説明

バイオ燃料電池

本発明は、酸化剤である第二鉄イオンの微生物再生を基礎とする新規タイプのバイオ燃料電池を開示する。このバイオ燃料電池は、第二鉄イオンから第一鉄イオンへのカソードでの還元を基礎として、第一鉄イオンの酸化による第二鉄イオンの微生物再生と、アノードでの燃料(水素など)の酸化とを組み合わせたものである。第二鉄イオンの微生物再生は、アシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)などの化学合成無機栄養微生物により行われる。発電は、大気中の二酸化炭素の消費、及び微生物細胞内への変換(単細胞タンパク質として使用可能)と組み合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連米国特許出願の相互参照
本願は、2003年6月27日に出願された米国特許出願第60/482765号(英語出願、発明の名称:バイオ燃料電池(BIOFUEL CELL))の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は燃料電池に関し、より特定すると、本発明は、発電中に大気から二酸化炭素を除去する、アシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)などの化学合成無機栄養微生物による第一鉄イオンから第二鉄イオンへの好気性酸化プロセスによる、酸化剤である第二鉄イオンの微生物再生に基づいたバイオ燃料電池に関する。
【背景技術】
【0003】
水素エコノミーの発展の主な構成要素は、大規模な燃料電池技術の導入である。日常生活における燃料電池の用途に向けた重大な進歩がある一方で、その普及は、一部は燃料電池が生み出す電気は高コストであるとの理由で未だ達成されていない(Rose, R., Fuel Cells and Hydrogen: The Path Forward, Report Prepared for the Senate of the USA, http://www.fuelcellpath.org.参照)。
【0004】
最も人気のあるプロトン交換膜(PEM)水素−酸素燃料電池のカソード上での酸素還元反応速度が遅いことが、燃料電池自体の高コスト(触媒としてPtが必要)と低電気燃料効率(Bockris, J. O.-M. and R. Abdu, J. Electroanal. Chem., 448, 189 (1997)の開示によると、約50%)の主な理由である。
【0005】
酸素の代わりに第二鉄イオンのような他の酸化剤を用いるレドックス燃料電池の使用により、カソード反応速度(又は電気化学用語では交換電流密度)を桁違いに高めることができる(Bergens, S. H., G. B. Gorman, G. T. R. Palmore and G. M. Whitesides, Science, 265, 1418 (1994); Larsson, R. and B. Folkesson, J. Appl. Electrochem., 20, 907 (1990); and Kummer, J. T. and D.-G. Oei, J. Appl. Electrochem., 15, 619 (1985)の開示を参照)。
【0006】
さらに、電極表面への酸化剤の物質移動速度(電気化学用語の「限界電流密度」に相当)も酸素を使用した場合よりも高い。これは主にレドックス燃料電池における酸化剤の水溶性(例えば、Fe3+では50g/L)が酸素の水溶性(分圧及び温度に依存して0.006〜0.04g/L)よりも高いためである。レドックス燃料電池のこれらの全特性によって、熱力学的理由に基づいて、非貴金属電極を用いると、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換効率80〜90%の達成が可能になる。しかしながら、レドックス燃料電池の主な問題は、還元された形態の酸化剤の再酸化(酸化剤再生)効率である(Larsson, R. and B. Folkesson, J. Appl. Electrochem., 20, 907 (1990); and Kummer, J. T. and D.-G. Oei, J. Appl. Electrochem., 15, 619 (1985))。
【0007】
H2-Fe3+/Fe2+レドックス燃料電池においては、Fe2+からFe3+への再酸化に、例えばγ線照射が使用されている(Yearger, J. F, R. J. Bennett and D. R. Allenson, Proc. Ann. Power Sources Conf., 16, 39 (1962)の開示を参照)。燃料電池自体の効率は非常に高いが、報告されている酸化剤再生効率は15%をはるかに下回っていた。他の事例では、酸化剤の再生は高価な触媒上で酸素を用いることによって行われているが(Bergens, S. H., G. B. Gorman, G. T. R. Palmore and G. M. Whitesides, Science, 265, 1418 (1994)を参照)、これは白金カソード以外のカソードを利用するという利点を排除するものであるし、その再生は依然として遅い。
【0008】
したがって、実際に実行できる全体効率の高いレドックス燃料電池を開発するためには、Larsson, R. and B. Folkesson, J. Appl. Electrochem., 20, 907 (1990)で提案されているように、効率的な酸化剤再生方法を開発する必要がある。
【0009】
アシドチオバチルス・フェロオキシダンス(A.フェロオキシダンス)などの化学合成無機栄養微生物による第一鉄イオンから第二鉄イオンへの好気性酸化プロセスが半世紀以上前に発見された(A.R. Colmer, M.E. Hinkle, Science, 106 (1947) 253-256参照)。これらの微生物は、貴金属(Au)、重金属(U)及び卑金属(Cu、Ni、Zn、Co)の浸出のための冶金、ならびに環境保護において広範に使用されている。微生物による鉄酸化は、下記の最終的な反応:
4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O (1)
に基づいている。
【0010】
第一鉄イオンの微生物による酸化速度は、pH1〜2で酸素を用いた純粋な化学反応によって得られる酸化速度よりも500,000倍速い(D.T. Lacey, F. Lawson, Biotechnology and Bioengineering, 12 (1970) 29-50参照)。
【0011】
第一鉄酸化での増殖の場合、A.フェロオキシダンスは、微生物界で知られた極小熱力学的極限の一つを利用する(W.J. Ingledew, Biochimica et Biophysica Acta, 683 (1982) 89-117)。この微生物による鉄酸化の電子伝達系は、細胞膜の外側で起こる、
4Fe2+ = 4Fe3+ + 4e- (2)
と、細胞膜の内側で起こる、
4e- +O2 + 4H+ = 2H2O (3)
との二つの半反応を含む(M. Nemati, S.T.L. Harrison, G.S. Hansford, C. Webb, Biochemical Engineering Journal, 1 (1998) 171-190を参照)。電子は、3つの電子伝達体、すなわちラスティシアニン(rusticyanin)、シトクロムc及びシトクロムaの連鎖によって細胞壁を通って伝達される。
【0012】
鉄−酸化細菌A.フェロオキシダンスは、無機栄養細菌である。すなわち、A.フェロオキシダンスは唯一の炭素源として、通常、大気中の二酸化炭素を利用する一方で、第一鉄酸化(1-3)などの無機反応がA.フェロオキシダンスにエネルギーを供給する。実験室規模、パイロット規模及び工業規模のA.フェロオキシダンスによる鉄酸化が、様々なタイプのバイオリアクターで研究されてきた。第一鉄イオン上で増殖させたA.フェロオキシダンスを含むバイオリアクターにおける通常の培養条件下で、酸化還元電位は1000mVの値に達し得る(M. Boon, K.C.A.M. Luyben, J.J. Heijnen, Hydrometallurgy, 48 (1998) 1-26を参照)。反応(3)の電位は、標準水素電極に対して1120mVであり、反応エネルギーの約90%までがFe3+の生成に使用される一方で、残り(〜10%)は微生物によってバイオマスの生成及び維持のために利用される。
【0013】
