説明

バイオマスを前処理するためのシステム及び方法

1つの実施形態によると、バイオマスを加熱処理するための方法は、バイオマスが前処理反応器内で前処理反応工程を経ることを可能とすることを含む。前処理反応工程は可溶性成分と共に前処理されたバイオマスを生じさせる。第1温度を有する第1液体は前処理反応器内に移動されて、前処理されたバイオマスは第1温度を第2温度まで上昇させる。少なくとも一部の可能性成分は第1液体中に捕捉されて、第1液体中の少なくとも一部の可溶性成分及び第1液体は前処理反応器から除去される。第3温度を有する第2液体は前処理反応器内に移動されて、前処理されたバイオマスは第3温度を第4温度まで上昇させて、第4温度は第2温度よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概してバイオマスの加工、より詳細にはバイオマスを前処理するためのシステム及び方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
35U.S.C.§119(e)に従って、本出願は、2007年11月2日に出願されて「バイオマス前処理システム(BIOMASS PRETREATMENT SYSTEM)」と題される米国仮特許出願第60/985,059号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
バイオマスを処理するための様々な技術が存在している。しばしばそのようなバイオマスの「処理」の前に、バイオマスは処理の間のバイオマスの生物消化(biodigestibility)を促進するために「前処理」される。バイオマスの前処理工程は、液体存在下において高温及び高圧にて反応器内で行うことができる。酸、アルカリ及び酸化剤などの所定の物質は、この工程を促進させるためによく使用される。前処理工程の例は、塩基触媒(アンモニア、アルカリ性過酢酸、アルカリ性過酸化物、アルカリ性溶媒、石灰、酸素加圧石灰、水酸化ナトリウム)、非触媒(自動加水分解、温水、温水−中性pH、蒸気)、酸触媒(硫酸、塩酸、過酢酸、リン酸、二酸化硫黄を用いた濃酸又は希酸)、溶剤ベース(オルガノソルブ、その他の溶剤)、及び化学ベース(過酸化物、湿式酸化)を含むが、これらに限定されない。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態によると、バイオマスを加熱処理するための方法は、バイオマスが前処理反応器内で前処理反応工程を経ることを可能とすることを含む。前処理反応工程は可溶性成分と共に前処理されたバイオマスを生じさせる。第1温度を有する第1液体は前処理反応器内に移動されて、前処理されたバイオマスは第1温度を第2温度まで上昇させる。少なくとも一部の可能性成分は第1液体中に捕捉されて、第1液体中の少なくとも一部の可溶性成分及び第1液体は前処理反応器から除去される。第3温度を有する第2液体は前処理反応器内に移動されて、前処理されたバイオマスは第3温度を第4温度まで上昇させて、第4温度は第2温度よりも低い。
【0005】
本発明のある実施形態は多数の技術的優位性を提供し得る。例えば、1つの実施形態の技術的優位性は、効率的に熱を回収している間に反応器内でバイオマスを徐々に冷却及び加熱する能力を含み得る。その他の実施形態のその他の技術的優位性は、反応器内で前処理が行われている間に生成された可溶性種の抽出及び除去を同時に行うことを可能とする能力を含み得る。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、「置換抽出(displacement extraction)」として知られている技術を使用する能力を含み得るため、熱及び可溶性種を回収できる。そしてバイオマス中に存在する液体は、混合することなく液体を流入させることで移動されるため、より効率的な抽出及び熱の回収を可能とする。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、バイオマス粒子の間質腔が常時液体で満たされるよう維持するために、液体の水圧ヘッドを利用する能力を含み得る。そのため、液体が単に排出可能なときよりもより速い浸透速度を可能として、空気が排出される。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、前処理されたバイオマスから効率的に熱及び可溶性種を回収するために、効率的な物質移動技術を使用する能力を含み得る。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、抽出のためのねじプレス又はローラーミルなどの高価な脱水機の使用を避ける能力を含み得る。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、高価な熱交換器の使用を避ける能力を含み得る。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、ポンプ及び弁の開閉を使用して操作可能な簡単な熱及び可溶性種の回収システムを提供する能力を含み得る。さらに、その他の実施形態のその他の技術的優位性は、多くの異なる前処理技術に柔軟に適用し得るシステムを提供する能力を含み得る。
