ハードコートフィルム、偏光板、画像表示装置、及びハードコートフィルムの製造方法
【課題】 本発明は、干渉縞の発生を確実に防止できるハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2上に設けられたハードコート層3と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面5が存在し、前記界面5からハードコート層3の厚み方向中途部までの領域31において、屈折率が厚み方向に連続的に変化しており、前記領域31中に、前記反射スペクトルの解析による界面を有しない。
【解決手段】 本発明のハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2上に設けられたハードコート層3と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面5が存在し、前記界面5からハードコート層3の厚み方向中途部までの領域31において、屈折率が厚み方向に連続的に変化しており、前記領域31中に、前記反射スペクトルの解析による界面を有しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、それを有する偏光板及び画像表示装置、並びに、ハードコートフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の画面やタッチパネルのような部材の傷付きや光反射を防止するために、これらの部材にハードコートフィルムが設けられる場合がある。
前記ハードコートフィルムは、透明フィルムと、その透明フィルムの上に設けられたハードコート層と、を有する。前記ハードコート層は、通常、熱硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂のような電離放射線硬化型樹脂などを含むハードコート層形成材料を2〜10μm程度に製膜した薄い塗膜から構成されている。
従来のハードコートフィルムにおいては、透明フィルムとハードコート層の間に屈折率差が存在する。このため、ハードコート層の表面に僅かな凹凸があると、干渉縞を生じるという問題点がある。なお、干渉縞は、ハードコート層の表面などに蛍光灯などの三波長光源からの光が当たり、それが反射することに起因する、縞模様の外観である。このような干渉縞は、ハードコートフィルムの表面の視認性を低下させる原因となる。
【0003】
前記干渉縞の発生を防止するために、ハードコート層形成材料によって透明フィルムの表面を膨潤させることにより、ハードコート層と透明フィルムの界面を消失させ、前記界面付近の屈折率を連続的に変化させたハードコートフィルムが知られている(特許文献1及び2)。
また、干渉縞の発生を防止するために、透明フィルムとハードコート層の間に光学調整層を設けることによって、透明フィルムとハードコート層の界面を無くしたハードコートフィルムが知られている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、上記従来のハードコートフィルムは、干渉縞の発生を十分に防止し得ない。さらに、特許文献3のハードコートフィルムにおいては、その製造時に、光学調整層を設ける工程が更に必要となる。
一方、ハードコートフィルムにおいては、傷付き防止目的のためハードコート層が高硬度であることが必要である上、ハードコート層と透明フィルムが十分に密着していることも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263082号公報
【特許文献2】特開2003−131007号公報
【特許文献3】WO2006/098363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、干渉縞の発生をより抑制でき、更に、高硬度で且つ密着性に優れたハードコートフィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、前記ハードコートフィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することである。
本発明の他の目的は、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記特許文献1及び2のハードコートフィルムにあっては、透明フィルムとハードコート層とを区画する界面に起因する、干渉縞を抑制できると考えられる。
しかしながら、かかるハードコートフィルムは、全体として見れば、干渉縞が依然生じている。
この原因として、本発明者らは、前記透明フィルムとハードコート層とを区画する界面以外に、新たな別の界面が存在していることが原因である推察した。具体的には、特許文献1及び2のハードコートフィルムは、硬化型樹脂と溶媒を含むハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工し且つ塗膜を硬化させることによって得られる。この溶媒が透明フィルムの表面を膨潤させるので、透明フィルムを形成する成分が前記塗膜中に溶出する。そして、前記塗膜中に拡散し且つ浸透した、前記透明フィルムを形成する成分が、前記新たな別の界面を生じさせる原因と推察される。この新たな別の界面の存在により、従来のハードコートフィルムは、現実的には干渉縞の発生を十分に抑制できない。特に、ハードコート層の厚みが小さい場合に、前記別の界面に起因する干渉縞が生じやすい。この干渉縞は、ハードコート層の表面に反射防止層が設けられたときに、外観上、特に顕著に視認される。
このような知見の下、本発明者らは、以下の手段により、本発明の課題を解決した。
【0008】
本発明の第1のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している。
【0009】
本発明の第2のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0010】
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の厚みが3μm〜15μmである。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0011】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。
この偏光板は、上記ハードコートフィルムを有する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
この画像表示装置は、上記ハードコートフィルムを有する。
【0013】
本発明の別の局面によれば、ハードコートフィルムの製造方法が提供される。
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、分子量800以下の低分子量成分を含む硬化型化合物と透明フィルムに対する良溶媒を含む溶媒とを含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工して所定厚みの塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を硬化させて前記透明フィルム上にハードコート層を形成する硬化工程と、を有し、前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒並びに前記塗膜の厚みが、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たす。ただし、前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表し、前記aは、前記硬化型化合物の全量を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表し、前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表し、前記tは、前記塗膜の厚みμmを表す。
【0014】
本発明のハードコートフィルムの好ましい製造方法は、前記aが、0.3を超え1以下であり、前記bが、0.05以上0.5以下である。
【0015】
本発明のハードコートフィルムの好ましい製造方法は、前記低分子量成分が、紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、傷付き難く、さらに、干渉縞の発生をより抑制できる。さらに、本発明のハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の密着性にも優れているので、耐久性にも優れている。
かかるハードコートフィルムを有する偏光板及び画像表示装置は、耐傷性、耐久性、及び視認性に優れている。
本発明の製造方法によれば、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを簡易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のハードコートフィルムの1つの実施形態を示す断面図。
【図2】図2は、本発明のハードコートフィルムの他の実施形態を示す断面図。
【図3】図3の(a)及び(b)は、実施例1の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図4】図4の(a)及び(b)は、実施例2の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図5】図5の(a)及び(b)は、比較例1の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図6】図6の(a)及び(b)は、比較例2の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図7】図7の(a)及び(b)は、比較例3の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図8】図8の(a)及び(b)は、比較例4の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図9】図9の(a)及び(b)は、比較例5の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図10】図10の(a)及び(b)は、比較例6の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図11】図11の(a)及び(b)は、比較例9の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図12】図12は、比較例1、2、5、7及び8の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図13】図13は、比較例3、4及び6の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図14】図14は、比較例9及び10の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図15】図15の(a)〜(g)は、実施例1〜2及び比較例1〜4、9の各ハードコートフィルムの断面写真図。
【図16】実施例1〜5及び比較例1〜10で使用した各ハードコート層形成材料の、良溶媒の含有比×膜厚及び低分子量成分の含有比×膜厚をプロットしたグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ハードコートフィルム>
図1は、本発明の1つの実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
ただし、各図に示すハードコートフィルム、透明フィルム、及びハードコート層のそれぞれの厚みや長さは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0019】
図1に於いて、1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。
【0020】
図2に於いて、もう1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、前記ハードコート層3の上に設けられた反射防止層6と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。なお、図2のハードコートフィルム1は、反射防止層6が設けられていることを除いて、図1のハードコートフィルム1と同様である。そのため、図2には、図1と同様の部材に対して図1と同じ符号を付している。
【0021】
前記界面5は、反射スペクトルの解析によって検出できる。前記界面5からハードコート層3の厚み方向中途部までの領域31において、その厚み方向に屈折率が連続的に変化している。以下、界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域を、第1領域と記す場合がある。なお、前記ハードコート層3の厚み方向中途部は、前記界面5とハードコート層3の表面3aとの間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。
この第1領域31における屈折率の連続的な変化は、透明フィルムを形成する成分がハードコート層3の表面3aに向かって減少していることによって実現されている。
本明細書において、ハードコート層の表面とは、透明フィルムに積層されたハードコート層の積層面(界面)とは反対側の面を指す。
【0022】
具体的には、ハードコートフィルム1は、所定形状(例えば、平面視長方形状など)に形成されている。ハードコートフィルム1の厚みは特に限定されず、例えば、20μm〜1000μmであり、好ましくは20μm〜500μmである。
前記透明フィルム2の固有の屈折率と前記ハードコート層3の固有の屈折率は、異なっている。透明フィルム2の固有の屈折率は、ハードコート層3の固有の屈折率よりも小さくてもよいし、或いは、大きくてもよい。例えば、透明フィルム2の固有の屈折率は、ハードコート層3の固有の屈折率よりも小さい。
【0023】
透明フィルム2の固有の屈折率とは、透明フィルム単独(ハードコート層が設けられていない状態の透明フィルム)に対して測定された屈折率をいう。ハードコート層3の固有の屈折率とは、ハードコート層単独の屈折率(ハードコート層を形成する成分が本来有する屈折率)をいう。
【0024】
前記透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は特に限定されず、干渉縞の発生を防止するためには、両者の屈折率の差が零であることが理論上望ましい。もっとも、透明フィルム2の屈折率とハードコート層3の屈折率が同じ値となる材料を選択することは現実的には困難である。本発明のハードコートフィルム1は、第1領域31において屈折率が厚み方向に連続的に変化し且つこの第1領域31中に界面を有しない(なお、第1領域31と後述する領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない)構造であるため、干渉縞の発生を抑制できる。このため、本発明においては、前記屈折率の差がある程度大きい透明フィルム2とハードコート層3を用いることも可能である。具体的には、透明フィルム2とハードコート層3の固有の屈折率の差は、例えば、0〜0.20であり、好ましくは、0.01〜0.10である。前記両者の固有の屈折率の差は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分(ハードコート層内に含まれる透明フィルムを形成する成分を除く)との屈折率の差である。
なお、本発明において、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、第1領域31(さらには第2領域)によって低減されている。
前記屈折率は、JIS K 7142に準じて測定できる。
【0025】
本発明において、前記界面5は、構造上、ハードコート層3と透明フィルム4とを区画する面である。この界面5は、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面である。この界面5は、ハードコートフィルム1の厚み方向において、1つだけ存在している。つまり、ハードコートフィルム1は、前記1つの界面5を除いて、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面が存在しない。換言すると、ハードコート層3中及び透明フィルム2中には、それぞれ反射スペクトルの解析によって検出できる界面が存在しない。
前記界面5は、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて検出可能である。具体的な方法は、下記実施例の[界面などの測定方法]に従って行うことできる。
【0026】
前記第1領域31における屈折率は、ハードコートフィルム1の厚み方向において連続的に変化している。
