説明

バイオトイレ

【課題】排泄物と分解用チップとの撹拌混合が安定した状態で行われることを目的とし、回転の際に各部に過剰な負荷がかかることなく、バクテリアによる良好な分解処理が可能なバイオトイレを提供することを課題とする。
【解決手段】バイオトイレ1は、椅子部と、上方に開口した便座9の通過孔9aを通過して収容された排泄物を撹拌混合するための撹拌空間7が内部に形成されたトイレ槽8を有するトイレ本体部2と、トイレ槽8の撹拌空間7に予め収容され、収容された排泄物をバクテリアの分解作用を利用して処理するためのバクテリア及び木材チップからなる分解用チップと、排泄物及び分解用チップを撹拌空間7で所定の回転数で撹拌混合するための撹拌機構部3と、撹拌機構部3による撹拌混合を行うための回転駆動力を発生させる撹拌駆動部5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオトイレに関するものであり、特に、バクテリア(微生物)による排泄物の分解処理機能を利用し、当該排泄物を主として水及び空気に分解することが可能なバイオトイレに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間が排泄した糞尿等の排泄物をバクテリアを利用して処理する所謂「バイオトイレ」に関する技術の開発が多く行われ、一部において実用化されている。このバイオトイレは、例えば、上下水道設備が地震等によって被害を受けた災害地域の避難場所等に設置される仮設トイレ、山奥等の僻地の建築作業現場に設置される作業用の臨時トイレ、或いは高地のために排泄物の処理に多大なコスト及び労力を必要とする山小屋に設置される簡易トイレ等の幅広い用途において利用されている。係るバイオトイレにより、排泄された排泄物はバクテリアの分解によって水及び空気等に主に分解され、従来のように、排泄物を処理設備まで運搬する必要がなくなる大きなメリットを有している。
【0003】
上記のバイオトイレは、主に室外に設置され、多人数の使用を想定した比較的大型のものである。これに対し、室内での使用を想定し、搬送性等に直ぐれた小型のタイプ(ポータブルタイプ)のバイオトイレも開発されている。このポータブルタイプのバイオトイレは、要介護者や高齢者等の自立歩行が困難な人々のいる家庭で使用され、当該要介護者等の居室や寝室に設置し、就寝時等にトイレまでいくことができない、或いは杖等を使用するためにトイレまで時間がかかる場合に使用するものである。
【0004】
バイオトイレでない通常のポータブルトイレを使用することは、介護者が排泄物の処理をする必要があり、そのような介護を精神的な負担として感じることがあり、ポータブルトイレの使用を我慢し、膀胱炎やその他の疾病につながる要因となることもあった。そこで、排泄物の分解処理が可能なバイオトイレを使用することにより、排泄物の処理を介護者が行う必要がなくなり、或いは当該処理が簡便に行えることとなり、上記のような要介護者の精神的な負担が解消され、また、介護者にとっても介護の負担の軽減化が図られることとなる。すなわち、要介護者及び介護者の双方にとって、優れた利点を有している。
【0005】
室内に設置されるバイオトイレは、一般に外観形状が座椅子等の家具調のデザインが施され、一見するとトイレには見えないような配慮がなされている。すなわち、要介護者等が主に居住する居室(和室等)の室内の雰囲気を損なうことがなく、さらに居室に来客があった場合でもトイレであることを感じさせることがない。バイオトイレは、一般的な構成としては、上述した座椅子等の外観からなる椅子部と、当該椅子部の内部に収容され、排泄物を貯留する空間を備えるトイレ槽、及び排泄のために使用される便座等の構成を有するトイレ本体部と、トイレ槽の空間に収容された排泄物を分解処理するためのバクテリア及びおがくず等の木材チップからなる分解用チップと、排泄物及び分解用チップを撹拌混合するための撹拌機構部と、撹拌機構部を駆動するための撹拌駆動部とを主に具備して構成されている。さらに、上記構成以外に、バクテリアによる排泄物の分解処理を活性化させるために、当該バクテリアの活動に適した温度にトイレ槽を加熱する加熱用ヒータや、排泄直後の臭気が室内に漏出することを防ぐためにトイレ槽の空間から臭気を室外に強制的に排出するためのダクト及び排気ファンからなる排気機構等の構成をそれぞれ備える場合もある。
