説明

バスサウンド装置

【課題】スピーカの収容空間からの音漏れ、スピーカ同士の相互干渉を抑制できるバスサウンド装置を提供する。
【解決手段】密閉型スピーカを筐体内に収容し、浴室などに設置するバスサウンド装置において、密閉型スピーカ3は、遮音壁16で区画されたスピーカ収容空間11内に収容され、その遮音壁16と他の空間との境界部分には、ラビリンス構造の配線導出路Rを設けるとともに、上記筺体の外側裏面から、この配線導出路に通じるシール充填穴Hを開設し、配線導出路R内に上記スピーカ3の駆動体3aに接続されたリード線Lを通過させてから、シール充填穴Hよりシール剤を充填して固定した構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音漏れを防止することができるバスサウンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、浴室内の壁面等に埋め込んで使用する、密閉型スピーカを収容したバスサウンド装置が提案されている。たとえば、特願2004−303370号では、スピーカとリモコン操作部とが一体となった構造の装置が提案されている。
【0003】
この種のバスサウンド装置では、スピーカ背面より発する逆位相の音を漏らさない密閉構造となっているが、スピーカに電流を供給するためのリード線を挿通する抜き穴を適所に設けているため、そこを通じて音が背面等より漏れてしまうことがある。図8には、従来の音響装置の内部構造を示しており、図中の矢印は音漏れの流れを示している。
【0004】
この例では、スピーカ収容空間の外周に遮音壁101を設けた密閉構造にしている。この遮音壁101にはリード線102の抜き穴103が開けられており、音漏れを防止するために抜き穴103をシール剤で塞ぐことが実施されているが、作業中にシール剤が流出することがあり、確実に穴を塞ぐことが困難である。また、このような構造では、シール剤の充填作業は組立途中に実施しなければならないが、作業中に他部位へ付着してしまうこともあり、作業効率はきわめてよくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、スピーカの収容空間からの音漏れ、スピーカ同士の相互干渉をおさえるようにしたバスサウンド装置を提供することにある。また、音漏れ防止の作業の効率を向上させることも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のバスサウンド装置は、密閉型スピーカを筐体内に収容し、浴室などに設置するバスサウンド装置において、密閉型スピーカは、遮音壁で区画形成された空間内に収容され、その遮音壁と他の空間との境界部分には、ラビリンス構造の配線導出路を設けるとともに、筺体の外側裏面には、この配線導出路に通じるシール充填穴を開設し、スピーカの駆動体に接続されたリード線を、配線導出路を通過させてから、シール充填穴よりシール剤を充填して固定した構造にしている。
【0007】
請求項2では、請求項1において、バスサウンド装置のボディには、密閉型スピーカと、操作部を構成するための回路基板とを内装し、かつ、密閉型スピーカを取り囲む外周囲にシール充填溝を形成しており、そのシール充填溝にシール剤を充填してスピーカ収容空間を気密にした構造にしている。
【0008】
請求項3では、請求項2において、回路基板は、ポッティング用樹脂を全体に被覆させた構造にし、そのポッティング用樹脂をシール剤としてシール充填溝に充填させるようにしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1〜3に記載のバスサウンド装置によれば、スピーカ収容空間を形成する遮音壁と他の空間との境界部分に設けたラビリンス構造の配線導出路にスピーカより導出したリード線を挿通させてから、シール充填穴から充填剤を充填して配線導出路内のリード線を固定させてしまう構造であるため、音漏れの可能性のある隙間がシール剤で塞がれ、音質を向上させることができる。また、ステレオスピーカを分離して配置する場合にも、音の相互干渉を防止できる。
また、配線導出路はラビリンス構造であるため、粘性のあるシール剤を注入したときでも、すぐにシール剤が流れ出てしまうことはなく、確実に配線導出路を塞ぐことができる。
さらに、シール剤は裏面のシール充填穴から注入できるので、装置の組立完成後にシール剤の注入作業ができ、注入作業中にシール剤で装置内の他部を汚す心配もない。
【0010】
請求項2では、密閉型スピーカと回路基板とを取り囲む外周囲にシール充填溝を形成して、シール剤を充填させることによりスピーカ収容空間を密閉させるので、防水効果にも優れ、音漏れを防止することができる。
【0011】
請求項3では、回路基板の全体をポッティング用樹脂で被覆するようにしているため、ポッティング実施中に、そのポッティング用樹脂をシール充填溝に流れ込ませるようにすれば、シール充填溝をシール剤で容易に充填させることができ、作業効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
【実施例1】
【0013】
図6は本発明のバスサウンド装置の全体構成を示す分解斜視図であり、図7(a)にはカバーを装着する前の状態を示す平面図を、(b)はX−X線断面図を示している。
【0014】
バスサウンド装置Aは、密閉型スピーカ3、3と、操作部を構成するための回路基板2とを内装したボディ1と、そのボディ1の前方に被せられ、密閉型スピーカ3、3を露見させる窓部4aと、回路基板2とともに操作部を構成するためのスイッチ操作部4bとを設けたカバー4と、そのカバー4の上面に被せられ、操作スイッチ5aを設けた防水化粧カバー5とを組み合わせて構成される。
