説明

バッグインボックス用袋

【課題】 ガスバリヤー性、アルコール不透過性、低温での耐屈曲疲労性(耐ピンホール性)、耐衝撃性、輸送適性などに優れたヒートシールタイプのバッグインボックス用袋と、このような諸特性を有するバッグインボックス用袋を、段ボール箱または板紙製容器内に組み込んだバッグインボックスとを提供すること。
【解決手段】 融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された基材層の少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有し、かつ、両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有する耐水性皮膜からなるガスバリヤー性樹脂層が設けられ、さらに、いずれか一方の面上に、必要に応じて接着性層を介して、密度0.880〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂から形成された厚み30〜200μmの熱融着性樹脂層が設けられた多層フィルムからなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バッグインボックス(バッグインカートンを含む)に用いられるバッグインボックス用袋に関し、さらに詳しくは、ガスバリヤー性、アルコール不透過性、低温での耐屈曲疲労性(耐ピンホール性)、耐衝撃性、輸送適性などに優れたバッグインボックス用袋に関する。また、本発明は、段ボール箱または板紙製容器内に該バッグインボックス用袋を組み込んでなるバッグインボックスに関する。
【0002】
【従来の技術】バッグインボックス(Bag In Box)は、折りたたみ可能なプラスチック製の袋(薄肉成形容器を含む)を、外装用段ボール箱の中に入れ、液体の輸送や保管に使用する包装容器である。すなわち、バッグインボックスは、内装には、軽くて、耐薬品性に優れ、しかも柔軟性があって折りたたみできるプラスチック袋を使用し、外装には、堆積性、ハンドリング性、物理的強度、印刷表示性などを備えた段ボール箱を使用した組み合わせ容器である。外装用段ボールの代わりに白板紙(カートン)を用いたものをバッグインカートンという。バッグインボックスは、容量が2〜25リットル程度の液体用容器であり、主として、業務用のクリーム、ミネラルウォーター、醤油、調味料などの食品・飲料;農薬、現像液、トイレタリーなどの化学薬品;医薬品などの容器として使用されている。バッグインカートンは、容量が1〜2リットル程度の液体容器であり、日本酒、食用油などの容器として使用されている。バッグインボックス及びバッグインカートンには、内装と外装が貼り合わされていないタイプ、内装と外装が貼り合わされているタイプ、内装の袋に口金(注出口)を取り付けたもの、注出口が外装の容器と一体になっているものなど、様々な種類があるが、いずれもリジッドな外装とフレキシブルな内装を組み合わせた容器である点で共通している。したがって、本発明では、バッグインボックスという用語を、バッグインカートンをも意味するものとして使用する。
【0003】バッグインボックスの内装に使用されるプラスチック製の袋(バッグインボックス用袋)は、製造方法によって、(1)真空成形やブロー成形によって作られる成形タイプと、(2)インフレーション法やTダイキャスト法により得られたフレキシブルなフィルムを熱融着して作られるヒートシールタイプ(フィルムタイプともいう)の2つに大別することができる。ヒートシールタイプは、4方シールの袋体であり、通常、口金もヒートシールにより取り付けられる。ヒートシールタイプのバッグインボックス用袋は、2〜3重袋とされることが多い。成形タイプは、■シール部の安定性に優れ、漏れに対する安全性が高い、■流通過程で受ける落下や振動による強度に優れる、■ある程度の剛性があり、充填や使用時の使い勝手に優れるなどの利点がある一方、■加工適性や作業性などの点で樹脂素材の選択の自由度が小さい、■金型が必要であり、容量の変更が比較的難しい、■偏肉が避けられない、■製造設備が高いため、コストが高いという欠点がある。
【0004】これに対して、ヒートシールタイプは、単体フィルム、共押出フィルム、ラミネートフィルムなどの種々の素材を使用することができるため、素材の選択の自由度が高く、しかもガスバリヤー性が必要な場合には、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)層、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層、アルミニウム蒸着フィルムなどのガスバリヤー層を積層した多層フィルムを使用することができる。また、ヒートシールタイプは、成形タイプに比べて、容量や形態の変更が容易で、コストも安価である。しかしながら、ヒートシールタイプは、成形タイプに比べて、ピンホールの発生要因が多いという欠点がある。一般に、内装袋に液体を充填したバッグインボックスは、輸送時に、振動や衝撃を受けて液体に揺動が発生し、これによって内装袋に繰り返し屈曲が生ずることにより、内装袋が疲労破損し、ピンホールが発生しやすい。また、輸送時に、内装袋と段ボール箱内面が擦れて、内装袋が繰り返し摩擦を受けるため、ピンホールが発生しやすい。内容物の揺動を抑えるためには、成形タイプの場合には、内装袋の成形外寸と段ボール箱の内寸を一致させることにより、内装袋と段ボール箱内面を密着させればよいが、ヒートシールタイプの場合には、シール部があるため、内装袋の内寸と段ボール箱の内寸を正確に一致させるのが困難である。しかも、ヒートシールタイプは、フィルムを折り曲げて製袋しているため、折り曲げ部が存在するが、屈曲疲労や摩擦により、その折り曲げ部でピンホールが発生しやすい。