【0006】
以上の従来技術は、公然実施されているものであり、出願人は、係る従来技術が記載された文献を、本願出願時においては特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特にポータブルタイプのバイオトイレは、下記に掲げるような問題点を有することがあった。従来型のバイオトイレは、撹拌機構部の億世が、トイレ槽に回転可能に軸支された回転シャフト部と、当該回転シャフト部に取設された複数のプロペラ部とによって主に構成されていた。すなわち、回転シャフト部から突設された複数のプロペラ部の間にはそれぞれ隙間が生じているため、回転シャフト部に協働し、プロペラ部が回転したとしても、係る隙間に存在する排泄物等はプロペラ部の回転の影響を受けることがほとんどない。すなわち、排泄物及び分解用チップの撹拌混合が行われることがない。そのため、プロペラ部の回転軌跡に位置する排泄物等のみが撹拌混合され、空間内の全ての排泄物を処理するために多くの時間が必要となった。或いは、空間に一部の排泄物が未分解のままで残留することもあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、排泄物と分解用チップとの撹拌混合が安定した状態で行われることを目的とし、回転の際に各部に過剰な負荷がかかることなく、バクテリアによる良好な分解処理が可能なバイオトイレを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のバイオトイレは、「排泄物を撹拌混合のために収容する攪拌空間が内部に形成されたトイレ槽を有するトイレ本体部と、前記撹拌空間に収容された前記排泄物の分解処理機能を有するバクテリア及び木材チップを含んで構成される分解用チップと、前記トイレ槽の互いに対向する槽壁にそれぞれ回転可能に軸支され、前記撹拌空間に架渡して配設された長棒状の回転シャフト部、前記回転シャフト部からシャフト軸に直交する方向に突設された複数のプロペラ部、及び前記プロペラ部の一端から前記シャフト軸と略平行になるように沿って延設された掻出バーを有し、前記回転シャフト部の回転に協働し、前記プロペラ部及び前記掻出バーを前記撹拌空間で回転させる撹拌機構部と、前記回転シャフト部を回転させるための回転駆動力を発生する撹拌機構部と、前記回転シャフト部と前記撹拌機構部との間を連結し、前記回転駆動力を伝達する回転伝達部と」を具備して主に構成されている。
【0010】
ここで、トイレ本体部とは、排泄物を撹拌混合するための空間(撹拌空間)が内部に形成されたトイレ槽から主に構成されている。トイレ槽の一例を示すと、底部及び槽壁部が一体化して形成され、上方に開口した開口部を有している。そして、係る開口部を略閉塞するようにヒンジによって開閉可能な便座が設置されている。そのため、使用者は、当該便座に座し、便座の略中央部に設けられた便座孔から排泄物を撹拌空間に落下させることによりトイレ本体部のトイレ槽に排泄物を収容することができる。なお、トイレ本体部を構成する素材は、特に限定されないが、加工性、コスト、及び軽量性の点から、硬質プラスチック等を使用することが好適である。さらに、撹拌空間に収容される分解用チップのバクテリアが死滅しないように、トイレ槽の槽壁や底部の表面には抗菌剤を使用していないものに限られる。
【0011】
