説明

バイオフィードバック方法およびバイオフィードバックシステム、ゴルフスイングのテンポ測定システム

【課題】本発明は、長尺部材を具備し、前記長尺部材のスイングテンポを示す音声をフィードバックするバイオフィードバックシステムを提供する。
【解決手段】
バイオフィードバックシステムは、長尺部材の長方向に沿った複数の位置において、加速度を測定するように配置された複数の加速度測定装置と、測定された加速度の信号を処理して、重力の影響を低減させるとともに、角速度のべき乗数に相関したデジタル数データを形成するための第1のマイクロコントローラと、複数のビット情報を含むデジタル数データと、デジタル数データを受信し、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ含む複数の群に関連付けるとともに、音調成分および振幅値に対応したコマンドを形成するための第2のマイクロコントローラと、コマンドに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、音響信号を出力する手段と、を含む

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフスイングのテンポ測定システム等として、ゴルフスイング等の動きやテンポに対応した音響によるバイオフィードバックを供する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ、テニス、フィッシング、ボーリング、野球等のいずれのスポーツを行う場合でも、同じスイングを繰り返すためには、一定のテンポで、長尺物等をスイングすることが重要となる。そして、試合(ゲーム)における一定の状況下でいったん正しいスイングを得ると、同じ状況で、そのスイングを繰り返すことができるはずである。ここで、一定のテンポとは、そのスイング中の速度変化が、スイングを何回おこなっても繰り返されることをいう。
【0003】
また、長尺物等のスイングにおいて競技者が、所定のテンポの感覚を得ることは、各種スポーツにおいては一般にきわめて困難である。速い、遅いと感じる競技者の感覚は、ムードや、アドレナリンのレベルなどによって、日々に、そして、時々刻々と変わるためである。また、映像機器を用いた場合であっても、一貫した動きを得ることはさらに複雑となる。というのは、概して競技者は、より集中すべきポイントから注意をそらすことになるからである。さらに、トレーニングは、一般に、競技者本人より、その回りの人が感触や目で見て感じるものに重点が置かれていて、一方、それらの人が、競技者に対して、スイング速度やテンポを伝えることはほとんど困難である。従って、スイングの動きに干渉することなく、競技者にテンポを定量的に感得させる方法は競技者のトレーニング・運動を効果的に助長する。
【0004】
また、テンポを競技者に感じさせる自然な方法は音や音楽を通して行うことであり、これによって、競技者はスイングに集中することができる。全ての文化において普遍的な音楽を競技者が絶え間なく聴く機会を与えることにより、競技者は音響的感覚に基づいたテンポに対応したタイミングに感覚的に慣れることになる。
【0005】
また、ゴルフスイングにおける競技者の瞬間的動きは、競技者の意識的な制御より速く生じ、制御速度及びテンポは確実で再生可能なスイングの動きを得るためには、きわめて重要である。さらに、筋肉の活動を無意識に調整する筋肉の記憶は、正しいテンポの繰り返し行う練習によって学ぶことができる。従って、音響による方法は競技者の注意をそらすことなくスイングテンポ情報を無意識的に競技者に与えることができる優れたメカニズムである。
【0006】
ここで、ゴルフスイングのテンポとは、ゴルフクラブがバックスイングとフォロースルーとの間でボールを叩きながら描く円状軌跡を通過する際の、ゴルフスイングの速度変化である。ゴルフスイングは、円軌跡による動きによって支配されている為、ゴルフスイングはクラブの角速度の時間的履歴又はテンポを示す。さらに、円運動内で動く物体の求心加速度は、物体の角速度の関数であるため、ゴルフクラブの近傍に設けた加速度計は、テンポを示す信号を出すことになる。
【0007】
そして、スイングしているゴルフクラブ上の特定点における求心加速度は、その点に設けた加速度計によって測定することができ、検出軸はシャフトの軸線と同一である。一般に、この求心加速度acはac2rの関係式を用いてゴルフクラブの角速度の二乗として、瞬間的に測定することができる。ここで、ωは角速度であり、rは加速度計が動く際の有効半径である。
【0008】
しかし、先行技術において、重力の影響で測定に誤差が出ることが判明した。所望の求心加速度に紛れ込む誤差信号は、シャフトの軸線に沿って異なった位置に設置された2つの加速度計を用いて差動測定を行うことにより低減又は除去することができる。即ち、各加速度計は同一の重力加速度を検出するが、求心加速度はゴルフクラブの動きの有効半径に基づいて測定される。
【0009】
