説明

バックストップ

【課題】シート式バックストップにおいて、弾丸の集中域の集中域シートを、比較的簡単な手段によって効率よく使用する。
【解決手段】前面部を開口した直方体状筐体を枠体で形成したバックストップにおいて、該筐体の背面部は、標的を設けた集中域用シートの交換を目安とするための防弾パネル11を貼設し、前記筐体の開口した前面部の上部・下部には、それぞれ上部防弾壁3と下部防弾壁4とを設け、上部防弾壁の後部には、複数枚の集中域用シート5と、飛散域用シート6等の吊り下げ具7を設け、前記集中域用シート本体は、矩形状で、飛散域用シートと比べて、横幅寸法αも細く、縦幅寸法βも短く形成し、該集中域用シート本体、複数枚を、飛散域用シートより前方に吊り下げ、使用頻度に応じて、集中域用のシート本体を、左右方向移動手段あるいは/および上下方向移動手段を用い、左右方向に入れ替え、または上下方向にも移動させて使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックストップ(停弾装置)に関するものであり、実弾射撃を行うための射撃場において、射撃手が発砲して標的を外した弾丸や、標的を貫通した弾丸が飛散することを防止するため、通常、標的の後方で弾丸を捕捉するためのバックストップである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックストップに関する技術は、複数、開示されており、その一例目としては、弾丸を粉砕せずに捕捉して容易に回収できるよう構成した発明である。例えば、特許文献1のように。
【0003】
しかし、この技術は、バックストップは標的の後方に配設されるものであるが、該バックストップ(1)には、トラップ材(2)に、繊維入り硬質ゴム素材よりなるトラップ材(21)を複数枚吊り下げ、トラップ材の後方に鋼板(3)を設けたものや、繊維入り硬質ゴム素材よりなるトラップ材(21)と鋼板よりなるトラップ材(22)とが、交互に設けたものが開示されており、その目的・効果は、射撃された弾丸の破損を防止し、弾丸を確実に回収することにある。
【0004】
しかし、この技術は単にトラップ材の間隔を弾丸の長さより大きくするように配設したものであるが、実弾射撃場では標的位置が決まっており、着弾分布はほとんどが標的中央部となるため、トラップ材の1部分のみ集中被弾して1分だけに欠落部が生じてしまう。
【0005】
この1部分だけに欠楽部が生じたトラップ材は、1部分が弾丸を止める効果が低下したことにより、トラップ材を新品に交換する必要があり無駄が多い。
【0006】
次に、二例目としては、やはり標的(20)の後方にバックストップ(1)が設けられており、該標的(20)の入射目標部(22)に向けて弾丸を発射させ、目標部(22)を通過した弾丸がバックストラップ(1)により弾丸が回収されるよう構成したものであり、弾丸の回収が容易で、経済性に優れ、小型で設置も容易なバックストップに関するものである。例えば、特許文献2のように。
【0007】
この開示された技術は、弾丸が集中して入射する部分を、他の部分から分離して交換可能とするものであり、板材(4)に設けた標的の入射目標部に対応位置する孔部を5箇所も設けており、しかも、孔部(9)には脱着可能に装着する交換部(10)を設け、該交換部の孔部(9)には、円形の周面に周方向に3つの凹入部(8)を形成している。
【0008】
しかし、射撃によって孔部(9)の周面が被弾される場合が多々あり、この周面を利用して、確実に標的(20)の交換部(10)と取り替えることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4001595号公報
【特許文献2】実用新案登録第3135964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、シート式バックストップにおいて、弾丸の集中域の集中域シートを、比較的、簡単な手段によって効率よく使用することのできるバックストップを開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による課題を解決するための手段としては、バックストップの弾丸の散布域に位置する散布域用シートに比べて、弾丸の集中域に位置する集中域用ゴムシートの横幅を狭く形成し、移動可能に設けるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、図3に示すように標的(A)を通過した弾丸が、集中域用シート(5)に被弾し、該シートが損耗しても、左右方向移動手段、上下方向移動手段により集中域用シート(5)の位置を移動することにより、比較的被弾の少ない集中域用ゴムシート部分を、左右方向に、あるいは上下方向に簡単に移動して吊り下げることにより、取り替えることなく、比較的に長期に使用できる。