一方、分解用チップとは、人間の糞尿等の排泄物を分解処理する機能を有する既知のバクテリアと、当該バクテリアが活動するための培地となるおがくず等の木材チップを所定の混合比率で混合してなるものである。バクテリアによる排泄物の分解処理の活動には、適切な温度、適量の水分、及び十分な空気(酸素)が必要である。ここで、十分な空気は、撹拌機構部によって排泄物等を撹拌することにより、排泄物等の間に空気を取り込むことができ、一方、適量の水分は排泄物に含まれる尿によって供給することができるため、分解用チップが極度に乾燥している場合以外は補給する必要がない。また、適切な温度を保持するために、上述した加熱用ヒータを用いるものであってもよい。なお、バクテリアによる分解処理の際には、分解熱が放出されるため、加熱用ヒータの使用は分解開始直後に限定し、その後は当該分解熱によって撹拌空間内の温度を一定に保持するものであってもよい。
【0012】
一方、撹拌機構部は、長棒状の回転シャフト部がトイレ槽に架渡されて軸支されている。具体的に示すと、互いに対向するトイレ槽の槽壁に回転シャフト部のそれぞれのシャフト端を挿通可能な軸支孔を設け、シャフト端に固定したベアリングを介して取設することにより、撹拌空間の上方で回転シャフト部が滑らかに軸回転することができる。このとき、回転シャフト部から突設された複数のプロペラ部は、回転シャフト部よりも細径の長棒状の部材で形成され、回転シャフト部のシャフト軸に直交するように取付けられている。ここで、互いに隣接するプロペラ部の間隔は任意に設定されるものであり、回転シャフト部の回転軸を中心として、所定の角度ずつ(例えば、60度ずつ)、互いに隣接するプロペラ部の取付角度が変化するように設けられている。加えて、掻出バーは、プロペラ部の一端からシャフト軸に略平行になるように沿って延設されている。撹拌機構部を構成する回転シャフト部等の素材は、特に限定されるものではないが、排泄物等の撹拌及びこれによる負荷に十分に抗することができるように、有る程度の強度を有するものが求められ、さらに排泄物等に含まれる酸等の酸化物質の影響を受けることがないステンレス等の金属製の素材、或いは硬質のプラスチック樹脂等の使用が好適と思われる。
【0013】
一方、撹拌駆動部とは、従来から周知の撹拌モータ等を用い、複数のギア若しくは伝達ベルトやプーリー等によって構成された回転伝達部を利用し、回転可能に軸支された回転シャフト部のシャフト端と連結し、回転させるための回転駆動力を発生させるものである。これにより、プロペラ部及び掻出バーが回転シャフト部の回転に協働し、撹拌空間で回転することになる。ここで、回転駆動部による回転シャフト部の回転は、非常にゆっくりした回転速度に設定され、例えば、1分間に9回転程度のものが想定される。
【0014】
すなわち、高速の回転に設定した場合、排泄物等が撹拌空間内で飛散し、悪臭等の原因となることが予想されるため、排泄物及び分解用チップが十分に撹拌混合され、分解処理に必要な空気を取り入れることのできるものであれば構わない。さらに、撹拌駆動部の稼働開始のタイミングは、例えば、排泄物の排泄が完了した後に、所定の操作スイッチを使用者自身が操作することによって行うマニュアル方式のものであっても、或いは便座の上に設けられた跳上式の座部を元の状態に戻した時に自動的に稼働を開始するオート方式のいずれにも設定することができる。さらに、撹拌時間は、稼働開始から所定の時間(例えば、5分間)を経過すると、タイマにより自動的に回転を停止するオートオフ機能を備えるものであっても構わない。これにより、就寝時等であっても、作動音や振動が長時間に亘って続くことがない。
【0015】
したがって、本発明のバイオトイレによれば、プロペラ部からシャフト軸に略平行に沿って延設された掻出バーを備えることにより、撹拌機構部と排泄物等とが撹拌空間で接触する機会が多くなる。特に、従来は回転による影響が受けられなかったプロペラ部の間であっても、掻出バーがプロペラ部の先端から延設されているため、回転の影響を確実に受けることとなる。その結果、バクテリアと排泄物との接触の機会が多くなり、分解処理の効率を向上させることができる。これにより、撹拌空間における排泄物の分解処理が短時間で速やかに進行し、かつ、未分解の排泄物が撹拌空間に残留することがない。
【0016】
加えて、各々のプロペラ部の位置が、回転シャフト部の回転軸を中心として所定の角度ずらして取付けられているため、排泄物が一箇所に固まったり、或いは挿壁側に押付けられるようなことがない。また、掻出バーによってトイレットペーパーの絡み付きを防ぐとともに、トイレットペーパーを分解しやすいように小片状に分断することも可能となる。