【0006】
特別な優位性は上記に列挙されているが、様々な実施形態は全ての、又はいくつかの列挙された優位性を含み、又は列挙された優位性を全く含まなくてもよい。さらに、その他の技術的優位性は、以下の図面及び説明を検討した後に、当業者の一人に容易に明確となるであろう。
【0007】
本開示の実施形態のより完全な理解は、添付の図面と共に詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A−1H】バイオマスが加熱サイクルを経ることが可能であるバイオマス前処理システムの1つの実施形態を示している。
【図2A−2H】バイオマスが冷却サイクルを経ることが可能である図1A−1Hのバイオマス前処理システムを示している。
【図3】図1A−1Hのバイオマス前処理システムのそれぞれのタンクに対するパージ処理の1つの実施形態を示している。
【図4】複数の前処理反応器が提供されるバイオマス前処理システムの他の実施形態を示す図である。
【図5】複数の前処理反応器が円形配置で提供されるバイオマス前処理システムの他の実施形態を示す図である。
【図6】図4又は5の実施形態を使用した前処理工程を実施する1つの実施形態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の実施形態の実施の例が以下に示されているが、本発明は現在知られているか又は知られていない、いくつもの技術を用いて実施され得ることを最初に理解されなければならない。本発明は以下に示された実施例、図面及び技術を全く制限するものではない。また、図面は必ずしも尺度を表していない。
【0010】
実際には、最適な熱回収は熱交換器内で2つの液体の間で起こる。乱流は液体中で容易に発生するため、熱伝導は比較的効率的である。気体を扱うとき、熱交換器を使用した熱回収もまた実行可能であるが、フィンなどの熱伝達補助器具が必要であろう。その一方で、固体から熱を交換することは、ある程度の流動性を有する粉末などの特別な場合、及び乱流を形成するための十分な混合を可能とする一定の条件を除いて難しい。しかしながら、いくつかの固体は適した少量の液体と共に容易にスラリーとなり、それらの流動性を増加させ得るため、熱交換器内で起こる熱伝導を可能とする。しかしながら、繊維状のバイオマスなどのその他の固体は、スラリー化のために非常に多量の液体を必要とし(固体の25倍量以上)、その体積により法外な費用がかかり不便である。そのような固体と共に熱伝導を達成するための最良の方法は、固体と熱伝導流体の直接的で緊密な接触を可能とすることである。例えば、ガス化技術において、流動床及び同伴ガス化装置は効率的な熱伝導を可能として、流体(すなわち空気)と繊維状のバイオマスとの直接接触を可能とする。
【0011】
バイオマスの前処理技術において、温液(例えば水)が使用され得るところでは、この液体は好ましい熱伝導流体である。いくつかの熱伝導は、前処理が行われた後に反応器内の液体を除去すること、及び次の前処理サイクルにおいてこの同一の液体を再利用することによって試みることができる。しかしながら、バイオマス及び同伴水中に存在する熱は効率的に除去することができない。さらに、前処理中に放出される可溶性種は効率的に除去することができない。従って、ある実施形態の教示は、液体の温度又は可溶性種の濃度を下げることなく、ほとんど軸方向混合を起こさずに、バイオマス床中に存在する液体の回収を可能とする置換抽出の使用を認める。さらに、ある実施形態の教示は、様々な段階の使用を通して、熱及び可溶性種の両方の回収をほぼ完了可能であることを認める。
【0012】
置換抽出は、異なる液体がほとんど混合されること無くお互いに置き換わる工程である。置換抽出工程は、例えば、米国特許第5,772,775号に記載されているように、サトウキビから糖を抽出するため、メイチャージ効果(Meichage effect)を使用可能である。メイチャージ効果を使用して、米国特許第5,772,775号には、ドラック輸送システムの入口から出口への粉末サトウキビ床の輸送が記載されている。1つの特定の段階からの液体は、床を浸すために上方へ送り出され、いくらかの空気を置換する(すなわちメイチャージ効果)。その後、次の段階からの液体は、床に存在する液体を置換するために使用される。この工程は比較的効率が良く、糖抽出のための従来の拡散器において必要となる17から19の段階と比較して、3段階だけでサトウキビからの良好な糖の抽出を達成することを示している。
