説明

バケット式エレベータ

【課題】ハウジングの下部に残留する残留物を効果的に回収することを可能としたバケット式エレベータを提供する。
【解決手段】本発明に係るバケット式エレベータ1は、粉粒体を搬送するための従来からの構成に加え、バケット2,2・・に取り込まれなかった粉粒体残留物8を回収するために、粉粒体残留物8に圧縮空気を噴出する複数の送風ノズル5a〜cと、各送風ノズル5a〜cに連結した配管26上に設けられ、各送風ノズル5a〜cへ供給する圧縮空気の量をそれぞれ調節するための開閉弁11a,bと、噴き上げられた粉粒体の流路を循環するバケット2,2・・の入口へ変更するための整流板6とを有しているため、効果的に粉粒体残留物8を回収することを可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの下部に残留する残留物を効果的に回収することを可能としたバケット式エレベータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバケット式エレベータは、ハウジング内部の上下に設けたプーリに無端ベルトが巻装され、外部動力でプーリを回転させることによって、ベルトに取付けられた複数のバケットがハウジング内部で循環し、下部に設けた粉粒体供給口から供給された粉粒体が各バケットによって汲み上げられて、ハウジング上部に設けた粉粒体排出口まで搬送される。
上記バケット式エレベータでは、エレベータの底部において、バケットの軌跡より下方には隙間が形成されているが、この隙間に粉粒体が取り残され、そのまま放置され腐敗した場合、衛生的に問題となる。
【0003】
そこで、取り残された粉粒体を送風により噴き上げ、回転するバケットに取り込んで回収し、エレベータ下部に残らないようにするバケット式エレベータが開発されている。
特許文献1及び2の発明においては、上記のバケット式エレベータに加え、粉粒体残留物全体に同時に風を当てるための送風ノズルを複数設け、全てのノズルの風量を同時に調節する工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−168912号公報
【特許文献2】特開2007−45626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されているバケット式エレベータは、例えば粉粒体残留物の量が多い場合でも、全てのノズルから送風がなされてしまう為、個々の送風ノズルの風量が、それぞれのノズル前の残留物を噴き上げるのに必要な風量より小さくなり、残留物を噴き上げること自体が出来ない場合がある。また、仮に、個々の送風ノズルからの風量を大きくすることで残留物全体を噴き上げようとすると、大量の圧縮空気を貯蓄するための大容量のタンクとその圧縮空気を製造する大型のコンプレッサーとが必要となってしまう。
そこで、本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであって、粉粒体残留物を短時間で効率よく回収することを可能としたバケット式エレベータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明のうち請求項1に記載された発明は、下部に粉粒体供給口を設け、上部に粉粒体排出口を設けている前後左右の側面板と円弧状になった底板とから成るハウジングと、前記ハウジングの上部と下部にそれぞれ設けられたプーリと、その上下のプーリに跨って懸架された無端ベルトと、前記プーリを回転させるためにハウジング上部に設けられた駆動装置と、前記無端ベルトに一定間隔で取り付けられ、無端ベルトの回転によって所定の軌道で循環するバケットと、圧縮空気を前記底板から前記前側面板に向けて噴出するために、前記底板の異なる位置にバケットの循環軌跡に沿って設けられた複数の送風ノズルと、レシーバタンクから前記複数の送風ノズルに圧縮空気を供給する配管とを備え、上下に設けられたプーリの回転に伴い、それらのプーリに跨って懸架された無端ベルトが上下動し、その無端ベルトに一定間隔で取り付けられた複数のバケットが循環することにより、バケットの内容物を下方から上方へ運搬するとともに、バケットに取り込まれなかった残留物を複数のノズルから噴出させた圧縮空気でバケットに取り込むことによって上方へ運搬するバケット式エレベータであって、前記各送風ノズルへ圧縮空気を供給する各配管に、圧縮空気の噴出量を調整するための開閉弁が夫々設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記複数の送風ノズルから噴出する圧縮空気を、循環する各バケットの方向へ向けるための整流板を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、配管に設けられた開閉弁によって、選択した送風ノズルのみにタンクから供給される圧縮空気を流通させ、且つその風量を調節することができる。