A.フェロオキシダンスによる第一鉄の生物酸化は、いくつかの異なる目的のために電気化学電池で使用されてきた。このような事例の全てにおいて、カソードの表面で生じる電気化学反応は、
Fe3+ + e- = Fe2+ (4)
である。
【0014】
いくつかの異なる対向電極(アノード)反応が記載されている:
(A) 下記反応による酸素生成:
2H2O = 4e- + O2 + 4H+ (5a)
この場合、一方の電極上で第二鉄を還元し、他方で酸素を生成させるために外部電位を印加する必要がある。この系は、微生物の基質(第一鉄)の連続再生に使用され、非常に高い細胞収量(cell yields)の産生が生じる(N. Matsumoto, S. Nakasono, N. Ohmura, H. Saiki, Biotechnology and Bioengineering, 64 (1999) 716-721; and S.B. Yunker, J.M. Radovich, Biotechnology and Bioengineering, 28 (1986) 1867-1875)。
【0015】
(B) 第二鉄イオンの酸化
Fe2+ = Fe3+ + e- (5b)
このタイプの電気バイオリアクターは、電流値を測定することによって微生物の第一鉄酸化速度を決定するために使用されている(H.P. Bennetto, D.K. Ewart, A.M. Nobar, I. Sanderson, Charge Field Eff. Biosyst.--2, [Proc. Int. Symp.], (1989) 339-349; and K. Kobayashi, K. Ibi, T. Sawada, Bioelectrochemistry and Bioenergetics, 39 (1996) 83-88を参照)。
【0016】
(C) メタノールなどの有機化合物の酸化
CH3OH + H2O = CO2 + 6H+ +6e- (5c)
この系は、水中の汚染物質(メタノール)の電気化学分解に使用されている(A. Lopez-Lopez, E. Exposito, J. Anton, F. Rodriguez-Valera, A. Aldaz, Biotechnology and Bioengineering, 63 (1999) 79-86)。
【0017】
第二鉄イオンから第一鉄イオンへのカソード還元をベースとしており、第一鉄酸化による第二鉄イオンの微生物再生と組み合わされている、発電のための燃料電池を記載している文献データは見出されていない。A.フェロオキシダンスによる第一鉄酸化のエネルギー論の上記解析から、微生物酸素還元のギブスエネルギーの90%までが鉄の酸化、すなわち発電に使用され得る一方で、残りが微生物によって新規細胞バイオマスの維持及び生成のために消費されるということが分かる。また、A.フェロオキシダンスの増殖は、一定条件下で鉄酸化から切り離され得る、すなわち、これらの微生物はゼロ増殖条件下で第一鉄を酸化することができる、ということも分かっている(M. Nemati, S.T.L. Harrison, G.S. Hansford, C. Webb, Biochemical Engineering Journal, 1 (1998) 171-190)。
【0018】
主に人為的な二酸化炭素放出により引き起こされる地球温暖化は、現在人類が直面している重要な問題の一つであると認識されている。現在、大気への二酸化炭素放出を低減するための最も期待できる方法は、化石燃料エコノミーから水素エコノミーへの移行であると考えられている(J.O.M. Bockris, International Journal of Hydrogen Energy, 27 (2002) 731-740)。
【発明の開示】
【0019】
現在知られている酸素/水素燃料電池は、燃料として水素を用いる場合、二酸化炭素を発生しない。しかしながら、非常に高い効率をもたらし、しかもその運転中に大気中のCO2を消費する、アシドチオバチルス・フェロオキシダンスなどの化学合成無機栄養微生物に基づいたバイオ燃料電池を提供することはさらに有利である。
【0020】
発明の概要
本発明の目的は、酸化剤再生のための効率的な方法を備え、CO2を消費するレドックス燃料電池を提供することである。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、カソードで第二鉄イオンを第一鉄イオンに還元することをベースとし、第一鉄イオンの酸化による第二鉄イオンの微生物再生と、アノードでの燃料(水素など)の酸化と組み合わせたバイオ燃料電池を提供する。第二鉄イオンの微生物再生は、アシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)などの化学合成無機栄養微生物によって行われる。
【0022】
本発明の一態様では、
a) カソード電極を含むカソード区画、及び
アノード電極を含むアノード区画
を含む燃料電池を備え、
前記カソード区画内には第二鉄イオン(Fe3+)を含有する水溶液が循環され、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、水素の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記プロトン交換膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり;且つ
b) 化学合成無機栄養微生物を含むバイオリアクターと、酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体を該バイオリアクター内に送り込むためのポンプとを備え、
前記バイオリアクターは、前記カソード区画と、第一鉄イオン(Fe2+)及びプロトン(H+)を含有する水溶液が該カソード区画から該バイオリアクターに循環するように流体連通しており、このバイオリアクターにおいて、第一鉄イオン(Fe2+)は、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表される好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られ、
さらに第二鉄イオン(Fe3+)を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備える、
バイオ燃料電池システムを提供する。
【0023】
プロトン透過膜はプロトン交換膜であり得る。
【0024】
本発明の別の態様では、
a) カソード電極を含むカソード区画と、該カソード区画内に酸素及び二酸化炭素を含有する流体を送り込むためのポンプとを備え;
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり;且つ
c) 前記カソード電極上に固定化された化学合成無機栄養微生物と、微生物細胞の適切な湿度を維持するために前記化学合成無機栄養微生物を覆う、実質的に鉄を含まない水溶液とを備え、
前記カソード電極での反応は、O2 + 4H+ + 4e- = 2H2O で表される反応におけるカソード電極での酸素の生物還元であり、該反応における電子は、カソード電極から付着微生物細胞への移動によって得られ、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システムを提供する。
【0025】
本発明の別の態様では、
a) カソード電極を含むカソード区画を含む燃料電池を備え、
前記カソード電極は、酸化還元対(Fe2+/Fe3+)を含有するFe-コポリマーを含み、該Fe-コポリマー上には化学合成無機栄養微生物が固定化されており、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
さらに、酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備え;且つ
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり、且つ第一鉄イオンは、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表されるカソード区画内での好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システムを提供する。
【0026】
バイオリアクター及びカソード区画は、化学合成無機栄養微生物の増殖を促進するための溶存栄養素を含んでいてもよい。
【0027】
本発明はまた、
a) カソード電極を含むカソード区画を備え、
