説明

ハードディスクを備えた情報処理装置及びハードディスクの障害予防プログラム

【課題】ハードディスクのATI現象による障害発生を未然に防止する。
【解決手段】ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取る。また、ハードディスクのファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成する。次いで、この一時ファイルに任意のデータをハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込む。次いで、ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで一時ファイルにデータを書き込んだ後、一時ファイルをハードディスクから削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶媒体としてハードディスクを搭載してなる情報処理装置及びこの情報処理装置に実装され、前記ハードディスクの障害発生を予防するハードディスク障害予防プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記憶媒体としてハードディスクを搭載してなる情報処理装置は広く活用されている。このハードディスクは、図5に示すように、磁性体を塗布または蒸着した金属のディスク、いわゆるプラッタ1を一定の間隔で複数枚重ね合わせた構造を有しており、この構造をシリンダ2と称している。ファイル等のデータは、プラッタ1上に同心円状に分割されて記録される。この同心円をトラック3と称する。また、1つのトラック3を細分化した区画をセクタ4と称する。セクタ4は、ハードディスクにおける最小の記録単位である。
【0003】
このような構造のハードディスクには、ATI(Adjacent Track Interference)現象と呼ばれる劣化現象があることが知られている。ATI現象は、頻繁に書込み処理が行われる任意のセクタ4と書込み処理が全く行われないセクタ4とが隣接していた場合、その書込み処理が全く行われないセクタ4が徐々に劣化するという現象である。劣化が進行すると、やがてそのセクタ4に対する読取処理が全くできなくなる。
【0004】
図6は、ハードディスクにATI現象が発生している様子をトラック単位で示す模式図である。同図において、符号S11〜S16は、同一トラック3-1内の連続するセクタ4を示している。同様に、符号S21〜S26は、前記トラック3-1に隣接するトラック3-2内の連続するセクタ4を示しており、符号S31〜S36は、前記トラック3-2に隣接するトラック3-3内の連続するセクタ4を示している。また、同図において、斜線の領域5は、ATI現象によりデータを読取り難くなっている領域を示している。
【0005】
すなわち図6においては、トラック3-1のセクタS12,S13,S14,S15と、トラック3-3のセクタS32,S33,S34,E35に書込み処理が多数回行われているのに対し、その間のトラック3-2のセクタS22,S23,S24,S25には、書込み処理が全く行われていない状態を示しており、書込みが全く行なわれていないセクタS22,S23,S24,S25内でデータを読取り難くなっている領域5が広がっていることがわかる。
【0006】
このようにデータを読取り難くなっている領域5が広がっているセクタS22,S23,S24,S25に対して読取処理を行おうとすると、読取のリトライ回数が増加して読取処理に時間がかかる。また、劣化がさらに進行して領域5がさらに広がった場合には、所定回数のリトライを行っても読取処理を行なうことができず、読取処理に失敗して読取エラーとなる。
【0007】
因みに、POS(Point Of Sales)端末等の情報処理装置に搭載されているハードディスクは、当該情報処理装置に実装されているアプリケーションソフトウェア等により同じセクタに対して書込み処理が頻繁に行なわれ、それに隣接するセクタに対しては書込み処理が全く行われないということが起こり得る。この場合、書込み処理が全く行われないセクタは徐々に劣化し、遂には読取処理が全くできなくなる。この状態で、何らかの必要性によりこの劣化したセクタに以前に記録されていたデータを読取るアプリケーションソフトウェアが起動して読取処理が発生した場合には読取エラーとなり、アプリケーションを実行できなくなるという問題があった。
【0008】
そこで従来、ハードディスクのATI現象等により読取エラーが発生するのを未然に防止するために、あるセクタ4のデータを読取る際に所定回数以上のリトライを行なって漸く読取処理に成功した場合には当該セクタを不良候補セクタと認識し、この不良候補セクタから読取ったデータを別の代替セクタに移動して、以後、この不良候補セクタを使用しないようにする情報処理装置があった。このような情報処理装置であれば、ハードディスク内に読取性能の劣化が始まった不良候補セクタが発生しても、以後、この不良候補セクタは使用されないので、ハードディスクの読取エラーが発生し難くなる(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
なお、ハードディスクに対する自己診断機能として、S.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis And Reporting Technology)機能があることは既に知られている。ユーザは、このS.M.A.R.T.機能により、代替セクタに移動されたセクタ数を取得することができる。
【特許文献1】特開2001−006273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、不良候補セクタのデータを代替セクタに移動して不良候補セクタを使用しないようにする従来の情報処理装置においては、所定回数以上のリトライによりデータを読取ることができたセクタを不良候補セクタとする。このため、劣化がさらに進行して読取不能となったセクタが発生した場合には、そのセクタのデータを読取ることができないために代替セクタへの移行ができず、読取エラーになるという点で改良の余地があった。
【0011】
本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、ハードディスクのATI現象等による障害発生を未然に防止し、ハードディスクを備えた情報処理装置の安定性,信頼性を高めようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の情報処理装置は、記憶媒体としてハードディスクを搭載してなるものであって、ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取るデータ読取手段と、ハードディスクのファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成する一時ファイル作成手段と、この一時ファイル作成手段により作成された一時ファイルに任意のデータをハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込むデータ書込み手段と、ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで一時ファイルにデータを書き込んだ後、一時ファイルをハードディスクから削除する一時ファイル削除手段とを備えたものである。
【0013】
本発明のハードディスク障害予防プログラムは、記憶媒体としてハードディスクを搭載してなる情報処理装置に、ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取るデータ読取手順と、ハードディスクのファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成する一時ファイル作成手順と、この一時ファイル作成手順により作成された一時ファイルに任意のデータをハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込むデータ書込み手順と、ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで一時ファイルにデータを書き込んだ後、一時ファイルをハードディスクから削除する一時ファイル削除手順とを実行させるものである。
【発明の効果】
【0014】
かかる手段を講じたことにより、ハードディスクのATI現象等による障害発生を未然に防止することができ、ハードディスクを備えた情報処理装置の安定性,信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
はじめに、ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取るとともに、ハードディスクのファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成し、この一時ファイルに任意のデータをハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込み、ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで一時ファイルにデータを書き込んだ後、一時ファイルをハードディスクから削除するようにした第1の実施の形態について説明する。
【0016】
図1はハードディスクを備えた情報処理装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。本実施形態の情報処理装置は、制御部本体としてCPU(Central Processing Unit)11を搭載している。また、主記憶部を構成するROM(Read Only Memory)12及びRAM(Random Access Memory)13、現在日時を計時する時計部14、外部装置とのデータ通信を制御する通信インターフェイス15、キーボード,マウス等の入力部16、ディスプレイ装置等の表示部17等とともに、ハードディスクとして第1のHDD(Hard Disk Drive)装置18と第2のHDD装置19とを搭載している。