しかし、ゴルフクラブに取りつけた加速度計及び音響フィードバックを用いることによって十分な利点を得ることは努力なしにはかなり困難である。例えば、米国特許No.6,261,102(特許文献1)は、加速度計の出力をバイオフィードバック用音響信号に変換する技術を開示している。加速度計の軸線をゴルフクラブの軸線と一致させることにより、加速度計は求心加速度を測定し、測定値に基づいて、ゴルフクラブの角速度の二乗を決定する。次に、ゴルフクラブの角速度の二乗に比例する信号は周波数に変換され、音響信号として使用者に供される。しかし、重力作用に対する補償が十分なされていないため、感受性が不十分であり、ゴルフスイングにおける大きな速度変化によって、不快な“金切り(チャープ)”音(chirp like sound)が生じがちである。
【0010】
他の二つの先行技術をなす特許も、同様な問題点を有する。具体的には、コバヤシ(Kobayashi)に付与された米国特許No.5,233,544(特許文献2)は、ゴルフクラブシャフトに沿って多くの加速度計を取り付けたものであるが、音質に問題が生じる可能性を認識しておらず、また、本発明が提供する複数の音調の使用についても何ら開示しておらず又示唆してもいない。さらに、Kobayashiは角速度の二乗の信号よりも角速度そのものを用いるので、角速度の二乗の信号による良好な感度を与えることができない。
【0011】
また、キム(Kim)に付与された米国特許No.5,694,340(特許文献3)は、同様に加速度信号を展開する多数の加速度計の使用を開示するが、重力によってもたらされる有害な作用をなくすことができる多数の加速度計を用いることによる利益を何ら開示しておらず又示唆してもいない。しかもKimは多数の周波数を用いているものの、これらの周波数は3つの軸を識別するために用いられ、金切り音(chirp sound)を除去したり、音声の音質を改善したりするために用いられていない。
【特許文献1】米国特許No.6,261,102
【特許文献2】米国特許No.5,233,544
【特許文献3】米国特許No.5,694,340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、この技術分野において、さらなる改良が求められている。特に、運動用具の一つ、例えば、ゴルフクラブ(特に限定するものでないが)において、ゴルフクラブの軸線に沿って生じる重力のような直線加速度(回転運動によらない)の効果を除去する、又は、低減でき、かつ、感度を高めると共に音響効果を高め音調要素と振幅がテンポを示すべく変化する快適な音を作成する二乗の角速度を用いるバイオフィードバックシステムを提供することが望ましい。よって、本発明は、ここで説明された目的や利点を実現することで、前述の欠点を克服するものである。
【0013】
すなわち、本発明は、従来技術における感度不足を解決することを目的とする。
また、本発明は、重心の影響を相殺することによって、より改善されたスイングテンポの表示するための装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、角速度の二乗に関連した信号を用いてテンポの変化の測定感度を向上することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、さらに、耳に心地よい音調要素や振幅を用いた改良型音響フィードバックを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、さらに、測定信号や測定信号から得られた情報やコマンドを後に行うプレイバックや解析のために記憶するシステムを提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、さらに、バイオフィードバック信号を搬送する無線リンクを用いる改良型音響フィードバック方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一般に、本発明は、長尺部材を具備し、かかる長尺部材のスイングテンポを示す合成音声をフィードバックするバイオフィードバックシステムを提供する。
本発明の好ましい実施態様としてのバイオフィードバックシステムは、長尺部材の長方向に沿った、複数の位置において、加速度を測定するように配置された複数の加速度測定装置と、測定された信号を処理し、重力の影響を低減するとともに、角速度のべき乗に相関した複数のビット情報を含むデジタル数データを形成する第1のマイクロコントローラと、複数のビット情報を含むデジタル数データと、かかるデジタル数データを受信し、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ含む複数の群に関連付けるとともに、当該音調成分および当該振幅値に対応したコマンドを形成するための第2のマイクロコントローラと、かかるコマンドに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、かかる音響信号を出力する手段と、を含むものである。
