説明

バスチェア

【課題】子供の成長に合わせて継続して使用可能なバスチェアを提供する。
【解決手段】バスチェア11は、座部12と、背もたれ部13と、座部12の左右に配置される一対の肘掛部14とを備え、主に乳幼児が使用する乳幼児用バスチェアであって、背もたれ部13が座部12の後方端から立ち上がって位置する使用形態と、座部12の座面と背もたれ部13の前面とが当接し、背もたれ部13の背面と肘掛部14の上面とが同一平面上に延在する折畳み形態とに切替可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴室で使用するバスチェア、特に身体が十分に発育していない乳幼児に適したバスチェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバスチェアは、例えば、特開2004−121491号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されているバスチェア1は、図15に示すように、座部2と、背もたれ部3と、座部2の左右に配置される一対の肘掛部4と、保管用台部5と、前枠6とを備え、主に乳幼児が使用する乳幼児用バスチェアである。
【0003】
このバスチェア1は、使用時においては背もたれ部3が座部2に対して所定の角度傾斜して配置され、この傾斜角度は適宜変更することができる。これにより、使用態様に合わせて背もたれ部3の適切な角度が選択できるので、乳幼児に様々な姿勢を取らせることができると記載されている。
【0004】
一方、保管時においては、図16に示すように座部2と背もたれ部3とを重ね合わせるようにしてコンパクトに折り畳むことができる。また、この状態において、バスチェア1は保管用台部5によって自立するので、保管時の平面的設置スペースを減少させることができると記載されている。
【特許文献1】特開2004−121491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成のバスチェア1は、主に乳幼児が使用することを前提としているが、乳幼児は成長が早いので使用可能期間は非常に短い。また、このバスチェア1は、乳幼児の安全のために前枠6と一対の肘掛部4とで保護枠を構成しているので、特に子供の成長によるサイズの変動に対応することが難しい。
【0006】
さらに、このバスチェア1は非常にコンパクトに折り畳むことができるが、乳幼児用バスチェア以外の用途がなく、長期間にわたって使用されることは考えにくいので、この利点を有効に生かせないという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、子供の成長に合わせて継続して使用可能なバスチェアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るバスチェアは、座部と、背もたれ部と、座部の左右に配置される一対の肘掛部とを備える。そして、背もたれ部が座部の後方端から立ち上がって位置する使用形態と、座部の座面と背もたれ部の前面とが当接し、背もたれ部の背面と肘掛部の上面とが同一平面上に延在する折畳み形態とに切替可能である。
【0009】
上記構成のバスチェアは、保管時には座部と背もたれ部とを重ね合わせてコンパクトに折り畳むことができる。また、折畳み形態で背もたれ部の背面と肘掛部の上面とが同一平面となるので、大人用のバスチェア等としても使用可能となる。その結果、子供が成長した後も継続して使用可能なバスチェアを得ることができる。
【0010】
好ましくは、肘掛部は前記座部の後方領域にのみ設けられる。乳幼児を座部に座らせると、自然と両膝が外側を向く。これを妨げると股関節を圧迫し、乳幼児の成長に著しい悪影響を及ぼす恐れがある。そこで、座部の後方領域にのみ肘掛部を設けて前方領域に広いスペースを確保することにより、この問題を解消することが可能となる。
【0011】
好ましくは、背もたれ部は幅広部と幅狭部とを含むT字形状であって、折畳み形態において、幅広部は前記肘掛部の前方に位置し、幅狭部は一対の肘掛部の間に位置する。これにより、折畳み形態において上面に凹凸のない平坦面が形成されるので、大人用バスチェア等として使用し易くなる。
【0012】
好ましくは、バスチェアは、背もたれ部の座部に対する角度を調整する角度調整手段を有する。これにより、例えば、身体を洗うときは背もたれ部を立てた状態とし、頭を洗うときは背もたれ部を倒した状態とする等、使用態様に合わせて背もたれ部の最適な角度を選択することができる。
