説明

ハンディ式吐出容器及び滑り止め部材

【課題】押下げヘッドを押し下げるときに容器体を把持する指が滑らないように工夫したハンディ式吐出容器を提案する。
【解決手段】有底で筒形の外周面4を有しかつ上端側にノズル付きの押下げヘッド16を設けたポンプ容器2と、このポンプ容器の外周面4の上部に嵌合させた把持筒22を有し、この把持筒の下部からポンプ容器の外周面4下部に沿って複数の脚片34を垂下するとともに、各脚片の下端に付設したフック36を上記ポンプ容器2の底面6に係止させるように構成した滑り止め部材20と、を具備し、上記把持筒22の外面を滑り止め面26に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンディ式吐出容器及び滑り止め部材に関する。
【背景技術】
【0002】
直筒状の容器体の口頸部から上方へ押下げヘッドを突出しかつポンプ機構を備えたハンディ式吐出容器が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−083859
【特許文献1】特開2000−262584
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の容器の場合には、片手で容器体を把持するとともに、その手の一本指で押下げヘッドを押し下げるときに、容器体を持つ手が滑ってしまうおそれがある。
【0005】
その容器体の外面に滑り止めのリブなどを設けることは可能であるが、既存のポンプ容器にも適用可能な滑り止め部材を提案することが望まれている。
【0006】
こうした滑り止め部材を備えたハンディ式吐出容器は見当たらない。
【0007】
例えばハンディ式ではなく、水平面に置いた状態で使用する押下げヘッド付きのポンプ容器において、容器体の外面に昇降自在に遊嵌したカバー筒を、上記押下げヘッドに連係して設けるとともに、カバー筒の外面に滑り止め用リブを周設し、カバー筒を押し下げることで押下げヘッドを下降させるように構成したものは公知である(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、ハンディ式のポンプ容器の場合には、容器体に外装した滑り止め部材を把持して押下げヘッドを下方へ押圧したときに、滑り止め部材に対して容器体が下降しないようにする必要があり、こうした工夫は特許文献2には開示されていない。
【0009】
本発明の第1の目的は、押下げヘッドを押し下げるときに容器体を把持する指が滑らないように工夫したハンディ式吐出容器を提案することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、既存のポンプ容器に対して装着することで簡易に滑り止めを可能とする、ハンディ式吐出容器用の滑り止め部材を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の手段は、ハンディ式吐出容器であり、
有底で筒形の外周面4を有しかつ上端側にノズル付きの押下げヘッド16を設けたポンプ容器2と、
このポンプ容器の外周面4の上部に嵌合させた把持筒22を有し、この把持筒の下部からポンプ容器の外周面4下部に沿って複数の脚片34を垂下するとともに、各脚片の下端に付設したフック36を上記ポンプ容器2の底面6に係止させるように構成した滑り止め部材20と、
を具備し、上記把持筒22の外面を滑り止め面26に形成している。
【0012】
本手段では、図1に示すように容器への装着用の滑り止め部材20を、ポンプ容器の外周面4上部に嵌合させた把持筒22と、把持筒から垂下した脚片34とで形成し、把持筒22の外面を滑り止め面26としている。脚片下端のフック36をポンプ容器の底面に係止させたから、容器体の脱落を防止するとともに滑り止めを確実とすることができる。容器の外周面全体を把持筒で覆うようにしなかったのは、第1に、滑り止め部材の材料の量を少なくするため、第2に、脚片の間から容器体の外面を見れるようにするためである。
【0013】
「滑り止め面」とは、ポンプ容器の外周面に比べて滑り難いように滑り止め処理を施した面をいい。例えば滑り止め用の下向き段部や係止リブを横設してもよく、さらに把持筒をゴムのように摩擦抵抗の大きい素材で形成してもよい。「把持筒」は、図1のように容器体の胴部上部の外面4aに嵌合させてもよく、図4のようにポンプ容器が有するキャップ状部材の周壁外面4bに嵌合させてもよい。