【0015】
このバスサウンド装置Aは、浴室内の壁面にネジで固定され、あるいは防水化粧カバー5を表面に露出させるようにして、配線孔13(図7参照)を設けたボディ1の裏面側を壁面に埋め込むことによって固定される。
また、防水化粧カバー5とボディ1との間、防止化粧カバー5、カバー4、スピーカ3のそれぞれの間は、パッキンやシーリングで防水され、防水化粧カバー5は透明の樹脂シートで防水保護されている。
【0016】
図7は、密閉型スピーカ3と回路基板2とをボディ1に収納した状態を示している。図中の破線は、密閉型スピーカ3の駆動体3aより導出させたリード線Lが配線される経路を示しており、リード線Lは駆動体3aの裏面を通過して回路基板2に接続され、回路基板2から裏面中央部の配線孔13を通って外部へ導出される。なお、図中の符号2aは、スイッチ操作部4bに対応して形成されたスイッチ電極部である。
【0017】
この実施例では、スピーカ3から発する音が、スピーカ3の収容空間から配線経路に沿ってボディ1の他の部分や裏面側に漏れ出ないような工夫がなされている。すなわち、スピーカ3からのリード線Lの配線導出路Rをラビリンス構造にし、その配線導出路Rにシール剤を充填し固定するようにしている。また、図5に示すように、密閉型スピーカ3と回路基板2とを取り囲む外周囲にはシール充填溝Dを設け、そこにシール剤を充填している。これらについて、以下、順次説明する。
【0018】
図1、図2は、ラビリンス構造の配線導出路Rの詳細を説明する図であり、両図ともに、スピーカ3、回路基板2を収納する前のボディ1を示している。
図1(a)はボディ1の平面図で、図中のボディ1内の左、右にはスピーカ収納部11、11、中央に基板収納部12を設けている。
【0019】
これらの収納部11、11、12に、駆動体3aと振動板3bとを含んだスピーカ3、3、回路基板2がそれぞれ収納される。スピーカ収納部11、11は、遮音壁16(図中には遮音壁で形成される密閉ラインを太線で示している)で区画形成されている。
この遮音壁16によって区画形成された収容凹所11a内にスピーカの駆動体3aを収容し、その上方にスピーカ3の振動板3bを接触保持させて塞いだ構造にしている。なお、符号13は配線孔、14は回路基板2を載せ置き支持する基板支持リブである。
収容凹所11aの遮音壁16と振動板3bとの間には、シール剤やパッキン材が介在されて、振動板3bは駆動体3aによって自由に振動可能になっている。
【0020】
図1(b)は、スピーカの駆動体3aと、リード線の配線導出路部分(図1(a)の○で囲んだ部分を含む箇所)の拡大平面図である。
配線導出路Rは、遮音壁16で形成される密閉ライン上、つまりスピーカ収容空間と他の空間との境界部分に設けられている。

スピーカ3の駆動体3aから導出されたリード線Lは、この配線導出路Rを通って回路基板2に接続されており、この配線導出路Rは、図に示すように、基板収納部12側から突出した1組の外リブR1a、R1bと、隔壁15側から突出した1組の支持リブR2(R2a、R2b)と、押さえリブR3とにより形成され、一組の外リブR1a、R1bと、支持リブR2a、R2bとを互い違いに突出させて、ジグザグ通路を形成している。
また、一組の支持リブR2の間には、押さえリブR3の真下に、ボディ1の裏面に開口するシール充填穴H(図3、図4参照)が形成されている。
【0021】
図2は、図1(b)のA−A線断面部分を示す斜視図を示している。また、図3(a)はリード線Lを通過させている配線導出路R周辺の拡大平面図、(b)はB−B線断面図を示している。
これらの図に示したように、外リブR1a、R1bと支持リブR2a、R2bとによって形成されるリード線Lの通過路は、ジグザグ状に形成されている。また、リード線Lが回路基板2に接続される側の外リブR1bは、アール状に形成されている。
押さえリブR3は、裏面に設けられたシール充填穴Hの1組のシール剤導入壁R4、R4上にリード線Lを載せた状態で、リード線Lを上から押さえて固定する構造となっている。
【0022】
したがって、以上のような配線導出路の構造によれば、駆動体3aから導出したリード線Lを、ジグザグなラビリンス構造の配線導出路R内を挿通させ、さらに配線導出路Rをシール剤で充填して配線を固定できるようになっているので、配線路内には余分な隙間がなくなり、スピーカ収容空間を密閉状態に保持することができる。
また、シール剤として、エポキシ、ウレタン、シリコン等の粘性体のあるものを使用すれば、シール剤がこのような迷路に入り込んだときにも他部に流れ出ることなく、配線導出路R内にとどまる。そのため作業効率もよくなる。また、外リブR1bがアール状に形成されているため、リード線Lの先端を回路基板2に接続する際には不要な引っ張り力を作用させることが防止できる。
シール剤は、裏面のシール充填穴Hから注入できるので、バスサウンド装置Aの組立完成後にシール剤注入作業ができ、注入作業中にシール剤で装置内の他部を汚してしまうことがない。
【0023】
図4は、ボディ1の背面図である。ラビリンス構造の配線導出路Rの裏側にはシール充填孔Hが設けられている。なお、シール充填孔Hの真上(孔から見た正面)には、押さえリブR3が配置されている。
【0024】
以上に示した配線導出路Rおよびシール充填孔Hを含んだ遮音構造は、左右スピーカ空間のいずれにも設置されることはいうまでもない。
【0025】
次に、密閉型スピーカ3を取り囲む外周囲に設けたシール充填溝Dについて説明する。