【0013】
好ましくは、座部の座面は、着座者の臀部および大腿部を受け入れる凹部を有し、凹部は、座部の後方領域から前方領域に向かって広がる略台形形状である。また、背もたれ部の前面は、着座者の背中を受け入れる凹部を有し、凹部は、背もたれ部の下方領域から上方領域に向かって広がる略台形形状であることが好ましい。これにより、姿勢の不安定な乳幼児であっても安全に使用することができる。
【0014】
好ましくは、背もたれ部の前面は、着座者の首を後ろから支える頸椎支え部を有する。頸椎支え部により、乳幼児の首を後ろから支えるので、乳幼児の頸椎を適切な姿勢に維持して気道を閉塞させる心配がない。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、身体の発育が十分でない乳幼児が安全に使用でき、子供の成長後も継続して使用可能なバスチェアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図14を参照して、この発明の一実施形態に係るバスチェア11を説明する。
【0017】
まず、図1〜図11を参照して、バスチェア11の使用形態を説明する。バスチェア11は、座部12と、背もたれ部13と、座部12の左右に配置される一対の肘掛部14とを備え、主に乳幼児が使用する乳幼児用バスチェアであって、図1は背もたれ部13が座部12の後方端から立ち上がって位置する使用形態を示している。
【0018】
座部12は、着座者である乳幼児の臀部および大腿部を受け入れるための凹部12aを有する。この凹部12aは、座面上の後方領域から前方領域に向かって広がる略台形形状であり、凹部12aの前方中央部には、前方領域に向かって高くなる隆起部12bが設けられている。また、座部12の後方領域は肘掛部14によって幅が狭く、前方領域は幅が広いT字形状である。
【0019】
座部12に凹部12aを設けることにより、乳幼児の臀部の位置を安定させることができる。また、凹部12aの形状を略台形形状とし、前方中央部に隆起部12bを設けることにより、両膝を外側に向けて座る姿勢を妨げることがない。さらに、足の間に隆起部12bを配置することにより、乳幼児が座部12の前方から滑り落ちるのを有効に防止することができる。
【0020】
背もたれ部13は、座部12と同様に幅広部13aと幅狭部13bとを含むT字形状であって、乳幼児の頭部を受け入れる凹部13cと、背中を受け入れる凹部13dと、乳幼児の首を後ろから支えるように隆起した頸椎支え部13eとが設けられており、凹部13c,13d全体としては、背もたれ部13の下方領域から上方領域に向かって広がる略台形形状である。
【0021】
頭部および背中を受け入れる凹部13cおよび13dを設けることにより、乳幼児の背中の位置を安定させることができる。また、頸椎支え部13eが、図2に示すように乳幼児の頸椎を後ろから支えるので、乳幼児の頸椎を適切な姿勢に維持して気道を閉塞させる心配がない。
【0022】
また、乳幼児の頭部を受け入れる凹部の他の例として、図3〜図5に示すような背もたれ部23であってもよい。図3に示す背もたれ部23は、乳幼児の頭部を受け入れる凹部23cと、凹部23cの上部および両側部に逆U字状に隆起した頭部位置決め部23aと、凹部23cの下部に乳幼児の頸椎を後ろから支える頸椎支え部23bとを備える。
【0023】
この背もたれ部23は、図4に示すように、頭部位置決め部23aより低い位置まで隆起した頸椎支え部23bによって、乳幼児の頸椎を後ろから支えるので、乳幼児の軌道閉塞を防止することができると共に、図5に示すように、凹部23cの両側部に配置された頭部位置決め部23aが、乳幼児の頭部を適切な位置に位置決めすることができる。
【0024】
肘掛部14は、座部12の後方領域の左右にそれぞれ配置され、乳幼児の横方向への脱落を防止する。ここで、座部12の前方領域に肘掛部14を設けないことにより、乳幼児が両膝を外側に向けた自然な状態で座ることができ、股関節の圧迫を防ぐことができる。また、座部12の前方領域には広いスペースが形成されるので、身体を洗い易くなる。
【0025】
なお、他の実施形態として、肘掛部を座部の前方領域にまで設けたバスチェアであってもよいが、この場合には、乳幼児の股関節の圧迫を避けるために、座部の幅を相対的に広く設計することが好ましい。
【0026】
