ハードディスクドライブの製造方法及び製造システム
【課題】ハードディスクドライブ(HDD)のサーボトラック形成工程において、基準磁気ヘッドによるセルフサーボライトプロセスを用いた場合に生じる、磁気ヘッドの磁気特性ばらつきに起因した書き上がりサーボトラック数のばらつきによりHDDの品質・製造歩留りが低下する。
【解決手段】書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、重回帰分析等のモデル化手法を用いて、書き上がりサーボトラック数を予測する制御式を作成する制御式演算部811を有するモデル演算部810と、前記制御式から目標トラック数を得るセルフサーボライトの制御値である磁気ヘッドのオーバラップ量を決定するオーバラップ量演算部829を有する書込み制御データベース817とを有し、書き上がりサーボトラック数を高精度に制御する。
【解決手段】書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、重回帰分析等のモデル化手法を用いて、書き上がりサーボトラック数を予測する制御式を作成する制御式演算部811を有するモデル演算部810と、前記制御式から目標トラック数を得るセルフサーボライトの制御値である磁気ヘッドのオーバラップ量を決定するオーバラップ量演算部829を有する書込み制御データベース817とを有し、書き上がりサーボトラック数を高精度に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ自己書込み工程を含むハードディスクドライブの製造方法及び製造システムに係り、特にサーボトラック間隔の調整方法及びこれを実現する製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの基本的な構造を図1に示す。ハードディスクドライブは、ディスク101上のデータにアクセスするとき、アーム102を回転させてその先端にある磁気ヘッド103を目的のサーボトラック104上に動かす。アーム102はピボット軸105を中心に回転する構造で、後端にはアクチュエータ106という駆動機構がある。アクチュエータ106がアーム102を動かして、磁気ヘッド103を目標のサーボトラック104に固定する際には、磁気ヘッド103の位置を検知する必要があり、これにはサーボトラック上にあるサーボセクタが使われる。
【0003】
図2に示すサーボセクタは、アドレスコード201とバースト信号202からなり、ディスク101上に放射状に書かれている。アドレスコード201には、サーボトラック番号とサーボセクタ番号がグレイコードで記録されており、これにより磁気ヘッド103のディスク101上での位置を知ることが出来る。バースト信号202は、磁気ヘッド103の位置をサーボトラック104の中心に正確に制御する為に用いられる。図2に示す4thバーストという方式では、4つのパターンがそれぞれ対になっている構造を持ち、2つのバーストの境界をサーボトラック104として定義する。
【0004】
このサーボトラック104を書き込む方式には、自己書込み方式というハードディスクドライブを組み立てた後で、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドを用いてサーボトラックを書き込む特許文献1に示す方式がある。この特許文献1に記載の方式では、図3に示すように、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドによってディスクの半径方向に書き込まれた複数のサーボパターン301,302のリ−ド・バック信号303,304からオーバラップ量を測定し、次の書込み位置を調整することでサーボトラックの間隔309を制御している。このとき、サーボパターン301とサーボパターン302の間隔309は、下記式(1)に表せる。
TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW (1)
このとき、TWはサーボパターン301,302の間隔309、RWはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの片側三角形の辺307で示される読み取り幅、SQはリ−ド・バック信号304を台形に近似したときの短辺305で示されるスクイーズ量、aはリ−ド・バック信号304の中心306におけるサーボパターン301のリ−ドバック信号303の切片307、bはリ−ドバック信号304の中心306におけるサーボパターン302のリ−ドバック信号304の切片308である。ここで、a/bの値は、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量として定義される。
【0005】
しかし、この時、トラックピッチの計算に用いられるリ−ドバック信号303,304は、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッド103の記録素子で書き込んだ信号を、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッド103の再生素子を用いて測定した値である為、磁気ヘッド毎に異なる記録・再生素子の寸法の影響を受ける。その為、特許文献1の方式では、サーボトラックの間隔を絶対値で制御することが出来ず、最終的に書き上がるサーボトラックの間隔や半径方向の線形性はハードディスクドライブ毎に異なる。サーボトラックの間隔がハードディスクドライブ毎に異なった場合、磁気ヘッド毎に異なる素子寸法に起因する読み取り・書込み幅との組合せにおいて、読み取り不良が発生する可能性がある。
【0006】
これを対策する為に、特許文献2に記載の方式では、第1ステップでディスクの半径方向位置に第1のサーボトラックを書込み、第2ステップで第2のサーボトラックを書き込む方法を用いている。この方法では、第1のサーボトラックをもとに第2のサーボトラックを書くので、第1のサーボトラックの情報から、第2のサーボトラック書込み時に補正を行い、サーボトラックの間隔や半径方向の線形性を第2のサーボトラックの書込み時に補正することが可能である。しかし、この方法は二度の書込みを行う為、一度で書き込む方式に比べて2倍の製造時間がかかる。その為、磁気記録密度が向上しディスク内のサーボトラック数が増加している現状では、二度書込み方式は、一度で書き込む方式に比べて製造時間の増加がトラック数の二乗で発生する為、製造コストや設備投資が非常に巨額になる。
【0007】
そこで、二度書き方式を一度書きにする方法として、特許文献3に記載の方法がある。この方法では、磁気ヘッドの磁化幅を分類して、各分類に対して適切なサーボ信号の間隔を実験的に求めて、製造条件として与える。しかし、この方法は、磁気ヘッドを選別して組み立てる工程が必要であり、工程数の増加による製造コストの増加や磁気ヘッドを分類することによる磁気ヘッドの利用効率の低下が懸念される。また、トラック数の制御精度を上げる為に分類数を増やすと、磁気ヘッドの利用効率が更に低下し、磁気ヘッドの歩留りが低下するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特表平10−504128号公報
【特許文献2】特開2004−199863号公報
【特許文献3】特開2004−234823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サーボトラックの自己書込み方式において、書き込んだトラック間隔に起因する読み取り不良などの歩留り低下を最小にすることを目的に、最も不良率の低いトラック間隔を書込み前に特定することと、特定したトラック間隔になるべく近く書き上がるように自己書込み方式の製造条件をハードディスクドライブ毎に求めてサーボトラックを書き込むことを課題とする。このトラック間隔の制御においては、特許文献2記載の二度書き方式では製造時間が長大になり、特許文献3記載の分類方式では製造工数の増加と磁気ヘッドの歩留り低下を起こすことから製造コストが高価になる為、一度書きでかつ磁気ヘッドの分類を行わない方法である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的なハードディスクドライブの製造方法は、セルフサーボライトを実行してサーボトラックを書き込むステップを含むハードディスクドライブの製造方法において、前記サーボトラックを書き込むステップは、
書き上がりのサーボトラック間隔と後工程歩留りの関係から最も歩留りが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を、確率モデルを用いて求めるステップと、
ハードディスクドライブの組み立て前に測定された磁気ヘッドの特性値と自己書込み方式のサーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量から書き上がりのトラック間隔を予測する重回帰分析を用いて、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの特性値に対して求める制御式を作成するステップと、
サーボトラック書込み装置に投入されたハードディスクドライブに対して、サーボトラック間隔の制御目標値に書き上げる為のサーボパターンのオーバラップ量を、上記制御式を用いて個別に計算し、製造条件として装置にフィードバックするステップと、を有する。
【0011】
本発明の代表的なハードディスクドライブの製造システムは、
製造来歴に基づく、ハードディスクドライブの製品不良情報、書き上がりサーボトラックの間隔、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を収蔵する製造データベースと、
前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する制御式演算部と、前記製品不良情報と、書き上がりサーボトラックの間隔と、RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算して前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する確率モデル演算部と、を有するモデル演算部と、
前記モデル演算部から前記第2制御式を受信して収蔵し、前記製造データベースから前記磁気ヘッドの特性値を受信して収蔵し、サーボ自己書込み装置から現在搭載中のハードディスクドライブの製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号などの製品情報を受信し、前記製品情報に合う前記第2制御式を選択し、前記製品情報と選択された前記第2制御式に対応する前記磁気ヘッドの特性値を選択し、前記製品情報に対してサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する書込み制御データベースと、
前記計算されたサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いて現在搭載中のハードディスクドライブに対してサーボトラックを書き込むサーボ自己書込み装置と、を有する
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自己書込み方式によって書き上がるサーボトラックの間隔を製造歩留りに対して最適な値に制御することが可能になり、製造歩留りの大幅な向上が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例によるハードディスクドライブの製造方法及びそれを実現する製造システムについて、図面を用いて詳細に説明する。図8にハードディスクドライブ製造システムのブロック構成を示すが、その説明の前に、各構成要素について説明する。