【0026】
図5は、シール充填溝Dを説明するための図であり、(a)はボディ1の平面図、(b)はC−C線断面図である。なお、シール充填は防水、遮音効果を高めるために、スピーカ3の設置後に、ボディ1とカバー4との空隙を埋めるために施される。図5(a)では、シール充填溝Dの位置やシール剤の流れを説明するため、スピーカは図示しない。
【0027】
ボディ1の内側には、密閉型スピーカ3、3を取り囲む外周囲にシール充填溝Dが形成されている。図5(b)に示すように、スピーカ3をスピーカ収納部11に収納すれば、そのスピーカ3でシール充填溝Dの上面が塞がれる。
スピーカ3と回路基板2とを取り付けリード線Lで配線したのち、回路基板2をウレタン等の粘性体(ポッティング樹脂)でポッティングするときに、同時にポッティング樹脂をシール充填溝Dに充填する。
すなわち、回路基板2に対するポッティングにより、スイッチ電極部2aを除く回路基板2の表面を粘性体により埋没させ、粘性体をさらに、回路基板2の表面からシール充填溝Dへと流し込んでゆく。
そして溝全体に充填されたのち、カバー4を装着し、さらに防水化粧カバー5を取り付ける。なお、図中の矢印はシール充填溝Dへのポッティング樹脂の流れを示している。
【0028】
回路基板2からシール充填溝Dへのシール剤の導入は、回路基板2のシール充填溝Dと接する箇所に導入路(導入口)を設けて基板側から樹脂が流れ込むようにしてもよいし、シール充填溝Dの側面の口から直接流し込むようにしてもよい。また、シール充填溝は、スピーカ3、3と回路基板2とを取り囲むような全周型のものを形成し、回路基板2の縁を傾斜構造にして、そこから粘性体を流れ込むようにしてもよい。
【0029】
このように、シール充填溝Dに充填されたシール剤によって、ボディ1とカバー4との隙間はシールされるので、スピーカ3の裏面空間は気密化される。そのため、スピーカ外周からの音漏れを抑止することができるだけでなく、防水効果もある。さらに、シール剤の充填によってスピーカ収納部11の枠の重量が増すため、低音域でのびびりを軽減し、音質を向上させることができる。
【0030】
なお本実施例では、シール充填溝Dを遮音壁16の外周側に設けているが、これには限定されず、内側に設けてシール剤を充填できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明のバスサウンド装置のボディ内部を示す平面図、(b)は、スピーカの駆動体と、リード線の配線導出路部分の平面図である。
【図2】図1(b)のA−A線部分の断面を示す斜視図である。
【図3】(a)はリード線を通過させている配線導出路部分を拡大して示す平面図、(b)は(a)で示したB−B線断面図である。
【図4】本発明装置の背面図(シール剤充填穴を示している)である。
【図5】シール充填溝を示す説明図で、(a)はボディの平面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】本発明のバスサウンド装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【図7】(a)は本発明のバスサウンド装置のカバー装着前の平面図、(b)はX−X線断面図である。
【図8】従来のバスサウンド装置の内部構造を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ボディ
2 回路基板
3 スピーカ
3a 駆動体
3b 振動板
4 カバー
5 防水化粧カバー
11 スピーカ収納部(スピーカ収容空間)
12 基板収納部
13 配線孔
16 遮音壁
R 配線導出路
R1a、R1b 外リブ
R2a、R2b 支持リブ
R3 押さえリブ
H シール充填穴
D シール充填溝
L リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型スピーカを筐体内に収容し、浴室などに設置するバスサウンド装置において、
上記密閉型スピーカは、遮音壁で区画形成されたスピーカ収容空間内に収容され、その遮音壁と他の空間との境界部分には、ラビリンス構造の配線導出路を設けるとともに、上記筺体の外側裏面には、この配線導出路に通じるシール充填穴を開設し、
上記スピーカの駆動体に接続されたリード線を、上記配線導出路を通過させてから、上記シール充填穴よりシール剤を充填して固定した構造にしているバスサウンド装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記バスサウンド装置は、
その装置のボディには、上記密閉型スピーカと、上記操作部を構成するための回路基板とを内装し、かつ、密閉型スピーカを取り囲む外周囲にシール充填溝を形成しており、
そのシール充填溝にシール剤を充填して上記スピーカ収容空間を気密にした構造にしているバスサウンド装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記回路基板は、ポッティング用樹脂を全体に被覆させた構造にし、
そのポッティング用樹脂をシール剤として上記シール充填溝に充填させるようにしているバスサウンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−148800(P2006−148800A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339269(P2004−339269)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】