前記カソード上には化学合成無機栄養微生物が鉄の塩を含有する水溶液と接触して固定化されており、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
さらに、酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備え;且つ
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり、且つ第一鉄イオン(Fe2+)は、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表されるカソード区画内での好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システムを提供する。
【0028】
本発明の別の態様では、
a) 酸素及び二酸化炭素を含有する流体を、燃料電池のカソード区画内にポンプで送り込む工程であって、前記カソード区画がカソード電極を含み、その中には酸化還元対が存在しており、前記カソード電極での反応が、前記酸化還元対の第1メンバーから、より酸化状態の低い酸化還元対の第2メンバーへの還元である工程;
b) 水素構成成分を有する燃料を、前記燃料電池のアノード電極を含むアノード区画内にポンプで送り込む工程であって、前記アノード区画がプロトン交換膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)が前記プロトン交換膜を横切って前記カソード区画内に入る工程;及び
c) より酸化状態の低い酸化還元対の第2メンバーを、酸素の存在下で化学合成無機栄養微生物によって酸化して、より高い酸化状態に戻す工程
を含んでなり、
電気負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより前記電気負荷内に電力を得ることを特徴とする、
発電方法を提供する。
【0029】
バイオ燃料電池システムは、二酸化炭素(CO2)及び酸素を、化学合成無機栄養微生物を含むチャンバー内にポンプで送り込むことによってバイオマスの生成に使用することができる。したがって、酸素及び二酸化炭素は両方とも、空気を装置内にポンプで送り込むことによって燃料電池内に送り込むことができる。
【0030】
発電量とバイオマス生成量との割合の制御は、カソード電極の電位を含む微生物培養パラメーターを変えることによって、又はFe2+/Fe3+の濃度の割合を変えることによって、又はその双方の組み合わせによって行うことができる。
【0031】
化学合成無機栄養微生物は、アシドチオバチルス・フェロオキシダンスであり得る。
【0032】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明により構成されたバイオ燃料電池を説明するが、これは単なる例示にすぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明にしたがって構成されたバイオ燃料電池の好ましい実施形態は、燃料電池内の酸化剤(第二鉄イオン)の再生のために第一鉄イオンを微生物酸化することに基礎をおく。この場合、第二鉄はアシドチオバチルス・フェロオキシダンス(A.フェロオキシダンス)によって上記反応(1)にしたがって再生される。図1を参照すると、全体を10で示すバイオ燃料電池−バイオリアクターシステムは、燃料電池部分12を備え、この燃料電池部分12は、カソード区画14と、膜18(例えばNafion プロトン交換膜など)によって分離されたアノード区画16とを含む。アノード20は、白金炭素フェルトであってよく、一方カソード22は、炭素フェルトの層、又は多孔質であるかさもなければ高表面積を有するその他の不活性な材料の層であってよい。膜は、好ましくはプロトン交換膜(PEM)であるが、その他のタイプの膜を使用して、カソードチャンバー内の液体をアノードスペース内のガス(例えば水素燃料)から物理的に分離してもよい。例えば、膜は、必ずしもプロトン交換膜である必要はないが、アノードスペースとカソードスペースを単に物理的に分離する、非常に細かい孔(マイクロメートル未満)を有する不活性な膜(プラスチック又は無機材料)であってもよい。非限定的な例として、0.2マイクロメートル未満の孔サイズを有するニトロセルロース膜、透析膜、逆浸透膜が挙げられる。
【0034】
カソード電極は、化学的に不活性な導電性材料、例えば炭素、ニッケル及びステンレス鋼から製造される。当然のことながら、カソードは触媒を含んでいてもよい。触媒は、微量の金、白金、鉛、パラジウム又はその他の当業者に知られた触媒を含む、いくつかの触媒の1種であり得る。
【0035】
バイオリアクター26は、燃料電池部分12と流体連通している。使用可能な好適なバイオリアクター26は、エアリフトシステムと繊維性固定化微生物細胞支持体とを組み合わせたデザインを開示しているD.G. Karamanev, C. Chavarie, R. Samson, Biotechnology and Bioengineering, 57 (1998) 471-476に開示されている。いくつかの実施形態では、D.G. Karamanev, L.N. Nikolov, Environmental Progress, 15 (1996) 194-196に開示されているような逆流動層バイオフィルムリアクターを使用してもよい。
【0036】
バイオリアクター26は、第一鉄イオンから第二鉄イオンへの高効率酸化、すなわち酸化剤再生に使用される。定義によれば、バイオリアクターは、微生物が増殖し、生化学反応(本発明では第一鉄の酸化)が行われる容器である。本発明のバイオ燃料電池の効率を示すための試験において、バイオリアクター26を、銅山から分離されたA.フェロオキシダンス(10%v/v)とともにインキュベートした。培地は、0.4Mの第一鉄イオンを硫酸塩として含み、pH1.8のSilverman及びLundgrenの栄養塩類組成物を含有する水溶液であった。酸素及びCO2双方の供給源として、空気を200L/hの流量でバイオリアクター26内に吹き込んだ。A.フェロオキシダンスの細胞が繊維性支持体の表面上に自然に固定化した後に、バイオリアクター1リットル・1時間当たり1.2gの速度の第一鉄イオンの酸化が観察された。バイオリアクター培地内の第一鉄イオンの99%が酸化されたら、後者をペリスタルティックポンプを用いて燃料電池10のカソード区画14に90mL/hの流量で流通させた。アノード区画16に、ペリスタルティックポンプ(Cole-Parmer)を用いて水素を0.3mL/sの速度にて供給した。
【0037】
微生物と接触している液体(鉄を含む又は含まない、バイオリアクター内又はカソード区画内の、キャピラリー(capillary)又はバルク(bulk))は全て、微生物増殖を促進するために、1種又は複数種の溶存栄養塩類も含むべきである。好ましい栄養塩類としては、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸が挙げられる。これらの塩の典型的な組成物は、Silverman及びLundgren(J. of Bacteriology, v.77, p.642 (1959))によって示されている。
【0038】
アノードでの水素の酸化反応:
2H2 = 4H+ +4e- (6)
は、カソードでの第二鉄イオンの還元:
4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ (7)
と対になる。反応(6)で生成したプロトン(H+)は、プロトン導電性固体電解質18を横切ってカソード区画14内に入る。カソードで生成した第一鉄イオン(Fe2+)は、プロトンとともにバイオリアクターにポンプで送り込まれ、そこで反応(1)にしたがって微生物により第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その後、次の発電サイクルのために燃料電池のカソード区画14に戻される。バイオ燃料電池10で生じている反応全体(化学反応+生化学反応)は、反応1、6及び7をまとめることによって得られ、
2H2 + O2 = 2H2O (8)
で表される。
【0039】
したがって、バイオ燃料電池10の反応全体は、水素−酸素燃料電池のものと同じである。微生物と鉄イオンは単に生体触媒として作用するものであり、カソード反応の速度を大きく増大させる。発電に使用されるエネルギーの量と微生物増殖に使用されるエネルギーの量の割合は、バイオリアクター流出液(effluent)中の第二鉄と第一鉄の濃度の割合のような培養条件を変えることによって容易に制御できる。微生物増殖を第一鉄酸化から切り離すことにより、この割合を無限大にすることさえ可能である。その場合、CO2は消費されず、バイオマスも生成されない。