【0017】
さらに、本発明のバイオトイレは、上記構成に加え、「前記撹拌機構部は、少なくとも一対の前記回転シャフト部、及びそれぞれの前記回転シャフト部に取設された前記プロペラ部及び前記掻出バーを有して構成され、前記回転伝達部は、前記撹拌駆動部から供給された前記回転駆動力を、互いに隣接する前記回転シャフト部に対し、それぞれの回転方向が異なるように分配して伝達する回転方向調整機構」を具備するものであっても構わない。
【0018】
したがって、本発明のバイオトイレによれば、少なくとも一対の回転シャフト部を備え、互いに隣合う回転シャフト部の回転方向がそれぞれ異なる、換言すれば、一方の回転シャフト部の回転(正回転)に対し、他方が逆の回転(逆回転)となるように回転させるものである。なお、一般にそれぞれの回転シャフト部の回転速度は同一に設定されるが、例えば、回転方向調整機構の一方のギア比を変更し、それぞれの回転シャフト部の回転速度を変更するものであっても構わない。
【0019】
さらに、回転方向調整機構には、回転駆動力を供給する撹拌モータのモータ軸に伝達ギアを取付け、複数のギアを組合わせることによって逆方向にそれぞれの回転シャフト部を回転させるものであっても、或いはプーリー及び伝達ベルト等を用いる場合など、周知の回転伝達方式を応用するものが想定される。係る技術については、詳細な説明を省略するものとする。これにより、撹拌空間内の排泄物等が一方向に偏ることがなく、撹拌空間内で満遍なく撹拌機構部の掻出バー等と接触することになる。その結果、バクテリアによる分解処理が安定して実行され、短時間で分解処理を完了することができる。
【0020】
さらに、本発明のバイオトイレは、上記構成に加え、「前記掻出バーは、前記プロペラ部の一端から一方向若しくは双方向の少なくともいずれか一方に向かって延設され、前記掻出バー及び前記プロペラ部によって略L字形状または略T字形状を呈してなる」ものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明のバイオトイレによれば、プロペラ部及び掻出バーによって、全体として略T字形状または略L字形状で構成されている。ここで、トイレ槽の槽壁の槽壁面の近傍位置、換言すれば回転シャフト部のシャフト端近傍にプロペラ部を設ける場合、回転時の干渉を避けるため、掻出バーの延設方向は一方向(撹拌空間の中央方向)に制限される。一方、回転シャフト部の中央付近に設けられたプロペラ部からは、回転に対する干渉を受けることがないため、双方向(対向する槽壁面方向)にそれぞれ延設することができる。これにより、回転シャフト部のシャフト長さの全範囲に対して掻出バーを設置することができる。その結果、撹拌空間に収容された排泄物は少なくとも一部で掻出バーの回転による影響を受けることとなり、排泄物及び分解用チップの混合が良好に行われる。
【0022】
さらに、本発明のバイオトイレは、上記構成に加え、「前記トイレ槽の槽壁面及び底面は、前記掻出バーの回転軌跡に略一致するように凹状に湾曲して形成されている」ものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明のバイオトイレによれば、掻出バーの回転軌跡に略一致するようにトイレ槽の槽壁面及び底面が凹状に湾曲している。これにより、掻出バーと槽壁面等との間の距離を小さくすることができる。その結果、槽壁面等の近傍にある排泄物等が掻出バーによって掻出されるため、当該部位の排泄物等を撹拌することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果として、プロペラ部から延設された掻出バーの機能によって、撹拌空間内において排泄物及び分解用チップが偏ることがなく、十分に撹拌混合することができる。