【0019】
また、本発明の好ましい実施態様に係る方法は、長尺部材の長方向かつ異なった位置において、長尺部材の加速度を示す複数の加速度信号を生成するステップと、加速度信号を処理し、加速度信号における重力の影響を低減するステップと、加速度信号が処理され、かつ、角速度のべき乗に相関した複数のビット情報をそれぞれ含んだ、一連のデジタルサンプルを形成するステップと、群固有のデジタル値に対応した音響成分および振幅値を有する、各群のうち、デジタルサンプルにおける複数のビット情報に対応した群を決定するステップと、群における音調成分および振幅値を表す合成音を形成するためのコマンドを生成するステップと、合成音をフィードバックするステップと、を含む。
【0020】
また、本発明の別の実施態様に係るシステムは、長尺部材の運動状態に対応したデジタル信号を抽出するための、前記長尺部材に連結された複数のセンサーと、デジタル信号を処理して、重力の影響を低減し、角速度のべき乗に相関したマルチビットデジタル数のデータを生成するとともに、マルチビットデジタル数のデータを、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ含む複数の群に関連付ける手段と、コマンドに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、音響信号を出力する手段と、を含む。
【0021】
また、本発明の他の実施態様に係る方法は、長尺部材の運動状態に対応したデジタル信号を抽出するために、長尺部材の長手方向に沿って取り付けられた複数のセンサーを取りつけるステップと、デジタル信号を処理して、重力の影響を除去又し、長尺部材に沿った少なくとも2か所において、角速度のべき乗に相関したマルチビットデジタル数のデータを生成するとともに、マルチビットデジタル数のデータを、マルチビットデジタル信号の情報に対応した音調成分および振幅をそれぞれ有する複数の群にマッピングするステップと、群固有のビット値に対応した音調成分および振幅値を有する音響信号を合成するステップと、音響信号を出力するステップと、を含む
【0022】
また、本発明の他の実施態様に係るシステムは、長尺部材の運動特性を音声に変換するバイオフィードバックシステムであって、マルチビットデジタル数のデータとして、運動パラメータを捕捉するために、長尺部材の長手方向に沿って配置された複数のセンサーと、マルチビットデジタル数のデータを、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する複数の群に、それぞれマッピングする処理装置と、マッピングされたマルチビットデジタル数のデータに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、前記音響信号を出力する手段と、を含む。
【0023】
また、このシステムに関連する方法は、マルチビットデジタル数のデータとして運動パラメータを補足するために、長尺部材の長手方向に沿って配置された複数のセンサーを配置するステップと、マルチビットデジタル数のデータを、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する複数の群に、それぞれマッピングするステップと、マルチビットデジタル数のデータに応答し、音響信号を作成して、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する音響信号を生成するステップと、音響信号を出力するステップと、を含む
【0024】
さらに、具体的な実施態様としては、長尺部材がゴルフクラブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、具体例として、長尺部材の一つであるゴルフクラブを例にとって、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
ここで、各図は本発明の全ての特徴を示すものではなく、また、図面中、同様な又は同一の構成要素は同一の符号で示される。
【0027】
先ず、図1および図2を参照して本発明を説明する。図中、数字100は本発明に係るバイオフィードバックシステムを示し、数字200は本発明に係るゴルフクラブを示す。また、本発明は、ゴルフクラブ200と共に、音響によるバイオフィードバック装置に係るものである。バイオフィードバックシステム100は、好ましくは、演算処理装置300と、モニタ250と、を具備する。本実施例では、演算処理装置300と、モニタ250は相互に無線で接続されており、又、ゴルフクラブ200と無線で接続することもできる。
【0028】
ゴルフクラブ200は、長尺部材215からなり、長尺部材215は少なくとも1つのシャフトで構成され、さらに長尺部材215にクラブヘッド230を取り付けることもできる。第1の加速度計220と、第2の加速度計225が長尺部材215に取り付けられている。長尺部材215をスイングすると、加速度計220、225は、長尺部材215の軸線に沿って加速度をモニタする。