【0040】
したがって、理想的な条件下(電池内でのエネルギー損失無し)では、反応(8)のギブスの自由エネルギーの最大90%までが発電に使用される一方で、残り10%が微生物によってCO2固定化によるバイオマス生成と、細胞維持のために使用される。上記のように、水素及び酸素上で機能し、両電極で触媒として白金を使用する現在の燃料電池は、約50%の電流効率(current efficiency)である。残りは熱として放出され、利用が困難な場合が多い。前述の燃料及び酸化剤を用いることにより、新規バイオ燃料電池が電気及び微生物マスを生成する。
【0041】
炭素電極におけるカソード反応(7)は白金電極における酸素還元よりもかなり速く、しかもこの酸素還元速度は現在使用されている燃料電池の限定要因であるので、本明細書に開示されている燃料電池は、1)電流効率の増大;2)カソードにおけるPtの使用の排除;3)大気からの二酸化炭素の除去;及び4)非常に有用である可能性がある生成物、単細胞タンパク質(single-cell protein)の産生、のおかげで、燃料電池運転の経済的効果及び環境的効果の両方を劇的に改善する。
【0042】
A.フェロオキシダンスが44%のタンパク質、26%の脂質、15%の炭水化物及び少なくとも2種のビタミンBを含むことは既に示されている(Tributsch, H, Nature, 281, 555 (1979)を参照)。このタイプのバイオマスの生理学的な負の作用は知られていない(Tributsch, H, Nature, 281, 555 (1979))が、明らかに、この方向でのさらなる研究が必要である。
【0043】
バイオ燃料電池10を特性決定するための試験を行った。これら全てに関し、標準水素電極(SHE)に対する電位を示す。電位はOrion pH-mVメーターを用いて測定した。
【0044】
固定化A.フェロオキシダンスを含むバイオリアクターを使用してバッチ法(batch regime)で第一鉄イオンを酸化した。第一鉄の酸化変換率が約99%に達したら、液相をバイオリアクター26から燃料電池のカソード区画14にポンプで送り込んだ。カソード電位と電流密度の関係を図2に示す。全鉄濃度は0.4Mであり、pHは1.8であった。カソード電位がいくぶん下がっているが、電流密度35mA/cm2で150mVであることが確認できる。この電位の降下は、白金上での電気化学的酸素還元についての文献に報告されているものと同様であり、その報告されているものよりも小さい場合もある。
【0045】
カソード区画内の液体の流量の効果も試験した。流量を、0〜4.2mL/sで変動させた。二つの異なる電気負荷(electrical load)、0オームと5オームを使用した。電気負荷がない場合(0オーム)の結果を図3に示す。610mVから661mVへの電池電位の小さな上昇(すなわち9%未満)のみがあることが分かる。電位の上昇は全てカソードによるものであり、予想したアノード電位における酸化剤流量の効果は観察されなかった(図3)。理論的には、この流量はゼロ負荷では電池電位に影響しないはずである。観察された小さな変動(9%)は、ほとんど横流(cross-current)によるものであると考えられる。燃料電池電圧における酸化剤流量の効果も負荷5オームで試験した。結果(図4)から、この効果が負荷0オームの場合よりも顕著であることが分かる。流量を0.5mL/sから3.4mL/sに増大させた場合、電池の総電圧は最初に急に上昇し、その後安定した。全上昇率は30%であった。これらの結果から、2mL/s未満の低流量でいくぶん酸化剤の物質移動の制限があったことが分かる。この値よりも高い流量では、物質移動の制限は観察されなかった。
【0046】
数時間の運転中、バイオ燃料電池の安定性も試験した。電圧−電流特性は、3.5時間の間にわたりそれほど変化しなかったことが分かった(図5)。
【0047】
有利なことに、発電に加えて、図1に示された燃料電池は、CO2を細胞バイオマスに転換するという点で独特である。したがって、燃料電池は、その運転中に大気のCO2を消費して微生物マスを生成し、この微生物マスは単細胞タンパク質(SCP)として使用可能である。A.フェロオキシダンスが44%のタンパク質、26%の脂質、15%の炭水化物及び少なくとも2種のビタミンBを含むことは既に示されており(Tributsch, H, Nature, 281, 555 (1979)を参照)、動物の優れた飼料となる可能性がある。Tributschが論じているように、このタイプのバイオマスの生理学的な負の作用は知られていない。生成された単細胞タンパク質は毒性化学物質及び病原体の両方を実質的に含んでいないことに注目すべきである。本発明のSCP技術においては、毒性化学物質は、メタノールを基質として使用した場合に見出されうる(Ravindra, A. P., Biotech. Adv., 18, 459 (2000)を参照)。微生物混入(毒性がある場合がある)は、本発明者らの技術で排除される。なぜなら、pH1〜2で高濃度の硫酸鉄を含む完全に無機的な培地上で増殖する病原性微生物は知られていないからである。微生物混入は、Ravindra, A. P., Biotech. Adv., 18, 459 (2000) で論じられているように、現在のSCP生成方法の多くで問題となっている。
【0048】
図1のバイオ燃料電池システムは、水素、酸素及び二酸化炭素のストリームを必要とする。電気生化学反応の結果、バイオ燃料電池は電気エネルギー、熱、水(水蒸気として)及び微生物細胞マスを生成する。水素は、燃料電池のアノード区画に注入され、一方バイオリアクター中では酸素とCO2が消費され、水及びバイオマスが生成される。工業的な第一鉄酸化バイオリアクターでは、酸素及び二酸化炭素は大気から供給される。
【0049】
バイオ燃料電池は、物質収支、化学量論及び速度論に基づいて計算された、下記の特性を有する:電気エネルギー100kW生成中、4kg/hのH2と4kg/hのCO2が消費され;9kg/hのバイオマス(SCP)が生成され、10m3のバイオリアクターが好ましい。本発明のバイオ燃料電池の、現在知られているタイプの燃料電池に対する主な利点は、1)高効率(それぞれ80〜90%対50%);貴金属カソードが不要であることであり、バイオ燃料電池の独特の特徴は、その運転中に二酸化炭素を消費し、非常に有用である可能性がある生成物、単細胞タンパク質(SCP)を生成することである。
【0050】
全化学反応2H2 + O2 = 2H2O によって放出されるエネルギーは、3つの生成物の生成、すなわち電気発生、単細胞タンパク質(SCP)バイオマス生成及び熱発生に使用される。発電量とSCPの生成量の割合が0から無限大までの間、すなわち「バイオマスのみが生成し電気は発生しない」から「バイオマスは生成せず電気のみが発生する」までの間の任意の値に設定さるような様式で燃料電池を運転することが可能である。SCP生成に必要な電子は、反応2H2 + O2 = 2H2O に由来するか、又は電流から直接(微生物はカソードの電子を消費)もたらされる。SCP/電気の割合は、カソードの電位を変えるか、又はFe2+/Fe3+の濃度の割合のような培養条件を変えることによって制御可能である。
【0051】
図1に示されたバイオ燃料電池10の実施形態では、第一鉄の酸化は外部バイオリアクターで行われ、還元形態の鉄(第一鉄イオン)はポンプで送られてバイオリアクターに戻される。代替の実施形態では、バイオリアクター及びカソード区画は一つのユニットとして一緒に組み込まれていてもよい。微生物はカソード(炭素繊維など)の表面上に固定化される。微生物は、鉄塩(例えば、いくつか例を列挙すると、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄及びそれらの錯体)を含有するキャピラリー溶液に取り囲まれている。酸素及び二酸化炭素を含有するガス(空気)がポンプでカソード区画の空間に送り込まれる。空気は液体中に溶解しているので、微生物に酸素及び二酸化炭素を供給する。このバージョンのバイオ燃料電池の図式を図6aに示す。
【0052】
図6bは、図6aの実施形態の変形を示すものであり、微生物がカソードに付着されており、カソードチャンバーは鉄塩を含有する水溶液で満たされており、この水溶液はカソードチャンバーと容器との間を循環しており、その容器において、O2及びCO2をガス(空気)バブリング又は液体スプレーのようなその他の手段によって水溶液に溶解させる。
