説明

バイオセンサ

【課題】精度の向上した測定結果を得られるバイオセンサを提供する。
【解決手段】特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された、第1作用極と、前記特定の基質との反応する性質が失われた、前記生体触媒が配置された、第2作用極と、前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくと1つの対極と、を含むバイオセンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトや動物の体液に含まれる特定の基質を測定するバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者の腹部や腕部に植え込んだ電気化学センサを利用して、血液,尿,間質液のような体液中の被検物質に関する数値情報、例えば、被検者の間質液中のグルコース濃度(いわゆる血糖値)を連続的に測定する技術が知られている。電気化学センサは、電気化学反応を利用して微量な電流を検出可能なセンサであり、酸化還元反応を生じる微量な化学物質の検出に適している。
【0003】
グルコース濃度を測定するための電気化学センサとして、センサ部に酵素を固定化し、酵素反応を利用して試料中の被検物質を検出するバイオセンサを用いることが多い。この種のバイオセンサは、一般に、作用極と対極とを有しており、作用極には酵素(例えば、グルコース酸化酵素)が固定化されている。グルコース濃度は、作用極と対極との間に電圧を印加した場合に得られる応答電流に基づいて測定することができる。
【0004】
グルコース酸化酵素は、酸素の存在下、グルコースと選択的に反応してグルコン酸を生成する。この際に、酸素が還元される一方で、グルコースの量に比例した過酸化水素が生成される。過酸化水素は、電気化学的に容易に酸化することができるので、一対の電極を用いて測定することができる。すなわち、応答電流値は、このように酵素の酸化反応により発生した過酸化水素を電気的に酸化することにより得ることができる。そして、グルコース濃度は、連続的に得られる応答電流値から定期的に電流をサンプリングすることで得られるサンプリング電流に基づいて演算することができる。
【0005】
ところで、生体液中には、上述したグルコース測定のための応答電流の測定値に干渉を及ぼす干渉物質が含まれることがある。干渉物質として、例えば、アスコルビン酸,赤血球,ビタミンCが知られている。グルコース濃度の測定対象となる生体液に干渉物質が含まれていると、応答電流中に、酵素による酸化還元反応に由来する信号成分だけでなく、干渉物質と電極との反応のような非酵素的な反応(非特異反応)に由来する信号成分が混在する。この場合、応答電流に基づき得られたグルコース濃度が、実際の値と著しく異なってしまう可能性があった。
【0006】
応答電流の観測では、当該応答電流に非特異反応に由来する信号成分が含まれているか否かの判断は困難である。そこで、従来では、センサの電極上に干渉物質除去膜を作成し、生体成分以外の干渉物質が電極と反応することが防止する技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公報第5356786号公報
【特許文献2】米国特許公報第7003341号公報
【特許文献3】米国特許公報第7190988号公報
【特許文献4】米国特許公報第7462264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたような干渉物質除去膜を電極上に作成する技術
では、電極上に試薬を配置する構成が複雑となる。また、干渉物質除去膜は、意図された特定の干渉物質しか除くことができなかった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、干渉物質の影響を抑えて精度の高い基質の物理量の測定結果を得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記した課題を解決するため、以下の構成を採用する。
すなわち、本発明の第1の態様は、バイオセンサであって、
特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質が失われた、前記生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を含む。
【0011】
本発明の第1の態様によると、少なくとも1つの対極と第1作用極との間、少なくとも1つの対極と第2作用極との間の夫々に電圧を印加すると、第1作用極からの応答電流(第1応答電流と称する)と、第2作用極からの応答電流(第2応答電流と称する)とが得られる。第1応答電流は生体触媒と特定の基質の反応(生体触媒反応)に由来する信号成分と、生体触媒反応に由来しない信号成分とを含むのに対し、第2応答電流は生体触媒と特定の基質の反応に由来する信号成分を含んでいない。すなわち、第2応答電流は、生体触媒反応に由来しない信号成分のみを含んでいると考えることができる。よって、例えば、第1応答電流から第2応答電流を差し引くことで、第1応答電流から生体触媒反応に由来する信号成分を抽出することができる。これにより、正確な特定の基質の物理量(例えば濃度)を求めることが可能となる。
【0012】
第1の態様において、第1作用極及び第2作用極の夫々から応答電流を得るための対極の数は1つに限られない。すなわち、第1作用極及び第2作用極の夫々に対応する対極が用意されていても良い。もっとも、第1作用極と第2作用極との間で共通な対極を1つ設けることで、バイオセンサの製造工数の低減、バイオセンサの小型化・簡素化を図ることができる。また、対極及び作用極以外に参照極が設けられていても良い。
【0013】
本発明の第1の態様は、前記特定の基質と反応する性質を有する生体触媒を前記第2作用極に配置し、前記第2作用極に対してエネルギーを与えて、前記生体触媒の前記性質を失わせる、構成を採用することができる。上記エネルギーは、例えば、熱エネルギー及び電気的エネルギーの少なくとも一方を適用することができる。
【0014】
また、本発明の第1の態様は、前記特定の基質と反応する性質を有する生体触媒を前記第2作用極に配置し、前記第2作用極に対して前記生体触媒の前記性質を喪失または阻害する物質を添加し、前記生体触媒の前記性質を失わせる、ように構成されていても良い。
【0015】
また、本発明に適用可能な生体触媒は、例えば、酵素である。酵素は、物理量の測定対象の特定の基質に応じた酵素が選択される。例えば、特定の基質がグルコースであれば、酵素として、グルコース酸化酵素(グルコースオキシダーゼ:GOD)やグルコース脱水素酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ:GDH)を適用することができる。
【0016】
本発明の第2の態様は、バイオセンサであって、特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なく
とも1つの対極と、を備え、前記第1生体触媒及び前記第2生体触媒の前記基質との反応速度はそれぞれ異なることを特徴する。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、第1生体触媒と第2生体触媒の上記基質との反応速度が夫々異なる。すなわち、第1生体触媒と第2生体触媒とは、異なる最大反応速度Vmaxと
ミカエリス定数Kmとの少なくとも一方を有する。言い換えれば、両者は異なるキャリブレーションカーブを有する。このことは、第1生体触媒との反応から基質の物理量を求めるための検量線と、第2生体触媒の反応から基質の物理量を求めるための検量線とが異なることを意味する。
【0018】
そして、第2の態様に係るバイオセンサで、同一の体液について第1作用極から応答電流yを得るとともに、第2作用極から応答電流y´を得る場合において、体液中に含まれる干渉物質が第1作用極及び第2作用極に対して等しく影響を与えると仮定するならば、応答電流y及びy´は、次のように表すことができる。
y=ax+c・・・(1), y´=bx+c・・・(2)
【0019】
