説明

バウンダリーマイクロホン

【課題】マイクホンユニットから回路基板に至るリード線の部分を含めて、十分な静電遮蔽を施して、外来電磁波に起因する雑音の発生をより効果的に低減する。
【解決手段】音声信号出力部31を有する部品実装面30b側を下面として回路基板30をベースプレート10の凹部11上に搭載し、回路基板30の上面30a側にシールドパターン34を形成することにより凹部11内を静電遮蔽し、回路基板30の開口部32内にホルダー50Aを介してマイクロホンユニット40を装着してなるバウンダリーマイクロホンにおいて、ホルダー50Aを、マイクロホンユニット40の後端部側が嵌合される円筒部51と、円筒部51と一体である有底円筒の周面および底面の一部分を回路基板30の基板面に沿って平行に切除してなるDカット部52とを備えた構成とし、Dカット部52内にマイクロホンユニット40のリード線43を配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バウンダリーマイクロホンに関し、さらに詳しく言えば、外来電磁波による雑音発生を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バウンダリーマイクロホンは、テーブルや床面等に置かれて使用される背の低い扁平な外形を有するマイクロホンで、図4に示すように、ベースプレート10と、これに被せられるカバー20とを備える。
【0003】
ベースプレート10は、底面10aが平坦面で、上面側に回路基板搭載用の凹部11とカバー連結用の支柱12とを備え、後部にはマイクケーブル引き込み孔13aを有する背壁13が設けられている。多くの場合、ベースプレート10は、その全体が例えばアルミニウムのダイカストから作られる。
【0004】
詳しくは図示されていないが、カバー20には、多数の音波通過孔を有する金属のパンチングプレート(多孔板)もしくは金網材が用いられる。カバー20は、雄ねじ21によって支柱12にねじ止めされ、ベースプレート10の上面側に内部空間を形成する。
【0005】
ベースプレート10の凹部11上に、音声信号出力部31を有する回路基板30が搭載される。図示しないが、音声信号出力部31には、FET(電界効果トランジスタ)等のインピーダンス変換器,音質調整回路,フィルタ回路等が含まれている。
【0006】
回路基板30は、その一部分に開口部32を備え、開口部32内にマイクロホンユニット40がホルダ50を介して配置される。通常、マイクロホンユニット40には、前部音響端子40aと後部音響端子40bとを有する単一指向性のコンデンサマイクロホンユニットが採用される。
【0007】
背壁13のマイクケーブル引き込み孔13aにはコードブッシュ14が設けられ、コードブッシュ14内を挿通してマイクケーブル15が内部空間内に引き込まれ、回路基板30のターミナル部分に電気的に接続される。
【0008】
ベースプレート10とカバー20は、複数の接点で接触しており、直流的には導通状態にあるが、携帯電話機から放射されるかなり強力な電磁波に対しては静電遮蔽が不十分である。
【0009】
したがって、携帯電話機がバウンダリーマイクロホンの近傍で使用されると、その電磁波による高周波電流がマイクロホン内に入り込み、回路基板30に実装されているFET等の半導体素子により検波され、雑音が発生することがある。
【0010】
そこで、本発明者は、特許文献1において、図4に示すように、回路基板30の音声信号出力部31が配置されている部品実装面30b側を凹部11側とし、回路基板30の上面(反部品実装面)30a側に銅箔のベタパターンからなるシールドパターンを形成し、このシールドパターンとベースプレート10とにより凹部11に対するシールドケースとすることを提案した。
【0011】
これによれば、外来電磁波による雑音発生をある程度まで低減できるものの、なおも解決すべき点が残されている。
【0012】
図4を参照して、マイクロホンユニット40は、その後端側が金属の有底円筒体からなるホルダー50に嵌合保持され、ホルダー50を介して回路基板の開口部32内に配置されるが、従来においては、マイクロホンユニット40のターミナル基板41に接続されているリード線42,42をホルダー50の底面の小孔51から引き出して回路基板30の所定のランド部にハンダ付けするようにしている。
【0013】
これでは、リード線42,42のうちのホルダー50内から引き出され回路基板30に至るまでのリード線部分に対する静電遮蔽が不十分で、このリード線部分に電磁波が加えられると、凹部11内に高周波電流が入り込み、依然として雑音が発生することがある。
【0014】