その結果、分解用チップに含まれるバクテリアの分解処理機能が安定して発揮されることとなり、短時間で良好な排泄物の分解処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態であるバイオトイレ1について、図1乃至図3に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態のバイオトイレ1のトイレ本体部2、撹拌機構部3、及び撹拌駆動部5の概略構成を示す上方から視た説明図であり、図2は撹拌機構部3の構成を示す斜視図であり、図3は撹拌の一例を示す説明図である。本実施形態のバイオトイレ1において、バクテリアによる分解処理に係る機能的構成について特に説明するため、バイオトイレ1の外観形状をなす家具調のデザインが施された椅子部の構成については、図示及び詳細な説明は省略するものとする。
【0026】
本実施形態のバイオトイレ1は、図1乃至図3に示すように、椅子部(図示しない)と、当該椅子部の内部に包含して設置され、排泄物4の分解処理を行うトイレ本体部2と、排泄物4を撹拌混合するための撹拌機構部3と、撹拌機構部3を駆動するための撹拌駆動部5と、排泄物4を分解処理するための分解用チップ6とを具備して主に構成されている。
【0027】
ここで、トイレ本体部2は、椅子部に設置された跳上式の座部の下方に設けられている。具体的に説明すると、排泄された排泄物4を一時的に収容し、さらに撹拌混合を行うための撹拌空間7が内部に形成されたトイレ槽8と、上方に開口したトイレ槽8の開口部8aを略閉塞するとともに、中央部に排泄物4の通過する通過孔9aが穿設された跳上式の便座9とを具備して構成されている。さらに、具体的に説明すると、上方に開口した開口部8aを有するトイレ槽8は、底部10と、四方を取り囲む槽壁11とによって形成されている。なお、排泄物4と直に接する底面10a及び槽壁面11a,11b,11c,11dは撹拌機構部3の回転軌跡(図3矢印C参照)に応じて凹状に湾曲した湾曲面として形成されている(詳細は後述する)。トイレ槽2を構成する素材は、特に限定されないが、ここでは、軽量性及び強度性に優れる硬質プラスチック素材が使用されている。
【0028】
一方、撹拌機構部3は、図1乃至図3に示すように、トイレ槽2の側部を構成する前述の槽壁11の互いに対向する一対の槽壁面11a,11bの間に、撹拌空間7の底部10の底面10aから所定の高さを保持するようにして架渡され、それぞれのシャフト端12a,12bと槽壁11に穿設された軸支孔13aをベアリング13bを介して回転可能に軸支して接続された長棒状の回転シャフト部14と、当該回転シャフト部14からシャフト軸方向に直交するようにして、所定の間隔を保持して突設された複数の長棒状のプロペラ部15と、プロペラ部15の先端から回転シャフト部14のシャフト軸方向に沿って略平行となるようにしてそれぞれ延設された掻出バー16とによって主に構成されている。ここで、トイレ槽8の撹拌空間7には、一対の回転シャフト部14が互いのシャフト軸を平行にして配設されている(図1等参照)。
【0029】
ここで、プロペラ部15は、一本の回転シャフト部14に対し、シャフト軸の長さ方向に所定の間隔を保持して取設され、かつ回転シャフト部14の回転軸に対して突出方向を所定の角度変位(ここでは、60度)させながら取付けられている(図3等参照)。このとき、プロペラ部15の先端から延設される掻出バー16は、トイレ槽2の槽壁面11a,11bの近傍位置から突設したプロペラ部15からは、撹拌空間7の中央方向に向かって、換言すれば、一方向に延設され、一方、回転シャフト部14の中央付近から突設したプロペラ部15からは、互いの槽壁面11a,11bに向かって、換言すれば、双方向に延設されている。すなわち、プロペラ部15及び掻出バー16は、槽壁面11a等の近傍では、略L字形状を呈し、一方、回転シャフト部14の中央付近では、略T字形状を呈して構成されている。
【0030】