ここに、cは、干渉物質のような非生体触媒の反応に由来する信号成分であり、aは第1生体触媒に応じた検量線係数であり、bは第2生体触媒に応じた検量線係数である。また、xは、体液中の特定の基質の物理量である。上記式(1)及び(2)を用いて、次のxを求める式(3)を得ることができる。
x=(y−y´)/(a−b)・・・(3)
よって、特定の基質の物理量を正確に測定することができる。
【0020】
第2の態様において、前記第1生体触媒及び前記第2生体触媒は、例えば、酵素である。酵素としては、例えば、第1の態様において説明したものを適用することができる。また、第2生体触媒としては、前記第1生体触媒に対して遺伝子改変を施した酵素を適用することができる。
【0021】
本発明の第3の態様は、バイオセンサであって、特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を備え、
前記第1作用極上と前記第2作用極上の前記反応面積は異なることを特徴とする。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、第1作用極上と第2作用極上の反応面積が異なることで、第2の態様と同様に、第1作用極からの応答電流から特定の基質の物理量を求める検量線と、第2作用極からの応答電流から特定の基質の物理量を求める検量線が異なることになる。よって、第2実施形態と同様の手法を用いて、特定の基質の物理量xを求めることができるので、正確な物理量xを測定することが可能となる。
【0023】
本発明の第4の態様は、バイオセンサであって、特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を備え、
前記第1作用極上と前記第2生体触媒上のそれぞれの総反応活性は異なることを特徴と
する。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、第1作用極上と第2作用極上のそれぞれの総反応活性が
異なることで、第2及び第3の態様と同様に、第1作用極からの応答電流から特定の基質の物理量を求める検量線と、第2作用極からの応答電流から特定の基質の物理量を求める検量線が異なることになる。よって、第2実施形態と同様の手法を用いて、特定の基質の物理量xを求めることができるので、正確な物理量xを測定することが可能となる。
【0025】
第3の態様及び第4の態様における第1生体触媒及び第2生体触媒は、同種類の生体触媒であっても良く、異なる生体触媒であっても良い。また、第1生体触媒及び第2生体触媒の夫々は、例えば酵素であり、第1の態様について説明した酵素を適用することができる。
【0026】
本発明の第5の態様は、測定機であって、特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出する、第1検出部と、
前記特定の基質との反応する性質が失われた前記生体触媒が配置された第2作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出する、第2検出部と、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正する補正部と、
前記補正された前記特定の基質の濃度を出力する出力部とを含む。
【0027】
第5の態様における前記補正部は、前記第1信号値から前記第2信号値を減じた値を前記特定基質の補正濃度として算出する、ように構成することができる。
【0028】
本発明の第6の態様は、測定機であり、特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出する、第1検出部と、
前記特定の基質と反応する性質を有し、かつ前記第1生体触媒とは反応速度が異なる、第2生体触媒が配置された第2作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出する、第2検出部と、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正する補正部と、
前記補正された前記特定の基質の濃度を出力する出力部とから構成される。
【0029】
第6の態様において、前記補正部は、或る時間tにおける前記第1信号y(t)を検量線係数a,前記特定基質の濃度x,及び前記生体液中の特定基質以外の物質に基づく信号成分cにより一次関数y(t)=ax(t)+cで表し、前記或る時間tにおける前記第2信号y´を検量線係数b,前記特定物質の濃度x,及び前記信号成分cにより一次関数y´(t)=bx(t)+cで表したときに、前記第1信号y(t)及び前記第2信号y´(t)中の前記信号成分cの値が等しいとの仮定において前記特定基質の濃度x(t)を以下の式に基づいて求めるように構成することができる。
(式) x(t)=(y(t)−y´(t))/(a−b)
【0030】
本発明の第7の態様は、特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加による得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出するステップと、
前記特定の基質との反応する性質が失われた前記生体触媒が配置された第2作用極と対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出するステップと、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正するステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラムである。
【0031】
第7の態様は、前記補正するステップにおいて、前記第1信号値から前記第2信号値を減じた値を前記特定基質の補正濃度として算出する、ように構成することができる。
【0032】
本発明の第8の態様は、特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加による得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出するステップと、
前記特定の基質と反応する性質を有し、かつ第1生体触媒とは反応速度の異なる第2生体触媒が配置された、第2作用極と対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出するステップと、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正するステップと、
を情報処理装置に実行させるプログラムである。
【0033】
第8の態様は、前記補正するステップにおいて、或る時間tにおける前記第1信号y(t)を検量線係数a,前記特定基質の濃度x,及び前記生体液中の特定基質以外の物質に基づく信号成分cにより時間の一次関数y(t)=ax(t)+cで表し、前記或る時間tにおける前記第2信号y´を検量線係数b,前記特定物質の濃度x,及び前記信号成分cにより時間の一次関数y´(t)=bx(t)+cで表し、前記第1信号y(t)及び前記第2信号y´(t)中の前記信号成分cの値が等しいと仮定し、前記特定基質の濃度x(t)を以下の式により求める、ように構成することができる。
(式) x(t)=(y(t)−y´(t))/(a−b)
【0034】
また、本発明は、上記した第7および第8の態様とほぼ同様の構成を有する測定方法の発明、あるいは、第7および第8の態様にかかるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の発明として特定することが可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、干渉物質の影響を抑えた精度の高い基質の物理量の測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態における測定機の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示したバイオセンサ(グルコースセンサ)の構成例を示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)はA−A線断面図である。