【0017】
第1及び第2のHDD装置18,19は、情報処理装置に内蔵されていてもよいし、USBインターフェイス等を介して外付けされていてもよい。
【0018】
さて、本実施の形態においては、ハードディスクのATI現象による障害発生を予防するためのハードディスク障害予防プログラム20を、第1のHDD装置18で記憶保持している。そして、予め設定された周期で定期的に上記ハードディスク障害予防プログラム20を起動するようにプログラミングされている。
【0019】
なお、この周期は、第1及び第2のHDD装置18,19において、ATI現象により書込みが全く行なわれないセクタが劣化し始めるのに要する期間よりも短い周期に設定されている。また、夜間等のように情報処理装置本来の業務時間以外の時間に起動するように設定されている。
【0020】
上記ハードディスク障害予防プログラム20が起動すると、CPU11は、図2の流れ図に示す手順の処理を実行する。先ず、CPU11は、ST(ステップ)1として未処理のHDD装置があるか否かを判断する。すなわち、第1のHDD装置18及び第2のHDD装置19の双方に対して、上記ハードディスク障害予防プログラム20の処理を実行したか否かを判断する。当初は実行していないので、ST2に進む。
【0021】
ST2では、未処理のHDD装置をサーチして当該HDD装置に保存されているファイル(テキストファイル,バイナリーファイル等)のリストを作成する。本実施の形態では、第1及び第2のHDD装置18,19がいずれも未処理の場合には、先ず、第1のHDD装置18を選択し、このHDD装置に保存されているファイルのリストを作成する。
【0022】
次に、CPU11は、ST3としてリスト上の全てのファイルに対して後述するST4〜ST6の処理を実行したか否かを判断する。当初は各ファイルに対してST4〜ST6の処理を実行していないので、ST4に進む。
【0023】
ST4では、未処理HDD装置のファイルリストの先頭から順番にファイルを選択し、その選択したファイルをオープンする。そして、ファイルをオープンする毎に、ST5としてこのオープンされたファイル内のデータを全て読取処理する(データ読取手段)。ファイル内の全てのデータの読取処理を完了したならば、ST6としてこのファイルをクローズする。このとき、このファイルを処理済ファイルとして管理する。
【0024】
こうして、ファイルリストの全てのファイルに対して上記ST4〜ST6の処理を実行し、処理済ファイルとして管理されたならば(ST3のYES)、CPU11は、ST7としてこの未処理HDD装置の前記ファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイル、例えばテキストファイルを一時ファイルとして作成する(一時ファイル作成手段)。
【0025】
次に、CPU11は、ST8としてこの作成した一時ファイルの先頭領域から順番に任意のデータ、例えば「0xFF」を書込み処理する。そして、データを書き込む毎に、ST9としてこの未処理HDD装置の記憶容量がフル状態になったか否か、すなわち、この未処理HDD装置の空き容量がゼロになったか否かを判断する。空き容量がゼロになっていない場合には、ST8に戻って、さらに任意のデータを一時ファイルに書込み処理する。
【0026】
こうして、CPU11は、未処理HDD装置の空き容量がゼロになるまで、一時ファイルに任意のデータを書き込む処理を繰り返し実行する(データ書込み手段)。そして、未処理HDD装置の空き容量がゼロになったことを確認したならば(ST9のYES)、CPU11は、ST10として未処理HDD装置に作成した一時ファイルを削除する(一時ファイル削除手段)。
【0027】
その後、CPU11は、ST1に戻り、他に未処理のHDD装置がある場合には、そのHDD装置に対してST2〜ST10の処理を再度実行する。そして、未処理のHDD装置がないことを確認したならば(ST1のNO)、CPU11は、このハードディスク障害予防プログラム20に関する処理を終了する。
【0028】
このように本実施の形態の情報処理装置においては、予め設定された周期で定期的にハードディスク障害予防プログラム20が起動する。これにより、第1のHDD装置18及び第2のHDD装置19にそれぞれ記憶されている全てのファイルのデータの読取処理が実行される。ここで、ハードディスク障害予防プログラム20が起動する周期は、第1及び第2のHDD装置18,19において、ATI現象により書込みが全く行なわれないセクタが劣化し始めるのに要する期間よりも短い周期に設定されている。したがって、仮にATI現象による劣化が早まって読取処理に数回のリトライを要する不良候補セクタが発生したとしても、この不良候補セクタからデータを読み出せなくなるほど劣化が進行することはない。そして、この不良候補セクタのデータは、今回の読取処理によって代替セクタに移動されるので、以後、この不良候補セクタに起因して読取エラーが発生することはない。
【0029】
しかも、本実施の形態においては、第1及び第2のHDD装置18,19において、ファイルが書き込まれていない空エリアに対しては一時ファイルを作成し、この一時ファイルに任意のデータを第1及び第2のHDD装置18,19の空き容量がゼロになるまで書込み処理を行う。そして、空き容量がゼロになったならば、この一時ファイルを第1及び第2のHDD装置18,19から削除するようにしている。
【0030】
したがって、データが記録されていないセクタがATI現象により劣化し始めても、このセクタに対して任意のデータが一時的に書き込まれるので、このセクタは書込み処理によって良好な状態に戻る。よって、空エリアのセクタに対してATI現象による劣化が進んで読取り不能となるおそれもない。
【0031】
このように本実施の形態によれば、ハードディスクのATI現象により読取りエラーとなる障害が発生するのを高い信頼性を持って未然に防ぐことができる。その結果、ハードディスクを備えた情報処理装置の安定性及び信頼性を向上させることができる効果を奏する。
【0032】
次に、前記第1の実施の形態の機能に加えて、ハードディスクのS.M.A.R.T.機能で報告される代替セクタ数に基づいてハードディスクの故障予測を行い、故障のおそれがあると判断されると警告を発する本発明の第2の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と共通する部分には同一符号を付し、その詳しい説明については省略する。
【0033】
図3はハードディスクを備えた情報処理装置の第2の実施の形態を示すブロック図である。このブロック図が図1に示した第1の実施の形態と異なる点は、第1のHDD装置18及び第2のHDD装置19がそれぞれ代替セクタとして確保している予備セクタの総数(以下予備セクタ数と称する)P1,P2と、実際に代替セクタとして使用されている予備セクタの数(以下、代替セクタ数と称する)B1,B2とをそれぞれ記憶する領域を、第1のHDD装置18及び第2のHDD装置19がそれぞれ有している点である。
【0034】
HDD装置18,19は、ATI現象等により読取エラーが発生するのを未然に防止するために、あるセクタのデータを読取る際に所定回数以上のリトライを行なって漸く読取処理に成功した場合には当該セクタを不良候補セクタと認識し、この不良候補セクタから読取ったデータを別の代替セクタに移動して、以後、この不良候補セクタを使用しないようになっている。ここで、HDD装置18,19には、予め所望の数のセクタが予備セクタとして定義されており、その予備セクタ数P1,P2が領域31,33に予め記憶されている。また、HDD装置18,19に対する自己診断機能として、S.M.A.R.T.機能がある。このS.M.A.R.T.機能により、代替セクタ数B1,B2を取得可能であり、取得された代替セクタ数B1,B2が領域32,34に記憶される。
【0035】
図4は、第2の実施の形態において、ハードディスク障害予防プログラム20が起動したときのCPU11の主要な処理手順を示す流れ図である。すなわち、この処理手順において、第1の実施の形態と異なる部分は、ST1にて未処理のHDD装置がないと判断された後の処理である。つまり、第1の実施の形態では、未処理のHDD装置がないと判断された時点で、ハードディスク障害予防プログラム20に関する処理を終了したが、第2の実施の形態では、ST11〜ST14の処理を実行後、この処理を終了する。
【0036】
ST11では、各HDD装置18,19の代替セクタ数B1,B2を、各HDD装置18,19の領域32,34から取得する。すなわち、ST4〜ST6のファイルデータ読取処理において不良候補セクタが検出されると、この不良候補セクタのデータが代替セクタに移動される。このときの代替セクタ数がS.M.A.R.T.機能により取得され、領域32,34に記憶されているので、CPU11は、ST11として領域32,34のデータを読取ることにより、各HDD装置18,19の代替セクタ数B1,B2を取得する。
【0037】
ST12では、各HDD装置18,19の予備セクタ数P1,P2を、各HDD装置18,19の領域31,33から取得する。前述したように、HDD装置18,19には、予め所望の数のセクタが予備セクタとして定義されており、その予備セクタ数P1,P2が領域31,33に予め記憶されている。そこで、CPU11は、ST12として領域31,33のデータを読取ることにより、各HDD装置18,19の予備セクタ数P1,P2を取得する。
【0038】
ST13では、HDD装置18,19毎に、予備セクタ数P1,P2に対する代替セクタ数B1,B2の比率[B1/P1],[B2/P2]を求める。そして、これら比率[B/P],[B2/P2]の少なくとも一方が設定値Xを超えたか否かを判断する。すなわち、予備セクタ数P1,P2は有限であり、予備セクタを代替セクタとして使い果たした場合には、不良候補セクタのデータを代替セクタに移動することができず、結果として読み取りエラーとなる。そこで、CPU11は、ST13として予備セクタ数P1,P2に対する代替セクタ数B1,B2の比率[B1/P1],[B2/P2]が設定値X以上であるか否かを判断することによって、ハードディスクの故障予測を行なう(診断手段)。
【0039】
ST13において、比率[B/P],[B2/P2]の少なくとも一方が設定値Xを超えた場合にST14の処理が実行される。比率[B/P],[B2/P2]のいずれもが設定値Xを超えていない場合には、ST14の処理は省略される。
【0040】
ST14では、HDD装置に故障のおそれがあることをユーザに知らせる警告メッセージ(例えば「ハードディスクを交換してください」等)を表示部17に表示する。すなわち、比率[B/P],[B2/P2]が設定値Xを超えた場合には、そのHDD装置18,19は代替セクタとして使用可能な予備セクタの残数が所定量以下であり、このままでは予備セクタを使い果たして読み取りエラーとなるおそれがあるので、CPU11は、ST14としてHDD装置に故障のおそれがある旨の警告を発する(警告手段)。
【0041】
なお、警告手段は警告メッセージの表示手段に限定されるものではなく、例えば警告ブザー音を伴うようにしてもよい。
【0042】
このように構成された第2の実施の形態においても、予め設定された周期で第1のHDD装置18及び第2のHDD装置19にそれぞれ記憶されている全てのファイルのデータの読取処理が実行され、それによって不良候補セクタのデータが代替セクタに移動されるので、不良候補セクタに起因する読取エラーを未然に防止することができる。
【0043】
また、データが記録されていないセクタがATI現象により劣化し始めても、このセクタに対して任意のデータが一時的に書き込まれるので、このセクタは書込み処理によって良好な状態に戻る。よって、空エリアのセクタに対してATI現象による劣化が進んで読取り不能となるおそれもない。
【0044】
しかも、S.M.A.R.T.機能で報告される代替セクタ数B1,B2に基づいてHDD装置18,19の故障予測が行なわれ、故障のおそれがあると判断されると警告が発せられるので、HDD装置18,19が故障する前に交換するなどの対策を容易にとることができる。その結果、HDD装置の故障によるシステム障害も未然に防ぐことができる。
【0045】
なお、この発明は前記第1及び第2の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0046】
例えば前記各実施の形態では、ハードディスク障害予防プログラム20を一定の周期で自動的に起動する場合を示したが、情報処理装置のユーザが必要に応じて手動でハードディスク障害予防プログラム20を起動してもよいものである。
【0047】
また、前記各実施の形態では、一時ファイルに対するデータ書込み処理を、HDD装置の空き容量がゼロになるまで行ったが、必ずしもゼロになるまで行わなくてもよく、ゼロに近い規定値以下になるまで行うようにして処理時間の短縮を図っても、ハードディスクのATI現象による障害発生を未然に防止するという効果は充分に奏するものである。
【0048】
また、前記各実施の形態では、ハードディスク障害予防プログラム20に従ったCPU11の主要な処理手順として、先にファイルデータの読取処理(ST3〜ST6)を行い、後から空エリアへのデータ書込み処理(ST7〜ST10)を行なったが、この手順は逆であってもよい。
【0049】
また、前記第2の実施の形態では、予備セクタ数P1,P2に対する代替セクタ数B1,B2の比率[B1/P1],[B2/P2]が設定値X以上であるか否かを判断することによって、ハードディスクの故障予測を行ったが、故障予測の方法はこれに限定されるものではない。例えば、予備セクタ数P1,P2から代替セクタ数B1,B2を減算して予備セクタ数P1,P2の残数を算出し、この残数を設定値と比較して、残数が設定値以上であるとき故障のおそれがあると診断してもよい。または、代替セクタ数B1,B2を設定値と比較し、代替セクタ数B1,B2が設定値以上のとき故障のおそれがあると診断することも可能である。
【0050】
また、前記各実施の形態では、2基のHDD装置18,19を搭載した情報処理装置に本発明を適用したが、1基のHDD装置を搭載した情報処理装置や3基以上のHDD装置を搭載した情報処理装置にも本発明を同様に適用できるのは言うまでもないことである。
【0051】
また、前記各実施の形態では、ハードディスク障害予防プログラム20を第1のHDD装置18で記憶保持するようにしたが、これに限定されるものではなく、第2のHDD装置19で記憶保持してもよい。または、ROM12に予め格納してもよい。また、ネットワークから情報処理装置にダウンロードしてもよいし、記録媒体に記憶させたものを情報処理装置にインストールするようにしてもよい。なお、記録媒体としては、CD−ROM等のようにプログラムを記憶でき、かつ情報処理装置が読取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であってもよい。
