説明

バイパスケーブル用三線一括ドラムリール

【課題】3個のドラムが互いに干渉せず、独立して回転でき、なおかつ、同期しても回転でき、一人の作業者で操作できる、コンパクトな三線一括ドラムリールを提供する。
【解決手段】ドラム架台のシャフトに回転自在に中心孔を通すドラムリールにおいて、二つのフランジ1が外周を成す円形部材2と、夫々の中心位置に設けた筒状のボス3とを、当該ボス3から上記円形部材2に向けて放射状に設けた複数のステー4で連結して成り、これらのフランジ1の間の胴部には、各フランジ1のステー4の相応する箇所に両端を固定した棒材5を、上記ボス3を中心とした円周上に複数設けて、幅の狭いドラムリールとし、このドラムリールを3個横に並べて設け、これらの3個のドラムリールのステー4の相応する箇所にボルト孔を穿ち、これらのボルト孔に連結ボルト10を通してその先端で、3個のドラムリールを一体に連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架空配電線の無停電工法におけるバイパス工法に使用するバイパスケーブル用三線一括ドラムリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空配電線工事において、電力需要家の停電を避ける無停電工法には、活線工法とバイパス工法がある。需要家と工事箇所を活線のまま行なうのが活線工法、また、需要家には送電し、工事箇所を停電して行なう方法がバイパス工法である。バイパス工法は、バイパスケーブル、工事用開閉器、工事用変圧器などの機材を組み合わせてバイパス線路を構築するもので、機材の取り扱いの利便性が作業安全や作業効率に大きく影響する。
【0003】
バイパスケーブルの架線は、3個(3相)のバイパスケーブル用ドラムを地上に設置し、事前に架線したワイヤーに沿ってウインチで引込む作業である。このバイパスケーブル用ドラムは、3相別々の各ドラムを用いて、作業者が夫々操作して当該ドラムに巻き付けたバイパスケーブルを繰り出したり、また、当該ドラムにバイパスケーブルを巻き付けたりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来のバイパスケーブル用ドラムは、3相別々のため、作業スペース、作業者の配置、作業姿勢、ケーブル収納、車両への積載などに問題がある。すなわち、作業スペースについては、バイパスケーブルは、1個のドラムに1相分を収納する構造であるため、3相のバイパスケーブルを架線するためには3個のドラムが必要であり、3相のバイパスケーブルが干渉しないように送り出しや巻き取り作業を施工するスペースとして、作業帯の4分の1という広い設置面積を必要とする。また、作業者の配置に関しては、3相バイパスケーブルが干渉しないように巻き取り作業を行なうためには、それぞれのドラムに1名の作業者を配置し、3名の作業者が連携して作業を行なう必要がある。
【0005】
また、バイパスケーブル用ドラムの形状が外径0.7mとやや小さいことから、作業者は前かがみの姿勢でバイパスケーブルの送り出しや巻き取り作業が行なわれており、腰痛の原因になっている。また、ケーブル収納については、バイパスケーブル先端には、ケーブル端末(ストレート端末)があるため、巻き取り側でケーブル接合部を屈曲させないようにする必要がある。また、巻き取り時、乱巻きしないように、手を添えて調整しなければならない。さらに、車両積載に関しては、3相別々のドラムのため、資材運搬車1台に15ドラム(電柱5スパン分)しか積載できない。
【0006】
この発明はこれらの点に鑑みて為されたもので、3個のドラムが互いに干渉せず、独立して回転でき、なおかつ、同期しても回転でき、一人の作業者で操作できる、コンパクトな三線一括ドラムリールを提供し、上記課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1の発明は、ドラム架台のシャフトに回転自在に中心孔を通すドラムリールにおいて、二つのフランジが外周を成す円形部材と、夫々の中心位置に設けた筒状のボスとを、当該ボスから上記円形部材に向けて放射状に設けた複数のステーで連結して成り、これらのフランジの間の胴部には、各フランジのステーの相応する箇所に両端を固定した棒材を、上記ボスを中心とした円周上に複数設けて、幅の狭いドラムリールとし、このドラムリールを3個横に並べて、これらの3個のドラムリールのステーの相応する箇所にボルト孔を穿ち、これらのボルト孔に連結ボルトを通してその先端で、3個のドラムリールを一体に連結したことを特徴とする、バイパスケーブル用三線一括ドラムリールとした。また請求項2の発明は、上記請求項1において、上記連結は、連結ボルトが着脱自在な構造である、バイパスケーブル用三線一括ドラムリールとした。
【0008】