例えば、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも小さい場合には、好ましくは、前記第1領域31における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に大きくなっている。つまり、前記界面5を基準にして、その界面5からハードコート層3の表面3a側に向かうに従って、ハードコート層3の固有の屈折率に徐々に近づくように、屈折率が連続的に変化している。
一方、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも大きい場合には、好ましくは、前記第1領域31における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に小さくなっている。
【0027】
なお、図1に示すハードコートフィルム1おいては、ハードコート層3が透明フィルム1の片面に設けられているが、ハードコート層が透明フィルムの両面に設けられていてもよい(図示せず)。
【0028】
前記第1領域31は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在した混在領域である。
以下、透明フィルムを形成する成分を、「フィルム成分」と、ハードコート層を形成する成分を、「ハードコート成分」とそれぞれ略記する場合がある。
前記第1領域31中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層3の表面3aに向かうに従って減少している。この第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3は密着性に優れている。従って、前記ハードコートフィルム1を長期間使用しても、透明フィルム2とハードコート層3が剥がれにくい。本発明のハードコートフィルム1は、耐久性に優れている。また、第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、低減されている。従って、本発明のハードコートフィルム1は、透明フィルム2とハードコート層3との間の界面5に起因する干渉縞も抑制されている。
第1領域31とハードコート層3の表面3aの間の領域32は、実質的にハードコート成分からなる。このハードコート層3の表面側に前記領域32を有することにより、高硬度のハードコート層3を構成できる。ただし、前記領域32中には、前記フィルム成分が僅かに含まれていることもある。前記第1領域31と領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない。すなわち、ハードコート層3において、第1領域31と領域32とは、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を生じることなく繋がっている。
【0029】
透明フィルム2中には、ハードコート成分が含まれていてもよいし、又は、ハードコート成分が含まれていなくてもよい。透明フィルム2にハードコート成分が含まれている場合、それは、前記界面5から透明フィルム2の厚み方向中途部までの領域に含まれる。以下、界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域を、第2領域と記す場合がある。なお、前記透明フィルム2の厚み方向中途部は、前記界面5と透明フィルム2の裏面との間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。
前記第2領域は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在した混在領域である。前記第2領域中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層3の表面3aに向かうに従って徐々に減少している。ただし、第2領域の厚みは、前記第1領域31の厚みよりも小さい。
【0030】
界面5付近においては、フィルム成分とハードコート成分の混在比が一定である、又は、フィルム成分が厚み方向に向かって僅かに減少している。
【0031】
(透明フィルムについて)
透明フィルムは、少なくとも可視光の光線透過率に優れ、透明性に優れるものであれば特に限定されない。前記透明フィルムの可視光に於ける光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ただし、光線透過率は、フィルム厚100μmで、分光光度計(日立製作所製、製品名「U−4100型」)で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。
前記透明フィルムのヘイズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。ただし、前記ヘイズ値は、JIS−K7105に準じて測定された値をいう。
【0032】
前記透明フィルムとしては、透明ポリマーを製膜したプラスチックフィルムなどが挙げられる。前記透明ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;カーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、芳香族環を有するアクリル樹脂、ラクトン変性アクリル樹脂などのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状構造又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;これらを混合したブレンドポリマー;などが挙げられる。好ましくは、透明フィルムとして、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーを含む形成材料を製膜したフィルム、又は、アクリル系樹脂フィルムが用いられ、より好ましくは、前記セルロース系ポリマーフィルムが用いられる。
【0033】
本発明のハードコートフィルムは、後述するように、偏光板などの光学フィルムに積層接着することにより、ハードコート積層体の態様で使用できる。上記透明フィルムとして、例えば、偏光子を用いることにより、偏光子に直接ハードコート層が設けられたハードコート偏光板(偏光機能を有するハードコートフィルム)を構成できる。同様に、上記透明フィルムとして、例えば、位相差板を用いることにより、位相差板に直接ハードコート層が設けられたハードコート位相差板(光学補償機能を有するハードコートフィルム)を構成できる。また、上記透明フィルムとして、例えば、保護フィルムを用いることにより、保護フィルムに直接ハードコート層が設けられたハードコート保護フィルム(保護フィルムを兼用するハードコートフィルム)を構成できる。かかるハードコート保護フィルムは、偏光子の片面又は両面に積層することにより、ハードコート偏光板を構成することができる。この場合、前記ハードコート保護フィルムに使用する透明フィルムとしては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状構造又はノルボルネン構造を有するオレフィン系ポリマーなどを主成分とするフィルムを用いることが好ましい。
【0034】
透明フィルムの厚みは、適宜に設定される。強度、取り扱い性などの作業性、薄層性などの点から、透明フィルムの厚みは、通常、10μm〜500μm程度であり、好ましくは20μm〜300μmであり、より好ましくは30μm〜200μmである。
透明フィルムの固有の屈折率は、特に制限されず、通常、1.30〜1.80、好ましくは1.40〜1.70である。
透明フィルムは、その用途に応じて適宜な位相差値を有するフィルムが用いられ得る。
【0035】
(ハードコート層について)
このハードコート層は、鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有する層である。
ただし、前記硬度は、JIS K 5400の鉛筆硬度試験に準じて測定された値をいう。
ハードコート層の厚みは、特に限定されず、通常、1μm〜30μm、好ましくは2μm〜20μmであり、より好ましくは3μm〜15μmである。
一般に、硬度3H以上の高硬度のハードコート層を形成しようとする場合には、その厚みを15μmを超える厚みに設計することがある。厚みが15μmを超えるハードコート層は、干渉縞の発生が抑制される傾向にある。このため、15μm以下の厚みを有するハードコート層を形成する場合、本発明の構造を採用することによって、干渉縞の抑制効果が顕在化する。特に、硬度2Hのハードコート層は、その厚みを3μm〜15μmとすることにより、本発明の干渉縞の抑制効果が顕著に認められる。
【0036】
ハードコート層は、溶媒と硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を、上記透明フィルム上に塗工し且つ硬化させることによって得られた薄い膜から形成されている。好ましくは、前記溶媒は、透明フィルムに対する良溶媒を含み、前記硬化型化合物は、分子量800以下の化合物を含む。
本明細書において、良溶媒とは、透明フィルムを溶解する機能を有する溶媒をいい、貧溶媒とは、透明フィルムを溶解する機能を有さない溶媒をいう。
本明細書において、硬化型化合物のうちで分子量800以下の化合物を、「分子量800以下の低分子量成分」、又は、単に「低分子量成分」と記す。
【0037】
本発明では、硬化型化合物及び透明フィルムを溶解することができる溶媒が用いられる。
溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタノン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
【0038】
例えば、透明フィルムがトリアセチルセルロースフィルムである場合、それに対する良溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、 酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。透明フィルムがトリアセチルセルロースフィルムである場合、それに対する貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。
例えば、透明フィルムがアクリル系フィルムである場合、それに対する良溶媒としては、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられる。透明フィルムがアクリル系フィルムである場合、それに対する貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノールなどのアルコール類、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
好ましくは、溶媒として、良溶媒単独、又は、良溶媒と貧溶媒を混合した混合溶媒が用いられる。良溶媒と貧溶媒は、透明フィルムの材質に応じて適宜選択できる。
【0039】
ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工したときに、溶媒が透明フィルム内に浸透していく一方で、溶媒の浸透によってフィルム成分(例えば、トリアセチルセルロースなどの透明フィルムを形成するポリマーなど)が溶出し且つ拡散していく。これによって、透明フィルム上に、フィルム成分とハードコート成分(硬化型化合物など)が混在した混在領域が生じる。ハードコート成分の硬化に伴い、前記混在領域において、フィルム成分が、反射スペクトルの解析によって検出可能な1つの界面を残しつつ、透明フィルムから離れる方向に減少した領域を生じる。1つの界面を残しつつフィルム成分が厚み方向に減少した構造を有する上記第1領域は、新たに別の界面を有さない。よって、本発明のハードコート層は、反射スペクトルの解析によって検出可能な1つの界面を残しつつ、第1領域における屈折率が連続的に変化するものと推定される。なお、前記浸透と拡散は、溶媒の蒸発速度も関係すると思われる。
【0040】
特に、良溶媒を含む溶媒は、透明フィルムに浸透し、それを膨潤させてフィルム成分を生じさせ易い。また、低分子量成分を含む硬化型化合物は、その低分子量成分がフィルム成分中に混じり易いと共に、フィルム成分が拡散し易い。このため、良溶媒を含む溶媒と低分子量成分を含む硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を用いると、フィルム成分が、透明フィルムとハードコート層の間の界面を残しつつ透明フィルムとハードコート層との屈折率差を低減し且つその界面以外の界面を生じさせないで、ハードコート層の表面に向かって減少していく。かかるハードコートフィルムは、干渉縞の発生を抑制できる。
【0041】
上記溶媒は、ハードコート層形成材料を透明フィルムに塗工したときに、溶媒が透明フィルム内に浸透していく浸透速度、及び、フィルム成分がハードコート層形成材料中に拡散していく拡散速度、並びに溶媒の乾燥条件を考慮して適宜選択することが好ましい。
例えば、前記浸透速度は、前記フィルム成分(例えば、トリアセチルセルロースなどの透明フィルムを形成するポリマーなど)に対する良溶媒(及び貧溶媒)の量などに影響を受ける。前記拡散速度は、前記ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の分子量、透明フィルム中の成分の分子量及び透明フィルム中の可塑剤の量などに影響を受ける。特に、ハードコート層形成材料中の良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比などを適切な範囲にすることが重要である。
【0042】
前記硬化型化合物は、十分な強度及び透明性を有する膜を形成できるものであれば特に制限なく使用できる。前記硬化型化合物としては、例えば、熱により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマー、電離放射線により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマーなどが挙げられる。加工性の良さ及び透明フィルムに熱損傷を与え難いなどの点から、電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーを用いることが好ましい。
【0043】
前記熱により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。前記熱により硬化する樹脂には、熱によって溶媒を揮発させることにより硬化する樹脂も含まれる。
【0044】
前記電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、通常、紫外線又は電子線で硬化する硬化型化合物が挙げられる。前記電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、分子中に(メタ)アクリレート基(「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又は/及びメタクリレートを意味する)、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合基又はエポキシ基等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。なお、前記オリゴマーは、プレポリマーを含む。
【0045】
前記オリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシなどが挙げられる。前記モノマーの具体例としては、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。
ハードコート層を形成する硬化型化合物の分子量は特に限定されないが、例えば、200〜10000の範囲内などが挙げられる。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーには、通常、光重合開始剤が添加される。前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他のチオキサント系化合物などが挙げられる。
【0047】
また、前記ハードコート層を形成するための組成物には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、フッ素系又はシリコーン系などのレベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤などが挙げられる。
【0048】
(反射防止層)
反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられる。本発明のハードコートフィルムは、前記反射防止層が設けられていてもよいし、又は設けられていなくてもよい。
反射防止層を設けることにより、ハードコート層の表面における光の反射を更に低減できる。
