説明

バイオチップの製造方法、バイオチップ及びそれに用いる除去液

【課題】酸転写用組成物から形成される膜を除去する際、基板上の高分子にダメージを与えることなく、より精密に欠陥などなく膜を除去することができるバイオチップの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を基板に直接的又は間接的に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(b)前記第1膜上に酸転写用組成物を用いて第2膜を形成する第2膜形成工程、
(c)前記第2膜を露光して、露光された部分に対応する前記第1膜から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記第2膜を、環状エステル化合物を含有する除去液を用いて、除去する第2膜除去工程、及び、
(e)前記第1膜のうち前記保護基が除去された部位に第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップの製造方法、バイオチップ及びそれに用いる除去液に関する。更に詳しくは基板上でDNA、RNA、PNA及びLANなどの各種高分子を合成する際に用いる酸転写用組成物から形成される膜を除去するために用いられる除去液、これを用いたバイオチップの製造方法、及び、このバイオチップの製造方法を用いてなるバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上で生体高分子などの高分子を合成する方法が注目され、特にヌクレオチド等をモノマーとして用いて異なる配列及び長さを有するプローブを1つの基板上にアレイ化して配列したバイオチップ及びこれを製造する方法が広く検討されている。
基板上で高分子を合成する方法として、光に対して不安定な保護基を有するヌクレオチドモノマー等を配列し、マスクを介した露光により特定部分からこの保護基を解離させた後に、他のヌクレオチドモノマーを結合させる操作を繰り返す方法が下記特許文献1〜2に開示されている。
更に、半導体製造分野において、フォトリソ法を用いた微細パターン形成に際して利用される光酸発生剤やこれが含まれたレジストを高分子の合成に利用しようとする技術が下記特許文献3〜5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5445934号明細書
【特許文献2】米国特許第5744305号明細書
【特許文献3】米国特許第5658734号明細書
【特許文献4】特開2005−099005号公報
【特許文献5】特表2003−501640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜5の方法によれば、基板上で高分子を種々合成することができるものの、更に正確且つ精密に基板上で高分子合成できる技術が求められている。つまり、酸転写用組成物から形成される膜を除去する際、基板上の高分子にダメージを与えることなく、より精密に欠陥などなく膜を除去する必要がある。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、酸転写用組成物から形成される膜を除去する際、基板上の高分子にダメージを与えることなく、より精密に欠陥などなく膜を除去することができ、従来に比べてより正確且つ精密に基板上で高分子合成することができる除去液、これを用いたバイオチップの製造方法およびこのバイオチップの製造方法を用いてなるバイオチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
[1](a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を基板に直接的又は間接的に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(b)前記第1膜上に酸転写用組成物を用いて第2膜を形成する第2膜形成工程、
(c)前記第2膜を露光して、露光された部分に対応する前記第1膜から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記第2膜を、環状エステル化合物を含有する除去液を用いて、除去する第2膜除去工程、及び、
(e)前記第1膜のうち前記保護基が除去された部位に第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備えることを特徴とするバイオチップの製造方法。
[2]前記環状エステル化合物が、γ−ブチロラクトンである[1]に記載のバイオチップの製造方法。
[3]前記酸転写用組成物が、側鎖に含窒素基を有する重合体を含有する[1]又は[2]のいずれかに記載のバイオチップの製造方法。
[4]前記側鎖に含窒素基を有する重合体が、下記式(1)に示す重合体である[1]乃至[3]のいずれかに記載のバイオチップの製造方法。
【0006】
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。)
[5]前記第2化合物は、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である[1]乃至[4]のいずれかに記載のバイオチップの製造方法。
[6][1]乃至[5]に記載のバイオチップの製造方法に用いられる環状エステルを含有する除去液。
[7][1]乃至[5]に記載のバイオチップの製造方法により製造されたことを特徴とするバイオチップ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバイオチップの製造方法によれば、酸転写用組成物から形成される第2膜を除去する際、基板上の高分子にダメージを与えることなく、より精密に欠陥などなく第2膜を除去することができ、従来に比べてより正確且つ精密に基板上で高分子合成を行うことができるため、精密なバイオチップを得ることができる。
