説明

ハロゲン白熱灯

本発明は、透光性のランプ管(1)、このランプ管内に配置された少なくとも1つのタングステンフィラメント(3)、および、ランプ管内に封入された充填物を有し、この充填物はハロゲン循環プロセスのためのハロゲン成分とクリプトンまたはキセノンを含む希ガス成分とを含む、ハロゲン白熱灯に関する。ここで本発明によれば、希ガス成分はクリプトン原子よりも小さい原子径を有する少なくとも1つの第2の希ガスを含み、ランプ管内の冷間充填圧は0.7MPa以上である。本発明のハロゲン白熱灯は特に自動車用のカーブ灯、昼間走行灯および/または位置表示灯の光源としての使用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念記載のハロゲン白熱灯に関する。
【0002】
I.従来技術
ハロゲン白熱灯は例えば欧州公開第0370318号明細書から知られる。この刊行物には高温のもとで使用されるハロゲン白熱灯が記載されている。このハロゲン白熱灯は、透光性のランプ管、ランプ管内部に配置されたタングステンフィラメント、および、ランプ管に封入された充填物から成り、この充填物は炭素、水素、不活性ガス、リン、塩素および臭素の混合物を含む。塩素および臭素を合わせた量と炭素量とのモル比は1より大きく、リン量と塩素および臭素を合わせた量とのモル比は0.5〜2の範囲に存在する。不活性ガスとしては窒素、キセノン、クリプトン、アルゴンまたはヘリウムが挙げられている。
【0003】
欧州公開1255279号明細書には小型ハロゲン白熱灯が記載されている。その充填物は0.5MPa〜3MPaの範囲の冷間充填圧を有し、キセノンから成る希ガス成分を含む。これによりタングステンフィラメントからのタングステンの気化速度を最小のレベルに抑えることができる。しかし、ここでは充填物成分の希ガスとしてキセノンが使用されるため、ランプ管の容積が大きい場合にはコストも高くなってしまう。
【0004】
II.本発明の説明
本発明の課題は、冒頭に言及した形式のハロゲン白熱灯を種々の電力で駆動可能にし、耐用期間の全体にわたってランプ管の重大な黒化が生じないようにすることである。
【0005】
この課題は、本発明の請求項1の特徴部分に記載の構成により解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明は、透光性のランプ管、ランプ管内に配置された少なくとも1つのタングステンフィラメント、および、ランプ管に封入された充填物を有し、この充填物がハロゲン循環プロセスのためのハロゲン成分とクリプトンまたはキセノンを含む希ガス成分とを含むハロゲン白熱灯に関する。本発明によれば、希ガス成分はクリプトン原子よりも小さい原子径を有する少なくとも1つの第2の希ガスを含み、ランプ管内の冷間充填圧は0.7MPa以上である。
【0007】
これにより、ハロゲン白熱灯を種々の電力で駆動でき、ランプ管の黒化がほとんど生じないことが保証される。高い冷間充填圧と希ガスであるクリプトンまたはキセノンを用いることとにより、タングステンフィラメントからのタングステンの気化速度は小さくなる。クリプトンまたはキセノンのほか、希ガス成分として、クリプトン原子の原子径よりも小さい原子を有する第2の希ガスが含まれる。第2の希ガスを用いることにより、少なくとも1つのタングステンフィラメントからランプ管への熱輸送が改善されることがわかっている。これにより、ランプの調光モードや省電力モードにおいて、または、ランプが短時間しか駆動されない場合においても、ランプ管の充分な加熱が保証される。こうしていずれの駆動モードまたは駆動状態においてもハロゲン循環プロセスが維持され、ランプ管の黒化が回避される。
【0008】
本発明のハロゲン白熱灯は、特に、カーブ走行の際に道路脇を短時間だけ照明するために、または、駐車支援のために点灯される自動車のヘッドランプのカーブ灯の光源に適している。また本発明のハロゲン白熱灯は、昼間走行灯および位置表示灯のコンビネーションの光源にも適する。この場合、ハロゲン白熱灯は、昼間には自動車の12V電源電圧によって昼間走行灯として駆動され、夜間にはその1/2の約6V電源電圧によって駆動される。
【0009】
有利には、キセノンでなく、クリプトン、および他の希ガスとしてネオンまたはアルゴンが用いられる。上述したように、ネオンもアルゴンも熱輸送を向上させる特性を有する。本発明の第1の実施形態によれば、クリプトンのほか、第2の希ガスとしてアルゴンが用いられ、当該のアルゴンの分圧はランプ管内の冷間充填圧の80%以下である。本発明の第2の実施形態によれば、クリプトンのほか、第2の希ガスとしてネオンが用いられ、当該のネオンの分圧はランプ管内の冷間充填圧の40%以下である。本発明の第3の実施形態によれば、クリプトンのほか、第2の希ガスとしてネオンおよびアルゴンの双方が用いられる。
【0010】
希ガスであるクリプトンまたはキセノンの分圧は有利には冷間充填圧の20%以上である。このようにするとタングステンフィラメントからのタングステンの気化速度を低く保つことができる。
【0011】
充填物のハロゲン原子の成分は有利には100ppm〜600ppmの範囲にあり、ハロゲン循環プロセスが実現される。ハロゲン成分の濃度または含量を過度に高くすると、ランプ管での薄層の形成や金属の材料剥離を引き起こすことがある。
【0012】
例えばランプの製造中にランプ管内に混入した汚れを除去するために、有利にはランプ間内にゲッタとしてリンまたはリン化合物が配置される。
【0013】