前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることによって反射防止機能を発揮する。一般に、ハードコート層の表面に低反射処理を行うと(すなわち、反射防止層を形成すると)、ハードコート層の表面に干渉縞が目立ち易くなる。この点、本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層に反射防止層を設けた場合に見られる、干渉縞の発生をも効果的に抑制できる。従って、本発明は、低反射処理を行うハードコートフィルムとしても有効である。
【0049】
反射防止層の形成材料としては、無機微粒子が混合された樹脂などが挙げられる。樹脂としては、上記ハードコート層の硬化型化合物と同様なものを用いることができる。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ガラス微粒子、フッ化マグネシウムなどが挙げられる。無機微粒子の粒径は、好ましくは2nm〜80nmであり、より好ましくは5nm〜50nmである。
反射防止層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜1μm程度である。
【0050】
<ハードコート層の製造方法>
本発明のハードコートフィルムは、溶媒と硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工し、前記ハードコート層形成材料を硬化させることによって得られる。
【0051】
(塗膜形成工程)
透明フィルムは、上記に例示したものを適宜用いることができる。
好ましくは、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー製の透明フィルムが用いられる。
ハードコート層形成材料は、上記に例示した溶媒及び硬化型化合物を、適宜混合することにより調製できる。
【0052】
溶媒は、透明フィルムに対する良溶媒を含んでいることが好ましく、透明フィルムに対する良溶媒と貧溶媒の双方を含むことがより好ましい。
溶媒が良溶媒と貧溶媒を含む場合、その混合比は特に限定されないが、好ましくは良溶媒:貧溶媒の含有比(質量比)が、1:9〜99:1である。
硬化型化合物は、分子量800以下の低分子量成分を含んでいることが好ましい。硬化型化合物が分子量800以下の低分子量成分以外の成分を含む場合には、その成分は、通常、分子量800を超える化合物(高分子量成分)である。
例えば、シクロペンタノンを含む溶媒と、アクリレート基及びメタクリレート基の少なくとも何れか一方の基を有する低分子量成分を含む硬化型化合物と、を含むハードコート層形成材料が用いられる。
【0053】
前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒は、塗膜の厚みを加味して、下記式1及び式2の関係を満たしていることが好ましい。
式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311
式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474
【0054】
前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表す。前記aは、前記硬化型化合物の全量(質量換算)を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表す。つまり、a=ハードコート層形成材料中の低分子量成分の質量/ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の質量、である。
前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量(質量換算)を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表す。つまり、b=ハードコート層形成材料中の良溶媒の質量/ハードコート層形成材料の質量、である。
前記tは、前記塗膜の厚み(単位μm)を表す。
式1及び式2の「ln」は、自然対数を表す。
【0055】
前記式1及び2を同時に満たすハードコート層形成材料を用いてハードコート層を形成することにより、本発明のハードコートフィルム、すなわち、透明フィルムとハードコート層の間に反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、第1領域において屈折率が厚み方向に連続的に変化し、且つ前記第1領域中に反射スペクトルの解析による界面を有しない、ハードコートフィルムが得られる。
これは、良溶媒を含む溶媒と低分子量成分を含む硬化型化合物の、透明フィルムに対する浸透作用及び拡散作用に起因すると推定される。
良溶媒の量及び低分子量成分の量がそれぞれ多すぎる又は少なすぎても、干渉縞が抑制されたハードコートフィルムを得ることができない。本発明者らは、良溶媒の量及び低分子量成分の量がハードコートフィルムの干渉縞の発生に大きな影響を与える可能性があるという推察の下、鋭意研究し、前記式1及び式2の関係を満たすハードコート層形成材料を用いることを見出した。かかるハードコート層形成材料を用いることにより、透明フィルムとハードコート層との間の界面に起因する干渉縞の発生だけでなく、ハードコート層内に内在するフィルム成分に起因する干渉縞の発生までも抑制されたハードコートフィルムを得ることができる。このような点は、本発明者らが初めて見出した事項である。
【0056】
前記a(低分子量成分の含有比)は、0.3を超え1以下であることが好ましく、0.4以上1未満であることがより好ましい。前記b(良溶媒の含有比)は、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下がより好ましい。
【0057】
前記ハードコート層形成材料中の固形分(硬化型化合物及び添加剤)の割合は、特に限定されないが、好ましくは30質量%〜70質量%であり、より好ましくは35質量%〜60質量%であり、特に好ましくは40質量%〜60質量%である。
溶媒の含有量が余りに少ないと、透明フィルムの溶解が不十分となり、一方、溶媒の含有量が余りに多いと、透明フィルムに溶媒が浸透し過ぎて透明フィルムが曇ったり、或いは、2つ以上の界面を生じるおそれがある。
【0058】
前記ハードコート層形成材料の粘度(25℃)は、好ましくは1〜700MPa・sであり、より好ましくは2〜500MPa・sである。
ハードコート層形成材料は、コンマコーター、ダイコーター等のコーターを用いて透明フィルム上に塗工できる。また、ハードコート層形成材料は、キャスティングやスピンコートなどの方式によって透明フィルム上に塗工することもできる。
透明フィルムが長尺状である場合には、コーターを用いてハードコート層形成材料を塗工することが好ましい。ロールに巻かれた長尺状の透明フィルムを引き出し、それを製造ラインの長手方向に送りながら、その途中でハードコート層形成材料を透明フィルムに塗工してハードコート層を形成する。ハードコート層が形成された透明フィルムは、再度ロールに巻き取られる。このようなロールからロールに巻き取る方式であれば、ハードコート層を透明フィルムに連続的に形成でき、生産性に優れている。
【0059】
ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工することによって、透明フィルム上に塗膜を形成できる。
前記塗膜の厚みは、形成されるハードコート層の厚みを考慮して適宜設定される。前記塗膜の厚みは、形成されるハードコート層の厚みよりも大きく、例えば、1μm〜100μmであり、好ましくは4μm〜40μmである。例えば、長尺状の透明フィルムにコーターを用いてハードコート層形成材料を塗工する場合、前記塗膜の厚みは、ハードコート層形成材料の吐出量及び前記透明フィルムの送り速度により調整される。
【0060】
(硬化工程)
ハードコート層形成材料を塗工した後、塗膜を硬化させる前に(低分子量成分を含む硬化型化合物を重合させる前に)、塗膜を乾燥する(すなわち、溶媒を揮発させる)ことが好ましい。塗膜を乾燥している間に、溶媒を透明フィルム中に浸透させるためである。
乾燥温度は特に限定されず、例えば、30℃〜100℃が挙げられる。乾燥時間は、透明フィルム及び溶媒の種類、塗膜の厚みなどに応じて適宜設定されるが、通常、30秒〜5分である。
【0061】
乾燥後、塗膜を硬化させる。
硬化型化合物が電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーの場合には、その種類に応じたエネルギー線を塗膜に照射することにより、塗膜が硬化する。エネルギー線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素の線源などが挙げられる。エネルギー線の照射量は、硬化型化合物及び光重合開始剤の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、紫外線波長365nmでの積算光量で、50〜5,000mJ/cm2程度が挙げられる。
【0062】
上述のように、ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工すると、良溶媒が透明フィルムを膨潤させることにより、低分子量成分を前記透明フィルム中に浸透させ且つフィルム成分を塗膜中に拡散させることができる。これにより、前記低分子量成分と前記フィルム成分が混在する混在領域を透明フィルムとハードコート層との界面上(ハードコート層内)に生じさせ、その混在領域の厚み方向中途部に反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記フィルム成分を塗膜の表面に向かって減少させることができる。この塗膜を硬化させると、ハードコート層内に反射スペクトルの解析による界面をもたない、本発明のハードコートフィルムが得られる。
【0063】
(反射防止層形成工程)
反射防止層形成工程は、ハードコート層の表面に、反射防止層を形成する工程である。
この工程は、必要に応じて行われる。
反射防止層の形成材料としては、上記例示したものを用いることができる。
反射防止層の形成材料をハードコート層の表面に塗工し、その材料を乾燥又は硬化させることにより、透明フィルムとハードコート層と反射防止層とがこの順で積層されたハードコートフィルムが得られ得る。
【0064】
<ハードコートフィルムの用途>
ハードコートフィルムは、擦傷を防止したい部分に設けるための部材として使用できる。代表的には、ハードコートフィルムは、液晶表示装置などの画像表示装置の画面の保護部材、タッチパネルの表面保護部材、計器類のカバー部材、光学レンズ等として使用できる。ハードコートフィルムを画像表示装置に使用する場合、ハードコートフィルムは、それ単独で画像表示装置の画面に貼付されるか、或いは、前記画面に組み込まれた光学フィルムに貼付される。また、ハードコートフィルムは、各種光学フィルムに積層することにより、ハードコート積層体の態様で画像表示装置に組み込まれる。本発明のハードコートフィルムは、特に液晶表示装置などのディスプレイの前面に用いられるクリアハードコートフィルムとして有用である。
【0065】
ハードコートフィルムを積層する光学フィルムとしては、偏光子、位相差板、輝度向上フィルム及びこれらの積層体;偏光子に保護フィルムが積層された偏光板;偏光子に保護フィルム及び位相差板が積層された楕円偏光板などが挙げられる。
偏光板の偏光子としては、例えば、二色性色素で染色された親水性ポリマーフィルムが挙げられる。
前記ハードコートフィルムと光学フィルムは、通常、公知の粘着剤又は接着剤を介して接着される。前記粘着剤又は接着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ゴム系ポリマーなどのベースポリマーとする粘着剤又は接着剤が挙げられる。
【0066】
本発明のハードコートフィルムを組み込んだ画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(ELD)、ブラウン管テレビなどが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
なお、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0068】
<試験方法>
[分子量の測定方法]
使用した紫外線硬化型樹脂モノマーを0.1%THF溶液に調製し、室温で1日放置した。その後、その溶液を0.45μmメンブランフィルターにてろ過した。そのろ液について、東ソー株式会社製の高速GPC(製品名「HLC−8120GPC」)を用いてGPC測定を行うことにより、前記紫外線硬化型樹脂モノマーの分子量を測定した。
(測定条件)
カラム:東ソー株式会社製、G4000HXL +G2000HXL +G1000HXL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
流速:0.8mL/min
注入量:100μL
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
【0069】
[屈折率の測定方法]
屈折率は、JIS K 7142に準拠して、アッベ屈折率計(ATAGO社製、製品名「DR−A1」)を用いて測定した。
【0070】
[界面などの測定方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムについて、界面の存在及び屈折率の変化を確認するため、下記測定方法に従って反射スペクトルを測定した。
各ハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このハードコートフィルムのハードコート層の表面の反射スペクトルを、下記の条件下で、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて測定した。
【0071】
(測定条件)
リファレンス:AL
アルゴリズム:FFT法
計算波長:450nm〜950nm
屈折率:ハードコート層1.53、透明フィルム1.49
(検出器条件)
露光時間:20ms
ランプゲイン:ノーマル
積算回数:1回
(FFT法)
検出膜厚値の範囲:0.5μm〜12.0μm
データ個数:212
膜厚分解能:24nm
ベル関数:有り
【0072】
[干渉縞の観察方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。暗室中において、三波長光源を用いて、このハードコートフィルムの表面の干渉縞を観察した。
干渉縞の観察の結果は、下記の基準に従って区別した。
AA:殆ど干渉縞が視認されなかった。
A:僅かに干渉縞が視認された。
B:干渉縞が視認された。
C:明確に干渉縞が視認された。
【0073】
[密着性試験]
JIS K 5600に準じた碁盤目剥離試験により、透明フィルムとハードコート層の密着性を測定した。
【0074】
[表面硬度試験]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムを、厚み約20μmの粘着剤を介して、ガラス板上に粘着剤にて貼り付け、JIS K 5400の鉛筆硬度試験に準じて(但し、荷重500g)、鉛筆硬度を測定した。
【0075】
[反射率の測定方法]
各ハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このハードコートフィルムの反射防止層の表面の反射率を、分光光度計((株)日立製作所製、製品名「U−4000])を用いて測定した。反射率は、前記分光光度計を用いて分光反射率(鏡面反射率及び拡散反射率)を測定し、C光源/2度視野の反射率(視感反射率Y値)を計算によって求めた。
【0076】
[フィルム断面の観察]
ハードコートフィルムの両面をエポキシ樹脂によって保護した。そのフィルム断面を観察するために、超薄切片法により作製した試験片を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所製、製品名「H−7650」)を用いて、加速電圧100kVにて観察し、TEM写真を撮影した。
【0077】
[実施例1]
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」。固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE906」)を5部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」) を0.03部添加した。その後、前記溶液中の固形分濃度が75%となるように、前記溶液に酢酸ブチルを加えた。さらに、前記溶液中の固形分濃度が50%となるように、前記溶液にシクロペンタノン(以下、「CPN」と記す)を加えた。このようにしてハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を作製した。
【0078】
このハードコート層形成材料の全量を1とした場合、ハードコート層形成材料中の良溶媒(CPN)の含有比(質量比)は、0.33であった。