除去液がγ−ブチロラクトンの場合は、より精密に欠陥などなく第2膜を除去することができるため、精密なバイオチップを得ることができる。
酸転写用組成物が、側鎖に含窒素基を有する重合体である場合、酸の不必要な拡散をより効果的に抑えて、特に優れた酸の拡散制御性を発揮させることができ、さらに、より精密に欠陥などなく第2膜を除去することができるため、精密なバイオチップを得ることができる。
側鎖に含窒素基を有する重合体が前記式(1)に示す構成単位を含む場合は、酸の不必要な拡散をより効果的に抑えて、特に優れた酸の拡散制御性を発揮させることができ、さらに、より精密に欠陥などなく第2膜を除去することができるため、精密なバイオチップを得ることができる。
第2化合物が、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である場合は、医薬分野で有用に活用できるバイオチップを得ることができる。
本発明の除去液によれば酸転写用組成物から形成される第2膜を除去する際、基板上の高分子にダメージを与えることなく、より精密に欠陥などなく第2膜を除去することができ、従来に比べてより正確且つ精密に基板上で高分子合成を行うことができるため、より精密なバイオチップを得ることができる。
本発明のバイオチップによれば、従来に比べてより正確且つ精密なプローブ形成を行うことができると共にプローブの集積率を向上させたバイオチップとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】「本発明のバイオチップの製造方法の一部を示した断面図である。」
【図2】「本発明のバイオチップの製造方法の一部を示した断面図である。」
【図3】「本発明のバイオチップの製造方法の一部を示した断面図である。」
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]バイオチップの製造方法
本発明のバイオチップの製造方法は、(a)第1膜形成工程、(b)第2膜形成工程、(c)保護基除去工程、(d)第2膜除去工程、(e)第2化合物結合工程、を備えることを特徴とする(図1〜図3参照)。
【0010】
(a)第1膜形成工程
前記「(a)第1膜形成工程」(図1のPR1参照)は、酸に不安定な保護基Pを有する第1化合物を基板10に直接的又は間接的に結合して第1膜20を形成する工程PR1である。
【0011】
前記「第1化合物」は、酸に不安定な保護基P(以下、単に「保護基」ともいう)を有する化合物である。第1化合物は保護基Pを有すればよく、他の構成は特に限定されず、例えば、下記(1)〜(3)に例示される化合物が挙げられる。即ち、
(1)基板表面と第2化合物とを結合させるためのカップリング化合物。より具体的には、保護基で保護された第2化合物との結合手及び基板表面との結合手を有する化合物、即ち例えば、保護基とシリル基とを有する化合物など。
(2)保護基を導入するための保護基導入化合物。より具体的には、アミノ基やヒドロキシル基を保護する保護基を導入するための化合物、即ち例えば、アミノ基にペプチド結合できる基と保護基とを有する化合物など。
(3)第2化合物を基板表面から離間させるためのスペーサ化合物。即ち例えば、アルキル鎖によって離間されたアミノ基にペプチド結合できる基及び保護基を有する化合物など。
【0012】
前記例示した第1化合物のうち、(1)カップリング化合物は、通常、基板表面に対して直接的に結合されるが、他の化合物を介して基板表面に間接的に結合させてもよい。また、(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物は、通常、他の化合物を介して基板表面と間接的に結合される。これらの(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物と基板表面との間にはどのような化合物を介してもよいが、例えば、カップリング剤(カップリング化合物)を介することができる。
【0013】
このうち(2)保護基導入化合物としては、保護基として有するオメガ−アミノカプロン酸系化合物のようなアミノアルキルカルボン酸等が挙げられる。このような化合物としては、6−N−t−ブトキシカルボニルアミノカプロン酸、4−N−t−ブトキシカルボニルアミノブタン酸、5−N−t−ブトキシカルボニルアミノペンタン酸、7−N−t−ブトキシカルボニルアミノヘプタン酸等のt−ブトキシカルボニル基を保護基として有するカルボン酸誘導体類等が挙げられる。
また、第1化合物として前記(2)保護基導入化合物を用いる際に、基板と第1化合物(保護基導入化合物)とを接続するカップンリグ剤(カップリング化合物)としては、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基及びシリル基を有するカップリング剤や、ヒドロキシル基とシリル基とを有するカップリング剤が挙げられる。
その他、第1化合物としては、後述する第2化合物として挙げた各種化合物のうちの保護基を有する化合物や、後述する第2化合物として挙げた各種化合物に保護基が導入された誘導体などを用いることもできる。
【0014】
