説明

バイオマス処理装置

【課題】処理が容易でバイオガスを効率的に収集できると共に、設置にかかるコストを削減できる。
【解決手段】バイオマス31とバイオマスの発酵残渣32とを混合する混合槽2と、バイオマス31とバイオマスの発酵残渣32との混合物33が投入され混合物33を乾式メタン発酵させる処理槽3と、処理槽3内を加熱する処理槽用加熱装置4と、乾式メタン発酵によって混合物33から生じたバイオガス35を処理槽3から収集するバイオガス収集手段5と、処理槽3へ通気し混合物33の発酵残渣34を堆肥化させる堆肥化手段6と、堆肥化した混合物33の発酵残渣34を処理槽3から排出する排出手段7と、を備える。処理槽3は、地下に複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物など有機性資源であるバイオマスからバイオガスを得る方法として、ランドフィル方式や、乾式メタン発酵を利用する方法が行われている。
ランドフィル方式では、ゴミの埋立処分場から発生するバイオガスを収集するもので、長期間にわたってバイオガスを得ることができる。
一方、乾式メタン発酵による方法では、バイオマスに添加する水分量が少ないため、発酵残渣に含まれる水分量が少なく、発酵残渣の処理が容易である。そして、この発酵残渣は、堆肥化されたり、乾燥後燃料化、炭化されたりしている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−50808号公報
【特許文献2】特開2006−87992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のランドフィル方式では、バイオマスを埋める広大な土地が必要であると共に、埋めたバイオマスに浸入した雨水の処理や、バイオマスの飛散防止対策など維持管理に労力や費用がかかるという問題がある。
また、従来の乾式メタン発酵による方法では、装置が複雑でコストがかかっている。また、メタン発酵を行うには、バイオマスを最適な温度に保つ必要があり、冬期や寒冷地では温度管理が困難であった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、処理が容易でバイオガスを効率的に収集できると共に、設置にかかるコストを削減できるバイオマス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るバイオマス処理装置は、バイオマスとバイオマスの発酵残渣とを混合する混合槽と、前記バイオマスと前記バイオマスの発酵残渣との混合物が投入され、該混合物を乾式メタン発酵させる処理槽と、前記処理槽内を加熱する処理槽用加熱装置と、乾式メタン発酵によって前記混合物から生じたバイオガスを前記処理槽から収集するバイオガス収集手段と、前記処理槽へ通気し、前記混合物がメタン発酵した後の発酵残渣を堆肥化させる堆肥化手段と、堆肥化した前記発酵残渣を前記処理槽から排出する排出手段とを備えるバイオマス処理装置であって、前記処理槽は、地下に複数設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、処理槽が、地下に設けられていることにより、地中の恒温性、断熱性を利用した、外気の温度変化の影響を受けにくい構造とすることができる。そして、処理槽内を加熱する処理槽用加熱装置が設けられていることにより、特に冬期において処理槽内の温度管理を容易に行うことができ、処理槽内をメタン発酵に最適な温度に保持することができる。
また、処理槽では、バイオマスとバイオマスの発酵残渣の混合物の乾式メタン発酵を行うと共に、この混合物がメタン発酵した後の発酵残渣の堆肥化を行うので、発酵槽と堆肥化専用の槽とを備える従来の乾式メタン発酵の装置と比べて、設置スペースを少なくすることができる。
また、堆肥化した発酵残渣を処理槽から排出する排出手段を備えていることにより、処理槽を繰り返し使用することができる。さらに、処理槽が複数設けられていることにより、処理槽を連続的に使用することができ、バイオガスを連続的に収集することができる。
【0008】
また、本発明に係るバイオマス処理装置では、前記処理槽用加熱装置は、前記処理槽の底部に敷設されたパイプと、温水を生成する温水生成装置と、を備え、前記パイプに温水を循環させることで前記処理槽を加熱可能に構成されていることが好ましい。
本発明では、処理槽用加熱装置は、処理槽の底部に敷設されたパイプと、温水を生成する温水生成装置と、を備え、パイプに温水を循環させることで処理槽を加熱可能に構成されていることにより、処理槽の底部に床暖房システムが形成されて、処理槽内のバイオマスおよびバイオマスの発生残渣を効率的に加熱することができる。
【0009】
また、本発明に係るバイオマス処理装置では、前記混合槽には、前記バイオマスおよび前記バイオマスの発酵残渣を加熱する混合槽用加熱装置が設けられていることが好ましい。
本発明では、混合槽には、バイオマスおよびバイオマスの発酵残渣を加熱する加熱装置が設けられていることにより、混合時においてもバイオマスおよびバイオマスの発酵残渣を乾式メタン発酵に適した温度に保持または近づけることができる。そして、バイオマスおよびバイオマスの発酵残渣の混合物を処理槽へ移したときに、すぐにメタン発酵させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、処理層内の温度管理を容易にできることにより、バイオマスの処理を容易に行うことができ、効率的にバイオガス収集することができる。そして、バイオマスのメタン発酵と堆肥化とを同じ処理槽で行い、この処理槽を繰り返し使用できることにより、処理槽の設置スペースが少なく設置コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態によるバイオガス処理装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態によるバイオマス処理装置について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施の形態によるバイオマス処理装置1は、有機性廃棄物などのバイオマス31と既にメタン発酵したバイオマス31の発酵残渣32とを混合し、この混合物33をメタン発酵させてバイオガス35を収集すると共に、混合物33の発酵残渣34を堆肥化させる装置である。
【0013】
バイオマス処理装置1は、バイオマス31と発酵残渣32とを混合する混合槽2と、混合槽2で混合されたバイオマス31と発酵残渣32の混合物33が投入され混合物33を乾式メタン発酵させる複数の処理槽3と、処理槽3内を加熱する処理槽用加熱装置4と、処理槽3で発生したバイオガス35を収集するバイオガス収集手段5と、処理槽3へ通気し混合物33の発酵残渣34を堆肥化させる堆肥化手段6と、堆肥化した発酵残渣34を処理槽3から排出させる排出手段7とから概略構成される。
ここで、図中において、複数の処理槽3を3A、3B、3Cとして示し、処理槽3Aは処理槽用加熱装置4との関係を示し、処理槽3Bは後述するシート13との関係を示し、処理槽3Cはバイオガス収集手段5および堆肥化手段6との関係を示している。これらの処理槽3A、3B、3Cは同等の構造とし、シート13が設けられていて、処理槽用加熱装置4、バイオガス収集手段5および堆肥化手段6が組み込まれている。
【0014】
混合槽2には、投入されたバイオマス31および発酵残渣32を混合する油圧ショベルなどの混合手段11が設けられている。また、混合槽2には、バイオマス31と発酵残渣32とを混合する際に加熱する図示しない移動式の混合槽用加熱装置が設けられている。
混合槽2には、混合されたバイオマス31と発酵残渣32の混合物33を処理槽3に輸送する輸送手段12が設けられている。
【0015】
処理槽3(3A、3B、3C)は、上部3aが開口した箱状に形成され、混合槽2と近接する地下に複数設けられている。
処理槽3に混合物33が収容された際には、処理槽3の上部3aの開口は、脱着可能で、水分およびガス不透過性のシート13で覆われている(図1の処理槽3B参照)。このシート13は、乾式メタン発酵時の処理槽3内への雨水の浸入や、処理槽3内の収容物の外部への飛散や臭気漏れを防止している。
【0016】
処理槽用加熱装置4は、処理槽3の底部3bに敷設された温水が循環するパイプ14(図1の処理槽3A参照)と、水を加熱するボイラー(温水生成装置)15と、ボイラー15からパイプ14に温水を循環させる温水供給ポンプ16と、を備えている。
ボイラー15の熱源は、後述するガス発電機17の排熱を利用している。また、温水を生成するために、必要に応じてソーラーパネル18を設置してもよい。
このように、使用される温水を、バイオマス処理装置1で使用されるガス発電機17の廃熱やソーラーパネル18を利用して生成することにより、処理槽用加熱装置4の省エネルギー化を図ることができる。
【0017】
バイオガス収集手段5は、処理槽3内でメタン発酵した混合物33から発生したバイオガス35を吸引する吸引管20(図1の処理槽3C参照)と、吸引管20が接続されるガス吸引ポンプ21とを備えている。ガス吸引ポンプ21によって収集されたバイオガス35は、ガスホルダー22に収容される。
ガスホルダー22に収容されたバイオガス35は、脱硫塔23を通過し、バイオガス35に含まれる硫化水素が除去される。そして脱硫塔23を通過したバイオガス35の一部は、ガス発電機17に供給され、バイオマス処理装置1で使用する電力に使用される。
【0018】
堆肥化手段6は、処理槽3内につながる通気管24と、通気管24が接続され通気管24を介して処理槽3内に送風する送風装置25と、から構成される。メタン発酵した混合物33の発酵残渣34は、好気性発酵により堆肥化する。
【0019】
排出手段7は、油圧ショベルなどの重機であって、堆肥化した発酵残渣34を処理槽3の外部に搬出する。排出手段7として油圧ショベルが使用される場合には、この油圧ショベルと混合槽2に設けられた混合手段11として使用される油圧ショベルを兼用してもよい。
【0020】
次に、本実施の形態によるバイオマスの処理方法について説明する。
まず、原料のバイオマス31を混合槽2に投入し、既にメタン発酵したバイオマス31の発酵残渣32と混合する。
混合は、混合手段11によって、混合槽用加熱装置で加熱されながら行われる。
投入されるバイオマス31は、収集が容易で且つ易分解性の生ゴミと紙類の混合物とすることが好ましい。
【0021】
続いて、混合槽2で混合された混合物33を輸送手段12によって処理槽3の上部3aの開口から内部に投入する。
そして、処理槽3の上部3aの開口をシート13で多い、嫌気条件下で乾式メタン発酵させる。メタンガス(バイオガス35)は、有機性のバイオマス31が微生物分解されることにより発生する。
このとき、処理槽用加熱装置4のパイプ14に温水を循環させて、処理槽3内の混合物33の温度をメタン発酵に適した温度に保持する。また、必要に応じて処理槽3内の混合物33を、例えば、混合手段11や排出手段7に使用される油圧ショベルなどで攪拌する。
【0022】
そして、メタン発酵した混合物33から発生したバイオガス35を、ガス吸引ポンプ21の駆動によって吸引管20から吸引し、ガスホルダー22に収集する。ガスホルダー22のバイオガス35を、脱硫塔23に通過させ、バイオガス35の硫化水素を低減させる。
バイオガス35を収集した後に、送風装置25を駆動させて通気管24から処理槽3内に送風し、好気性発酵に転換させることによりメタン発酵後の混合物33の発酵残渣34を堆肥化させる。
その後、処理槽3内の堆肥化した発酵残渣34を排出手段7で排出する。
この堆肥化した発酵残渣34の一部を、新たに処理されるバイオマス31と混合される発酵残渣32として使用することが好ましい。
堆肥化した発酵残渣34が排出された処理槽3には、新たにバイオマス31とバイオマス31の発酵残渣32との混合物33が投入され、乾式メタン発酵と堆肥化が行われる。
【0023】
次に、上述したバイオマス処理装置の効果について図面を用いて説明する。
本実施の形態によるバイオマス処理装置1によれば、処理槽3が地下に設けられて、地下空間の恒温性、断熱性を利用できて、処理槽3内の温度管理を容易にできることにより、処理を容易に行うことができるので、効率的にバイオガス35を収集することができる効果を奏する。
また、バイオガス35を収集すると共に、発酵残渣34を堆肥化させて堆肥という有価物を生産することができる。
また、処理槽3を複数設置して連続使用すると共に、繰り返し使用し、更に、バイオマス31のメタン発酵および堆肥化を同じ処理槽3で行うことにより、従来のランドフィル方式や乾式メタン発酵による方法と比べて、バイオマス処理装置1の設置スペースを縮小することができると共に、バイオマス処理装置1に設置や維持にかかるコストを削減することができる。
また、処理槽3には、温水式の処理槽用加熱装置4が設けられていることにより、寒冷地であってもバイオマス処理装置1を設置できると共に、季節の温度変化にも容易に対応することができる。
【0024】
以上、本発明によるバイオマス処理装置1の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、処理槽3には温水式の処理槽用加熱装置4が設けられているが、温水式以外の処理槽用加熱装置が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 バイオマス処理装置
2 混合槽
3、3A、3B、3C 処理槽
4 処理槽用加熱装置
5 バイオガス収集手段
6 堆肥化手段
7 排出手段
14 パイプ
15 ボイラー(温水生成装置)
31 バイオマス
32 発酵残渣
33 混合物
34 発酵残渣
35 バイオガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスとバイオマスの発酵残渣とを混合する混合槽と、
前記バイオマスと前記バイオマスの発酵残渣との混合物が投入され、該混合物を乾式メタン発酵させる処理槽と、
前記処理槽内を加熱する処理槽用加熱装置と、
乾式メタン発酵によって前記混合物から生じたバイオガスを前記処理槽から収集するバイオガス収集手段と、
前記処理槽へ通気し、前記混合物がメタン発酵した後の発酵残渣を堆肥化させる堆肥化手段と、
堆肥化した前記発酵残渣を前記処理槽から排出する排出手段とを備えるバイオマス処理装置であって、
前記処理槽は、地下に複数設けられていることを特徴とするバイオマス処理装置。
【請求項2】
前記処理槽用加熱装置は、前記処理槽の底部に敷設されたパイプと、温水を生成する温水生成装置と、を備え、
前記パイプに温水を循環させることで前記処理槽を加熱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス処理装置。
【請求項3】
前記混合槽には、前記バイオマスおよび前記バイオマスの発酵残渣を加熱する混合槽用加熱装置が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマス処理装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−20243(P2012−20243A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160594(P2010−160594)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】