【図3】図1に示した制御コンピュータに係る構成例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る制御部のプログラム処理の例を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態における第1作用極及び第2作用極からの応答電流とグルコース濃度の関係を示すグラフである。
【図6】第2実施形態における制御部のプログラム処理の例を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の作用効果を説明するシミュレーション実験例を示すグラフであって、センサ出力(応答電流)の時間変化を示す。
【図8】第2実施形態の作用効果を説明するシミュレーション実験例を示すグラフであって、検体濃度の時間変化を示す。
【図9】本発明の実施例1を示すグラフであり、グルコース添加時における応答電流密度を示す。
【図10】本発明の実施例1を示すグラフであり、アスコルビン酸添加時における応答電流密度を示す。
【図11】本発明の実施例1を示すグラフであり、グルコース添加による応答電流密度と、アスコルビン酸添加による応答電流密度への影響を示すとともに、本発明に係る補正方法にて補正した補正電流密度の時間変化を示す。
【図12】本発明の実施例2に係るグラフであり、天然GDHで調整した主センサ(Main WE)、及び遺伝子改変GDHで調整した副センサ(Sub WE)のグルコースに対する検量線を示す。
【図13】本発明の実施例2に係るグラフであり、主センサ及び副センサのセンサ出力の推移を示す。
【図14】本発明の実施例2に係るグラフであり、主センサのセンサ出力と副センサのセンサ出力とを用いて補正したグルコース濃度の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。実施の形態の構成は零時であり、本発明は実施の形態の構成に限定されない。
【0038】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態にかかる測定装置(測定機)1の概略構成を示す図である。図1に示す測定機1は、体液中の特定の基質の物理量として、ヒトや動物の間質液または血液中のグルコースの濃度を連続的に自動で測定するために使用される。測定装置1は、筺体(ハウジング)2と、制御コンピュータ3と、電気化学センサ4とを備えている。
【0039】
電気化学センサ4は、電気化学的反応を利用して特定の被検物質を検出するセンサであり、本実施形態ではバイオセンサが適用されている。バイオセンサは、生物または生物由来の材料を、被検物質を検出する素子として用いて、被検物質を連続的に測定、検出する。
【0040】
本実施形態における電気化学センサ4は、間質液または血液中のグルコース濃度を連続的に測定するために用いられる。以下、電気化学センサ(バイオセンサ)4を、「グルコースセンサ4」と称する。
【0041】
筺体2は、測定機1の外形をなすものであり、カバー20および基板21を含んでいる。カバー20および基板21は相互に固定されており、これらによって画定される制御コンピュータ3が収容されている。筺体2は、防水性あるいは耐水性を有する材料を用いて構成される。筺体2は、たとえば、少なくともカバー20(必要に応じて基板21)が、金属や合成樹脂などの透水性の極めて低い材料により形成されることができる。合成樹脂としては、たとえば、ポリプロピレンを適用することができる。
【0042】
基板21には、グルコースセンサ4の基端部40Aが固定され、グルコースセンサ4の末端部40Bは、基板21に設けられた図示しない挿通口を通じて筺体2の外部に延出する。基板21の外面には、接着フィルム5が固定されている。接着フィルム5は、測定機1を被検者の皮膚上に固定するために使用される。接着フィルム5として、たとえば、両面粘着性を有する両面テープが適用される。
【0043】
制御コンピュータ3は、グルコースセンサ4に対する電圧印加、応答電流からのグルコース濃度の演算のような、グルコースを測定するための所定の動作を実施するために必要なコンピュータなどを構成する電子部品群と、グルコースセンサ4が備える電極42との電気的接続を行う端子30とを備えている。端子30は、グルコースセンサ4に電圧を印加して、グルコースセンサ4から応答電流値を得るために利用される。
【0044】
グルコースセンサ4は、間質液中のグルコース濃度に応じた応答を得るために使用される。グルコースセンサ4の末端部には、間質液中のグルコースを検出するための生体触媒である酵素が固定されたセンサ部が形成されており、少なくともセンサ部が皮下に植え込まれて使用される。本実施形態の例では、図1に示すように、グルコースセンサ4の筺体2の基板21から外方へ延出した部分が皮膚6に挿入されている。
【0045】
図2は、本発明の第1実施形態に係るグルコースセンサ4の構成例を示す図であり、図2(A)は、グルコースセンサ4の平面図であり、図2(B)は、図2(A)に示したグルコースセンサのA−A断面図である。図2(A)(B)に示すように、グルコースセンサ4は、基板41と、基板41上に形成された電極及びリード線と、酵素固定部とを備えている。
【0046】
すなわち、基板41の片面上には、金属層42a,42b及び42cが形成されている。金属層42a,42及び42cは、フィルム状の基板41の片面に、金や白金等の金属を物理蒸着(PVD,例えばスパッタリング)、或いは化学蒸着(CVD)により製膜し、レーザでトリミングを行うことにより形成することができる。基板41の材料には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE)のような熱可塑性樹脂,ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂のような、人体への害がなく、適当な絶縁性及び可撓性を有する樹脂を適用することができる。
【0047】
金属層42a,42b及び42cの夫々は、基板41の末端から基端へ亘って基板41の長手方向に形成されており、各末端部が第1作用極42A,第2作用極42B及び対極42Cとして利用される。これに対し、金属層42a,42b及び42cの中間部及び基端部は、それぞれリード線として利用される。
【0048】
金属層42a,42b及び42cの基端部は、基板41の基端部に設けられたコンタクトバッド44A,44B,44Cと夫々接続されている。コンタクトパッド44A,44B,44Cは、制御用コンピュータ3の端子30(図1)との電気的な接続に利用される。コンタクトパッド44A,44B,44Cは、例えば、金属層42a,42b,42cのトリミングにより電極及びリード線と一体に形成することができる。もっとも、コンタクトパッド44A,44B,44Cは、金属層と別の工程で導体を用いて形成されるようにしても良い。本実施形態では、端子30は、制御用コンピュータ3と接続されたポテンショスタット3Aの端子W1,端子W2及び端子CRを含んでおり、コンタクトパッド44A,44B,44Cは、端子W1,W2,CRに夫々接続されている。
【0049】
具体的には、図1において、コンタクトパッド44A,44B,44Cの図示は省略されているが、測定機1の基板21とカバー20とを接合した場合に、グルコースセンサ4の基端部が制御用コンピュータ3の基板3aと基板21とで挟まれて固定された状態となる。この際に基板3aに設けられた端子30がコンタクトパッド44A,44B,44Cに押しつけられた状態で固定されることで、グルコースセンサ4と測定機1とが電気的に接続された状態となる。
【0050】
対極42Cとしての金属層42cの所定領域上には、参照極42Dが形成されている。参照極42Dは、例えば、銀塩化銀インクを対極42C上の所定領域に塗布又は印刷することで形成することができる。
【0051】
一方、金属層42a及び42bの末端側の所定領域には、カーボンペーストをスクリーン印刷することで形成されたカーボン層45a,45bが積層されている。これにより、金属層42a及びカーボン層45aからなる第1作用極42Aが形成され、金属層42b及びカーボン層45bからなる第2作用極42Bが形成されている。
