説明

バイオマス燃料の製造方法と製造装置

【課題】単位熱量当たりのコストを従来に比べて格段に低廉化した木質系バイオマス燃料を提供して、その使用を社会的なシステムとして定着させ、森林資源等の活用と地球環境の維持保全に資することを目的としている。
【解決手段】以下の工程からなるバイオマス燃料の製造方法を提供して、上記課題を解決する。
(イ)バイオマス素材を細片化する工程、
(ロ)粒状の熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片とを混合・加熱して前記細片から水分を蒸発させて除水する工程、
(ハ)前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体を冷却する工程、
(ニ)工程ハに次いで、前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体からバイオマス素材細片を分離回収する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、得られる熱エネルギーコストが極めて低廉な木質系バイオマス燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材その他のバイオマス素材に係る燃料が日本の社会からその実用的地位を失ったのは安くて便利な石油や石炭等の化石燃料による利便性の高い暖房機や給湯器や炊飯調理器具が普及したためである。
しかしながらそれら化石燃料消費に伴う多量の炭酸ガス排出が地球環境の破壊を招きつつある現在、早急に再生可能なバイオマス燃料の活用とそれによる化石燃料の消費削減がさけばれている。ましてや日本は国土の75%が森林で覆われていてその持続可能な再生産木材資源の活用は早晩の急務である。
【0003】
バイオマス燃料の一つとして木質チップや木質ペレットが知られており、ストーブやボイラーの燃料として使用されている。木質チップは、原料となる木材が細断されたものである。木質ペレットは、木質チップより細かく木材が粉砕され、乾燥して固められたものである。
【0004】
しかしながら、バイオマス燃料としての木質チップや木質ペレットの単位熱量あたりのコストは、化石燃料に比較して決して安価とはいえない。 その理由は、雑木、間伐材等の産地における価格が安くても、含水率の高いこれら原料の消費地への搬送は水を運ぶようなもので単位熱量あたりの搬送コストは、灯油などに比べて極めて高くならざるを得ないからである。
【0005】
また、燃料としての使用は、自動化が進み操作性に優れた灯油、重油などの液体燃料に比べて、燃焼装置の操作性、保守管理などが煩雑であり手間、暇がかかり、誰でも、どこでも簡単にバイオマス燃料を使用することができないという側面がある。 したがって、日本の現代社会においては、バイオマス燃料の原料がいかに安価でも、いったん、これを燃料として使用するとなると得られる熱量あたりのトータルコストは高くなり、現実的にその使用は困難である。 さらには、コストの問題に加えて、近代の日本の住宅事情もそれを許す状態ではなく、狭くゆとりが全く無くバイオマス燃料を利用する条件が整っていないのが実情である。
【0006】
本願に関連する技術文献として以下のものがある。
【特許文献1】特開2009−102468号公報
【特許文献2】特開2007−147104号公報
【特許文献3】特開2007−147105号公報
【特許文献4】特開2004−270980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バイオマス素材、特に木材を有効に活用する試みは、欧州諸国で盛んでありこれに係る技術内容は実用的で経済性も或る程度の域に達していて、中でも木材をペレットに加工して燃料用に活用する技術は、その燃焼装置まで含めて既に成熟領域にあるとも言い得る。
【0008】
しかしながら、木材をペレットに加工するには相当のコストを必要とし、トータルコストは石油系燃料を使用するのに比して格段に低廉とはいい難く、石油系燃料に替って広く普及する条件に欠けている。
【0009】
木材は、生木の場合にその含水率は120−150%にも達している。一方、木材チップ、木材ペレット等に加工するのに適した含水率が50%程度といわれており、さらに燃料としての理想的な含水率は10%程度である。
【0010】
にもかかわらず、スエーデンなど木質系バイオマス燃料の先進国でも、含水率は60−90%程度であるのが実情である。 このため、燃焼装置を工夫して前記のような高含水率の木材チップ、木質ペレットなどの木質系バイオマス燃料を良好に燃焼可能としている。
