説明

ハードグミキャンディ及びその製造方法

【課題】従来のグミキャンディと比較してより高いチューイング性を持ちつつ歯付きを低減したハードグミキャンディ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】DE値が20〜35の水飴を固形分として30〜50重量%、かつDE値が70を超える水飴を固形分として20〜40重量%、かつ砂糖20〜50重量%配合した3種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値220以上のゼラチン及び20℃での1重量%水溶液の粘度が150mPa・s以上であるアルギン酸エステルを含む、水分値が13〜17重量%であることを特徴とするハードグミキャンディ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードグミキャンディ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで人々に好まれるグミキャンディはソフトでサクい食感のものであったが、近年硬くても弾力がある食感のものが徐々に好まれるようになってきた。チューイング性を兼ね備えたハードグミキャンディはHARIBO社製のグミキャンディ(「Happy Cola」や「Gold Bear」、いずれも商品名)に代表されるように長年親しまれてきてはいるが、現在ではよりチューイング性を強調したハードグミキャンディが特に好まれるようになっている。しかしながら、高チューイング性を実現すると、歯付きが生じやすいという技術的な傾向があり、今日までに高チューイング性を有し、かつ歯付きを低減したハードグミキャンディ及びその製造方法を追求した発明及び研究報文はほとんど見受けられない。
【0003】
その中でもこれまでにいくつかの食感を特徴としたグミキャンディを製造する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、ゼラチンミックスを使用することにより柔らかくて歯切れの良いグミキャンディの提案がされている。二種の異なったブルーム値のゼラチンを組み合わせてグミキャンディの食感等を改良する手法に着目したものであり、上記のような食感を持つグミキャンディには効果があることが提示されている。また、特許文献2ではゼラチンミックスをゼリー化させて得られるゼラチンチューイングゼリーについて開示されており、ゼラチンミックスとしてDE(Dextrose Equivalent)値70以下のデンプン糖及び/又はデンプンを主体としたキャンディベースにゼラチンを含有することを特徴としている。すなわちDE値が0〜70の範囲のデンプン糖あるいはデンプンに制限しており、デンプン糖等の分子量分布に関する事項を制限するものではなかった。
【0004】
一方、本件出願人もハードグミキャンディに関する発明を行い、既に提案している。例えば、特許文献3では、DE値が20〜35の水飴を固形分として30〜50%、かつDE値が70を超える水飴を固形分として20〜40%、かつ砂糖20〜50%配合した3種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値250以上のアルカリ処理ゼラチンを含み、水分値が13〜17%であることを特徴とするハードグミキャンディを提案しており、アルカリ処理ゼラチンを使用することでガム食感を実現している。
【0005】
同様に、本件出願人が提案している特許文献4では、DE値が20〜35の水飴を固形分として20〜30%、かつDE値が70を超える水飴を固形分として20〜40%、かつ砂糖20〜50%配合した3種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値250以上の酸処理ゼラチンを含み、水分値が13〜17%であることを特徴とするハードグミキャンディを提案しており、酸処理ゼラチンを使用することで硬さを強調したチューインググミを実現している。
【0006】
前記のように特許文献3及び4に記載の二つのハードグミキャンディは、高いチューイング性(優れた粘着性)を保ちつつ、従来のグミキャンディ製品よりも硬い(高いゲル強度)ハードグミキャンディを実現したものである。しかしながら、前記ハードグミキャンディは、高いチューイング性を備えた点では非常に優れているが、歯付きをも低減するという技術的な課題を解決するにはさらなる検討の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3167284号公報
【特許文献2】特公平5−68216号公報
【特許文献3】特開2009−213368号公報