【0013】
生物消化を促進するためのバイオマスの前処理は、液体(例えば水)存在下において、高温及び高圧で反応器内においてよく行われており、その液体は酸、アルカリ、酸化剤などの所定の物質を含み得る。効率的な熱回収、及び多くの場合、前処理の間に生成される可溶性種の抽出は望ましい。従って、ある実施形態の教示は、熱及びバイオマスの前処理からの可溶性種を回収するために、空気排除(すなわちメイチャージ効果)によって補助された置換抽出の使用を認める。
【0014】
限定されない実施例として、それぞれ1つの段階を表す一連のタンクは、前処理反応器の内部でバイオマス床を徐々に加熱又は徐々に冷却するために使用し得る。それぞれのタンク/段階に存在する液体が前処理反応器に運ばれるたびに、前処理反応器内に存在する液体は排出可能であり、次のタンク/段階に運ばれる。置換液体は、理論的には軸方向混合が起こらないクロマトグラフィーカラムにおいて起こる現象と類似する前進した分野として、床を通過して流れ得る。このようにして、タンクからの液体はいつでもバイオマス床内に存在する液体を置換することができ、排出される液体の温度及び可溶性種の濃度を維持することができる。ある特定の実施形態において、未使用のバイオマスが天然の可溶性物質(例えば糖、タンパク質)を含む場合、加熱サイクルの前にこれらの天然可溶分を抽出することが望ましい。農作物から天然可溶分を抽出するための従来の方法(製粉、拡散)に付け加えて、熱及び前処理の間に生成される可溶性種の回収のために提案された実施形態と同様の方法で配置される、分離した一式のタンクも使用可能である。
【0015】
ある特定の実施形態において、タンク/段階の数は、適切で費用効果の高い熱及び可溶性種の回収を達成するために必要な任意の数であり得る。ある特定の実施形態において、温度の相違による軸方向混合の原因となる望ましくない液体の浮力を避けるために、濃い液体が反応器の底に位置するよう液体を移動させることは有益であろう。すなわち、タンク内の液体が反応器内の液体よりも濃い場合、反応器の底に誘導可能である。逆に、タンク内の液体が反応器内の液体よりも薄い場合、反応器の上部に誘導可能である。
【0016】
図1Aから1Hはバイオマス前処理システム10の1つの実施形態を示している。バイオマス前処理システム10は一般的に、バイオマスと異なる温度の水などの液体を保持するようにそれぞれ構成された多数のタンク14を含むよう構成された前処理反応器12を含む。以下に詳細が記載されているように、タンク14はポンプを通して前処理反応器12に連結されており、ポンプはバイオマスの温度が比較的良い効率で上昇及び下降されるように、液体を複数のそれぞれのタンク14から前処理反応器12に選択的に送り出すように操作可能である。
【0017】
図1Aから1Hの各々は、前処理反応器12内に含まれるバイオマスに施行され得るバイオマスの前処理工程を示している。図1Aでは、バイオマスは前処理反応器12に搭載され、それぞれのタンク14内の液体は異なる温度に上昇され得る。図1Aから1Hは一般的に、バイオマスの温度が高温まで徐々に上昇され得る加熱サイクルを示している。特定の温度、及びタンク及び反応器の数が示されているが、その他の実施形態において、異なる温度及び異なる数のタンク及び/又は反応器が使用されてもよい。
【0018】
図1Bでは、タンク14aからの液体は反応器に移動されることで、バイオマス床を浸して空気を除去することができる。その工程はメイチャージ効果として知られている。タンク14aの液体は40℃に保たれる。反応器内のバイオマスはより冷たいため、これは温度が約30℃まで下降する原因となり得る。
【0019】
図1Cでは、30℃の同伴液体は、その後、60℃の温度であり得るタンク14b内の液体によって置換される。30℃の排出される液体はタンク14aに向けられて、反応器内のバイオマス床及び液体は約50℃の中間平衡温度に到達する。
【0020】
図1Dでは、反応器内の50℃の液体は、その後、80℃の温度であり得るタンク14c内の液体によって置換される。50℃の液体はその温度を維持し、タンク14bに送られる。その後、バイオマス床は約70℃の中間平衡温度に到達する。
【0021】
