説明

ハーネスの製造方法及びハーネス

【課題】効率的に組付作業を行うことを可能にするハーネスの製造方法及びハーネスを提供する。
【解決手段】ハーネス10を被取付物の所定のルートに沿って配設する際に曲げを要するハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束2を曲げておき、予め曲げて保持した電線束2の外周に複数の線材6を編組してブレード7を形成する。このようにして、予めハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度で曲げたハーネス10を製造(形成)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスの製造方法及びハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械などに用いられるハーネス(ワイヤーハーネス)は、ある程度の耐摩耗性、耐油性、柔軟性を有する複数の線材を編組してなるチューブ状のブレードで数本から数十本の電力ケーブルや信号ケーブルの電線(電線束)を被覆して形成されている。そして、ハーネスは、クランプ部材やコネクタなどを用いて適宜曲げ、分岐、固定しながら所定のルートに沿って機体(被取付物)に組み付けられ、各種機器に接続される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
また、この種のハーネス1は、例えば図5に示すように、複数の電線を束ねた電線束2を編組機3の円筒状の枠体4内から引き出しながら(あるいは枠体4内に引き込みながら)、枠体4の外周(あるいは内周)に沿って回転する複数のキャリアボビン5からそれぞれ繰り出された複数の線材6を電線束2の外周に順次編組して製造される(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−267470号公報
【特許文献2】特開2004−320837号公報
【特許文献3】特開昭63−190215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば数十本の電線を束ねて製造(形成)した太いハーネス1を90度曲げて機体に組み付けるような場合には、ブレード7による大きな反力が生じて曲げが困難になったり、所定の曲げ角を保持することが困難になり、所定のルートに沿ってハーネス1を好適に配設できない、あるいはハーネス1の組付作業に多大な時間と労力を要するという問題があった。特に、周辺の部材との干渉を避ける必要がある箇所においては、ハーネス1の曲げ部が周辺の部材の近傍に配置されるため、ハーネス1の組付作業に多大な時間と労力が必要になる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、効率的に組付作業を行うことを可能にするハーネスの製造方法及びハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0007】
請求項1記載のハーネスの製造方法は、編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスを製造する方法であって、ハーネスを被取付物の所定のルートに沿って配設する際に曲げを要するハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束を曲げておき、予め曲げて保持した電線束の外周に複数の線材を編組してブレードを形成するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載のハーネスは、編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスであって、ハーネスを被取付物の所定のルートに沿って配設する際に曲げを要するハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束を曲げ、予め曲げて保持した電線束の外周に複数の線材を編組してブレードを形成することによって、予めハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で曲げて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のハーネスの製造方法及び請求項2記載のハーネスにおいては、ハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束を曲げておき、このように曲げて保持した電線束の外周に編組機で線材を編組してブレードを形成することにより、予めハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で曲がるハーネスを製造(形成)することが可能になる。そして、このように所定のルートに沿うように予めハーネスが曲げられていることによって、ブレードの反力で所定の曲げ角で曲げることが困難になったり、所定の曲げ角で保持することが困難になることがなく、角度の微調整を行う程度で好適にハーネスを所定のルートに沿って配設することが可能になる。よって、ハーネスの組付作業を効率的に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るハーネスの製造方法及びハーネスについて説明する。なお、本実施形態は、建設機械などに用いられるハーネスの製造方法及びハーネスに関し、編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスの製造方法及びハーネスに関するものである。
【0011】
本実施形態のハーネス10は、例えば図1(a)から図1(c)に示すように、ある程度の耐摩耗性、耐油性、柔軟性を有するポリアミド系繊維などを用いた線材6を編組してチューブ状に形成したブレード7で、数本から数十本の電力ケーブルや信号ケーブルの電線(電線束2)を被覆して形成されている。また、このハーネス10は、予め、機体(被取付物)の所定のルートに沿って配設して組み付ける際に曲げを要するハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度θ1、θ2、θ3で曲げて形成されている。
【0012】