【0005】バッグインボックスは、流通過程で様々な環境条件下に置かれるが、ヒートシールタイプの内装袋を組み込んだバッグインボックスは、特に低温環境下で振動や衝撃を受けると、ピンホールが発生しやすい。また、ヒートシールタイプの内装袋を組み込んだバッグインボックスは、低温環境下で落下すると、シール部から破袋しやすい。従来より、ヒートシールタイプのバッグインボックス用袋に関し、様々な提案がなされている。例えば、特公平5−31473号公報には、オレフィン系重合体組成物からなる両表面層と、気体遮断性材料からなる中央層とを接着剤を用いて積層させてなる積層フィルムを用いたバッグインボックス用内袋が提案されており、気体遮断性材料として、EVOH、アルミニウム箔、ポリビニルアルコール(PVA)などが示されている。特開平7−300141号公報には、表面層にEVOH層を有する内袋用シートと、該内袋用シートの非表面層の面に重ね合わせられる外層用シートとからなる包装材料を用いたバッグインボックス用袋が提案されている。
【0006】しかしながら、ガスバリヤー性樹脂層として、EVOHなどの従来の気体遮断性樹脂を用いた多層フィルムは、流通過程で充分に想定される低温(例えば、5℃)での耐ピンホール性に劣る。アルミニウム箔などの金属箔を蒸着した蒸着フィルムを用いた多層フィルムは、輸送時に屈曲ダメージを受けてガスバリヤー性が低下する。また、濃縮果汁などの飲料や、現像液などの化学品といった、酸素に対し特に敏感な内容物を保存・流通するには、従来の気体遮断性樹脂を用いたバッグインボックス用袋では不充分である。さらに、清酒やワインなどのアルコール飲料を保存・流通するには、従来の気体遮断性樹脂を用いたバッグインボックス用袋では、アルコール不透過性の点で不充分である。低温での屈曲疲労に起因するピンホールの発生という従来のヒートシールタイプのバッグインボックス用袋の大きな欠点を克服することができるならば、素材の選択の自由度やガスバリヤー性等の機能性の付与、容量や形状の変更の容易さ等の点で、成形タイプよりも全体として優れた特性を有するバッグインボックス用袋を提供することができるが、従来技術では、諸特性を充分に満足させることができる素材は見いだされていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ガスバリヤー性、アルコール不透過性、低温での耐屈曲疲労性(耐ピンホール性)、耐衝撃性、輸送適性などに優れたヒートシールタイプのバッグインボックス用袋を提供することにある。本発明の他の目的は、前記の如き優れた諸特性を有するバッグインボックス用袋を、段ボール箱または板紙製容器内に組み込んでなるバッグインボックスを提供することにある。本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、融点またはビカット軟化点が180℃以上の耐熱性を有する熱可塑性樹脂から形成された基材層の少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する樹脂組成物から形成された高度のガスバリヤー性かつ耐水性の皮膜からなるガスバリヤー性樹脂層を設け、さらに、いずれか一方の面上に、必要に応じて接着性層を介して、密度0.880〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂から形成された厚み30〜200μmの熱融着性樹脂層を設けた多層フィルムが、バッグインボックス用袋の素材として優れた諸特性を発揮することを見いだした。
【0008】本発明で使用するガスバリヤー性樹脂層は、基材層の上に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する溶液を塗工し、熱処理することにより形成することができる(特開平7−205379号公報、特開平7−251485号公報)。この熱処理によって、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有する耐水性皮膜が形成され、かつ、高度のガスバリヤー性を発揮する。この耐水性皮膜は、冷水から熱水に至るまでの水に対して難溶性であり、沸騰水に対しても難溶性である。また、この耐水性皮膜は、ガスバリヤー性に優れているのみならず、アルコール不透過性にも優れている。耐水性皮膜に、さらに、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの遊離カルボン酸どうしが多価金属イオンによりイオン架橋された構造を導入することにより、ガスバリヤー性をより高度のものとすることができる。したがって、本発明のバッグインボックス用袋は、低温での屈曲疲労に起因するピンホールの発生という従来のヒートシールタイプのバッグインボックス用袋の大きな欠点を克服することができることに加えて、ガスバリヤー性、アルコール不透過性、輸送適性等に優れるという顕著な作用効果を奏し得るものである。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された基材層(A)の少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する樹脂組成物から形成され、かつ、両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有する耐水性皮膜からなるガスバリヤー性樹脂層(B)が設けられ、さらに、いずれか一方の面上に、必要に応じて接着性層(C)を介して、密度0.880〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂から形成された厚み30〜200μmの熱融着性樹脂層(D)が設けられた多層フィルムからなるバッグインボックス用袋が提供される。また、本発明によれば、段ボール箱または板紙製容器内に、前記のバッグインボックス用袋を組み込んでなるバッグインボックスが提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
基材層(A)ガスバリヤー性樹脂層(B)は、通常、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する混合物の溶液を基材層(A)の上に流延し、乾燥させて皮膜を形成させた後、高温で熱処理する方法により形成される。したがって、基材層(A)は、熱処理条件下で軟化や溶融をしないだけの耐熱性を有することが必要である。本発明では、融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成されたフィルムまたはシートを基材層(A)として使用する。基材層(A)は、熱処理後のガスバリヤー性樹脂層(B)との層間接着性に優れていることが好ましい。融点は、JIS K7121により、ビカット軟化点は、JIS K7206により、それぞれ測定される。