【0014】
本実施例では、ハードディスクドライブに組み立てられる前に、磁気ヘッドの特性値を測定する検査工程を有する。この工程では、図4に示すように磁気ヘッドの記録素子で書きこんだパターンを磁気ヘッド再生素子の位置を変えながら測定した時の再生信号強度の分布であるリ−ドバック信号401を測定する。図4に、リ−ドバック信号401の模式図を示す。このとき、横軸の寸法は、物理的あるいは光学的な外部基準の測長器を用いて、絶対値として測定される。さらに、標準サンプルによる補正を行うことで、磁気ディスクの磁化特性による測定誤差を補正することができる。
【0015】
さらに、このリードバック信号401の形状を台形402に近似し、オーバラップ量の計算式(1)で用いた読み取り幅403とスクイーズ量404を測定する。このとき、スクイーズ量404は、リードバック信号の形状を台形に近似したときの最大の信号強度を1とし、0.5の信号強度における切片405で示される書込み幅406から読み取り幅403を引いた値として求めることが可能であることから、スクイーズ量の変わりに書込み幅406を測定してもよい。また、パターンの書込みと消去を組み合わせてサーボトラックを書き込む場合は、パターン消去後の残留信号量であるオーバーライト特性値を測定する必要がある。その他にも、サーボトラックの書込みに影響する磁気ヘッドの主磁極寸法やエラーレート等の磁気ヘッドの磁気特性値を測定する。
【0016】
これらの磁気ヘッドの特性値は、磁気ヘッド検査装置で測定され、ネットワークを介して、磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号を単位に製造データベースに保管される。
【0017】
また、本実施例では、書き上がりのトラック間隔と後工程歩留りの関係から最も歩留りが高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値を、確率モデルを用いたシミュレーションにより求める。
【0018】
図5に、トラック間隔に対するハードディスクドライブの製品不良率を折れ線501で、書き上がりのトラック間隔の頻度分布をヒストグラム502で示す。ハードディスクドライブは、トラック間隔が広すぎると磁気ヘッドの位置制御精度が悪くなり、また、逆にトラック間隔が狭すぎると読み取りや書込み時に隣のトラックと干渉を起こし読み取りエラーが増加する。その結果、ハードディスクドライブの製造不良率は折れ線501のようなU字の形状を取る。それに対して、自己書込み方式のサーボトラック書込みでは、書込み時に用いる磁気ヘッドの磁気特性値のばらつきに起因したトラック間隔のばらつきがヒストグラム502のように発生する為、一部のハードディスクドライブは不良率の高い領域で作られていることがある。
【0019】
そこで、本実施例では、図6に示す確率モデルを用いたシミュレーションにより、最適なトラック数を決定する。ここで確率モデルとは、過去の製造データから集計したトラック間隔を、図6の級下限601と級上限602のように級数化し、個々の級数におけるハードディスクドライブの製品不良を製品不良率603と定義したものである。
【0020】
シミュレーションでは、この確率モデルに対して、ハードディスクドライブのトラック間隔のばらつきを確率分布で定義し、トラック間隔の狙い値612を変えたときの分布A604から分布H611のように配置する。
【0021】
このとき、製品不良率と各列の確率分布を同じ級で乗じて足し合わせた数字である不良率期待値613は、トラック間隔の狙い値612でサーボトラックを書込んだ際の平均不良率と考えてよい。
【0022】
図6の事例では、トラック間隔の狙い値179ナノメートルの分布A604の不良率期待値は11.7%で、これを歩留りに換算すると88.3%である。分布B605は、分布A604の確率分布を1つ上の級にずらした分布で、トラック間隔の狙い値は177ナノメートル。これはトラック間隔の狙い値を2ナノメートル下げたことに相当すし、このときの不良率期待値は10.7%となり、分布Aの不良率より1%下がっていることが判る。
【0023】
このように、定義した確率分布のトラック間隔狙い値を変化させ、不良率期待値を計算する処理を分布Aから分布Hのように繰り返し行うことで、最も低い不良率期待値が得られるトラック間隔の狙い値を求めることが出来る。
【0024】
また、本実施例では、ハードディスクドライブの組み立て前に測定された磁気ヘッドの特性値とサーボトラック自己書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量から書き上がりのトラック間隔を予測する重回帰モデルを作成し、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの特性値に対して求める制御式を作成するステップを有する。
【0025】
特許文献1に記載の方式では、図3に示すように、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドによってディスクの半径方向に書き込まれた複数のサーボパターン301,302のリ−ドバック信号303,304からオーバラップ量を測定し、次の書込み位置を調整することでサーボトラックの間隔309を制御している。このとき、サーボパターン301とサーボパターン302の間隔309は、下記式(1)に表せる。
TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW (1)
このとき、TW309はサーボパターン301,302の間隔、RWはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの片側三角形の辺307で示される読み取り幅、SQはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの短辺305で示されるスクイーズ量、aはリ−ドバック信号304の中心306におけるパターン301のリ−ドバック信号303の切片307、bはリ−ドバック信号304の中心306におけるパターン302のリ−ドバック信号304の切片308である。ここで、a/bの値は、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量として定義されている。
【0026】
しかし、式(1)は理論式であり、本式を用いて生産を行う為には、測定や制御誤差を補正する必要がある。そこで、式(1)に、補正項を加える式(2)を用いる。
TW=α(RW+ SQ−(1−a/b)RW)+β (2)
この補正係数α、βを求める為には、式(2)を展開し、式(3)とする。
TW=α(SQ+(a/b)RW)+β (3)
この式(3)に対して実験あるいは統計手法を用いて、補正係数α、βを求めることが出来る。しかし、この式では、スクイーズ量と読み取り幅に対して独立に補正係数を設定出来ないことや、トラック間隔に影響を及ぼすことが判っている磁気ヘッド特性値である、オーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の補正項が定義出来ないことや、オーバラップ量とトラック間隔の関係が線形でないことから、望み通りに制御精度を向上することが困難であることがある。
【0027】
そこで、本実施例では、図4に基づき測定された読み取り幅403とスクイーズ量404やオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の磁気ヘッドの磁気特性値に加えて、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量をすべて独立項として扱い、重回帰分析により各項の係数と切片を求める。この関係は、重回帰式(4)のように表すことが出来る。
TW=α1・(a/b)+α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β (4)
この時、TWはトラック間隔、RWは読み取り幅、SQはスクイーズ量、OWはオーバーライト特性値、MCは主磁極寸法、ERはエラーレートを示しており、αの1から6はそれぞれの項にかかる係数、βは切片である。この中で、読み取り幅とスクイーズ量とオーバラップ量は主パラメータで、残りのオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等は補正項として働く。
【0028】
図7に、重回帰式(4)による予測トラック間隔701とサーボトラック書込み後の実測トラック間隔702の実験結果を示す。重回帰予測の精度が高いと予測と実測の関係は、Y=Xの関係703に収束する。その精度は、RMSE(Route Mean Square Error)という指標で表され、図7の事例では、約3ナノメートルである。これは、1σのトラック間隔が制御目標値に対して上下それぞれ3ナノメートルの範囲に入ることを示している。
【0029】
また、このRMSEの分布は重回帰式(4)を用いて、トラック間隔を制御した場合におけるトラック間隔ばらつきの予測値となる為、トラック間隔の制御目標値を試算する際に用いることが出来る。その際、RMSEの計算値の平均と分散或いは実分布を用いる。
【0030】
重回帰分析によって求められた式(4)は、式(5)に変換され、実際のサーボライト中で制御値として用いられるオーバラップ量(a/b)を、磁気ヘッド毎に求めることが出来るようになる。
(a/b)={TW−(α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β)}/α1 (5)
本実施例では、この式(5)を、製造データベースに蓄積された磁気ヘッドの磁気特性値と、その磁気ヘッドを用いてサーボトラックライトした際に用いたオーバラップ量、サーボトラックライト後に書き上がったトラック間隔のデータから作成する。
【0031】
この方法では、更に、磁気ヘッド検査やその他の製造工程で測定された検査値を重回帰式に加えて、制御精度を向上することが可能である。その際、対象となるパラメータは、重回帰式の予測値と実測値の誤差に対して相関をもつパラメータが対象となる。
【0032】
また、本実施例では、サーボトラック書込み装置に投入されたハードディスクドライブに対して、トラック間隔の目標値に書き上げる為のオーバラップ量の制御目標値を、上記制御式を用いて個別に計算し、製造条件として装置にフィードバックするステップを有する。
【0033】
オーバラップ量の制御目標値の計算に線形式である重回帰式を用いるにあたり、磁気ヘッドの磁気特性値とオーバラップ量に対するトラック間隔の関係が非線形であった場合やトラック間隔に影響を及ぼすパラメータが磁気ヘッド検査で測定されていない場合、同じ計算式を長期間使用すると計算誤差が拡大し制御精度を低下させる可能性がある。また、ディスク等の部品のタイプ違いにより書き上がるトラック間隔の制御式が異なる場合には、部品のタイプ別に制御式を作成し、個々に管理を行う必要がある。これらの課題を解決する為には、複数の制御式を製造品種や部品番号毎に管理し、また制御式を定期的に見直す仕組みが必要である。以下に、これを実現するシステム構成とハードディスクドライブ製造方法におけるサーボトラック書込みの流れを示す。
【0034】
図8に、前記した要素技術を用いた実施例によるハードディスクドライブ製造システムのブロック構成を示す。製造データベース801は、ネットワークを介して、ハードディスクのテスト装置802やサーボ自己書込み装置803や磁気ヘッド検査装置804と接続されており、ハードディスクのテスト装置802から製品不良情報805、サーボ自己書込み装置803から書き上がったサーボトラックの間隔806と書込み時のサーボパターンのオーバラップ量807、磁気ヘッド検査装置804から磁気ヘッドの特性値808のデータを収蔵している。