前記「酸に不安定な保護基(P)」は、酸の存在下で解離する基であり、より具体的には酸性の基であり、更に詳しくは、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、酸性を有する水酸基等の酸性基中の水素原子を置換する基を意味する。この酸解離性基としては、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基、アセタール基、ヘミアセタール基、下記一般式(2)で表される基(以下、「酸解離性基(2)」という。)等を挙げることができる。
【0015】
【化2】

〔式(2)中、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示すか、或いは、R〜Rのうちの何れか2つが結合して、炭素数3〜20の非有橋式の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数3〜20の有橋式の2価の脂環式炭化水素基を形成すると共に、R〜Rのうちの残りの1つが、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示し、これらの各基は置換されていてもよい。]
【0016】
式(2)における炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、及び、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、I-プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。
【0017】
式(2)における炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、テトラシクロ[4.2.0.12,5.17,10]ドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0018】
式(2)における炭素数6〜20の1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0019】
式(2)において、前記R〜Rの各基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等)、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基(例えば、i−プロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜8の直鎖状のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等)、炭素数1〜8の分岐状のアルコキシル基(例えば、i−プロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシアルキル基(例えば、t−ブトキシメチル基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシアルコキシル基(例えば、t−ブトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシカルボニル基(例えば、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数2〜14の直鎖状のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数2〜14の分岐状のシアノアルキル基、炭素数1〜14の直鎖状のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)、炭素数1〜14の分岐状のフルオロアルキル基などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、前記アルコキシ置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等を挙げることができる。
【0021】
前記アルキルスルファニル置換メチル基としては、例えば、メチルスルファニルメチル基、エチルスルファニルメチル基、メトキシエチルスルファニルメチル基、n−プロピルスルファニルメチル基、n−ブチルスルファニルメチル基、n−ペンチルスルファニルメチル基、n−ヘキシルスルファニルメチル基、ベンジルスルファニルメチル基等を挙げることができる。
【0022】
前記「基板10」の種類は特に限定されず、無機材料からなってもよく、有機材料からなってもよく、これらの複合材料からなってもよい。また、基板10は、その表面側と他面側とが異なる材料からなってもよい。この基板材料としては、例えば、シリコン、二酸化ケイ素及びガラス(ホウケイ酸ガラス、表面改質ガラス、石英ガラス等を含む)等のケイ素を主成分とする無機材料が挙げられる。また、ポリプロピレン及びポリアクリルアミド(アクリルアミドによって表面が活性化されたポリアクリルアミドを含む)等の有機材料が挙げられる。この他、保護基を有する化合物の層(第1膜に限られない)を固定化するのに適した反応性部位(例えば、活性なアミノ基など)を有する表面を有する当該分野において既知の他の基板を適宜用いることができる。
【0023】
前記第1膜20は、どのようにして基板10上に結合させてもよいが、通常、第1化合物を含む液体を基板10(表面処理されていない基板及び表面処理された基板を含む)表面に塗布して、第1化合物と基板10表面とを反応させて結合させる。この際の塗布方法等は特に限定されず、従来公知の回転塗布、流延塗布、ロール塗布及び印刷等の種々の方法を用いることができる。
【0024】
更に、第1化合物は、基板10に直接結合させてもよく、他の化合物を介して間接的に結合させてもよい。即ち、換言すれば、第1膜(配向して並んだ複数の第1化合物又はその残基からなる膜)20は基板10に直接積層してもよく、1層又は2層以上の他膜を介して間接的に積層してもよい。
