱処理をすることが好ましい。加熱処理の温度は膜面温度で60℃〜100℃の範囲が好ましく、加熱時間は1秒〜60秒の範囲が好ましい。より好ましい範囲は膜面温度が70℃〜90℃、加熱時間が2秒〜10秒の範囲である。本発明の好ましい加熱処理の方法は特開2002−107872号に記載されている。
【0189】
また、本発明の熱現像感光材料を安定して連続製造するためには特開2002−156728号、同2002−182333号に記載の製造方法が好ましく用いられる。
【0190】
10)包装材料
本発明の熱現像感光材料は生保存時の写真性能の変動を押えるため、もしくはカール、巻癖などを改良するために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で包装することが好ましい。酸素透過率は25℃で50mL/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは10mL/atm・m・day以下、さらに好ましくは10mL/atm・m・day以下である。水分透過率は10g/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm・m・day以下、さらに好ましくは1g/atm・m・day以下である。
該酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、たとえば特開平8−254793号。特開2000−206653号明細書に記載されている包装材料である。
【0191】
画像形成方法)
1)露光
本発明の熱現像感光材料は、いかなる手段によって画像露光してもよい。好ましくは、レーザー光による走査露光である。
用いられるレーザーは、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr、He−Ne、He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。好ましくは、赤色〜赤外半導体レーザーであり、レーザー光のピーク波長は、600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
一方、近年、特に、SHG(Second Harmonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。青色レーザー光のピーク波長は、300nm〜500nm、特に400nm〜500nmが好ましい。
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0192】
2)熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは110℃〜130℃である。
現像時間としては3秒〜20秒であり、より好ましくは4秒〜18秒、さらに好ましくは5秒〜15秒である。
【0193】
熱現像の方式としてはドラム型ヒーター、プレート型ヒーターのいずれを使用してもよいが、プレート型ヒーター方式がより好ましい。プレート型ヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒーターからなり、かつ前記プレートヒーターの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒーターとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒーターを2段〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。例えば、独立に温度制御できる4 組のプレートヒーターを使用し、それぞれ112℃、119℃、121℃、120℃になるように制御する例が挙げられる。このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を抑えることもできる。
【0194】
熱現像機の小型化及び熱現像時間の短縮のためには、より安定なヒーター制御ができることが好ましく、また、1枚のシート感材を先頭部から露光開始し、後端部まで露光が終わらないうちに熱現像を開始することが望ましい。本発明に好ましい迅速処理ができるイメージャーは例えば特改2002−289804号及び特開2003−285455号に記載されている。このイメージャーを使用すれば例えば、107℃−121℃−121℃に制御された3段のプレート型ヒーターで14秒で熱現像処理ができ、1枚目の出力時間は約60秒に短縮することができる。
【0195】
3)システム
露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPL及びDRYPIX7000を挙げることができる。FM−DPLに関しては、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術は本発明の熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士フィルムメディカル(株)が提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【実施例】
【0196】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0197】
〔実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例10〕
(1)ハロゲン化銀粒子の製造
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製>
(ハロゲン化銀粒子の形成)
蒸留水1429ccに1wt%臭化カリウム溶液3.1ccを加え、さらに1N硫酸を3.7cc、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液を攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀45.0gに蒸留水を加え192ccに希釈した溶液a1と臭化カリウム30.7gとヨウ化カリウム1.6gを蒸留水にて容量195ccに希釈した溶液b1を準備し、溶液a1/b1の全量を一定流量で1分30秒間かけて添加した。その定量添加中に六塩化イリジウム酸三カリウムを銀1モル当たり1×10−4モルになるよう添加した。その後3.15%の過酸化水素水溶液を11.2cc添加し、さらにベンゾイミダゾールの10wt%水溶液を11cc添加した。その後、硝酸銀30.0gに蒸留水を加え245ccに希釈した溶液a2と臭化カリウム39.5gとヨウ化カリウム2.0gを蒸留水にて容量480ccに希釈した溶液b2を準備し、コントロールドダブルジェット法にて、銀電位を絶対値+60mVの目標設定として、一定流量で溶液a2を10分間かけて全量添加した。a2/b2の添加終了後、黄血塩を銀1モル当たり3.7×10−4モルになるよう添加した後、15分間攪拌した。その後1N硫酸を用いてpHを3.8に調整し攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行い、脱イオンゼラチン2.4gを加えて1Nの水酸化ナトリウムを添加して、38℃にてpH5.9に調整してハロゲン化銀分散物を作成した。
【0198】
(ハロゲン化銀粒子の化学増感)
該乳剤を攪拌しながら47℃に昇温し、銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを銀1モルに対して81μモル加え、3分後にテルル増感剤A(下記構造)を銀1モルあたり5×10−5モル添加し、80分間熟成した。その後、分光増感色素B(下記構造)を銀1モルあたり9×10−4モル、分光増感色素C(下記構造)を3×10−4モル添加モル加え、6分間攪拌した後、2−ジメチルアミノ−4,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−1,3,5−トリアゾールを銀1モルあたり1×10−4モル添加して、その後、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを銀1モルあたり8.5×10−3モル添加して温度を下げ、化学増感を終了しハロゲン化銀粒子A1(比較例1)を作製した。
【0199】
【化21】

