説明

バケットコンベア

【課題】運転しながらチェーンの清掃作業を本体外部から安全に行えるバケットコンベアを提供する。
【解決手段】本発明は、循環して駆動されるチェーン2と、チェーンに着脱可能に連結されて移動するバケット3と、チェーンを駆動経路に沿って覆う仕切板12と、仕切板とバケットを格納する本体1とを有し、被搬送物をバケットに収納して搬送するバケットコンベアであり、本体及び仕切板の一部に、内部のチェーンを臨むことができ、かつ本体の外側からチェーンに直接指が触れることを防ぐ構造とされた清掃用開口部14を設け、安全に清掃用具のみを本体の外側からチェーンに接触させて清掃可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバケットコンベアに関し、特に清掃作業性向上のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被搬送物を次工程まで搬送するバケットコンベアにおいては、バケット内にある被搬送物が汚染されるのを防止するために、その搬送路全体を略密閉構造のケーシングである本体内に収納する場合があるが、これに加えて本体内において搬送用チェーンとバケットの間を構造的に分離し、前記チェーンに付着した潤滑油やスプロケットとチェーンの噛合による切子等の異物がバケット内の被搬送物に混入することを防止する構造とする場合もある。
【0003】
このような本体内におけるチェーンとバケットの分離構造として、下記特許文献1ではチェーンとバケット間に正面視円形の仕切部材を設け、その際互いに隣接する仕切部材同士を搬送路に沿って連続的に仕切るようオーバラップさせている。
【特許文献1】特開2005−350206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように多数の板状の仕切部材を各バケットごとに設け、隣接する仕切部材同士を互いにオーバラップさせたバケットコンベアでは、部品点数が多くコスト高になるだけでなく、仕切部材の荷重がチェーンに加わるためにチェーンの荷重負荷やチェーンに対するモータの駆動負荷も大きいものとなる。また、オーバーラップの箇所数が多く、その隙間に異物が挟まり、付着すると清掃が大変である。さらに、この構造ではバケットに対してチェーンを部分的に仕切っているだけなので、チェーン等の搬送機構系に起因する異物がバケット内に混入する危険性を拭いきれない。
【0005】
これに対し、本出願人は先に断面リップ溝型をした仕切板を略密閉ケーシングを構成する本体内に固定配置して、チェーンの全体を、その長手方向に沿って移動可能に収容するとともに、チェーンに設けたバケットの支軸を仕切板のスリットを通じて突出させた仕切構造を開発した。
【0006】
この略密閉構造の仕切板の構造によれば、チェーンの全体を仕切板内に収納できるので、上記特許文献1記載の構造に比べてチェーンの密閉性は良好であるが、チェーンの清掃作業は仕切板があるために制約を受けることとなる。すなわち、上記仕切板は容易に着脱できるような構造ではないため、仕切板があるとチェーンを清掃することができない。そこで、清掃のために仕切板がない部分又は部分的な切欠を設けてチェーンが部分的に露出するようにし、当該部分でチェーンを移動させながら清掃を行ったり、仕切板の端部開口位置でチェーンを移動させながら清掃を行うことも考えられるが、実際には作業者の手等がチェーンに巻き込まれる危険性があり、又は危険性を考慮した清掃には長時間がかかるため、かかる構造は採用できない。このため、コンベアそのものの駆動を停止してから清掃などのメンテナンス作業を行わなければならず、稼働率低下の原因となっていた。
【0007】
また、略密閉構造の仕切板によれば、チェーンとバケットの支軸との結合位置が仕切板内に位置しているため、バケットの脱着作業がやりずらかった。
【0008】
さらには、略密閉構造の仕切板によれば、仕切板内に生じた異物はその底部に蓄積され、内部汚染源として作用するおそれも生ずるが、これを容易に排出できないという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、稼働停止することなく、チェーンの連続的な清掃作業を本体外部から安全かつ容易に行え、バケットの着脱作業が簡単で、仕切板内部の底部に蓄積された異物を簡単に取除くことができるバケットコンベアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目的を達成するため、請求項1の発明は、循環して駆動されるチェーン2と、前記チェーン2に着脱可能に連結されて前記チェーン2の駆動に伴い移動するバケット3と、前記チェーン2を駆動経路に沿って覆う仕切板12と、前記仕切板12と前記バケット3を格納する本体1とを有し、被搬送物を前記バケット3に収納して搬送するバケットコンベアにおいて、