尚、第1化合物は、前記保護基を維持したまま、他部において前記基板に直接的に又は間接的に結合される。また、第1化合物は、この結合に際して、第1化合物の構造の一部が変化してもよく、変化しなくてもよい。変化する場合としては、第1化合物の構造の一部が脱離されて生じた結合手を利用する場合等が挙げられる。
【0025】
(b)第2膜形成工程
「(b)第2膜形成工程」(図1のPR2参照)は、第1膜20上に、酸転写用組成物を用いて第2膜30を形成する工程PR2である。
【0026】
酸転写用組成物を用いて第2膜30を形成する方法は、特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布及び印刷等の適宜の塗布手段が挙げられる。
更に、この酸転写用組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)することによって塗膜中の溶剤を揮発させることで第2膜30を形成してもよい。このプレベークの加熱条件は、酸転写用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、加熱温度は、通常、30〜150℃、好ましくは50〜130℃である。更に、加熱時間は、通常、30〜300秒間、好ましくは60〜180秒間である。
また、第2膜30の厚みは特に限定されないが、通常、1〜10000nmとすることが好ましく、5〜800nmとすることがより好ましく、10〜500nmとすることが更に好ましい。
【0027】
前記「酸転写用組成物」は、通常、(A)重合体と、(B)感放射線性酸発生剤とを含有するものである。重合体(A)はどのような重合体であってもよいが、好ましくは、側鎖に含窒素基を有する重合体(A)が用いられる。
前記「(A)側鎖に含窒素基を有する重合体」(以下、単に「特定重合体(A)」ともいう)は、前記所定の酸発生剤(B)と併用することで、第2膜内における不要な酸の拡散を特に効果的に防止することができる。
【0028】
前記特定重合体(A)が有する含窒素基は、窒素原子を基内に含む置換基を意味する。この含窒素基としては、アミン基、アシド基、イミド基、ウレア基、ウレタン基、ピリジン基等が挙げられる。これらのなかでは、アミン基が好ましい。
【0029】
前記アミノ基は、どのような形態で特定重合体(A)の側鎖に含まれてもよいが、特に下記式(1)で示す構成単位が特定重合体(A)に含まれることが好ましい。
【0030】
【化3】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0031】
前記式(1)に示す構成単位は、通常、下記式(3)で表される単量体(Am1)を用いて特定重合体(A)を重合することにより得ることができる。
【0032】
【化4】

〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0033】
前記式(3)におけるR及び/又はRとなる炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などの脂肪族炭化水素基が挙げられる。
即ち、前記式(3)においてR及び/又はRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基となる単量体(Am1)としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
また、前記式(3)におけるR及び/又はRとなる炭素数3〜10の環状の炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基などの芳香族基が挙げられる。
更に、前記式(3)における、R及びRとが互いに結合して形成された3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、R及びRとが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して形成された4〜10員環の単環式ヘテロ環、を有する単量体(Am1)としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0035】
単量体(Am1)としては、前記各種単量体のなかでも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリンが好ましい。これらの好ましい単量体を用いて得られた重合体(A)は、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散をより効果的に防止できる。
【0036】
含窒素基が前記式(1)で表される構成単位として特定重合体(A)に含まれる場合、特定重合体(A)に占める式(1)で表される構成単位の割合は特に限定されないが、特定重合体(A)の全構成単位を100モル%とした場合に1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。特定重合体(A)に占める前記式(1)で表される構成単位の割合が前記範囲内では、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散をより効果的に防止できる。
【0037】
また、重合体(A)は、実質的に水酸基を有さない重合体であることが好ましい。「実質的に水酸基を有さない」とは、JIS K1557のプラスチック−ポリウレタン原料ポリオールの近赤外(NIR)分光法による水酸基価の求め方に準じて、波長2000〜2300nmのR−OH結合音、及び、1380〜1500nmのR−OH第1倍音の2つの波長域を用いて測定される重合体(A)についての水酸基価{重合体(A)1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムの質量(mg)}が1以下であることを意味する。