しかしながら、このような高含水率の木質系バイオマス燃料を輸送するとなると実質水を輸送するのと変わらず、輸送費は単位カロリー当たりの30%程度に達し、木質系バイオマス燃料の使用は小規模な実験的規模を脱することができず、ごく一部の環境意識に目覚めた人々の間での普及にとどまり、木質系バイオマス燃料の使用は実質的な好影響をなんらもたらしていないのが現状である。
【0011】
本願発明の目的は、単位熱量当たりのコストを従来に比べて格段に低廉化した木質系バイオマス燃料を提供して、その使用を社会的なシステムとして定着させ、森林資源等の活用と地球環境の維持保全に資することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、以下の工程からなるバイオマス燃料の製造方法を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
(イ)バイオマス素材を細片化する工程、
(ロ)粒状の熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片とを混合・加熱して前記細片から水分を蒸発させて除水する工程、
(ハ)前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体を冷却する工程、
(ニ)工程ハに次いで、前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体からバイオマス素材細片を分離回収する工程。
【0013】
また、上記のバイオマス燃料の製造方法において、前記バイオマス素材は木質系材で構成することがある。
【0014】
さらに、上記いずれかのバイオマス燃料の製造方法において、前記粒状の熱伝導媒体は、鉱物質砂又は珊瑚砂で構成することがある。
【0015】
また、段落0013又は0014いずれかのバイオマス燃料の製造方法において、前記工程(ニ)において分離回収された木質系バイオマス素材細片を成形してペレットに成形する工程を有することがある。
【0016】
さらに、段落0014は0015いずれかのバイオマス燃料の製造方法において前記工程(ニ)に次いで、木質材細粉を回収する工程を具える構成となすことがある。
【0017】
本願発明はまた、バイオマス素材細片供給タンクと、粒状の熱伝導媒体供給タンクと、前記両タンクから供給されるバイオマス素材細片と粒状の熱伝導媒体とを混合・攪拌しつつ加熱する回転可能なキールンと、このキールンの加熱手段と、前記キールンにおける乾燥・除水工程を完了したバイオマス素材細片と粒状の熱伝導媒体との分離手段と、を具えてなるバイオマス燃料製造装置を提供して、上記従来の課題を解決しようとするものである。
【発明の効果】
【0018】
本願発明は、上記構成により単位熱量当たりのコストが従来に比べて格段に低廉化され、その使用が経済的な合理性を得られるため広く普及が可能となり、森林資源等の活用と地球環境の維持保全に資すること大である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本願発明に係るバイオマス燃料の製造方法の1実施例を示す流れ図である。
【図2】バイオマス燃料の製造装置の1実施例を示す概略構成図である。
【図3】バイオマス燃料の製造装置の主要部の1実施例を示す一部切欠・断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
木材その他のバイオマス素材は、従来の周知技術でチップ化する。 生木材が原料の場合、チップの含水率は120−150%に達しており、このままの状態で、消費地まで搬送すると輸送費は熱量コストの30%に達することがあり、したがって、チップ現場で除水を行い、好ましくは含水率を10%程度に低減する。
【0021】
チップの除水・乾燥は、加熱された粒状の熱伝導媒体をチップに接触させることによりなすと効率的であり、ここで熱伝導媒体として、細かい砂又はシェルサンドと呼ばれる珊瑚砂を用いる。 チップ生産とその乾燥は、林業地で行われるから熱伝導媒体の加熱は、林業地で容易に入手できる各種木片、伐採に伴う小枝片、落ち葉など従来は処理に困っていたものを燃して行えば含水率10%程度の木材チップを低コストで生産できるうえ、減容積、軽量化がなされるので輸送費も低減できる。
【0022】
前記チップはそのまま所定の燃焼装置において燃料として使用してもよいが、ペレットに成形してもよい。