【特許文献4】特開2010−46025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、従来のグミキャンディと比較してより高いチューイング性を持ちつつ歯付きを低減したハードグミキャンディ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記目的を達成するため、既に高いチューイング性を実現している特許文献3、4に記載のハードグミキャンディを基に、その歯付きを低減するため、複数の候補のうちから、ゲル化剤に着目した。そして、種々のゲル化剤について検討を行ったところ、特定の物性を備えたアルギン酸エステルを用いた場合にのみ、特許文献3、4に記載のハードグミキャンディよりもチューイング性をさらに向上させるだけでなく歯付きも低減できるという現象を初めて見出すことで、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
(1)DE値が20〜35の水飴を固形分として30〜50重量%、かつDE値が70を超える水飴を固形分として20〜40重量%、かつ砂糖20〜50重量%配合した3種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値220以上のゼラチン及び20℃での1重量%水溶液の粘度が150mPa・s以上であるアルギン酸エステルを含む、水分値が13〜17重量%であることを特徴とするハードグミキャンディ、
(2)ハードグミキャンディ中に含有されるアルギン酸エステルの固形含有分が0.1〜0.2重量%である前記(1)に記載のハードグミキャンディ、
(3)ハードグミキャンディ中に含有されるゼラチンの固形含有分が7〜14重量%である前記(1)又は(2)に記載のハードグミキャンディ、
(4)粉末状の砂糖及び/又は粉末状の水飴とアルギン酸エステルとを粉体混合して作製したキャンディベースにゼラチンを加えてグミキャンディ液を得る工程、
グミキャンディ液のpHを3.2〜3.4に調整する工程、
乾燥後のハードグミキャンディの主要部分の厚みが平均7.5〜9.5mmになるようにモールド中に前記グミキャンディ液を充填する工程、
充填後にハードグミキャンディの水分値が13〜17%になるように40℃以下で乾燥する工程を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載のハードグミキャンディの製造方法
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハードグミキャンディは、チューイング性がさらに向上し、且つ歯への付着性も低減されたものであるため、ヒトが噛むことを心地よく感じるハードグミキャンディの食感を実現することが可能となった。
前記のハードグミキャンディは、本発明のハードグミキャンディの製造方法により、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、キャンディベースに3種類の糖質を用いることを特徴とする。すなわち、キャンディベースに含まれる砂糖は固形分の20〜50重量%であることに加え、DE値20〜35の水飴を固形分として20〜30重量%、かつDE値70を超える水飴を固形分として20〜40重量%配合している点に一つの大きな特徴があり、このように、砂糖と、DE値が大きく異なる2種類の水飴とを併用することで、ハードグミキャンディのチューイング性が優れたものとなり、しかもゲル強度が高いものとなる。
【0013】
前記砂糖としては、粉体状のものであり、食品として使用できるものであれば特に限定はない。前記2種類の水飴は粉体のものを使用しても良い。また、DE値が70を超える水飴に関しては、DE値が70以下の水飴にブドウ糖やマルトースを混合することによってDE値を調整しても良い。例えば、DE値が65の水飴にブドウ糖を混合することによって、DE値が70以上の水飴に相当する内容物であれば、代替品として使用することも可能である。また、ブドウ糖と果糖の混合液糖やマルトビオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース等のマルトオリゴ糖からなる単一組成の水飴、及び前述した液糖や水飴の還元物(水素添加物)についても食感が大きく異ならない限りDE値が70を超える水飴と同様あるいはその代替品として使用することも可能である。
なお、前記DE値とは、ブドウ糖を100とした場合の糖液の持つ還元力を固形分当りに換算したものであり、このDE値は公知の方法で測定することができる。
【0014】
キャンディベースに含まれる砂糖は固形分(重量分:以下同じ)の20〜50重量%、好ましくは30〜50重量%であり、DE値20〜35の水飴は固形分として30〜50重量%、好ましくは25〜30重量%、DE値70を超える水飴は固形分として20〜40重量%、好ましくは20〜35重量%である。
【0015】
本発明においてはキャンディベースとして前記3種類の糖質(砂糖・水飴)を配合する。キャンディベースは、前記3種類の糖質を混合することで調製することができる。混合の順番としては特に限定はない。また、混合時の温度としては、60〜120℃であればよい。