【0038】
同様に、重合体(A)は、実質的に酸解離性基(酸に不安定な保護基)を有さない重合体であることが好ましい。「実質的に酸解離性基を有さない」とは、重合体の合成に用いる全単量体中、酸解離性基を有さない単量体が、95モル%以上用いて得られる重合体のことである。即ち、換言すれば、重合体(A)を構成する全構成単位100モル%中に、後述する酸に不安定な保護基を有する構成単位が5モル%未満であることを意味する。
【0039】
前記「感放射性酸発生剤」(以下、単に「酸発生剤(B)」ともいう)は、露光により酸を発生する成分である。この酸発生剤(B)から酸を発生させる際に用いる放射線の種類は特に限定されず、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。
【0040】
酸発生剤(B)としては、露光により酸を発生する作用を有するものであれば特に限定されないが、オニウム塩化合物(チオフェニウム塩化合物を含む)、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物、スルホンイミド化合物、イミドスルホネート化合物、スルホナート化合物、キノンジアジド化合物等を用いることができる。この酸発生剤(B)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の酸転写用組成物はどのようにして膜形成してもよいが、通常、液状の酸転写用組成物を、目的とする表面(例えば、後述する第1膜の表面)に塗布し、乾燥させることにより形成される{更には、必要に応じて加熱処理(ベーク)を施すことができる}。このため、本酸転写用組成物は、前記重合体(A)及び前記酸発生剤(B)に加えて、溶剤(C)を含有できる。
【0042】
前記溶剤(C)の種類は特に限定されないが、例えば、水及び/又は有機溶剤等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤としては、アルキルエーテル類、アルキルアルコール類、炭化水素類等が挙げられる。
【0043】
この溶剤(C)は、酸転写用組成物において、前記重合体(A)を100質量部とした場合に、通常、10〜10000質量部含有され、20〜8000質量部が好ましく、30〜6000質量部がより好ましく、40〜4000質量部が更に好ましい。
更に、酸転写用組成物全体の粘度は特に限定されず、酸転写用組成物を塗布する方法等により適宜の粘度とすればよいが、例えば、温度25℃おける粘度を1〜100mPa・sとすることができる。この粘度は2〜80mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましい。
【0044】
(c)保護基除去工程
「(c)保護基除去工程」は、図1及び図2に例示されるように、第2膜30を露光して、露光された部分に対応する第1膜30から保護基Pを除去する工程PR3及びPR4である。
この保護基除去工程には、通常、第2膜30に対して放射線を露光する露光工程PR3と、露光により第2膜30内に生じた酸を第1膜20へと転写(拡散)する転写工程PR4とを備える。
【0045】
このうち露光工程PR3は、マスク50を介して第2膜30を露光し、第2膜30内で前記酸を発生させる工程である。これにより図1に例示するように、第2膜30の露光された部位が酸発生部位31となる。
露光に使用される放射線の種類は特に限定されず、第2膜30に、通常含まれる酸発生剤(B)の種類に応じて適宜選択される。更に、露光量等も第2膜30に、通常含まれる酸発生剤(B)の種類に応じて適宜選択される。
【0046】
また、酸転写工程PR4は、第2膜30に発生した酸を第1膜20へ転写する工程である。これにより図2に例示するように、酸発生部位31に対応した第1膜20を構成している第1化合物から保護基Pを除去することによって、第1膜20の一部が酸転写部位21(酸転写部位21は保護基Pが解離された第1化合物の残基を含んでいる)となる。
この酸を転写する方法は特に限定されないが、具体的には、(1)加熱により転写する方法、(2)常温において放置することによって転写する方法、(3)浸透圧を利用して転写する方法などが挙げられる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらの中でも(1)加熱により転写する方法が転写効率に優れるため好ましい。
加熱により転写を行う場合の加熱条件は、特に限定されないが、加熱温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃が更に好ましい。更に、加熱時間は、30〜300秒間が好ましく、60〜180秒間が更に好ましい。
また、加熱により転写を行う場合は、上記加熱条件により1回の加熱で完了してもよいが、結果的に上記加熱条件と同様の結果となるように、2回以上の加熱を行うこともできる。
【0047】
尚、前記(2)常温において放置することによって転写する方法とは、加熱を行わず、通常、温度20〜30℃の常温の環境に放置することで、第2膜30内に発生された酸を自然に第1膜20へと拡散させて転写する方法である。
【0048】
(d)第2膜除去工程
「(d)第2膜除去工程」は、図2に例示されるように、第2膜30を除去する工程PR5である。即ち、第2膜30を除去すると共に、その層下に酸が転写された第1膜20を露出させる工程PR5である。
第2膜30の除去は、環状エステル化合物を含有する除去液を第2膜30に塗布し、溶解させることにより行う。