【0014】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記把持筒22の滑り止め面26を、下端側から上端側へ大径化するテーパ面に形成している。
【0015】
本手段では、図1の如く滑り止め面26を上端側大径のテーパ面として把持力を向上させている。
【0016】
第3の手段は、第1の手段又は第2の手段を有し、かつ
上記滑り止め部材20の成形状態で、上記各脚片34を把持筒22の下端から下方やや内側へ延びる弾性板に形成し、これら脚片34がポンプ容器の外周面4下部に圧接されるように形成している。
【0017】
本手段では、図1に想像線で示すように脚片34を把持筒から下方内側へ垂下するように予め形成している。これにより容器体に嵌合させた状態で各脚片が内側へ曲がろうとする効果(ベンド効果という)を奏し、容器体を抱持することができる。
【0018】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ
上記ポンプ容器2の底面6を、外周部6aを除いて内方へ弯曲させ、上記フック36の先端部を上内方へ弯曲させて上記外周部6aの内側へ挿入するように形成している。
【0019】
本手段では、図1に示すように各脚片34の下端からフック36を容器体の底面の外周部の内側へ折り返すことで、フックの係止力を向上させている。
【0020】
第5の手段は、第3の手段又は第4の手段を有し、かつ
上記滑り止め部材20は、各フック36から内方突出した弾性伸縮板42の内端同士を接合させた連結基部40を設けてなる。
【0021】
本手段では、図6に示すように各脚片のフックを連結する連結基部40を設けており、これにより容器体の脱落を確実に防止する。
【0022】
第6の手段は、
有底で筒形の外周面を有しかつ上端側にノズル付きの押下げヘッドを設けたポンプ容器に用いられる滑り止め部材であって、
上記ポンプ容器の外周面の上部に嵌合可能な把持筒22を有し、この把持筒の下部から複数の脚片34を垂下するとともに、各脚片の下端に、ポンプ容器の底面への係止用のフック36を付設し、かつ上記把持筒22の外面を滑り止め面26に形成している。
【0023】
本手段は、前述のハンディ式吐出容器に用いられる滑り止め部材である。先の手段において滑り止め部材に関して記載した事項は本手段に援用する。
【発明の効果】
【0024】
第1の手段に係る発明によれば、把持筒22付きの滑り止め部材20をポンプ容器の外周面4上部に嵌合させたから、押下げヘッドを押し下げるときに手が滑ることを防止できる。
第2の手段に係る発明によれば、把持筒22の滑り止め面を、上端側へ大径化するテーパ面に形成したから、さらに滑り止め効果を高めることができる。
第3の手段に係る発明によれば、滑り止め部材の脚片34を把持筒から下内方へ延びる弾性板としたから、容器体を確実に保持できる。
第4の手段に係る発明によれば、ポンプ容器の底面側の外周部に脚片34のフック先端側が上内方へ挿入するから、ポンプ容器の底面に脚片34を確実にロックできる。
第5の手段に係る発明によれば、各フック36から内方突出した弾性伸縮板42の内端同士を接合させた連結基部40としたから、容器体の脱落を確実に防止できる。
第6の手段に係る発明によれば、把持筒22の把持筒の下部から垂下した複数の脚片34の下端にフック36を付設したから、既存の容器の滑り止めが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態のハンディ式吐出容器の一部切欠き正面図である。
【図2】図1の容器の平面図である。
【図3】図1の容器の滑り止め部材の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態のハンディ式吐出容器の一部切欠き正面図である。
【図5】図4の容器の平面図である。
【図6】図4の容器の滑り止め部材の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1から図3は、本発明の第1の実施形態に係るハンディ式吐出容器を示す。このポンプ容器は、ポンプ容器2と滑り止め部材20とで形成している。これら部材は特に断らない限り合成樹脂で形成することができる。
【0027】