【0053】
図7aに示されている別の実施形態において、酸化還元対(Fe2+/Fe3+)は固体形態である。微生物は、カソードの表面を被覆しているレドックスポリマーなどの不溶性の電子交換体の表面上に固定化されている。非限定的な例として、A. Aoki and T. Miyashita, J. Electroanal. Chem., 473, 125-131 (1999) に使用可能なFe-コポリマーが開示されている。
【0054】
図7bは、図7aの実施形態の変形を示すものであり、この場合も微生物は、カソードの表面を被覆しているレドックスポリマーなどの不溶性の電子交換体の表面上に固定化されており、水溶液はカソードチャンバーと容器との間を循環しており、その容器において、O2及びCO2をガス(空気)バブリング又は液体スプレーのようなその他の手段によって水溶液に溶解させる。
【0055】
図8aに示されているバイオ燃料電池の別の実施形態では、微生物細胞はカソードの表面上に直接付着されており、酸化還元対は存在しない。細胞はカソードから直接電子を引き出す。微生物細胞の湿度は、Silverman, M.P. and D. G. Lundgren, J. Bacteriol., 77, 642 (1959) に開示されているように、鉄塩を含まない無機塩溶液のキャピラリー層によって維持される。
【0056】
図8bは、図7aの実施形態の変形を示すものであり、この場合も微生物は、カソードの表面上に直接固定化されており、水溶液はカソードチャンバーと容器との間を循環しており、その容器において、O2及びCO2をガス(空気)バブリング又は液体スプレーのようなその他の手段によって水溶液に溶解させる。微生物がカソード上に固定化されている場合、微生物の固定化を促進する不活性物質を加える必要がある。例えば、いくつか列挙すると、二酸化ケイ素の粉末又はゲル;酸化アルミニウム;水不溶性シリケート;硫酸カルシウムである。
【0057】
当然のことながら、本発明は、気体状の水素燃料を用いる気体状水素/酸素燃料電池だけに限定されず、電気化学的酸化を受けうるその他の水素含有燃料、例えばいくつか列挙すると、メタノール、エタノール、メタンなどを使用し得る。例えば、メタノール燃料の場合のアノード反応は、
CH3OH + H2O = CO2 + 6H+ + 6e-
である。
【0058】
この場合もまた、水素イオンは膜を横切り、燃料電池の残りの部分並びにバイオ燃料電池システムは、気体状H2燃料を用いるバイオ燃料電池の場合と同じである。
【0059】
燃料としてメタンを用いた場合のアノード反応は、
CH4 + O2 = CO2 + 4H+ + 4e-
である。
【0060】
燃料としてエタノールを用いた場合のアノード反応は、
C2H5OH + 3H2O = 2CO2 + 12H+ + 12e-
である。
【0061】
よって、バイオ燃料電池の代替の実施形態では、燃料は水素構成成分(水素ガスの場合には唯一の構成成分であり、化合物の場合にはいくつかの構成成分のうちの一つ)を有する化合物であってよく、燃料の電気化学的酸化によって水素の酸化の場合と同様にプロトン及び電子が生成するが、同様にその他の生成物を含んでもよく、燃料は、流体(これは気体又は液体の形態であってよい)としてアノード区画内にポンプで送り込まれる。
【0062】
さらに、本明細書に開示されたバイオ燃料電池で使用する好ましい化学合成無機栄養微生物はアシドチオバチルス・フェロオキシダンスであるが、当然のことながら、その他の微生物が使用可能であり、例えばいくつか列挙すると、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)がある。これらの微生物は、アシドチオバチルス・フェロオキシダンスと実質的に同じように機能する。同様に機能するその他の微生物は当業者に知られており、本発明で有用であると考えられる。
【0063】
本明細書において、「含む」、「含んでいる」、「含有する」及び「含有している」という用語は、包括的且つ制限のないものであると解釈すべきであり、排他的ではない。特に、本明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、用語「含む」、「含んでいる」、「含有する」及び「含有している」並びにその変形は、特定の特徴、工程又は構成成分が含まれることを意味する。これらの用語が、その他の特徴、工程又は構成成分の存在を排除するものと解釈してはならない。
【0064】
本発明の好ましい実施形態の上記説明は、本発明の原理を例証するために提示したものであり、本発明は、例証した特定の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に包含される実施形態の全て及びその等価物によって規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明にしたがって構成されたバイオ燃料電池を図で表示したものである。
【図2】図1の燃料電池を用いて得られた、カソード電位対電流密度のグラフである。
【図3】図1の燃料電池の、カソード電位対カソード区画内への酸化剤流量のグラフである。
【図4】図1の燃料電池の、燃料電池電位対カソード区画内への酸化剤流量のグラフである。
【図5】図1の燃料電池の、カソード電位対運転時間のグラフである。
【図6a】本発明にしたがって構成されたバイオ燃料電池の別の実施形態を示す図である。
【図6b】図6aのバイオ燃料電池の別の実施形態を示す図である。
【図7a】バイオ燃料電池のさらに別の実施形態を示す図である。
【図7b】図7aのバイオ燃料電池の別の実施形態を示す図である。
【図8a】バイオ燃料電池のさらに別の実施形態を示す図である。
【図8b】図8aのバイオ燃料電池の別の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) カソード電極を含むカソード区画、及び
アノード電極を含むアノード区画
を含む燃料電池を備え、
前記カソード区画内には第二鉄イオン(Fe3+)を含有する水溶液が循環され、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、水素の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記プロトン交換膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり;且つ
b) 化学合成無機栄養微生物を含むバイオリアクターと、酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体を該バイオリアクター内に送り込むためのポンプとを備え、
前記バイオリアクターは、前記カソード区画と、第一鉄イオン(Fe2+)及びプロトン(H+)を含有する水溶液が該カソード区画から該バイオリアクターに循環するように流体連通しており、このバイオリアクターにおいて、第一鉄イオン(Fe2+)は、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表される好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られ、
さらに第二鉄イオン(Fe3+)を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備える、
バイオ燃料電池システム。
【請求項2】
プロトン透過膜がプロトン交換膜である、請求項1に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項3】
プロトン透過膜が、直径約10マイクロメートル以下の貫通孔を有する実質的に不活性な材料から製造されている、請求項1に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項4】
バイオリアクター及びカソード区画が、化学合成無機栄養微生物の増殖を促進するための溶存栄養素を含んでいる、請求項1、2又は3に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項5】
溶存栄養素が、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム及び硫酸のうちの1種又は複数種である、請求項4に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項6】