また、リード線42,42に被覆を有するリード線を用いているため、その形状を斉一に保つことが困難であることから、雑音の発生する電磁波の周波数と、雑音の大きさが均一でない、という問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第4471818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、特許文献1に記載されたバウンダリーマイクロホンを改良し、マイクホンユニットから回路基板に至るリード線の部分を含めて、十分な静電遮蔽を施して、外来電磁波に起因する雑音の発生をより効果的に低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、底面が平坦面であり上面側に基板搭載用の凹部が形成されている金属材からなる扁平なベースプレートと、多数の音波通過孔を有し上記ベースプレートの上面側に被せられるカバーと、上記凹部を覆うように上記ベースプレートに搭載され、一部分にマイクロホンユニット装着用の開口部を有する回路基板と、金属製のホルダーを介して上記開口部内に装着されるマイクロホンユニットとを含み、上記回路基板の上記凹部に面する下面側に音声信号出力部が設けられ、上記回路基板の上面側には上記ベースプレートとともに上記凹部内を静電シールドするためのシールドパターンが形成されており、上記マイクロホンユニットの出力端子がリード線を介して上記音声信号出力部に電気的に接続されているバウンダリーマイクロホンにおいて、上記ホルダーは、上記マイクロホンユニットの後端部側が嵌合される円筒部と、上記円筒部と一体である有底円筒の周面および底面の一部分を上記回路基板の基板面に沿って平行に切除してなるDカット部とを備え、上記Dカット部内に上記リード線が配線されていることを特徴としている。
【0018】
本発明の好ましい態様によると、上記Dカット部は上記グランドパターンにハンダ付けされる。
【0019】
好ましくは、上記リード線に被覆のない半田メッキ線が用いられ、また、上記リード線はスルーホールを介して上記回路基板の下面側に引き出され上記音声信号出力部にハンダ付けされるとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回路基板に形成されている開口部内に、マイクロホンユニットを装着する金属製のホルダーとして、マイクロホンユニットの後端部側が嵌合される円筒部と、円筒部と一体である有底円筒の周面および底面の一部分を回路基板の基板面に沿って平行に切除してなるDカット部とを備えているホルダーを用い、上記Dカット部内にマイクロホンユニットから回路基板に至るリード線を配線するようにしたことにより、リード線の部分も十分に静電遮蔽され、外来電磁波に起因する雑音の発生をより効果的に低減することができる。
【0021】
また、リード線を被覆のない半田メッキ線とすることにより、その配線形状を斉一にしやすいことから、仮に雑音が発生する場合においても、妨害を受ける周波数を一定にすることができるため、設計的対処が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るバウンダリーマイクロホンの内部構造を示す断面図。
【図2】本発明の要部であるホルダーと回路基板の開口部との相対関係を示す斜視図。
【図3】上記ホルダーを回路基板に取り付けた状態を示す側面図。
【図4】従来例としてのバウンダリーマイクロホンの内部構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、この実施形態の説明において、先の図4で説明した従来例と変更を要しない構成要素には同じ参照符号を付す。
【0024】
図1に示すように、この実施形態に係るバウンダリーマイクロホンは、先に説明した従来例と同じく、ベースプレート10と、これに被せられるカバー20とを備える。
【0025】
ベースプレート10は、テーブル面や床面に安定して置かれるように底面10aが平坦面に形成されており、上面側に回路基板搭載用の凹部11とカバー連結用の支柱12とを備え、後部にはマイクケーブル引き込み孔13aを有する背壁13が設けられている。ベースプレート10は、その全体が例えばアルミニウムのダイカストから作られてよい。
【0026】
カバー20には、多数の音波通過孔を有する金属のパンチングプレート(多孔板)もしくは金網材が用いられてよい。カバー20は、雄ねじ21によって支柱12にねじ止めされ、ベースプレート10の上面側に内部空間を形成する。
【0027】
ベースプレート10の凹部11上には、音声信号出力部31を有する回路基板30が搭載されている。図示しないが、音声信号出力部31には、FET(電界効果トランジスタ)等のインピーダンス変換器,音質調整回路,フィルタ回路等が含まれている。
【0028】
回路基板30は、その一部分に開口部32を備え、開口部32内にマイクロホンユニット40がホルダ50Aを介して装着される。この実施形態において、マイクロホンユニット40には、前部音響端子40aと後部音響端子40bとを有する単一指向性のコンデンサマイクロホンユニットが採用されている。
【0029】
背壁13のマイクケーブル引き込み孔13aにはコードブッシュ14が設けられ、コードブッシュ14内を挿通してマイクケーブル15が内部空間内に引き込まれ、回路基板30の図示しないターミナル部分に電気的に接続される。マイクケーブル15には、2芯シールド被覆線が用いられる。
【0030】
ベースプレート10とカバー20は、複数の接点で接触しており、直流的には導通状態にあるが、携帯電話機から放射されるかなり強力な電磁波に対しては静電遮蔽が不十分である。
【0031】
そこで、本発明では、特許文献1に記載されている発明にしたがって、回路基板30の音声信号出力部31が設けられている部品実装面30b側を下面として凹部11内に向けて配置し、回路基板30の上面(反部品実装面)30a側には、図2に示すように、銅箔のベタパターンからなるシールドパターン34を形成し、このシールドパターン34とベースプレート10とにより、凹部11に対するシールドケースを構成している。
【0032】