したがって、残留物が多量な場合でも、最初に、バケットに取り込み可能な底板前部に滞留する残留物のみを噴き上げ、続いて、底板後部に残った残留物を噴き上げて底板前部に移動させた後、再度前部の送風ノズルで噴き上げてバケットに回収するという効率よい回収をすることが出来る。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、その噴き上げられた残留物は、整流板によって、その進行方向がバケットの上昇軌跡と交差するように変更される為、効率よくバケット内に回収される。したがって、本発明を実施することによって、一回の回収作業を、最小のエネルギーで成し遂げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のバケット式エレベータ1の一実施形態について、図面に基いて詳細に説明する。
図1は、バケット式エレベータ1の概略を示すハウジング内部の透視図であり、図2は、バケット式エレベータ1の下部を切り欠いて拡大したものであり、図3は、整流板6の設置部位を示す説明図である。また、図4は、送風ノズル5a〜c、調節弁10、及び開閉弁11a,11bを用いて粉粒体残留物8を回収する様子を示した説明図である。
【0011】
バケット式エレベータ1は、ハウジング25と、プーリ21,22と、駆動装置24と、無端ベルト15と、バケット2,2・・と、複数の送風ノズル5a〜cと、配管26と、調節弁10と、電気によって制御可能な電磁弁である開閉弁11a,11bとから成っている。
【0012】
ハウジング25は、前側面板12と後側面板13、及び左右側面板14で囲まれた箱型をしており、その底板4は円弧状で、底板4の上方とバケット2,2・・の軌跡の下方との間には隙間が存在している。また、底板4には、外部のレシーバタンク9からの圧縮空気を噴出させる為の複数の送風ノズル5a〜cが設けられている。
そして、エレベータ内に粉粒体を供給する為の供給ホッパー3は、粉粒体供給口17と、粉粒体投入口16と、さらに粉粒体供給口17に向けて粉粒体を案内する傾斜板18とから成っている。
また、粉粒体供給口17に設置された入口蓋7は、内部から外部には開閉せず、外部から内部にのみ開閉するようになっている。
【0013】
次にプーリ21,22は、ハウジング25内の上部と下部に設けられ、その中心を貫通している軸心が、ハウジング25の左右方向に位置するように設置されている。
無端ベルト15は、その上下のプーリ21,22間に巻き掛け接続され、且つ、その無端ベルト15上には、横幅がハウジングの左右幅の略1/2で且つ縦断面が略U字型をしている上開きのバケット2,2・・が、等間隔に取り付けられている。
【0014】
また送風ノズル5a〜cは、全てが6.5mmの直径を有する同サイズの筒状に形成され、且つそれぞれのノズル間の間隔が50cmとなるように、前後方向に縦一列の状態で設置されている(図2参照)。それぞれの送風ノズル5a〜cにおいては、5aはハウジングの中心付近に底板4に対し15°の角度を成すように設けられ、5bはその後方に底板4と水平になるように設けられ、5cは5bの更に後方で、U字型をした送風ノズルの噴出口が後側面板13に向き合いつつ、噴出した送風が底板4に沿って前側面板12側に流れるように設けられている。
【0015】
さらに配管26は、圧縮空気を製造するコンプレッサー(図示せず)から、その圧縮空気を貯蔵するレシーバタンク9を介して、送風ノズル5a〜cへと繋がっている。
そして、レシーバタンク9から複数の送風ノズルへ供給される圧縮空気の総量を調節する為の調節弁10が、レシーバタンク9と送風ノズル5a〜cの間の、送風ノズル5a〜c寄りに設置されている。配管26は、調節弁10より送風ノズル5a〜c寄りの位置で2つに分岐しており、送風ノズル5aに接続する配管26には、各送風ノズルへ供給される圧縮空気の量を調節する為の開閉弁11aが設けられ、送風ノズル5bと5cに接続する配管26には開閉弁11bが設けられている。送風ノズル5bと5cに接続する配管26は、さらに2つに分岐し、それぞれが送風ノズル5b又は5cに夫々接続している。
【0016】
一方、整流板6は、図3の如く、横長の長方形状に形成されており、バケット式エレベータ1の下方において、前側面板12と40°の角度(同図のθ1)を成して上向きに固着されている。
整流板6のサイズは、左右幅が底板4と略同じ幅で、前後幅が、前側面板12から整流板6の頂点までの幅(L2)を、前側面板12とバケット2,2・・の先端との幅(L1)の1/2倍になるようにしている(図3)。
