説明

バイオセンサを用いて設定事象をマークする方法

【課題】バイオセンサを用いて所定の事象(例えば体液中のグルコース値)をマークするための装置において、キースイッチの必要性を解消するか最小限にして、従来技術の構成の欠点の多くを解決すること。
【解決手段】バイオセンサは、測定されるユーザ試料を受け取ったスポーク36A〜36Dの測定値(例えば抵抗値)を検出するためのセンサと、所定の試験シーケンスを実行して所定のパラメータ値を測定するためのマイクロプロセッサ52とを含む。所定のパラメータデータ値を記憶するために、メモリ54が該プロセッサ52に結合されている。記憶された所定のパラメータデータ値を用いて複数の所定の事象の一つを選択的にマークするために、前記のスポーク36A〜36Dを有するマーカ部材がユーザによって手動式にプロセッサ52に結合されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にバイオセンサに関し、より詳細には、バイオセンサを用いて所定の事象をマークするための新規で改良された方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体液中の分析対象物の定量は、特定の生理的異常の診断および経過観察に非常に重要である。例えば、特定の個人においては乳酸、コレステロールおよびビリルビンを監視すべきである。特に、食事におけるグルコース摂取を規制する手段として体液中のグルコース濃度を頻繁に検査しなければならない糖尿病患者個人にとって、体液中のグルコースの測定は非常に重要である。本明細書の開示の残りはグルコースの測定に当てられるが、本発明の手順および装置は、適切な酵素の選択をもって、他の分析対象物の測定にも応用しうることが理解されよう。
【0003】
体液中のグルコースの検出に理想的な診断装置またはバイオセンサは、試験を管理する患者もしくはユーザの側に高度な技術を要求しないよう、簡単なものでなければならない。また、バイオセンサは、信頼しうる動作を繰返し提供する頑丈な装置であり、廉価に製造することができるべきである。バイオセンサを用いて患者データを入力するためのキーボードまたは多数のキースイッチの必要性を最小限にするか解消することができれば有利であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の重要な目的は、バイオセンサを用いて所定の事象をマークするための新規で改良された方法および装置を提供し、キースイッチの必要性を解消するか最小限にするそのような方法および装置を提供し、従来技術の構成の欠点の多くを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔には、バイオセンサを用いて所定の事象をマークするための方法および装置が提供される。バイオセンサは、測定されるユーザ試料を受けるためのセンサと、所定の試験シーケンスを実行して所定のパラメータ値を測定するためのプロセッサとを含む。所定のパラメータデータ値を記憶するために、メモリが該プロセッサに結合されている。記憶された所定のパラメータデータ値を用いて複数の所定の事象の一つを選択的にマークするために、マーカ部材がユーザによって手動式にプロセッサに結合される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、図面を参照すると、図1および2には、符号10によって全体として指定され、本発明の原理にしたがって構成されたバイオセンサが示されている。バイオセンサ10は、ベース部材14およびカバー部材16によって形成される蛤の貝殻型の囲い12を含む。ベース部材14とカバー部材16とは、第一の端部18が枢転可能に取り付けられ、反対側の第二の端部22がラッチ部材20によって固定される。表示装置24、例えば液晶表示装置(LCD)がカバー部材16によって担持されている。バイオセンサ10をオンおよびオフに切り換えるには、カバー部材16に取り付けられた、手で動かすことができるスライド28を、図1に示す開位置と、図2に示す閉位置との間で動かす。
【0007】
図2の閉位置、すなわちオフ位置では、スライド28が表示装置24を覆っている。スライド28によって担持されるサムグリップ30が、バイオセンサ10のユーザが手を係合させてオン位置およびオフ位置を選択するために設けられている。サムグリップ30はまた、スライド28のオフ位置で、システム試験作動モードを選択するために左から右に動かすことができる。ユーザがスライド28を図1のオン位置に動かすと、表示装置が露出し、センサ32が提示される。センサ32は、ユーザが血液の滴を付けることができるよう、スロット34を通り抜け、囲い12の外に配される。ユーザが血中グルコース読取り値をセットし、検索し、削除し、また、日付、時刻およびオプションをセットするのに操作するための右ボタン42および左ボタンもしくはスイッチ44が囲い12によって担持されている。