ポンプ容器2は、有底で筒形の外周面4と底面6とを有し、かつ上端側に押下げヘッド16を設けている。ポンプ容器2の底面6は、外周部6aを除く中心部分を、上方への凹状弯曲部6bに形成している。ポンプ容器の好適な一例は、フォーマーポンプ容器である。
【0028】
図示例では、ポンプ容器2は、容器体8とキャップ状部材12とポンプ機構14と押下げヘッド16とで構成している。
【0029】
上記容器体8は、直筒状の胴部の上端から肩部を介して口頸部10を起立しており、この口頸部にキャップ状部材12を嵌合させている。容器体の胴部外面4aとキャップ状部材の周壁(嵌合筒)外面4bとでポンプ容器の外周面4を形成している。
【0030】
上記ポンプ機構14は、上記キャップ状部材12の頂壁外周部分に係止させて容器体内へ垂下したシリンダと、このシリンダ内を昇降する筒状ピストン(図示せず)とで形成する。上記筒状ピストンからはステムを起立するとともに、このステムの先端にノズル付きの押下げヘッド16を付設している。
【0031】
上記滑り止め部材20は、把持筒22と複数の脚片34とで形成している。滑り止め部材は一体品として成形されている。
【0032】
上記滑り止め部材20の好適な素材は、PP、HDPE、ASなどである。成形性がよくかつ値段の安いからである。本実施形態では、硬くてベンド効果に優れた材料で形成した場合について説明する。ゴムなどで形成する場合に関しては後述する。
【0033】
上記把持筒22は、容器体8の胴部外面4aの上部及びキャップ状部材の周壁外面4bを囲っており、かつ上記容器体胴部へ嵌合されている。把持筒の内面には、図2に示すように周方向に容器体8への圧接リブ24を縦設しているが、これは省略してもよい。
【0034】
上記把持筒22の外面は、上端側大径のテーパ状である滑り止め面26に形成している。好適な図示例では、筒壁の下端から上端に亘って複数の下向き段部28を周設することで、徐々に大径化するようにしている。すなわち、上端外径のテーパ面の作用と段部の作用との相乗効果により、押下げ力に対して十分な把持力を発揮できるようにしている。しかしながら、その構成は適宜変更することができる。
【0035】
上記複数の脚片34は、把持筒22の下端部から容器体8の胴部を取り囲むように垂下されている。各脚片は、容器体の胴部に向かい合う弾性板であり、図示例にあっては円筒形の容器体8胴部に対応して断面円弧状に形成している。脚片の好適な本数は3本以上であり、また周方向に等角的に設けることが望ましい。
【0036】
上記脚片34の下端には、内方へ突出するフック36が付設されており、このフックでポンプ容器の底面6の外周部6aを係止させている。フック36の先端部は上内方に屈折させ、ポンプ容器の底面の凹状弯曲部6b内に挿入されている。
【0037】
各脚片34は、滑り止め部材の成形状態で、図1に想像線で示すように把持筒22の下端から下方やや内側に垂下して、それら脚片下端部内面の包絡円の半径rが把持筒内面のRよりも小さくなるように設ける。これにより前述のベンド効果が発揮され、各脚片を容器体8の胴部の外面に圧接させることができる。これにより容器体8を複数の脚片34で抱持させることができ、そのガタ付きを防止できる。
【0038】
また図示例の各脚片34の下端面は、平坦面への設置面として面一に形成している。
【0039】
ここで滑り止め部材20を前述の硬質合成樹脂の代わりに、手で持ったときの感触が柔らかいゴムやエラストマーなどで形成することもできる。手との摩擦力が大きいので、前述のような下向き段部を形成しなくても十分な把持力が確保できる。またゴムで形成するときには、上記フック36を肉厚に形成して容器体の係止力を向上させることが望ましい。
【0040】
上記構成によれば、滑り止め部材の脚片のフック36がポンプ容器の底面6に係止しているので、押下げヘッドの押下げによりポンプ容器2が滑り止め部材から脱落することがない。そして把持筒22の外面は滑り止め面26に形成しているので、容器を持つ手にフィットし、滑ることを防止できる。
【0041】
また既存のポンプ容器(フォーマーポンプ容器など)の外面に上記滑り止め部材20を嵌合することで容易に滑り止めを実現することができ、そのフォーマーポンプ容器を改造する必要がないので、実用性が高い。
【0042】