また、整流板6の上部には、整流板6の上部に粉粒体が入り込むのを防ぐための整流板上板20が設けられている。整流板上板20は、整流板6と同じサイズの横長の長方形状に形成されており、一方の端部は前面側板上12に固着され、反対の端部は斜め下部に突設され、その端縁における水平面に対して整流板6と上下対称になるように設けられている。そして、整流板6の突出している端部と、整流板上板20の突出している端部とが連結されて、略くの字型になっている。
【0017】
(作用)
バケット式エレベータ1は、ハウジング25上部に設置された駆動装置24が上部プーリ21を回転させることによって、無端ベルト15が矢印方向に進行するため、粉粒体供給口17からハウジング25内に搬入された粉粒体が、ハウジング25の内部を循環する複数個のバケット2,2・・によって取り込まれ上方に搬送される。そして、上部のプーリ22の外周に沿って、それぞれのバケット2,2・・が上昇方向から下降方向に反転することにより、バケット2,2・・内の粉粒体が粉粒体排出口23から排出される。回収しきれず底板4上に残った粉粒体残留物8は、底板4上に設けられた複数の送風ノズル5a〜cから噴出される圧縮空気によって噴き上げられる。その噴き上げられた粉粒体は、底板4から前側面板12に沿って垂直に上昇する途中で、その流路を整流板6によってバケット2,2・・の入口方向へ変更され、バケット2,2・・に回収された後、上記と同じ経過で粉粒体排出口23から排出される。
その際に、粉粒体供給口17に設けられた入口蓋7は、外部に向かって開放しない為、エレベータ内部に噴出された圧縮空気を外部に漏らすことを防いでいる。
【0018】
次に、本発明のバケット式エレベータ1が、複数の送風ノズル5a〜c、調節弁10、及び複数の開閉弁11a,11bを用いて、自動制御により粉粒体残留物8の回収作業を行う過程を説明する。
【0019】
粉粒体残留物8が底板4上に大量に堆積している場合(図4A)、調節弁10に次いで開閉弁11aが開放され、送風ノズル5aのみから圧縮空気が噴出される。それによって、送風ノズル5aの前方に位置する粉粒体残留物8が噴き上げられ、整流板6を介しバケット2,2・・内に回収される(図4B)。開閉弁11aが閉じられた後、開閉弁11bが開放され、送風ノズル5bと5cから圧縮空気が噴出する。送風ノズル5bと5cからの圧縮空気により、底板4後部に残留していた粉粒体残留物8が噴き上げられて底板4前方に移動する(図4C)。開閉弁11bが閉じられた後、再度開閉弁11aが開放され、前方に移動した粉粒体残留物8が送風ノズル5aから噴出する圧縮空気に噴き上げられ、整流板6を介しバケット2,2・・に回収される(図4D)。粉粒体残留物8を全て回収するまで、上記の開閉弁11aと11bとを順次開放するステップを繰り返す。
尚、開閉弁11a,11bは電磁弁であるため遠隔でも操作することが出来、さらに、開閉弁11a,11bの調節は、コンピュータ等を用いて無人で操作することが可能である為、噴出させる送風ノズルとその風量を組み合わせたプログラムを実行することが出来る。
【0020】
(効果)
上述の如き本発明に係るバケット式エレベータ1によれば、粉粒体残留物8の分布や量を考慮し、送風ノズル5a〜cの選択と風量を組み合わせることで、効果的に残留物を噴き上げてバケット2,2・・に取り込ませることを可能とし、結果として回収効率を上昇させることが出来、さらにはエネルギーの節約をもたらす。
【0021】
また、上述の如く、本発明においては、整流板6を用いることにより、底板4に沿って移動し、本来ならばそのまま底板4に沿って垂直に上昇してしまう圧縮空気を、バケット2,2・・の開口部の方に誘導することができるため、圧縮空気によって噴き上げられた粉粒体の回収率を飛躍的に増加させることができる。この整流板6の効果は、粉粒体残留物8の量が減っていく毎に効果的であり、さらに粉粒体残留物8の量に合わせて送風ノズル5a〜cからの圧縮空気の流量も減らすことにより、回収作業にかかるエネルギーの節約に一層の効果がある。
【0022】
尚、整流板6を設置する際の、整流板6と前側面板12とが成す角度θ1(図3参照)は、30°以上45°以内ならば、粉粒体供給口17から粉粒体が供給された際に、整流板上板20から底板4の方に滑り落ちるため、整流板上板20上に粉粒物が堆積することはない。
また、整流板6と底板4とが成す角度θ2(図3参照)は、95°以上120°以内ならば、圧縮空気の送風によって効果的にバケット2,2・・に取り込むことができる。
一方、前側面板12から整流板6の頂点までの幅(L2)(図3参照)は、前側面板12とバケット2,2・・の先端との幅(L1)の1/2〜2/3倍の範囲で残留物の取り込みに有効であり、それ以下では効果は小さくなり、それ以上高くすると、かえって、浮遊した残留物がバケット入口に向かう抵抗となる為回収の妨げになる。