【0029】
好ましくは、部材215の内部には、それぞれ加速度計220、225に協動可能に接続された2つのA/Dコンバータ254、255と、これらのコンバータ254、255に接続されたマイクロプロセッサ260と、マイクロコントローラ260の出力端に接続された無線式送受信機265と、を具備する回路245を装着されている。マイクロプロセッサ260は、加速度計220、225のデジタル化された出力の差を計算し、その情報を、アンテナ235を介して、演算処理装置300に伝送する。具体的には、クラブヘッドに設けられる加速度計も、長尺部材の長方向に沿って設けられた加速度計とみなされる。
【0030】
また、演算処理装置300は、アンテナ315を介して伝送されたデータを受信し、以下に説明する信号を音響的に組み込んだ後、バイオフィードバック音響信号としてスピーカ355又はモニタ250に公知の方式で出力する。モニタ250は、イヤホン252と小型携帯受信機256を含めてもよい。他の実施例では、一体型受信機と、ヘッドセットを使用者が身に着けてもよい。
【0031】
一般的背景技術を、図3を参照して説明すると、スイング分析パラメータが全体として205で示されており、測定軸をゴルフクラブ200の軸と等しくする加速度計220、225を取り付けたゴルフクラブ200が示されている。腕105と、手首110を有するプレーヤー(図示しない)は、ボール140を打つため、ヘッド230を有するクラブ200を、手首110回りに角速度ω rad/sで円運動135を描くようにスイングする。
【0032】
ここで、スイングするクラブ上の特定の点における求心加速度は、同特定点に設けられかつ検出軸を長尺部材の軸線と等しくした加速度計を用いて測定することができる。一般に、この求心加速度acは、ac2rの関係式を用いてクラブの角速度を瞬間的に測定するため使用される。ここで、ωはクラブヘッドの角速度(ヘッド部あるいはヘッド近傍の加速度計を想定した)であり、rは加速度計が移動する有効半径である。
【0033】
この加速度の大きさの最大値を推定するためには、プレーヤーがクラブヘッド速度を100mph程度でスイングできるということが留意されている。クラブヘッドが移動する円運動を形成する典型的な半径は5フィート(1.5m)程度であるが、加速度計は通常約4.5フィート(1.35m)の位置にある。このことから、求心加速度の最大測定値は1200m/s程度となる。一般に、重力加速度 9.8m/sにより標準化すれば、約120gとなる。これは測定に必要なダイナミックレンジを画定する手段として有用である。
【0034】
測定誤差は、重力の影響によるものである。加速度計は、検出軸に沿って受ける全ての加速度を測定する。地球の引力は等加速度9.8m/sであり、1gで表され、地球の中心に向かって働く。重力加速度の方向は、矢印「g」で表され、本発明においては垂直方向と定義される。
【0035】
図3に示すように、重力加速度gの方向に対するゴルフクラブ200の方向性は、クラブヘッド230が軌跡135に沿って移動するに従って変わる。この方向性の変化は、重力加速度に係る時間的に変化する誤差信号の原因となり、加速度計225および220の出力に現れる。
【0036】
したがって、誤差信号は、所望の求心加速度信号に加味され得るものであり、rおよびrにそれぞれ位置する加速度計220および225からのデータを使用して示差測定を行うことにより除去される。当業者が認識するように、各加速度計は同一の重力加速度を検出するが、運動の有効半径に従う求心加速度の大きさは検出できない。このことを要約すると、
【0037】
【数1】

【0038】
ここで、aは加速度計220で測定された加速度である。
【0039】
【数2】

【0040】
ここで、a2は加速度計225で測定された加速度である。g・rは長尺部材の軸線に沿った重力加速度の大きさを表している。式(1)と式(2)の差を取れば、以下のようになる。
【0041】
【数3】

【0042】
この差はω(角速度の二乗)に比例するが、重力加速度に依存しない値となる。ここで、(r−r)は定数である。
【0043】
式(3)より、二つの加速度計を最大限離れた位置に置くことにより、発生信号が最適化されることは明らかである。これにより、一方の加速度計をグリップ端の近傍に、他方の加速度計をヘッド端近傍に置くことが望ましく、この状態がこの好適な実施例で説明されている。
【0044】
ω、すなわち、角速度の二乗信号の代表的なプロットを図4に示す。図4の信号の平方根、すなわち、角速度ωの関係を図5に示す。図4および図5により、角速度の二乗信号であるω信号を用いれば、感度を向上でき、スイング速度の変化に対して出力レベル大きく変化させられることが理解できる。また、ωは、クラブの機械的回転エネルギーの尺度ともなるものである。
【0045】