【0200】
ハロゲン化銀粒子1と全く同様にして、表1に示すように前記ハロゲン化銀乳剤Aの調製工程における核形成開始前(表1には、a1/b1添加前と記載)、もしくは黄血塩添加後〜沈降実施前(表1には、a2/b2添加終了後と記載)に合成高分子を添加し、さらに化学増感時の温度を変更することで比較例2〜10のハロゲン化銀粒子(A2〜A10)及び実施例1〜6のハロゲン化銀粒子(A11〜A16)を作製した。
【0201】
〔前記ハロゲン化銀粒子を用いた熱現像感光性材料の製造〕
(PET支持体の作製)
1.製膜
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作製した。
【0202】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cmで巻き取り、厚み1
75μmのロ−ルを得た。
【0203】
2.表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/mの処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0204】
3.下塗り
(下塗層塗布液の作製)
処方(1)(画像形成層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液) 59g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5) 10質量%溶液 5.4g
綜研化学(株)製MP−1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)
0.91g
蒸留水 935mL
【0205】
処方(2)(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 158g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン質量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩(8質量%水溶液) 20g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
蒸留水 854mL
【0206】
処方(3)(バック面側第2層用)
SnO/SbO(9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84g
ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2g
信越化学(株)製メトローズTC−5(2質量%水溶液) 8.6g
綜研化学(株)製MP−1000 0.01g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
NaOH(1質量%) 6mL
プロキセル(ICI社製) 1mL
蒸留水 805mL
【0207】
<下塗り>
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(画像形成層面)に上記下塗り塗布液処方(1)をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6mL/m(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方(2)をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7mL/mになるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方(3)をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7mL/mになるように塗布して180℃で分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0208】
(バック層)
1)バック層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン(宮城化学工業(株)製PZゼラチン)1000g、ベンゾイソチアゾリノン3.9g、水16Lを加えてゼラチンを溶解させた。さらに青色染料−3の5質量%水溶液を430mL、クラリアント社製青色染料FRL−SFの10質量%水溶液70mL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液800mL、およびイソプレンラテックスSIRラテックス(スチレン/イソプレン/アクリル酸=60.4/36.6/3.0質量%)10質量%液2000gを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液500mLを混合した。
完成液のpH値は40℃で6.4、粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で32[mPa・s]であった。
【0209】
2)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、等電点4.8のゼラチン(宮城化学工業(株)製PZゼラチン)1000g、ベンゾイソチアゾリノン6.37g、水を加えてゼラチンを溶解させた。さらに単分散ポリ(エチレングリコールジメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)微粒子のゼラチン分散物(平均粒子サイズ7.7μm、粒径標準偏差0.3μm、20質量%)を287g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を360g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液240mL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液500mL、フッ素系界面活性剤(F−1)1質量%溶液を116mL、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4mL、エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比96.4/3.6)ラテックス20質量%液721mLを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液900mLを混合し、完成液量20548mLのバック面保護層塗布液とした。完成液のpH値は6.2であった。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で28mPa・Sであった。
【0210】
3)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、バック層塗布液をゼラチン塗布量が1.65g/mとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が0.68g/mとなるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。塗布膜のpHは5.5であった。
【0211】
(画像形成層、中間層、および表面保護層)
用いる材料を下記表2に記載のものに換えた以外は、前記<ハロゲン化銀乳剤Aの調製>と同様にしてハロゲン化銀粒子A16〜A22を調製した。
これらのうち、表2に記載のハロゲン化銀粒子を用いて、後述するように画像形成層、中間層、及び表面保護層を順次形成し、熱現像感光性材料を得た。
【0212】
<ハロゲン化銀乳剤Bの調整>
(ハロゲン化銀粒子の形成)