前記本体1及び前記仕切板12の一部に、前記チェーン2を臨むように設けられるとともに、前記本体1の外側から前記チェーン2に直接指が触れることを防ぐ構造とされた清掃用開口部14を設けたことことを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記清掃用開口部14は、前記チェーン2の空隙部と対面する側に前記チェーン2に近接するように多孔板15を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記本体1は、正面側に開口部17aを有し、
前記仕切板12は、前記チェーン2の移動方向を長手方向とする筒体に、前記チェーン2と前記バケット3の連結部が挿通する溝部が形成された構造であり、前記開口部17aに近接する部分に前記チェーン2に対して前記バケット3を着脱するために正面側から前記仕切板12の一部が開閉可能とされた開閉部19を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記本体1は、底部に開口部30を有し、
前記仕切板12は、前記本体1の底部において切断部25が設けられ、
前記仕切板12の切断部25の下部に位置し、前記仕切板12の内部を流下する物を受けるように前記開口部30において前記本体1に対し着脱可能に設けられた受皿20を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、回転ブラシ等の清掃具あるいは洗浄液等の噴射清掃手段などを、清掃用開口部を介して本体及び仕切板内部のチェーンに本体の外側から適用することができ、また本体の外側からチェーンに直接指が触れることを防ぐ安全な構造であるため、作業時の安全性を保ちつつ、チェーンに付着した異物の除去等を容易に行うことができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、請求項1の作用・効果に加え、チェーンの空隙部と対面する側にチェーンに近接して多孔板を備えているので、誤って手などを内部に入れて駆動中のチェーンで怪我をするおそれがなく、安全性が高いとともに、チェーンの空隙部に詰まった汚れ等も確実に清掃することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の作用効果に加え、開閉部を開けることでチェーンに対するバケットの着脱を容易に行うことができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、請求項1または2の作用効果に加え、受け皿を取出すだけで本体内の仕切板内を流下して受皿に蓄積された異物の取出しができるため、異物排除作業を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の形態を添付図面を用いて説明する。
図1は本発明に係るバケットコンベアの全体構成を示す側面側から見た縦断面図、図2は同横断面図、図3(a)は「側面側から見た要部縦断面図、同図(b)は同図(a)におけるA矢視断面図、図4(a)は本体に形成した清掃用開口部の正面側から見た縦断面図、同図(b)は同図(a)のB−B切断線における横断面図、図5は図3(b)のC−C切断線における拡大横断面図、図6(a)は側面側から見た受皿部分の縦断面図、同図(b)は正面側から見た受皿部分の縦断面図である。
【0019】
図1及び図2において、バケットコンベアの略密閉型ケーシングを構成する本体1は、設置面上に設置された水平部1aと、水平部1aから垂直上方に連続する垂直部1bと、垂直部1bの上部にL字形をなして一体化した上方の水平部1cとを有する略Z字形をなす中空函体である。本体1の内部には、L字形の形状に沿って無端状に移動する左右一対のチェーン2と、左右のチェーン2,2間にピンをもって回動可能に両端を連結された複数のバケット3と、水平部1aに配置されたチェーン駆動用スプロケット4及び回転駆動用モータ5と、各方向転換位置に配置された複数のガイド用スプロケット6と、上方の水平部1cの端部の搬送終端位置に配置された排出用スプロケット7とを備えている。
【0020】
そして、バケット3の搬送方向往路において、本体1の水平部1aと垂直部1bの隅部には被搬送物供給シュート8が設けられている。この被搬送物供給シュート8から本体1の内部に供給された被搬送物は、供給シュート8の直下に位置するバケット3に投入される。
【0021】