キャンディベースのハードグミキャンディ中における含有量は60〜80重量%であることが好ましく、75〜80重量%であることがより好ましい。
【0016】
本発明で使用するゼラチンはハードグミキャンディにおいて硬さを調整する大きな要因であるため、少なくともブルーム値が220以上であることが必要である。また、ブルーム値は、ハードグミキャンディの食感と味を考慮した場合、硬さを調整するために250以上であることが好ましい。
なお、前記ブルーム値とは、ゼリー強度を示すもので、ゼラチンの6.67重量%水溶液を規定のカップに入れ10±0.1℃の恒温槽で16〜18時間冷却ゼリー化して、ブルーム式ゼリー強度計のプランジャー(直径12.7mm)を4mmだけゼリー中に押し込むのに要する散弾の重さ(g)を測り、この重量をブルーム値として表したものである。
【0017】
前記ゼラチンとしては、コラーゲンをアルカリ処理後又は酸処理後に精製したアルカリ処理ゼラチン及び酸処理ゼラチンが挙げられ、例えば、牛骨、豚骨、鶏骨などの獣由来ゼラチンに加えて、水生生物(淡水・海水)由来のゼラチン等が挙げられる。コラーゲンをアルカリ処理、酸処理等の工程を含めて精製したゼラチンであれば由来生物に関しては特に制限されないが、使用されるゼラチンとしてはアルカリ処理ゼラチンであることがより好ましい。
【0018】
前記ゼラチンの前記ハードグミキャンディ中の固形含有分は、7〜14重量%であることが好ましい。さらに、硬さを調整するために250以上のブルーム値のゼラチンを使用し、且つ該ゼラチンの固形含有分が8〜12重量%であればグミキャンディの味・食感ともになお好ましい。
【0019】
また、本発明で使用するアルギン酸エステルは、ハードグミキャンディの硬さ、チューイング性及び歯付きを調整する要因であり、噛み出しの硬さの調節、チューイング性の向上及び歯付き防止のためには、粘度が150mPa・s以上であることが必要である。
前記粘度が150mPa・s未満では、硬さ、チューイング性、歯付きの指標である弾力性、粘着性ともに従来のグミキャンディと同程度であり、食感としての違いが見られなくなる。
【0020】
前記アルギン酸エステルの粘度は、回転式粘度計(BM型)を用い、1%アルギン酸エステル水溶液を液温20℃で測定した場合の値である。詳しい測定法は、アルギン酸エステルの1%水溶液を粘度測定用トールビーカー(φ4.2cm)に入れ20±0.1℃の恒温槽中に20分静置し、回転式粘度計(BM型 30rpm、ローター適宜)で粘度を測定する。回転開始から60秒後の数値を測定値とする。
【0021】
前記アルギン酸エステルの前記ハードグミキャンディ中の固形含有分は、0.05〜0.5重量%であることが好ましい。0.05重量%未満の場合、ハードグミキャンディにおいて所望のチューイング性が得られ難くなり、また、0.5重量%を超える場合には、歯付きする食感となる傾向がある。
【0022】
また、前記アルギン酸エステルは、前記キャンディベース等の他の成分と混合する時、アルギン酸エステル同士が固まった「だま」になってグミキャンディ液中に偏在するのを防ぐため、酸味料と粉体混合してから添加する必要がある。本発明で行う粉体混合としては、前記アルギン酸エステルの粉体と砂糖の粉体とを通常の混合機、所望により粉体の粒径を微粒化できる混合機内で混合すればよい。
【0023】
さらに、ハードグミキャンディの水分値は、食感と密接に関係があり、本発明では13〜17重量%になるように調整され、中でも14〜16重量%であればより好ましい食感になる。さらに、乾燥工程において40℃を超える状態で乾燥を行うとゼラチンの変質が生じる恐れが高いことから、40℃以下で乾燥することが望ましい。また、ゼラチンの由来原料の違いや原料の品質の違いから乾燥条件が厳しくなることも考えられ、例えば30℃以下で乾燥することが好ましい場合もある。前記水分値は、所定のサンプルの重量と、そのサンプルを真空の容器内で65℃、6時間乾燥させた後の重量との差を水分重量とし、乾燥前の重量で割った値である。
【0024】
また、本発明のハードグミキャンディは、所望により、酸味料、果汁、香料、着色料等の任意成分を含有してもよい。また、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)等を含有してもよい。
【0025】
なお、本発明のハードグミキャンディにおける固形分とは、前記水飴、砂糖、ゼラチン、アルギン酸エステル等の必須成分に加えて、含有量が0.01重量%未満の成分を除いた前記任意成分の含有量の合計をいう。
【0026】
本発明のハードグミキャンディの硬さに関しては、厚み、形、水分値等の条件によって大きく変わる。従って、上記組成からなるハードグミキャンディは、少なくとも乾燥後のハードグミキャンディの主要部分の厚みが平均7.5〜9.5mmあればよく、硬くてチューイング性のある食感を良好にするためには平均8〜9mmの厚みが好ましい。ここで主要部分とは、ハードグミキャンディとして最大の厚みをいう。
【0027】
以上の構成を有する本発明のハードグミキャンディの製造方法は、