【0052】
以上のように、本実施形態のグルコースセンサ4は、第1作用極42A,第2作用極42B,対極42C及び参照極42Dからなる電極42を備える。但し、参照極42Dは省略可能である。また、図2に示す例では、第1作用極42A及び第2作用極42Bに共通な対極42Cが設けられているが、第1作用極42A及び第2作用極42Bに夫々対応する二つの対極が設けられていても良い。
【0053】
カーボン層45A,45Bの上には、酵素が固定化された酵素固定化層43A,43Bがそれぞれ形成されている。酵素固定化層43A,43Bは、グルコースと反応するグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)をカーボン層45A,45B上に分注し、グルタルアルデヒドのような固定化物質で固定化することにより形成されている。以上のようにして、グルコースセンサ4の末端部にセンサ部40Cが形成されている。以下、酵素固定化層43Aを第1酵素固定部43Aと表記し、酵素固定化層43Bを第2酵素固定部43Bと表記することもある。
【0054】
第1作用極42A及び第2作用極42Bは、対極42Cを挟んで配置され、第1作用極42A及び第2作用極42Bと対極42Cとの距離は夫々等しくなるように配置されている。また、カーボン層45A,45B,及び酵素固定化層43A,43Bの面積は、同面積となるように形成され、酵素固定化層43A,43Bに含まれる酵素量は等しくなるように形成されている。すなわち、グルコースセンサ4は、同一構成を有する二つの作用極42A,42B及び第1及び第2酵素固定部43A,43B(酵素固定部43,図1)を有するように構成されている。
【0055】
図3は、測定機1内に収容された主な電子部品の構成例を示す。図3に示すような、制御コンピュータ3,ポテンショスタット3A,電力供給装置11が、筐体2内に収容された基板3aに設けられている。図3では、表示ユニット14は、基板3aに含まれているように図示されているが、実際には、図1に示すように、表示ユニット14は、グルコース濃度の演算結果を表示するための表示パネル15を有する。また、表示ユニット14の筐体17は、筐体2と同様に、接着フィルム5などによって皮膚上に固定することができる。
【0056】
図3に戻って、制御コンピュータ3は、ハードウェア的には、CPU(中央演算処理装置)のようなプロセッサと、メモリ(RAM(Random Access Memory), ROM(Read Only Memory))のような記録媒体と、通信ユニットと、図示しない入出力装置(I/O
)とを含んでおり、プロセッサが記録媒体(例えばROM)に記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することによって、通信部10,制御部12及び記憶部13を備えた装置として機能する。なお、制御コンピュータ3は、半導体メモリ(EEPROM,フラッシュメモリ)やハードディスクのような、補助記憶装置を含んでいても良い。
【0057】
制御部12は、電圧印加のタイミング,印加電圧値,応答電流のサンプリング,グルコース濃度の演算,或いは外部の情報処理端末との通信を制御する。通信部10は、表示ユニット14(図1)との間でデータ通信を行い、制御部12によるグルコース濃度の演算結果を表示ユニット14に送信する。データ通信は、ケーブルを用いた有線通信であっても良く、赤外線や無線を用いた非接触通信(IrDA、ブルートゥース)を適用することも可能である。表示ユニット14は、例えば、測定機1から受信されたグルコース濃度の演算結果を所定のフォーマットで表示画面(表示パネル15)に表示することができる。
【0058】
電力供給装置11は、バッテリ110を有しており、制御部3やポテンショスタット3Aに動作用の電力を供給する。なお、電力供給装置11は、筐体2の外部に置くこともできる。
【0059】
ポテンショスタット3Aは、第1作用極42A,第2作用極42Bの電位を参照電極42Dに対して一定にする装置である。ポテンショスタット3Aは、端子CR,W1及びW2を用いて対極42Cと第1作用極42Aとの間、対極42Cと第1作用極42Bとの間に所定の電圧を印加し、端子W1で得られる第1作用極42Aの応答電流(第1応答電流)を測定するとともに、端子W2で得られる第2作用極42Bの応答電流(第2応答電流)を測定し、第1及び第2応答電流の測定結果を制御部12に送る。
【0060】
なお、制御コンピュータ3の制御部12及び記憶部13としての機能が表示ユニット14に搭載され、筐体2側では、ポテンショスタット3Aによる測定結果が通信部10によって表示ユニット14へ送信されるようにしても良い。或いは、制御コンピュータ3及びポテンショスタット3Aが表示ユニット14に搭載され、グルコースセンサ4に対する電圧印加及び応答電流検出が表示ユニット14に搭載されたポテンショスタット3Aにより実行されるようにしても良い。
【0061】
図4は、第1実施形態における制御コンピュータ3によるグルコース濃度測定処理の例を示すフローチャートである。前提として、測定機1及びグルコースセンサ4が適正に被検者の所定位置(腹部或いは腕部)に設置され、センサ部40Cが間質液中に浸漬されていることとする。
【0062】
図4において、制御コンピュータ3のCPU(制御部12)は、外部から発せられたグルコース濃度測定の開始指示を受け付けると、ポテンショスタット3Aを制御し、第2作用極42Bのみに過電流を通電する(ステップS01)。測定機1は、図示しない入力装置を有しており、入力装置を用いて測定開始及び測定終了の指示を制御コンピュータ3に対して入力することができる。開始指示を受け付けた制御部12は、例えば、第1作用極42Aと端子W1間との間に設けられたスイッチSWを開放して、第1作用極42Aに電流が流れない状態にする一方で、対極42Cと第2作用極42Bとの間に、過電流を所定の時間通電する。これによって、第2作用極42B上の第2酵素固定部43Bに固定化された酵素(GDH)が失活状態にされる。過電流は、通電によって対極42Cや第2作用極42Bがダメージを受けない程度の電流とされる。通電すべき電流値、及び通電時間は、酵素量や失活速度を考慮して、適宜設定可能である。
【0063】
第2作用極42Bへの過電流の通電によって、第2作用極42B側は、酵素が特定の基質であるグルコースと反応する性質が失われた状態を除き、第1作用極42A側と同様の構成を有する状態となる。
【0064】
次に、制御部12は、スイッチSWを閉じ、ポテンショスタット3Aを制御して、第1作用極42A及び第2作用極42Bへの所定の電圧印加を開始し(ステップS02)、第1作用極42Aからの応答電流(第1応答電流)及び第2作用極42Bからの応答電流(第2応答電流)の測定を開始する(ステップS03)。ポテンショスタット3Aは、電圧印加によって得られる第1及び第2応答電流を夫々測定し、制御部12へ送る。
【0065】
制御部12は、第2応答電流を用いて第1応答電流を補正する補正処理を行う(ステップS04)。すなわち、制御部12は、次のような処理を行う。ここに、第1応答電流値は、第1酵素固定部43Aに含まれる活性状態のGDHとグルコースとの反応に由来する電流成分(信号成分)を含んでいる。もし、間質液がアスコルビン酸のようなグルコース濃度測定に影響を及ぼす干渉物質を含んでいるならば、第1応答電流値には、干渉物質の影響のような、酵素反応以外の反応由来(非酵素反応由来)の信号成分を含むことになる。
【0066】
これに対し、第2応答電流値は、第2酵素固定部43BにおけるGDHが失活しているので、GDHとグルコースとの反応に由来する信号成分は含まれず、非酵素反応由来の信号成分のみを含むことになる。従って、酵素反応由来の信号成分をm、酵素反応以外の反応由来の信号成分をnとすれば、第1応答電流値y及び第2応答電流値をy´(y及びy´は時間tの関数)は、次のような一次関数で表すことができる。
y(t)=m(t)+n(t)・・・(式1),y´(t)=n(t)・・・(式2)
【0067】
よって、制御部12は、上記式1及び式2に従って、第1応答電流値から第2応答電流値を差し引くことで、非酵素反応由来の信号成分nを第1応答電流値から除去することができる。