蒸留水1429ccに1wt%臭化カリウム溶液3.1ccを加え、さらに1N硫酸を3.7cc、フタル化ゼラチン31.9gを添加した液を攪拌しながら、47℃に液温を保ち、硝酸銀22.4gに蒸留水を加え254ccに希釈した溶液a1と臭化カリウム17.8gとヨを蒸留水にて容量260ccに希釈した溶液b1を準備し、溶液a1/b1の全量を一定流量で2分間かけて添加した。その後3.15%の過酸化水素水溶液を11.2cc添加し、さらにベンゾイミダゾールの10wt%水溶液を11cc添加した。その後、硝酸銀52.1gに蒸留水を加え428ccに希釈した溶液a2と臭化カリウム51gを蒸留水にて容量600ccに希釈した溶液b2を準備し、コントロールドダブルジェット法にて、銀電位を絶対値+60mVの目標設定として、一定流量で溶液a2を30分間かけて全量添加した。a2/b2の添加終了後、15分間攪拌した。その後1N硫酸を用いてpHを3.8に調整し攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行い、1Nの水酸化ナトリウムを添加して、38℃にてpH5.9に調整してハロゲン化銀分散物を作成した。
【0213】
(ハロゲン化銀粒子の化学増感)
該乳剤を攪拌しながら47℃に昇温し、銀1モル当たりベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを銀1モルに対して81μモル加え、3分後にテルル増感剤Aを銀1モルあたり6.8×10−5モル添加し、60分間熟成した。その後、分光増感色素Bを銀1モルあたり9×10−4モル、分光増感色素Cを3×10−4モル添加モル加え、6分間攪拌した後、2−ジメチルアミノ−4,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−1,3,5−トリアゾールを銀1モルあたり1×10−4モル添加して、その後、1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを銀1モルあたり6×10−3モル添加して温度を下げ、化学増感を終了しハロゲン化銀粒子Bを作成した。
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径80nmの純臭化銀粒子であった。
【0214】
<画像記録層塗布液用混合乳剤の調製>
下記表2に記載のハロゲン化銀乳剤A1〜A5、を87質量%、ハロゲン化銀乳剤Bを13質量%溶解し、さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として58.8gとなるように加水し、塗布液用混合乳剤1kgあたり0.50gとなるように1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。
<脂肪酸銀分散物の調製>
再結晶ベヘン酸(ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にステアリン酸0.2モル%、リグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた)88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Bの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Bのみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。
また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0215】
ベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった(a,b,cは本文の規定)。
【0216】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kgおよび水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0217】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cmに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着
し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
3)還元剤分散物の調製
<還元剤−1分散物の調製>
還元剤−2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0218】
<還元剤−2分散物の調製>
還元剤−1と同様の方法にて、還元剤−2を調整した。
【0219】
5)現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0220】
6)現像促進剤−2の分散物調製
現像促進剤−2の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、20質量%の分散液を得た。
【0221】
7)ポリハロゲン化合物の調製
<有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製>
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0222】
<有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製>
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調整した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0223】
<フタラジン化合物−1溶液の調製>
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0224】
9)メルカプト化合物の調製
<メルカプト化合物−2水溶液の調製>
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0225】
10)アゾメチン染料固体分散物の調製
アゾメチン染料−Aを10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液3.0kgと、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製)の48質量%水溶液)42gと、消泡剤(サーフィノール104E(信越化学(株)製))3.0gを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩10gと水を加えて非水溶性アゾメチン染料の濃度が10質量%になるように調整した。この分散液を40℃で2時間加温し、アゾメチン−27分散物を得た。こうして得たアゾメチン染料分散物に含まれるアゾメチン染料粒子はメジアン径0.49μm、最大粒子径2.6μm以下であった。得られたアゾメチン染料分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0226】
<画像形成層塗布液>
脂肪酸銀分散物1000g、水262mL、アゾメチン染料固体分散物A 5.5g、有機ポリハロゲン化合物−1分散物22.7g、有機ポリハロゲン化合物−2分散物37.9g、フタラジン化合物−1溶液142.0g、イソプレンラテックス液858g、還元剤−1分散物75g、還元剤−2分散物77g、現像促進剤−1分散物3.5g、現像促進剤−2分散物2.9g、メルカプト化合物−2水溶液26.3mL、増粘剤1.9gを順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀混合乳剤206gを添加して良く混合した。42.5mL/mになるようにコーティングダイへ送液した。
【0227】
【化22】