粉末状の砂糖及び/又は粉末状の水飴とアルギン酸エステルとを粉体混合して作製したキャンディベースにゼラチンを加えてグミキャンディ液を得る工程、
グミキャンディ液のpHを3.2〜3.4に調整する工程、
乾燥後のハードグミキャンディの主要部分の厚みが平均7.5〜9.5mmになるようにモールド中に前記グミキャンディ液を充填する工程、
充填後にハードグミキャンディの水分値が13〜17%になるように40℃以下で乾燥する工程を含むことを特徴とする。
【0028】
前記グミキャンディ液は、例えば、以下のようにして行う。ゼラチンを水に溶解し膨潤させて適当な温度、例えば60℃に保温しておく。別に粉末状の砂糖及び/又は粉末状の水飴と前記アルギン酸エステルとを粉体混合し、加熱溶解して糖液(キャンディベース)をつくっておき、先に保温しておいたゼラチン溶液と攪拌混合してグミキャンディ液を得る。前記キャンディベースを作製する際に、アルギン酸エステルは粉末状の砂糖の一部又は全部、粉末状の水飴の一部又は全部又はこれらの粉末状の砂糖と水飴の混合物と粉体混合されればよく、配合の順番としては特に限定はない。また、この混合の際、香料や色素等を加えておくのが一般的である。
【0029】
本発明では、前記のように各種の成分を混合したグミキャンディ液のpHを3.2〜3.4に調整する点に一つの大きな特徴がある。かかる特徴により、グミキャンディの一定の物性を経時的に長期間保持することが可能となる。
前記pHは、3.2未満であると経時的に柔らかくなり過ぎるという問題があり、3.4を超えると硬くなりすぎるという問題がある。
【0030】
次いで、モールド中に前記グミキャンディ液を充填するが、本発明では、乾燥後のハードグミキャンディの主要部分の厚みが平均7.5〜9.5mmになるように充填する点に一つの大きな特徴がある。かかる特徴によりハードグミキャンディの食感を良好にし、硬さとチューイング性の両方の性質を与えることが可能となる。前記厚みが平均7.5mm未満の場合、所望の硬さがでず、9.5mmを超える場合、所望のチューイング性を与えることが困難である。
【0031】
また、前記モールド中に充填する際の前記グミキャンディ液の温度は、流動性がある温度であればよく、例えば、30〜80℃が好ましい。
また、前記モールドとしては、グミキャンディの製造に使用されるものであれば、素材、型等について特に限定はない。
【0032】
次いで、充填後にハードグミキャンディの水分値が13〜17重量%になるように40℃以下で乾燥する。乾燥手段及び水分値の測定手段には、公知の手段・装置を使用すればよい。
【0033】
以上の工程を経た後、前記モールドから取り出すことでハードグミキャンディを得ることができる。得られたハードグミキャンディは、所望の形状になるように、カット等の加工処理を施したり、オイリング、糖衣処理等の後処理を施してもよい。
【0034】
また、本発明のハードグミキャンディは、例えば、他種のキャンディ、グミキャンディ、焼き菓子、ガム等の他の菓子類と組み合わせてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。また、「%」は重量%を示す。
【0036】
(実施例1)
砂糖とアルギン酸エステルを粉体混合後、各種水飴と100℃で加熱混合してキャンディベースを作製し、これに250ブルームゼラチンを8%になるように添加して混合液を調製した。この混合液にクエン酸塩(酸味料)、香料を加えて60℃で混合してグミキャンディ液を調製し、そのpHをpH調整剤を用いて3.2〜3.4に調整した。得られたグミキャンディ液を2cm×2cmの型に充填した後、40℃以下で水分値が15%になるように乾燥させた。また、グミキャンディ液の充填時に乾燥後のハードグミキャンディの大きさを平均8.5mmの高さになるように統一した。表1にグミキャンディの詳細な組成、表2にキャンディベースの組成をそれぞれ示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記ハードグミキャンディの物性を調査するためにテクスチャー・アナライザー(「Texture Analyzer TA.XT.plus」、Stable Micro Systems社製)を使用し、貫入距離200%、測定速度1mm/sec、測定温度20℃で直径3mmの円柱プローブを用いて測定を行った。弾力性としてハードグミキャンディの硬さ及びチューイング性の指標を明らかにすることが可能であり、粘着性として歯付きの程度の指標を示すことが可能である。具体的な測定については添付のマニュアルに準じた。本方法で測定した結果、弾力性は20.6×105kg/m2で、粘着性1.8×105kg/m2であった。
【0040】
(実施例2)