【0023】
(変更例)
本発明のバケット式エレベータ1は、噴き上げられた粉粒体を、全てバケット2,2・・の移動路の範囲内に収めるために、送風の流路をよりバケット2,2・・の中心寄りに変更するための整流板補助板19を設けることが可能である(図5)。整流板補助板19は、整流板6下部の左右端から中心に向け、斜めに設置されるが、送風の漏れがないように、底板4、前側面板12,及び整流板6それぞれに密着する形に形成する必要がある。仮に、図5のように、整流板補助板19を略角形の一枚板で形成し、底板4、前側面板12、及び整流板6全てに密着させた場合には、整流板6と整流補助板19とに生じる隙間に粉粒体が入り込まないように、別部材の略三角形状の部材を隙間上部に固着したり、又はビニール等でシーリングして、整流板6と整流補助板19との隙間を塞ぐのが好ましい。
【0024】
さらに、送風ノズル5a〜cの設置箇所は必ずしも3箇所には限らない。ハウジング25の容量が大きい場合、それぞれの送風ノズル5a〜cからの送風を拡散する前に粉粒体残留物8に届かせるために、送風ノズルの個数を増やしたり、ノズルの直径を調節したり、またその設置間隔も調節することが好ましい。さらに、各送風ノズル5a〜cのそれぞれの設置位置に対する角度は、噴出する圧縮空気が底板4から前側面板12に向けてスムーズに流れるような角度であれば変更することが可能であり、且つ各送風ノズルの左右方向における配置も、上記目的を果たせるならば、必ずしも前後方向に縦一列の状態でなくてもかまわない。
またさらに、各送風ノズル5a〜cは、内部に粉粒体を入りにくくするために、送風ノズルカバーを取り付けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】バケット式エレベータの透視図である。
【図2】バケット式エレベータの底部を拡大した縦断側面図である。
【図3】整流板の設置部位の説明図であり、また粉粒体残留物がバケットまで導かれる様子を示した図である。
【図4】バケット式エレベータの説明図で、3つの送風ノズルを組み合わせた送風によって、残留物がバケットに回収される様子を示した図である。
【図5】整流板の下部に設けた整流板補助板の詳細図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・バケット式エレベータ、2・・バケット、4・・底板、5a〜c・・送風ノズル、6・・整流板、11a,11b・・開閉弁、12・・前側面板、13・・後側面板、14・・左右側面板、15・・無端ベルト、17・・粉粒体供給口、21,22・・プーリ、23・・粉粒体排出口、24・・駆動装置、25・・ハウジング、26・・配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に粉粒体供給口を設け、上部に粉粒体排出口を設けている前後左右の側面板と円弧状になった底板とから成るハウジングと、
前記ハウジングの上部と下部にそれぞれ設けられたプーリと、
その上下のプーリに跨って懸架された無端ベルトと、
前記プーリを回転させるためにハウジング上部に設けられた駆動装置と、
前記無端ベルトに一定間隔で取り付けられ、無端ベルトの回転によって所定の軌道で循環するバケットと、
圧縮空気を前記底板から前記前側面板に向けて噴出するために、前記底板の異なる位置にバケットの循環軌跡に沿って設けられた複数の送風ノズルと、
前記複数の送風ノズルに圧縮空気を供給する配管とを備え、
上下に設けられたプーリの回転に伴い、それらのプーリに跨って懸架された無端ベルトが上下動し、その無端ベルトに一定間隔で取り付けられた複数のバケットが循環することにより、バケットの内容物を下方から上方へ運搬するとともに、バケットに取り込まれなかった残留物を複数のノズルから噴出させた圧縮空気でバケットに取り込むことによって上方へ運搬するバケット式エレベータであって、
前記各送風ノズルへ圧縮空気を供給する各配管に、圧縮空気の噴出量を調整するための開閉弁が夫々設けられていることを特徴とするバケット式エレベータ。
【請求項2】
前記ハウジングの内面に、前記複数の送風ノズルから噴出する圧縮空気を循環する各バケットの方向へ向けるための整流板を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバケット式エレベータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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