また、請求項3の発明は、上記請求項1又は2において、各ドラムリールのフランジの間に両端が湾曲した、ケーブル端末部固定ガイド板をドラムの胴部を成す複数の棒材の内側位置に固定した、バイパスケーブル用三線一括ドラムリールとした。また、請求項4の発明は、上記請求項3において、ケーブル端末部固定ガイド板の両端の湾曲部頂部を、ドラムの胴部を成す円周上に位置させた、バイパスケーブル用三線一括ドラムリールとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2の発明によれば、各ドラムリールに3相のバイパスケーブルを夫々巻き付けることが出来るため、3相のリールを1台のドラム架台に設置でき、それ故、作業に必要なスペースを、従来の1/3にすることができる。これによりバイパス工法の作業帯の縮小が可能である。また、連結ボルトをリールに取り付けることで、3個のリールが一体に回転するため、作業者1人での3相のケーブルの送り出しと、巻き取り作業が可能となった。また、連結ボルトを取り外すと単独回転も可能になり、各相のケーブル長を調整することもできる。
【0010】
また、従来のバイパスケーブル用ドラムリールは、外径が0.7mであったが、これを1mにすれば、前屈み姿勢が緩和され、作業者の負担を軽減することが出来る。このようにリールの外径を大きくし、巻き取り径を大きくすれば、横幅を狭くしても従来の1相のケーブル巻き取り長と同長のケーブルを巻き取ることもできる。また、リールの幅を狭くしたことにより、バイパスケーブルを整理しながら巻き取る必要がなくなり、巻き取り作業の作業安全と作業時間の短縮を図ることができる。また、1リールの幅を狭くしたことにより占有面積が小さくなるため、資材運搬車1台当たり最大21リール(電柱7スパン分)の積載が可能となり、バイパス区間が増える昨今の現場に対応できるようになった。
また、これは、当該リールの占有面積が小さくなるため、その分倉庫等での収納スペースを小さくできる。さらに、3個のリールを連結すれば、資材運搬車等への積み込み時間が短縮される。
【0011】
また、請求項3の発明によれば、ケーブル端末部固定ガイド板を設けたことにより、当該端末部を屈曲させることなくケーブル端末を巻き取ることが出来、ケーブル端末を傷つけるおそれがない。しかも、当該ケーブル端末部固定ガイド板を、胴部を成す複数の棒材の内側位置に固定しているため、ケーブル端末部を当該固定ガイド板に固定すれば、ケーブル端末部が、巻き取るケーブルの内側に位置し、ケーブルの巻き取りに邪魔にならない。また、請求項4の発明によれば、ケーブル端末部固定ガイド板の両端の湾曲部頂部を、胴部を成す円周上に位置させているため、胴部をなす棒材の数を減らすことが出来、極めて効率的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ドラム架台のシャフトに回転自在に中心孔を通すドラムリールにおいて、二つのフランジが外周を成す円形部材と、夫々の中心位置に設けた筒状のボスとを、当該ボスから上記円形部材に向けて放射状に設けた複数のステーで連結して成り、これらのフランジの間の胴部には、各フランジのステーの相応する箇所に両端を固定した棒材を、上記ボスを中心とした円周上に複数設けて、幅の狭いドラムリールとし、このドラムリールを3個横に並べて、これらの3個のドラムリールのステーの相応する箇所にボルト孔を穿ち、これらのボルト孔に連結ボルトを通してその先端で、3個のドラムリールを一体に連結し、さらに、各ドラムリールのフランジの間に、両端が湾曲したケーブル端末部固定ガイド板を、ドラムの胴部を成す複数の棒材の内側位置に固定したバイパスケーブル用三線一括ドラムリールを設け、3相のリールが一体に回転可能であり、また、上記連結ボルトを外すと、3相のリールが独立して回転可能である。
【実施例1】
【0013】
以下この発明を図面に基いて詳細に説明する。
図1乃至図3はこの発明のドラムリールを示し、図1は斜視図、図2は正面図、図3は図2のA−A´線断面図である。2つのフランジ1、1は、その外周を成す、パイプから成る円形部材2と、夫々の中心位置に設けた筒状のボス3とを、当該ボス3から上記円形部材2に向けて放射状に設けた、両側縁に段部を有する平板状の6個のステー4で連結して構成されている。また、これらのフランジ1、1の間の胴部は、各フランジ1の6個のうちの4個のステー4の相応する箇所に両端を固定した棒材5を、上記ボス3を中心とした円周上に4個設けることにより、幅の狭いドラムリールを形成している。
【0014】
また、上記棒材5を設けていない2個のステー4に板の両端の湾曲部を固定し、中央部を他のステー4に固定したケーブル端末部固定ガイド板7を、上記2つのフランジ1、1の間であって、ドラムの胴部を成す複数の上記棒材5の内側位置に設けている。そしてこのケーブル端末部固定ガイド板7の上記両端の湾曲頂部7aは、上記複数の棒材5から成るドラムの胴部をなす円周上に位置している。また、上記ケーブル端末部固定ガイド板7の両端部には、ケーブル端末部を係止する係止具8、8を設けている。また、上記ケーブル端末部固定ガイド板7の両端の湾曲部を固定した各ステー4の、当該湾曲部の内側に、ボルト孔9、9を夫々穿っている。