【0228】
【化23】

【0229】
【化24】

【0230】
<中間層形成用塗布液>
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、水4254mL、を加えスルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5%水溶液37mL、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液4600mL、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を283mL、青色染料−3(下記構造)の10%質量水溶液を182mL、還元剤−1分散物2319gを順次添加し、pHが7.1になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、8.3mL/mになるようにコーティングダイへ送液した。
【0231】
【化25】

【0232】
<表面保護層第1層塗布液の調製>
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水704mLに溶解し、ベンゾトリアゾール銀分散物を146g添加し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mL、トリスヒドロキシルアミノメタンの硫酸塩20%溶液10mL、ホモフタル酸の17.1%メタノール溶液50mLを加えて混合し、塗布直前に4質量
%のクロムみょうばん40mLをスタチックミキサーで混合したものを塗布液量が35mL/mになるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で20[mPa・s]であった。
【0233】
<表面保護層第2層塗布液の調製>
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水785mLに溶解し、流動パラフィンの10質量%乳化物を10g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を30g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液180g、ネオペレックスG−15(花王製)2.3g、エマレックス125(日本エマルジョン製)0.3g、フタル酸15質量%メタノール溶液40mL、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を11mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を11mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を11mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28mL、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.6μm、体積加重平均の分布60%)25g、カルナヴァワックス(中京油脂(株)製、セロゾール524、30質量%溶液37gを混合したものを表面保護層塗布液とし、4.2mL/mになるようにコーティングダイへ送液した。
塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター,60rpm)で19[mPa・s]であった。
【0234】
<熱現像感光材料の作製>
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて4層同時重層塗布して熱現像感光材料を作製した。また、画像形成層と中間層の塗布液は36℃に、表面保護層第1層の塗布液は36℃に、表面保護層第2層の塗布液は37℃に温度調整して塗布した。
塗布銀量は1.17g/m、又、乾燥は温度80℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間乾燥した。表面保護層が乾燥膜厚として1.5μmになる様に行った。バック面は、それぞれ乾燥膜厚が3μmになるように、押出しコーターを用いて塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0235】
以上の方法で作成したハロゲン化銀粒子A1〜A15の平均粒子サイズは記述の方法で測定し平均値を求めた。また、ハロゲン化銀A1〜A15を用いて作製した塗布サンプルにおいて感度、カバーリングパワー(C・P)、かぶり(fog)、自然経時安定性を以下の条件で測定した。結果を下記表1に併記した。
【0236】
<熱現像感光材料の露光および現像>
各試料は富士メディカル(株)ドライレーザーイメージャーDRYPIX7000(最大50mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて露光、および熱現像(107℃−121℃−121℃に設定した3枚のパネルヒータで合計14秒)し、得られた画像の評価を濃度計により行った。
【0237】
レーザーの露光量を段階的に変化させて露光を行い、現像処理後に得られた画像をMacbeth濃度計により濃度測定を行い、露光量に対する濃度の特性曲線を作製した。
<かぶり>
未露光部の濃度を測定した。濃度が低いほどかぶりが良好であると評価した。この数値が0.20以下で実用上問題のないレベルである。
<相対感度>
かぶり+1.0の濃度を得る露光量の逆数を感度とし、表1における比較例1(ハロゲン化銀粒子A1)を100とした相対値で表記した。
<カバーリングパワーC・P>
露光量の増加で飽和する最高濃度を、塗布銀量で割った値をカバーリングパワーとして表記した。表1における比較例1(ハロゲン化銀粒子A1)を100とした相対値で表記した。
<経時保存後の相対感度評価>
それぞれの塗布サンプルを25℃50%RH条件下で1日放置し、各サンプルをそれぞれ1枚ずつ防湿材料でできた袋の中に密封し、さらに化粧箱に入れ、60℃で50日間経時させた(強制経時)。このサンプルを上記と同様の方法で露光・処理し相対感度を測定した。
なお、下記表1で用いた合成高分子の詳細は以下の通りである。
PVA205:クラレ(株)製 鹸化度 86.5〜89mol%、重合度500
PVA:217:クラレ(株)製 鹸化度 87〜89mol%、重合度1700
変性PVA:MP203 クラレ(株)製 鹸化度 87〜89mol%
ブロックポリマー:アクリルアミド/ポリオキシプロピレン(n=12)モノメタクリレート/メトキシポリエチレングリコール(n=23)メタクリレート共重合体
PVP:日本触媒(株)
【0238】
【表1】