【0011】基材層(A)を形成する熱可塑性樹脂としては、耐熱性の観点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体などのナイロン、ポリフェニレンサルファイドなどを挙げることができる。耐熱性及びガスバリヤー性樹脂層(B)との層間接着性の観点から、基材層(A)を形成する熱可塑性樹脂は、PET及びナイロンが好ましい。基材層(A)は、延伸PETフィルムまたは延伸ナイロンフィルムであることが特に好ましい。基材層(A)の厚みは、特に限定されないが、強度、柔軟性、経済性などの観点からは、通常5〜100μm、好ましくは5〜40μm、より好ましくは5〜30μm程度である。基材層の厚みが小さすぎると、ガスバリヤー性樹脂層の支持体としての強度が不足する。基材層の厚みが大きすぎると、得られるバッグインボックス用袋の低温での屈曲疲労に起因する耐ピンホール性に劣る。
【0012】ガスバリヤー性樹脂層(B)本発明では、ガスバリヤー性樹脂層として、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する樹脂組成物から形成され、かつ、両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有するガスバリヤー性と耐水性に優れた皮膜を使用する。
【0013】<ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー>ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸、及びポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを使用する。本発明で使用するポリ(メタ)アクリル酸は、カルボキシル基を2個以上含有する化合物であって、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体、あるいは、これらの2種以上の混合物などである。好適なものとして、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーや両者のコポリマーを挙げることができる。ポリ(メタ)アクリル酸の数平均分子量は、特に限定されないが、2,000〜250,000の範囲が好ましい。
【0014】部分中和は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種を用いて行われることが望ましい。このような態様においては、中和度は、0を越え20%以下(さらには、0を越え18%以下)の範囲であることが好ましい。ここに「中和度」は、以下の式により求められる。
中和度=(X/Y)×100(%)
X:部分中和されたポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー1g中の、中和されたカルボキシル基の全モル数である。Y:部分中和されるべきポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー1g中の、部分中和前のカルボキシル基の全モル数である。また、得られる熱処理皮膜の酸素バリヤー性向上を目的に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーに金属塩を添加してもよい。金属塩は、一価金属塩または次亜リン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種を用いて行われることが望ましい。金属塩の添加量は、一価金属塩及び次亜リン酸塩ともに熱処理皮膜の重量に対して、1.0×10-5〜3.0×10-3mol/gの範囲であることが好ましい。
【0015】<ポリアルコール系ポリマー>本発明で使用するポリアルコール系ポリマーとは、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール系重合体であり、好ましくは、ポリビニルアルコール(PVA)及び糖類である。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用する。本発明で使用するPVAは、けん化度が通常95%以上、好ましくは98%以上で、平均重合度が通常300〜2500、好ましくは300〜1500のものである。高けん化度のPVAと、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとの混合系は、相溶性に優れており、例えば、水溶液にした場合に、均一な混合溶液が得られる。糖類は、種々の単糖類の縮重合によって生態系で合成される生体高分子、及びそれらを化学修飾してなるものが使用可能である。このような糖類の具体例としては、例えば、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、多糖類等が挙げられる。得られる熱処理皮膜の酸素ガスバリヤー性の点からは、ソルビトール、デキストリン、水溶性澱粉等が好適に使用可能である。