このハードコート層形成材料中に含まれる紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーは、様々な分子量のウレタンアクリレートの集合物である。その紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーの全量を1とした場合、低分子量成分(分子量800以下の紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマー)の含有比(質量比)は、0.482であった。
【0079】
表1は、各実施例及び各比較例で使用したハードコート層形成材料の組成、及び、各実施例及び各比較例の塗膜の厚みの一覧表である。表1のaは、低分子量成分の含有比を表し、表1のbは、良溶媒(CPN)の含有比を表す。表1のtは、塗膜の厚み(μm)を表す。
【0080】
【表1】
【0081】
前記ハードコート層形成材料を、透明なトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム(株)製、製品名「TD80UL」。厚み80μm。屈折率1.49)上に、ダイコータを用いて塗工して塗膜を形成した。ハードコート層形成材料は、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように、厚み13.8μmに塗工した。すなわち、溶媒がフィルムに浸透しないと仮定した場合に、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように塗工した。
【0082】
前記塗膜を、80℃で2分間乾燥した。その後、前記塗膜に、高圧水銀ランプを用いて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射することにより、樹脂モノマーを重合させた。このようにしてトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を作製した。
このハードコート層の固有の屈折率は、1.53であった。
得られたハードコートフィルムについて、上記[界面などの測定方法]、[干渉縞の観察方法]、[密着性試験]及び[表面硬度試験]により、界面の存在や屈折率の変化などを測定した。その結果を表2に示す。
これらの測定を行った後、次に示す反射防止層を形成した。
【0083】
前記ハードコート層の表面全体に、下記に示す反射防止層の形成材料を、ダイコーターを用いて均一に塗布した。その塗膜を90℃で2分間加熱し、紫外線照射を行って硬化させることにより、ハードコート層の表面全体に厚み0.1μmの反射防止層を形成した。この反射防止層の屈折率は、1.38であった。
反射防止層の形成材料は、低屈折材料(JSR(株)製、商品名「JUA204」。固形分濃度9.5%)に、混合溶剤(MIBK:TBA=50:50)を加えて希釈し、固形分濃度2.0%に調整したものである。前記低屈折材料は、エチレン性不飽和基を有するフッ素化合物と、アクリレートと、重合開始剤と、有効成分に対して約50%の中空ナノシリカと、を含む紫外線硬化型樹脂である。
【0084】
反射防止層を形成した後の前記ハードコートフィルムについて、上記[反射率の測定方法]及び[干渉縞の観察方法]に準じて、反射防止層の表面の反射率及び反射防止層の表面から見た干渉縞を観察した。その結果を表2に示す。
【0085】
[実施例2]
CPNに代えて、CPNとプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PM」と記す)の混合溶媒(CPN:PM(質量比)=4:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例2で使用したハードコート層形成材料中の低分子量成分の含有比及び良溶媒の含有比、並びに塗膜の厚みは、表1の通りである。以下の各実施例及び各比較例のこれらの含有比などについても、表1の通りである。
【0086】
[実施例3]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=1:4)を用いたこと、及び、樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0087】
[実施例4]
樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DPH」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0088】
[実施例5]
樹脂溶液として、上記樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比7:3の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0089】
[比較例1]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=3:2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0090】
[比較例2]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)= 2:3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0091】
[比較例3]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=1:4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0092】
[比較例4]
CPNに代えて、PMのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
ただし、比較例4においては、透明フィルムとハードコート層の密着性が悪かったので(密着性試験の結果を参照)、硬度試験を行わなかった。
【0093】
[比較例5]
CPNに代えて、PMのみを用いたこと、及び、樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0094】
[比較例6]
樹脂溶液として、多官能ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
ただし、比較例6においては、透明フィルムとハードコート層の密着性が悪かったので(密着性試験の結果を参照)、硬度試験を行わなかった。
【0095】
[比較例7]
樹脂溶液として、上記樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比9:1の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0096】
[比較例8]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=2:3)を用いたこと、及び、樹脂溶液として、上記樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比9:1の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0097】
[比較例9]
CPNに代えて、CPNとイソプロピルアルコールの混合溶媒(CPN:IPA(質量比)=3:2)を用いたこと、及び、ハードコート層形成材料中の固形分濃度が36%となるようにその混合溶媒を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0098】
[比較例10]
CPNに代えて、CPNとイソプロピルアルコールの混合溶媒(CPN:IPA(質量比)=4:1)を用いたこと、及び、ハードコート層形成材料中の固形分濃度が40%となるようにその混合溶媒を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0099】
【表2】
【0100】
表2のFTTピーク1及びFTTピーク2は、反射スペクトルの強度のピークを表す。表2の膜厚は、強度のピークが認められる部分の、ハードコート層の表面からの距離を表す。
また、図3及び図4は、実施例1及び2の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図5〜図10は、比較例1〜6の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図11は、比較例9の反射スペクトルの測定結果のグラフを示す。
【0101】
前記反射スペクトルの測定結果から、強度のピークが出た部分に界面が存在していると言える。また、ピークの強度の値が小さい場合、そのピークに対応した界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していると言える。一方、ピークの強度の値が大きい場合、屈折率の変化が大きく(屈折率が急激に変化しており)、屈折率の変化が連続的でないと言える。
具体的には、表2のFFTピーク2について、比較例4(透明フィルムが殆ど膨潤していない形態)の強度55の半分以下である実施例1〜5は、界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していることが分かる。
【0102】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、実施例1〜5の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚6.5μm前後からハードコート層側に、透明フィルムを形成する成分が次第に減少していることが分かる。さらに、実施例1〜5は、膜厚6.5前後に強度15前後のFFTピークがあり、これ以外の部分にFFTピークが無かった。このため、実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の間に1つの界面が存在し且つその界面以外には界面が存在していないことが分かる。
【0103】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例1、2、5、7及び8の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚4.3μm〜5.6μm及び膜厚6.4μm〜6.9μmにそれぞれ界面が存在し(つまり、2つの部分に界面が存在し)且つその2つの界面近傍の屈折率が変化していることが分かる。
図12は、これらの各ハードコートフィルムを模式的に示した参考断面図である。
【0104】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例3、4及び6の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚5.7μm〜6μmに1つの界面が存在していることが分かる。ただし、これらのハードコートフィルムは、ピークの強度が大きい(38〜55)ことから、屈折率が急激に変化していることが分かる。
図13は、これらの各ハードコートフィルムを模式的に示した参考断面図である。
【0105】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例9及び10の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚0.8μm〜1.2μm及び膜厚7.3μm〜7.9μmにそれぞれ界面が存在している(つまり、大きく離れた2つの部分に界面が存在している)ことが分かる。
【0106】
実施例1〜2及び比較例1〜4、9のハードコートフィルムの断面写真を、図15の(a)〜(g)にそれぞれ示す。写真中の矢印は、界面を指す。
【0107】
[評価]
以上の結果から、透明フィルムとハードコート層の間に界面が存在し、且つ界面からハードコート層に向かって屈折率が厚み方向に連続的に変化している実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、表面硬度及び密着性に優れ且つ干渉縞が生じにくかった。
また、反射防止層を形成した後の、実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、干渉縞は生じなかった。一方、比較例1〜10の各ハードコートフィルムは、反射防止層を形成すると干渉縞が顕著に発生した。
【0108】
さらに、実施例1〜5及び比較例1〜14の対比から、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを得るためには、ハードコート層形成材料中の良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比が重要であることが分かった。
図16は、各実施例及び各比較例1〜14でそれぞれ用いたハードコート層形成材料の、塗膜の厚みを加味した上での良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比をプロットしたグラフ図である。このグラフ図の縦軸は、良溶媒の含有比(b)と塗膜の厚み(t)の積(Y)であり、横軸は、低分子量成分の含有比(a)と塗膜の厚み(t)の積(X)である。Y=b×t。X=a×t。これらX及びYの計算値を、表1に明記している。
【0109】
前記bは、ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の良溶媒の含有比(質量比)を表し、前記aは、ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の全量を1とした場合の低分子量成分の含有比(質量比)を表す。
グラフ図中、丸点は実施例1〜5で、三角点は比較例1、2、5及び7、X点は比較例3、4、6及び8で、四角点は比較例9及び10で、それぞれ用いられたハードコート層形成材料におけるX及びYの点である。
【0110】
図16のグラフ図から明らかなように、2つの曲線1,2で挟まれた範囲のハードコート層形成材料を用いることにより、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを形成できる。
このグラフ図に基づいて、曲線1及び曲線2を求めると、概ね、曲線1;Y=−4.274ln(X)+11.311、及び、曲線2;Y=−4.949ln(X)+15.474となる。
従って、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たすハードコート層形成材料を用いることにより、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のハードコートフィルムは、光学フィルム、画像表示装置、光学レンズ、計器類などの構成部材として利用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 ハードコートフィルム
2 透明フィルム
3 ハードコート層
3a ハードコート層の表面
5 界面
6 反射防止層
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、それを有する偏光板及び画像表示装置、並びに、ハードコートフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置の画面やタッチパネルのような部材の傷付きや光反射を防止するために、これらの部材にハードコートフィルムが設けられる場合がある。
前記ハードコートフィルムは、透明フィルムと、その透明フィルムの上に設けられたハードコート層と、を有する。前記ハードコート層は、通常、熱硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂のような電離放射線硬化型樹脂などを含むハードコート層形成材料を2〜10μm程度に製膜した薄い塗膜から構成されている。
従来のハードコートフィルムにおいては、透明フィルムとハードコート層の間に屈折率差が存在する。このため、ハードコート層の表面に僅かな凹凸があると、干渉縞を生じるという問題点がある。なお、干渉縞は、ハードコート層の表面などに蛍光灯などの三波長光源からの光が当たり、それが反射することに起因する、縞模様の外観である。このような干渉縞は、ハードコートフィルムの表面の視認性を低下させる原因となる。
【0003】
前記干渉縞の発生を防止するために、ハードコート層形成材料によって透明フィルムの表面を膨潤させることにより、ハードコート層と透明フィルムの界面を消失させ、前記界面付近の屈折率を連続的に変化させたハードコートフィルムが知られている(特許文献1及び2)。
また、干渉縞の発生を防止するために、透明フィルムとハードコート層の間に光学調整層を設けることによって、透明フィルムとハードコート層の界面を無くしたハードコートフィルムが知られている(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、上記従来のハードコートフィルムは、干渉縞の発生を十分に防止し得ない。さらに、特許文献3のハードコートフィルムにおいては、その製造時に、光学調整層を設ける工程が更に必要となる。