図1Eでは、反応器内の70℃の液体は、その後、100℃の温度であり得るタンク14dの液体によって置換される。70℃の液体はその温度を維持し、タンク14cに送られる。バイオマス床は約90℃の中間平衡温度に到達する。
【0022】
図1Fでは、反応器内の90℃の液体は、その後、120℃の温度であり得るタンク14eの液体によって置換される。90℃の液体はその温度を維持し、タンク14dに送られる。バイオマス床は約110℃の中間平衡温度に到達する。
【0023】
図1Gでは、反応器内の110℃の液体は、その後、140℃の温度であり得るタンク14fの液体によって置換される。110℃の液体はその温度を維持し、タンク14eに送られる。バイオマス床は約130℃の中間平衡温度に到達する。
【0024】
図1Hでは、前処理物質は反応器を所望の温度とするため、前処理反応器12に添加可能である。前処理物質は所望の温度への最終加熱の前又は後に添加可能であるが、液体中で物質を希釈することから放出され得るあらゆる熱を使用するために、物質を前に加えることが望ましい。
【0025】
1つの実施形態では、上述された前処理工程は媒体として水を使用し、約6時間にわたって起こり得る。この特定の実施形態では、水は160℃に維持されるため、全システムがこれらの比較的高温で前処理が可能なように加圧され得る。1つの実施形態では、温度を所望の水準まで上昇させるために、蒸気が反応器内に注入され得る。
【0026】
別の実施形態では、全ての段階に対する置換抽出サイクルは、加熱の間及び冷却の間、完了するまで約30分を要する可能性がある。これは加熱前のバイオマスの積込(load)、及び冷却後のバイオマスの排出(unload)を含む。バイオマスを積込んだ後、酸、アルカリ、酸化剤などの前処理物質(もしあれば)を、熱回収の前又は後のどちらかに加えることができる。いくつかの場合では、例えば、希釈の発熱を有する物質(例えば生石灰、硫酸)が使用されるときなどは、熱回収の後にそれが加えられると都合がよい。これは蒸気又はその他の加熱媒体から必要とされる加熱負荷を減少させることができる。前処理反応の間の反応器内での混合は、必要に応じて実施可能である(例えば、回転(tumbling)、バイオマス床を通過する液体の再循環、オージェリング(augering))。タンク/段階の数は図1A−1Hに示される実施形態では6であるが、より多くの又はより少ないタンク/段階が使用されてもよい。
【0027】
図2Aから2Hは冷却サイクルの1つの実施形態を表すバイオマス前処理システム10を示している。図1A−1Hの加熱サイクルに従って加熱される前処理反応器12内のバイオマスの温度は徐々に低下され得る。
【0028】
図2Aでは、前処理反応器12内のバイオマスは約160℃の温度まで上昇する。前処理反応器12が所望の温度となり、適切な前処理物質が添加された後に、反応は所望の時間にわたって起こる。前処理の間、反応器中の温度は前処理反応の熱的性質に依存して、蒸気又はその他の適切な加熱材料を提供することによって又は冷却水によって制御可能である。所望の反応時間が経過した後、前処理は終了し、冷却サイクルが開始する。
【0029】
図2Bでは、反応器内の160℃の液体は、その後、110℃の温度であり得るタンク14e内の液体によって置換される。160℃の液体はその温度を維持し、タンク14fに送られる。その後、バイオマス床は約120℃の中間平衡温度に到達する。
【0030】
図2Cでは、前処理反応器12内の120℃の液体は、その後、90℃の温度のタンク14d内の液体によって置換される。120℃の液体はその温度を維持し、タンク14eに送られる。その後、バイオマス床は約100℃の中間平衡温度に到達する。1つの実施形態では、タンク14f内の約160℃の液体は、前処理工程から抽出された比較的高濃度の可溶性種を有し得る。これらの可溶性生成物の蓄積を避けるために、一定量のこの液体はパージされて適した下流の工程機構に送られ得る。パージされた液体は未使用の液体に置換されることができ、それは、周囲温度、又は生物変換プロセスにおいてその他のユニットとの熱統合によって発生した高温の未使用液体であり得る。タンク14fは図2Cのこの実施形態においてパージされるように示されているが、その他の実施形態では、図2Bを参照して、液体をタンク14fに移動させることに代えて、パージが前処理反応器12から直接行われてもよい。例えば、図2Aにおいて反応器12は流体を排出し(工程後)、図2B−2Hの残りの段階が開始可能である。
【0031】
図2Dでは、前処理反応器12内の100℃の液体は、その後、約70℃の温度のタンク14c内の液体によって置換される。100℃の液体はその温度を維持し、タンク14dに送られる。その後、バイオマス床は約80℃の中間平衡温度を有し得る。