【0016】<ガスバリヤー性樹脂層(B)の形成>基材層(A)の少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する樹脂組成物から、両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有する耐水性皮膜〔ガスバリヤー性樹脂層(B)〕を形成するには、先ず、両ポリマーを含有する混合物の溶液を調製する。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーとの混合物は、■各成分を水に溶解させて混合する方法、各成分の水溶液を混合する方法、■ポリアルコール系ポリマーの水溶液中で(メタ)アクリル酸モノマーを重合させる方法、■ポリアルコール系ポリマーの水溶液中で(メタ)アクリル酸モノマーを重合させた後、アルカリで部分中和する方法などにより調製することができる。これらの混合物は、水溶液とした場合に、均一な溶液とすることができる。水以外に、アルコール、アルコールと水との混合液などの溶剤を用いて混合物を調製してもよい。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーとの配合割合は、通常、5:95〜95:5(重量比)である。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとPVAとの混合物を使用する場合には、配合割合(重量比)は、好ましくは90:10〜10:90、より好ましくは80:20〜20:80である。ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類との混合物を使用する場合には、配合割合(重量比)は、好ましくは90:10〜20:80、より好ましくは90:10〜40:60である。
【0017】これらの混合物から皮膜を作成するには、混合物の水溶液を基材層(A)上に流延し、乾燥して皮膜を形成させる方法(溶液流延法)を採用することが、均一な厚みの乾燥皮膜を容易に得ることができるため好ましい。溶液流延法を採用する場合には、ポリマー濃度は、通常、0.5〜60重量%、好ましくは5〜30重量%程度とする。水溶液を作成する場合、所望によりアルコールなどの水以外の溶剤や柔軟剤等を適宜添加してもよい。乾燥皮膜の厚みは、特に限定されないが、ガスバリヤー性、アルコール不透過性、及び低温での耐屈曲疲労性のバランスの観点からみて、通常0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは0.5〜3μm程度である。この乾燥皮膜厚みは、熱処理後においても実質的に変化しない。皮膜の厚みが小さすぎると、充分なガスバリヤー性及びアルコール不透過性を得ることができない。皮膜の厚みが大きすぎると、得られるバッグインボックス用袋の低温での耐屈曲疲労性が劣り、ピンホールが発生しやすくなる。
【0018】乾燥皮膜は、冷水や沸騰水に溶解性であり、かつ、ガスバリヤー性も充分ではないので、熱処理を行う。熱処理は、前記混合物から形成した乾燥被膜を有する基材層(A)を熱風や加熱炉などの乾熱雰囲気下、または熱ロールなどの加熱体との接触下に、所定温度で所定時間保持することにより行う。熱処理温度(T)は、通常373〜623K(100〜350℃)、好ましくは433〜573K(160〜300℃)、より好ましくは453〜523K(180〜250℃)である。熱処理時間(t)は、通常、1秒間〜20時間、好ましくは1秒間〜30分間、より好ましくは3〜120秒間である。熱処理条件としては、一般に、熱処理温度が低い場合には、長時間熱処理を行い、熱処理温度が高くなるにつれて、熱処理時間を短くする。低温で短時間の熱処理では、高いガスバリヤー性と耐水性とを備えた皮膜を得ることが困難であり、高温で長時間熱処理すると、皮膜の変色や分解が生じるので、いずれも好ましくない。より具体的には、以下の熱処理条件を好ましいものとして挙げることができる。
【0019】熱処理皮膜は、30℃、相対湿度(RH)80%で測定した酸素透過度が100cm3(STP)/m2・24h・atm以下であることが好ましく、10cm3(STP)/m2・24h・atm以下であることがより好ましい。熱処理により、乾燥皮膜は、冷水に対してはもとより、熱水さらには沸騰水に対しても難溶性となり、耐水性が付与される。より具体的に、熱水に対する難溶性の程度は、熱処理皮膜約1gを80℃の蒸留水500cm3中に投入し、10分間浸漬後の不溶分が通常80%以上、好ましくは85%以上である。さらに、熱処理皮膜は、95℃の沸騰水に10分間浸漬しても溶解しないことが特に好ましい。
【0020】熱処理により、皮膜中において、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーとの間がエステル結合により架橋された構造が導入される。エステル結合の程度は、エステル化度によって表すことができる。エステル化度とは、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーとの間でエステル結合を形成したカルボニル炭素の全てのカルボニル炭素に対するモル比を意味する。エステル化度は、乾燥皮膜の赤外線吸収スペクトルを測定し、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーのカルボン酸に由来するC=O伸縮振動と、エステル結合に由来するC=O伸縮振動とを、ピーク分離法や差スペクトル法等により分離して、吸収スペクトルの面積比または極大吸収波数における吸光度比に基づいて定量化することにより、求めることができる。エステル化度は、0.01〜0.5の範囲内にあることが好ましい。熱処理によるエステル化の速度を大きくするために、燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、あるいはこれらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を、予めポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーとの混合物の溶液に少量添加しておくことができる。
【0021】ガスバリヤー性樹脂層(B)を形成する耐水性皮膜は、前記両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有すると共に、さらに、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの遊離カルボン酸どうしが多価金属イオンによりイオン架橋された構造を有するものであることが、ガスバリヤー性の観点から好ましい。すなわち、熱処理皮膜は、カルシウムやマグネシウムなどの多価金属イオンを含浸させることで、さらなる酸素ガスバリヤー性の向上が可能である。具体的には、熱処理皮膜を上記金属イオンを含む媒体、例えば水中に浸漬する方法がある。より具体的には、熱処理皮膜を、0.1〜100g/リットルの濃度で多価金属化合物(例、塩化物、水酸化物)を含有する水溶液中に、0〜100℃、好ましくは30〜98℃、より好ましくは50〜95℃の温度で、10秒間〜2時間、好ましくは1〜60分間浸漬する方法が挙げられる。熱処理皮膜中での金属の存在状況は、赤外吸収スペクトルにより確認できる。すなわち、熱処理皮膜中に金属イオンが存在すると、その含有成分であるポリアクリル酸系ポリマーのカルボキシル基に由来する1700cm-1付近の吸収に対する金属塩含有カルボキシル基(カルボキシラト)に由来する1560cm-1付近の吸収の強度比(Abs1560/Abs1700)が増加する。