【0239】
表1の評価結果から明らかなように、本発明の製造方法により得られた実施例1〜6の感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感時の温度を60℃に上昇させても、温度が47℃時と同様の小粒子サイズを維持することが可能であった。そのため、従来方法により得たハロゲン化銀粒子A2を用いた比較例2では、化学増感時の温度を60℃とすることより粒子サイズが拡大してしまい、かぶりの上昇やC・Pの低下を招いたが、本発明の製造方法により得られた実施例のハロゲン化銀粒子を用いて熱現像感光性材料を形成することで、カブリの上昇やC・Pの低下を招くことなく、化学増感時の温度上昇による感度増加効果を得ることができる。
また、想定しなかった効果であったが、本発明のハロゲン化銀粒子を使用すると塗布品の自然経時の感度安定性が向上することも新たに判明した。
【0240】
また、実施例6に明らかなように、微粒子化の効果は特に部分鹸化型のPVAで高く、また、合成高分子の添加は、粒子形成前に行う方が、より微粒子化には好ましく、最小24nmの粒子まで得ることが可能である。実施例6と比較例10との対比より、最小粒径においても、本発明の製造方法により得られたハロゲン化銀粒子では、比較例に比べて、同一の粒子径においてもより高感度であることが分かる。
【0241】
また、末端変性PVAを使用した比較例7や一定量以上のPVAを用いた比較例3では、沈降が起き難くなり、さらに感度低下が起きることが判明した。
【0242】
〔実施例7〜実施例10、比較例11〜比較例13〕
下記表2に示すPVA205の添加量、化学増感温度条件で、さらに、化学増感剤量/分光増感剤量を表2に記載の如く変化させた以外は前記実施例1と同様にして、感光性ハロゲン化銀粒子を形成し、該感光性ハロゲン化銀粒子を含有した画像形成層を有する熱現像感光性材料を作製した。実施例1と同様にして、相対感度、カバーリングパワー(C・P)、かぶり(fog)を測定した結果を以下に表2に示した。また、化学増感剤量/分光増感剤量の影響を検討する目的で、前記実施例1、6、比較例1〜3及び5のハロゲン化銀粒子の製造条件及び評価結果を表2に併記した。
なお、下記表2中、Te(テルル)増感剤の使用量、分光増感剤の使用量は以下の通りである。
Te増感剤の使用量
*1:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量と等量
*1.5:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量の1.5倍量
*2:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量の2倍量
分光増感剤の使用量
*1:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量と等量
*1.5:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量の1.5倍量
*2:前記ハロゲン化銀A1の形成工程における使用量の2倍量
【0243】
【表2】