【0032】
図2Eでは、前処理反応器12内の80℃の液体は、その後、約50℃の温度でタンク14b内の液体によって置換される。80℃の液体はその温度を維持し、タンク14cに送られる。その後、バイオマス床は約60℃の中間平衡温度に到達する。
【0033】
図2Fでは、前処理反応器12内の60℃の液体は、その後、約30℃の温度のタンク14a内の液体によって置換される。60℃の液体はその温度を維持し、タンク14bに送られる。その後、バイオマス床は約40℃の中間平衡温度に到達する。
【0034】
図2Gでは、前処理反応器12内の40℃の液体は、その後、約30℃で未使用水入口16を通過して導入される未使用水によって置換される。40℃の液体はその温度を維持し、タンク14aに送られる。その後、バイオマス床は約30℃の中間平衡温度に到達する。この液体はタンク14aに送られて、次の加熱サイクルのために使用可能である。1つの実施形態では、前処理反応器12内のバイオマスは未使用の液体によって飽和され得るため、前処理されたバイオマスを下流の生物変換へスラリーとしてシステムから排出可能となる。他の実施形態において、前処理されたバイオマスは可溶性種がなく、下流の生物変換は必要ないかもしれない。そのような実施形態では、例えば、図2B−2Fに示されるようなそれぞれの置換は、隣接する先の置換から取り残された可溶性種を取り出すことができる。さらに、そのような実施形態では、それぞれ個別の置換においてチャンバーを出る流体は、前の置換においてチャンバーを出る流体よりもより少ない量の可溶性種を有し得る。
【0035】
図2Hでは、バイオマス及びあらゆる同伴液体は前処理反応器12から排出可能である。
【0036】
図3はタンク14fからの液体を置換するための工程の別の実施形態が示されている。この特定のパージング工程は、図2Cに示されるパージング工程に代えて使用可能である。濃縮された液体をパージした後、いくらかの液体はそれぞれのタンク14aからタンク14fに連続して移動可能である。最後に、未使用の液体はタンク14aにおいてシステムに入る。図2に示された各種実施形態では、タンク14f内の液体のパージ及び置換は、温度を160℃から140℃まで減少させることが想定される。この点において、タンク14内の全ての温度は図1に示される元の温度にリセットされて、新たな加熱サイクルを開始できる状態となる。
【0037】
図4は、複数の前処理反応器12がタンク14によって使用可能であるバイオマス前処理システム20の別の実施形態を示している。この特定の実施形態では、7つの前処理反応器12が示されているが、任意の数の前処理反応器12が使用可能であることを理解されなければならない。各種実施形態では、2つのポンプ22は熱及び可溶性種の回収を行うために使用される。2つのポンプ22からの液体の動きは、それぞれのタンク14及び前処理反応器12の入口及び出口に構成された弁24によって提供可能である。
【0038】
図5はバイオマス前処理システム30の他の実施形態を示しており、タンク14及び前処理反応器12が利便性と小型化のために円形配置で構成されていることを除いて、図4の実施形態と類似している。
【0039】
図6は、図4及び/又は5の7つの前処理反応器12それぞれを使用可能とするために、2つのポンプ22がどのように使用され得るかを示すタイムチャートである。1つの実施形態では、それぞれ、前処理に6時間を費やし、加熱及び冷却サイクルに30分を費やして、その後、バイオマス前処理システム20及び30に対する24時間の操作計画が達成され得る。この計画は操作に対する比較的良い設計として達成され得る例である。常に1つの前処理反応器12が積込み、加熱、冷却及び排出されている一方で、その他の前処理反応器12が前処理に従事するように、いつでも比較的高負荷サイクルで装置が稼働されるように操作が準備されることが分かる。
【0040】
本システムを使用する可能性があるバイオマス前処理方法は、塩基触媒(アンモニア、アルカリ性過酢酸、アルカリ性過酸化物、アルカリ性溶媒、石灰、酸素加圧石灰、水酸化ナトリウム)、非触媒(自動加水分解、温水、温水−中性pH、蒸気)、酸触媒(硫酸、塩酸、過酢酸、リン酸、二酸化硫黄を用いた濃酸又は希酸)、溶剤ベース(オルガノソルブ、その他の溶剤)、化学ベース(過酸化物、湿式酸化)であってもよい(これらに制限されない)。この工程は、前処理が起こる1以上の前処理反応器12内で液体を置換するために抽出置換を使用する。2つの機能が実現可能である:(1)前処理の間に生成される水溶性成分は抽出されて、(2)熱は回収される。前処理反応器12は一連のタンク14を伴い、各々は1つの抽出又は回収の段階を表しており、それらは前処理反応器12を通過して送られる液体により連続して充填され、及び空になるため、いつでもそこに存在する液体を置換することができる。これは反応器内でバイオマスを徐々にそしてより効率的に冷却及び加熱することを可能とする。