一方、ハードコートフィルムにおいては、傷付き防止目的のためハードコート層が高硬度であることが必要である上、ハードコート層と透明フィルムが十分に密着していることも必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263082号公報
【特許文献2】特開2003−131007号公報
【特許文献3】WO2006/098363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、干渉縞の発生をより抑制でき、更に、高硬度で且つ密着性に優れたハードコートフィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、前記ハードコートフィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することである。
本発明の他の目的は、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記特許文献1及び2のハードコートフィルムにあっては、透明フィルムとハードコート層とを区画する界面に起因する、干渉縞を抑制できると考えられる。
しかしながら、かかるハードコートフィルムは、全体として見れば、干渉縞が依然生じている。
この原因として、本発明者らは、前記透明フィルムとハードコート層とを区画する界面以外に、新たな別の界面が存在していることが原因である推察した。具体的には、特許文献1及び2のハードコートフィルムは、硬化型樹脂と溶媒を含むハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工し且つ塗膜を硬化させることによって得られる。この溶媒が透明フィルムの表面を膨潤させるので、透明フィルムを形成する成分が前記塗膜中に溶出する。そして、前記塗膜中に拡散し且つ浸透した、前記透明フィルムを形成する成分が、前記新たな別の界面を生じさせる原因と推察される。この新たな別の界面の存在により、従来のハードコートフィルムは、現実的には干渉縞の発生を十分に抑制できない。特に、ハードコート層の厚みが小さい場合に、前記別の界面に起因する干渉縞が生じやすい。この干渉縞は、ハードコート層の表面に反射防止層が設けられたときに、外観上、特に顕著に視認される。
このような知見の下、本発明者らは、以下の手段により、本発明の課題を解決した。
【0008】
本発明の第1のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している。
【0009】
本発明の第2のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0010】
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の厚みが3μm〜15μmである。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0011】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。
この偏光板は、上記ハードコートフィルムを有する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
この画像表示装置は、上記ハードコートフィルムを有する。
【0013】
本発明の別の局面によれば、ハードコートフィルムの製造方法が提供される。
本発明のハードコートフィルムの製造方法は、分子量800以下の低分子量成分を含む硬化型化合物と透明フィルムに対する良溶媒を含む溶媒とを含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工して所定厚みの塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を硬化させて前記透明フィルム上にハードコート層を形成する硬化工程と、を有し、前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒並びに前記塗膜の厚みが、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たす。ただし、前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表し、前記aは、前記硬化型化合物の全量を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表し、前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表し、前記tは、前記塗膜の厚みμmを表す。
【0014】
本発明のハードコートフィルムの好ましい製造方法は、前記aが、0.3を超え1以下であり、前記bが、0.05以上0.5以下である。
【0015】
本発明のハードコートフィルムの好ましい製造方法は、前記低分子量成分が、紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、傷付き難く、さらに、干渉縞の発生をより抑制できる。さらに、本発明のハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の密着性にも優れているので、耐久性にも優れている。
かかるハードコートフィルムを有する偏光板及び画像表示装置は、耐傷性、耐久性、及び視認性に優れている。
本発明の製造方法によれば、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを簡易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のハードコートフィルムの1つの実施形態を示す断面図。
【図2】図2は、本発明のハードコートフィルムの他の実施形態を示す断面図。
【図3】図3の(a)及び(b)は、実施例1の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図4】図4の(a)及び(b)は、実施例2の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図5】図5の(a)及び(b)は、比較例1の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図6】図6の(a)及び(b)は、比較例2の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図7】図7の(a)及び(b)は、比較例3の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図8】図8の(a)及び(b)は、比較例4の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図9】図9の(a)及び(b)は、比較例5の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図10】図10の(a)及び(b)は、比較例6の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図11】図11の(a)及び(b)は、比較例9の反射スペクトルの測定結果を示すグラフ図。
【図12】図12は、比較例1、2、5、7及び8の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図13】図13は、比較例3、4及び6の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図14】図14は、比較例9及び10の各ハードコートフィルムを模式的に示す参考断面図。
【図15】図15の(a)〜(g)は、実施例1〜2及び比較例1〜4、9の各ハードコートフィルムの断面写真図。
【図16】実施例1〜5及び比較例1〜10で使用した各ハードコート層形成材料の、良溶媒の含有比×膜厚及び低分子量成分の含有比×膜厚をプロットしたグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<ハードコートフィルム>
図1は、本発明の1つの実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
ただし、各図に示すハードコートフィルム、透明フィルム、及びハードコート層のそれぞれの厚みや長さは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0019】
図1に於いて、1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。
【0020】
図2に於いて、もう1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、前記ハードコート層3の上に設けられた反射防止層6と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。なお、図2のハードコートフィルム1は、反射防止層6が設けられていることを除いて、図1のハードコートフィルム1と同様である。そのため、図2には、図1と同様の部材に対して図1と同じ符号を付している。
【0021】
前記界面5は、反射スペクトルの解析によって検出できる。前記界面5からハードコート層3の厚み方向中途部までの領域31において、その厚み方向に屈折率が連続的に変化している。以下、界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域を、第1領域と記す場合がある。なお、前記ハードコート層3の厚み方向中途部は、前記界面5とハードコート層3の表面3aとの間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。
この第1領域31における屈折率の連続的な変化は、透明フィルムを形成する成分がハードコート層3の表面3aに向かって減少していることによって実現されている。
本明細書において、ハードコート層の表面とは、透明フィルムに積層されたハードコート層の積層面(界面)とは反対側の面を指す。
【0022】
具体的には、ハードコートフィルム1は、所定形状(例えば、平面視長方形状など)に形成されている。ハードコートフィルム1の厚みは特に限定されず、例えば、20μm〜1000μmであり、好ましくは20μm〜500μmである。
前記透明フィルム2の固有の屈折率と前記ハードコート層3の固有の屈折率は、異なっている。透明フィルム2の固有の屈折率は、ハードコート層3の固有の屈折率よりも小さくてもよいし、或いは、大きくてもよい。例えば、透明フィルム2の固有の屈折率は、ハードコート層3の固有の屈折率よりも小さい。
【0023】
透明フィルム2の固有の屈折率とは、透明フィルム単独(ハードコート層が設けられていない状態の透明フィルム)に対して測定された屈折率をいう。ハードコート層3の固有の屈折率とは、ハードコート層単独の屈折率(ハードコート層を形成する成分が本来有する屈折率)をいう。
【0024】
前記透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は特に限定されず、干渉縞の発生を防止するためには、両者の屈折率の差が零であることが理論上望ましい。もっとも、透明フィルム2の屈折率とハードコート層3の屈折率が同じ値となる材料を選択することは現実的には困難である。本発明のハードコートフィルム1は、第1領域31において屈折率が厚み方向に連続的に変化し且つこの第1領域31中に界面を有しない(なお、第1領域31と後述する領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない)構造であるため、干渉縞の発生を抑制できる。このため、本発明においては、前記屈折率の差がある程度大きい透明フィルム2とハードコート層3を用いることも可能である。具体的には、透明フィルム2とハードコート層3の固有の屈折率の差は、例えば、0〜0.20であり、好ましくは、0.01〜0.10である。前記両者の固有の屈折率の差は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分(ハードコート層内に含まれる透明フィルムを形成する成分を除く)との屈折率の差である。
なお、本発明において、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、第1領域31(さらには第2領域)によって低減されている。
前記屈折率は、JIS K 7142に準じて測定できる。
【0025】
本発明において、前記界面5は、構造上、ハードコート層3と透明フィルム4とを区画する面である。この界面5は、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面である。この界面5は、ハードコートフィルム1の厚み方向において、1つだけ存在している。つまり、ハードコートフィルム1は、前記1つの界面5を除いて、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面が存在しない。換言すると、ハードコート層3中及び透明フィルム2中には、それぞれ反射スペクトルの解析によって検出できる界面が存在しない。
前記界面5は、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて検出可能である。具体的な方法は、下記実施例の[界面などの測定方法]に従って行うことできる。
【0026】
前記第1領域31における屈折率は、ハードコートフィルム1の厚み方向において連続的に変化している。
例えば、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも小さい場合には、好ましくは、前記第1領域31における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に大きくなっている。つまり、前記界面5を基準にして、その界面5からハードコート層3の表面3a側に向かうに従って、ハードコート層3の固有の屈折率に徐々に近づくように、屈折率が連続的に変化している。
一方、透明フィルム2の固有の屈折率がハードコート層3の固有の屈折率よりも大きい場合には、好ましくは、前記第1領域31における屈折率は、ハードコート層3の表面3a側に向かうに従って徐々に小さくなっている。
【0027】
なお、図1に示すハードコートフィルム1おいては、ハードコート層3が透明フィルム1の片面に設けられているが、ハードコート層が透明フィルムの両面に設けられていてもよい(図示せず)。
【0028】
前記第1領域31は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在した混在領域である。
以下、透明フィルムを形成する成分を、「フィルム成分」と、ハードコート層を形成する成分を、「ハードコート成分」とそれぞれ略記する場合がある。
前記第1領域31中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層3の表面3aに向かうに従って減少している。この第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3は密着性に優れている。従って、前記ハードコートフィルム1を長期間使用しても、透明フィルム2とハードコート層3が剥がれにくい。本発明のハードコートフィルム1は、耐久性に優れている。また、第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、低減されている。従って、本発明のハードコートフィルム1は、透明フィルム2とハードコート層3との間の界面5に起因する干渉縞も抑制されている。
第1領域31とハードコート層3の表面3aの間の領域32は、実質的にハードコート成分からなる。このハードコート層3の表面側に前記領域32を有することにより、高硬度のハードコート層3を構成できる。ただし、前記領域32中には、前記フィルム成分が僅かに含まれていることもある。前記第1領域31と領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない。すなわち、ハードコート層3において、第1領域31と領域32とは、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を生じることなく繋がっている。
【0029】
透明フィルム2中には、ハードコート成分が含まれていてもよいし、又は、ハードコート成分が含まれていなくてもよい。透明フィルム2にハードコート成分が含まれている場合、それは、前記界面5から透明フィルム2の厚み方向中途部までの領域に含まれる。以下、界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域を、第2領域と記す場合がある。なお、前記透明フィルム2の厚み方向中途部は、前記界面5と透明フィルム2の裏面との間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。