【0068】
制御部12は、信号成分nが除去された第1応答電流値(補正電流値)に基づいて、公知の手法を用いたグルコース濃度の演算処理を行い、時間(t)におけるグルコース濃度を算出する(ステップS05)。例えば、制御コンピュータ3の記憶部13は、第1酵素固定部43Aに固定化されたGDHに対応するグルコース濃度の検量線データを予め保持しており、制御部12は、検量線データで示される検量線を用いてグルコース濃度を割り出す。或いは、制御部12は、所定のグルコース濃度の演算式に、補正に係る第1応答電流値を代入してグルコース濃度を算出する。
【0069】
通信部10は、算出されたグルコース濃度の算出結果を、表示ユニット14との間に形成された通信リンク18を通じて表示ユニット14へ送信する(ステップS06)。その後、制御部12は、測定が終了か否かを判定し、測定が終了であれば、図4のフローによる処理を終了する。これに対し、測定が終了でない場合には、処理をステップS02に戻す。これによって、測定終了指示の入力のような、測定終了のトリガが入力装置を通じて制御コンピュータ3に入力されるまで、グルコース濃度が連続的に測定される。表示ユニット14では、測定機1からグルコース濃度の測定結果が連続して受信されることで、例えば、グルコース濃度の時間変化をプロットしたグラフを作成し、表示画面(表示パネル15)に表示することができる。
【0070】
第1実施形態によれば、第1応答電流値から第2応答電流値として得られた非酵素反応由来の信号成分が除去されるので、第1応答電流値は実際の酵素反応由来の信号成分による応答電流値に補正される。このように補正された応答電流値でグルコース濃度が算出されるので、精度の向上したグルコース濃度を得ることができる。
【0071】
第1実施形態は、以下のような変形が可能である。第1実施形態では、第2作用極42Aへ過電流を通電することにより、第2作用極42Bに対応する酵素固定部43Bの酵素を失活させたが、他の方法により酵素を失活させても良い。例えば、加熱によりグルコースとの反応作用を失活した酵素(GDH)を分注して酵素固定部43Bが形成されるようにしても良い。可能であれば、被検者への測定機1及びグルコースセンサ4の設置前に、酵素固定部43Bを加熱して酵素固定部43Bの酵素を失活させることも考えられる。
【0072】
或いは、組成がグルコースとの反応が失活される程度に粉砕(すりつぶし)された酵素(GDH)を用いて第2酵素固定部43Bが形成されるようにしても良い。或いは、酵素反応の失活を促進又は阻害する物質(例えば、アジ化ナトリウム)をグルコースセンサ4の製造工程、またはグルコース濃度測定前に第2酵素固定部43Bに添加して、測定時において第2酵素固定部43Bの酵素が失活状態となるようにしても良い。このように、測定開始前に、酵素失活処理が施される場合には、図4に示したステップS01のような過電流通電処理や、過電流通電処理のために用いられるスイッチSWは省略が可能である。
【0073】
また、第1実施形態では、酵素としてGDHを用いた例を示したが、GDHの代わりに
グルコースオキシダーゼ(GOD)を適用しても良い。また、第1実施形態では、特定の基質としてグルコースを例示したが、他の特定の基質の物理量の検出を目的として、当該他の特定の基質に応じた生体触媒を測定し、第1実施形態の構成を有するバイオセンサ及び測定機を用いて、精度の向上した物理量を得ることが可能である。
【0074】
また、第1実施形態では、第1応答電流値から第2応答電流値を差し引くことで、応答電流値を補正していたが、第1応答電流値及び第2応答電流値に基づくグルコース濃度の算出結果を得て、第1応答電流値に基づくグルコース濃度演算結果から第2応答電流値に基づくグルコース濃度演算結果を差し引き、補正されたグルコース濃度を得ることで、精度の向上したグルコース濃度を得るようにしても良い。
【0075】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と共通する構成を有するので、主として第1実施形態との相違点について説明し、共通点については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2実施形態におけるバイオセンサ(グルコースセンサ)及び測定機1の物理的な構成は、第1実施形態にて説明したものを適用することができる。但し、第2実施形態では、バイオセンサ(グルコースセンサ4)における第1酵素固定部43A,第2酵素固定部43Bの構成が、第1実施形態と異なる。
【0077】
すなわち、第2実施形態では、第1酵素固定部43A,第2酵素固定部43Bに含まれる酵素(GDH)として、検量線の異なるものが適用される。第2実施形態の例では、第1酵素固定部43Aに適用されるGDHとして、天然のGDHが適用され、第2酵素固定部43Bに適用されるGDHとして、天然のGDHに遺伝子改変を施したGDHが適用されている。
【0078】
第1酵素固定部43Aに適用されたGDH(第1酵素:第1生体触媒)と、第2酵素固定部43Bに適用されたGDH(第2酵素:第2生体触媒)とは、ミカエリス定数Kmが異なる。このような第1酵素及び第2酵素が固定化された第1作用極42A及び第2作用極42Bを設けた場合における、夫々のセンサ出力(応答電流密度)とグルコース濃度との関係(キャリブレーションカーブ)を図5に示す。
【0079】
図5のグラフに示すように、第1酵素(天然GDH)が適用された第1作用極42Aのキャリブレーションカーブと、第2酵素(遺伝子改変GDH)が適用された第2作用極42Bのキャリブレーションカーブとは異なり、異なる検量線を有することが分かる。図5において、黒のプロットが天然GDHを示し、白のプロットが遺伝子改変GDHを示す。なお、図5では、第1酵素(天然GDH)に対するキャリブレーションカーブがy=0.8xであり、第2酵素(遺伝子改変GDH)に対するキャリブレーションカーブがy´=0.6xの例を示す。y,y´は応答電流値、xはグルコース濃度、“0.8”,“0.6”は検量線係数を示す。
【0080】
このように、第2実施形態では、第1酵素が配置された第1作用極42Aの検量線と第2酵素が配置された第2作用極42Bの検量線とが異なっており、各検量線に係るデータ(検量線係数)が、測定機1の制御コンピュータ3の記憶部13(例えばROM)に予め格納されている。
【0081】
また、第2実施形態では、グルコース濃度の補正手法が第1実施形態と異なる。図5は、第2実施形態に係る制御コンピュータ3(制御部12)による処理の例を示すフローチャートである。
【0082】
図5に示す処理は、ステップS01が除かれ、且つステップS04及びS05の代わりのステップS11(グルコース濃度演算(補正処理))が実行される点で、第1実施形態と異なる。
【0083】
ステップS11では、制御部12は、ポテンショスタット3Aにより得られる第1応答電流値及び第2応答電流値を得る。制御部12は、以下の式3に基づいて補正された単位時間tにおけるグルコース濃度xを求める。
x(t)=(y(t)−y´(t))/(a−b) ・・・(式3)
但し、yは、第1応答電流値(第1作用極42Aから得られた信号)であり、y´は第2応答電流値(第2作用極42Bから得られた信号)である。また、aは、第1酵素(天然GDH)に応じた検量線係数であり、bは、第2酵素(遺伝子改変GDH)に応じた検量線係数である。
【0084】
式3は、以下のような考えに基づき求められる。すなわち、第1作用極42A(酵素固定部43A),及び第2作用極42B(酵素固定部43B)は、同一の条件下で間質液中に浸漬された状態となる。このため、第1応答電流及び第2応答電流には、干渉物質反応のような非酵素反応由来の信号成分が等しく含まれていると考えることができる。このため、第1応答電流y及び第2応答電流y´は、次の式4,式5のような一次関数で表すことができる。
y(t)=ax+c ・・・(式4), y´(t)=bx+c ・・・(式5)
但し、a,bは検量線係数であり、cは非酵素反応由来の信号成分である。上記式4及び式5を用いて式変形を行うと、上述したグルコース濃度xの算出式である式3を得ることができる。