ここで、上記の撹拌機構部3を構成する回転シャフト部14、プロペラ部15、及び掻出バー15は、それぞれ構成する素材に特に限定はないものの、撹拌混合時に排泄物4及び分解用チップ6から受ける負荷に抗し、変形等を生じないようにするためにある程度の強度を有する必要があり、さらに排泄物4等に含まれる物質によって酸化等の影響を受けることがないように、例えば、ステンレス等の金属製素材や高強度製を有する硬質プラスチック等を利用することが好適と思われる。特に、係る回転シャフト軸14は撹拌混合による負荷を最も受ける箇所であるため、全体を金属製の素材で構築することが望ましい。さらに、図示していないが、回転シャフト部14から突設されたプロペラ部15は、掻出バー16の延設された先端部分に最も排泄物4等の負荷が生じ、回転シャフト部14の根元付近に大きな力が加わることがある。そこで、互いのプロペラ部15の根元近傍を金属製の補強用バー(図示しない)で連結することにより、上記の負荷に抗することを可能とする構成にするものであってもよい。さらに、トイレ槽8の槽壁面11a等、及び撹拌機構部3のプロペラ部15及び掻出バー16の表面、すなわち、排泄物4及び分解用チップ6に直に接触する可能性の高い場所は、分解用チップ6に含まれるバクテリアを死滅させるおそれのある抗菌性の素材や、或いは当該表面に抗菌剤をコートした素材のものは使用することができない。また、撹拌機構部3を構成する回転シャフト部14等の構成は、いずれも長棒状(特に、円柱棒状)のものを示したがこれに限定されるものではなく、トイレ槽8の撹拌空間7の形状や、プロペラ部15等の回転軌跡、及び撹拌混合時に排泄物4等から受ける負荷に応じて任意に設定することが可能であり、例えば、平板状のもの、或いは角棒状のものであっても構わない。
【0031】
また、撹拌駆動部5は、図1等に示すように、一対の回転シャフト部14に対し、回転軸に沿って回転可能な回転駆動力を供給可能な撹拌モータ20と、撹拌モータ20によって供給される回転駆動力を、それぞれ一対の回転シャフト部14に対し分配するとともに、互いの回転方向をそれぞれ異なるようにする、すなわち、一方の回転シャフト部14の回転に対し、他方の回転シャフト部14を逆回転させる回転方向調整機構17を有する回転伝達部18を具備している。
【0032】
ここで、回転方向調整機構17を有する回転伝達部18は、撹拌モータ20により発生した回転駆動力を複数のギアまたはベルト等を利用して回転シャフト部14に伝達するものであり、係るギア等の組合わせを組合わせることにより、回転速度及びそれぞれの回転シャフト部14の回転の正逆方向を任意に設定することが可能である。係るギア等を用いた回転伝達部18は、周知の機械要素であるため、ここでは詳細な説明は省略するものとする。なお、本実施形態において、撹拌駆動部5の撹拌モータ20によって供給される回転駆動力によって、一対の回転シャフト部14は、撹拌空間7の中でそれぞれ1分間に約9回転の回転速度に設定されている。また、本実施形態のバイオトイレ1は、撹拌駆動部5による撹拌機構部3の駆動開始のタイミングは、前述した椅子部の座部が、跳上状態から元の状態に戻った時に駆動開始スイッチ(図示しない)が作動し、設定された回転速度で約5分間撹拌モータ20を駆動させるように設定されている。そして、予め設定した時間が経過した後には、撹拌駆動部5の駆動を停止し、撹拌空間7における撹拌機構部3による回転を終了するように設定されている。
【0033】
さらに、分解用チップ6とは、撹拌空間7に予め収容され、排泄された排泄物4と撹拌機構部3によって撹拌混合されるものである。ここで、分解用チップ6は、排泄物4を分解し、主に水及び空気に転換する機能を有するバクテリアと、バクテリアの培地として作用するおがくず等によって構成される木材チップとを適切な混合比によって混合したものである。
【0034】
次に、本実施形態のバイオトイレ1を使用した排泄物4の分解処理の一例について説明する。始めに、撹拌空間7に排泄物4が排泄され、前述したように、跳上げられた座部が元の状態に戻ると、駆動開始スイッチが作動し、撹拌機構部3による撹拌を行うための撹拌駆動部5の撹拌モータ20が駆動する。これにより、撹拌モータ20のモータ軸が回転し、回転駆動力が発生する。
【0035】