水素構成成分を有する燃料が、水素ガス、メタノール、メタン及びエタノールからなる群から選択される、請求項1、2、3、4又は5に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項7】
水素構成成分を有する燃料が水素ガス(H2)であり、電気化学的酸化反応が、2H2 = 4H+ + 4e- で表される反応におけるアノード電極での水素の酸化であり、その結果バイオ燃料電池反応の全体が2H2 + O2 = 2H2O で表される、請求項1、2、3、4又は5に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項8】
化学合成無機栄養微生物がアシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)である、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項9】
化学合成無機栄養微生物が、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)からなる群から選択される、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項10】
カソード電極が、化学的に不活性な導電性材料から製造されている、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項11】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される多孔質材料の層を含む、請求項10に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項12】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される材料の固体板を含む、請求項10に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項13】
カソード電極が触媒を含む、請求項10、11又は12に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項14】
触媒が、金、白金、パラジウム及び鉛のうちの1種である、請求項13に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項15】
バイオリアクターが、カソード区画と流体連通しており且つ化学合成無機栄養微生物を封入している容器であり、第二鉄イオン(Fe3+)を含有する水溶液が、前記カソード区画内に循環される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14に記載のバイオ燃料電池システムであって、カソード区画で生成された第二鉄イオン(Fe3+)及びプロトン(H+)を含有する水溶液を、カソード区画とバイオリアクターとの間を循環させるためのポンプを備え、該バイオリアクターで、第一鉄イオン(Fe2+)は化学合成無機栄養微生物によって前記好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、第二鉄イオンは再循環されてカソード区画に戻される、バイオ燃料電池システム。
【請求項16】
前記バイオリアクター内にポンプで送り込まれる酸素(O2)含有流体が、バイオマス生成用の二酸化炭素(CO2)を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項17】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するためにカソード電極に電圧を印加して制御するための電圧制御手段を備える、請求項16に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項18】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するためにFe2+/Fe3+の濃度の割合を制御するための試薬制御手段を備える、請求項16に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項19】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するために溶存栄養素の濃度を制御するための試薬制御手段を備える、請求項4に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項20】
a) カソード電極を含むカソード区画と、該カソード区画内に酸素及び二酸化炭素を含有する流体を送り込むためのポンプとを備え;
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり;且つ
c) 前記カソード電極上に固定化された化学合成無機栄養微生物と、微生物細胞の適切な湿度を維持するために前記化学合成無機栄養微生物を覆う、実質的に鉄を含まない水溶液とを備え、
前記カソード電極での反応は、O2 + 4H+ + 4e- = 2H2O で表される反応におけるカソード電極での酸素の生物還元であり、該反応における電子は、カソード電極から付着微生物細胞への移動によって得られ、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システム。
【請求項21】
化学合成無機栄養微生物が、微生物固定化を促進する実質的に化学的に不活性な材料を含む前記カソード電極上に固定化されている、請求項20に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項22】
化学的に不活性な材料が、二酸化ケイ素の粉末又はゲル、酸化アルミニウム(アルミナ)及び硫酸カルシウムのうちの1種である、請求項21に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項23】
化学合成無機栄養微生物と接触している水溶液が、化学合成無機栄養微生物及びカソードを覆うキャピラリー層であり、カソード区画にポンプで送り込まれる酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体が、空気のような酸素含有ガスである、請求項20、21又は22に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項24】
カソード区画にポンプで送り込まれる酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体が、酸素(O2)及び二酸化炭素が溶解している水溶液である、請求項20、21、22又は23に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項25】
プロトン透過膜がプロトン交換膜である、請求項20、21、22、23又は24に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項26】
プロトン透過膜が、直径約10マイクロメートル以下の貫通孔を有する実質的に不活性な材料から製造されている、請求項20、21、22、23又は24に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項27】
バイオリアクター及びカソード区画が、化学合成無機栄養微生物の増殖を促進するための溶存栄養素を含んでいる、請求項20、21、22、23、24、25又は26に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項28】
前記溶存栄養素が、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム及び硫酸のうちの1種又は複数種である、請求項20、21、22、23、24、25、26又は27に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項29】
水素構成成分を有する燃料が、水素ガス、メタノール、メタン及びエタノールからなる群から選択される、請求項20、21、22、23、24、25、26、27又は28に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項30】