【0085】
制御部12は、第1応答電流y及び第2応答電流y´を上記式3に代入する(検量線係数a及びbは既知であり、記憶部13に予め保持されている)ことで、非酵素反応由来の信号成分cが除去されたグルコース濃度xを求めることができる。
【0086】
図7及び図8は、第2実施形態の作用効果を証明するシミュレーション実験例を示すグラフである。図7は、図5について説明した第1酵素及び第2酵素を用いたグルコースセンサ4でのセンサ出力(第1応答電流(第1作用極42A)、第2応答電流(第2作用極42B))の時間変化を示すグラフである。センサ出力は、センサ(本実施形態ではグルコースセンサ4)により検出される電流シグナルを示す。図7において、実線のセンサ出力のグラフが第1応答電流を示し、破線のセンサ出力のグラフが第2応答電流を示す。図7に示すシミュレーション実験では、体液としての試験液として、干渉物質が含まれていないものを適用している。従って、第1応答電流及び第2応答電流は、非酵素反応由来の信号成分が含まれていない場合の応答電流と考えることができる。
【0087】
図7のグラフにおける、時間約28で、実験対象の体液中に、干渉物質(この実験ではアスコルビン酸)が添加されている。この結果、アスコルビン酸と電極との反応による信号成分、すなわち非酵素反応由来の信号成分が応答電流に加わり、第1及び第2応答電流が夫々上昇している。図7のグラフから、干渉物質添加による電流上昇分、すなわち、非酵素反応由来の信号成分cは、第1応答電流及び第2応答電流に夫々均等に含まれることが分かる。これより、図7の第1応答電流は、式4により表され、第2応答電流は式5により表されることが分かる。
【0088】
図8は、シミュレーション実験における、検体(この例ではグルコース)濃度の時間変化を示したグラフであり、図7に示した応答電流に対応するグルコース濃度を示すものである。図8における白のプロットは、第1作用極42Aからの第1応答電流に基づき得ら
れたグルコース濃度を示す。白のプロットは、干渉物質添加(時間約28)による第1応答電流の増加に併せて、演算によって得られるグルコース濃度が上昇することを示している。
【0089】
これに対し、干渉物質添加時点から白のプロットにほぼ連続して後続する黒のプロットは、上述した式3を用いて算出した補正後のグルコース濃度を示す。このように、黒のプロットからは、干渉物質が添加されなければ、第1作用極42Aから検出されたであろう第1応答電流に基づくグルコース濃度の演算値とほぼ等しい補正値が得られていることが分かる。
【0090】
よって、第2実施形態に係るグルコースセンサ4及び測定機1によれば、間質液(体液)に干渉物質が含まれ、それが電極と反応して応答電流値に影響を与えたとしても、当該影響が適正に除去された補正値を得ることができる。すなわち、精度の高いグルコース濃度の測定結果を得ることができる。
【0091】
第2実施形態は、次のような変形が可能である。すなわち、第2実施形態では、検量線の異なる第1及び第2酵素(第1及び第2生体触媒)として、ミカエリス定数Kmの異なる二つの酵素を用いた。反応速度の違いから検量線を異ならせる観点からは、最大反応速度Vmaxが異なる二つの酵素を適用することも可能である。すなわち、Km及びVmaxの少なくとも一方が異なる二つの酵素を適用することができる。
【0092】
また、検量線が異なれば良いので、同種類の酵素を用いる一方で、第1作用極42A(第1酵素固定部43A)と第2作用極42B(第2酵素固定部43B)との夫々に対する酵素の配置量(酵素量)を異ならせ、第1作用極42A上及び第2作用極42B上での夫々の総反応活性量を異ならせるようにしても良い。
【0093】
或いは、同種類の酵素を用いる一方で、第1作用極42A(酵素固定部43A)と第2作用極42B(酵素固定部43B)とで、酵素と体液との接触面積を異ならせることにより、検量線(キャリブレーションカーブ)を異ならせるようにしても良い。
【0094】
また、検量線を異ならせる観点からは、作用極間で異なる酵素を用いるようにしても良い。例えば、第1作用極42A(第1酵素固定部43A)及び第2作用極42B(第2酵素固定部43B)との一方にGDHを適用し、他方にGODを適用することが考えられる。
【0095】
なお、第1実施形態におけるグルコースセンサ4(バイオセンサ)の第2作用極42Aから得られる第2応答電流は、酵素反応に由来する信号成分を含まないのであるから、式5における“bx(基質濃度x及び検量線係数bの少なくとも一方)”が零であると考えることができる。よって、第1の実施形態におけるグルコースセンサ4を用い、第2の実施形態における制御部12のプログラム処理(式3の演算)によって、適正なグルコース濃度を測定することができる。
【0096】
以上説明した第1及び第2実施形態に係る構成は、本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0097】
次に、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、二つの作用極WE1,WE2、参照極RE及び対極CEからなる4電極の電極系を作製した。すなわち、基材(ポリエーテルイミド(PEI)、100μm)上に、スパッタリングにより5nmのAuによる金属層を形成した。この金属層に絶縁処理を施して相互に絶縁された3つの領域を形成
し、3つの金属層の領域うちの2つの領域上に、カーボンインクをそれぞれ印刷して110℃の環境下で30分乾燥させることにより、二つの作用極WE1,WE2を作製した。残りの領域は、対極CEとした。
【0098】
また、上記した金属層の残りの領域(対極CE)上に、銀塩化銀(Ag/AgCl)インクを印刷し、150℃の環境で30分乾燥させることによって参照極REを作製した。銀塩化銀インクとして、ERCON社製の「E2414」を用いた。
【0099】
作用極WE1及び作用極WE2に分注する試薬として、酵素としてのグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH),pH調整剤としてのリン酸ナトリウム(pH5.8),架橋剤としてのグルタルアルデヒド(GA)を混合したGDH溶液を作成した。このとき、GDHの終濃度(f.c.)は1250U/mL、リン酸ナトリウムの終濃度は50mMとした。また、架橋条件として、反応時間は45分,反応温度は20℃とした。
【0100】
作用極WE1に対し、上記したGDH溶液を0.32μL分注して乾燥させた後、80℃の環境下で10分間乾燥させることにより、GDHを失活させた。その後、作用極WE2に対し、上記したGDH溶液を0.32μL分注して乾燥させた。このようにして、作用極WE1をGDHの酵素作用が熱により失活した熱失活電極とし、作用極WE2をGDH活性を有する活性作用極とした。
【0101】
上記した電極系を用いて、400mVの電位差を電極系に印加するクロノアンペロメトリー法により、グルコースに対する応答感度と、干渉物質であるアスコルビン酸(AsA)に対する応答感度とを検討した。
【0102】
まず、グルコース(Glu)に対する応答感度の測定方法として、上記電極系の作用極(熱失活電極)WE1,作用極(活性作用極)WE2,及び対極CEとポテンショスタットとを電気的に接続するとともに、上記電極系を測定液としての0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に浸漬した。そして、作用極WE1及び作用極WE2に定電圧(400mV vs Ag/AgCl)を印加しながら、上記緩衝液中に2.0Mグルコース溶液を滴下しつづけ、グルコースの終濃度が100mg/dLにおける定常電流密度(nA/mm2)を測定した。定常電流密度が応答感度に相当する。
【0103】
図9に、グルコースに対するセンサ出力(電流密度)の測定結果を示す。図9から分かるように、活性作用電極WE2では、GDHの酵素反応による応答電流密度が観測されたのに対し、GDHが失活した熱失活電極WE1では、応答電流密度が殆ど見られないことが確認された。これより、電極WE1上のGDHが失活していることが確認された。
【0104】