【0022】イオン架橋処理に用いる金属としては、アルカリ土類金属や亜鉛などの2価の金属イオンを与える金属、アルミニウム等の3価の金属イオンを与えることができる金属等が好ましく用いられる。これらの金属は、例えば、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、次亜鉛素酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩等の無機塩、あるいは酢酸塩、アクリル酸塩などの有機塩の形で用いられる。これらの金属化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの金属化合物の水溶液を調製して使用するか、あるいはマグネシウムやカルシウムなどの金属イオンが含まれている水道水や天然の硬水等を使用する。
【0023】イオン架橋により、ガスバリヤー性の改善効果を得るには、耐水性皮膜のイオン化度が0.01〜0.9、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.8の範囲内になるように、前記の如き浸漬処理を行うことが望ましい。イオン化度は、皮膜の赤外線吸収スペクトルを測定することにより求めることができる。すなわち、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーのカルボン酸及びエステル結合したカルボニル炭素のC=O伸縮振動の吸収スペクトルと、金属塩含有カルボキシル基(カルボキシラト)に由来する吸収スペクトルに基づいて、両スペクトルの面積比または両スペクトルの極大吸収波数における吸光度比から、予め作成した検量線を用いてイオン化度を算出することができる。なお、赤外線吸収スペクトルの測定には、例えば、パーキン・エルマー社製のFT−IR1710を用いることができる。ガスバリヤー性樹脂層(B)は、基材層(A)とは別の支持体上でフィルムとして形成し、これを基材層(A)と積層してもよい。この場合、積層法として、両フィルムのドライラミネート法や基材層の押出コーティング法が採用される。しかし、前記の溶液流延法による積層法が、層間接着性に優れた積層フィルムを容易に得ることができるので好ましい。ガスバリヤー性樹脂層(B)は、通常、基材層(A)の片面に設けるが、高度のガスバリヤー性を得たい場合などには、基材層(A)の両面に設けてもよい。
【0024】接着性層(C)本発明では、基材層(A)の少なくとも片面に、耐水性皮膜からなるガスバリヤー性樹脂層(B)が設けられた積層フィルムのいずれか一方の面上に、必要に応じて接着性層(C)を介して、熱融着性樹脂層(D)を設ける。一般に、層間接着強度を高めるためには、接着性層(C)を配置することが好ましい。接着性層を形成する接着剤としては、一般に各種フィルムのドライラミネートや押出コート等に使用されているウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、有機チタン系、ブタジエン系などの各種接着剤を用いることができる。熱融着性樹脂層(D)をドライラミネートする場合には、接着剤として、ドライラミネート用の反応型接着剤が好ましく、ウレタン系接着剤が特に好ましい。熱融着性樹脂層(D)を押出コートする場合には、接着性層にアンカー効果を持たせるために、接着剤としては、押出コート用プライマーを用いることが好ましく、有機チタン系、ウレタン系、ブタジエン系などの接着剤がより好ましく、NCO基を含有する接着剤が最も好ましい。接着性層の厚みは、通常0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μmである。接着性層の厚みが小さすぎると、接着力が不足するおそれがある。接着性層の厚みが大きすぎると、得られるバッグインボックス用袋の低温での耐屈曲疲労性が劣り、ピンホールが発生しやすくなる。なお、接着性層は、熱融着性樹脂層を積層する場合だけではなく、後述する保護層等の付加的な層を積層する場合にも用いられる。
【0025】熱融着性樹脂層(D)熱融着性樹脂層(D)は、多層フィルムにヒートシール性を付与することに加えて、バッグインボックス用袋に耐屈曲疲労性を付与する役割を持っている。すなわち、熱融着性樹脂層(D)は、ヒートシールタイプのバッグインボックス用袋を製袋するためのヒートシール性と、耐ピンホール性を付与する役割を持っている。本発明では、熱融着性樹脂層(D)を形成する樹脂として、密度0.880〜0.940g/cm3、好ましくは0.880〜0.930g/cm3、より好ましくは0.880〜0.920g/cm3のエチレン系樹脂を使用する。エチレン系樹脂の密度が小さすぎると、フィルムとしての強度が不足する。エチレン系樹脂の密度が大きすぎると、得られるバッグインボックス用袋の低温での耐屈曲疲労性が劣り、ピンホールが発生しやすくなる。エチレン系樹脂から形成された熱融着性樹脂層(D)の厚みは、30〜200μm、好ましくは40〜100μmである。熱融着性樹脂層(D)の厚みが小さすぎると、得られるバッグインボックス用袋のヒートシール強度が不足したり、あるいは、低温での耐屈曲疲労性が劣り、ピンホールが発生しやすくなる。熱融着性樹脂層(D)の厚みが大きすぎると、経済的、実用的ではなくなり、柔軟性などが低下するおそれがある。
【0026】エチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、LDPE、L−LDPE、及びV−LDPEが特に好ましい。熱融着性樹脂層(D)は、ドライラミネート法や押出コーティング法により、接着剤層を介しまたは介することなく、基材層(A)またはガスバリヤー性樹脂層(B)に隣接して積層する。