本発明は、ω信号を、略瞬時加速度差値の12ビットのデジタルで表されたビットをマッピングあるいは関連付けることによって、ビット群の間隔に組み込んで各群に独自の音響を与えるシステムである。すなわち、一つまたは複数の機器が和音や音符の音を出すようにしたものである。各群に独自の音を与え、その群内のビット値の関数として各音の大きさを変化させて、バイオフィードバック音響信号に情報を加え、スイングテンポの違いを認識できるようにしている。全体的な効果として、和音の調和関係を維持し、周波数チャープを避けながら、音調要素と、振幅値を変化させることができる。
【0046】
また、本発明の好適な実施例では、選択された群に対しユニークな音を発生させるために、MIDIウェーブテーブル生成装置を使用している。
【0047】
図1および図2を再び参照して説明する。加速度計225は、クラブヘッド230近傍に位置しているため、二つの求心加速度のうちより高い加速度を読み込む。加速度計のアナログ出力はA/Dコンバータ254、255に送られ、そこでデジタルデータストリームに変換されて、シリアルリンク262を介してマイクロプロセッサ260に送られ処理される。本好適な実施例には、加速度計のアナログ出力をデジタルデータストリームに変換してマイクロプロセッサ260に送るためのマイクロチップ MCP3210 12ピットA/Dコンバータを含むが、好ましくは、マイクロチップ 8ビットマイクロコントローラ PIC16F873Aである。
【0048】
また、マイクロプロセッサ260は、加速度計の読みを減算し、その結果の12ビットNRZデータをフォーマット化して送受信機265から演算処理装置300に伝送する。他の実施例では、減算は演算処理装置300で行われる。
【0049】
また、送受信機265は、好ましくは、マイクロプロセッサ260からのNRZシリアルデータ受信し、そのデータを同期マンチェスターコーディングに再フォーマット化して915MHzでアンテナ235に送るように構成された、チップコン社製のCC1000送受信機である。初期化値は、データ書式や周波数選択を含み、マイクロプロセッサ260にあるフラッシュメモリに格納され、シリアルリンク266により送受信機265に送られる。マイクロコントローラ260からの加速度データは、シリアルリンク264により送受信機265に送られる。
【0050】
好適な実施例に適した加速度計の選択は、以下のように進められる。上述のように、円運動を定義する代表的半径を約5フィート、クラブヘッド速度を約100mph台とし、加速度計を長尺部材215のグリップ端より約4.5フィートに取り付けることによって、加速度計225による加速度は約1200m/sあるいは約120gとなる。従って、好適な加速度計は、アナログ装置ADXL193(AD22282)等のgレンジが120g台を有するものである。特に速いスイングをするゴルファーに対する他の実施例では、加速度計はADXL193(AD22282)等のgレンジが250gを有するものが用いられ、比較的遅いスイングのゴルファーに対する第3の実施例では、加速度計は、ADXL78(AD22280)等のgレンジが50gを有するものを用いてもよい。他の実施例では、加速度計220は、グリップ222に近いため加速度計225よりも低い等級となり、従って、加速度計225よりも低い求心加速度となる。この最後の実施例に対しては、加速度計220の出力は、好ましくは、式(3)を得るために式(1)と(2)の減算が容易になるように増減される。
【0051】
あるいは、前述のようなタイプの加速度計を複数備えて、クラブ200に取り付けたスイッチ(図示しない)により選択できるようにしてもよい。これにより、同じクラブを異なるスイング速度の複数のゴルファーが使用できるようになり、また、同一のゴルファーが、それぞれ大きく異なる複数のスイング速度で使用することも可能となる。他の実施例では、加速度計の選択は、送受信機265と送受信機330間を無線リンクにより行ってもよい。
【0052】
図6は、演算処理装置300内の回路のブロック図である。送受信機265と、アンテナ235により送信された12ビットのデータは、アンテナ315により受信され、送受信機330によりNRZコードに復調されてNRZシリアルストリームを介してマイクロコントローラ335に送られる。シリアルバス332と334は、ブロック330と335間の通信に使用され、シリアルバス337は、ブロック335と340間の通信に使用され、バス342は、ブロック340と345間の通信に使用される。
【0053】
また、マイクロコントローラ335は、好ましくはPIC16F837Aであり、12ビットのデジタルデータストリームを受信し、その12ビット加速度信号のビットを6群にマッピングする。群1〜4は9ビット、群5は8ビット、群6は7ビットを含む。好適な実施例において各群で定義されたビットを表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