【0015】
以上の構成のドラムリールを、各ボス3の開口部を突き合せて3個横に並べ、各ステー4の位置を合わせ、上記各ボルト孔9に、別途設けた2個の連結ボルト10を夫々通し、3個目のドラムリールの内側のステー4の各ボルト孔9から突出した当該各ボルト10の先端にナット11を夫々螺着したものである。
【0016】
この3個連結したドラムリールは図4及び図5に示すように、別途設けたドラム架台12のシャフト13に各ボス3を通して設置し、使用する。そして、ケーブル端末部14は、図6に示すように、各ドラムリールのケーブル端末部固定ガイド板7に乗せ、適宜の部材で係止具8に固定し、当該ケーブル端末部14に続くケーブル14aを、ケーブル端末部固定ガイド板7の両端の湾曲頂部7aを通して上記複数の棒材5の周りに巻き付けていく。上記連結ボルト10で連結された3個のドラムリールは一体に回転し、3相のケーブルを同時に巻き付けたり、送り出したり出来る。また、3個のドラムリールを夫々独立に回転させたい場合は、上記連結ボルト10のナット11を外し、ドラムリールから連結ボルト10を外せば、各ドラムリールが独立して回転し、他のリールは干渉しない。
【0017】
なお、上記実施例において、各ステー4の両端部等、適宜の箇所に孔を設けているが、これらの孔は、ケーブルを当該ドラムリールに止めるワイヤーやバンド等を通すものである。また、上記実施例では、3個のドラムリールを2本の連結ボルト10で連結固定しているが、この連結ボルトは、1本でも、3本以上でも良い。また、連結ボルト10の先端はナット9の螺着に限定することなく、連結ボルト10の先端をステー4に着脱自在に取り付ける構造としても良い。また、連結ボルト10の先端を図3のようにリールの内側で固定する必要はなく、取り外しやすいように外側に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施例のドラムリールの斜視図ある。
【図2】この発明の実施例のドラムリールの正面図である。
【図3】この発明の実施例のドラムリールの、図2におけるA−A´線断面図である。
【図4】この発明の実施例のドラムリールをドラム架台に設置した状態を示す正面図である。
【図5】この発明の実施例のドラムリールをドラム架台に設置した状態を示す側面図である。
【図6】この発明の実施例のドラムリールのケーブル端末部固定ガイド板にケーブル端末部を固定した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 フランジ
2 円形部材
3 ボス
4 ステー
5 棒材
7 ケーブル端末部固定ガイド板
8 係止具
9 ボルト孔
10 連結ボルト
11 ナット
12 ドラム架台
13 シャフト
14 ケーブル端末部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム架台のシャフトに回転自在に中心孔を通すドラムリールにおいて、二つのフランジが外周を成す円形部材と、夫々の中心位置に設けた筒状のボスとを、当該ボスから上記円形部材に向けて放射状に設けた複数のステーで連結して成り、これらのフランジの間の胴部には、各フランジのステーの相応する箇所に両端を固定した棒材を、上記ボスを中心とした円周上に複数設けて、幅の狭いドラムリールとし、このドラムリールを3個横に並べて、これらの3個のドラムリールのステーの相応する箇所にボルト孔を穿ち、これらのボルト孔に連結ボルトを通してその先端で、3個のドラムリールを一体に連結したことを特徴とする、バイパスケーブル用三線一括ドラムリール。
【請求項2】
上記連結は、連結ボルトが着脱自在な構造であることを特徴とする、上記請求項1に記載のバイパスケーブル用三線一括ドラムリール。
【請求項3】
上記各ドラムリールのフランジの間に両端が湾曲した、ケーブル端末部固定ガイド板をドラムの胴部を成す複数の棒材の内側位置に固定したことを特徴とする、上記請求項1又は2に記載のバイパスケーブル用三線一括ドラムリール。
【請求項4】
上記ケーブル端末部固定ガイド板の両端の湾曲部頂部を、ドラムの胴部を成す円周上に位置させたことを特徴とする、上記請求項3に記載のバイパスケーブル用三線一括ドラムリール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−126236(P2007−126236A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318900(P2005−318900)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(000139702)株式会社安田製作所 (16)
【Fターム(参考)】