【0008】
次に図3を参照すると、符号36によって指定される、本発明のマーカ部材の例が示されている。マーカ部材36は、複数の所定の事象を選択的にマークするためにスポークの1個を入力開口38に手で挿入するための複数のスポーク36A、36B、36Cおよび36Dを含む。例えば、血中グルコース試験は、食前/食後および他の所定の事象について、ユーザがスポーク36A、36B、36Cおよび36Dの選択された1個をバイオセンサ入力34またはデータポート38に挿入することにより、マークすることができる。スポーク36A、36B、36Cおよび36Dのそれぞれは、異なる所定の測定値、例えば異なる抵抗値を有する。ユーザが選択し、挿入したスポークの抵抗値が識別されて、ある特定の対応する所定の事象がマークされる。マーカ部材36は、使用しないときは、囲い12内に格納することができる。
【0009】
マーカ部材36は、多数のスポークもしくはアーム36A、36B、36Cおよび36Dを備えた図示する環形状に代えて、種々の異なる形状に設けることもできることが理解されよう。例えば、異なる数のアーム36A、36B、36Cおよび36Dを設けることができ、アーム36A、36B、36Cおよび36Dのそれぞれが、異なる長さおよび/または色コードを有し、ユーザに指示するためのプリントされた印を有することができる。マーカ部材36には、環形状に代えて、異なる形状、例えばクリップ形状を使用することができる。
【0010】
次に図4を参照すると、全体として符号50によって指定され、本発明の原理にしたがって構成されたバイオセンサ回路のブロック図が示されている。バイオセンサ回路50は、マイクロプロセッサ52を、プログラムおよびユーザデータを記憶するための関連のメモリ54とともに含む。マイクロプロセッサ52は、図5、6、7、8、9および10に示すように本発明の方法を実行するのに適したプログラミングを含む。血中グルコース試験値を記録するために、センサ32に結合されたメータ機能56がマイクロプロセッサ52によって動作的に制御される。バッテリ(図示せず)切れ状態を検出するために、バッテリモニタ機能58がマイクロプロセッサ52に結合されている。データポートまたは通信インタフェース60が、接続されたコンピュータ(図示せず)との間でデータを行き来させる。
【0011】
バイオセンサ10の血液試験シーケンスモードを実行するため、スライド28のユーザによるオン/オフ操作に応答するライン28Aのオン/オフ入力がマイクロプロセッサ52に結合される。バイオセンサ10のシステム機能モードを選択的に実行するため、サムグリップ30のユーザ操作に応答するライン30Aのシステム機能入力がマイクロプロセッサ52に結合される。バイオセンサ10の所定の事象マーキング機能を実行するため、ライン36A/36B/36C/36Dの所定の事象マーカ入力がマイクロプロセッサ52に結合される。押しボタンスイッチ42および44からのライン42Aおよび44Aのユーザ押しボタン応答入力がマイクロプロセッサ52に印加されて、血中グルコース読取り値がセット、検索および削除され、また、日付、時刻およびバイオセンサオプションがセットされる。
【0012】
次に図5を参照すると、バイオセンサ10のマイクプロセッサ52によって実行される、ブロック500から出発する連続段階を示す流れ図が示されている。判定ブロック502で示すように、ライン28Aのオン入力が識別される。あるいはまた、図6のエントリポイントAに続くブロック600で、ライン30Aのシステム機能入力が識別される。はじめに、図1および2に示すようにサムグリップ30を右に寄せた状態でスライド28を前に動かすことによって計器をオンにすると、マイクロプロセッサ52が、ブロック504に示すように表示装置検査を実行し、ブロック506に示すように計器の自己試験を実行する。ブロック504および506のいずれかでエラーが識別されると、図8のエントリポイントCの後の連続動作が続く。
【0013】
計器の自己試験および表示装置検査ののち、バイオセンサ10は、血液の滴の記号を表示して、ユーザに対し、スライド28をオン位置へと前に動かすことに応答して提示されたセンサ32に血液試料を付けるように促す。判定ブロック508に示すように、血液試料の検査が提供される。バイオセンサ10は、判定ブロック510に示すような計器の時間切れが起こる前に、ユーザが血液試料を付けるための所定期間、例えば15分間待機する。この時間切れ期間は、ユーザが血液試料をセンサ32に付けるのに十分な時間を許し、周囲環境へのセンサ32の露出時間を制限して、試験シーケンスの間にセンサが劣化しないことを保証する。時間切れ期間が経過すると、ブロック512に示すようにアラームを鳴らすことができる。そのとき、血液試料がセンサ32に付けられていないならば、バイオセンサは自動的にオフになり、ブロック514に示すように、連続シーケンスは出発点に戻る。