【0027】保護層(E)本発明で使用する多層フィルムには、所望により、熱融着性樹脂層(D)の反対側の面上に、該熱融着性樹脂層(D)を形成するエチレン系樹脂と同じエチレン系樹脂か、あるいは該エチレン系樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂からなる保護層(E)を設けることができる。保護層(E)は、多層フィルムの強度を高めたり、ガスバリヤー性樹脂層(B)を保護したり、耐ピンホール性を高めたりする役割を持っている。保護層(E)の厚みは、通常10〜200μm、好ましくは10〜100μmである。保護層(E)の厚みが小さすぎると、低温での耐屈曲疲労性(耐ピンホール性)を向上させる効果が小さい。保護層(E)の厚みが大きすぎると、バッグインボックスとしての実用性能が損なわれる。保護層(E)を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ナイロン、ポリプロピレン、エチレン系樹脂などがより好ましい。保護層(E)として、延伸ナイロンフィルム(ONy)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、LDPEフィルム、及びLLDPEフィルムが特に好ましい。保護層(E)は、ドライラミネート法や押出コーティング法により、接着剤層を介しまたは介することなく、基材層(A)またはガスバリヤー性樹脂層(B)に隣接して積層する。
【0028】多層フィルム本発明の多層フィルムは、基材層(A)、ガスバリヤー性樹脂層(B)、及び熱融着性樹脂層(D)を必須の層構成成分として含有するものであり、熱融着性樹脂層(D)は、好ましくは接着性層(C)を介して積層される。また、本発明の多層フィルムは、付加的に保護層(E)を設けてもよい。保護層(E)は、好ましくは接着性層(C)を介して積層される。本発明の多層フィルムの好ましい層構成は、例えば、次のとおりである。各層は、記号のみで表し、同じ種類の層が複数ある時には、枝番をつける。
1.(A)/(B)/(C)/(D)
2.(B)/(A)/(C)/(D)
3.(E)/(C1)/(B)/(A)/(C2)/(D)
4.(B1)/(A)/(B2)/(C)/(D)
5.(E)/(C1)/(B1)/(A)/(B2)/(C)/(D)
6.(E)/(C1)/(A)/(B)/(C2)/(D)
なお、本発明の目的を損なわない範囲内において、前記以外の各種中間層や付加的な層が存在してもよい。本発明の多層フィルムの各層には、所望により、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、充填剤、帯電防止剤などの各種添加剤を添加することができる。
【0029】バッグインボックス用袋本発明では、前記の多層フィルムを用いて、バッグインボックス用袋を製造する。製造方法としては、多層フィルムを適当な大きさに裁断し、多層フィルムの熱融着性樹脂層(D)を利用して熱融着することにより製袋する。この際、常法により、4方シールの袋体とすることが好ましい。また、製袋時に、口金もヒートシールにより取り付けることができる。また、バッグインボックス用袋は、2〜3重袋としてもよい。得られたバッグインボックス用袋は、常法に従って、段ボール箱または板紙製容器内に組み込んでバッグインボックスとする。図1に、バッグインボックスの一例の断面図を示す。図1に示すように、バッグインボックスは、段ボール箱2の中に、多層フィルムをヒートシールにより製袋した内装袋1が組み込まれた構造となっている。内装袋1には、口金(注出口)3を熱融着により取り付けることができる。口金に3には、キャップ4が嵌合されるようになっている。
【0030】本発明では、バッグインボックス用袋の容量や形状に特に限定はなく、いわゆるバッグインボックスといわれる大容量のものだけではなく、小容量のバッグインカートンにも使用することができる。内装袋は、外装の内面と一部または全面的に貼り合わされているタイプ、内装袋と外装が貼り合わされていないタイプのいずれでもよい。本発明のバッグインボックス用袋は、低温での耐屈曲疲労性(したがって、耐ピンホール性)に優れ、耐衝撃性、酸素ガスバリヤー性、アルコール不透過性、輸送適性等にも優れているため、これらの諸特性が要求される各種液状商品の保管・輸送等に用いられるバッグインボックス用に好適である。
【0031】
【実施例】以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明の好ましい実施の形態について、より具体的に説明する。
【0032】[製造例1]ポリアクリル酸(PAA)と澱粉類とを、各々、水で希釈して10重量%水溶液を調製した。これらのPAA水溶液と澱粉類水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の10重量%水溶液を調製した。この10重量%水溶液に、反応促進剤として次亜りん酸ナトリウムを、PAAと澱粉類とを合わせた固形分重量100重量部に対し、10.5重量部添加した水溶液を調製した。ここで、PAAとして和光純薬工業(株)製のPAA〔粘度8〜12Pa・s(30℃)、数平均分子量150,000〕の25重量%水溶液、澱粉類として和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉、次亜りん酸ナトリウムとして和光純薬工業(株)製の次亜りん酸ナトリウム一水和物を用いた。前記の水溶液を、厚さ12μmのPETフィルム〔東レ(株)製、ルミラーS10〕に塗布した。次いで、水を蒸発させ、厚さ1μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成されたPETフィルムを乾熱雰囲気下230℃で15秒加熱処理し、厚さ13μmのN/PETフィルム(1)を作成した。なお、Nは、耐水性皮膜を意味するものとする。