【実施例】
【0023】
図面に基づいて、本願発明の一実施例を説明する。 図1は、バイオマス燃料の製造方法の1実施例を示す流れ図であり、第1工程(A)でバイオマス素材としての木材が細片化されて、チップ状に破砕される。 次いで、第2工程(B)で、チップ状に破砕された木材細片は、粒状の熱伝導媒体としての珊瑚砂と混合され加熱される。 この加熱は、木材中の水分を乾燥・除去するためであるから、本来は油中で天麩羅のように揚げるのが効率的であるがコスト的にはこのような手法は採用できず、いわば次善策として加熱した粒状体の中に木材細片を混在させて加熱し水分を効率よく蒸発させるようにしている。したがって、粒状の熱伝導媒体としては珊瑚砂のほかに砂鉄、鉱物質砂など比熱の大きいものが適している。
【0024】
前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体は、水分蒸発がなされた後、第3工程(C)において冷却される。 冷却終了後、第4工程(D)で、前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体からバイオマス素材細片を分離回収する一方、熱伝導媒体は再度新たな木材細片とともに前記の加熱・混合工程にまわされ、順次上記工程A−Dが繰り返される。
【0025】
図2は、バイオマス燃料の製造装置の1実施例を示す概略構成図である 図において、1は、バイオマス素材細片供給タンクで、この実施例ではバイオマス素材細片は、木質系材を所定サイズに破砕した木材チップである。 2は粒状体供給タンクであり、粒状体は熱伝導媒体であり、この実施例では珊瑚砂で構成されている。
【0026】
3は、軸周りに回転可能なキールンで、前記両タンク1、2から木材細片と粒状の熱伝導媒体としての珊瑚砂との供給を受けて回転しながら前記両者を混合しつつ加熱して、木材細片を除水する。木材細片と粒状の熱伝導媒体としての珊瑚砂との混合状態は、木材細片の全表面が珊瑚砂に覆われ、あたかも木材細片が加熱された珊瑚砂中に没するような状態にすると効率よく木材細片を加熱して除水できる。
【0027】
4は、前記キールンを加熱するためのキールン加熱炉である。加熱燃料の種類は問わないが、この実施例では木材細片の製造時に生じた木の葉、木片、木屑などを燃焼させて加熱している。
【0028】
5は冷却貯留タンクで、前記キールン3を通過した木材細片と珊瑚砂の混合体をキールン3から受けて貯留し、その間に冷却するもので、加熱による木材細片の水分蒸発が済んでも、混合体は相当に熱い状態になっている。 ここで、熱した混合体を冷却して、次の工程に進める必要がある。
【0029】
6は分離手段であり、この分離手段6は基本的に混合状態にある木材細片と珊瑚砂の両者を分別するものであるが、混合体中には木材細片から派生する木粉、木屑などが混入しているからこれらも分離した後にキールン加熱炉4に供給して燃焼させるようになっている。 また、分離された珊瑚砂は前記の粒状体供給タンク2に送り込まれて再使用されることになる。 そして、除水された木材細片はバイオマス素材細片タンクに送られ収納される。
【0030】
図3は、図2に示すバイオマス燃料の製造装置の主要部の1実施例を示す一部切欠・断面図である。 図において、1はバイオマス素材細片供給タンク、2は粒状体供給タンク、3はキールンで、不図示の回転駆動源により軸3a周りに回転可能になっている。キールン3は円筒状をなしており、内壁には送り突条3bが螺旋状に凸設されていて、バイオマス素材細片(この実施例では木質系材細片)と粒状の熱伝導媒体としての珊瑚砂、鉱物質砂などとを混合しながら、これらをキールン3の始端(図で左端)から開口している終端(図で右端)に搬送する。 この搬送の間に珊瑚砂などは加熱されこの珊瑚砂に表面部を覆われる木質系材細片を熱してその内部の水分を蒸発させる。
【0031】
また、4はキールン加熱炉であり、この実施例ではキールン3の下方に設けられていて木の葉、樹皮、小枝などを燃やしてキールン3を加熱している。 4aは前記のような木質燃料としての木の葉、樹皮、小枝、木屑をキールン内部に投入する送りスクリュー部、4bは木粉の吹き込みパイプ、4cは送風管である。