前記第2領域は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在した混在領域である。前記第2領域中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層3の表面3aに向かうに従って徐々に減少している。ただし、第2領域の厚みは、前記第1領域31の厚みよりも小さい。
【0030】
界面5付近においては、フィルム成分とハードコート成分の混在比が一定である、又は、フィルム成分が厚み方向に向かって僅かに減少している。
【0031】
(透明フィルムについて)
透明フィルムは、少なくとも可視光の光線透過率に優れ、透明性に優れるものであれば特に限定されない。前記透明フィルムの可視光に於ける光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ただし、光線透過率は、フィルム厚100μmで、分光光度計(日立製作所製、製品名「U−4100型」)で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。
前記透明フィルムのヘイズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。ただし、前記ヘイズ値は、JIS−K7105に準じて測定された値をいう。
【0032】
前記透明フィルムとしては、透明ポリマーを製膜したプラスチックフィルムなどが挙げられる。前記透明ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;カーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、芳香族環を有するアクリル樹脂、ラクトン変性アクリル樹脂などのアクリル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状構造又はノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;これらを混合したブレンドポリマー;などが挙げられる。好ましくは、透明フィルムとして、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーを含む形成材料を製膜したフィルム、又は、アクリル系樹脂フィルムが用いられ、より好ましくは、前記セルロース系ポリマーフィルムが用いられる。
【0033】
本発明のハードコートフィルムは、後述するように、偏光板などの光学フィルムに積層接着することにより、ハードコート積層体の態様で使用できる。上記透明フィルムとして、例えば、偏光子を用いることにより、偏光子に直接ハードコート層が設けられたハードコート偏光板(偏光機能を有するハードコートフィルム)を構成できる。同様に、上記透明フィルムとして、例えば、位相差板を用いることにより、位相差板に直接ハードコート層が設けられたハードコート位相差板(光学補償機能を有するハードコートフィルム)を構成できる。また、上記透明フィルムとして、例えば、保護フィルムを用いることにより、保護フィルムに直接ハードコート層が設けられたハードコート保護フィルム(保護フィルムを兼用するハードコートフィルム)を構成できる。かかるハードコート保護フィルムは、偏光子の片面又は両面に積層することにより、ハードコート偏光板を構成することができる。この場合、前記ハードコート保護フィルムに使用する透明フィルムとしては、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状構造又はノルボルネン構造を有するオレフィン系ポリマーなどを主成分とするフィルムを用いることが好ましい。
【0034】
透明フィルムの厚みは、適宜に設定される。強度、取り扱い性などの作業性、薄層性などの点から、透明フィルムの厚みは、通常、10μm〜500μm程度であり、好ましくは20μm〜300μmであり、より好ましくは30μm〜200μmである。
透明フィルムの固有の屈折率は、特に制限されず、通常、1.30〜1.80、好ましくは1.40〜1.70である。
透明フィルムは、その用途に応じて適宜な位相差値を有するフィルムが用いられ得る。
【0035】
(ハードコート層について)
このハードコート層は、鉛筆硬度試験でH以上の硬度を有する層である。
ただし、前記硬度は、JIS K 5400の鉛筆硬度試験に準じて測定された値をいう。
ハードコート層の厚みは、特に限定されず、通常、1μm〜30μm、好ましくは2μm〜20μmであり、より好ましくは3μm〜15μmである。
一般に、硬度3H以上の高硬度のハードコート層を形成しようとする場合には、その厚みを15μmを超える厚みに設計することがある。厚みが15μmを超えるハードコート層は、干渉縞の発生が抑制される傾向にある。このため、15μm以下の厚みを有するハードコート層を形成する場合、本発明の構造を採用することによって、干渉縞の抑制効果が顕在化する。特に、硬度2Hのハードコート層は、その厚みを3μm〜15μmとすることにより、本発明の干渉縞の抑制効果が顕著に認められる。
【0036】
ハードコート層は、溶媒と硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を、上記透明フィルム上に塗工し且つ硬化させることによって得られた薄い膜から形成されている。好ましくは、前記溶媒は、透明フィルムに対する良溶媒を含み、前記硬化型化合物は、分子量800以下の化合物を含む。
本明細書において、良溶媒とは、透明フィルムを溶解する機能を有する溶媒をいい、貧溶媒とは、透明フィルムを溶解する機能を有さない溶媒をいう。
本明細書において、硬化型化合物のうちで分子量800以下の化合物を、「分子量800以下の低分子量成分」、又は、単に「低分子量成分」と記す。
【0037】
本発明では、硬化型化合物及び透明フィルムを溶解することができる溶媒が用いられる。
溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチル等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタノン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
【0038】
例えば、透明フィルムがトリアセチルセルロースフィルムである場合、それに対する良溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、 酢酸エチル、酢酸メチルなどが挙げられる。透明フィルムがトリアセチルセルロースフィルムである場合、それに対する貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。
例えば、透明フィルムがアクリル系フィルムである場合、それに対する良溶媒としては、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが挙げられる。透明フィルムがアクリル系フィルムである場合、それに対する貧溶媒としては、イソプロピルアルコール、ブタノール、エタノールなどのアルコール類、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
好ましくは、溶媒として、良溶媒単独、又は、良溶媒と貧溶媒を混合した混合溶媒が用いられる。良溶媒と貧溶媒は、透明フィルムの材質に応じて適宜選択できる。
【0039】
ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工したときに、溶媒が透明フィルム内に浸透していく一方で、溶媒の浸透によってフィルム成分(例えば、トリアセチルセルロースなどの透明フィルムを形成するポリマーなど)が溶出し且つ拡散していく。これによって、透明フィルム上に、フィルム成分とハードコート成分(硬化型化合物など)が混在した混在領域が生じる。ハードコート成分の硬化に伴い、前記混在領域において、フィルム成分が、反射スペクトルの解析によって検出可能な1つの界面を残しつつ、透明フィルムから離れる方向に減少した領域を生じる。1つの界面を残しつつフィルム成分が厚み方向に減少した構造を有する上記第1領域は、新たに別の界面を有さない。よって、本発明のハードコート層は、反射スペクトルの解析によって検出可能な1つの界面を残しつつ、第1領域における屈折率が連続的に変化するものと推定される。なお、前記浸透と拡散は、溶媒の蒸発速度も関係すると思われる。
【0040】
特に、良溶媒を含む溶媒は、透明フィルムに浸透し、それを膨潤させてフィルム成分を生じさせ易い。また、低分子量成分を含む硬化型化合物は、その低分子量成分がフィルム成分中に混じり易いと共に、フィルム成分が拡散し易い。このため、良溶媒を含む溶媒と低分子量成分を含む硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を用いると、フィルム成分が、透明フィルムとハードコート層の間の界面を残しつつ透明フィルムとハードコート層との屈折率差を低減し且つその界面以外の界面を生じさせないで、ハードコート層の表面に向かって減少していく。かかるハードコートフィルムは、干渉縞の発生を抑制できる。
【0041】
上記溶媒は、ハードコート層形成材料を透明フィルムに塗工したときに、溶媒が透明フィルム内に浸透していく浸透速度、及び、フィルム成分がハードコート層形成材料中に拡散していく拡散速度、並びに溶媒の乾燥条件を考慮して適宜選択することが好ましい。
例えば、前記浸透速度は、前記フィルム成分(例えば、トリアセチルセルロースなどの透明フィルムを形成するポリマーなど)に対する良溶媒(及び貧溶媒)の量などに影響を受ける。前記拡散速度は、前記ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の分子量、透明フィルム中の成分の分子量及び透明フィルム中の可塑剤の量などに影響を受ける。特に、ハードコート層形成材料中の良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比などを適切な範囲にすることが重要である。
【0042】
前記硬化型化合物は、十分な強度及び透明性を有する膜を形成できるものであれば特に制限なく使用できる。前記硬化型化合物としては、例えば、熱により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマー、電離放射線により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマーなどが挙げられる。加工性の良さ及び透明フィルムに熱損傷を与え難いなどの点から、電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーを用いることが好ましい。
【0043】
前記熱により硬化する樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのモノマー又はオリゴマーが挙げられる。前記熱により硬化する樹脂には、熱によって溶媒を揮発させることにより硬化する樹脂も含まれる。
【0044】
前記電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、通常、紫外線又は電子線で硬化する硬化型化合物が挙げられる。前記電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーとしては、分子中に(メタ)アクリレート基(「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又は/及びメタクリレートを意味する)、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合基又はエポキシ基等を有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。なお、前記オリゴマーは、プレポリマーを含む。
【0045】
前記オリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシなどが挙げられる。前記モノマーの具体例としては、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。
ハードコート層を形成する硬化型化合物の分子量は特に限定されないが、例えば、200〜10000の範囲内などが挙げられる。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーには、通常、光重合開始剤が添加される。前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他のチオキサント系化合物などが挙げられる。
【0047】
また、前記ハードコート層を形成するための組成物には、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、フッ素系又はシリコーン系などのレベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤などが挙げられる。
【0048】
(反射防止層)
反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられる。本発明のハードコートフィルムは、前記反射防止層が設けられていてもよいし、又は設けられていなくてもよい。
反射防止層を設けることにより、ハードコート層の表面における光の反射を更に低減できる。
前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることによって反射防止機能を発揮する。一般に、ハードコート層の表面に低反射処理を行うと(すなわち、反射防止層を形成すると)、ハードコート層の表面に干渉縞が目立ち易くなる。この点、本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層に反射防止層を設けた場合に見られる、干渉縞の発生をも効果的に抑制できる。従って、本発明は、低反射処理を行うハードコートフィルムとしても有効である。
【0049】
反射防止層の形成材料としては、無機微粒子が混合された樹脂などが挙げられる。樹脂としては、上記ハードコート層の硬化型化合物と同様なものを用いることができる。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、ガラス微粒子、フッ化マグネシウムなどが挙げられる。無機微粒子の粒径は、好ましくは2nm〜80nmであり、より好ましくは5nm〜50nmである。
反射防止層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01μm〜1μm程度である。
【0050】
<ハードコート層の製造方法>
本発明のハードコートフィルムは、溶媒と硬化型化合物とを含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工し、前記ハードコート層形成材料を硬化させることによって得られる。
【0051】
(塗膜形成工程)
透明フィルムは、上記に例示したものを適宜用いることができる。
好ましくは、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー製の透明フィルムが用いられる。
ハードコート層形成材料は、上記に例示した溶媒及び硬化型化合物を、適宜混合することにより調製できる。
【0052】
溶媒は、透明フィルムに対する良溶媒を含んでいることが好ましく、透明フィルムに対する良溶媒と貧溶媒の双方を含むことがより好ましい。
溶媒が良溶媒と貧溶媒を含む場合、その混合比は特に限定されないが、好ましくは良溶媒:貧溶媒の含有比(質量比)が、1:9〜99:1である。
硬化型化合物は、分子量800以下の低分子量成分を含んでいることが好ましい。硬化型化合物が分子量800以下の低分子量成分以外の成分を含む場合には、その成分は、通常、分子量800を超える化合物(高分子量成分)である。
例えば、シクロペンタノンを含む溶媒と、アクリレート基及びメタクリレート基の少なくとも何れか一方の基を有する低分子量成分を含む硬化型化合物と、を含むハードコート層形成材料が用いられる。
【0053】
前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒は、塗膜の厚みを加味して、下記式1及び式2の関係を満たしていることが好ましい。
式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311
式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474
【0054】
前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表す。前記aは、前記硬化型化合物の全量(質量換算)を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表す。つまり、a=ハードコート層形成材料中の低分子量成分の質量/ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の質量、である。