【0035】
製造データベース801では、磁気ヘッドの特性値808は磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号単位に収蔵されている。また、製品不良情報805と書き上がりサーボトラックの間隔806と書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量807はハードディスクドライブ製造番号単位で記録されている。
【0036】
製造データベース801では、まず、磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号単位に記録されている磁気ヘッドの特性値808のデータを、製造来歴を基にハードディスクドライブ製造番号単位に記録されている書き上がりサーボトラックの間隔806と書込み時の制御目標値であるオーバラップ量807のデータと結合する。結合されたデータ809の出力例を図9に示す。
【0037】
ここで、製造日時901はモデルを作成する対象期間を特定することに用いる。また、製造番号902は品種や製品仕様を特定し、作成するモデルを分けることに用いる。また、部品番号903は部品組合せの違いによりモデルを分けることに用いる。また、オーバラップ量904とトラック幅905と読み取り幅906とスクイーズ量907は制御モデルを重回帰分析を用いて作成する為のパラメータである。その他にオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の磁気ヘッドの特性値を補正項として加える場合は、対応する列をデータに追加する。
【0038】
この出力データ809は、モデル演算部810の制御式演算部811に送られる。制御式演算部811では、重回帰分析により求めた式(4)を変換して、サーボトラック書込みにおける式(5)を作成する。また、このとき同時に計算出来るRMSEの分布812を、確率モデル演算部813に送る。
【0039】
確率モデル演算部813では、図5を用いて説明した方法で、図6に示す確率モデルを作成する。確率モデル演算部813は,製造データベース801からサーボトラックライトの結果である書き上がりトラック間隔のデータ806と製品不良情報805をハードディスクドライブ製造番号単位のデータ814の形で受け取る。製造データベースからの出力例を図10に示す。
【0040】
ここで、製造日時1001はモデルを作成する対象期間を特定することに用いる。また、製造番号1002は品種や製品仕様を特定し、作成するモデルを分けることに用いる。また、部品番号1003は部品組合せの違いによりモデルを分けることに用いる。また、トラック幅1004は図6の級下限601と級上限602を決める為に用いると共に個々のハードディスクがどの級に分類されるのかを特定するのに用いる。また、製造歩留り1005は各級における歩留りを計算し図6の製品不良率603を計算する際に用いる。図10の製造歩留り1005では、良品を1、不良品を0で表している。この例では、各級の製品不良率は、1−各級における製品不良率1005の平均で計算できる。
【0041】
このように作成した級下限601と級上限602と製品不良率603の表に対して、制御式演算部811で計算したRMSEの分布812を図6の分布A604に当てはめ、図5を用いて説明した方法に従い、最も歩留りが高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値を計算する。このトラック間隔の制御目標値815は、制御式演算部811に戻され、式(5)のトラック間隔TWに代入することで、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの磁気特性検査値に対して求める制御式(6)を作成する。
(a/b)={TTW−(α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β)}/α1 (6)
ここでTTWは、歩留りが最も高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値815である。求められた制御式816は、書込み制御データベース817の制御式収蔵部818に送られる。
【0042】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、それぞれハードディスクドライブ823,824,825,826と1対1で接続されている。また、サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、ネットワークを介して書込み制御データベース817と接続されている。
【0043】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、書込み制御データベース817の制御モデル判定部827に対して、現在搭載中のハードディスクドライブ823,824,825,826の製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号等の製品情報828を送る。
【0044】
制御モデル判定部827は、個々の製品情報828に合う制御式816を制御式収蔵部818の中から選択し、製品情報828と制御式816をオーバラップ量演算部829に送る。
【0045】
オーバラップ量演算部829は、製造データベース801から複写されたヘッド特性値のデータベース830から、製品情報828と選択された制御式816に対応する磁気ヘッド特性値808を選択して、個々の製品情報828に対してオーバラップ量の制御目標値831を計算する。
【0046】
計算されたオーバラップ量の制御目標値831は、ネットワークを介して、サーボ自己書込み装置819,820,821,822に返される。
【0047】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、書込み制御データベース817から返されたオーバラップ量の制御目標値831を用いて、現在搭載中のハードディスクドライブ823,824,825,826に対してサーボトラックを書き込む。
【0048】
上記図8のモデル演算部810での処理を、図11にフローチャートで示す。モデル演算部では、まず、前処理1101で、どの製品品種や部品構成に対してモデルを作成するかを選択する。このモデルの作成単位は、製品設計の違いや部品の組合せに依存することが判っている。
【0049】
モデル演算部では、次に、前処理1102で、重回帰モデルを作成する対象期間と、その時に用いるパラメータを決定する。この時、ヘッド検査工程で測定されているすべての磁気ヘッド特性値が対象となり。また、組み立て工程等で測定されているヘッドの取り付けバランス等も対象とすることが出来る。その中で効果が大きいパラメータを絞り込む方法として、パラメトリック検定や相関分析等の技術がある。しかし、本実施例では実験的に読み取り幅とスクイーズ量が最も支配的なパラメータであることを特定しているので、読み取り幅とスクイーズ量だけで作成した重回帰式の予測誤差とその他のパラメータを相関分析し、相関係数の高い順に優先度をつけることで補正項を決定する。
【0050】
モデル演算部810では、次に処理1103で、前処理1101と1102で定義した期間と製品品種、部品構成に対して、磁気ヘッドの特性値と書き上がりサーボトラックの間隔とオーバラップ量の結合データ1104を、製造データベース801から取得する。このデータ1104の例を、図9に示す。
【0051】
モデル演算部810では、次に処理1105で、1104のデータを重回帰分析する。重回帰分析によって出力される結果は、重回帰式1106とRMSEの分布1107である。
【0052】
また、処理1109で、前処理1101で特定した製品品種、部品構成と前処理1108で特定した対象期間に対応するトラック間隔のデータと製品不良情報を取得する。この時、対象期間は、1102で指定した期間である必要はなく、予測精度を向上させる為には、なるべく長期間のデータでかつトラック間隔が広い範囲に分散していることが望ましい。また、製品立ち上げ時やトラック間隔の歩留り影響を実験してデータを取得することも可能である。このデータ1110の例を、図10に示す。
【0053】
モデル演算部801では、次に処理1111で、データ1110を級数化する。この時作成する級数は、トラック間隔の単位を用いて等間隔に作成する。この時、1つの級の中にあるハードディスクドライブの数が50台を下回らないようにする必要がある。50台を下回る級が発生した場合、級の分割単位を大きくするかその級を使わないようにモデル上で定義する必要がある。ここで作成された級は、図6の級下限601、級上限602のように出力される。
【0054】
モデル演算部810では、次に処理1112で、処理1111で作成した各級における歩留りを製品不良情報から計算し、図6の製品不良率603のように各級に割り当てる。このテーブルを、確率モデル1113として出力する。
【0055】
モデル演算部810では、次に処理1114で、処理1105の結果として出力されたRMSE1107を級数化し、確率分布1115に変換する。この時、級数の分割単位は、処理1111と同じでなければならない。
【0056】
この確率分布1115は、重回帰式1106に従ってサーボトラック書込みを行った際に予想される狙い値からのずれである。そこで、処理1116では、この確率分布1115を確率モデル1113に当てはめ、図5を用いて説明した方法で、最も不良率が低くなるトラック間隔の狙い値1117を数値シミュレーションによって求める。
【0057】
また、処理1105の結果として出力された重回帰式1106は、判定1118で量産適用可能かを判定される。この時、判定の指標となるのは図7に記載の重回帰モデルによる予測トラック間隔と実際に書き上げられた実トラックの間隔の相関から求められる相関係数やRMSEがその基準となる。これが、管理目標値に満たない場合は、処理1102に戻ってモデルを作り直す。
【0058】
判定1118で適用可能と判定された重回帰式1106は、処理1119で、処理1116で算出された最も不良率が低くなるトラック間隔の狙い値1117を、トラック間隔の制御目標値として代入され、磁気ヘッドの特性値からオーバラップ量を計算する制御式1120となる。この関係は、上記式(6)に示す。算出された制御式1120は、書込み制御データベース817の制御式収蔵部818に保管される。
【0059】
前記書込み制御データベース817を活用したハードディスクドライブの製造の流れを図12に示す。ハードディスクドライブの製造では、磁気ヘッド、アーム、磁気ディスク、アクチュエータや制御基板等の部品を組み立てた後、サーボトラックの自己書込みを行う。図12においてサーボトラック自己書込み装置は、ハードディスクドライブを接続しサーボトラックの書込みを行うセル1201と、複数のセルが搭載されたフレーム1202と、各セル1201に対して制御プログラムや製造条件を指示する制御PC1203からなる。制御PC1203は、ネットワーク1204を介して、製造データベース1205(801)や書込み制御データベース1206(817)と接続されている。
【0060】