発生した回転駆動力が回転伝達部18を介して、撹拌空間7に軸支された一対の回転シャフト部14に伝達される。このとき、回転方向調整機構17によって、一対の回転シャフト部14に対し、それぞれ逆方向に回転するような回転駆動力が分散して与えられる。その結果、撹拌空間7内では、図3に示すように(矢印C参照)、回転シャフト部14に取設された各々のプロペラ部15及び掻出バー16が上方から互いに近接するように回転し、回転シャフト部14の回転軸の高さがそれぞれが最接近した後、下方に向かうに従って両者がそれぞれ離間するような回転が供給されることになる。
【0036】
このとき、トイレ槽8の槽壁面11c,11d及び底部10の底面10aは、プロペラ部15及び掻出バー16によって創成される回転軌跡に略一致するように凹状に湾曲した湾曲面19によって構成されていた(図3参照)。そのため、トイレ槽8の撹拌空間7の中央付近、換言すれば、一対の回転シャフト部14の間に存在する排泄物4及び分解用チップ6は、上方から下方に向かって回転するプロペラ部15及び掻出バー16の動きによって、中央付近から回転シャフト部14のシャフト軸の下方を通り、さらに槽壁面11c,11dに沿って上方に跳ね上げられるように移動する。そして、再び、撹拌空間7の中央付近に到達した排泄物4等は、上記と同じ動きを繰返すことになる。
【0037】
ここで、本実施形態のバイオトイレ1には、プロペラ部15から延設された掻出バー16を有している。係る掻出バー16は、トイレ槽8に架渡された回転シャフト部14のシャフト軸に対し、少なくとも一つの掻出バー16が対応するように、トイレ槽8の一方向の長さを満たすように配設されている。そのため、撹拌空間7に排泄された排泄物4及び収容された分解用チップ6は、当該掻出バー16若しくはプロペラ部15と確実に接することとなる。その結果、プロペラ部15の間に存在する排泄物4等であっても、掻出バー16の回転によって分解用チップ6と確実に撹拌混合される。さらに、プロペラ部15が回転軸に対して所定角度ずつ変位して突設されているため、排泄物4以外の分解対象(トイレットペーパー等)が絡み付くことが少なく、係るプロペラ部15及び掻出バー16によって、これらを細かく裁断することができる。これにより、バクテリアによる分解処理の効率が向上することとなる。すなわち、従来のバイオトイレでは、本実施形態のバイオトイレ1に特有の掻出バー16の構成が備わっていないため、それぞれのプロペラ部の間に存在する排泄物等を十分に撹拌混合することができず、バクテリアによる排泄物の分解処理に多くの時間を要することがあり、本実施形態のバイオトイレ1は係る欠点を解消することができる。
【0038】
なお、上述したように、撹拌駆動部5による撹拌機構部3の回転は、所定の設定時間(例えば、5分間)を経過した後は、自動的に停止することとなる。しかしながら、当該設定時間を経過後は、バクテリアを有する分解用チップ6と排泄物4とは十分に混合した状態であり、その後はこれらの混合物を静置することにより、排泄物4の分解は自然に進行することとなる。さらに、排泄物4の分解により生じる分解熱によって、バクテリアの活動を活性化させるのに適した温度が保持されるため、数時間程度の分解処理時間によって、排泄物4は最終的に水及び空気に分解されることになる。その結果、撹拌空間7には分解用チップ6のみが残る。係る分解用チップ6は、新たに排泄物4が投入された場合に、再び排泄物4と撹拌混合され、バクテリアの分解処理を行うことに使用される。つまり、分解用チップ6は、半永久的に使用することが可能であり、撹拌空間7に収容される量が少なくなった場合に、必要量を適宜補充するだけでよい。
【0039】
さらに、槽壁面11a等及び底面10aがプロペラ部15及び掻出バー16の回転軌跡に併せて凹状に湾曲しているため、撹拌空間7の中で排泄物4等が一部に偏り、全く回転による撹拌の影響を受けることがない部位に貯留することがない。そのため、撹拌混合により、分解用チップ6との混合が速やかに行われ、十分な空気を含んだ状態で分解処理を行うことが可能となる。