この除去液は、第2膜30を溶解させるものの、酸が転写された第1膜20を溶解させないものである。
【0049】
このような環状エステル化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。
本発明の除去液に用いられる他の成分としては、第2膜30及び第1膜20の各膜を構成する成分によって適宜選択することが好ましく、第1膜20が溶解されず且つ第2膜30が溶解されるものであれば限定されない。具体的には、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン及びピリジン等が挙げられる。これらの成分は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
(e)第2化合物結合工程
「(e)第2化合物結合工程」は、第1膜のうち保護基が除去された部位に第2化合物を結合する工程PR6である。即ち、第1膜20のうち酸転写されて保護基Pが解離された部位21上に、第2化合物を含む部位41を積層する工程である。
【0051】
前記「第2化合物」の種類は特に限定されず種々の化合物を用いることができる。この第2化合物としては、例えば、(1)ヌクレオチド{ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド及びこれらを除く類似体(合成ヌクレオチド類似体、合成デオキシヌクレオチド類似体など)を含む}、(2)アミノ酸、(3)単糖類、又は(4)これらヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類から選択される2以上の化合物が結合された結合体、(5)ペプチド核酸(PNA)を合成するためのペプチド核酸形成用化合物(ペプチド核酸モノマー)、(6)各種の端部形成用化合物等が挙げられる。これらの第2化合物は保護基及び活性基を有していてもよい。また、これらの第2化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記(1)ヌクレオチドとしては、デオキシヌクレオチド、合成ヌクレオチド類似体が挙げられる。
このうちヌクレオチドとしては、アデノシンホスフェート、グアノシンホスフェート、シチジンホスフェート、ウリジンホスフェート等が挙げられる。
また、デオキシヌクレオチドとしては、デオキシアデノシンホスフェート、デオキシグアノシンホスフェート、デオキシチジンホスフェート及びデオキシチミジンホスフェート等が挙げられる。
更に、合成ヌクレオチド類似体としては、2’−4’架橋ヌクレオチド類似体、3’−4’架橋ヌクレオチド類似体、5’−アミノ−3’,5’架橋ヌクレオチド類似体等の架橋型ヌクレオチド類似体等が挙げられる。
【0053】
前記(2)アミノ酸(L体及びD体を含む)としては、アルキル鎖を持つグリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン、ヒドロキシ基を持つセリン・トレオニン、硫黄を含むシステイン・メチオニン、アミド基を持つアスパラギン・グルタミン、イミノ基を持つプロリン、芳香族基を持つフェニルアラニン・チロシン・トリプトファン等が挙げられる。
前記(3)単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン等が挙げられる。
前記(4)の結合体としては、ヌクレオチド同士の結合体であるオリゴヌクレオチド、アミノ酸同士の結合体であるペプチド及び蛋白質、等が挙げられる。
【0054】
前記ペプチド核酸形成用化合物としては、N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)−N−チミン−1−イルアセチル)グリシン、N−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)シトシン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン、N−(N−6−(ベンジルオキシカルボニル)アデニン−9−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン及びN−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)グアニン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0055】
前記(5)端部形成用化合物としては、分子鎖末端を形成する化合物であり、各種保護基を有する保護基形成用化合物、各種キャッピング用化合物及び標識用化合物等が含まれる。このうち標識用化合物としては、各種蛍光標識用化合物(フロレシンイソチオシアネート等のフルオレセイン誘導体など)及び放射性同位体標識用化合物が含まれる。
【0056】
更に、前記第2化合物が有することができる保護基としては、前記第1化合物における酸に不安定な保護基がそのまま適用できる他、光に不安定な保護基を用いることもできる。
また、前記第2化合物が有することができる活性基としては、ホスホルアミダイト基、H−ホスホネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル及びリン酸トリエステル等の遊離の水酸基と反応し得るリン含有基が挙げられる。即ち、例えば、活性化されたヌクレオチドとしては、ホスホルアミダイトヌクレオチド分子が挙げられる。その他、光化学的活性基及び熱化学的活性基としては、アミノ基、チオール基、マレイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、アクリルアミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0057】