ハードディスクドライブがサーボトラック自己書込み装置に接続されてからの処理を、図13のフローチャートに示す。組み立てられたハードディスクドライブは手作業または自動搬送機により、サーボトラック自己書込み装置のセル内にあるコネクターと接続される。接続後、初めに判定1301で接続状態の確認が行われ、接続が不良の場合はエラー1302が表示され、良好に接続されていれば処理1303に進む。処理1303では、接続されたハードディスクドライブの製造番号1304が読み取られる。読み取られたハードディスクドライブの製造番号1304は、処理1305で書込み制御データベース1206(817)に送られる。
【0061】
製造番号1304を受け取った書込み制御データベース1206(817)の処理を、図14のフローチャートに示す。処理1305で送られたハードディスクドライブの製造番号1304から、書込み制御データベースでは、処理1401で、製造来歴や製品情報を基に製造番号1304の製品品種と部品構成1402を特定する。
【0062】
次に、判定1403で、図8に示す制御式収蔵部818に、特定された製品品種と部品構成1402に対応する制御式の有無を判定し、無い場合は処理1404で制御式が無いという信号をサーボトラック自己書込み装置819−822に戻し、あった場合は処理1405と処理1406に進む。
【0063】
処理1405では、製品品種と部品構成1402に対応した制御式1407を図8の制御式収蔵部818から取得する。
【0064】
処理1406では、番号1304に対応した磁気ヘッドの特性値1408を図8の磁気ヘッド特性値収蔵部830から取得する。
【0065】
次に、処理1409で、取得した制御式1407と磁気ヘッドの特性値1408を用いて、オーバラップ量の制御目標値1410を算出する。
【0066】
算出されたオーバラップ量の制御目標値1410は、処理1411でサーボトラック自己書込み装置に送られる。
【0067】
サーボトラック自己書込み装置819−822の処理を、図15のフローチャートに示す。オーバラップ量の制御目標値1410を受け取ったサーボトラック自己書込み装置は、まず処理1501でサーボパターンP0を書込み、次に処理1502で、製造条件で予め定められた固定のヘッド送り量でヘッドを移動させる。この時、ヘッドを送る方向は磁気ディスクの中心から外周方向であり、ヘッドの送り量はヘッドの駆動機構であるアクチュエータやボイスコイルモータの制御単位が基準となる。
【0068】
処理1502で移動したヘッドは、処理1503でサーボパターンP1を書き込む。次に、処理1504でサーボパターンP0とP1のオーバラップ量1505を測定する。
【0069】
処理1506では、処理1504で測定されたオーバラップ量1505とオーバラップ量の制御目標値1410の乖離を計算し、ヘッドの送り量を補正する。ヘッドの送り量はトラック幅と同じである為、式(1)の関係(TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW)に従うと、オーバラップ量が制御目標値に対して大きい場合は、送り量を大きく。オーバラップ量が制御目標値に対して小さい場合は、送り量を小さく補正する。
【0070】
処理1508では、補正された送り量1507だけヘッドを送る。次に、処理1509で送られた位置がディスクの終端である、或いは、所定のトラック数を書き上げた等の終了条件を満たすかの判定1509で行い、終了条件に満たない場合は、処理1510でサーボパターンを書込み、処理1511で書き込んだサーボパターンとその1ステップ前に書いたサーボパターンのオーバラップ量を測定し、処理1513でオーバラップ量の測定値1512とオーバラップ量の制御目標値1410の乖離を計算し、ヘッドの送り量を補正する。
【0071】
この処理1507から1513の処理を、判定1509の終了条件を満たすまで繰り返すことで、磁気ディスクの全面にサーボトラックを書き上げることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ハードディスクドライブの基本構成を示す図である。
【図2】サーボセクタのフォーマットを示す図である。
【図3】サーボパターンとリードバック信号の関係を示す図である。
【図4】リードバック信号の模式図である。
【図5】トラック間隔に対する製品不良率とトラック間隔の頻度分布を示す図である。
【図6】確率モデルを用いたシミュレーションの結果を示す図である。
【図7】重回帰式による予想サーボトラック間隔と書込み後の実測トラック間隔の実験結果を示す図である。
【図8】実施例によるハードディスクドライブの製造システムのブロック構成図である。
【図9】制御式演算部に出力される書き上がりサーボトラック間隔、書込み時の制御目標値であるオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を示す図である。
【図10】確率モデル演算部に出力される製品不良情報、書き上がりサーボトラック間隔を示す図である。
【図11】図8のモデル演算部の処理を示すフローチャートである。
【図12】書込み制御データベースを活用したハードディスクドライブの製造の流れを示す図である
【図13】ハードディスクドライブがサーボトラック自己書込み装置に接続されてからの処理を示すフローチャートである。
【図14】図8の書込みデータベースが製造番号を受け取ってからの処理を示すフローチャートである。
【図15】サーボトラック自己書込み装置の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
101…ディスク、102…アーム、103…磁気ヘッド、104…サーボトラック、201…グレイコード、202…バースト信号、301,302…サーボパターン、303,304…リードバック信号、305,404…スクイーズ量、309…サーボトラック間隔、401…リードバック信号、402…リードバック信号を台形に近似した形状、403…読み取り幅、501…製品不良率、502…書き上がりのトラック間隔の頻度分布、801…製造データベース、802…テスト装置、803…サーボ自己書込み装置、804…磁気ヘッド検査装置、805…製品不良情報、806…書き上がったサーボトラックの間隔、807…書込み時のサーボパターンのオーバラップ量、808…磁気ヘッドの特性値、810…モデル演算部、811…制御式演算部、812…RMSEの確率分布、813…確率モデル演算部、816…制御式、817…書込み制御データベース、818…制御式収蔵部、819,820,821,822…サーボ自己書込み装置、823,824,825,826…ハードディスクドライブ、827…制御モデル判定部、829…オーバラップ量演算部、830…磁気ヘッド特性値収蔵部、1201…セル、1202…フレーム、1203…制御PC、1204…ネットワーク、1205…製造データベース、1206…書込み制御データベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ自己書込み工程を含むハードディスクドライブの製造方法及び製造システムに係り、特にサーボトラック間隔の調整方法及びこれを実現する製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブの基本的な構造を図1に示す。ハードディスクドライブは、ディスク101上のデータにアクセスするとき、アーム102を回転させてその先端にある磁気ヘッド103を目的のサーボトラック104上に動かす。アーム102はピボット軸105を中心に回転する構造で、後端にはアクチュエータ106という駆動機構がある。アクチュエータ106がアーム102を動かして、磁気ヘッド103を目標のサーボトラック104に固定する際には、磁気ヘッド103の位置を検知する必要があり、これにはサーボトラック上にあるサーボセクタが使われる。
【0003】
図2に示すサーボセクタは、アドレスコード201とバースト信号202からなり、ディスク101上に放射状に書かれている。アドレスコード201には、サーボトラック番号とサーボセクタ番号がグレイコードで記録されており、これにより磁気ヘッド103のディスク101上での位置を知ることが出来る。バースト信号202は、磁気ヘッド103の位置をサーボトラック104の中心に正確に制御する為に用いられる。図2に示す4thバーストという方式では、4つのパターンがそれぞれ対になっている構造を持ち、2つのバーストの境界をサーボトラック104として定義する。
【0004】
このサーボトラック104を書き込む方式には、自己書込み方式というハードディスクドライブを組み立てた後で、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドを用いてサーボトラックを書き込む特許文献1に示す方式がある。この特許文献1に記載の方式では、図3に示すように、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドによってディスクの半径方向に書き込まれた複数のサーボパターン301,302のリ−ド・バック信号303,304からオーバラップ量を測定し、次の書込み位置を調整することでサーボトラックの間隔309を制御している。このとき、サーボパターン301とサーボパターン302の間隔309は、下記式(1)に表せる。
TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW (1)
このとき、TWはサーボパターン301,302の間隔309、RWはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの片側三角形の辺307で示される読み取り幅、SQはリ−ド・バック信号304を台形に近似したときの短辺305で示されるスクイーズ量、aはリ−ド・バック信号304の中心306におけるサーボパターン301のリ−ドバック信号303の切片307、bはリ−ドバック信号304の中心306におけるサーボパターン302のリ−ドバック信号304の切片308である。ここで、a/bの値は、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量として定義される。
【0005】
しかし、この時、トラックピッチの計算に用いられるリ−ドバック信号303,304は、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッド103の記録素子で書き込んだ信号を、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッド103の再生素子を用いて測定した値である為、磁気ヘッド毎に異なる記録・再生素子の寸法の影響を受ける。その為、特許文献1の方式では、サーボトラックの間隔を絶対値で制御することが出来ず、最終的に書き上がるサーボトラックの間隔や半径方向の線形性はハードディスクドライブ毎に異なる。サーボトラックの間隔がハードディスクドライブ毎に異なった場合、磁気ヘッド毎に異なる素子寸法に起因する読み取り・書込み幅との組合せにおいて、読み取り不良が発生する可能性がある。
【0006】
これを対策する為に、特許文献2に記載の方式では、第1ステップでディスクの半径方向位置に第1のサーボトラックを書込み、第2ステップで第2のサーボトラックを書き込む方法を用いている。この方法では、第1のサーボトラックをもとに第2のサーボトラックを書くので、第1のサーボトラックの情報から、第2のサーボトラック書込み時に補正を行い、サーボトラックの間隔や半径方向の線形性を第2のサーボトラックの書込み時に補正することが可能である。しかし、この方法は二度の書込みを行う為、一度で書き込む方式に比べて2倍の製造時間がかかる。その為、磁気記録密度が向上しディスク内のサーボトラック数が増加している現状では、二度書込み方式は、一度で書き込む方式に比べて製造時間の増加がトラック数の二乗で発生する為、製造コストや設備投資が非常に巨額になる。