各群のビットはワードとして取り扱われ、マイクロコントローラ335はこのワードの数値を計算する。例えば、ワードb−bが000001010の場合は、ワードの値は10となる。
0でないワードの値を持つ群については、マイクロコントローラ335は、好ましくは、MIDIコマンドをシンセサイザー340に伝送し、特定の群の発信音をONし、ONされた群のワード値に比例した値と等しいONされた群の信服を指令する。これにより発生したMIDIコマンドはシンセサイザー340と連続的に交信する。シンセサイザー340は、以下に詳細に説明するように、NIDIコマンドを解釈し、これをバイオフィードバック信号値に変換する。好適な実施例では、General MIDI規格対応のCRYSTALシングルチップウェーブテーブルミュージックシンセサイザーCS9236を用いている。他の実施例では音調群が予め記録されており、この音調群をメモリーから呼び出しれ組み合わせることによって、シンセサイザーバイオフィードバック信号を形成する。
【0056】
また、好適な実施例では、シンセサイザー340はマイクロコントローラ335によりプログラムされ、各群を特定のMIDIチャンネルと関連付ける。各MIDIチャンネルは、好適な実施例における特定の和音を出すようにプログラムされ、音楽的には第5音として知られている二つの音符と、根音とその完全5度の音程を含む。基本周波数fの第5音を用いた場合、関連する第5音の周波数は1.5fである。他の和音関係は、図6のパネルコントロール370によりスイッチを操作して選択可能である。さらに他の実施例では、異なった和音関係を有する一連の音程を用いてもよく、また、和音関係のない一連の音程を用いてもよい。すべての群に好適な楽器はロックオルガンであるが、すべての群に対する他の楽器あるいは各群に対する異なった楽器がパネルコントロール370により選択可能である。
【0057】
好適な実施例の音程群関係あるいは音調構成を表2に示す。ここで、C4は中央C(約261.6Hz)、C3はオクターブ下(約130.8Hz)、C5はオクターブ上(約523.2Hz)等を示す。
【0058】
【表2】

【0059】
各MIDIチャンネルの音の振幅値(ボリューム値)は、対応する群のビット値により決められる。例えば、群1では、ボリューム値は12ビット完全信号のビットb−bにより定義される。ここで、bは最小桁ビットである。ビットb−bのワード値が0と127の間の場合、出力ボリューム値はワード値に比例して決められる。ワード値が128から255の間の場合には、出力ボリューム値は127に比例した値に限定される。ワード値が256から511の間の場合には、出力ボリューム値は、(511−群内ビットのワード値)/2と等しく決められる。これにより群1の波形、例えば、ボリューム値が最大値127まで角加速度の二乗で増加し、127で留まり、次に負の勾配となり、角加速度がさらに増加しながら0に戻るような波形ができる。この振幅値特性を図7に示す。
【0060】
この基本的なプロセスはすべての群について同じである。1から4の各群は9ビットで定義され、振幅値は各々図7に示す振幅値曲線に合致している。群5は8ビットで、群6は7ビットで定義され、これらの振幅値特性はそれぞれ127まで達し、逆方向ではないが負の勾配となる。すべての群の音の高さとボリューム値の編成結果を図8に示す。正味効果はボリューム値変化と音調成分であり、それには和音関係が維持できて周波数チャープを回避できるフォーマットでの信号増加を伴う。表2は特定のチャンネルに関係するそれぞれの和音を示す一方で、他の実施例では、1つまたは複数のチャンネルにおける複数の和音を提供する。
【0061】
また、処理装置300はフラッシュメモリ365を備え、これに音響効果を組み込んだデータ(MIDIコマンドおよび12ビット加速度データの形式)を格納する。MIDIコマンドは好ましくは練習中のプレイバックに使用するが、12ビット加速度データは処理装置300の代わりにパソコンと併せて使用するか、あるいは他の音響や音響効果の実験に使用することもできる。
【0062】
また、情報は処理装置300からデータポート375を介してダウンロードできるが、他の実施例では、メモリーカードによって取り出すことも可能である。同様に、プレーヤーの自由選択で、他の音響効果仕組みを処理装置300へデータポート375を介してアップロードし、コントロールパネル370から選択することが可能である。
【0063】
また、シンセサイザー340の出力は、音響効果の組み込まれた角速度二乗信号を表すデジタルデータストリームであり、クラブの回転機械エネルギーの大きさである。この信号は、アナログ値への変換のためにD/Aコンバータ345に送られる。このアナログ値は、オーディオアンプ360とスピーカ355へ送られる。D/Aコンバータ345からのアナログ信号は、アンテナ320を有する無線送信機350へ随意接続するコネクタ(図示なし)のところでも利用可能である。無線送信機350は、電波を介しての送信に使用するが、他の実施例では赤外線信号が使用される。