【0041】
本発明はいくつかの実施形態を表してきたが、無数の変更、変化、代替、変形、及び修正は当業者によって提案可能であり、本発明は、添付の特許請求の範囲内となるそのような変更、変化、代替、変形、及び修正を含むことが意図される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを加熱処理するための方法であって、
第1温度を有する第1液体をバイオマスを含む前処理反応器内に移動させる段階であって、第1液体はバイオマスの温度を第2温度まで上昇させる段階と、
第1液体を前処理反応器から除去する段階と、
第3温度を有する第2液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、第2液体はバイオマスの温度を第4温度まで上昇させて、第4温度は第2温度よりも高い段階と、
前処理反応器内のバイオマスは少なくとも第4温度の温度で前処理反応工程を経ることが可能な段階であって、前処理反応工程は前処理されたバイオマスを生じさせる段階と、
前処理反応の後に、第3液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、前処理されたバイオマスは第3液体の温度を第5温度に上昇させる段階とを含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
第1液体は第3液体であって、
バイオマスを含む前処理反応器から除去された第1液体の温度は第1温度よりも低い方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、
第3液体は第2バイオマスを有する第2前処理反応器から除去されて、
第3液体は第2バイオマスの温度を第2温度まで上昇させる方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
第2液体を前処理反応器から除去する段階と、
第4液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、第4液体はバイオマスの温度を第6温度まで上昇させて、第6温度は第4温度よりも高く、且つバイオマスは少なくとも第6温度の温度で反応を経る段階とをさらに含む方法。
【請求項5】
請求項4の方法であって、
前処理反応工程の後に、第5液体を前処理反応器内に移動させる段階をさらに含み、
前処理されたバイオマスは第2液体の温度を第7温度まで上昇させ、第7温度は第3液体の第5温度よりも高い方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、
第2液体が前処理反応器内に移動されて第1液体を置換する場合、前処理反応器から第1液体を除去する段階は置換抽出工程において実行される方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、
前処理反応工程の間に前処理反応器内で可溶性成分を生じさせる段階と、
第1液体が前処理されたバイオマスを有する前処理反応器内に戻される場合、第1液体中の少なくともいくらかの可溶性成分を捕捉する段階とをさらに含む方法。
【請求項8】
請求項7の方法であって、
第1液体中の少なくともいくらかの可溶性成分及び前処理反応器からの第1液体を除去する段階をさらに含む方法。
【請求項9】
バイオマスを加熱処理するための方法であって、
前処理反応器内のバイオマスが前処理反応工程を経ることが可能である段階であって、前処理反応工程は可溶性成分と共に前処理されたバイオマスを生じさせる段階と、
第1温度を有する第1液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、前処理されたバイオマスは第1温度を第2温度まで上昇させる段階と、
第1液体中の少なくとも一部の可能性成分を捕捉する段階と、
第1液体中の少なくとも一部の可溶性成分及び前処理反応器からの第1液体を除去する段階と、
第3温度を有する第2液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、前処理されたバイオマスは第3温度を第4温度まで上昇させて、第4温度は第2温度よりも低い段階とを含む方法。
【請求項10】
請求項9の方法であって、第1液体中の少なくとも一部の可溶性成分及び前処理反応器からの第1液体を除去する段階の後の第1液体の温度は第2温度である方法。