【0007】
そこで、二度書き方式を一度書きにする方法として、特許文献3に記載の方法がある。この方法では、磁気ヘッドの磁化幅を分類して、各分類に対して適切なサーボ信号の間隔を実験的に求めて、製造条件として与える。しかし、この方法は、磁気ヘッドを選別して組み立てる工程が必要であり、工程数の増加による製造コストの増加や磁気ヘッドを分類することによる磁気ヘッドの利用効率の低下が懸念される。また、トラック数の制御精度を上げる為に分類数を増やすと、磁気ヘッドの利用効率が更に低下し、磁気ヘッドの歩留りが低下するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特表平10−504128号公報
【特許文献2】特開2004−199863号公報
【特許文献3】特開2004−234823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サーボトラックの自己書込み方式において、書き込んだトラック間隔に起因する読み取り不良などの歩留り低下を最小にすることを目的に、最も不良率の低いトラック間隔を書込み前に特定することと、特定したトラック間隔になるべく近く書き上がるように自己書込み方式の製造条件をハードディスクドライブ毎に求めてサーボトラックを書き込むことを課題とする。このトラック間隔の制御においては、特許文献2記載の二度書き方式では製造時間が長大になり、特許文献3記載の分類方式では製造工数の増加と磁気ヘッドの歩留り低下を起こすことから製造コストが高価になる為、一度書きでかつ磁気ヘッドの分類を行わない方法である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的なハードディスクドライブの製造方法は、セルフサーボライトを実行してサーボトラックを書き込むステップを含むハードディスクドライブの製造方法において、前記サーボトラックを書き込むステップは、
書き上がりのサーボトラック間隔と後工程歩留りの関係から最も歩留りが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を、確率モデルを用いて求めるステップと、
ハードディスクドライブの組み立て前に測定された磁気ヘッドの特性値と自己書込み方式のサーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量から書き上がりのトラック間隔を予測する重回帰分析を用いて、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの特性値に対して求める制御式を作成するステップと、
サーボトラック書込み装置に投入されたハードディスクドライブに対して、サーボトラック間隔の制御目標値に書き上げる為のサーボパターンのオーバラップ量を、上記制御式を用いて個別に計算し、製造条件として装置にフィードバックするステップと、を有する。
【0011】
本発明の代表的なハードディスクドライブの製造システムは、
製造来歴に基づく、ハードディスクドライブの製品不良情報、書き上がりサーボトラックの間隔、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を収蔵する製造データベースと、
前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する制御式演算部と、前記製品不良情報と、書き上がりサーボトラックの間隔と、RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算して前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する確率モデル演算部と、を有するモデル演算部と、
前記モデル演算部から前記第2制御式を受信して収蔵し、前記製造データベースから前記磁気ヘッドの特性値を受信して収蔵し、サーボ自己書込み装置から現在搭載中のハードディスクドライブの製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号などの製品情報を受信し、前記製品情報に合う前記第2制御式を選択し、前記製品情報と選択された前記第2制御式に対応する前記磁気ヘッドの特性値を選択し、前記製品情報に対してサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する書込み制御データベースと、
前記計算されたサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いて現在搭載中のハードディスクドライブに対してサーボトラックを書き込むサーボ自己書込み装置と、を有する
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自己書込み方式によって書き上がるサーボトラックの間隔を製造歩留りに対して最適な値に制御することが可能になり、製造歩留りの大幅な向上が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施例によるハードディスクドライブの製造方法及びそれを実現する製造システムについて、図面を用いて詳細に説明する。図8にハードディスクドライブ製造システムのブロック構成を示すが、その説明の前に、各構成要素について説明する。
【0014】
本実施例では、ハードディスクドライブに組み立てられる前に、磁気ヘッドの特性値を測定する検査工程を有する。この工程では、図4に示すように磁気ヘッドの記録素子で書きこんだパターンを磁気ヘッド再生素子の位置を変えながら測定した時の再生信号強度の分布であるリ−ドバック信号401を測定する。図4に、リ−ドバック信号401の模式図を示す。このとき、横軸の寸法は、物理的あるいは光学的な外部基準の測長器を用いて、絶対値として測定される。さらに、標準サンプルによる補正を行うことで、磁気ディスクの磁化特性による測定誤差を補正することができる。
【0015】
さらに、このリードバック信号401の形状を台形402に近似し、オーバラップ量の計算式(1)で用いた読み取り幅403とスクイーズ量404を測定する。このとき、スクイーズ量404は、リードバック信号の形状を台形に近似したときの最大の信号強度を1とし、0.5の信号強度における切片405で示される書込み幅406から読み取り幅403を引いた値として求めることが可能であることから、スクイーズ量の変わりに書込み幅406を測定してもよい。また、パターンの書込みと消去を組み合わせてサーボトラックを書き込む場合は、パターン消去後の残留信号量であるオーバーライト特性値を測定する必要がある。その他にも、サーボトラックの書込みに影響する磁気ヘッドの主磁極寸法やエラーレート等の磁気ヘッドの磁気特性値を測定する。
【0016】
これらの磁気ヘッドの特性値は、磁気ヘッド検査装置で測定され、ネットワークを介して、磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号を単位に製造データベースに保管される。
【0017】
また、本実施例では、書き上がりのトラック間隔と後工程歩留りの関係から最も歩留りが高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値を、確率モデルを用いたシミュレーションにより求める。
【0018】
図5に、トラック間隔に対するハードディスクドライブの製品不良率を折れ線501で、書き上がりのトラック間隔の頻度分布をヒストグラム502で示す。ハードディスクドライブは、トラック間隔が広すぎると磁気ヘッドの位置制御精度が悪くなり、また、逆にトラック間隔が狭すぎると読み取りや書込み時に隣のトラックと干渉を起こし読み取りエラーが増加する。その結果、ハードディスクドライブの製造不良率は折れ線501のようなU字の形状を取る。それに対して、自己書込み方式のサーボトラック書込みでは、書込み時に用いる磁気ヘッドの磁気特性値のばらつきに起因したトラック間隔のばらつきがヒストグラム502のように発生する為、一部のハードディスクドライブは不良率の高い領域で作られていることがある。
【0019】
そこで、本実施例では、図6に示す確率モデルを用いたシミュレーションにより、最適なトラック数を決定する。ここで確率モデルとは、過去の製造データから集計したトラック間隔を、図6の級下限601と級上限602のように級数化し、個々の級数におけるハードディスクドライブの製品不良を製品不良率603と定義したものである。
【0020】
シミュレーションでは、この確率モデルに対して、ハードディスクドライブのトラック間隔のばらつきを確率分布で定義し、トラック間隔の狙い値612を変えたときの分布A604から分布H611のように配置する。
【0021】
このとき、製品不良率と各列の確率分布を同じ級で乗じて足し合わせた数字である不良率期待値613は、トラック間隔の狙い値612でサーボトラックを書込んだ際の平均不良率と考えてよい。
【0022】
図6の事例では、トラック間隔の狙い値179ナノメートルの分布A604の不良率期待値は11.7%で、これを歩留りに換算すると88.3%である。分布B605は、分布A604の確率分布を1つ上の級にずらした分布で、トラック間隔の狙い値は177ナノメートル。これはトラック間隔の狙い値を2ナノメートル下げたことに相当すし、このときの不良率期待値は10.7%となり、分布Aの不良率より1%下がっていることが判る。
【0023】
このように、定義した確率分布のトラック間隔狙い値を変化させ、不良率期待値を計算する処理を分布Aから分布Hのように繰り返し行うことで、最も低い不良率期待値が得られるトラック間隔の狙い値を求めることが出来る。
【0024】
また、本実施例では、ハードディスクドライブの組み立て前に測定された磁気ヘッドの特性値とサーボトラック自己書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量から書き上がりのトラック間隔を予測する重回帰モデルを作成し、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの特性値に対して求める制御式を作成するステップを有する。
【0025】
特許文献1に記載の方式では、図3に示すように、ハードディスクドライブ内部の磁気ヘッドによってディスクの半径方向に書き込まれた複数のサーボパターン301,302のリ−ドバック信号303,304からオーバラップ量を測定し、次の書込み位置を調整することでサーボトラックの間隔309を制御している。このとき、サーボパターン301とサーボパターン302の間隔309は、下記式(1)に表せる。
TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW (1)
このとき、TW309はサーボパターン301,302の間隔、RWはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの片側三角形の辺307で示される読み取り幅、SQはリ−ドバック信号304を台形に近似したときの短辺305で示されるスクイーズ量、aはリ−ドバック信号304の中心306におけるパターン301のリ−ドバック信号303の切片307、bはリ−ドバック信号304の中心306におけるパターン302のリ−ドバック信号304の切片308である。ここで、a/bの値は、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量として定義されている。
【0026】
しかし、式(1)は理論式であり、本式を用いて生産を行う為には、測定や制御誤差を補正する必要がある。そこで、式(1)に、補正項を加える式(2)を用いる。