次に、アスコルビン酸(AsA)に対する応答感度の測定方法として、上記電極系の作用極(熱失活電極)WE1,作用極(活性作用極)WE2,及び対極とポテンショスタットとを電気的に接続するとともに、上記電極系を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に浸漬した。そして、熱失活電極WE1及び活性作用極WE2に定電圧(400mV vs Ag/AgCl)を印加しながら、上記緩衝液中に10mg/mLアスコルビン酸(AsA)を添加し、AsAの終濃度が1.0mg/dLにおける定常電流密度(nA/mm2)を測定した。定常電流密度が応答感度に相当する。
【0105】
図10に、AsAに対する応答感度の測定結果を示す。図10から分かるように、熱失活電極WE1,活性作用電極WE2ともに、AsAの電極反応に由来する応答電流密度がほぼ同程度検出されることが確認された。
【0106】
さらに、グルコースの応答感度の測定中にアスコルビン酸(AsA)を添加した場合に
おけるアスコルビン酸の影響を確認した。測定方法として、上記電極系の作用極(熱失活電極)WE1,作用極(活性作用極)WE2,及び対極CEとポテンショスタットとを電気的に接続するとともに、上記電極系を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に浸漬した。そして、熱失活電極WE1及び活性作用極WE2に定電圧(400mV vs Ag/AgCl)を印加しながら、測定開始から300秒の経過時点で、上記緩衝液中にグルコース溶液を滴下しつづけ、グルコースの終濃度が100mg/dLにおける定常電流密度(nA/mm2)を測定した。
【0107】
その後、測定開始から400秒の経過時点で10mg/mLアスコルビン酸(AsA)を上記緩衝液中に添加して、AsAの終濃度が1.0mg/dLにおける定常電流密度(nA/mm2)を測定した。
【0108】
その後、測定開始から500秒の経過時点で10mg/mLアスコルビン酸(AsA)を上記緩衝液中にさらに添加して、AsAの終濃度が2.0mg/dLにおける定常電流密度(nA/mm2)を測定した。
【0109】
図11に、熱失活作用極WE1及び活性作用極WE2のセンサ出力(電流密度)(nA/mm2)の時間変化の測定結果を示す。図11中のグラフにおいて、実線が活性作用電
極WE2のセンサ出力(応答電流密度)を示し、破線が熱失活電極WE1のセンサ出力(応答電流密度)を示す。さらに、グラフ中の一点鎖線は、第1実施形態で説明した補正手法により補正された電流密度(補正値)の時間変化を示す。
【0110】
測定開始から所定時刻(300秒経過時点)でのグルコース滴下(添加)に対し、活性作用極WE2にGDHの酵素反応による応答電流が観測されたのに対し、熱失活作用極WE1からは、微少な応答電流が検出されたことが確認された。
【0111】
その後の、測定開始から所定時刻(400秒経過時点)でのAsAの添加により、AsAの電極反応による非酵素由来の信号成分としての電流密度が熱失活電極WE1及び活性作用電極W2の双方からほぼ均等に検出されたことが確認された。
【0112】
さらに、測定開始から所定時刻(500秒経過時点)でのAsAの濃度倍増により、電極WE1及び電極WE2の双方の応答電流が増大することが確認された。そして、電極WE2の応答電流密度から電極WE1の応答電流密度を差し引くことで得られる補正シグナル(補正値)は、AsAの終濃度が1.0mg/dLの期間(400〜500秒)、及びAsAの終濃度が2.0mg/dLの期間(500秒〜)に亘って、活性作用電極WE2より低い電流密度を示すことが確認された。これより、応答電流の補正値を得ることで、アスコルビン酸の影響を抑えたグルコース濃度測定を実施できることが確認された。
【0113】
さらに、図11の測定結果からは、補正値は、AsAの添加量増加で振幅が大きくなるものの、グルコースのみが添加された場合(300秒〜400秒)の作用極WE2の応答電流密度(約150nA/mm2)を中心としてプラス及びマイナス方向に振れており、
例えば、補正値の時間平均を採ることで、アスコルビン酸無添加時に近い応答電流密度を算出できることが確認された。
【実施例2】
【0114】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、天然(野生型)酵素で調整した主電極の応答中の干渉物質の影響を、遺伝子改変(遺伝子変異)酵素で調整した副電極の応答を用いて補正するデータを取得した。
【0115】
実施例2では、作用極WE1,参照極RE及び対極CEからなる3電極の電極系を有す
る主センサ(Main WE)と、作用極WE2,参照極RE及び対極CEからなる3電極の電
極系を有する副センサ(Sub WE)とを作製した。ここに、主センサ(Main WE)の作用極
WE1の面積と副センサ(Sub WE)の作用極WE2の面積とは同じ面積に形成し、主センサ及び副センサの各センサ出力(電流値)に対する相対比較を可能とした。
【0116】
主センサ及び副センサのそれぞれは、以下のようにして作製した。すなわち、基材(ポリエーテルイミド(PEI)、100μm)上に、スパッタリングにより5nmのAuによる金属層を形成した。この金属層に絶縁処理を施して相互に絶縁された2つの領域を形成し、2つの金属層の領域のうちの一方の領域上に、カーボンインクをそれぞれ印刷して110℃の環境下で30分乾燥させることにより、作用極WE1(作用極WE2)を作製した。残りの領域は、対極CEとした。
【0117】
また、上記した金属層の残りの領域(対極CE)上に、銀塩化銀(Ag/AgCl)インクを印刷し、150℃の環境で30分乾燥させることによって参照極REを作製した。銀塩化銀インクとして、ERCON社製の「E2414」を用いた。
【0118】
主センサの作用極WE1及び副センサの作用極WE2にそれぞれ分注する試薬として、酵素としてのグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH),pH調整剤としてのリン酸ナトリウム(pH5.8),架橋剤としてのグルタルアルデヒド(GA)を混合したGDH溶液を作成した。このとき、GDHの終濃度(f.c.)は1250U/mL、リン酸ナトリウムの終濃度は50mMとした。また、架橋条件として、反応時間は45分,反応温度は20℃とした。
【0119】
但し、主センサの作用極WE1に分注する試薬中のGDHには、天然GDHを用いる一方で、副センサの作用極WE2に分注する試薬中のGDHには、遺伝子改変GDHを用いた。このようにして、主センサ用の天然GDH溶液と、副センサ用の遺伝子改変GDH溶液を作成した。
【0120】
主センサの作用極WE1に対し、上記した天然GDH溶液を0.32μL分注して乾燥させた。一方、副センサの作用極WE2に対し、上記した遺伝子改変GDH溶液を0.32μL分注して乾燥させた。このようにして、天然GDHを分注した主センサ(Main WE
)と遺伝子改変GDHを分注した副センサ(Sub WE)とを得た。
【0121】
上記した主センサ(Main WE)及び副センサ(Sub WE)について、グルコースに対する
検量線を作成した。結果を図12に示す。図12中のグラフAが主センサのセンサ出力から得られた検量線を示し、グラフBが副センサのセンサ出力から得られた検量線を示す。主センサ及び副センサの何れも、グルコース濃度の上昇に応じてセンサ出力(電流値:応答感度)が高まる特性を示した。
【0122】
主センサ及び副センサを用いて、400mVの電位差を電極系に印加するクロノアンペロメトリー法により、グルコースに対する応答感度と、干渉物質であるアスコルビン酸(AsA)に対する応答感度とを検討した。
【0123】
まず、グルコース(Glu)に対する応答感度の測定方法として、主センサ及び副センサのそれぞれについて、作用極WE1(作用極WE2)及び対極CEをポテンショスタットと電気的に接続した。次に、主センサ及び副センサのそれぞれを200mg/dLのグルコース溶液に浸漬し、作用極WE1及び作用極WE2のそれぞれに定電圧(400mV
vs Ag/AgCl)を印加して測定を開始した。
【0124】
その後、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)をグルコース溶液中に添加して、グルコ
