説明

ハンマーの柄

【課題】 グリップのインサート成形を実用化し、衝撃力を分散させて手への衝撃を緩和し、グリップの回り止め及び抜け止めを確実にする。
【解決手段】 弾性合成樹脂製のグリップ3が、硬質合成樹脂製柄本体2の握部6に、インサート成形により外嵌されるハンマーの柄1であって、前記握部6に後端部に位置して柄1の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔13を設け、該孔13をグリップ構成材料で埋める。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、合成樹脂製のハンマーの柄に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハンマーの柄には、木製、鋼管製、合成樹脂製のものが一般に使用されており、鋼管及び合成樹脂製の柄本体には、合成樹脂製のグリップが外嵌され、該グリップが接着剤により接着されたものもある。また、合成樹脂製柄本体にグリップを被覆成形(インサート成形)したものがある。そして、木製の柄本体にゴム製等のバンドを取付け、或いはバンドを接着剤により固着して、滑りや回動を防止するようにしたものもある。
【0003】
さらに、力のバランスを良くし、衝撃力の分散さらには回り止めを目的として、柄の握部断面形状を楕円又は長円形或いはこれらに近い形状としたものがある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、従来の木製ハンマー柄は、手が滑り易く、板本体にグリップを外嵌したものは、乾燥すると木がやせて細くなるため、グリップが回ったり抜けたりする。そこで、グリップやバンドを握部に接着剤により固着しているが、木が収縮するので十分な接着ができない。
【0005】
また、鋼管製柄本体の場合、軽量ではあるが、ハンマー頭部近傍が弱く、変形の恐れがあり、柄本体にグリップを外嵌したものはグリップが回り易い。そこで、グリップを接着剤により固着しているが、十分な接着力が得られないうえ、衝撃が大きいという難点がある。
さらに、合成樹脂(強化プラスチック)製の柄本体に、グリップをインサート成形で外嵌させた場合、温度が高いと柄本体にひびが入り、結合力が悪く所期の精度が得られないという問題があるため、この方法は採用されていない。
【0006】
本考案は、上述のような実状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、グリップのインサート成形を実用化し、衝撃力を分散(吸収)させて手への衝撃を緩和できると共に、グリップが滑って抜けたり回ったりすることがない頑丈なハンマーの柄を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
即ち、本考案は、弾性合成樹脂製のグリップが、硬質合成樹脂製柄本体の握部にインサート成形により外嵌されるハンマーの柄であって、前記握部に後端部に位置して柄の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔を設けたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0008】
この場合、グリップ滑り止め用の孔に、クッションの良い弾性合成樹脂(例えば塩化ビニール、合成ゴム等)からなるグリップ構成材料の一部が嵌まり込むので、グリップが柄本体に対して滑らず、したがって、グリップが回ったり抜けたりすることはない。しかも、前記孔は、握部の後端部に設けてあるので、柄本体の強度を損なうことはない。
【0009】
また、前記握部の前端及び後端に、グリップ抜け止め用膨出部が設けられているので、グリップが柄本体の長手方向に移動するのを阻止し、抜け止め効果を発揮する(請求項2)。
そして、前記握部の断面形状が上下方向に長い矩形とされ、短辺側に長手方向に延びる突条が形成され、該突条に1又は複数の切欠き部が設けられているので、グリップ構成材料の一部が、突条の両側の窪みや前記切欠き部に嵌り込み、グリップの回動及び長手方向の移動が完全に阻止され、抜けなくなる(請求項3)
。なお、グリップを柄本体にインサート成形(二重成形)するので、突条の両側及び切欠き部のグリップ肉厚が厚くなり、クッション性が向上し、衝撃力が緩和される。
【0010】
さらに、前記握部の両短辺側突条に設ける切欠き部の位置を、長手方向にずらすことにより、グリップの抜け止めに加えて回り止め効果が高まる(請求項4)