TW=α(RW+ SQ−(1−a/b)RW)+β (2)
この補正係数α、βを求める為には、式(2)を展開し、式(3)とする。
TW=α(SQ+(a/b)RW)+β (3)
この式(3)に対して実験あるいは統計手法を用いて、補正係数α、βを求めることが出来る。しかし、この式では、スクイーズ量と読み取り幅に対して独立に補正係数を設定出来ないことや、トラック間隔に影響を及ぼすことが判っている磁気ヘッド特性値である、オーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の補正項が定義出来ないことや、オーバラップ量とトラック間隔の関係が線形でないことから、望み通りに制御精度を向上することが困難であることがある。
【0027】
そこで、本実施例では、図4に基づき測定された読み取り幅403とスクイーズ量404やオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の磁気ヘッドの磁気特性値に加えて、サーボトラック書込み工程でプロセス制御に用いられるオーバラップ量をすべて独立項として扱い、重回帰分析により各項の係数と切片を求める。この関係は、重回帰式(4)のように表すことが出来る。
TW=α1・(a/b)+α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β (4)
この時、TWはトラック間隔、RWは読み取り幅、SQはスクイーズ量、OWはオーバーライト特性値、MCは主磁極寸法、ERはエラーレートを示しており、αの1から6はそれぞれの項にかかる係数、βは切片である。この中で、読み取り幅とスクイーズ量とオーバラップ量は主パラメータで、残りのオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等は補正項として働く。
【0028】
図7に、重回帰式(4)による予測トラック間隔701とサーボトラック書込み後の実測トラック間隔702の実験結果を示す。重回帰予測の精度が高いと予測と実測の関係は、Y=Xの関係703に収束する。その精度は、RMSE(Route Mean Square Error)という指標で表され、図7の事例では、約3ナノメートルである。これは、1σのトラック間隔が制御目標値に対して上下それぞれ3ナノメートルの範囲に入ることを示している。
【0029】
また、このRMSEの分布は重回帰式(4)を用いて、トラック間隔を制御した場合におけるトラック間隔ばらつきの予測値となる為、トラック間隔の制御目標値を試算する際に用いることが出来る。その際、RMSEの計算値の平均と分散或いは実分布を用いる。
【0030】
重回帰分析によって求められた式(4)は、式(5)に変換され、実際のサーボライト中で制御値として用いられるオーバラップ量(a/b)を、磁気ヘッド毎に求めることが出来るようになる。
(a/b)={TW−(α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β)}/α1 (5)
本実施例では、この式(5)を、製造データベースに蓄積された磁気ヘッドの磁気特性値と、その磁気ヘッドを用いてサーボトラックライトした際に用いたオーバラップ量、サーボトラックライト後に書き上がったトラック間隔のデータから作成する。
【0031】
この方法では、更に、磁気ヘッド検査やその他の製造工程で測定された検査値を重回帰式に加えて、制御精度を向上することが可能である。その際、対象となるパラメータは、重回帰式の予測値と実測値の誤差に対して相関をもつパラメータが対象となる。
【0032】
また、本実施例では、サーボトラック書込み装置に投入されたハードディスクドライブに対して、トラック間隔の目標値に書き上げる為のオーバラップ量の制御目標値を、上記制御式を用いて個別に計算し、製造条件として装置にフィードバックするステップを有する。
【0033】
オーバラップ量の制御目標値の計算に線形式である重回帰式を用いるにあたり、磁気ヘッドの磁気特性値とオーバラップ量に対するトラック間隔の関係が非線形であった場合やトラック間隔に影響を及ぼすパラメータが磁気ヘッド検査で測定されていない場合、同じ計算式を長期間使用すると計算誤差が拡大し制御精度を低下させる可能性がある。また、ディスク等の部品のタイプ違いにより書き上がるトラック間隔の制御式が異なる場合には、部品のタイプ別に制御式を作成し、個々に管理を行う必要がある。これらの課題を解決する為には、複数の制御式を製造品種や部品番号毎に管理し、また制御式を定期的に見直す仕組みが必要である。以下に、これを実現するシステム構成とハードディスクドライブ製造方法におけるサーボトラック書込みの流れを示す。
【0034】
図8に、前記した要素技術を用いた実施例によるハードディスクドライブ製造システムのブロック構成を示す。製造データベース801は、ネットワークを介して、ハードディスクのテスト装置802やサーボ自己書込み装置803や磁気ヘッド検査装置804と接続されており、ハードディスクのテスト装置802から製品不良情報805、サーボ自己書込み装置803から書き上がったサーボトラックの間隔806と書込み時のサーボパターンのオーバラップ量807、磁気ヘッド検査装置804から磁気ヘッドの特性値808のデータを収蔵している。
【0035】
製造データベース801では、磁気ヘッドの特性値808は磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号単位に収蔵されている。また、製品不良情報805と書き上がりサーボトラックの間隔806と書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量807はハードディスクドライブ製造番号単位で記録されている。
【0036】
製造データベース801では、まず、磁気ヘッドの製造番号或いは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品番号単位に記録されている磁気ヘッドの特性値808のデータを、製造来歴を基にハードディスクドライブ製造番号単位に記録されている書き上がりサーボトラックの間隔806と書込み時の制御目標値であるオーバラップ量807のデータと結合する。結合されたデータ809の出力例を図9に示す。
【0037】
ここで、製造日時901はモデルを作成する対象期間を特定することに用いる。また、製造番号902は品種や製品仕様を特定し、作成するモデルを分けることに用いる。また、部品番号903は部品組合せの違いによりモデルを分けることに用いる。また、オーバラップ量904とトラック幅905と読み取り幅906とスクイーズ量907は制御モデルを重回帰分析を用いて作成する為のパラメータである。その他にオーバーライト特性値、主磁極寸法、エラーレート等の磁気ヘッドの特性値を補正項として加える場合は、対応する列をデータに追加する。
【0038】
この出力データ809は、モデル演算部810の制御式演算部811に送られる。制御式演算部811では、重回帰分析により求めた式(4)を変換して、サーボトラック書込みにおける式(5)を作成する。また、このとき同時に計算出来るRMSEの分布812を、確率モデル演算部813に送る。
【0039】
確率モデル演算部813では、図5を用いて説明した方法で、図6に示す確率モデルを作成する。確率モデル演算部813は,製造データベース801からサーボトラックライトの結果である書き上がりトラック間隔のデータ806と製品不良情報805をハードディスクドライブ製造番号単位のデータ814の形で受け取る。製造データベースからの出力例を図10に示す。
【0040】
ここで、製造日時1001はモデルを作成する対象期間を特定することに用いる。また、製造番号1002は品種や製品仕様を特定し、作成するモデルを分けることに用いる。また、部品番号1003は部品組合せの違いによりモデルを分けることに用いる。また、トラック幅1004は図6の級下限601と級上限602を決める為に用いると共に個々のハードディスクがどの級に分類されるのかを特定するのに用いる。また、製造歩留り1005は各級における歩留りを計算し図6の製品不良率603を計算する際に用いる。図10の製造歩留り1005では、良品を1、不良品を0で表している。この例では、各級の製品不良率は、1−各級における製品不良率1005の平均で計算できる。
【0041】
このように作成した級下限601と級上限602と製品不良率603の表に対して、制御式演算部811で計算したRMSEの分布812を図6の分布A604に当てはめ、図5を用いて説明した方法に従い、最も歩留りが高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値を計算する。このトラック間隔の制御目標値815は、制御式演算部811に戻され、式(5)のトラック間隔TWに代入することで、トラック間隔の制御目標値に書き上げる為のオーバラップ量を磁気ヘッドの磁気特性検査値に対して求める制御式(6)を作成する。
(a/b)={TTW−(α2・RW+α3・SQ+α4・OW+α5・MC+α6・ER+β)}/α1 (6)
ここでTTWは、歩留りが最も高くなる書き上がりのトラック間隔の制御目標値815である。求められた制御式816は、書込み制御データベース817の制御式収蔵部818に送られる。
【0042】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、それぞれハードディスクドライブ823,824,825,826と1対1で接続されている。また、サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、ネットワークを介して書込み制御データベース817と接続されている。
【0043】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、書込み制御データベース817の制御モデル判定部827に対して、現在搭載中のハードディスクドライブ823,824,825,826の製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号等の製品情報828を送る。
【0044】
制御モデル判定部827は、個々の製品情報828に合う制御式816を制御式収蔵部818の中から選択し、製品情報828と制御式816をオーバラップ量演算部829に送る。
【0045】
オーバラップ量演算部829は、製造データベース801から複写されたヘッド特性値のデータベース830から、製品情報828と選択された制御式816に対応する磁気ヘッド特性値808を選択して、個々の製品情報828に対してオーバラップ量の制御目標値831を計算する。
【0046】
計算されたオーバラップ量の制御目標値831は、ネットワークを介して、サーボ自己書込み装置819,820,821,822に返される。
【0047】
サーボ自己書込み装置819,820,821,822は、書込み制御データベース817から返されたオーバラップ量の制御目標値831を用いて、現在搭載中のハードディスクドライブ823,824,825,826に対してサーボトラックを書き込む。
【0048】
上記図8のモデル演算部810での処理を、図11にフローチャートで示す。モデル演算部では、まず、前処理1101で、どの製品品種や部品構成に対してモデルを作成するかを選択する。このモデルの作成単位は、製品設計の違いや部品の組合せに依存することが判っている。
【0049】