また、バスチェア11は、使用態様に応じて背もたれ部13の座部12に対する角度を変更可能に設計されている。例えば、背もたれ部13の座部12に対する角度を調整する角度調整手段としての角度調整部材15を有する。この角度調整部材15は、図6に示すように、座部12の後方下部に収納される水平部15aと、背もたれ部13の背面を支持する垂直部15bとを有するL字型の部材である。
【0027】
この角度調整部材15は、水平部15aを引き出したり、押し入れたりすることにより、背もたれ部13を任意の角度で保持することができる。例えば、図7に示すように、最も奥まで押し入れた角度調整部材15の位置では、座部12と背もたれ部13との角度は最も小さくなる。ある程度引き出した角度調整部材15´の位置では、背もたれ部13より倒れた背もたれ部13´の位置、さらに引き出した角度調整部材15´´の位置では、背もたれ部13´よりさらに倒れた背もたれ部13´´の位置となる。
【0028】
さらに、このバスチェア11は、背もたれ部13の高さを調整することができる。例えば、図8に示すように、背もたれ部13をシャフト16によって座部12に回動可能に保持する構造の場合には、図9に示すように、座部12にシャフト16を受け入れる複数の孔12cを設け、背もたれ部13が適切な高さとなるような孔12cを選択すること等により実現可能である。
【0029】
これにより、子供の成長に合わせて背もたれ部13の高さを調節できるので、継続して使用可能なバスチェア11を得ることができる。特に、頸椎支え部13eを適切な位置に配置することができる点で有効である。
【0030】
または、背もたれ部の高さ調整手段の他の例としては、図10に示すように、背もたれ部33の上方領域の内部に高さ調整部33aが収容されている。この高さ調整部33aを、図11に示すように背もたれ部33の上端から任意の高さまで引き上げることにより、背もたれ部33全体としての高さを調整することができる。
【0031】
この方法の場合、背もたれ部33の高さ調整をバスチェアを使用しながら行うことができるので、例えば、洗髪をする際には、高さ調整部33aを収容して低い状態として使用し、身体を洗う際には、高さ調整部33aを引き上げて高い状態として使用する等が可能となる。
【0032】
次に、図12を参照して、この発明の他の実施形態に係るバスチェア41を説明する。このバスチェア41は、基本構造は図1に示すバスチェア11と同様であるので、相違点を中心に説明する。
【0033】
まず、座部42の凹部42aおよび背もたれ部43の凹部43c,43dには、それぞれ表面から裏面に貫通する貫通孔42c,43fを有する。この貫通孔43c,43fは、座部42および背もたれ部43の水抜き孔または通気孔として機能する。
【0034】
また、両端が背もたれ部43の両側面にそれぞれ固定され、中央部がバックル45aによって着脱可能とされている身体固定ベルト45を有している。これにより、さらに乳幼児の身体を安定させることが可能となる。
【0035】
なお、上記の各実施形態において、背もたれ部13,43の凹部13c,13d,43c,43dの底壁および側壁は、それぞれ平面で構成される例を示したが、これに限ることなく、側壁を滑らかな曲線形状としてもよいし、凹部全体を滑らかな曲線形状としてもよい。これにより、乳幼児の頭部または背中と背もたれ部13,43との間に手を入れて身体を洗いやすくなる。
【0036】
また、上記の各実施形態において、乳幼児の身体と接する部分、具体的には座部12,42および背もたれ部13,43の凹部12a,13c,13d,42a,43c,43dは、クッション性を有する材質で形成される層で覆われているのが望ましい。これにより、乳幼児のバスチェアからの脱落を有効に防止できると共に、座り心地のよいバスチェアを得ることができる。
【0037】
上記構成のバスチェア11は、折畳み形態に切替えることができる。図13および図14を参照して、バスチェア11の折畳み形態を説明する。折畳み形態においては、図13に示すように、座部12の座面と背もたれ部13の前面とが当接した状態となり、背もたれ部13の幅広部13aは肘掛部14の前方に位置し、幅狭部13bは一対の肘掛部14の間に位置する。また、背もたれ部13の背面と肘掛部14の上面とは同一平面上に延在し、折畳み形態におけるバスチェア11の上面には平坦面が形成される。
【0038】
この状態のバスチェア11は、コンパクトに折畳み可能であると共に、平坦面を座面として大人用のバスチェア等としても使用可能である。ただし、背もたれ部13の背面は相対的に強度が低いので、大人用バスチェアとして使用する場合には、図14に示すように、天地を逆にして、座部12の裏面を座面として使用することが望ましい。このとき、折畳み形態におけるバスチェア11の肘掛部14および背もたれ部13の幅広部13a両側部の強度を高くすることが望ましい。
