説明

バイト工具

【課題】バイト工具において、切刃ブロックの寿命を長くする。
【解決手段】被固定部500と自由端部501とを有するバイト基台50と、自由端部501にロー剤で固定されダイヤモンドで形成された切刃ブロック51とから構成されるバイト工具5において、切刃ブロック51は、長辺510と短辺511とを有する直方体または多角柱形状に形成され、長辺方向の一方の端部がバイト基台50の自由端部501に固定され、長辺方向の他方の端部に形成された端面512がすくい面となって被加工物を旋削する切刃512aを構成する。切刃ブロック51の長辺方向の一方の端部がバイト基台50の自由端部501に固定され、当該長辺方向の他方の端部が切刃512aとなるように構成したため、切刃512aの磨耗により目立てを行うと切刃ブロック51が長辺方向に削られていくため、寿命を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種被加工物を旋削するバイト工具に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウェーハは、裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、分割予定ラインを切断することにより個々のデバイスに分割され、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
各デバイスの電極の上にバンプと呼ばれる高さ100μm前後の突起が形成されたウェーハについては、少なくともウェーハを個々のデバイスに分割する前に、本出願人によって開発され回転可能なバイト工具を備えた旋削手段を用い、バンプの上端部の高さが均一になるように旋削を行う(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−12105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、バイト工具を構成する切刃ブロックは、経時的に磨耗するため、時々目立てされるが、目立てのたびに切刃ブロックが削られて厚みが薄くなるため、比較的寿命が短いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題にかんがみなされてもので、バイト工具において、切刃ブロックの寿命を長くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を旋削するバイトを着脱自在に固定する固定部を備えた旋削手段と、を少なくとも備えた加工装置におけるバイト工具に関するもので、固定部に固定され被固定部と自由端部とを有するバイト基台と、自由端部にロー剤で固定されダイヤモンドで形成された切刃ブロックと、から構成され、切刃ブロックは、長辺と短辺とを有する直方体または多角柱形状に形成され、長辺方向の一方の端部がバイト基台の自由端部にロー剤で固定され、長辺方向の他方の端部に形成された端面がすくい面となって被加工物を旋削する切刃を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバイト工具では、切刃ブロックの長辺方向の一方の端部がバイト基台の自由端部に固定され、当該長辺方向の他方の端部が切刃となるように構成されているため、切刃の磨耗により目立てを行う場合の切刃ブロックが削られる方向が長辺方向となる。したがって、目立てをできる回数が多くなり、寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】加工装置の一例を示す一部拡大斜視図である。
【図2】バイト基台の一例を示す斜視図である。
【図3】バイト工具の第1の例を示す斜視図である。
【図4】バイト工具の第1の例を示す正面図である。
【図5】バイト工具の第2の例を示す斜視図である。
【図6】バイト工具の第2の例を示す正面図である。
【図7】被加工物の一例を示す平面図である。
【図8】被加工物を加工する状態を示す平面図である。
【図9】本発明のバイト工具における切刃の磨耗及び目立てにともなう切刃ブロックの形状の変化を示す説明図である。
【図10】従来のバイト工具における切刃の磨耗及び目立てにともなう切刃ブロックの形状の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す加工装置1は、被加工物を保持する保持手段2と、保持手段2に保持された被加工物に対して旋削加工を施す旋削手段3とを備えている。
【0011】
保持手段2は、基台20によって回転可能に支持されている。基台20の側部にはジャバラ21が連結されており、基台20は、ジャバラ21の伸縮をともなって水平方向(矢印X方向)に移動可能となっている。
【0012】
旋削手段3は、ハウジング30によって回転可能に支持された回転軸31の下端にホイール32が取り付けられ、ホイール32の下面側にバイト工具5が取り付けられて構成されている。
【0013】
旋削手段3には、バイト工具5をホイール32に対して着脱自在に固定する固定部33を備えている。固定部33は、ホイール32を貫通しバイト工具5を収容するための貫通孔330と、バイト工具5を固定するためのボルト331を備えている。
【0014】
旋削手段3は、送り手段4によって駆動されて鉛直方向に昇降する。送り手段4は、鉛直方向に延びるボールスクリュー40と、ボールスクリュー40と平行に配設されたガイドレール41と、ボールスクリュー40の一端に連結されたパルスモータ42と、ボールスクリュー40に螺合する不図示のナットを備えるとともに側部がガイドレール41に摺接する昇降部43と、昇降部43に取り付けられハウジング30を支持する支持部44とから構成されており、パルスモータ42がボールスクリュー40を回動させると、昇降部43がガイドレール41にガイドされて昇降し、これにともない支持部44に支持された旋削手段3も昇降する構成となっている。
【0015】
バイト工具5は、鉛直方向に延びるバイト基台50を備えている。図2に示すように、バイト基台50の上端部は、固定部33に固定される被固定部500となっており、下端部には、図3に示す切刃ブロック51が固定される自由端部501が形成されている。自由端部501は、四角錘台の上下を反転させ、下端側が先細となった形状に形成されている。
【0016】
図3及び図4に示すように、自由端部501には、ダイヤモンドで形成された切刃ブロック51がロー剤で固定されている。ロー剤は、例えば銀と銅とを主体としており、これにチタン、インジウムを混合させ600〜800℃で溶融させたものである。
【0017】