モデル演算部では、次に、前処理1102で、重回帰モデルを作成する対象期間と、その時に用いるパラメータを決定する。この時、ヘッド検査工程で測定されているすべての磁気ヘッド特性値が対象となり。また、組み立て工程等で測定されているヘッドの取り付けバランス等も対象とすることが出来る。その中で効果が大きいパラメータを絞り込む方法として、パラメトリック検定や相関分析等の技術がある。しかし、本実施例では実験的に読み取り幅とスクイーズ量が最も支配的なパラメータであることを特定しているので、読み取り幅とスクイーズ量だけで作成した重回帰式の予測誤差とその他のパラメータを相関分析し、相関係数の高い順に優先度をつけることで補正項を決定する。
【0050】
モデル演算部810では、次に処理1103で、前処理1101と1102で定義した期間と製品品種、部品構成に対して、磁気ヘッドの特性値と書き上がりサーボトラックの間隔とオーバラップ量の結合データ1104を、製造データベース801から取得する。このデータ1104の例を、図9に示す。
【0051】
モデル演算部810では、次に処理1105で、1104のデータを重回帰分析する。重回帰分析によって出力される結果は、重回帰式1106とRMSEの分布1107である。
【0052】
また、処理1109で、前処理1101で特定した製品品種、部品構成と前処理1108で特定した対象期間に対応するトラック間隔のデータと製品不良情報を取得する。この時、対象期間は、1102で指定した期間である必要はなく、予測精度を向上させる為には、なるべく長期間のデータでかつトラック間隔が広い範囲に分散していることが望ましい。また、製品立ち上げ時やトラック間隔の歩留り影響を実験してデータを取得することも可能である。このデータ1110の例を、図10に示す。
【0053】
モデル演算部801では、次に処理1111で、データ1110を級数化する。この時作成する級数は、トラック間隔の単位を用いて等間隔に作成する。この時、1つの級の中にあるハードディスクドライブの数が50台を下回らないようにする必要がある。50台を下回る級が発生した場合、級の分割単位を大きくするかその級を使わないようにモデル上で定義する必要がある。ここで作成された級は、図6の級下限601、級上限602のように出力される。
【0054】
モデル演算部810では、次に処理1112で、処理1111で作成した各級における歩留りを製品不良情報から計算し、図6の製品不良率603のように各級に割り当てる。このテーブルを、確率モデル1113として出力する。
【0055】
モデル演算部810では、次に処理1114で、処理1105の結果として出力されたRMSE1107を級数化し、確率分布1115に変換する。この時、級数の分割単位は、処理1111と同じでなければならない。
【0056】
この確率分布1115は、重回帰式1106に従ってサーボトラック書込みを行った際に予想される狙い値からのずれである。そこで、処理1116では、この確率分布1115を確率モデル1113に当てはめ、図5を用いて説明した方法で、最も不良率が低くなるトラック間隔の狙い値1117を数値シミュレーションによって求める。
【0057】
また、処理1105の結果として出力された重回帰式1106は、判定1118で量産適用可能かを判定される。この時、判定の指標となるのは図7に記載の重回帰モデルによる予測トラック間隔と実際に書き上げられた実トラックの間隔の相関から求められる相関係数やRMSEがその基準となる。これが、管理目標値に満たない場合は、処理1102に戻ってモデルを作り直す。
【0058】
判定1118で適用可能と判定された重回帰式1106は、処理1119で、処理1116で算出された最も不良率が低くなるトラック間隔の狙い値1117を、トラック間隔の制御目標値として代入され、磁気ヘッドの特性値からオーバラップ量を計算する制御式1120となる。この関係は、上記式(6)に示す。算出された制御式1120は、書込み制御データベース817の制御式収蔵部818に保管される。
【0059】
前記書込み制御データベース817を活用したハードディスクドライブの製造の流れを図12に示す。ハードディスクドライブの製造では、磁気ヘッド、アーム、磁気ディスク、アクチュエータや制御基板等の部品を組み立てた後、サーボトラックの自己書込みを行う。図12においてサーボトラック自己書込み装置は、ハードディスクドライブを接続しサーボトラックの書込みを行うセル1201と、複数のセルが搭載されたフレーム1202と、各セル1201に対して制御プログラムや製造条件を指示する制御PC1203からなる。制御PC1203は、ネットワーク1204を介して、製造データベース1205(801)や書込み制御データベース1206(817)と接続されている。
【0060】
ハードディスクドライブがサーボトラック自己書込み装置に接続されてからの処理を、図13のフローチャートに示す。組み立てられたハードディスクドライブは手作業または自動搬送機により、サーボトラック自己書込み装置のセル内にあるコネクターと接続される。接続後、初めに判定1301で接続状態の確認が行われ、接続が不良の場合はエラー1302が表示され、良好に接続されていれば処理1303に進む。処理1303では、接続されたハードディスクドライブの製造番号1304が読み取られる。読み取られたハードディスクドライブの製造番号1304は、処理1305で書込み制御データベース1206(817)に送られる。
【0061】
製造番号1304を受け取った書込み制御データベース1206(817)の処理を、図14のフローチャートに示す。処理1305で送られたハードディスクドライブの製造番号1304から、書込み制御データベースでは、処理1401で、製造来歴や製品情報を基に製造番号1304の製品品種と部品構成1402を特定する。
【0062】
次に、判定1403で、図8に示す制御式収蔵部818に、特定された製品品種と部品構成1402に対応する制御式の有無を判定し、無い場合は処理1404で制御式が無いという信号をサーボトラック自己書込み装置819−822に戻し、あった場合は処理1405と処理1406に進む。
【0063】
処理1405では、製品品種と部品構成1402に対応した制御式1407を図8の制御式収蔵部818から取得する。
【0064】
処理1406では、番号1304に対応した磁気ヘッドの特性値1408を図8の磁気ヘッド特性値収蔵部830から取得する。
【0065】
次に、処理1409で、取得した制御式1407と磁気ヘッドの特性値1408を用いて、オーバラップ量の制御目標値1410を算出する。
【0066】
算出されたオーバラップ量の制御目標値1410は、処理1411でサーボトラック自己書込み装置に送られる。
【0067】
サーボトラック自己書込み装置819−822の処理を、図15のフローチャートに示す。オーバラップ量の制御目標値1410を受け取ったサーボトラック自己書込み装置は、まず処理1501でサーボパターンP0を書込み、次に処理1502で、製造条件で予め定められた固定のヘッド送り量でヘッドを移動させる。この時、ヘッドを送る方向は磁気ディスクの中心から外周方向であり、ヘッドの送り量はヘッドの駆動機構であるアクチュエータやボイスコイルモータの制御単位が基準となる。
【0068】
処理1502で移動したヘッドは、処理1503でサーボパターンP1を書き込む。次に、処理1504でサーボパターンP0とP1のオーバラップ量1505を測定する。
【0069】
処理1506では、処理1504で測定されたオーバラップ量1505とオーバラップ量の制御目標値1410の乖離を計算し、ヘッドの送り量を補正する。ヘッドの送り量はトラック幅と同じである為、式(1)の関係(TW=RW+ SQ−(1−a/b)RW)に従うと、オーバラップ量が制御目標値に対して大きい場合は、送り量を大きく。オーバラップ量が制御目標値に対して小さい場合は、送り量を小さく補正する。
【0070】
処理1508では、補正された送り量1507だけヘッドを送る。次に、処理1509で送られた位置がディスクの終端である、或いは、所定のトラック数を書き上げた等の終了条件を満たすかの判定1509で行い、終了条件に満たない場合は、処理1510でサーボパターンを書込み、処理1511で書き込んだサーボパターンとその1ステップ前に書いたサーボパターンのオーバラップ量を測定し、処理1513でオーバラップ量の測定値1512とオーバラップ量の制御目標値1410の乖離を計算し、ヘッドの送り量を補正する。
【0071】
この処理1507から1513の処理を、判定1509の終了条件を満たすまで繰り返すことで、磁気ディスクの全面にサーボトラックを書き上げることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ハードディスクドライブの基本構成を示す図である。
【図2】サーボセクタのフォーマットを示す図である。
【図3】サーボパターンとリードバック信号の関係を示す図である。
【図4】リードバック信号の模式図である。
【図5】トラック間隔に対する製品不良率とトラック間隔の頻度分布を示す図である。
【図6】確率モデルを用いたシミュレーションの結果を示す図である。
【図7】重回帰式による予想サーボトラック間隔と書込み後の実測トラック間隔の実験結果を示す図である。
【図8】実施例によるハードディスクドライブの製造システムのブロック構成図である。
【図9】制御式演算部に出力される書き上がりサーボトラック間隔、書込み時の制御目標値であるオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を示す図である。
【図10】確率モデル演算部に出力される製品不良情報、書き上がりサーボトラック間隔を示す図である。
【図11】図8のモデル演算部の処理を示すフローチャートである。
【図12】書込み制御データベースを活用したハードディスクドライブの製造の流れを示す図である
【図13】ハードディスクドライブがサーボトラック自己書込み装置に接続されてからの処理を示すフローチャートである。
【図14】図8の書込みデータベースが製造番号を受け取ってからの処理を示すフローチャートである。
【図15】サーボトラック自己書込み装置の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
101…ディスク、102…アーム、103…磁気ヘッド、104…サーボトラック、201…グレイコード、202…バースト信号、301,302…サーボパターン、303,304…リードバック信号、305,404…スクイーズ量、309…サーボトラック間隔、401…リードバック信号、402…リードバック信号を台形に近似した形状、403…読み取り幅、501…製品不良率、502…書き上がりのトラック間隔の頻度分布、801…製造データベース、802…テスト装置、803…サーボ自己書込み装置、804…磁気ヘッド検査装置、805…製品不良情報、806…書き上がったサーボトラックの間隔、807…書込み時のサーボパターンのオーバラップ量、808…磁気ヘッドの特性値、810…モデル演算部、811…制御式演算部、812…RMSEの確率分布、813…確率モデル演算部、816…制御式、817…書込み制御データベース、818…制御式収蔵部、819,820,821,822…サーボ自己書込み装置、823,824,825,826…ハードディスクドライブ、827…制御モデル判定部、829…オーバラップ量演算部、830…磁気ヘッド特性値収蔵部、1201…セル、1202…フレーム、1203…制御PC、1204…ネットワーク、1205…製造データベース、1206…書込み制御データベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフサーボライトを実行してサーボトラックを書き込むステップを含むハードディスクドライブの製造方法において、前記サーボトラックを書き込むステップは、