【0039】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明は、主に乳幼児が使用するバスチェアに有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態に係るバスチェアの使用形態を示す図である。
【図2】図1に示す背もたれ部の凹部の形状を示す側断面図である。
【図3】背もたれ部の頭部を受け入れる凹部の他の例を示す図である。
【図4】図3のA−A´での断面図である。
【図5】図3のB−B´での断面図である。
【図6】図1に示すバスチェアの背もたれ部の角度調整部材の一例を示す図である。
【図7】図6の角度調整部材を用いて、背もたれ部の角度を調整する状態を示す図である。
【図8】バスチェアの背面図である。
【図9】背もたれ部の高さ調整手段の一例を示す図である。
【図10】背もたれ部の高さ調整手段の他の例を示す図であって、背もたれ部が低い状態で保持された図である。
【図11】図10の背もたれ部を高くした状態を示す図である。
【図12】この発明の他の実施形態に係るバスチェアの使用形態を示す。
【図13】この発明の一実施形態に係るバスチェアの折畳み形態を示す図である。
【図14】図13に示すバスチェアの天地を逆にした状態を示す図である。
【図15】従来の乳幼児用バスチェアの使用時の状態を示す図である。
【図16】従来の乳幼児用バスチェアの保管時の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1,11,41 バスチェア、2,12,42 座部、12a,13c,13d,42a,43c,43d 凹部、12b,42b 隆起部、12c 孔、3,13,23,33,43 背もたれ部、13a,43a 幅広部、13b,43b 幅狭部、13e,43e 頸椎支え部、23a 頭部位置決め部、23b 頸椎支え部、23c 凹部、33a 高さ調整部、4,14,44 肘掛部、5 保管用台部、6 前枠、15 角度調整部材、15a 水平部、15b 垂直部、16 シャフト、42c,43f 貫通孔、45 身体固定ベルト、45a バックル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
背もたれ部と、
前記座部の左右に配置される一対の肘掛部とを備えるバスチェアであって、
前記バスチェアは、前記背もたれ部が前記座部の後方端から立ち上がって位置する使用形態と、前記座部の座面と前記背もたれ部の前面とが当接し、前記背もたれ部の背面と前記肘掛部の上面とが同一平面上に延在する折畳み形態とに切替可能である、バスチェア。
【請求項2】
前記肘掛部は、前記座部の後方領域にのみ設けられる、請求項1に記載のバスチェア。
【請求項3】
前記背もたれ部は、幅広部と幅狭部とを含むT字形状であって、
前記折畳み形態において、前記幅広部は、前記肘掛部の前方に位置し、
前記幅狭部は、前記一対の肘掛部の間に位置する、請求項2に記載のバスチェア。
【請求項4】
前記バスチェアは、前記背もたれ部の前記座部に対する角度を調整する角度調整手段を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のバスチェア。
【請求項5】
前記座部の座面は、着座者の臀部および大腿部を受け入れる凹部を有し、
前記凹部は、前記座部の後方領域から前方領域に向かって広がる略台形形状である、請求項1〜4のいずれかに記載のバスチェア。
【請求項6】
前記背もたれ部の前面は、着座者の背中を受け入れる凹部を有し、
前記凹部は、前記背もたれ部の下方領域から上方領域に向かって広がる略台形形状である、請求項1〜5のいずれかに記載のバスチェア。
【請求項7】
前記背もたれ部の前面は、着座者の首を後ろから支える頸椎支え部を有する、請求項1〜6のいずれかに記載のバスチェア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−143980(P2007−143980A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344518(P2005−344518)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】