水素構成成分を有する燃料が水素ガス(H2)であり、電気化学的酸化反応が、2H2 = 4H+ + 4e- で表される反応におけるアノード電極での水素の酸化であり、その結果バイオ燃料電池反応の全体が2H2 + O2 = 2H2O で表される、請求項20、21、22、23、24、25、26、27又は28に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項31】
化学合成無機栄養微生物がアシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)である、請求項20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項32】
化学合成無機栄養微生物が、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)からなる群から選択される、請求項20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項33】
カソード電極が、化学的に不活性な導電性材料から製造されている、請求項20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31又は32に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項34】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される材料の繊維層を含む、請求項33に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項35】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される材料の固体板を含む、請求項33に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項36】
a) カソード電極を含むカソード区画を含む燃料電池を備え、
前記カソード電極は、酸化還元対(Fe2+/Fe3+)を含有するFe-コポリマーを含み、該Fe-コポリマー上には化学合成無機栄養微生物が固定化されており、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
さらに、酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備え;且つ
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり、且つ第一鉄イオンは、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表されるカソード区画内での好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システム。
【請求項37】
バイオリアクター及びカソード区画が、化学合成無機栄養微生物の増殖を促進するための溶存栄養素を含んでいる、請求項36に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項38】
溶存栄養素が、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム及び硫酸のうちの1種又は複数種である、請求項37に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項39】
プロトン透過膜がプロトン交換膜である、請求項36、37又は38に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項40】
プロトン透過膜が、直径約10マイクロメートル以下の貫通孔を有する実質的に不活性な材料から製造されている、請求項36、37又は38に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項41】
酸素を含有する流体が気体状である、請求項36、37、38、39又は40に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項42】
カソード区画にポンプで送り込まれる酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)を含有する流体が、酸素(O2)及び二酸化炭素(CO2)が溶解している水溶液である、請求項36、37、38、39、40又は41に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項43】
水素構成成分を有する燃料が、水素ガス、メタノール、メタン及びエタノールからなる群から選択される、請求項36、37、38、39、40又は41に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項44】
水素構成成分を有する燃料が水素ガス(H2)であり、電気化学的酸化反応が、2H2 = 4H+ + 4e- で表される反応におけるアノード電極での水素の酸化であり、その結果バイオ燃料電池反応の全体が2H2 + O2 = 2H2O で表される、請求項36、37、38、39、40又は41に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項45】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するためにカソード電極に電圧を印加して制御するための電圧制御手段を備える、請求項36、37、38、39、40、41、42、43又は44に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項46】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するためにFe2+/Fe3+の濃度の割合を制御するための試薬制御手段を備える、請求項36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項47】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するために溶存栄養素の濃度を制御するための試薬制御手段を備える、請求項37又は38に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項48】
化学合成無機栄養微生物がアシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)である、請求項36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46又は47に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項49】
化学合成無機栄養微生物が、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)からなる群から選択される、請求項36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46又は47に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項50】
カソード電極が、化学的に不活性な導電性材料から製造されている、請求項36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48又は49に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項51】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される多孔質材料の層を含む、請求項50に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項52】
カソード電極が、炭素、ニッケル及びステンレス鋼からなる群から選択される材料の固体板を含む、請求項50に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項53】
a) カソード電極を含むカソード区画を備え、
前記カソード上には化学合成無機栄養微生物が鉄の塩を含有する水溶液と接触して固定化されており、前記カソード電極での反応は、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、
さらに、酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体を前記カソード区画内に送り込むためのポンプを備え;且つ