前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量(質量換算)を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表す。つまり、b=ハードコート層形成材料中の良溶媒の質量/ハードコート層形成材料の質量、である。
前記tは、前記塗膜の厚み(単位μm)を表す。
式1及び式2の「ln」は、自然対数を表す。
【0055】
前記式1及び2を同時に満たすハードコート層形成材料を用いてハードコート層を形成することにより、本発明のハードコートフィルム、すなわち、透明フィルムとハードコート層の間に反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、第1領域において屈折率が厚み方向に連続的に変化し、且つ前記第1領域中に反射スペクトルの解析による界面を有しない、ハードコートフィルムが得られる。
これは、良溶媒を含む溶媒と低分子量成分を含む硬化型化合物の、透明フィルムに対する浸透作用及び拡散作用に起因すると推定される。
良溶媒の量及び低分子量成分の量がそれぞれ多すぎる又は少なすぎても、干渉縞が抑制されたハードコートフィルムを得ることができない。本発明者らは、良溶媒の量及び低分子量成分の量がハードコートフィルムの干渉縞の発生に大きな影響を与える可能性があるという推察の下、鋭意研究し、前記式1及び式2の関係を満たすハードコート層形成材料を用いることを見出した。かかるハードコート層形成材料を用いることにより、透明フィルムとハードコート層との間の界面に起因する干渉縞の発生だけでなく、ハードコート層内に内在するフィルム成分に起因する干渉縞の発生までも抑制されたハードコートフィルムを得ることができる。このような点は、本発明者らが初めて見出した事項である。
【0056】
前記a(低分子量成分の含有比)は、0.3を超え1以下であることが好ましく、0.4以上1未満であることがより好ましい。前記b(良溶媒の含有比)は、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下がより好ましい。
【0057】
前記ハードコート層形成材料中の固形分(硬化型化合物及び添加剤)の割合は、特に限定されないが、好ましくは30質量%〜70質量%であり、より好ましくは35質量%〜60質量%であり、特に好ましくは40質量%〜60質量%である。
溶媒の含有量が余りに少ないと、透明フィルムの溶解が不十分となり、一方、溶媒の含有量が余りに多いと、透明フィルムに溶媒が浸透し過ぎて透明フィルムが曇ったり、或いは、2つ以上の界面を生じるおそれがある。
【0058】
前記ハードコート層形成材料の粘度(25℃)は、好ましくは1〜700MPa・sであり、より好ましくは2〜500MPa・sである。
ハードコート層形成材料は、コンマコーター、ダイコーター等のコーターを用いて透明フィルム上に塗工できる。また、ハードコート層形成材料は、キャスティングやスピンコートなどの方式によって透明フィルム上に塗工することもできる。
透明フィルムが長尺状である場合には、コーターを用いてハードコート層形成材料を塗工することが好ましい。ロールに巻かれた長尺状の透明フィルムを引き出し、それを製造ラインの長手方向に送りながら、その途中でハードコート層形成材料を透明フィルムに塗工してハードコート層を形成する。ハードコート層が形成された透明フィルムは、再度ロールに巻き取られる。このようなロールからロールに巻き取る方式であれば、ハードコート層を透明フィルムに連続的に形成でき、生産性に優れている。
【0059】
ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工することによって、透明フィルム上に塗膜を形成できる。
前記塗膜の厚みは、形成されるハードコート層の厚みを考慮して適宜設定される。前記塗膜の厚みは、形成されるハードコート層の厚みよりも大きく、例えば、1μm〜100μmであり、好ましくは4μm〜40μmである。例えば、長尺状の透明フィルムにコーターを用いてハードコート層形成材料を塗工する場合、前記塗膜の厚みは、ハードコート層形成材料の吐出量及び前記透明フィルムの送り速度により調整される。
【0060】
(硬化工程)
ハードコート層形成材料を塗工した後、塗膜を硬化させる前に(低分子量成分を含む硬化型化合物を重合させる前に)、塗膜を乾燥する(すなわち、溶媒を揮発させる)ことが好ましい。塗膜を乾燥している間に、溶媒を透明フィルム中に浸透させるためである。
乾燥温度は特に限定されず、例えば、30℃〜100℃が挙げられる。乾燥時間は、透明フィルム及び溶媒の種類、塗膜の厚みなどに応じて適宜設定されるが、通常、30秒〜5分である。
【0061】
乾燥後、塗膜を硬化させる。
硬化型化合物が電離放射線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーの場合には、その種類に応じたエネルギー線を塗膜に照射することにより、塗膜が硬化する。エネルギー線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素の線源などが挙げられる。エネルギー線の照射量は、硬化型化合物及び光重合開始剤の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、紫外線波長365nmでの積算光量で、50〜5,000mJ/cm2程度が挙げられる。
【0062】
上述のように、ハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工すると、良溶媒が透明フィルムを膨潤させることにより、低分子量成分を前記透明フィルム中に浸透させ且つフィルム成分を塗膜中に拡散させることができる。これにより、前記低分子量成分と前記フィルム成分が混在する混在領域を透明フィルムとハードコート層との界面上(ハードコート層内)に生じさせ、その混在領域の厚み方向中途部に反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記フィルム成分を塗膜の表面に向かって減少させることができる。この塗膜を硬化させると、ハードコート層内に反射スペクトルの解析による界面をもたない、本発明のハードコートフィルムが得られる。
【0063】
(反射防止層形成工程)
反射防止層形成工程は、ハードコート層の表面に、反射防止層を形成する工程である。
この工程は、必要に応じて行われる。
反射防止層の形成材料としては、上記例示したものを用いることができる。
反射防止層の形成材料をハードコート層の表面に塗工し、その材料を乾燥又は硬化させることにより、透明フィルムとハードコート層と反射防止層とがこの順で積層されたハードコートフィルムが得られ得る。
【0064】
<ハードコートフィルムの用途>
ハードコートフィルムは、擦傷を防止したい部分に設けるための部材として使用できる。代表的には、ハードコートフィルムは、液晶表示装置などの画像表示装置の画面の保護部材、タッチパネルの表面保護部材、計器類のカバー部材、光学レンズ等として使用できる。ハードコートフィルムを画像表示装置に使用する場合、ハードコートフィルムは、それ単独で画像表示装置の画面に貼付されるか、或いは、前記画面に組み込まれた光学フィルムに貼付される。また、ハードコートフィルムは、各種光学フィルムに積層することにより、ハードコート積層体の態様で画像表示装置に組み込まれる。本発明のハードコートフィルムは、特に液晶表示装置などのディスプレイの前面に用いられるクリアハードコートフィルムとして有用である。
【0065】
ハードコートフィルムを積層する光学フィルムとしては、偏光子、位相差板、輝度向上フィルム及びこれらの積層体;偏光子に保護フィルムが積層された偏光板;偏光子に保護フィルム及び位相差板が積層された楕円偏光板などが挙げられる。
偏光板の偏光子としては、例えば、二色性色素で染色された親水性ポリマーフィルムが挙げられる。
前記ハードコートフィルムと光学フィルムは、通常、公知の粘着剤又は接着剤を介して接着される。前記粘着剤又は接着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ゴム系ポリマーなどのベースポリマーとする粘着剤又は接着剤が挙げられる。
【0066】
本発明のハードコートフィルムを組み込んだ画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(ELD)、ブラウン管テレビなどが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
なお、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0068】
<試験方法>
[分子量の測定方法]
使用した紫外線硬化型樹脂モノマーを0.1%THF溶液に調製し、室温で1日放置した。その後、その溶液を0.45μmメンブランフィルターにてろ過した。そのろ液について、東ソー株式会社製の高速GPC(製品名「HLC−8120GPC」)を用いてGPC測定を行うことにより、前記紫外線硬化型樹脂モノマーの分子量を測定した。
(測定条件)
カラム:東ソー株式会社製、G4000HXL +G2000HXL +G1000HXL
カラム温度:40℃
溶離液:THF
流速:0.8mL/min
注入量:100μL
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
【0069】
[屈折率の測定方法]
屈折率は、JIS K 7142に準拠して、アッベ屈折率計(ATAGO社製、製品名「DR−A1」)を用いて測定した。
【0070】
[界面などの測定方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムについて、界面の存在及び屈折率の変化を確認するため、下記測定方法に従って反射スペクトルを測定した。
各ハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このハードコートフィルムのハードコート層の表面の反射スペクトルを、下記の条件下で、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて測定した。
【0071】
(測定条件)
リファレンス:AL
アルゴリズム:FFT法
計算波長:450nm〜950nm
屈折率:ハードコート層1.53、透明フィルム1.49
(検出器条件)
露光時間:20ms
ランプゲイン:ノーマル
積算回数:1回
(FFT法)
検出膜厚値の範囲:0.5μm〜12.0μm
データ個数:212
膜厚分解能:24nm
ベル関数:有り
【0072】
[干渉縞の観察方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。暗室中において、三波長光源を用いて、このハードコートフィルムの表面の干渉縞を観察した。
干渉縞の観察の結果は、下記の基準に従って区別した。
AA:殆ど干渉縞が視認されなかった。
A:僅かに干渉縞が視認された。
B:干渉縞が視認された。
C:明確に干渉縞が視認された。
【0073】
[密着性試験]
JIS K 5600に準じた碁盤目剥離試験により、透明フィルムとハードコート層の密着性を測定した。
【0074】
[表面硬度試験]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムを、厚み約20μmの粘着剤を介して、ガラス板上に粘着剤にて貼り付け、JIS K 5400の鉛筆硬度試験に準じて(但し、荷重500g)、鉛筆硬度を測定した。
【0075】
[反射率の測定方法]
各ハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このハードコートフィルムの反射防止層の表面の反射率を、分光光度計((株)日立製作所製、製品名「U−4000])を用いて測定した。反射率は、前記分光光度計を用いて分光反射率(鏡面反射率及び拡散反射率)を測定し、C光源/2度視野の反射率(視感反射率Y値)を計算によって求めた。
【0076】
[フィルム断面の観察]
ハードコートフィルムの両面をエポキシ樹脂によって保護した。そのフィルム断面を観察するために、超薄切片法により作製した試験片を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製作所製、製品名「H−7650」)を用いて、加速電圧100kVにて観察し、TEM写真を撮影した。
【0077】
[実施例1]
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」。固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE906」)を5部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」) を0.03部添加した。その後、前記溶液中の固形分濃度が75%となるように、前記溶液に酢酸ブチルを加えた。さらに、前記溶液中の固形分濃度が50%となるように、前記溶液にシクロペンタノン(以下、「CPN」と記す)を加えた。このようにしてハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を作製した。
【0078】
このハードコート層形成材料の全量を1とした場合、ハードコート層形成材料中の良溶媒(CPN)の含有比(質量比)は、0.33であった。
このハードコート層形成材料中に含まれる紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーは、様々な分子量のウレタンアクリレートの集合物である。その紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーの全量を1とした場合、低分子量成分(分子量800以下の紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマー)の含有比(質量比)は、0.482であった。
【0079】
表1は、各実施例及び各比較例で使用したハードコート層形成材料の組成、及び、各実施例及び各比較例の塗膜の厚みの一覧表である。表1のaは、低分子量成分の含有比を表し、表1のbは、良溶媒(CPN)の含有比を表す。表1のtは、塗膜の厚み(μm)を表す。
【0080】
【表1】
【0081】
前記ハードコート層形成材料を、透明なトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム(株)製、製品名「TD80UL」。厚み80μm。屈折率1.49)上に、ダイコータを用いて塗工して塗膜を形成した。ハードコート層形成材料は、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように、厚み13.8μmに塗工した。すなわち、溶媒がフィルムに浸透しないと仮定した場合に、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように塗工した。
【0082】
前記塗膜を、80℃で2分間乾燥した。その後、前記塗膜に、高圧水銀ランプを用いて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射することにより、樹脂モノマーを重合させた。このようにしてトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を作製した。
このハードコート層の固有の屈折率は、1.53であった。
得られたハードコートフィルムについて、上記[界面などの測定方法]、[干渉縞の観察方法]、[密着性試験]及び[表面硬度試験]により、界面の存在や屈折率の変化などを測定した。その結果を表2に示す。
これらの測定を行った後、次に示す反射防止層を形成した。
【0083】
前記ハードコート層の表面全体に、下記に示す反射防止層の形成材料を、ダイコーターを用いて均一に塗布した。その塗膜を90℃で2分間加熱し、紫外線照射を行って硬化させることにより、ハードコート層の表面全体に厚み0.1μmの反射防止層を形成した。この反射防止層の屈折率は、1.38であった。
反射防止層の形成材料は、低屈折材料(JSR(株)製、商品名「JUA204」。固形分濃度9.5%)に、混合溶剤(MIBK:TBA=50:50)を加えて希釈し、固形分濃度2.0%に調整したものである。前記低屈折材料は、エチレン性不飽和基を有するフッ素化合物と、アクリレートと、重合開始剤と、有効成分に対して約50%の中空ナノシリカと、を含む紫外線硬化型樹脂である。
【0084】
反射防止層を形成した後の前記ハードコートフィルムについて、上記[反射率の測定方法]及び[干渉縞の観察方法]に準じて、反射防止層の表面の反射率及び反射防止層の表面から見た干渉縞を観察した。その結果を表2に示す。
【0085】
[実施例2]
CPNに代えて、CPNとプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PM」と記す)の混合溶媒(CPN:PM(質量比)=4:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例2で使用したハードコート層形成材料中の低分子量成分の含有比及び良溶媒の含有比、並びに塗膜の厚みは、表1の通りである。以下の各実施例及び各比較例のこれらの含有比などについても、表1の通りである。