【0040】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の完了及び設計の変更が可能である。
【0041】
すなわち、本実施形態のバイオトイレ1において、撹拌空間7に一対の回転シャフト部14を配設するものを示したが、これに限定されるものではなく、一本のみの回転シャフト部14、或いは三本以上の回転シャフト部14を撹拌空間7に配設するものであっても構わない。ここで、回転シャフト部14の数は、一度に撹拌混合することの可能な排泄物4等の処理能力に大きく影響するものであり、また、トイレ槽8又はトイレ本体部2のサイズにも影響するものである。そのため、一度に分解処理の可能な排泄物4の処理量に応じ、回転シャフト部14等の本数を適宜選択するものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態のバイオトイレのトイレ槽、撹拌機構部、及び撹拌駆動部の概略構成を示す上方から視た説明図である。
【図2】撹拌機構部の構成を示す斜視図である。
【図3】撹拌の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 バイオトイレ
2 トイレ本体部
3 撹拌機構部
4 排泄物
5 撹拌駆動部
6 分解用チップ
7 撹拌空間
8 トイレ槽
8a 開口部
9 便座
9a 通過孔
10 底部
10a 底面
11 槽壁
11a,11b,11c,11d 槽壁面
12a,12b シャフト端
13a 軸支孔
13b ベアリング
14 回転シャフト部
15 プロペラ部
16 掻出バー
17 回転方向調整機構
18 回転伝達部
19 湾曲面
20 撹拌モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を撹拌混合のために収容する攪拌空間が内部に形成されたトイレ槽を有するトイレ本体部と、
前記撹拌空間に収容された前記排泄物の分解処理機能を有するバクテリア及び木材チップを含んで構成される分解用チップと、
前記トイレ槽の互いに対向する槽壁にそれぞれ回転可能に軸支され、前記撹拌空間に架渡して配設された長棒状の回転シャフト部、前記回転シャフト部からシャフト軸に直交する方向に突設された複数のプロペラ部、及び前記プロペラ部の一端から前記シャフト軸と略平行になるように沿って延設された掻出バーを有し、前記回転シャフト部の回転に協働し、前記プロペラ部及び前記掻出バーを前記撹拌空間で回転させる撹拌機構部と、
前記回転シャフト部を回転させるための回転駆動力を発生する撹拌機構部と、
前記回転シャフト部と前記撹拌機構部との間を連結し、前記回転駆動力を伝達する回転伝達部と
を具備することを特徴とするバイオトイレ。
【請求項2】
前記撹拌機構部は、
少なくとも一対の前記回転シャフト部、及びそれぞれの前記回転シャフト部に取設された前記プロペラ部及び前記掻出バーを有して構成され、
前記回転伝達部は、
前記撹拌駆動部から供給された前記回転駆動力を、互いに隣接する前記回転シャフト部に対し、それぞれの回転方向が異なるように分配して伝達する回転方向調整機構をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のバイオトイレ。
【請求項3】
前記掻出バーは、
前記プロペラ部の一端から一方向若しくは双方向の少なくともいずれか一方に向かって延設され、
前記掻出バー及び前記プロペラ部によって略L字形状または略T字形状を呈してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオトイレ。
【請求項4】
前記トイレ槽の槽壁面及び底面は、
前記掻出バーの回転軌跡に略一致するように凹状に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のバイオトイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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