切刃ブロック51は、長辺510と短辺511とを有する直方体形状又は多角柱形状に形成されている。図3の例における切刃ブロック51は、断面が五角形で下端に山が形成された多角柱形状に形成されている。切刃ブロック51においては、長辺510がほぼ水平方向に向き、短辺511がほぼ鉛直方向に向いている。長辺510の長さは例えば3mm程度、短辺511の長さは例えば1〜1.5mm程度である。
【0018】
切刃ブロック51の長辺方向の一方の端部は、バイト基台50の自由端部501を構成する側面501aの下端部にロー剤で固定されている。一方、切刃ブロック51の長辺方向の他方の端部に形成された端面512がすくい面となり、その下端が被加工物を旋削する切刃512aを構成している。
【0019】
図5及び図6に示すバイト工具6は、本発明の他の実施形態を示したもので、バイト基台50と切刃ブロック51とから構成される点は図3及び図4に示したバイト工具5と同様であるが、バイト基台50に対する切刃ブロック51の取り付け方が異なっている。
【0020】
具体的には、図5及び図6に示すバイト工具6では、バイト基台50の自由端部501を構成する底面501bに、切刃ブロック51の長辺方向の上面513の一端がロー剤で固定されている。そして、切刃ブロック51の長辺方向の他方の端部に形成された端面512がすくい面となり、その下端が被加工物を旋削する切刃512aを構成している。
【0021】
図7に示すウェーハWは、図1に示した加工装置1を用いて加工する被加工物の一種である。このウェーハWの表面W1には、分割予定ラインLによって区画されてデバイスDが複数形成されている。ウェーハWの周縁部には、ウェーハWの結晶方位識別マークであるノッチNが形成されている。表面W1のデバイスDからはバンプBが突出形成されており、加工装置1においては、バンプBの上端部をバイト工具5によって旋削することにより、バンプBの高さを所定の高さに揃えることができる。
【0022】
図1に示した加工装置1では、保持手段2においてウェーハWの裏面W2側を保持し、表面W1を上方に向けて露出させた状態とする。そして、図3及び図4に示したバイト工具5の切刃512aの先端の高さを、バンプBの仕上げ高さに合わせ、ホイール32を例えば6000RPMの回転速度で回転させ、その状態で保持手段2を矢印X方向に2mm/秒の送り速度で移動させる。
【0023】
そうすると、複数のバンプBの頭部が次々と削られていき、図8に示すように、切刃512aの回転軌道に沿って表面W1に旋削痕Sが形成されながら、すべてのバンプBの高さが均一になる。旋削痕Sは、20μm間隔程度で形成される。
【0024】
このようにして旋削を行っていくと、切刃512aが磨耗していく。具体的には、旋削前は図9(a)に示す如く尖っていた切刃512aが、使用を重ねるにつれて図9(b)に示すように磨耗する。このようにして切刃512aが磨耗すると、そのままの状態で旋削を行うと、バンプBを所望の形状及び大きさに旋削することが困難となる。そこで、図9(c)に示すように、すくい面512’まで削って目立てを行い、尖鋭な切刃512a’を形成する。
【0025】
また、目立て後に旋削を行い、図9(d)に示す如く再び切刃512a’が磨耗すると、すくい面512’’まで削って目立てを行い、図9(e)に示すように、切刃512a’’を形成する。
【0026】
このように、切刃512aに磨耗が生じるたびに目立てを行い、何度も目立てを繰り返すため、長辺510が徐々に短くなっていく。しかし、切刃ブロック51は、長辺510が延びる方向に短くなっていくため、目立てをできる回数は多く、寿命は比較的長い。図5,6に示したバイト工具6についても同様である。
【0027】
一方、図10(a)に示す従来の切刃ブロック71は、その側面71aがバイト基台50の側面501aに固定され、鉛直方向の長辺710を含む端面712と水平方向の短辺711とを有し、端面712の下端に切刃712aが形成されている。図10(b)に示すように切刃712aが磨耗すると、図10(c)に示すように端面712を削って端面712’を形成して目立てを行い、切刃712a’を形成する。そして、図10(d)に示すように切り刃712a’が磨耗すると、さらに端面712’を端面712’’まで削って、切り刃712a’’を形成する。
【0028】
このように、切刃712aの目立てを繰り返すと、短辺711が徐々に短くなっていくとともに厚みが薄くなり折れてしまう。したがって、図9に示した例と比較すると、目立てをできる回数は少なく、寿命は短い。
【0029】
以上のように、本発明では、切刃ブロック51の長辺510がほぼ水平方向を向くようにバイト基台50に切刃ブロック51を取り付けたことにより、従来よりも寿命を長くすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1:加工装置
2:保持手段 20:基台 21:ジャバラ
3:旋削手段
30:ハウジング 31:回転軸 32:ホイール
33:固定部 330:貫通孔 331:ボルト
4:送り手段
40:ボールスクリュー 41:ガイドレール 42:パルスモータ
43:昇降部 44:支持部
5:バイト工具
50:バイト基台 500:被固定部 501:自由端部 501a:側面
51:切刃ブロック
510:長辺 511:短辺 512:端面(すくい面) 512a:切刃
6:バイト工具
501b:底面 513:上面
W:ウェーハ
W1:表面 L:分割予定ライン D:デバイス B:バンプ
W2:裏面
N:ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を旋削するバイトを着脱自在に固定する固定部を備えた旋削手段と、を少なくとも備えた加工装置におけるバイト工具であって、
該固定部に固定され被固定部と自由端部とを有するバイト基台と、該自由端部にロー剤で固定されダイヤモンドで形成された切刃ブロックと、から構成され、
該切刃ブロックは、長辺と短辺とを有する直方体または多角柱形状に形成され、該長辺方向の一方の端部が該バイト基台の自由端部にロー剤で固定され、該長辺方向の他方の端部に形成された端面がすくい面となって被加工物を旋削する切刃を構成する
バイト工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94875(P2013−94875A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238757(P2011−238757)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】