【0014】
あるいは、ユーザが、ブロック508で識別される血液試料をセンサ32に付けると、バイオセンサ10は、ブロック516に示すように、所定の試験カウントダウン、例えば30秒間のカウントダウンを表示する。ブロック516でエラーが識別されると、図8のエントリポイントCの後の連続動作が続く。カウントダウンが完了すると、バイオセンサ10は、ブロック518に示すように、アラームが使用可能にされているならば例えば1秒間それを鳴らす。そして、バイオセンサ10は、ブロック520に示すように、グルコース試験結果を表示する。そして、図7のエントリポイントBの後の連続動作が続く。
【0015】
次に図6を参照すると、ユーザがサムグリップ30を左の位置に動かし、スライド28を前に動かすことにより、判定ブロック600で示されるように、システム機能モードに入る。ブロック602に示すように、バイオセンサ10が表示装置検査および自己試験を開始する。ブロック602でエラーが識別されると、図8のエントリポイントCの後の連続動作が続く。計器自己試験が完了したのち、バイオセンサ10は、ブロック604に示すように、時間を表示するとともに、ハウジング12中に含まれる残りのセンサの数を表示する。計器が残るセンサの数を表示したのち、バイオセンサは、ブロック606に示すように、最新の試験結果を時間とともに表示する。ブロック608に示すように、次に最新の試験結果がロードされる。ユーザは、判定ブロック610に示すように、いかなるときにも計器をオフにして、連続段階を元に戻すことができる。バイオセンサ10は、判定ブロック612に示すように、ユーザ選択を識別する。判定ブロック612で識別されるユーザ選択が、図9および10に示すようなシステム機能モードを提供する。バイオセンサ10は、操作者がシステム機能モードの一つを選択する(ブロック612)か、操作者が計器をオフにする(ブロック610)か、ブロック616で示すように、所定の遅延、例えば3分間の時間切れが起こるまで、残りのセンサの数を表示し(ブロック604)、最新の試験結果を表示し(ブロック606)続ける。
【0016】
次に図7を参照すると、試験シーケンス中の連続段階は、エントリポイントBの後、判定ブロック700で示すように、ユーザ入力を検査することから継続する。ユーザは、ブロック702および704に示すように、右ボタン42を押して、記録したばかりのグルコース結果を削除する。判定ブロック706で、マーカ入力が識別される。ユーザが所定の事象をマークすることを選択する場合、ユーザが、判定ブロック706で識別されるスポーク36A、36B、36Cまたは36Dの1個を挿入することにより、ユーザが選択した抵抗値の一つがマイクロプロセッサ52に印加される。ブロック708に示すように、選択された所定の事象に対応する識別されたマーカ値が記憶される。そして、ブロック712に示すように、グルコース試験結果が記憶されて、試験シーケンスが完了する。
【0017】
次に図8を参照すると、エラー状態が識別された後の、エントリポイントCの後の連続段階が示されている。まず、ブロック800で示すように、ユーザに見えるようにエラーコードが表示される。次に、判定ブロック802で、エラーのタイプおよび作動モードが識別される。起こりうる誤った試験結果を避けるため、ブロック804に示すように、所定のエラータイプごとに試験ロックアウトが提供される。例えば、バッテリ切れがバッテリモニタ機能58によって識別されると、切れたバッテリが交換されるまで、バイオセンサ10はさらなる操作に対してロックアウトされる。判定ブロック806に示すように、バイオセンサ10がユーザによってオフにされたときのオフ入力が識別される。判定ブロック808で示すように、所定期間内に操作者オフ入力が識別されないと、バイオセンサ10は自らをオフにする。操作者がバイオセンサ10をオフにするか、所定期間の不活動後に計器が自動的にオフになると、ブロック810に示すように、エラーがクリアされる。これでエラーシーケンスが完了する。
【0018】