そして、図3に例示されるように、前述の第1膜から保護基Pを解離させる操作と同様の操作(酸転写用組成物層形成工程PR7、露光工程PR8、酸転写工程PR9、酸転写用組成物層除去工程PR10)を施すことにより、保護基が残存された第1膜(第2化合物が結合されていない部位)から保護基Pを解離させ、その後、第3化合物結合工程PR11を施すことによって、第1化合物の残基に対して第3化合物を結合させて、第3化合物の残基からなる部位42を形成することができる。
【0058】
更に、図2の最下図に例示するように、前記第2化合物が酸に不安定な保護基Pを有する場合には、前記と同様の操作を施すことで、第2化合物の残基からなる部位41上に他の化合物(第4化合物、第5化合物など)を結合させることができる。このように同様の操作を繰り返すことによって、基板上で高い自由度をもって高分子を合成できる。
尚、第2化合物に関する説明は、前記第3化合物、前記第4化合物及び前記第5化合物にそのまま適用できる。また、第1化合物、第2化合物、第3化合物、第4化合物及び第5化合物等は各々同じであってもよく異なっていてもよい。
【0059】
本発明の製造方法によれば、基板上で高い自由度で高分子を設計することができる。この方法により合成される高分子は特に限定されないが、生体高分子及び擬似生体高分子の合成に特に好適である。このような高分子としては、核酸及び蛋白質が挙げられる。核酸としては、DNA、RNA及びPNA(Peptide Nucleic Acid)の他、架橋型ヌクレオチド類似体を一部又は全部に用いて合成された人工核酸〔LNA{Locked Nucleic Acid(Proligo LLC社商標)}及びBNAなど〕が挙げられる。このうちPNAは、DNA及びRNAがリン酸結合骨格を有するのに対して、ペプチド結合骨格を有する擬似生体高分子である。このPNAは、通常、アミノエチルグリシン誘導体を単量体とする高分子である。
【0060】
[2]除去液
本発明の除去液は、第2膜30を溶解させるものの、酸が転写された第1膜20を溶解させないものである。
【0061】
このような環状エステル化合物としては、例えば、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。
本発明の除去液に用いられる他の成分としては、第2膜30及び第1膜20の各膜を構成する成分によって適宜選択することが好ましく、第1膜20が溶解されず且つ第2膜30が溶解されるものであれば限定されない。具体的には、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン及びピリジン等が挙げられる。これらの成分は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
[3]バイオチップ
本発明のバイオチップは、本発明のバイオチップの製造方法により形成されたことを特徴とする。このバイオチップは、1〜10mm四方の基板の上に、数千〜数万種類のプローブが形成されたものであり、検体となるDNA等の発現パターンを同時に解析できる基板や、DNA等をPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)により、増幅させることができる基板である。
プローブとしては、DNA、RNA、PNA、BNA、人工核酸、プロテイン(ペプチド)、糖鎖、及びこれらを組み合わせたプローブ等が挙げられる。基板は、上述のバイオチップの製造方法に記載の内容をそのまま適用できる。バイオチップは、DNAチップ、RNAチップ、プロテインチップ、及び糖鎖チップ等のいずれでも構わない。
また、このバイオチップは、遺伝子発現のパターンニグ、新規遺伝子のスクーリング、遺伝子多型、及び遺伝子変異等の検出に好適に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら制約されるものではない。尚、実施例及びその表の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0064】
[1]酸転写用組成物の調製
(1)重合体(A)の合成
500mLビーカー中にN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Am1、株式会社興人製)5g(Am1とAm2との合計を100モル%とした場合に5モル%)、メチルメタクリレート(Am2、三菱マテリアル株式会社製)95g(Am1とAm2との合計を100モル%とした場合に95モル%)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)5.0gを仕込み、重合開始剤が溶解するまで攪拌し均一な溶液を得た。別途、窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)150gを仕込み、ゆるやかに攪拌を開始し80℃まで昇温した。その後、80℃にて、上記溶液を2時間かけて少量ずつ連続滴下した。滴下後、更に80℃にて3時間重合を行い、その後、100℃に昇温して1時間攪拌を行って重合を終了した。その後、得られた反応溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して生成物を凝固させた。次いで、得られた凝固物を水洗後、凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解し、多量のシクロヘキサンに滴下して再度凝固させた。この再溶解及び凝固を行うサイクルを計3回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥して重合体(A)を得た。