実施例1の処方で使用しているアルカリ処理ゼラチンのブルーム値を200,220、250、300と変化させたハードグミキャンディを調製した。パネラー19名に、それぞれのグミキャンディを食べてもらい官能評価を行ったところ、220ブルーム以上のハードグミキャンディを食べたときには、硬さ、チューイング性が程よく歯付きもせず心地よい噛み心地であるという評価が得られた。なお、ブルーム値200のゼラチンを使用したグミキャンディは、弾力性が10.5×105kg/m2となり柔らかすぎるためにハードグミキャンディとしての硬さの評価を得ることができなかった。
【0041】
(比較例1、2)
実施例1と同様に、下記表3〜5に示す処方A、Bを基にしてハードグミキャンディをそれぞれ調製した。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
比較例1におけるAと比較例2におけるBは、水飴の組成を本発明の条件外に設定して作製したハードグミキャンディの処方である。実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得、物性を調査した結果、Aのハードグミキャンディでは弾力性11.3×105kg/m2で、粘着性0.9×105kg/m2であり、Bのハードグミキャンディでは弾力性13.2×105kg/m2で、粘着性1.5×105kg/m2であった。従って、比較例1及び2のいずれのハードグミキャンディも、実施例1のハードグミキャンディとは大きく弾力性及び粘着性が異なり、歯付きはしないが柔らかすぎる食感になると考えられる。
【0046】
(比較例3)
下記表6に示す、比較例3におけるハードグミキャンディの処方は、実施例1におけるアルギン酸エステルの粘度を60〜100mPa・s(1%水溶液、20℃での測定値)に下げたものである。この処方で実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得、ハードグミキャンディの物性を調査した結果、比較例3では弾力性16.0×105kg/m2で、粘着性3.0×105kg/m2であった。従って、アルギン酸エステルの粘度を低下させた場合には実施例1と比較して弾力性が低下し、粘着性が増加するため、柔らかくチューイング性の低い、歯付きもする食感となってしまうことがわかる。
【0047】
【表6】

【0048】
(比較例4)
下記表7に示す、比較例4におけるハードグミキャンディの処方は、実施例1におけるアルギン酸エステルの添加量を増やしたものである。この処方で実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得て、ハードグミキャンディの物性を調査した結果、比較例4では弾力性17.4×105kg/m2で、粘着性3.6×105kg/m2であった。従って、実施例1と比較して弾力性が低下し、粘着性が増加するため、柔らかくチューイング性の低い、歯付きもする食感となってしまうことがわかる。
【0049】
【表7】

【0050】
(参考例1)
特願2009−213368号公報(特許文献3)を基にして下記処方における硬い食感とチューイング性を併せ持つハードグミキャンディを調製した。表8にハードグミキャンディの詳細な組成(固形重量部)を示す。
【0051】
【表8】

【0052】
参考例1のハードグミキャンディは、実施例1でアルギン酸エステルを添加せずに作製したハードグミキャンディの処方である。実施例1と同様にハードグミキャンディを作製して物性を調査した結果、弾力性16.8×105kg/m2、粘着性2.9×105kg/m2であった。アルギン酸エステルを使用していない参考例1のハードグミキャンディと実施例1のハードグミキャンディの物性を比較すると、実施例1のハードグミキャンディの弾力性が増加し、粘着性が低下している。従って、実施例1のハードグミキャンディは、よりチューイング性があり且つ歯付きを低減した食感になると考えられる。
【0053】
また、HRIBO社製「Happy Cola」を上記の測定方法で物性測定したところ、弾力性25.9×105kg/m2、粘着性1.2×105kg/m2であった。従って、実施例1のハードグミキャンディよりも弾力性が大きく、粘着性が低いため、一見、チューイング性が大きく、歯付きが低減されているようにみえる。しかし、パネラーによる官能評価では、歯付きはしないが硬すぎるという意見が多数であった。したがって、実施例1のハードグミキャンディにおける弾力性、粘着性の数値が、程よいか見出しの硬さ及びチューイング性を与え、歯付きも低減する値であると考えられる。
【0054】
実際に、実施例1および参考例1で得られたハードグミキャンディおよびHRIBO社製「Happy Cola」をパネラー19名に食べてもらい官能評価を実施したところ、13名が実施例1のハードグミキャンディが、最もチューイング性がよく、かつ歯付きが低い点で食感が良好であると評価した。前記3点(実施例1、参考例1、「Happy Cola」の弾力性及び粘着性の数値、官能評価の結果から、「Happy Cola」は弾力性の数値が高すぎるため、硬すぎる食感となることがわかり、参考例1のハードグミキャンディにおける高い粘着性の数値からは、チューイング性はあるが歯付きする食感となることがわかる。今回、アルギン酸エステルを加えた実施例1では、高い弾力性と程よい粘着性を併せ持つため、チューイング性があり、かつ歯付きもしない食感を実現していると考えられる。