ースの終濃度が100mg/dLにおける、主センサ及び副センサの各センサ出力(電流値)(nA)を測定した。さらに、測定開始から所定時間経過後に、10mg/mLアスコルビン酸(AsA)を添加し、AsAの終濃度が1.0mg/dLにおける、主センサ及び副センサのセンサ出力(各電流値(nA):Yの値と称する)を測定した。
【0125】
測定結果を図13に示す。図13中のグラフAが主センサの測定結果であり、グラフBが副センサの測定結果を示す。図13から分かるように、緩衝液の添加によるグルコース溶液の希釈に応じて、主センサ及び副センサのセンサ出力が検量線に従った応答電流値を示すことが確認された。また、AsAの添加により、作用極WE1及び作用極WE2の双方において、AsAの電極反応に由来する応答電流値がほぼ同程度検出されることが確認された。
【0126】
さらに、図13に示したセンサ出力(Yの値)を図12に示した検量線に従ってグルコース濃度Xに換算した値を求めるとともに、実施形態で説明した補正に係るグルコース濃度x(t)を求める上記(式3)に従って主センサの補正値(補正データ)を得た。結果を図14に示す。図14中のグラフA(丸プロット)が主センサの測定結果(Main WE (Wild t.))を示し、グラフB(四角プロット)が副センサの測定結果(Sub WE (Mut.))を示し、グラフC(三角プロット)が補正データ(Offset)を示す。但し、図14中に示す
グラフA及びBは、図13に示した主センサ及び副センサの各電流値(Yの値)から求まる電流密度(nA/mm2)を用いたときの結果(Xの値)を示す。また、グラフCは、
主センサ及び副センサの各電流密度を(式3)における第1応答電流値y及び第2応答電流値y´として用いたときの補正データ(補正されたXの値)を示す。
【0127】
図14から分かるように、主センサ(Main WE)によって得られたXの値(A:丸プロット)は、AsAの添加によって、AsA由来の成分を含んで著しく上昇するのに対し、補
正されたXの値(C:三角プロット)では、AsAの添加後においても上昇が殆どなかった。
【0128】
実施例2によれば、天然GDHを含む試薬が分注された作用極WE1、及び遺伝子改変GDHを含む試薬が分注された作用極WE2を有するセンサを用いて、AsAの影響を抑えたグルコース濃度測定を実施できることが確認された。
【符号の説明】
【0129】
1・・・測定機
2・・・筐体
3・・・制御用コンピュータ
3a・・・基板
3A・・・ポテンショスタット
4・・・電気化学センサ(バイオセンサ)
5・・・接着フィルム
6・・・皮膚
10・・・通信部
11・・・電力供給装置
12・・・制御部
13・・・記憶部
14・・・表示ユニット
20・・・カバー
21・・・基板
41・・・樹脂製のフィルム基板
42a,42b,42c・・・金属層
42A・・・第1作用極
42B・・・第2作用極
42C・・・対極
42D・・・参照極
43・・・酵素固定部
43A・・・第1酵素固定部
43B・・・第2酵素固定部
44A,44B,44C・・・コンタクトパッド
45a,45b・・・カーボン層
110・・・バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質との反応する性質が失われた、前記生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、
を含むバイオセンサ。
【請求項2】
前記特定の基質と反応する性質を有する生体触媒を前記第2作用極に配置し、前記第2作用極に対してエネルギーを与えて、前記生体触媒の前記性質を失わせる、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項3】
前記エネルギーは、熱エネルギーである、請求項2に記載のバイオセンサ。
【請求項4】
前記エネルギーは、電気的エネルギーである、請求項2に記載のバイオセンサ。
【請求項5】
前記特定の基質と反応する性質を有する生体触媒を前記第2作用極に配置し、前記第2作用極に対して前記生体触媒の前記性質を喪失または阻害する物質を添加し、前記生体触媒の前記性質を失わせる、請求項1に記載のバイオセンサ。
【請求項6】
前記生体触媒は、酵素である、請求項1から5のいずれか1項に記載のバイオセンサ。
【請求項7】
特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を備え、
前記第1生体触媒及び前記第2生体触媒の前記基質との反応速度はそれぞれ異なることを特徴する、バイオセンサ。
【請求項8】
前記第1生体触媒及び前記第2生体触媒は、酵素である、請求項7に記載のバイオセンサ。
【請求項9】
前記第2生体触媒が、前記第1生体触媒に対して遺伝子改変を施した酵素である、請求項8に記載のバイオセンサ。
【請求項10】
特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を備え、
前記第1作用極上と前記第2作用極上の前記反応面積は異なることを特徴とする、バイ
オセンサ。
【請求項11】
特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された、第1作用極と、
前記特定の基質と反応する性質を有する第2生体触媒が配置された、第2作用極と、
前記第1作用極、及び前記第2作用極との間に、それぞれ電圧を印加するための少なくとも1つの対極と、を備え、
前記第1作用極上と前記第2生体触媒上のそれぞれの総反応活性は異なることを特徴と
する、バイオセンサ。
【請求項12】
特定の基質と反応する性質を有する生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出する、第1検出部と、
前記特定の基質との反応する性質が失われた前記生体触媒が配置された第2作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出する、第2検出部と、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正する補正部と、
前記補正された前記特定の基質の濃度を出力する出力部と
を含む測定機。
【請求項13】
前記補正部は、前記第1信号値から前記第2信号値を減じた値を前記特定基質の補正濃度として算出する、請求項12に記載の測定機。
【請求項14】
特定の基質と反応する性質を有する第1生体触媒が配置された第1作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第1作用極からの第1信号値を検出する、第1検出部と、
前記特定の基質と反応する性質を有し、かつ前記第1生体触媒とは反応速度が異なる、第2生体触媒が配置された第2作用極と、対極との間での、電圧印加により得られる前記第2作用極からの第2信号値を検出する、第2検出部と、
前記第1信号値から算出された前記特定の基質の濃度を前記第2信号値で補正する補正部と、
前記補正された前記特定の基質の濃度を出力する出力部と
から構成される測定機。
【請求項15】
前記補正部は、或る時間tにおける前記第1信号y(t)を検量線係数a,前記特定基質の濃度x,及び前記生体液中の特定基質以外の物質に基づく信号成分cにより一次関数y(t)=ax(t)+cで表し、前記或る時間tにおける前記第2信号y´を検量線係数b,前記特定物質の濃度x,及び前記信号成分cにより一次関数y´(t)=bx(t)+cで表したときに、前記第1信号y(t)及び前記第2信号y´(t)中の前記信号成分cの値が等しいとの仮定において前記特定基質の濃度x(t)を以下の式に基づいて求める
請求項14に記載の測定機。
(式) x(t)=(y(t)−y´(t))/(a−b)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−242385(P2011−242385A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84225(P2011−84225)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)