このハーネス10を製造する際には、はじめに、複数の電線を束ね、この電線束2(電線束2の曲げ部11)を予め所定の曲げ角に応じた角度θ3(θ1、θ2)で曲げる。そして、電線束2の両端側を固定するとともに電線束2に下巻テープ12を巻き付け、曲げ部11の角度θ3(θ1、θ2)がある程度所定の曲げ角に応じた角度で維持されるように保持する。ここで、電線束2は、柔軟性を有し、ブレード7で被覆されていないため簡単に曲げることができ、下巻テープ12で固定することによって、ある程度の精度をもって所定の曲げ角に応じた角度θ3(θ1、θ2)で保持することが可能である。
【0013】
このように予め曲げて保持した電線束2の外周に編組機3を用いて複数の線材6を編組してブレード7を形成し、このブレード7で電線束2を被覆する。このとき、図2に示すように、電線束2の曲げ部11を挟んで一方側の直線部13を編組機3の枠体4内から引き出しながら、キャリアボビン5から繰り出された線材6を順次編組して一方側の直線部13の外周にブレード7を形成してゆく。
【0014】
ブレード7が曲げ部11に到達した段階で、図3に示すように電線束2をさらに枠体4から引き出しつつ曲げ部11の角度θ3(θ1、θ2)に応じて傾けながら、線材6を順次編組して曲げ部11の外周にブレード7を形成してゆく。
【0015】
曲げ部11にブレード7を形成した段階で、図4に示すように、電線束2を枠体4から引き出しつつ曲げ部11を挟んで他方側の直線部14の外周に線材6を順次編組してブレード7を形成する。
【0016】
このように電線束2の一方側の直線部13、曲げ部11、他方側の直線部14の外周にブレード7を形成した段階でブレード7の両端部側をそれぞれ適宜溶着するなどして電線束2に固定する。これにより、図1に示すように、予めハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度θ1、θ2、θ3で曲げて形成したハーネス10が製造される。
【0017】
そして、上記のように製造(形成)したハーネス10は、予めハーネス曲げ部11が所定の曲げ角に応じた角度θ1、θ2、θ3で曲げて保持されているため、例えば数十本の電線を束ねて形成した太いハーネス10であっても、角度の微調整を行う程度で好適に所定のルートに沿うように配設される。
【0018】
したがって、本実施形態のハーネス10の製造方法及びハーネス10においては、ハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度θ1、θ2、θ3で予め電線束2を曲げておき、このように曲げて保持した電線束2の外周に編組機3で線材6を編組してブレード7を形成することにより、予めハーネス曲げ部11の所定の曲げ角に応じた角度θ1、θ2、θ3で曲がるハーネス10を製造(形成)することが可能になる。そして、このように所定のルートに沿うように予めハーネス10が曲げられていることによって、従来のようにブレード7の反力で所定の曲げ角で曲げることが困難になったり、所定の曲げ角で保持することが困難になることがなく、角度の微調整を行う程度で好適にハーネス10を所定のルートに沿って配設することが可能になる。よって、ハーネス10の組付作業を効率的に行うことが可能になる。
【0019】
以上、本発明に係るハーネスの製造方法及びハーネスの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、予め所定の角度で曲げた電線束2を編組機3の枠体4内から引き出しながら電線束2の外周にブレード7を形成してゆくものとして説明を行ったが、電線束2を枠体4内に引き込みながらブレード7を形成するようにしてもよく、特に編組機3を用いて電線束2の外周にブレード7を形成する方法を限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るハーネスを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハーネスの製造方法において、予め曲げた電線束の一方側の直線部にブレードを形成している状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るハーネスの製造方法において、電線束の曲げ部にブレードを形成している状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るハーネスの製造方法において、電線束の他方側の直線部にブレードを形成している状態を示す図である。
【図5】従来のハーネスの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
2 電線束
3 編組機
4 枠体
5 キャリアボビン
6 線材
7 ブレード
10 ハーネス
11 曲げ部(ハーネス曲げ部)
12 下巻テープ
13 一方側の直線部
14 他方側の直線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスを製造する方法であって、
ハーネスを被取付物の所定のルートに沿って配設する際に曲げを要するハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束を曲げておき、
予め曲げて保持した電線束の外周に複数の線材を編組してブレードを形成するようにしたことを特徴とするハーネスの製造方法。
【請求項2】
編組機を用いて電線束の外周に複数の線材を編組し、複数の線材を編組して形成したブレードで電線束を被覆してなるハーネスであって、
ハーネスを被取付物の所定のルートに沿って配設する際に曲げを要するハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で予め電線束を曲げ、予め曲げて保持した電線束の外周に複数の線材を編組してブレードを形成することによって、予めハーネス曲げ部の所定の曲げ角に応じた角度で曲げて形成されていることを特徴とするハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−97701(P2010−97701A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265027(P2008−265027)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】