【0244】
合成高分子等の保護コロイド能の高い添加剤(バインダー)を使用した場合、化学増感の効果が得られ難いことが従来公知であるが、本発明では、ゼラチンに対する合成高分子の添加量を10%以下としたため、実施例1と実施例7〜9及び実施例6と実施例10との対比より、化学増感の阻害が起きず、化学増感剤や分光増感剤での高感化が可能であることがわかる。
【0245】
ただし、合成高分子添加量を本発明の範囲外である15%とした場合には、比較例3と比較例12、13との対比にも明らかなように、化学増感剤量を増量しても、高感化の効果は小さく、却って化学増感が阻害されることが判明した。このことから、ハロゲン化銀に対する、合成高分子の吸着量が一定量以上となると化学増感剤の吸着阻害が発生しだすと考えられ、化学増感剤の吸着阻害を避けるためには10%以下で合成高分子を使用する必要がある。
【0246】
本発明の方法で作製したハロゲン化銀は、化学増感時の温度を上昇させても粒子サイズを維持することが可能であること、合成高分子の使用量が適切な範囲とされているため、化学増感の阻害が起きないことより、微粒子で且つ、高感度の乳剤を従来方法よりも容易に得ることが可能であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀供給化合物とハロゲン供給化合物を反応させてハロゲン化銀を形成させる粒子形成工程において、保護コロイドとして使用するゼラチン100質量部に対し、2質量部以上10質量部以下の合成高分子を添加し、形成された粒子を55℃以上の雰囲気下で化学増感する工程を有し、
得られたハロゲン化銀粒子の平均球円相当径が35nm以下である感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法。
【請求項2】
前記合成高分子が、部分鹸化型のポリビニルアルコールである請求項1に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法。
【請求項3】
前記部分鹸化型のポリビニルアルコールの鹸化度が70mol%以上である請求項2に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法。
【請求項4】
形成された粒子を分光増感する工程をさらに有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感光性ハロゲン化銀粒子の製造方法により得られた感光性ハロゲン化銀粒子。
【請求項6】
支持体の少なくとも一方の面上に、請求項5に記載の感光性ハロゲン化銀粒子、非感光性ハロゲン化銀塩、熱現像のための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を備えてなる熱現像感光材料。
【請求項7】
前記感光性ハロゲン化銀微粒子が、画像形成層の塗布液調整時に塗布液中に添加された請求項6に記載の熱現像感光材料。
【請求項8】
前記熱現像のための還元剤は、下記一般式(R1)で表される化合物である請求項6又は請求項7に記載の熱現像感光材料。
【化1】


前記一般式(R1)中、Xはカルコゲン原子またはCHRを表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、または複素環基を表す。Rはアルキル基を表す。但し、該Rの少なくとも一方は、2級または3級のアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rはアルキル基を表し、分子内に2つ存在するRは同一でも互いに異なっていてもよい。Rは1価の置換基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。分子内にRが2つ以上存在する場合、それらは同一でも互いに異なっていてもよい。
【請求項9】
前記画像形成層は、さらに、下記一般式(A−1)または一般式(A−2)で表される現像促進剤を含有する請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の熱現像感光材料。
【化2】


(一般式(A−1)中、Qは炭素原子で−NHNH−Qと結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Qはカルバモイル基を表す。)
【化3】


(一般式(A−2)中、Rはアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、またはカルバモイル基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、または炭酸エステル基を表す。R、Rはそれぞれ独立に1価の置換基を表す。RとRは互いに連結して縮合環を形成してもよい。)

【公開番号】特開2012−150240(P2012−150240A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8288(P2011−8288)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】