b) アノード電極を含むアノード区画を備え、
前記アノード区画内には水素構成成分を有する燃料がポンプで送り込まれ、前記アノード区画はプロトン透過膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)は前記膜を横切って前記カソード区画内に入るものであり、且つ第一鉄イオン(Fe2+)は、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表されるカソード区画内での好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化され、その場合、負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより電力が得られる、
バイオ燃料電池システム。
【請求項54】
化学合成無機栄養微生物と接触している鉄の塩を含有する水溶液が、化学合成無機栄養微生物及びカソードを覆うキャピラリー層であり、カソード区画にポンプで送り込まれる酸素(O2)及び二酸化炭素を含有する流体が、酸素含有ガスである、請求項53に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項55】
カソード区画にポンプで送り込まれる酸素(O2)を含有する流体が、酸素(O2)及び二酸化炭素が溶解している、鉄の塩を含有する水溶液である、請求項53に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項56】
水素構成成分を有する燃料が、水素ガス、メタノール、メタン及びエタノールからなる群から選択される、請求項53、54又は55に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項57】
水素構成成分を有する燃料が水素ガスであり、電気化学的酸化反応が、2H2 = 4H+ + 4e- で表される反応におけるアノード電極での水素の酸化であり、その結果バイオ燃料電池反応の全体が2H2 + O2 = 2H2O で表される、請求項56に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項58】
微生物培養パラメーターを変えることによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御するためにカソード電極に電圧を印加して制御するための電圧制御手段を備える、請求項53、54、55、56又は57に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項59】
化学合成無機栄養微生物がアシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)である、請求項53、54、55、56、57又は58に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項60】
化学合成無機栄養微生物が、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)からなる群から選択される、請求項53、54、55、56、57又は58に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項61】
カソード電極が、化学的に不活性な導電性材料から製造されている、請求項52、53、54、55、56、57又は58に記載のバイオ燃料電池システム。
【請求項62】
a) 酸素及び二酸化炭素を含有する流体を、燃料電池のカソード区画内にポンプで送り込む工程であって、前記カソード区画がカソード電極を含み、その中には酸化還元対が存在しており、前記カソード電極での反応が、前記酸化還元対の第1メンバーから、より酸化状態の低い酸化還元対の第2メンバーへの還元である工程;
b) 水素構成成分を有する燃料を、前記燃料電池のアノード電極を含むアノード区画内にポンプで送り込む工程であって、前記アノード区画がプロトン交換膜によって前記カソード区画から分離されており、前記アノード電極での反応は、電子(e-)及びプロトン(H+)を生成させるための燃料の電気化学的酸化であり、その場合、燃料の酸化によって生成されたプロトン(H+)が前記プロトン交換膜を横切って前記カソード区画内に入る工程;及び
c) より酸化状態の低い酸化還元対の第2メンバーを、酸素の存在下で化学合成無機栄養微生物によって酸化して、より高い酸化状態に戻す工程、
を含んでなり、
電気負荷と前記アノード及びカソード電極との間を電気的に接続させることにより前記電気負荷内に電力を得ることを特徴とする、
発電方法。
【請求項63】
酸化還元対がFe2+/Fe3+であり、カソード電極での反応が、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、化学合成無機栄養微生物がバイオリアクター中に含まれており、該バイオリアクター内に酸素(O2)を含有する流体がポンプで送り込まれ、前記バイオリアクターは、前記カソード区画と、第一鉄イオン(Fe2+)及びプロトン(H+)を含有する水溶液が該カソード区画から該バイオリアクターに循環するように流体連通しており、このバイオリアクターにおいて、第一鉄イオン(Fe2+)は、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表される好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
酸化還元対がFe2+/Fe3+であり、カソード電極での反応が、4Fe3+ + 4e- = 4Fe2+ で表される反応におけるカソード電極での第二鉄イオンの還元であり、第一鉄イオン(Fe2+)が、化学合成無機栄養微生物によって、4Fe2+ + 4H+ + O2 = 4Fe3+ +2H2O で表される好気性酸化反応にて第二鉄イオン(Fe3+)に酸化されるように化学合成無機栄養微生物がカソード区画内に含まれている、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
化学合成無機栄養微生物が、アシドチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferroxidans)である、請求項62、63又は64に記載の方法。
【請求項66】
化学合成無機栄養微生物が、レプトスピリルム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、アシドミクロビウム(Acidimicrobium)、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)及びスルホバチルス(Sulfobacillus)からなる群から選択される、請求項62、63又は64に記載の方法。
【請求項67】
水素構成成分を有する燃料が、水素ガス、メタノール、メタン及びエタノールからなる群から選択される、請求項62、63、64、65又は66に記載の方法。
【請求項68】
水素構成成分を有する燃料が水素ガスであり、電気化学的酸化反応が、2H2 = 4H+ + 4e- で表される反応におけるアノード電極での水素の酸化であり、その結果バイオ燃料電池反応の全体が2H2 + O2 = 2H2O で表される、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
カソード電極の電位を含む微生物培養パラメーターを変えることによって、又はFe2+/Fe3+の濃度の割合を変えることによって、又はその双方の組み合わせによって発電量とバイオマス生成量との割合を制御する工程を含む、請求項62、63、64、65、66、67又は68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−505442(P2007−505442A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515610(P2006−515610)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000943
【国際公開番号】WO2005/001981
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(506002100)ザ ユニバーシティ オブ ウエスタン オンタリオ (1)
【Fターム(参考)】