【0013】
その長期に使用できる根拠としては、図5に示すように、第1回目に、バックストップの1レーン当り5,000発を発砲した場合には、集中域シート(5)を、1〜12枚目を左右入れ替え、第2回目に、累計約10,000発、発砲した場合には、集中域シート(5)を、1〜12枚目、13〜16枚目を、防弾パネル(11)への着弾等を目安に交換し、第3回目に、累計約15,000発、発砲した場合には、集中域シート(5)は、1〜12枚目を左右入れ替え、第4回目に、累計約20,000発、発砲した場合には、集中域シート(5)は、1〜12枚目、13〜16枚目を交換し、かつ防弾パネル(11)を交換する程度であり、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例を示し、(A)は、一部欠截平面図であり、(B)は、一部欠截正面であり、(C)は、図1(B)中の(a)部分の拡大図である。
【図2】この発明の一実施例を示す側面図である。
【図3】この発明の一実施例を示す斜視図である。
【図4】この発明に使用する左右方向移動手段・上下方向移動手段の一実施例を示し、(A)は、その一例を示す斜視図であり、(B)は、他の実施例を示す斜視図である。
【図5】この発明に使用する左右方向移動手段の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明について詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0016】
この発明の一実施例を図に基づいて、バックストップの詳細に説明すると、シート式のバックストップであって、適宜な幅と、適宜な奥行きと、適宜な高さを有し、前面を開放した枠体(1)を設け、該枠体(1)は、鋼材で構成されており、その背面は射撃手が発砲した銃弾の飛散域であって、防弾パネル(2)で覆っており、この防弾パネルへの着弾状態を見て飛散域用シートの交換の目安とするものである。
【0017】
前記枠体(1)の両側面には、それぞれ合成樹脂製、または合成ゴム製のカーテン(10a)(10b )を貼設しており、前記枠体(1)の前面の上部には、防弾性能を有する素材で形成された上部防弾壁(3)を取り付け、前面の下部には、同じく防弾性能を有する素材で形成された下部防弾壁(4)を取り付けている。
【0018】
そして、上部防弾壁(3)、下部防弾壁(4)は、それぞれ該壁の中央で観音開きができ、それぞれの防弾壁(3)(4)より後部に位置する部材、例えば、吊り下げ具、弾丸回収トレー等の作業が行い易いよう構成されている。上部防弾壁(3)、下部防弾壁(4)は、中央で観音開きができなくとも、より後部の部材を扱う作業は可能である。
【0019】
また、上部防弾壁(3)の背部付近には、複数枚(例えば8枚)の飛散域用シート(6)と、同じく、複数枚(例えば16枚)の集中域用シート(5)と同じ数、所定間隔をあけて吊下する吊り下げ具(7)が設けられており、飛散域用シート(6)と集中域用シート(5)の間には、防弾パネル板(11)を吊下する吊り下げ具(7′)が設けられている。防弾パネル(11)は、着弾状態を見て集中域用シート(5)の交換の目安とするものである。
【0020】
また、前記上部防弾壁(3)の前部付近には、それぞれ複数枚(図においては8枚)の集中域用シート(5)を吊下する,略カーテンレールのような矩形状枠体(8)が、所定間隔をあけて複数、前後方向に向けて列設されている。
【0021】
さらに、前記下部防弾壁(4)の後部には、弾丸回収トレイ(12)や、背面に対して所定の角度で傾斜した箇所に、飛散域用シート(13)を敷設している。
【0022】
尚、本願の集中域用シート(5)、飛散域用シート(6)並びに、飛散域用シート(13)の各素材は、基本的にはゴムシートを用いるが、繊維入りの硬質ゴムシートでもよく、また、これらの素材に限定されることはない。
【0023】
そして、本願の防弾パネル(2)、(11)の素材は、基本的には耐衝撃性の樹脂板を用いるが、防弾繊維や金属板などでもよく、また、これらの素材に限定されることはない。
【0024】
以上のように、枠体(1)の前面に、前記上部防弾壁(3)や前記下部防弾壁(4)を設けることにより、標的に向けて射撃された弾丸にから、後部の諸部材を保護しており、これら枠体(1)は、複数体が、レーン状に列設されて、射撃場を構成している。
【0025】
次に、左右方向移動手段(X)は、上部防弾壁(3)の後方に位置し、かつ、前後方向に併設した、複数で、長細の矩形状枠(8)に、集中域用のシート本体(5)を吊下する吊り下げロープ(7)の上端の輪(7a)の部分を挿通し、集中域用のシート本体(5)を、図4(A),(B)に示すように、左右方向移動可能と構成したものである。