被搬送物を保持したバケット3は、駆動用スプロケット4の回転に伴い、水平を保ちつつ矢印の方向に上昇し、次いでスプロケット6で水平方向に方向変換され、排出用スプロケット7の位置でバケット3自体が回動することによって、被搬送物を排出する。
【0022】
スプロケット7の下方には、水平部1cの端部下面に開口する排出シュート9が設けられ、被搬送物は、排出シュート9を通じて、その下方に位置する次工程の設備である計量用ホッパ10等に受渡される。このホッパ10の下部には袋詰め装置11等が配置され、ホッパ10で計量毎に定量吐出された被搬送物は、この袋詰め装置11で個別に梱包され、図示しないコンベアなどにより下流側に搬送される。
【0023】
排出用スプロケット7で方向転換し、復路側に移動する空荷のバケット3は水平部1cの往路の下部でに平行に水平移動し、次いでスプロケット6で垂直に方向変換して下降し、駆動用スプロケット4の位置で再度往路方向に方向変換される動作が繰返され、以下各バケット3は、搬送始端から終端位置まで循環しつつ被搬送物を連続的に搬送することになる。
【0024】
本体1内において、チェーン2は仕切板12で覆われている。この仕切板12は、特に図2の一部に拡大して示すように、チェーン2の移動方向を長手方向とする筒体に、チェーン2とバケット3の連結部が挿通する溝部が形成された構造であり、断面がリップ溝型をなすガイドレール状の筒型部材である。そして、仕切板12は、本体1の内側壁にそのフランジ部をビス止め等によって固定されている。
【0025】
チェーン2とバケット3の連結部の構造について説明すれば、仕切板12の内部に収装されるチェーン2の側面側には、チェーンのピンと同軸の連結用ピン2aが突設され、このピン2aには、バケット3の両側面に突出して設けられたスリーブ3aが着脱可能かつ回動可能に嵌合され、チェーン2の移動方向にバケット3を搬送するようにしている。
【0026】
垂直部1bの下部両側部には、特に図3(a)に示すように、チェーン2の復路位置であって傾斜した位置に隣接して清掃用の一対の開口部14,14’が開口している。一方の開口部14はチェーン2の上面側清掃用、他方の開口部14’はチェーン2の下面側清掃用である。
【0027】
図4(a),(b)はチェーン2の上面清掃用開口部14を示している。この開口部14は、本体1の垂直部1bの側面に形成された凹部14a内において、チェーンの空隙部に上側から接近する位置(すなわちチェーンを構成する一対のプレートの隙間及び同隙間にあるピンやローラに上側から臨む側の面)に開口されており、この清掃用開口部14には多数のスリットを形成した構造としての多孔板15が設けられている。これによって、手などの直接差込は防止しつつ、洗剤などを注入しながら、洗浄用ブラシなどの洗浄手段を多孔板15を通じて本体1の内部に突出させることで、チェーン2の移動に伴いチェーン2の表面及びプレートの隙間の異物などを効果的に洗い落すことができる。多孔板15に設けられる孔は実施形態のスリット以外に丸孔、角孔でもよく、また本発明における多孔板の範囲には網板も含まれる。
【0028】
また、図3(a)に示すように、チェーン2の下面清掃用開口部14’は上面清掃用開口部14よりも相対的に上側に配置されており、その凹部内において、チェーンの空隙部に下側から接近する位置(すなわちチェーンを構成する一対のプレートの隙間及び同隙間にあるピンやローラに下側から臨む側の面)に開口されている。その他の構成及び清掃時の使用方法は上面清掃用開口部14と同一である。
なお、上面及び下面清掃用開口部14,14’は、チェーン2の清掃時以外は蓋板により覆われており、開口15から多孔板15を経て外界の異物が仕切板12内に不用意に入り込むことを防止している。
【0029】
チェーン2を清掃するには、2つの開口部14,14’において、コンベア駆動中にチェーン2の上下2方向からそれぞれ洗剤等を供給しつつ、通常のブラシ又は動力で回転駆動される洗浄ブラシをスリット越しに押付けるだけで、チェーン2が少なくとも一周する間に全長にわたって清掃が行われ、チェーン2の隙間を上下両側から洗浄することができる。洗浄に使用した洗剤異物などの混濁物は仕切板12の樋としての機能により、底板1a側に流れ落ちる。
【0030】
また、図3(a),(b)において、本体1の垂直部1bには、供給シュート8の直上位置の正面側に矩形の開口部17aが設けられており、この開口部17aには、両側を上下一対のヒンジ16,16により開閉可能とされたメンテナンス用扉17が設けられている。そして、この扉17の内側両側部にある一対の仕切板12,12の各一部分は、それぞれ上下一対のヒンジ18,18によって開閉可能な開閉部19,19として構成されている。すなわち、メンテナンス用扉17を開いて本体1の開口部17aを開放すれば、本体1内の仕切板12に作業員が正面側から接近することができ、作業員は図5の拡大断面にて示すようにこの開閉部19を開いてバケット3とチェーン2との連結部(ピン)が挿通する仕切板12の溝部を正面側に開放することができ、バケット3のチェーン2に対する脱着を容易に行うことができる。これによってバケット3の清掃等のメンテナンスや交換などは、扉17及び開閉部19を開くことによって正面側から簡単に行える。