【0055】
(比較例5)
表9に示す比較例5におけるハードグミキャンディの処方は実施例1におけるアルギン酸エステルをポリグルタミン酸に置き換えたものである。この処方で実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得て、ハードグミキャンディの物性を調査した結果、比較例5では弾力性16.2×105kg/m2、粘着性3.3×105kg/m2であった。従って、ポリグルタミン酸を使用した場合には実施例1と比較して弾力性が低下し粘着性が増加するため、チューイング性の低い、歯付きもする食感となってしまうことがわかる。
【0056】
【表9】

【0057】
(比較例6〜18)
実施例1において、アルギン酸エステルの代わりに、タマリンドガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、フレボタイド、カラギーナン(カッパ、イオタ、ラムダ)をそれぞれ添加してハードグミキャンディを調製し、弾力性と粘着性を測定した。その結果を表10に示す。
【0058】
【表10】

【0059】
表10の結果より、いずれのゲル化剤を使用しても、弾力性を向上させながら、かつ粘着性を低減させることは困難であることがわかる。従って、実施例1におけるハードグミキャンディの食感が高い弾力性と程よい粘着性を併せ持ち、チューイング性と歯付き防止効果を兼ね備えた食感であることが示された。
【0060】
(実施例3)
下記表11に示す、実施例3におけるハードグミキャンディの処方は、実施例1におけるアルギン酸エステルの添加量を0.05重量部に減らしたものである。この処方で実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得、ハードグミキャンディの物性を調査した結果、実施例3では弾力性20.3×105kg/m2で、粘着性2.0×105kg/m2であった。弾力性、粘着性とものに実施例1と同程度の値であることから、実施例3のハードグミキャンディは、チューイング性が高く、歯付きも低減した食感であることがわかる。
【0061】
【表11】

【0062】
(実施例4)
下記表12に示す、実施例4におけるハードグミキャンディの処方は、実施例1におけるアルギン酸エステルの添加量を0.5重量部に増やしたものである。この処方で実施例1と同様にしてハードグミキャンディを得、ハードグミキャンディの物性を調査した結果、実施例4では弾力性21.0×105kg/m2で、粘着性1.7×105kg/m2であった。弾力性、粘着性とものに実施例1と同程度の値であることから、実施例4のハードグミキャンディは、チューイング性が高く、歯付きも低減した食感であることがわかる。
【0063】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のハードグミキャンディは、従来のハードグミキャンディと比較して、チューイング性の向上だけでなく、歯付きの低減も可能にしたことから、今までよりもさらに噛み心地の良い食感を有するグミキャンディを用いた菓子類を提供することができる。また、本発明のグミキャンディは、他の菓子類と組み合わせることで、これまで以上に多様な食感を備えた菓子類を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DE値が20〜35の水飴を固形分として30〜50重量%、かつDE値が70を超える水飴を固形分として20〜40重量%、かつ砂糖20〜50重量%配合した3種類の成分からなるキャンディベース、及びブルーム値220以上のゼラチン及び20℃での1重量%水溶液の粘度が150mPa・s以上であるアルギン酸エステルを含む、水分値が13〜17重量%であることを特徴とするハードグミキャンディ。
【請求項2】
ハードグミキャンディ中に含有されるアルギン酸エステルの固形含有分が0.05〜0.5重量%である請求項1に記載のハードグミキャンディ。
【請求項3】
ハードグミキャンディ中に含有されるゼラチンの固形含有分が7〜14重量%である請求項1又は2に記載のハードグミキャンディ。
【請求項4】
粉末状の砂糖及び/又は粉末状の水飴とアルギン酸エステルとを粉体混合して作製したキャンディベースにゼラチンを加えてグミキャンディ液を得る工程、
グミキャンディ液のpHを3.2〜3.4に調整する工程、
乾燥後のハードグミキャンディの主要部分の厚みが平均7.5〜9.5mmになるようにモールド中に前記グミキャンディ液を充填する工程、
充填後にハードグミキャンディの水分値が13〜17%になるように40℃以下で乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のハードグミキャンディの製造方法。