【請求項11】
請求項9の方法であって、
第2液体中の少なくとも他の一部の可溶性成分を捕捉する段階と、
第2液体中の少なくとも他の一部の可溶性成分及び前処理反応器からの第2液体を除去する段階とをさらに含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、
除去された第1液体は除去された第2液体よりも高濃度の可溶性成分を有する方法。
【請求項13】
請求項9の方法であって、第2液体が前処理反応器内に移動されて第1液体を置換する場合、前処理反応器から第1液体を除去する段階は置換抽出工程において実行される方法。
【請求項14】
請求項9の方法であって、
前処理反応器から前処理されたバイオマスを排出する段階と、
新たなバイオマスを前処理反応器内に積込む段階と、
第4温度を有する第2液体を前処理反応器内に移動させる段階であって、第2液体はバイオマスの温度を第5温度まで上昇させる段階と、
第2温度を有する第1液体を新たなバイオマスを含む前処理反応器内に移動させる段階であって、第1液体は新たなバイオマスの温度を第6温度まで上昇させ、第6温度は第5温度よりも高い段階とをさらに含む方法。
【請求項15】
請求項9の方法であって、
第4温度を有する第2液体を第2バイオマスを有する第2前処理反応器内に移動させる段階であって、第2液体は第2バイオマスの温度を第5温度まで上昇させる段階と、
第2温度を有する第1液体を第2バイオマスを有する第2前処理反応器内に移動させる段階であって、第1液体は第2バイオマスの温度を第6温度まで上昇させて、第6温度は第5温度よりも高い段階とをさらに含む方法。
【請求項16】
請求項9の方法であって、
第1液体又は前処理反応器中で除去された少なくとも一部の可溶性成分の1つから可溶性成分をパージする段階をさらに含む方法。
【請求項17】
バイオマスを加熱処理する装置であって、
バイオマスを含む前処理反応器と、
第1温度を有する第1液体を含む第1タンクと、
第3温度を有する第2液体を含む第2タンクと、
第3液体を含む第3タンクとを備え、
前処理反応器は前処理反応工程を経るように操作可能であるため、前処理されたバイオマスを生じさせることができ、
第1タンクは前処理反応器と流体連結されており、第1液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、バイオマスの温度を第2温度まで上昇させることができ、
第2タンクは前処理反応器と流体連結されており、第2液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、バイオマスの温度を第4温度まで上昇させることができ、第4温度は第2温度よりも高く、
第3タンクは前処理反応器と流体連結されており、第3液体は前処理反応工程の後に前処理反応器内に移動されるように操作可能であり、前処理されたバイオマスは第3液体の温度を第5温度まで上昇可能である装置。
【請求項18】
請求項17の装置であって、
第1液体は第3液体であり、
第1タンクは第3タンクである装置。
【請求項19】
請求項17の装置であって、
第2バイオマスを有する第2前処理反応器をさらに備え、第3タンクは第2前処理反応器と流体連結されており、第3液体は第2バイオマスの温度を第2温度まで上昇させる装置。
【請求項20】
請求項17の装置であって、
第4液体を含む第4タンクをさらに備え、第4タンクは前処理反応器に流体連結されており、第4液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、バイオマスの温度を第6温度まで上昇可能であり、第6温度は第4温度よりも高い装置。
【請求項21】
請求項20の装置であって、
第5液体を含む第5タンクをさらに備え、第5タンクは前処理反応器に流体連結されており、第5液体は前処理反応工程の後に前処理反応器内に移動されるように操作可能であり、前処理されたバイオマスは第5液体の温度を第7温度まで上昇可能であり、第7温度は第3液体の第5温度よりも高い装置。
【請求項22】
請求項17の装置であって、第2液体が前処理反応器内に移動されて第1液体を置換する場合、第1液体は置換抽出工程において前処理反応器から除去されるように操作可能である装置。
【請求項23】
請求項17の装置であって、
可溶性成分は前処理反応工程の間に前処理反応器内で生じ、
第1液体は第1液体中の少なくとも一部の可溶性成分を捕捉するよう操作可能である装置。
【請求項24】
バイオマスを加熱処理するための装置であって、
バイオマスを含む前処理反応器と、
前処理反応器と流体連結される複数のタンクと、
前処理反応器と流体連結される複数の第2タンクとを備え、