ランプ管には少なくとも1つのタングステンフィラメントによって形成された電磁放射の一部を吸収するかまたはランプ管内へ反射するコーティングを設けることができる。これにより駆動中にランプ管をさらに加熱することができる。当該のコーティングは例えばランプ管の最上層に配置される透光性の干渉フィルタである。干渉フィルタはタングステンフィラメントから発光された赤外放射をランプ管内へ反射し、ランプの付加的な加熱を保証する。干渉フィルタに代えて、赤外放射を吸収してランプ管をいっそう加熱する透光性の熱滞留コーティングを設けることもできる。このために例えばランプ管が適切な色を有してもよい。
【0014】
III.有利な実施例の説明
以下に本発明を有利な実施例に則して詳細に説明する。
【0015】
図1には本発明のハロゲン白熱灯の構造が概略的に示されている。当該のハロゲン白熱灯は自動車の定格電圧12Vで駆動されるいわゆるH8ランプである。H8ランプは駆動電圧13.2Vで最大電力消費量43Wを有する。
【0016】
本発明のハロゲン白熱灯はガラス製のほぼ円筒形のランプ管1を有しており、このランプ管の端部にランプソケット2が設けられている。ランプ管1の内部には軸線方向に配向されたタングステンフィラメント3が配置されており、このタングステンフィラメント3の巻線端はチューブ状モリブデンによって被覆されてそれぞれ電流リード4,5に溶接されている。2つの電流リード4,5はそれぞれランプソケット2の電気端子6,7に導電接続されている。ランプ管1は石英ガラスまたは硬質ガラス、例えばアルモシリケートガラスから成る。
【0017】
ランプ管1にはハロゲン成分および希ガス成分を有する充填物が封入されている。またランプ管1の内部にはリンのゲッタが配置されている。
【0018】
本発明の第1の実施例では、希ガス成分はクリプトンおよびアルゴンから成る。冷間充填圧すなわち室温約22℃のもとでの全充填圧は1.2MPaである。アルゴンの分圧は0.9MPaである。充填物におけるハロゲン原子、有利には臭素、ヨウ素および塩素の成分は450ppmである。充填物の残りはクリプトンである。
【0019】
本発明の第2の実施例では、希ガス成分はクリプトンおよびネオンから成る。冷間充填圧すなわち室温約22℃のもとでの全充填圧は1.2MPaである。ネオンの分圧は0.3MPaである。充填物におけるハロゲン原子、有利には臭素、ヨウ素および塩素の成分は450ppmである。充填物の残りはクリプトンである。
【0020】
本発明の第3の実施例では、希ガス成分はクリプトン、ネオンおよびアルゴンから成る。冷間充填圧すなわち室温約22℃のもとでの全充填圧は1.2MPaである。クリプトンおよびネオンの分圧は0.3MPaである。充填物におけるハロゲン原子の成分、有利には臭素、ヨウ素および塩素の成分は450ppmである。充填物の残りはアルゴンである。
【0021】
本発明は上述した実施例に限定されない。例えば、冷間充填圧は上述したよりも格段に高い値を有してよく、また希ガスとして、クリプトンに代えてキセノンを用いるか、またはキセノンおよびクリプトンの混合物を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハロゲン白熱灯の構造を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のランプ管(1)、該ランプ管内に配置された少なくとも1つのタングステンフィラメント(3)、および、該ランプ管に封入された充填物を有しており、
該充填物はハロゲン循環プロセスのためのハロゲン成分とクリプトンまたはキセノンを含む希ガス成分とを含む
ハロゲン白熱灯において、
希ガス成分はクリプトン原子よりも小さい原子径を有する少なくとも1つの第2の希ガスを含み、
ランプ管内の冷間充填圧は0.7MPa以上である
ことを特徴とするハロゲン白熱灯。
【請求項2】
第2の希ガスはアルゴンである、請求項1記載のハロゲン白熱灯。
【請求項3】
アルゴンの分圧は冷間充填圧の80%以下である、請求項2記載のハロゲン白熱灯。
【請求項4】
さらに第2の希ガスとしてランプ管内にネオンが含まれる、請求項1または2記載のハロゲン白熱灯。
【請求項5】
ネオンの分圧は冷間充填圧の40%以下である、請求項4記載のハロゲン白熱灯。
【請求項6】
クリプトンまたはキセノンの分圧は冷間充填圧の20%以上である、請求項1記載のハロゲン白熱灯。
【請求項7】
充填物におけるハロゲン原子の成分は100ppm〜600ppmの範囲にある、請求項1記載のハロゲン白熱灯。
【請求項8】
ゲッタとしてランプ管内にリンまたはリン化合物が配置されている、請求項1記載のハロゲン白熱灯。
【請求項9】
少なくとも1つのタングステンフィラメントによって形成された電磁放射の一部を吸収するかまたはランプ管内へ反射するコーティングが該ランプ管に設けられている、請求項1記載のハロゲン白熱灯。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のハロゲン白熱灯を自動車用照明器具に使用することを特徴とするハロゲン白熱灯の使用。
【請求項11】
ハロゲン白熱灯をカーブ灯として使用する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
ハロゲン白熱灯を昼間走行灯および/または位置表示灯として使用する、請求項10記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−533671(P2008−533671A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501144(P2008−501144)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000223
【国際公開番号】WO2006/097058
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany