説明

バイオマス燃料のガス化装置

【課題】 ガス化炉内での生成灰の固まりを防ぐと共に、種々のバイオマス資源に対して、生成ガスを安定して取出すことが可能なバイオマス燃料のガス化装置を提供する。
【解決手段】 ガス発生炉本体1aと、バイオマス燃料の導入手段と、燃焼部に空気を導入する空気導入手段と、ガス発生炉本体で発生した生成ガスを排出するガス排出パイプ21bとを有する下向通風式のバイオマス燃料のガス化装置において、バイオマス燃料の燃焼に伴って発生し下方に落下する生成灰65を受容する筒状の灰受ボックス71と、この灰受ボックス71の底部から生成灰を導出する水平スクリュー式コンベア131を有する生成灰排出手段と、灰受ボックス部において生成ガスと生成灰とを分離し、分離した生成ガスを、ガス排出パイプ21bに導入する構成を有する灰・ガス分離手段としての円錐屋根状キャップ付ガス採取装置73とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイオマス(生物体資源)を燃料として発電するバイオマス発電装置等に用いられるバイオマス燃料のガス化装置、特に、下向通風式のバイオマス燃料のガス化装置において好適な灰・ガス処理構造を備えるガス化装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは再生可能な資源であることと、バイオマスエネルギーはカーボンニュートラルであること等の特徴を有するので、CO2抑制に係る地球温暖化防止や循環社会の構築に寄与するものとして注目されている。そのため、近年、バイオマスの有効利用に関する研究開発、特にバイオマス発電装置の開発が積極的に進められており、例えば、バイオマスニッポン総合戦略(平成14年12月)などに見られるように、国をあげての取組みがなされている。
【0003】
従来のバイオマスを燃料とした発電の方式としては、(1)バイオマス燃料を直接ボイラーで燃焼させ、例えば、蒸気タービンにより発電する方式、(2)微生物を利用してバイオマス燃料を発酵させてメタンガスを取りだし、例えばガスエンジン、デュアルフュエルディーゼルエンジン、または燃料電池に供給して発電する方式、(3)バイオマス資源を、ガス発生炉においてガス化して可燃ガスを発生し、このガスを、例えばガスエンジンやデュアルフュエルディーセルエンジンに供給して発電する方式等がある。
【0004】
上記(1)のボイラー用燃料として利用する場合、薪やおが屑,もみがらなどをそのまま燃料として利用できるが、効率の観点から、中型(500kW)以上の発電用ボイラーが適当であり、特に、300kW以下の分散型電源に使用されることは殆んどない。また、ボイラーの性格上、熱慣性が大きく起動停止に長時間を要するため、長時間連続運転が望ましく、短時間起動停止が行なわれる分散型電源には不向きである。
【0005】
また、上記(2)のメタンガスを発生させる方式は、メタンガス発生装置等の設備が大掛かりとなって設備費が高く、また、メタンガス発生後の残渣の処理コストも必要となり、全体としてコスト高となる欠点を有する。
【0006】
上記(3)のバイオマス燃料をガス化する方式の場合、おが屑を固形チップ化し、この固形バイオマス燃料をガス化し、このガスを使用して発電を行なうことが考えられる。上記固形化したバイオマス燃料を利用することにより、燃料の取り扱いが容易となる。
【0007】
上記のような事情から、上記(3)、特に、バイオマスのガス化によるガスエンジン発電方式であって、比較的小規模でかつ効率の高いシステムの開発が望まれている。
【0008】
ところで、前記のようなバイオマス発電装置に使用される固形バイオマスのガス化方法及びガス化装置の構成については、本願出願人等は、種々の発明に関して出願している(特許文献1〜3等参照)。これらの発明に関わるガス化方法及びガス化装置の構成については後述する。
【0009】
また、バイオマス資源の利用としては、前記薪やおが屑,もみがら以外に、乾燥鶏糞の利用が期待されている。バイオマス資源のなかの畜産廃棄物で、養鶏場から発生する鶏糞は、100万羽の養鶏場で約40トン/日(水分20%換算)と言われている。ちなみに、平成15年農林水産庁統計によれば、全国の鶏の飼育数は採卵鶏が約13700万羽である。
【0010】
鶏糞は発酵肥料としても利用されているが、肥料としての優位性が低いため(牛、馬、豚、鳥の順)、従来は簡易焼却炉で焼却することも多く、その灰を肥料や土壌改良材に使用していた。ところが、近年、環境問題が厳しくなり鶏糞の簡易焼却が難しくなったことで、肥料に回される量が増えているが需要が少なく、発酵に伴なう臭気等の問題を抱えている。
【0011】
バイオマス資源としての乾燥鶏糞は比較的に発熱量が高く(例:10.34MJ/kg 水分11.3%)、これをガス化して発電できれば、エネルギーの回収と同時に鶏糞に係る環境問題も解決され、更に地球温暖化防止にも寄与できるので、その活用が養鶏業者からも大いに期待されている。ちなみに、前記固形バイオマスのガス化装置において、発生するガスは発熱量が低く、4〜5MJ/m3程度である。
【0012】
次に、バイオマスのガス化によるガスエンジン発電方式に関し、従来の方式について述べる。図6は、従来のバイオマス発電装置のシステム系統図の一例を示す。図6によれば、バイオマス発電装置1は、ガス発生装置2とガスエンジン発電機3とから構成され、ガスエンジン発電機3の出力は、基本的には電力会社の電力系統4と、同期装置35を介して連系されて運転される。
【0013】
ガス発生装置2は、燃料供給装置21aを有するガス化炉21、発生ガス浄化用の遠心フィルタとしてのサイクロン22、ガス冷却器23、ブロア24、および発生ガス清浄化用のフィルタ25等を備える。一方、ガスエンジン発電機3は、ガスエンジン31、同期発電機32(誘導発電機の場合もある)、および発電機盤33等を備える。
【0014】
ガス化炉21は、いわゆるダウンドラフト(下向通風)式のガス化炉であり、燃料供給装置21aからバイオマス燃料が投入され、ブロア24により吸引される給気は炉上部より供給され、炉下部からガス化された燃料ガスが取出される。バイオマス燃料は、ガス化炉21における燃焼層で燃焼するが、未燃の炭化物は燃焼層の下に炭化層を形成し、これが以下の還元層として作用する。還元層(炭化層)では、燃焼層で発生したCO2が高温の炭素分Cと反応し、還元してCOを生ずる。又燃料や、燃焼空気に含まれているH2Oが高温の炭素分Cと反応し、還元してH2とCOを生ずる。これらの反応は一定では無く、酸化、還元が複雑に絡み合って、進行していると考えられる。即ち、以下のような反応が行われている。
【0015】
C+O2→CO2 C+CO2→2CO 2C+O2→2CO
C+2H2O→CO2+2H2 C+H2O→CO+H2
その他、燃料層の燃料は燃焼層の高温で乾留され、これによりCH4,C26等も発生している。これら、CO,H2,CH4,C26等の発生ガスが、ガスエンジンに導入される燃料ガスとなり、主に、以下のような燃焼反応によりガスエンジン31が駆動される。
【0016】
CO+1/2O2=CO2+283.0kJ/mol
2+1/2O2=H2O+241.8kJ/mol
CH4+2O2=CO2+2H2O+802.3kJ/mol
ガス化炉21における発生ガスは、サイクロン22で除塵され、ガス冷却器23で冷却され、更にフィルタ25で除塵され、これがガスエンジン31の燃料ガスとして供給される。この燃料ガスは、混合器33において空気と混合され、ガバナー34を介してガスエンジン31に供給され、同期発電機32を駆動して発電する。なお、図6において33aは燃料ガス調整用のアクチュエータ、31aはガスエンジン始動用のセルモータである。
【0017】
次に、ガス化装置(またはガス化炉)の従来構造に関し、本発明に関わり、主に生成灰を火格子の下方へ落下させ外部に排出する構造を中心に、図3〜図5に基づき、特許文献3に開示された内容を引用して以下に述べる。図3は、特許文献3に開示された発明の、主に灰の排出手段の一例を示すガス化装置の模式的構成図、図4は前記図3におけるA−A矢視拡大平面図、図5は灰落し手段の要部拡大断面図を示す。
【0018】
図3において、ガス発生炉本体1aに導入され燃焼により発生する燃料4a中の無機質残渣(生成灰)は、後述する自動灰落し手段によって、火格子14の下部の灰溜め容器139内に堆積する。連続運転を実施する場合、この堆積した生成灰を、ガス発生炉本体1aから排出する必要がある。この作業は通常灰出しと呼ばれる。灰落しと同様に、自動的に灰出しを実施するための課題は、灰の高温度に耐えることができることと、外部空気の吸入が抑制できることである。
【0019】
図3に示す灰の排出手段は、上記の課題を解決したもので、前記灰溜め容器139に一端の灰導出部を接続した水平スクリュー式コンベヤー131と、この水平スクリュー式コンベヤー131の他端と接続した灰溜めボックス133と、この灰溜めボックスから灰を外部に搬出する傾斜スクリュー式コンベヤー134とを備える。
【0020】
水平スクリュー式コンベヤー131は、外部とは密封構造となっているが、灰溜めボックス133とは灰の移動のため通気性を有する。火格子14の下部に堆積する灰は、水平スクリュー式コンベヤー駆動装置132によって、灰溜めボックス133に移送される。灰溜めボックス133は、常時灰で充填されている。このため、灰のシールによって、空気が火格子14の下部に侵入することはない。
【0021】
灰溜めボックス133には、灰溜めボックス133から外部に灰を排出するための、傾斜スクリュー式コンベヤー134が設置され、灰溜めボックス133から傾斜スクリュー式コンベヤー134上部の排出口135から、傾斜スクリュー式コンベヤー駆動装置136により、余剰の灰を搬出することができる。傾斜スクリュー式コンベヤー134の底部から排出口135までは、常時灰で充填されている。従って、排出口135から灰溜めボックス133に空気が侵入することはない。
【0022】
灰出しは、約1時間毎に定期的に一定期間実施することもできるが、灰落しの程度によって堆積する灰の量が変化するため、火格子14の下部の灰溜め容器139内に堆積灰レベル計137を設置し、規定レベル以上になった時に、灰出し制御装置140から指示をだし、水平スクリュー式コンベヤー駆動装置132を駆動して灰溜めボックス133に移送する。
【0023】
また、灰溜めボックス133内には、同様に、堆積灰レベル計138を設置し、規定レベル以上になった時に、灰出し制御装置140から指示をだし、傾斜スクリュー式コンベヤー駆動装置136を駆動して灰排出口135から排出する。
【0024】
次に、図4および5に基づき、灰落し手段について述べる。灰落し手段は、主要部材として以下を備える(細部構成は、図4および5参照)。
1)円形状火格子14の円周部に設けた火格子旋回力点120
2)前記力点に火格子下方から、火格子円周方向の回転力を印加する回転ロッド121
3)前記ロッドを回転させる駆動装置122
4)ロッドの支持部からの空気の侵入を防止するための水封手段123
図4に示すように、火格子旋回力点120は、火格子14の外周部にあり、回転ロッド121の回転軸を偏心させた2軸クランク状に屈曲した上部に接続している。回転ロッド121がロッド旋回駆動装置122により回転を開始すると、火格子は円周方向に回転力を受け、回転ロッド121の前記偏心に応じて旋回し、360°回転により、図4のRで示すように正逆方向に旋回し、これにより、火格子はその隙間から下方に灰を落すことができる。
【0025】
次に、回転ロッドの支持部からの空気の侵入を防止するための水封手段123の詳細について、図5に基づいて述べる。ガス発生炉本体1aの下部には、後述する灰溜め容器139があり、その底部は、灰の受け板127として構成されている。ガス排出パイプ(1)21bは、前記灰溜め容器139の上部に接続され、ガス排出パイプ内に灰が混入しないように構成される。
【0026】
回転ロッド121は、前記灰の受け板127の下方に設けた空気侵入防止用の水封手段123を介して、回転ロッドの駆動手段122と接続される。この水封手段123は、前記灰の受け板127の下方に設けた水封水受け用の気密性容器130と、この容器の底部に設けた回転ロッドの貫通シール手段121aと、気密性容器130の下方に貯留した水封水124と、回転ロッド121の軸と隙間をもって同心状に設けた外筒129とを有し、この外筒129を水封水から突出させ、かつ前記回転ロッド121と外筒129との間の隙間に水を充填して水封する構成としている。なお、前記灰溜め容器139における回転ロッドの外筒は、回転ロッドの機械的ガイドである。
【0027】
ところで、前述のように、火格子の隙間から下方に生成灰を落す構造を備えたガス化炉の場合、下記のような問題があった。図2は、従来の下向通風式のバイオマス燃料のガス化装置の構成を、説明の便宜上、概念的に簡略化して示す図であり、図3〜図5に示された部材と同一機能部材には同一番号を付して示す。
【0028】
図2に示すようなガス化炉において、燃料4aは上部の燃料投入口61から投入される。給気62は上部より供給される。燃料の燃焼に伴って発生する生成ガスは、下部のガス排出パイプ21bから排出される。燃料4aは、ガス発生炉本体1a内の燃焼層で燃焼し、その下部の還元層でガス化する。ガス化に伴って発生する生成灰65は、火格子14から炉下部へ落ち、水平スクリュー式コンベア131により、炉外へ排出される。なお、図2において、Aは空気の流れ、Gは生成ガスの流れを示す。燃焼用空気は、特許文献2や3に開示されたように、図示しない空気導入パイプが炉の下方から燃焼部に挿入される場合もある。
【0029】
上記のようなガス化炉に、バイオマス資源として、特に乾燥鶏糞等を使用した場合、灰が粘性を持っているために灰が固まり、火格子がある場合には、図2に示すように、火格子14の上に灰の固まり68が残り、この灰の固まりが次第に増長して行くために、燃焼・還元を阻害する問題があった。即ち、灰の固まりが増長した場合、炉が有効に機能せず、燃焼・還元が不安定になり、ガス化装置の運転が継続出来なくなる問題があった。
【特許文献1】特開2002−285172号公報
【特許文献2】特開2004−51647号公報
【特許文献3】特開2004−143204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、この発明の課題は、ガス化炉内での生成灰の固まりを防ぐと共に、種々のバイオマス資源に対して、生成ガスを安定して取出すことが可能なバイオマス燃料のガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述の課題を解決するため、この発明は、バイオマス燃料の燃焼部を有するガス発生炉本体と、この本体上部に設けたバイオマス燃料の導入手段と、前記燃焼部に空気を導入する空気導入手段と、前記本体下部に設けられ、ガス発生炉本体で発生した生成ガスを排出するガス排出パイプとを有する下向通風式のバイオマス燃料のガス化装置において、前記バイオマス燃料の燃焼に伴って発生し下方に落下する生成灰を受容する灰受ボックスと、この灰受ボックスの底部から生成灰を導出する生成灰排出手段と、前記灰受ボックス部において前記生成ガスと生成灰とを分離し、分離した生成ガスを前記ガス排出パイプに導入する構成を有する灰・ガス分離手段とを備えることを特徴とする(請求項1の発明)。
【0032】
上記構成によれば、生成灰は、生成ガスの流通を阻害することなく灰受けボックスに落ちて溜まり、生成灰排出手段により炉外に排出されるので、燃焼・還元が有効に機能し、ガス化装置の安定した運転が継続できる。
【0033】
上記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし5の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載のバイオマス発電装置において、前記生成灰排出手段は、灰受ボックス底部から生成灰を外部に導出する水平スクリュー式コンベアを備えることを特徴とする(請求項2の発明)。
【0034】
また、生成灰を灰受けボックスに、できる限り均等に分散落下させることにより、運転の効率化および安定化を図る観点から、下記請求項3の発明が好ましい。即ち、前記請求項1または2に記載のガス化装置において、前記灰受ボックスは、前記生成灰排出手段の上方に、前記落下する生成灰に分散落下力を与えるスタッド付回転ドラムを備えることを特徴とする(請求項3の発明)。
【0035】
また、灰・ガス分離手段の実施態様としては、下記請求項4または5の発明が好ましい。即ち、前記請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス化装置において、前記灰・ガス分離手段は、筒状の灰受ボックス上部に設けた円錐屋根状キャップ付ガス採取装置としてなり、前記円錐屋根状キャップ付ガス採取装置は、前記筒状灰受ボックスの軸方向中央部に筒状灰受ボックスと同心状に設け、一端が前記ガス発生炉本体上方に向けて開口してなる中心軸パイプと、この中心軸パイプと前記筒状灰受ボックスとを径方向に連結してなる複数個の径方向連結パイプと、前記筒状灰受ボックスの軸方向外周部に筒状灰受ボックスと同心状に設け、前記ガス排出パイプに連通してなるガス連絡室と、前記中心軸パイプの開口部上方に設けた円錐屋根状キャップとを備え、前記径方向連結パイプの端部をそれぞれ前記中心軸パイプおよびガス連絡室に開口してなるものとすることにより、前記生成ガスを、前記中心軸パイプの開口部から導入し、前記径方向連結パイプおよびガス連絡室を経由して前記ガス排出パイプに導く構成を備えるものとする(請求項4の発明)。
【0036】
さらに、前記請求項4に記載のガス化装置において、前記灰・ガス分離手段は、筒状の灰受ボックス上部に設けた前記円錐屋根状キャップ付ガス採取装置に加えて、筒状の灰受ボックス上部に設け、前記灰受ボックスとガス連絡室とを連通する灰切り連通口を設けてなり、前記灰切り連通口は、灰受ボックス円筒内側下方から外側上方に傾斜して設けた前記生成ガスの流路を備えるものとする(請求項5の発明)。
【0037】
請求項4および5の発明の詳細については後述する。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、ガス化炉内での生成灰の固まりを防ぐと共に、種々のバイオマス資源に対して、生成ガスを安定して取出すことが可能であって、ガス化装置の効率的かつ安定した運転が継続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1に基づき、本発明の実施の形態について以下に述べる。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態を示すバイオマス燃料のガス化装置の構成図であり、図1(a)は構成断面図、図1(b)は図1(a)における円錐屋根状キャップ付ガス採取装置73の部分斜視図である。なお、図1において、図2に示した構成要素と同一機能を有する構成要素には同一番号を付して重複する説明を省略する。また、Aは空気の流れ、Gは生成ガスの流れを、図2と同様に示す。
【0041】
図1に示すガス化装置は、バイオマス燃料の燃焼に伴って発生し下方に落下する生成灰65を受容する筒状の灰受ボックス71と、この灰受ボックス71の底部から生成灰を導出する水平スクリュー式コンベア131を有する生成灰排出手段と、前記灰受ボックス部において生成ガスと生成灰とを分離し、分離した生成ガスを、ガス排出パイプ21bに導入する構成を有する灰・ガス分離手段としての円錐屋根状キャップ付ガス採取装置73を備える。
【0042】
前記円錐屋根状キャップ付ガス採取装置73は、図1(b)の斜視図にも示すように、筒状灰受ボックス71の軸方向中央部に筒状灰受ボックスと同心状に設け、一端がガス発生炉本体1a上方に向けて開口してなる中心軸パイプ73bと、この中心軸パイプ73bと筒状灰受ボックス71とを径方向に連結してなる、例えば4個の径方向連結パイプ73cと、灰受ボックス71の軸方向外周部に灰受ボックスと同心状に設け、ガス排出パイプ21bに連通してなるガス連絡室74と、前記中心軸パイプ73bの開口部上方に設けた円錐屋根状キャップ73aとを備え、前記径方向連結パイプ73cの端部をそれぞれ前記中心軸パイプ73bおよびガス連絡室74に開口してなる。
【0043】
上記構成により、生成灰が分離された生成ガスは、図1の矢示線(G)で示すように、前記中心軸パイプ73bの開口部から導入され、4個の径方向連結パイプ73cおよびガス連絡室74を経由してガス排出パイプ21bから炉外に排出される。従来の火格子付ガス化炉の場合には、前述のように、灰の固まりができる問題や、また還元ガスと灰とを同一の火格子から取出していたために、炉内に偏った給気や還元ガスのルート(穴)が出来て、燃焼・還元不安定にする問題等があったが、図1の構成によれば、これらの問題を解消することができる。さらに、生成ガス採取時のガス化炉内の圧力損失を少なくすることができ、火格子付ガス化炉に較べ、効率的でかつより安定したガス化を行うことができる。
【0044】
また、図1において、灰受ボックス71は、その内部上方に、落下する生成灰に分散落下力を与えるスタッド付回転ドラム72を、例えば2個備える。この構成によれば、生成灰が灰受ボックス71へ落ちる途中で固まった場合には、上記スタッド付回転ドラム72により、固まった灰を壊し、均等に分散落下するようにして、水平スクリュー式コンベア131に送り込むことができる。これにより、生成灰に粘性のある固まりやすいバイオマス資源を燃料とした場合でも、効率良く均等に灰出しを行うことができ、燃焼・還元ガス化をより安定して行うことができる。
【0045】
さらに、図1において、灰受ボックス71の上部には、灰受ボックス71とガス連絡室74とを連通する灰切り連通口75を設ける。この灰切り連通口75は、図示のように、灰受ボックス円筒内側下方から外側上方に傾斜して設けた生成ガスの流路を備え、当該部においても、矢示線(G)で示すように、生成灰と分離された生成ガスが、灰切り連通口75を通過し、ガス連絡室74を経て、ガス排出パイプ21bから排出される。これにより、ガス排出の効率がさらに向上し、全体として、ガス化の効率をさらに向上することができる。
【0046】
上記実施態様により、バイオマス資源のガス化、特に、乾燥鶏糞のように生成灰に粘性があり固まる傾向のあるバイオマス資源についても、安定して燃焼・還元してガス化することができる。なお、前記スタッド付回転ドラム72や径方向連結パイプ73cの個数等は、前述の個数に限定されず、また、灰・ガス分離手段の実施態様としては、この発明の技術思想の範囲内において種々の態様をとり得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態を示すバイオマス燃料のガス化装置の構成図。
【図2】従来のバイオマス燃料のガス化装置の構成を、概念的に簡略化して示す図。
【図3】特許文献3に開示されたバイオマス燃料のガス化装置の模式的構成図。
【図4】図3におけるA−A矢視拡大平面図。
【図5】図3におけるガス化装置の灰落し手段の要部拡大断面図。
【図6】従来のバイオマス発電装置の一例のシステム系統図。
【符号の説明】
【0048】
1a ガス発生炉本体
4a 燃料
21b ガス排出パイプ
61 燃料投入口
62 給気
65 生成灰
71 灰受ボックス
72 スタッド付回転ドラム
73 円錐屋根状キャップ付ガス採取装置
73a 円錐屋根状キャップ
73b 中心軸パイプ
73c 径方向連結パイプ
74 ガス連絡室
75 灰切り連通口
131 水平スクリュー式コンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料の燃焼部を有するガス発生炉本体と、この本体上部に設けたバイオマス燃料の導入手段と、前記燃焼部に空気を導入する空気導入手段と、前記本体下部に設けられ、ガス発生炉本体で発生した生成ガスを排出するガス排出パイプとを有する下向通風式のバイオマス燃料のガス化装置において、
前記バイオマス燃料の燃焼に伴って発生し下方に落下する生成灰を受容する灰受ボックスと、この灰受ボックスの底部から生成灰を導出する生成灰排出手段と、前記灰受ボックス部において前記生成ガスと生成灰とを分離し、分離した生成ガスを前記ガス排出パイプに導入する構成を有する灰・ガス分離手段とを備えることを特徴とするバイオマス燃料のガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化装置において、前記生成灰排出手段は、灰受ボックス底部から生成灰を外部に導出する水平スクリュー式コンベアを備えることを特徴とするバイオマス燃料のガス化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス化装置において、前記灰受ボックスは、前記生成灰排出手段の上方に、前記落下する生成灰に分散落下力を与えるスタッド付回転ドラムを備えることを特徴とするバイオマス燃料のガス化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス化装置において、前記灰・ガス分離手段は、筒状の灰受ボックス上部に設けた円錐屋根状キャップ付ガス採取装置としてなり、前記円錐屋根状キャップ付ガス採取装置は、前記筒状灰受ボックスの軸方向中央部に筒状灰受ボックスと同心状に設け、一端が前記ガス発生炉本体上方に向けて開口してなる中心軸パイプと、この中心軸パイプと前記筒状灰受ボックスとを径方向に連結してなる複数個の径方向連結パイプと、前記筒状灰受ボックスの軸方向外周部に筒状灰受ボックスと同心状に設け、前記ガス排出パイプに連通してなるガス連絡室と、前記中心軸パイプの開口部上方に設けた円錐屋根状キャップとを備え、前記径方向連結パイプの端部をそれぞれ前記中心軸パイプおよびガス連絡室に開口してなるものとすることにより、前記生成ガスを、前記中心軸パイプの開口部から導入し、前記径方向連結パイプおよびガス連絡室を経由して前記ガス排出パイプに導く構成を備えるものとすることを特徴とするバイオマス燃料のガス化装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス化装置において、前記灰・ガス分離手段は、筒状の灰受ボックス上部に設けた前記円錐屋根状キャップ付ガス採取装置に加えて、筒状の灰受ボックス上部に設け、前記灰受ボックスとガス連絡室とを連通する灰切り連通口を設けてなり、前記灰切り連通口は、灰受ボックス円筒内側下方から外側上方に傾斜して設けた前記生成ガスの流路を備えるものとすることを特徴とするバイオマス燃料のガス化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−83293(P2006−83293A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269905(P2004−269905)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)