【0026】
さらに、上下方向移動手段(Y)の一実施例としては、集中域用のシート本体(5)を吊下する,吊り下げロープ(7)に、図4(A)に示すように、高さ位置が異なった箇所に複数の輪(7b)をそれぞれ設け、異なった位置の輪に変え、該輪を長細の矩形状枠(8)に装着して使用するものであることを特徴とするバックストップである。
【0027】
そして、上下方向移動手段(Y)の他の実施例としては、図4(B)に示すように、集中域用のシート本体(5)を吊下する,吊り下げロープ(7)の中間に、角材等からなる巻取具(9)を設け、該巻取具に、吊り下げロープ(7)を、1巻、または2巻して、集中域用のシート本体(5)の上下方向の移動調整が可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、バックストップの技術を確立し、実施することにより、産業上利用できるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 枠材
2 防弾パネル
3 上部防弾壁
4 下部防弾壁
5 集中域用シート
6 飛散域用シート
7 吊り下げロープ
7′吊り下げ具
7a ロープの輪
7b 高さ位置が異なったロープの輪
8 矩形状枠体
9 角材
10a,10b 合成樹脂製のカーテン
11 防弾パネル
12 弾丸回収トレイ
A 標的
X 左右方向移動手段
Y 上下方向移動手段
α 横幅寸法
β 縦幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部を開口した直方体状筐体を枠体(1)で形成したバックストップにおいて、
、該筐体の背面部には、標的(A)を設けた集中域用シートの交換を目安とするための防弾パネル(11)を貼設し、
前記筐体の開口した前面部の上部・下部には、それぞれ上部防弾壁(3)と下部防弾壁(4)とを設け、
上部防弾壁(3)の後部には、それぞれ複数枚の集中域用シート(5)と、飛散域用シート(6)等を吊下する,吊り下げ具(7)をそれぞれ設け、
前記集中域用シート(5)は、矩形状で、かつ、飛散域用シート(6)と比べて、横幅寸法(α)も細く、または/および縦幅寸法(β)も短く形成し、
該集中域用シート(5)、複数枚を、飛散域用シート(6)より前方に吊り下げ、使用頻度に応じて、集中域用シート(5)を、左右方向移動手段(X)あるいは/および上下方向移動手段(Y)を用いて、左右方向に入れ替え、または上下方向にも移動させて使用することを特徴とするバックストップ。
【請求項2】
左右方向移動手段(X)が、上部防弾壁(3)の後部に位置し、かつ、前後方向に併設した、複数で、長細の矩形状枠(8)に、集中域用シート(5)を吊下する吊り下げロープ(7)の上端の輪(7a)の部分を挿通し、集中域用シート本体(5)を、左右方向移動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載のバックストップ。
【請求項3】
上下方向移動手段(Y)が、集中域用シート(5)を吊下する,吊り下げロープ(7)に、高さ位置が異なった箇所に複数の輪(7b)をそれぞれ設け、該輪の位置を変えて長細の矩形状枠(8)に装着して使用するもの、または吊り下げロープ(7)の長さを変えたものに交換することで上下方向移動手段とすることを特徴とする請求項1記載のバックストップ。
【請求項4】
上下方向移動手段(Y)が、集中域用シート(5)を吊下する,吊り下げロープ(7)の中間に、角材等からなる巻取具(9)を設け、該巻取具に、吊り下げロープ(7)を、1巻、または2巻して、吊り下げロープ(7)の高さ位置を変更し、集中域用のシート本体(5)の上下方向の移動調整が可能とすることを特徴とする請求項1記載のバックストップ。
【請求項5】
集中域用シート(5)は、設置する射撃場において、想定される着弾分布によって縦、横寸法を必要最小限の大きさとし、かつ集中域用シート(5)の高さ方向の中心と、標的の高さ方向の中心とを吊り下げロープ(7)の長さを調整して合わせることを特徴とする請求項1記載のバックストップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92284(P2013−92284A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233670(P2011−233670)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(391018639)バブ日立工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】