【0052】
この他、前記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施の形態である情報処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施の形態においてハードディスク障害予防プログラムに従ったCPUの主要な処理手順を示す流れ図。
【図3】本発明の第2の実施の形態である情報処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図4】同第2の実施の形態においてハードディスク障害予防プログラムに従ったCPUの主要な処理手順を示す流れ図。
【図5】一般的なハードディスクの構造を示す模式図。
【図6】ハードディスクにATI現象が発生している様子をトラック単位で示す模式図。
【符号の説明】
【0054】
1…プラッタ、2…シリンダ、3…トラック、4…セクタ、11…CPU、18,19…第1,第2のHDD装置、20…ハードディスク障害予防プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体としてハードディスクを搭載してなる情報処理装置において、
前記ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取るデータ読取手段と、
前記ハードディスクの前記ファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成する一時ファイル作成手段と、
この一時ファイル作成手段により作成された一時ファイルに任意のデータを前記ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込むデータ書込み手段と、
前記ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで前記一時ファイルにデータを書き込んだ後、前記一時ファイルを前記ハードディスクから削除する一時ファイル削除手段と、
を具備したことを特徴とするハードディスクを備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記データ書込み手段は、前記ハードディスクの空き容量がゼロになるまで前記一時ファイルにデータを書き込むことを特徴とする請求項1記載のハードディスクを備えた情報処理装置。
【請求項3】
前記データ読取手段によるデータ読取後に前記ハードディスクのS.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis And Reporting Technology)機能で報告される代替セクタ数に基づいて前記ハードディスクの故障予測を行う診断手段と、
この診断手段により前記ハードディスクに故障のおそれがあると判断されると警告を発する警告手段と、
をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のハードディスクを備えた情報処理装置。
【請求項4】
記憶媒体としてハードディスクを搭載してなる情報処理装置に、
前記ハードディスクに保存されている全てのファイルのデータを読取るデータ読取手順と、
前記ハードディスクの前記ファイルが保存されている領域以外の空き領域に対して一時的なファイルを作成する一時ファイル作成手順と、
この一時ファイル作成手順により作成された一時ファイルに任意のデータを前記ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで書き込むデータ書込み手順と、
前記ハードディスクの空き容量が規定値以下になるまで前記一時ファイルにデータを書き込んだ後、前記一時ファイルを前記ハードディスクから削除する一時ファイル削除手順と、
を実行させるためのハードディスク障害予防プログラム。
【請求項5】
前記データ書込み手順は、前記ハードディスクの空き容量がゼロになるまで前記一時ファイルにデータを書き込むものである請求項4記載のハードディスク障害予防プログラム。
【請求項6】
前記データ読取手順によるデータ読取後に前記ハードディスクのS.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis And Reporting Technology)機能で報告される代替セクタ数に基づいて前記ハードディスクの故障予測を行う診断手順と、
この診断手順により前記ハードディスクに故障のおそれがあると判断されると警告を発する警告手順と、
をさらに実行させるための請求項4記載のハードディスク障害予防プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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