次に図9および10を参照すると、操作者システム機能入力選択に応答する連続段階が示されている。判定ブロック900に示すように、先の試験結果を見るための操作者選択が識別される。バイオセンサ10は、ブロック902に示すように、所定の平均値、例えば、削除されていない最近2週間のグルコース結果の平均値を表示し、続いて、記憶された試験結果の他の所定の平均値を表示する。そして、ブロック904で、ユーザが右ボタン42を押すことを識別して、バイオセンサ10に次の別個の平均値を表示させるか、あるいは、個々の平均がすべて表示されたならば、バイオセンサ10は、ブロック906で、実行された最新の試験結果を表示する。判定ブロック908に示すように、ユーザによって加えられるクリア入力選択が識別される。クリア入力選択は、ユーザが左ボタン42および右ボタン44を所定の期間、例えば5秒間、押すことによって提供される。そして、ブロック910で示すようにメモリがクリアされる。
【0019】
判定ブロック912に示すように、日付、時刻または平均入力を変更するための操作者の選択が識別される。バイオセンサ10は、ブロック914に示すように、現在の情報またはオプション、例えば現在時刻を表示し、ブロック916で、左ボタン44を使用して、表示された現在情報を受け入れ(記憶し)、変更または編集すべき次のオプション(情報)を選択する。
【0020】
図10を参照すると、判定ブロック918に示すように、計器の優先順位を変更するための操作者の選択が識別される。バイオセンサ10は、ブロック920に示すように、現在のオプション、例えばアラーム使用可能または使用不能モードを表示し、ブロック922に示すように、ユーザ選択オプションを受け、変更されたオプションを記憶する。
【0021】
判定ブロック924に示すように、コンピュータ入力への接続が識別される。バイオセンサ10は、コンピュータ(図示せず)が接続されたことを検出すると、コンピュータモードへの接続を入力する。バイオセンサ10は、結果データ信号をダウンロードして、メモリ結果を接続されたコンピュータにダウンロードするように要求を出す。バイオセンサは、承認を受け取り、ブロック926に示すように、バイオセンサのメモリ54に記憶された結果データを接続されたコンピュータにダウンロードする。
【0022】
図面に示す本発明の実施態様の詳細を参照しながら本発明を説明したが、これらの詳細は、請求項によって請求される本発明の範囲を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のバイオセンサを開位置で示す拡大斜視図である。
【図2】図1のバイオセンサを閉位置で示す拡大斜視図である。
【図3】本発明のバイオセンサマーキング環部材の平面図である。
【図4】図1のバイオセンサのバイオセンサ回路を示すブロック図である。
【図5】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【図6】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【図7】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【図8】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【図9】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【図10】図1のバイオセンサによって実行される論理段階を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0024】
10 バイオセンサ
14 ベース部
16 カバー部
20 ラッチ部材
24 表示装置
28 スライド
30 サムグリップ
32 センサ
36 マーカ部材
42 右ボタン
44 左ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンサを用いて設定事象をマークする方法において、
ユーザ試料を受けるためのセンサと試験シーケンスを実行して設定パラメータ値を測定するためのプロセッサとを有するバイオセンサを用意する段階と、
複数の異なる電気的に測定可能な値を含むマーカ部材を用意する段階と、
複数の設定事象の一つを選択的にマークするために、該複数の異なる電気的に測定可能な値の一つを該プロセッサに選択的に手動結合する段階と、
を含み、
該マーカ部材が複数のスポークを含み、該複数のスポークそれぞれが、該設定事象の一つに対応する信号を該プロセッサに印加することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−304107(P2007−304107A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174877(P2007−174877)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【分割の表示】特願平8−246246の分割
【原出願日】平成8年9月18日(1996.9.18)
【出願人】(391007079)バイエルコーポレーション (12)