また、前記握部の長辺側には夫々柄の長手方向と平行な回り止め用溝が設けられ、該溝の両端壁が曲面とされ、さらに前記溝の中間に拡幅部分が設けられたものとすることができ、グリップをインサート成形(二重成形)した場合に、溝の部分の肉厚が厚くなり、クッション性が向上し、手への衝撃力が緩和されるほか、溝の両端壁が曲面となっているので、応力集中を防止してクラック発生を無くし耐久性を向上させることができ、溝の中間に設けた拡幅部によりグリップの抜止め効果を高めることができる(請求項5)。
【0011】
さらに、本考案は、弾性合成樹脂製のグリップが、硬質合成樹脂製柄本体の握部にインサート成形により外嵌されるハンマーの柄であって、前記握部に、後端部に位置して柄の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔が設けられると共に前端及び後端にグリップ抜け止め用膨出部が設けられ、さらに握部の断面形状が矩形の各角部を切り欠いた形状とされ、その両短辺側には夫々1又は2個の切欠き部が両短辺側位置が長手方向にずれるように設けられ、両長辺側には夫々板の長手方向と平行な回り止め用溝が設けられ、該溝の両端壁が曲面とされると共に、溝の中間に拡幅部が設けられていることを特徴とするものであるから、グリップが滑って回ったり抜けたりせず、手への衝撃が小さく、使い勝手が良い。
【0012】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を図面に基づき説明する。
図面は本考案の一実施形態を示し、ハンマー柄1は、硬質合成樹脂例えば硬質ポリプロピレン製の柄本体2と、これにインサート成形により外被される弾性合成樹脂例えば塩化ビニール(又は合成ゴム)製のグリップ3とからなり、柄本体2の先端には図5、図6に示すようにハンマーヘッド4が嵌合され、クサビ5が打ち込まれている。
【0013】
前記柄本体2は、図1、図2に示しているように、その長手方向の半分基部側が握部6とされ、先端部2Aにクサビ5打込み用の割込み7が設けられている。
そして、柄本体2は、握部6を除く部分の断面形状が楕円形(又は長円形)とされ、握部6の前端と後端にグリップ抜け止め用の膨出部8,9が設けられており、後端の膨出部9が鍔状とされてその長径側に貫通する吊環等を通す孔10が設けられている。
【0014】
また、柄本体2の握部6は、その断面形状が上下方向に長い角を丸めた矩形とされ、短辺側面6A即ち上下面に長手方向に延びる偏平矩形断面のグリップ回り止め用の突条11が夫々設けられ、上側の突条11には中間部分に間隔をおいてグリップ抜け止め用の切欠き部12が2カ所に設けられ、下側の突条11には前記切欠き部12の長手方向中間部分に位置してグリップ抜け止め用の切欠き部12が設けられている。
【0015】
この上下の切欠き部12の長手方向の位置をずらすことにより、グリップ3の回り止め機能をも付与することができる。
また、握部6の後端部には、長辺側面6Bに左右方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔13が設けられている。さらに、握部6の長辺側面6Bには、夫々柄本体2の長手方向と平行な回り止め用の溝14が夫々設けられており、各溝14の中間部分に長手方向に位置をずらして拡幅部15を設けて、グリップ3の長手方向への滑りを防止して、グリップ抜け止め機能が高まるようにしてある。
【0016】
そして、前記各溝14の長手方向両端壁16は曲面具体的には円弧面としてあり、応力集中を避けてクラック発生による破損防止を図っている。
前記グリップ3は、完成された柄本体2の握部6にインサート成形により成形と同時に被着される。なお、柄本体2のグリップ3がインサートされる部分特に握部6の外表面は、放電ザラ目加工して、グリップ3の滑りを防止している。このように、グリップ3をインサート成形することにより、柄本体2の握部6に形成した突条11の両外側、切欠き部12、孔13及び溝14,15内に、グリップ材料である弾性合成樹脂が充満し密着する。
【0017】
したがって、グリップ3内面と握部6外面に形成される凹凸がからみ合い、グリップ3は長手方向は勿論のこと周方向にも滑ることがなく、柄本体2に対して回ったり、抜け出したりせず、グリップ3が柄本体2と一体化される。
また、握部6の突条11の両側、切欠き部12、孔13、溝14,15の部分が厚肉となり、クッション性が良くなるうえ、この厚肉部分がハンマー打撃時の衝撃力を吸収し、手への衝撃を緩和するため、ハンマー打撃作業が楽になる。
【0018】
さらに、柄本体2が硬質合成樹脂製であるから、グリップ3のインサート成形時に、熱影響で柄本体にクラックが発生することもなく、頑丈なハンマーの柄1を得ることができる。このため、従来行なわれていないグリップのインサート成形が可能となった。
本考案は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、柄本体の握部の断面形状を楕円又は長円形とすることができ、さらに、滑り止め、回り止め、抜け止め手段は夫々1つずつとするか或いは取捨選択することができる。