【0064】
本発明のさらなる特徴として、図4の一般形を有するゴルフスイング曲線を重ね合わせることが可能であることが挙げられる。したがって、それらを互いに比較して、一人のユーザーあるいは様々なユーザーの間で繰り返されるスイングのスイングテンポを目に見える形で表示(および比較)することが可能である。このような情報は、その後、後で再び見ることができるように格納でき、また、例えば家庭内のユーザーに目に見える形で連絡することが可能である。このようにして、ユーザーは、例えば本発明のゴルフクラブ200を使用しているプロゴルファーのゴルフスイングを分析することができる。
従って、本発明は、従来技術にはない多くの利点を備えている。例えば、本発明は、音響効果を組み込んだ角速度二乗値を用いた音響フィードバックや、重力加速度の角速度二乗値の補正を備え、またスイング速度を表すため、掃引周波数よりもむしろ、変化する音調成分や振幅値を使用するものである。
【0065】
本発明を、その好適な実施例を参照して特に説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲および精神を逸脱することなく形態や細部を変更させることができるということは明らかである。例えば、以上説明した方法や機能を遂行するために、マイクロプロセッサが所定の速さを求められる場合等は、マイクロプロセッサ機能として、一つのユニットにすべてまとめて提供することもできる。従って、以上説明したような構成要素の配置は典型的なものであり、これに限定されるものではない。
【0066】
同様に、角速度べき乗するべき数について、上記した説明では、すべて、実質的に2として述べられているが、誰かがこの量をわずかでも変えた場合であっても、請求範囲はそれほど限定的ではない。従って、ここでは、少なくとも大体(好ましくは正確にであるが)2と記載している。さらに、長尺部材の長手方向に沿って置かれた加速度計は、その長尺部材における部材内部または部材上に取り付けることができ、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれることは明らかである。
【0067】
最後に、同様に、センサーを、例えば長尺部材の壁面上等に物理的に取り付けない、すなわち、所定距離だけ離して分離させて取り付けるようにすることもできる。この場合、特許請求の範囲は、長尺部材の加速度は、長尺部材から物理的に分離された一つあるいは複数のセンサーにより測定される実施例を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明によって構成されたバイオフィードバック装置の説明図である。
【図2】本発明の好ましい実施例に係るゴルフクラブ中に装着した電子回路のブロック図である。
【図3】は、ゴルフクラブを用いたゴルフスイングの解析に用いる概念図である(但し、例えば、テニスラケットのような長尺部材のスイングの解析にも同様に適用できるものである)。
【図4】図3の形態における典型的な角速度の二乗のデータ特性を示すグラフである。
【図5】図3の形態における典型的な角速度のデータ特性を示すグラフである。
【図6】本発明の好ましい実施例における処理部のブロック図である。
【図7】単一音調群の振幅特性をプロットしたグラフである。
【図8】本発明の12ビットのデジタルデータを表すため用いられる全音調群の振幅特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を具備し、当該長尺部材のスイングテンポを示す合成音声をフィードバックするためのバイオフィードバックシステムであって、
前記長尺部材の長手方向に沿った複数の位置において、加速度を測定するように配置された複数の加速度測定装置と、
測定された前記加速度の信号を処理して、重力の影響を低減させるとともに、角速度のべき乗数に相関したデジタル数データを形成するための第1のマイクロコントローラと、
複数のビット情報を含む前記デジタル数データと、
前記デジタル数データを受信し、前記ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ含む複数の群に関連付けるとともに、当該音調成分および当該振幅値に対応したコマンドを形成するための第2のマイクロコントローラと、
前記コマンドに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、
前記音響信号を出力する手段と、を含むバイオフィードバックシステム。
【請求項2】
前記角速度のべき乗数は、少なくとも実質的に2であることを特徴とする請求項1に記載のバイオフィードバックシステム。
【請求項3】
長尺部材のスイングテンポを示す合成音をフィードバックするためのバイオフィードバック方法であって、
前記長尺部材の長手方向かつ異なった位置において、当該長尺部材の加速度を示す複数の加速度信号を生成するステップと、