【0033】[製造例2]ポリアクリル酸(PAA)と澱粉類とを、各々、水で希釈して10重量%水溶液を調製した。このPAAの10重量%水溶液100重量部に対し、水酸化ナトリウム0.56重量部を加え、溶解して中和度10%の部分中和PAA(PAANa)水溶液を調製した。これらのPAANa水溶液と澱粉類水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の10重量%水溶液を調製した。ここで、PAAとして和光純薬工業(株)製のPAA〔粘度8〜12Pa・s(30℃)、数平均分子量150,000〕の25重量%水溶液、澱粉類として和光純薬工業(株)製の可溶性澱粉、水酸化ナトリウムとして和光純薬工業(株)製の試薬一級品を用いた。この水溶液を、厚さ12μmのPETフィルム〔東レ(株)製、ルミラーS10〕に塗布した。次いで、水を蒸発させ、厚さ1μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成されたPETフィルムを、乾熱雰囲気下230℃で30秒加熱処理し、厚さ13μmのN/PETフィルムを作成した。このN−PETフィルムを、濃度1g/リットルの水酸化マグネシウム水溶液中に、90℃で1時間浸漬処理することにより、マグネシウムイオンによるイオン架橋を形成させ、N/PETフィルム(2)を得た。
【0034】[製造例3]ポリアクリル酸(PAA)とPVAとを、各々、水で希釈して10重量%水溶液を調製した。このPAAの10重量%水溶液100重量部に対し、水酸化ナトリウム0.56重量部を加え、溶解して中和度10%の部分中和PAA(PAANa)水溶液を調製した。これらのPAANa水溶液とPVA水溶液とを、70:30の重量比(固形分比)になるように混合し、混合物の10重量%水溶液を調製した。ここで、PAAとして和光純薬工業(株)製のPAA〔粘度8〜12Pa・s(30℃)、数平均分子量150,000〕の25重量%水溶液、PVAとしてクラレ(株)製のポバール105、水酸化ナトリウムとして和光純薬工業(株)製の試薬一級品を用いた。この水溶液を、厚さ12μmのPETフィルム〔東レ(株)製、ルミラーS10〕に塗布した。次いで、水を蒸発させ、厚さ1μmの乾燥皮膜を得た。この乾燥皮膜が形成されたPETフィルムを、乾熱雰囲気下230℃で30秒加熱処理し、厚さ13μmのN/PETフィルム(3)を作成した。
【0035】[実施例1]製造例2で得られたN/PETフィルム(2)と、厚さ80μmのL−LDPEフィルム(密度0.910g/cm3)とを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。接着剤として、東洋モートン(株)製AD−590(主剤)/CAT−56(硬化剤)を用いた。層構成は、次のとおりである。上付き数字は、厚みを表す。
PET12/N1/接着剤/L−LDPE80得られた多層フィルムを、内寸220mm×270mm(10mm幅シール)の背貼り形態の袋とし、その中に水を1500g充填した。それを紙製の外箱(85mm×155mm×180mm)中に収納し、バッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0036】[実施例2]製造例1で得られたN/PETフィルム(1)と、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルム〔ONy、ユニチカ(株)製、エンブレムON〕とを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。次いで、得られたラミネートフィルム(ONy15/接着剤/N1/PET12)に、同様の方法で、実施例1で用いたものと同様の厚さ60μmのL−LDPEフィルムを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。接着剤として、実施例1と同じものを用いた。層構成は、次のとおりである。
ONy15/接着剤/N1/PET12/接着剤/L−LDPE60得られた多層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0037】[実施例3]製造例1で得られたN/PETフィルム(1)の両面に、通常の押出コーティング法によりLDPE(密度0.918g/cm3)を、厚さ50μmづつ形成した。プライマーとして、東洋モートン(株)製EL−530A(主剤)/EL−530B(硬化剤)を用いた。層構成は、次のとおりである。
LDPE50/接着剤/N1/PET12/接着剤/LDPE50得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0038】[実施例4]製造例2で得られたN/PETフィルム(2)を用いた以外は、実施例2と同様にして多層フィルムを作成した。層構成は、次のとおりである。
ONy15/接着剤/N1/PET12/接着剤/L−LDPE60得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0039】[実施例5]製造例3で得られたN/PETフィルム(3)を用いた以外は、実施例3と同様にして多層フィルムを作成した。層構成は、次のとおりである。
LDPE50/接着剤/N1/PET12/接着剤/LDPE50得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0040】[比較例1]厚さ12μmのアルミニウム蒸着PET(Al−vm)と、実施例2で用いたのと同じONyと、実施例1で用いたものと同様の厚さ40μmのL−LDPEフィルムとを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。接着剤として、実施例1と同じものを用いた。層構成は、次のとおりである。上付き数字は、厚みを表す。
PET12/Al−vm/接着剤/ONy15/接着剤/L−LDPE40得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0041】[比較例2]実施例2で用いたものと同じONyにPVDCをコートしたK−ONyと、厚さ12μmのEVOHと、厚さ60μmのL−LDPEとを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。