図示しないが、シールドパターン34は、単独もしくは部品実装面30b側のグランドパターンとともに、マイクケーブル15のシールド被覆線および/またはベースプレート10に電気的に接続される。
【0033】
図2および図3を併せて参照して、本発明では、マイクロホンユニット40のターミナル基板41と回路基板30との間に配線される一対のリード線43,43をも静電遮蔽するため、次のように構成されたホルダー50Aを用いる。
【0034】
すなわち、ホルダー50Aは、その全体が金属材からなり、マイクロホンユニット40の後端部側が嵌合される円筒部51と、円筒部51と一体である有底円筒の周面および底面の一部分を回路基板30の基板面に沿って平行に切除してなるDカット部52とを備えている。
【0035】
このようなホルダー50Aは、一例として、金属製の有底円筒体を用意し、その開口部側の円筒部分をそのまま残して円筒部51とし、底部側の周面から底面にかけての一部分を、フライス加工等にて回路基板30の基板面に沿って平行に切削してDカット部52とすることにより、容易に得ることができる。
【0036】
図2に示すように、円筒部51は、マイクロホンユニット40を嵌合保持した状態でマイクロホンユニット40とともに、その一部分が回路基板30の開口部32内に装着されるが、Dカット部52は、その軸方向の切削面(切除面)52aが、回路基板30の開口部32の周縁部分にほとんど隙間なく接触する。
【0037】
したがって、Dカット部52内は、回路基板30の上面30a側から隔絶された空間となり、このDカット部52内にリード線43,43を配線することにより、リード線43,43に対して十分な静電遮蔽が施されることになる。
【0038】
リード線43,43に対する静電遮蔽をより効果的とするため、Dカット部52の切削面52aを回路基板30に形成されているシールドパターン34にハンダ付けすることが好ましい。
【0039】
また、Dカット部52にて覆われる回路基板30の部分にスルーホール33,33を穿設し、リード線43,43をスルーホール33,33に挿通して、それらの各端部を回路基板30の下面側で音声信号出力部31の所定のパターンにハンダ付けするとよい。
【0040】
また、リード線43,43に被覆のない半田メッキ線、とりわけ錫メッキ線を用いることが好ましい。錫メッキ線によれば、その配線形状を斉一にしやすいことから、仮に雑音が発生する場合においても、妨害を受ける周波数を一定にすることができるため、その周波数に応じた例えばフェライトビーズの適用等による設計的対処が容易となる。
【0041】
なお、内部空間の静電遮蔽をより高めるうえで、カバー20とベースプレート10の接触面間に、導電布や導電ガスケット等の導電材を介在させるとよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ベースプレート
11 凹部
12 支柱
13 背壁
15 マイクケーブル
20 カバー
30 回路基板
31 音声信号出力部
32 開口部
33 スルーホール
34 シールドパターン
40 マイクロホンユニット
41 ターミナル基板
43 リード線
50A ホルダー
51 円筒部
52 Dカット部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が平坦面であり上面側に基板搭載用の凹部が形成されている金属材からなる扁平なベースプレートと、多数の音波通過孔を有し上記ベースプレートの上面側に被せられるカバーと、上記凹部を覆うように上記ベースプレートに搭載され、一部分にマイクロホンユニット装着用の開口部を有する回路基板と、金属製のホルダーを介して上記開口部内に装着されるマイクロホンユニットとを含み、
上記回路基板の上記凹部に面する下面側に音声信号出力部が設けられ、上記回路基板の上面側には上記ベースプレートとともに上記凹部内を静電シールドするためのシールドパターンが形成されており、上記マイクロホンユニットの出力端子がリード線を介して上記音声信号出力部に電気的に接続されているバウンダリーマイクロホンにおいて、
上記ホルダーは、上記マイクロホンユニットの後端部側が嵌合される円筒部と、上記円筒部と一体である有底円筒の周面および底面の一部分を上記回路基板の基板面に沿って平行に切除してなるDカット部とを備え、上記Dカット部内に上記リード線が配線されていることを特徴とするバウンダリーマイクロホン。
【請求項2】
上記Dカット部は上記グランドパターンにハンダ付けされていることを特徴とする請求項1に記載のバウンダリーマイクロホン。
【請求項3】
上記リード線に被覆のない半田メッキ線が用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載のバウンダリーマイクロホン。
【請求項4】
上記リード線はスルーホールを介して上記回路基板の下面側に引き出され上記音声信号出力部にハンダ付けされていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のバウンダリーマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94957(P2012−94957A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238309(P2010−238309)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】