得られた重合体(A)の収率は90%であり、Mwは11,000であり、Mw/Mnは2.3であった。重合体(A)は、前記式(1)に示す構成単位を有する重合体である。
【0065】
(2)他成分との混合
[調整例1]酸転写組成物1(組成物1)の調整
上記(1)で得られた重合体(A)100質量部、酸発生剤(B)として下記式(4)に示す化合物を30質量部、溶媒(C)として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80質量部、γ−ブチロラクトン20質量部及び、界面活性剤(D)としてJSR株式会社製の商品名「ダイナフロー」0.05質量部を混合し、攪拌により均一な溶液とした。この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して酸転写用組成物(組成物1)を調整した。
[調整例2]酸転写組成物2(組成物2)の調整
調整例1において、下記酸発生剤(B)を40質量部用いた以外は調整例1と同様の手法にて、酸転写用組成物(組成物2)を調整した。
【0066】
みどり化学株式会社製、品名「NAI−106」
【0067】
【化5】

【0068】
[2]除去液の調整
下記表1に示す成分を除去液として用いた。
【0069】
【表1】

【0070】
[3]欠陥数の評価
下記表2に示す酸転写用組成物を、4インチのシリコンウエハー上にスピンコーターを用いてコーティングし、ホットプレート上にて110℃で1分間加熱して、厚さ150nmの各第2膜を形成した。得られた第2膜の表面に下記表2に示す除去液を20mL塗布し、20rpmで10秒、ついで1000rpmで30秒、ついで0rpmで30秒回転した。得られた基板の表面をサーフスキャン(商品名「Surfscan4500」、KLA TENCOR社製)で0.12μm以上の欠陥をカウントした。欠陥数の評価は、1cmあたりの欠陥の数(Defect Density、「DD」と表す)にて評価した。評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0073】
10;基板、
20;第1膜(第1化合物膜)、21;保護基が解離された部位、P;保護基、
30;第2膜(酸転写用樹脂膜)、31;酸発生部位、
41;第2化合物の残基からなる部位、42;第3化合物(他の第2化合物)の残基からなる部位、50;マスク、
PR1;第1膜形成工程、PR2;第2膜形成工程、PR3;露光工程(保護基除去工程の一部)、PR4;酸転写工程(保護基除去工程の一部)、PR5;第2膜除去工程、PR6;第2化合物結合工程、PR7;酸転写用樹脂組成物膜形成工程、PR8;露光工程、PR9;酸転写工程、PR10;酸転写用樹脂組成物膜除去工程、PR11;第3化合物結合工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を基板に直接的又は間接的に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(b)前記第1膜上に酸転写用組成物を用いて第2膜を形成する第2膜形成工程、
(c)前記第2膜を露光して、露光された部分に対応する前記第1膜から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(d)前記第2膜を、環状エステル化合物を含有する除去液を用いて、除去する第2膜除去工程、及び、
(e)前記第1膜のうち前記保護基が除去された部位に第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備えることを特徴とするバイオチップの製造方法。
【請求項2】
前記環状エステル化合物が、γ−ブチロラクトンである請求項1に記載のバイオチップの製造方法。
【請求項3】
前記酸転写用組成物が、側鎖に含窒素基を有する重合体を含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
【請求項4】
前記側鎖に含窒素基を有する重合体が、下記式(1)に示す重合体である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
【化1】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは互いに結合して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有する3〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。)
【請求項5】
前記第2化合物は、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバイオチップの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のバイオチップの製造方法に用いられる環状エステルを含有する除去液。
【請求項7】
請求項1乃至5に記載のバイオチップの製造方法により製造されたことを特徴とするバイオチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−45318(P2011−45318A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197871(P2009−197871)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】