【0086】
[実施例3]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=1:4)を用いたこと、及び、樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0087】
[実施例4]
樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(新中村化学工業株式会社製、商品名「A−DPH」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0088】
[実施例5]
樹脂溶液として、上記樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比7:3の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0089】
[比較例1]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=3:2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0090】
[比較例2]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)= 2:3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0091】
[比較例3]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=1:4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0092】
[比較例4]
CPNに代えて、PMのみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
ただし、比較例4においては、透明フィルムとハードコート層の密着性が悪かったので(密着性試験の結果を参照)、硬度試験を行わなかった。
【0093】
[比較例5]
CPNに代えて、PMのみを用いたこと、及び、樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0094】
[比較例6]
樹脂溶液として、多官能ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
ただし、比較例6においては、透明フィルムとハードコート層の密着性が悪かったので(密着性試験の結果を参照)、硬度試験を行わなかった。
【0095】
[比較例7]
樹脂溶液として、上記樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比9:1の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0096】
[比較例8]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=2:3)を用いたこと、及び、樹脂溶液として、上記樹脂溶液(日本合成化学工業株式会社製、商品名「UV7610B」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比9:1の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0097】
[比較例9]
CPNに代えて、CPNとイソプロピルアルコールの混合溶媒(CPN:IPA(質量比)=3:2)を用いたこと、及び、ハードコート層形成材料中の固形分濃度が36%となるようにその混合溶媒を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0098】
[比較例10]
CPNに代えて、CPNとイソプロピルアルコールの混合溶媒(CPN:IPA(質量比)=4:1)を用いたこと、及び、ハードコート層形成材料中の固形分濃度が40%となるようにその混合溶媒を加えたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0099】
【表2】
【0100】
表2のFTTピーク1及びFTTピーク2は、反射スペクトルの強度のピークを表す。表2の膜厚は、強度のピークが認められる部分の、ハードコート層の表面からの距離を表す。
また、図3及び図4は、実施例1及び2の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図5〜図10は、比較例1〜6の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図11は、比較例9の反射スペクトルの測定結果のグラフを示す。
【0101】
前記反射スペクトルの測定結果から、強度のピークが出た部分に界面が存在していると言える。また、ピークの強度の値が小さい場合、そのピークに対応した界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していると言える。一方、ピークの強度の値が大きい場合、屈折率の変化が大きく(屈折率が急激に変化しており)、屈折率の変化が連続的でないと言える。
具体的には、表2のFFTピーク2について、比較例4(透明フィルムが殆ど膨潤していない形態)の強度55の半分以下である実施例1〜5は、界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していることが分かる。
【0102】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、実施例1〜5の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚6.5μm前後からハードコート層側に、透明フィルムを形成する成分が次第に減少していることが分かる。さらに、実施例1〜5は、膜厚6.5前後に強度15前後のFFTピークがあり、これ以外の部分にFFTピークが無かった。このため、実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の間に1つの界面が存在し且つその界面以外には界面が存在していないことが分かる。
【0103】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例1、2、5、7及び8の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚4.3μm〜5.6μm及び膜厚6.4μm〜6.9μmにそれぞれ界面が存在し(つまり、2つの部分に界面が存在し)且つその2つの界面近傍の屈折率が変化していることが分かる。
図12は、これらの各ハードコートフィルムを模式的に示した参考断面図である。
【0104】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例3、4及び6の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚5.7μm〜6μmに1つの界面が存在していることが分かる。ただし、これらのハードコートフィルムは、ピークの強度が大きい(38〜55)ことから、屈折率が急激に変化していることが分かる。
図13は、これらの各ハードコートフィルムを模式的に示した参考断面図である。
【0105】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、比較例9及び10の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚0.8μm〜1.2μm及び膜厚7.3μm〜7.9μmにそれぞれ界面が存在している(つまり、大きく離れた2つの部分に界面が存在している)ことが分かる。
【0106】
実施例1〜2及び比較例1〜4、9のハードコートフィルムの断面写真を、図15の(a)〜(g)にそれぞれ示す。写真中の矢印は、界面を指す。
【0107】
[評価]
以上の結果から、透明フィルムとハードコート層の間に界面が存在し、且つ界面からハードコート層に向かって屈折率が厚み方向に連続的に変化している実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、表面硬度及び密着性に優れ且つ干渉縞が生じにくかった。
また、反射防止層を形成した後の、実施例1〜5の各ハードコートフィルムは、干渉縞は生じなかった。一方、比較例1〜10の各ハードコートフィルムは、反射防止層を形成すると干渉縞が顕著に発生した。
【0108】
さらに、実施例1〜5及び比較例1〜14の対比から、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを得るためには、ハードコート層形成材料中の良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比が重要であることが分かった。
図16は、各実施例及び各比較例1〜14でそれぞれ用いたハードコート層形成材料の、塗膜の厚みを加味した上での良溶媒の含有比と低分子量成分の含有比をプロットしたグラフ図である。このグラフ図の縦軸は、良溶媒の含有比(b)と塗膜の厚み(t)の積(Y)であり、横軸は、低分子量成分の含有比(a)と塗膜の厚み(t)の積(X)である。Y=b×t。X=a×t。これらX及びYの計算値を、表1に明記している。
【0109】
前記bは、ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の良溶媒の含有比(質量比)を表し、前記aは、ハードコート層形成材料中の硬化型化合物の全量を1とした場合の低分子量成分の含有比(質量比)を表す。
グラフ図中、丸点は実施例1〜5で、三角点は比較例1、2、5及び7、X点は比較例3、4、6及び8で、四角点は比較例9及び10で、それぞれ用いられたハードコート層形成材料におけるX及びYの点である。
【0110】
図16のグラフ図から明らかなように、2つの曲線1,2で挟まれた範囲のハードコート層形成材料を用いることにより、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを形成できる。
このグラフ図に基づいて、曲線1及び曲線2を求めると、概ね、曲線1;Y=−4.274ln(X)+11.311、及び、曲線2;Y=−4.949ln(X)+15.474となる。
従って、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たすハードコート層形成材料を用いることにより、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のハードコートフィルムは、光学フィルム、画像表示装置、光学レンズ、計器類などの構成部材として利用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 ハードコートフィルム
2 透明フィルム
3 ハードコート層
3a ハードコート層の表面
5 界面
6 反射防止層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している、
ハードコートフィルム。
【請求項2】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚みが3μm〜15μmである、請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている、請求項1〜3の何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、請求項1〜4の何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに一項に記載のハードコートフィルムを有する偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一項に記載のハードコートフィルムを有する画像表示装置。
【請求項8】
分子量800以下の低分子量成分を含む硬化型化合物と、透明フィルムに対する良溶媒を含む溶媒と、を含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工して所定厚みの塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を硬化させて前記透明フィルム上にハードコート層を形成する硬化工程と、を有し、
前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒並びに前記塗膜の厚みが、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たし、前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表し、前記aは、前記硬化型化合物の全量を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表し、前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表し、前記tは、前記塗膜の厚みμmを表す、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記aが、0.3を超え1以下であり、前記bが、0.05以上0.5以下である、請求項8に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記低分子量成分が、紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーである、請求項8又は9に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項1】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している、
ハードコートフィルム。
【請求項2】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚みが3μm〜15μmである、請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている、請求項1〜3の何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、請求項1〜4の何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに一項に記載のハードコートフィルムを有する偏光板。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか一項に記載のハードコートフィルムを有する画像表示装置。
【請求項8】
分子量800以下の低分子量成分を含む硬化型化合物と、透明フィルムに対する良溶媒を含む溶媒と、を含むハードコート層形成材料を、透明フィルム上に塗工して所定厚みの塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を硬化させて前記透明フィルム上にハードコート層を形成する硬化工程と、を有し、
前記ハードコート層形成材料に含まれる低分子量成分及び良溶媒並びに前記塗膜の厚みが、式1;Y≧−4.274ln(X)+11.311、及び、式2;Y≦−4.949ln(X)+15.474の関係を満たし、前記Yは、b×tを表し、前記Xは、a×tを表し、前記aは、前記硬化型化合物の全量を1とした場合の前記低分子量成分の含有比を表し、前記bは、前記ハードコート層形成材料の全量を1とした場合の前記良溶媒の含有比を表し、前記tは、前記塗膜の厚みμmを表す、ハードコートフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記aが、0.3を超え1以下であり、前記bが、0.05以上0.5以下である、請求項8に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記低分子量成分が、紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーである、請求項8又は9に記載のハードコートフィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図15】
【公開番号】特開2011−237789(P2011−237789A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88843(P2011−88843)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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