前処理反応器は前処理反応工程を経るように操作可能であるため、前処理されたバイオマスを生じさせることができ、
各々の複数のタンクは液体を含み、各々の複数のタンク内の液体は異なる温度を有し、各々の複数のタンク内の液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、バイオマスの温度を上昇させることができ、
各々の複数の第2タンクは第2液体を含み、各々の複数の第2タンク内の第2液体は前処理反応工程の後に前処理反応器内に移動されるように操作可能であり、前処理されたバイオマスは各々の複数の第2液体の温度を上昇させる装置。
【請求項25】
請求項24の装置であって、
少なくともいくつかの複数の第2タンクは少なくともいくつかの複数のタンクである装置。
【請求項26】
請求項24の装置であって、
複数の第2タンクは複数のタンクである装置。
【請求項27】
請求項24の装置であって、
前処理反応器は複数の前処理反応器である装置。
【請求項28】
請求項27の装置であって、
複数の第2タンクは複数のタンクであり、及び
前処理反応器は複数のタンクの周囲に配置されている装置。
【請求項29】
バイオマスを加熱処理するための装置であって、
バイオマスを含む前処理反応器と、
第1温度を有する第1液体を含む第1タンクと、
第3温度を有する第2液体を含む第2タンクとを備え、
前処理反応器は前処理反応工程を経るように操作可能であるため、可溶性成分と共に前処理されたバイオマスを生じさせることができ、
第1タンクは前処理反応器と流体連結されており、第1液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、第1液体中において少なくとも一部の可溶性成分を捕捉することができ、前処理されたバイオマスは第1温度を第2温度まで上昇させることができ、少なくとも一部の可溶性成分は第1液体中において前処理反応器から除去されるように操作可能であり、
第2タンクは前処理反応器と流体連結されており、第2液体は前処理反応器内に移動されるように操作可能であり、前処理されたバイオマスは第3温度を第4温度まで上昇させ、第4温度は第2温度よりも低い装置。
【請求項30】
請求項29の装置であって、
第2液体は第2液体中の少なくとも他の一部の可溶性成分を捕捉するように操作可能であり、少なくとも他の一部の可溶性成分は第2液体中において前処理反応器から除去されるように操作可能である装置。
【請求項31】
請求項30の装置であって、除去された第1液体は除去された第2液体よりも高濃度の可溶性成分を有する装置。
【請求項32】
請求項29の装置であって、第2液体が前処理反応器内に移動されて第1液体を置換するとき、第1液体は置換抽出工程において前処理反応器から除去されるように操作可能である装置。
【請求項33】
請求項29の装置であって、
前処理されたバイオマスは前処理反応器から排出されるように操作可能であり、新たなバイオマスが前処理反応器内に積込まれるように操作可能であり、
第2液体は第2前処理反応器内に移動されるように操作可能であるため、新たなバイオマスの温度を第5温度まで上昇させることができ、
第1液体は第2前処理反応器内に移動させるように操作可能であるため、新たなバイオマスの温度を第6温度まで上昇させることができ、第6温度は第5温度よりも高い装置。
【請求項34】
請求項29の装置であって、
第2バイオマスを含む第2前処理反応器をさらに備え、
第2タンクは第2前処理反応器と流体連結されており、第2液体は第2前処理反応器に移動されるように操作可能であるため、第2バイオマスの温度は第5温度まで上昇可能であり、
第1タンクは第2前処理反応器に流体連結されており、第1液体は第2前処理反応器に移動されるように操作可能であるため、第2バイオマスの温度を第6温度まで上昇させることができ、第6温度は第5温度よりも高い装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−502753(P2011−502753A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532283(P2010−532283)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/082011
【国際公開番号】WO2009/059149
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510122728)ザ テキサス エー アンド エム ユニバーシティ システム (1)
【Fターム(参考)】