【0019】
【考案の効果】
本考案に係るハンマーの柄は、上述のように、弾性合成樹脂製のグリップが、硬質合成樹脂製柄本体の握部にインサート成形により外嵌されるハンマーの柄であって、前記握部に後端部に位置して柄の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔を設けたことを特徴とするものであるから、グリップのインサート成形による外被を実用化でき、グリップが滑って抜けたり回ったりせず、頑丈なハンマーの柄を得ることができる(請求項1)。
【0020】
また、請求項2に記載の考案によれば、握部の前端及び後端に、グリップ抜け止め用膨出部が設けられているので、該膨出部によってグリップの柄長手方向移動が阻止され、グリップが抜け出すのを防止することができる。
請求項3に記載の考案によれば、握部に長手方向に延びる突条が形成され、該突条に1又は複数の切欠き部が設けられているので、グリップの回動及び長手方向移動を防止することができる。しかもクッション性が良くなり衝撃緩和を図ることができる。
【0021】
請求項4に記載の考案によれば、握部の前記突条の切欠き部の位置を長手方向にずらしているので、グリップの回り止め機能をさらに高めることができる。
請求項5に記載の考案によれば、前記握部の長辺側には夫々柄の長手方向と平行な回り止め用溝が設けられ、該溝の中間部に拡幅部が設けられているので、グリップの回り止め及び抜け止め効果が増大し、しかも溝両端壁が曲面となっているので、クラックの発生を防止して頑丈な柄を得ることができる。
【0022】
さらに、請求項6に記載の考案によれば、グリップの回り止め、抜け出しを完全に防止できるほか握部の上下左右各面に厚肉部を形成してクッション性を良くしてあるので、柄の材質と握部の構造の相乗効果により衝撃力を吸収して手への衝撃を緩和し、ハンマー打撃作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】本考案に係る柄を装着したハンマーの基端側から見た図(図6の右側面図)である。
【図6】同ハンマーの正面図である。
【符号の説明】
1 ハンマーの柄
2 柄本体
3 グリップ
6 握部
8 膨出部
9 膨出部
11 突条
12 切欠き部
13 孔
14 溝
15 拡幅部
16 溝両端壁

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 弾性合成樹脂製のグリップが、硬質合成樹脂製柄本体の握部にインサート成形により外嵌されるハンマーの柄であって、前記握部に後端部に位置して柄の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔を設けたことを特徴とするハンマーの柄。
【請求項2】 前記握部の前端及び後端に、グリップ抜け止め用膨出部が設けられている請求項1に記載のハンマーの柄。
【請求項3】 前記握部の断面形状が上下方向に長い矩形とされ、短辺側に長手方向に延びる突条が形成され、該突条に1又は複数の切欠き部が設けられている請求項1又は2に記載のハンマーの柄。
【請求項4】 前記握部の両短辺側突条の切欠き部の位置が、長手方向にずれている請求項3に記載のハンマーの柄。
【請求項5】 前記握部の長辺側には夫々柄の長手方向と平行な回り止め用溝が設けられ、該溝の両端壁が曲面とされ、さらに前記溝の中間に拡幅部分が設けられている請求項3又は4に記載のハンマーの柄。
【請求項6】 弾性合成樹脂製のグリップが、硬質合成樹脂製柄本体の握部にインサート成形により外嵌されるハンマーの柄であって、前記握部に、後端部に位置して柄の長手方向と直交する方向に貫通するグリップ滑り止め用の孔が設けられると共に前端及び後端にグリップ抜け止め用膨出部が設けられ、さらに握部の断面形状が矩形の各角部を切り欠いた形状とされ、その両短辺側には夫々1又は2個の切欠き部が両短辺側位置が長手方向にずれるように設けられ、両長辺側には夫々板の長手方向と平行な回り止め用溝が設けられ、該溝の両端壁が曲面とされると共に、溝の中間に拡幅部が設けられていることを特徴とするハンマーの柄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【登録番号】第3038359号
【登録日】平成9年(1997)3月26日
【発行日】平成9年(1997)6月20日
【考案の名称】ハンマーの柄
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−12356
【出願日】平成8年(1996)12月3日
【出願人】(390037534)オーエッチ工業株式会社 (11)