説明

バイリング由来の新品種及びこれを用いたキノコの栽培方法

【課題】バイリングから新しい品種を育種して、これを種菌に用いて新しいキノコを発生させる栽培方法を開発すること。
【解決手段】
種菌の育種において、バイリングの栽培に用いた培地を粉砕して廃培地とし、この廃培地を落ち葉、枯れ枝等の腐植物が豊富な土地に散布して、野生のキノコを発生させ、発生したキノコから、多胞子分離方法または組織分離方法により新しい品種の種菌を得る。
この培地材料により作成した菌床を殺菌し、その菌床に前記種菌を接種し、培養し、芽出処理し、収穫の各処理を行うが、前記培養の最終段階において、冷凍処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイリングから育種した新品種の種菌とこれを用いたキノコの栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイリングは、中国等で栽培化されたエリンギに似たキノコ(図2参照)で、本願出願の現時点のインターネット上の各種サイト(例えば、http:www.iijan.or.jp/oishii/008/04post_763.php)においては、「バイリング」、「ユキレイタケ」等の名称で販売されている新しいキノコである。
また、特許文献上では、特許文献1「バイリングの栽培方法」、特許文献2「バイリング新菌株」及び特許文献3「実用バイリング・エリンギ交配株」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−209303号公報
【特許文献2】特開2008−104380号公報
【特許文献3】特開2008−131890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発明者は、従来のバイリングの食感、食味が日本人の感覚に合わないものと考え、種菌の研究、栽培の研究に試行錯誤を繰り返して、本願発明に想到するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、バイリングから新しい品種を育種して、これを種菌に用いて新しいキノコを発生させることができる栽培方法を開発したもので、新しい品種の種菌を得るため、バイリングの栽培に用いた培地を粉砕して廃培地とし、この廃培地を落ち葉、枯れ枝等の腐植物が豊富な土地に散布して、野生のキノコを発生させ、そのキノコから種菌を得た。
次に、培地を準備し、その培地に前記種菌を接種し、培養し、芽出処理し、収穫の各処理を行う菌床栽培の過程において、前記培養の最終段階で、菌床に対する冷凍処理を行うことを特徴とするキノコの栽培方法とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、食味、食感とも日本人の味覚に合致し、各種料理にも合う形質のキノコを得ることができ、食感の良し悪しの指標となる「歯ごたえ」において、適当な硬さの形質を得ることができる。
また、冷蔵で約7日〜10日、冷凍で長期保存しても食味、食感に変化がなく長期の保存が可能である。
特にアガリスクブラゼ―ムリルよりも抗腫瘍性のβグルカンを含み、また抗高血圧効果や免疫調整効果等が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は本願発明により栽培したキノコの一例の図面代用写真である。
【図2】図2は従来のバイリングの姿図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明は、バイリングから新しい品種の種菌を得て、その品種から新しい栽培方法により有用なキノコを発生させたことである。
具体的には、種菌の育種において、バイリングの栽培に用いた培地を粉砕して廃培地とし、この廃培地を落ち葉、枯れ枝等の腐植物が豊富な土地に散布して、野生のキノコを発生させ、発生したキノコから、多胞子分離方法または組織分離方法により新しい品種の種菌を得る。
【0009】
この種菌を用いた菌床栽培において、培地材料は、オガクズ、綿の実を取った後のカスを粉砕したワタミカス、トウモロコシの芯頭を粉砕したコンコブ、トウモロコシの実を粉砕したコンミール、フスマ及び米糠とした。
菌床栽培における培地は、菌糸の生育に欠かせない栄養源となるもので、従来のオガクズと米糠からなる培地に、ワタミカス、コンコブ、コンミール等を加えて、前記種菌に適合した培地材料の組合わせを開発したものである。
【0010】
この培地材料により作成した菌床を殺菌し、その菌床に前記種菌を接種し、培養し、芽出処理し、収穫の各処理を行うが、前記培養の最終段階において、菌床を冷凍して、菌糸に刺激を与える。
【実施例1】
【0011】
(種菌の育種)
モンゴルから入手した品種のバイリングを栽培し、その培地を粉砕して廃培地とし、この廃培地を落ち葉、枯れ枝等の腐植物が豊富な低山の裾野近辺(長野県松本市寿)に散布して、春に野生のキノコを発生させ、発生したキノコから、多胞子分離方法または組織分離方法により新しい品種の種菌を得た。
【0012】
(培地の作成)
前記培地材料のオガクズ、ワタミカス及びコンコブ 対 コンミール、フスマ及び米糠の割合を容積比で、約10:2で混合する。この混合比の範囲内で、それぞれ各材料の混合量を適宜調整する。そしてこれらの培地材料に水分を混合して(培地の容量に対して約65パーセントの水分)、培地を作成する。
【0013】
(菌床の作成)
蒸気殺菌処理に耐えうる筒状の袋又はビン(それぞれ直径約10cm 深さ約25cm)と、それらの培地容器の開口を覆う通気性があるキャップ等を用意し、上記培地を入れてその培地に接種孔を作った後、約10時間の殺菌し、クリーンルーム或いは同様な環境が保てる栽培舎にて約10時間、強制的に放熱冷却させる。
(菌床への接種)
前記種菌を菌床に接種棒を用いて接種する。
【0014】
(菌床の培養)
栽培舎内で約60日、約20℃で、換気しつつ培養を行う。
この場合、ハウス内の二酸化炭素及び菌床から排出される二酸化炭素を培地容器からも引き出せるように、ハウス内に波状の空気の層流を作るため、間欠的な換気を行う。
この間、菌床から古い菌をとるため、菌欠きを行う。
【0015】
(菌床の冷凍処理)
菌が培地容器内の菌床の全面に回ってきた段階で、菌床を凍らせるための冷凍処理を行う。この場合、培地容器の菌床の乾燥を避けるため、通気性のキャップから密封性のキャップに取り替えて冷凍施設にて冷凍処理を行う。
この冷凍処理は、0度以下であって、適宜冷凍温度を設定し、約2日〜約7日行う。
【0016】
(芽出処理)
7日〜10日の間に原基が形成されるため、キャップをとる。
原基形成の際に、芽欠きを行い一培地容器に一株とする処理を行う。
【0017】
(収穫)
芽出処理の後、約10℃にして、2週間〜20日後に、図1の図面のような、バイリングに比べて柄の部分が充実したキノコが発生するので、これを収穫する。
この実施例によれば、一株当りの収穫重量は、約250g〜約300gとなる。
なお、バイリングの一株当りの収穫重量は、約100g〜約150gである。
【0018】
本発明の実施形態等において各構成要素を数値等で特定して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の変更が行われ得ることが想定される。例えば、培地材料の混合比の変更、その選択、付加等である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイリングの栽培に用いた培地を粉砕して廃培地とし、この廃培地を落ち葉、枯れ枝等の腐植物が豊富な土地に散布して、野生のキノコを発生させ、発生したキノコから得られることを特徴とするバイリング由来の種菌。
【請求項2】
請求項1に記載の前記種菌を培地に接種し、培養し、芽出処理し、収穫の各処理を行う菌床栽培の過程において、前記培養の最終段階において、菌床の冷凍処理を行うことを特徴とするキノコの栽培方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−109941(P2011−109941A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267448(P2009−267448)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(309038063)日本きのこ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】