5は冷却貯留タンクで、キールン3の開口端からの木質系材細片と珊瑚砂の混合体を貯留冷却するためのものである。 すなわち、キールン3から冷却貯留タンク5に投入された時点で、木質系材細片と珊瑚砂の混合体の温度は摂氏600度にも達している。 そこで、混合体に次処理をなすにも、ともかくも冷却が欠かせない。 冷却後、混合体の分離処理がなされ、木質系材細片、珊瑚砂、木粉、木屑などに分別される。ここで、木粉、木屑などは前記のスクリュー部4a、吹き込みパイプ4bに送られてキールン加熱炉内4での燃料とされる。 また、分離された珊瑚砂、木粉、木屑などはブロワーによりパイプ内を移送して、珊瑚砂は粒状体供給タンクに送られてキールン3の回転に併せてキールン3内部に落下するようになっており、木粉、木屑などもブロワーやその他の手段によりスクリュー部4a、吹き込みパイプ4bに搬送されて燃料として使用されることになる。
【0032】
なお、キールン3の開口部近傍には、温度センサーが設けられており、温度情報は制御手段に送られて、制御手段はその情報に基づいてキールン3の回転駆動源ならびに前記スクリュー部4a, 木粉の吹き込みパイプ4b、送風管4cの動作を制御する。 すなわち、木質系材細片と珊瑚砂の混合体の温度はキールン3の開口端付近で約摂氏600度程度とすると木質系材細片内部の水分除去を効率的に行うことできる。 したがって、制御手段により、キールン3の開口端付近での温度を約摂氏600度に設定すると、これにより制御手段は回転駆動源の回転速度すなわち木質系材細片と珊瑚砂の混合体の移動速度や燃料投入量の制御、送風量、木粉吹き込み量などを制御して設定された前記温度を維持するように動作することになる。
【0033】
本願発明によれば、バイオマス細片(木材チップ等)は乾燥・除水してあるから運送コストは単位熱エネルギーのトータルコストの15%以下に抑制できる。 したがって、今日、林地に放置されたままになっている残材や、建築資源には適しないような間伐材、伐採時に発生する小枝、落ち葉その他を有効資源として活用できる。 燃費が低廉な上、運転にも手間がいらず、かつ安全であるから、木質燃料用に多数提供されている専用燃焼装置を使用すれば、個人需要は言うにおよばず、農業におけるハウス暖房、学校の暖房、病院の暖房等に低廉な燃料費で利用することができ、その利用行為そのものが即自然環境の保全に資するのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなるバイオマス燃料の製造方法。
(イ)バイオマス素材を細片化する工程、
(ロ)粒状の熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片とを混合・加熱して前記細片から水分を蒸発させて除水する工程、
(ハ)前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体を冷却する工程、
(ニ)工程ハに次いで、前記熱伝導媒体と前記バイオマス素材細片との混合体からバイオマス素材細片を分離回収する工程。
【請求項2】
請求項1記載のバイオマス燃料の製造方法において、前記バイオマス素材は木質系材であることを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバイオマス燃料の製造方法において、前記粒状の熱伝導媒体は、鉱物質砂又は珊瑚砂であることを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3いずれか記載のバイオマス燃料の製造方法において、前記工程(ニ)において分離回収された木質系バイオマス素材細片を成形してペレットに成形したことを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載のバイオマス燃料の製造方法において、前記工程(ニ)に次いで、木質材細粉を回収する工程を具えることを特徴とするバイオマス燃料の製造方法。
【請求項6】
バイオマス素材細片供給タンクと、粒状の熱伝導媒体供給タンクと、前記両タンクから供給されるバイオマス素材細片と粒状の熱伝導媒体とを混合・攪拌しつつ加熱する回転可能なキールンと、このキールンの加熱手段と、前記キールンにおける乾燥・除水工程を完了したバイオマス素材細片と粒状の熱伝導媒体との分離手段と、を具えてなるバイオマス燃料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−275406(P2010−275406A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128503(P2009−128503)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591183544)
【出願人】(509101376)
【Fターム(参考)】