書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する第1ステップと、
書き上りサーボトラックの間隔と、製品不良情報と、前記RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算する第2ステップと、
前記サーボトラック間隔の制御目標値を前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する第3ステップと、
前記第2制御式と前記磁気ヘッド特性値を用いて前記サーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する第4ステップと、
前記サーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いてハードディスクドライブにサーボトラックを書き込むステップと、
を有することを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値は、製造来歴として蓄積された情報であり、前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量はハードディスクドライブの製造番号単位に収蔵され、前記磁気ヘッドの特性値は磁気ヘッドの製造番号あるいは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品単位に収蔵されていることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記磁気ヘッドの特性値は、読み取り幅とスクイーズ量を含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記磁気ヘッドの特性値として、さらにオーバーライト特性値、主磁極寸法及びエラーレートを含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記第1制御式は前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値を重回帰分析して得られた重回帰式であることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記重回帰分析によって前記RMSEが出力されることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項7】
製造来歴に基づく、ハードディスクドライブの製品不良情報、書き上がりサーボトラックの間隔、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を収蔵する製造データベースと、
前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する制御式演算部と、前記製品不良情報と、書き上がりサーボトラックの間隔と、RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算して前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する確率モデル演算部と、を有するモデル演算部と、
前記モデル演算部から前記第2制御式を受信して収蔵し、前記製造データベースから前記磁気ヘッドの特性値を受信して収蔵し、サーボ自己書込み装置から現在搭載中のハードディスクドライブの製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号などの製品情報を受信し、前記製品情報に合う前記第2制御式を選択し、前記製品情報と選択された前記第2制御式に対応する前記磁気ヘッドの特性値を選択し、前記製品情報に対してサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する書込み制御データベースと、
前記計算されたサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いて現在搭載中のハードディスクドライブに対してサーボトラックを書き込むサーボ自己書込み装置と、
を有することを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項8】
請求項7記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記磁気ヘッドの特性値は、読み取り幅とスクイーズ量を含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項9】
請求項8記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記磁気ヘッドの特性値として、さらにオーバーライト特性値、主磁極寸法及びエラーレートを含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項10】
請求項7記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記第1制御式は前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値を重回帰分析して得られた重回帰式であることを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項1】
セルフサーボライトを実行してサーボトラックを書き込むステップを含むハードディスクドライブの製造方法において、前記サーボトラックを書き込むステップは、
書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する第1ステップと、
書き上りサーボトラックの間隔と、製品不良情報と、前記RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算する第2ステップと、
前記サーボトラック間隔の制御目標値を前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する第3ステップと、
前記第2制御式と前記磁気ヘッド特性値を用いて前記サーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する第4ステップと、
前記サーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いてハードディスクドライブにサーボトラックを書き込むステップと、
を有することを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値は、製造来歴として蓄積された情報であり、前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量はハードディスクドライブの製造番号単位に収蔵され、前記磁気ヘッドの特性値は磁気ヘッドの製造番号あるいは磁気ヘッドとアームを組み合わせた部品単位に収蔵されていることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記磁気ヘッドの特性値は、読み取り幅とスクイーズ量を含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記磁気ヘッドの特性値として、さらにオーバーライト特性値、主磁極寸法及びエラーレートを含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記第1制御式は前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値を重回帰分析して得られた重回帰式であることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のハードディスクドライブの製造方法において、前記重回帰分析によって前記RMSEが出力されることを特徴とするハードディスクドライブの製造方法。
【請求項7】
製造来歴に基づく、ハードディスクドライブの製品不良情報、書き上がりサーボトラックの間隔、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量、磁気ヘッドの特性値を収蔵する製造データベースと、
前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値から、実際のサーボトラック書込み中に制御値として用いられるサーボパターンのオーバラップ量を求める第1制御式を作成し、RMSE(Route Mean Square Error)を級数化して確率分布に変換する制御式演算部と、前記製品不良情報と、書き上がりサーボトラックの間隔と、RMSEの確率分布から、最も歩留まりが高くなる書き上がりのサーボトラック間隔の制御目標値を計算して前記第1制御式に代入し、サーボトラック間隔を制御目標値に書き上げるためのサーボパターンのオーバラップ量を前記磁気ヘッドの特性値に対して求める第2制御式を作成する確率モデル演算部と、を有するモデル演算部と、
前記モデル演算部から前記第2制御式を受信して収蔵し、前記製造データベースから前記磁気ヘッドの特性値を受信して収蔵し、サーボ自己書込み装置から現在搭載中のハードディスクドライブの製造番号とサーボトラック書込みに用いる磁気ヘッド番号などの製品情報を受信し、前記製品情報に合う前記第2制御式を選択し、前記製品情報と選択された前記第2制御式に対応する前記磁気ヘッドの特性値を選択し、前記製品情報に対してサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を計算する書込み制御データベースと、
前記計算されたサーボパターンのオーバラップ量の制御目標値を用いて現在搭載中のハードディスクドライブに対してサーボトラックを書き込むサーボ自己書込み装置と、
を有することを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項8】
請求項7記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記磁気ヘッドの特性値は、読み取り幅とスクイーズ量を含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項9】
請求項8記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記磁気ヘッドの特性値として、さらにオーバーライト特性値、主磁極寸法及びエラーレートを含むことを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【請求項10】
請求項7記載のハードディスクドライブの製造システムにおいて、前記第1制御式は前記書き上りサーボトラックの間隔と、書込み時の制御目標値であるサーボパターンのオーバラップ量と、磁気ヘッドの特性値を重回帰分析して得られた重回帰式であることを特徴とするハードディスクドライブの製造システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−140537(P2010−140537A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314521(P2008−314521)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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