さらに滑り止め部材20全体を一個の筒体に形成するのではなく、把持筒22の下端から脚片34を垂下させたから、隣り合う2本の脚片34の隙間から容器体8の表面を見ることができ、容器体の中身を間違えることを防止できる。また滑り止め部材20の材料を少なくすることができる。
【0043】
以下本発明の他の実施形態を説明する。その説明において第1実施形態と同じ構造については同一の符号を付することで説明を省略する。
【0044】
図4から図6は、本発明の第2実施形態に係るハンディ式吐出容器を示している。
【0045】
本実施形態では、滑り止め部材20に、各フックの内端から弾性伸縮板42を内方突出するとともにこれら弾性伸縮板の端部相互を結合させて連結基部40に形成している。この連結基部40を設けることで容器体が下方へ脱落することを防止することができる。
【0046】
上記弾性伸縮板42は、成形状態で複数の折り目線44を付設したジグザグ板に形成しており、滑り止め部材20を容器体8に装着したときに、弾性伸縮板が延びるように形成している。もっとも弾性伸縮板の構造は適宜変更することができる。
【0047】
また本実施形態では圧接リブ24をキャップ状部材の外面4bに圧接させている。さらに脚片34間の把持筒下面から上方へ半円状の切込み30を穿設して、容器体表面の露出部分を大きくしている。
【符号の説明】
【0048】
2…ポンプ容器 4…外周面 4a…容器体胴部外面 4b…キャップ状部材周壁外面
6…底面 6a…外周部 6b…凹状弯曲部
8…容器体 10…口頸部 12…キャップ状部材 14…ポンプ機構 16…押下げヘッド
20…滑り止め部材 22…把持筒 24…圧接リブ 26…滑り止め面
28…下向き段部 30…切込み
34…脚片 36…フック 40…連結基部 42…弾性伸縮板
44…折り目線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底で筒形の外周面(4)を有しかつ上端側にノズル付きの押下げヘッド(16)を設けたポンプ容器(2)と、
このポンプ容器の外周面(4)の上部に嵌合させた把持筒(22)を有し、この把持筒の下部からポンプ容器の外周面(4)下部に沿って複数の脚片(34)を垂下するとともに、各脚片の下端に付設したフック(36)を上記ポンプ容器(2)の底面(6)に係止させるように構成した滑り止め部材(20)と、
を具備し、上記把持筒(22)の外面を滑り止め面(26)に形成したことを特徴とする、ハンディ式吐出容器。
【請求項2】
上記把持筒(22)の滑り止め面(26)を、下端側から上端側へ大径化するテーパ面に形成したことを特徴とする、請求項1記載のハンディ式吐出容器。
【請求項3】
上記滑り止め部材(20)の成形状態で、上記各脚片(34)を把持筒(22)の下端から下方やや内側へ延びる弾性板に形成し、これら脚片(34)がポンプ容器の外周面(4)下部に圧接されるように形成したことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のハンディ式吐出容器。
【請求項4】
上記ポンプ容器(2)の底面(6)を、外周部(6a)を除いて内方へ弯曲させ、上記フック(36)の先端部を上内方へ弯曲させて上記外周部(6a)の内側へ挿入するように形成したことを特徴とする、請求項3記載のハンディ式吐出容器。
【請求項5】
上記滑り止め部材(20)は、各フック(36)から内方突出した弾性伸縮板(42)の内端同士を接合させた連結基部(40)を設けてなることを特徴とする、請求項3又は請求項4記載のハンディ式ポンプ。
【請求項6】
有底で筒形の外周面を有しかつ上端側にノズル付きの押下げヘッドを設けたポンプ容器に用いられる滑り止め部材であって、
上記ポンプ容器の外周面の上部に嵌合可能な把持筒(22)を有し、この把持筒の下部から複数の脚片(34)を垂下するとともに、各脚片の下端に、ポンプ容器の底面への係止用のフック(36)を付設し、かつ上記把持筒(22)の外面を滑り止め面(26)に形成したことを特徴とする滑り止め部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−136286(P2012−136286A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291654(P2010−291654)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】