ONy15/PVDC3/接着剤/EVOH12/接着剤/L−LDPE60得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0042】[比較例3]製造例2で得られたN/PETフィルム(2)と、厚さ80μmの高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(密度0.942g/cm3)とを、通常のグラビアロール方式によりドライラミネートした。接着剤として、実施例1と同じものを用いた。層構成は、次のとおりである。
PET12/N1/接着剤/HDPE80得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0043】[比較例4]厚さ25μmの製造例1で用いたものと同様のPETに、厚さ3μmの製造例1で用いたものと同様の耐水性皮膜を形成し、N/PETフィルム(4)を作成した。N/PETフィルム(4)の片面に、通常の押出コーティング法により、厚さ10μmのLDPE(密度0.918g/cm3)層を形成した。プライマーとして、実施例3と同じものを用いた。層構成は、次のとおりである。
3/PET25/接着剤/LDPE10得られた積層フィルムは、実施例1と同様にしてバッグインボックスの形態とした。物性の測定結果を表1に示す。
【0044】
【表1】


(脚注)
(1)「||」・・・・・接着層(2)「/」・・・・・・接着層のない界面(3)「O.R.」・・・オーバー・レンジ
【0045】<物性の測定法>(1)低温ゲルボ評価多層フィルムについて、理学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、5℃における耐ピンホール性を評価した。電気抵抗法により、屈曲後のピンホールの有無を調べ、ピンホール無しの最高屈曲回数で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:500回以上、○:300回以上、500回未満、△:150回以上、300回未満、×:150回未満。
【0046】(2)落袋評価多層フィルムを、内寸250mm×250mm(10mm幅シール)のパウチ形態とし、その中に5℃の水を1500g充填した。それを、高さ80cmよりコンクリートの床上に水平落下させ、連続30回中の耐久回数で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:26〜30回、○:21〜25回、△:16〜20回、×:15回以下。
【0047】(3)酸素ガス透過度多層フィルムについて、Modern Control社製のOX−TRAN2/20を用いて、30℃、80%RHにおける酸素ガス透過度を測定した。
【0048】(4)アルコール不透過性多層フィルムを、内寸100mm×100mm(10mm幅シールのパウチ形態とし、その中にメタノール、エタノールをそれぞれ別の袋に、各1mlずつ充填した。23℃の条件下で、それらを、各々、容積500cm3の集気瓶に24時間保存し、新コスモス電機(株)製のポータブル型臭いセンサーXP−329型を用いて、各多層フィルムを透過したアルコール成分の量を測定した。メタノールの透過量とエタノールの透過量の合計量(臭いセンサーの指示値の合計透過量)を基に、以下の評価基準で総合評価した。
◎:500未満、○:500以上、1000未満、△:1000以上、1500未満、×:1500以上、3000未満。(ただし、メタノールの透過量とエタノールの透過量のいずれかがO.R.の場合も×と評価した。)
【0049】(5)輸送テスト耐性作成したバッグインボックスを10個一組にして段ボール(45cm×32cm×19cm)中に梱包した。これを、東京→いわき→仙台→札幌→仙台→いわき→東京→名古屋→大阪→福岡→大阪→名古屋→東京のルートで、5℃の宅配便にて輸送した後、ピンホールの発生しなかった袋の数で評価した。評価基準は、次のとおりである。
◎:9〜10個、○:7〜8個、△:5〜6個、×:4個以下。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、ドライラミネート法や押出しラミネート法で作成された多層フィルムを用いて、ガスバリヤー性、アルコール不透過性、低温での耐屈曲疲労性(耐ピンホール性)、耐衝撃性、輸送適性などに優れたヒートシールタイプのバッグインボックス用袋が提供される。本発明のバッグインボックス用袋は、酸素ガスバリア性に優れているため、酸素に敏感な内容物のシェルフライフが延長できる。さらに、本発明のバッグインボックス用袋は、アルコール不透過性に優れていることから、アルコール飲料などの内容物に対しても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 融点またはビカット軟化点が180℃以上の熱可塑性樹脂から形成された基材層(A)の少なくとも片面に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー及びポリアルコール系ポリマーを含有する樹脂組成物から形成され、かつ、両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有する耐水性皮膜からなるガスバリヤー性樹脂層(B)が設けられ、さらに、いずれか一方の面上に、必要に応じて接着性層(C)を介して、密度0.880〜0.940g/cm3のエチレン系樹脂から形成された厚み30〜200μmの熱融着性樹脂層(D)が設けられた多層フィルムからなるバッグインボックス用袋。
【請求項2】 ガスバリヤー性樹脂層(B)が、前記両ポリマー間がエステル結合により架橋された構造を有すると共に、さらに、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーの遊離カルボン酸どうしが多価金属イオンによりイオン架橋された構造を有する耐水性皮膜からなるものである請求項1記載のバッグインボックス用袋。
【請求項3】 段ボール箱または板紙製容器内に、請求項1または2記載のバッグインボックス用袋を組み込んでなるバッグインボックス。

【図1】
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