前記加速度信号を処理し、当該加速度信号における重力の影響を低減するステップと、
前記加速度信号が処理され、かつ、角速度のべき乗に相関した複数のビット情報をそれぞれ含んだ、一連のデジタルサンプルを形成するステップと、
群固有のデジタル値に対応した音響成分および振幅値を有する、各群のうち、前記デジタルサンプルにおける複数のビット情報に対応した群を決定するステップと、
前記群における音調成分および振幅値を表す合成音を形成するためのコマンドを生成するステップと、
前記合成音をフィードバックするステップと、を含むバイオフィードバック方法。
【請求項4】
長尺部材を具備し、当該長尺部材のスイングテンポを示す合成音声をフィードバックするためのバイオフィードバックシステムであって、
前記長尺部材の運動状態に対応したデジタル信号を抽出するための、前記長尺部材に連結された複数のセンサーと、
前記デジタル信号を処理して、重力の影響を低減し、角速度のべき乗に相関したマルチビットデジタル数のデータを生成するとともに、当該マルチビットデジタル数のデータを、前記ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ含む複数の群に関連付ける手段と、
前記コマンドに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、
前記音響信号を出力する手段と、を含むバイオフィードバックシステム。
【請求項5】
前記角速度のべき乗数は、少なくとも実質的に2であることを特徴とする請求項4に記載のバイオフィードバックシステム。
【請求項6】
長尺部材のスイングテンポを表す音声をフィードバックするバイオフィードバック方法であって、
前記長尺部材の運動状態に対応したデジタル信号を抽出するために、当該長尺部材の長手方向に沿って取り付けられた複数のセンサーを取りつけるステップと、
前記デジタル信号を処理して、重力の影響を除去又し、前記長尺部材に沿った少なくとも2か所において、角速度のべき乗に相関したマルチビットデジタル数のデータを生成するとともに、当該マルチビットデジタル数のデータを、前記マルチビットデジタル信号の情報に対応した音調成分および振幅をそれぞれ有する複数の群にマッピングするステップと、
群固有のビット値に対応した音調成分および振幅値を有する音響信号を合成するステップと、
前記音響信号を出力するステップと、を含むバイオフィードバック方法。
【請求項7】
長尺部材の運動特性を音声に変換するバイオフィードバックシステムであって、
マルチビットデジタル数のデータとして、運動パラメータを捕捉するために、前記長尺部材の長手方向に沿って配置された複数のセンサーと、
前記マルチビットデジタル数のデータを、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する複数の群に、それぞれマッピングする処理装置と、
マッピングされた前記マルチビットデジタル数のデータに応答し、音響信号を作成するシンセサイザーと、
前記音響信号を出力する手段と、を含むバイオフィードバックシステム。
【請求項8】
長尺部材の運動特性を捕捉するためにセンサーを用いて、バイオフィードバック信号を使用者に供給するバイオフィードバック方法であって、
マルチビットデジタル数のデータとして運動パラメータを補足するために、前記長尺部材の長手方向に沿って配置された複数のセンサーを配置するステップと、
前記マルチビットデジタル数のデータを、ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する複数の群に、それぞれマッピングするステップと、
前記マルチビットデジタル数のデータに応答し、音響信号を作成して、前記ビット情報に対応した音調成分および振幅値をそれぞれ有する音響信号を生成するステップと、
前記音響信号を出力するステップと、を含むバイオフィードバック方法。
【請求項9】
前記長尺部材がゴルフクラブであることを特徴とする請求項1に記載のバイオフィードバックシステム。
【請求項10】
長尺部材がゴルフクラブであるであることを特徴とする請求項4に記載のバイオフィードバックシステム
【請求項11】
請求項1に記載のバイオフィードバックシステムを用いてなる長尺部材。
【請求項12】
請求項4に記載のバイオフィードバックシステムを用いてなる長尺部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−513102(P2008−513102A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532303(P2007−532303)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031490
【国際公開番号】WO2006/041449
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(505042664)エール大学 (3)