【0031】
図6に示すように、筒状の仕切板12の下方部分12aには、本体1の水平部1a内において、駆動スプロケット4の内側に同軸に取り付けられた円形の仕切板12bに近接するように切断された切断部25が設けられている。この本体1の水平部1aは、底に開口部30が設けられ、この開口部30に臨んで円形の仕切板12bに近接した位置に受皿20が水平部1aに対して抜取り可能(着脱自在)に設置されている。なお、この受皿20の内側壁も円形の仕切板12bに近接する高さがあり、チェーン2を収納する仕切板12と同様の機能を有している。
【0032】
前記清掃作業によって生じた異物や、これと洗剤との混濁物等は仕切板12内を流下すし、この受皿20内に溜まる。異物が一時貯留された後、受皿20を抜取り、清掃した後に戻すことで、本体1の内部は常時清浄な状態に保持され、仕切板12内や本体1内に異物が蓄積することによる被搬送物の汚染を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は本発明に係るバケットコンベアの全体構成を示す側面側から見た縦断面図である。
【図2】図2は同バケットコンベアの全体構成を示す横断面図である。
【図3】図3(a)は「側面側から見た要部縦断面図、同図(b)は同図(a)におけるA矢視断面図である。
【図4】図4(a)は本体に形成した清掃用開口部の正面側から見た縦断面図、同図(b)は同図(a)のB−B切断線における横断面図である。
【図5】図5は図3(b)のC−C切断線における拡大横断面図である。
【図6】図6(a)は側面側から見た受皿部分の縦断面図、同図(b)は正面側から見た受皿部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 本体(1a 底板部、1b 垂直部、1c 水平部)
2 チェーン
3 バケット
4 駆動用スプロケット
5 モータ
6 ガイド用スプロケット
7 排出用スプロケット
8 供給シュート
9 排出シュート
12 仕切板
14 清掃用開口部
15 多孔板
18 ヒンジ
19 開閉部
20 受皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環して駆動されるチェーン(2)と、前記チェーンに着脱可能に連結されて前記チェーンの駆動に伴い移動するバケット(3)と、前記チェーンを駆動経路に沿って覆う仕切板(12)と、前記仕切板と前記バケットを格納する本体(1)とを有し、被搬送物を前記バケットに収納して搬送するバケットコンベアにおいて、
前記本体及び前記仕切板の一部に、前記チェーンを臨むように設けられるとともに、前記本体の外側から前記チェーンに直接指が触れることを防ぐ構造とされた清掃用開口部(14)を設けたことを特徴とするバケットコンベア。
【請求項2】
前記清掃用開口部(14)は、前記チェーン(2)の空隙部と対面する側に前記チェーンに近接するように多孔板(15)を備えたことを特徴とする請求項1記載のバケットコンベア。
【請求項3】
前記本体(1)は、正面側に開口部(17a)を有し、
前記仕切板(12)は、前記チェーン(2)の移動方向を長手方向とする筒体に、前記チェーンと前記バケット(3)の連結部が挿通する溝部が形成された構造であり、前記開口部に近接する部分に前記チェーンに対して前記バケットを着脱するために正面側から前記仕切板の一部が開閉可能とされた開閉部(19)を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバケットコンベア。
【請求項4】
前記本体(1)は、底部に開口部(30)を有し、
前記仕切板(12)は、前記本体の底部において切断部(25)が設けられ、
前記仕切板の切断部の下部に位置し、前記仕切板の内部を流下する物を受けるように前記開口部において前記本体に対し着脱可能に設けられた受皿(20)を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のバケットコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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