説明

バッグ

【課題】むやみに名前を露出することなく、バッグの持ち主を確実に特定する工夫が使用者のコストをほとんど増加させることなく実現することができるバッグを提供すること。
【解決手段】収容部を備えるバッグ本体12と、該バッグ本体に設けられ名札24もしくは前記バッグ本体に直接記載された名前を表示するための名前表示部20と、該名前表示部の少なくとも一部を覆い得る遮蔽手段30とを備えており、該遮蔽手段が、前記名札もしくはバッグ本体12に記載された前記名前標記を、常態において隠し、任意に該名前標記を露出できる構成とされているバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として児童や生徒が学用品などを入れるためのバッグの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
学童や生徒が学用品を収納するために使用するバッグとしては、例えば図7に示すようなものが知られている。図7(a)はバッグ1の正面図、図7(b)はバッグ本体2の背面図である。
バッグ1は、学用品を入れるための大きな袋状の収納部を構成するバッグ本体2を備え、該バッグ本体2を開閉する蓋部には把手3などが設けられている。
図7(b)に示すように、バッグ本体2の裏側の下端隅部付近には、名前表示部4が設けられている。
この名前表示部に所有者の名前が記載されていることにより、バッグ1の持ち主が表示されるようになっている。
【0003】
ところで、最近、不審者などにより学童や生徒が拉致や誘拐の被害に遭う事件が多く発生し、社会問題化している。
このため、図7(b)ように名前表示部4で常時所有者の名前を表示していると、バッグ1を持って歩いているところなどを、このような不審者に目撃され、その名前を知られてしまうことがある。そして、このことを原因として、上記誘拐などが行われることも考えられる。
そこで、常時名前を表示しないようにした名札なども提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3115362号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された名札は、押しボタン操作により開閉する名札であり、ボタンを押して開いた時には、名札保持部の表示内容である名前が視認でき、閉じた時には、これを読みとることができないようにするというものである。
しかしながら、この名札は、例えばペンダント式にバッグなどに吊り下げ装着するバッグとは別体のものであり、バッグなどに着脱する必要がある点で使用が面倒であるとともに、別体のベンダントタイプに構成する点で製造コストもかかり、独立して購入しなければならないので、費用がかかりすぎるという欠点がある。
さらには、特許文献1の名札の場合、押しボタン操作を忘れると、名前が露出されたままになってしまう。特に年齢の低い学童などでは、そのような可能性が高いため、不審者等に対する名前の秘匿がはなはだ不十分である。
【0006】
本発明は、上記欠点を解決しようとするもので、むやみに名前を露出することなく、バッグの持ち主を確実に特定する工夫が使用者のコストをほとんど増加させることなく実現することができるバッグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、第1の発明にあっては、収容部を備えるバッグ本体と、該バッグ本体に設けられ名札もしくは前記バッグ本体に直接記載された名前を表示するための名前表示部と、該名前表示部の少なくとも一部を覆い得る遮蔽手段とを備えており、該遮蔽手段が、前記名札もしくはバッグ本体に記載された前記名前標記を、常態において隠し、任意に該名前標記を露出できる構成とされているバッグにより、達成される。
【0008】
第1の発明の構成によれば、名前表示部も、その少なくとも一部を覆い得る遮蔽手段もバッグ本体に設けるようにしたから、バッグとは別体のペンダント型名札などの形態のものを購入することなく、ユーザーのコスト負担が低減される。
しかも遮蔽手段は、名前標記を、常態において隠し、任意に該名前標記を露出できる構成としたので、むやみに名前を露出して、所有者に誘拐などの危険を生じることなく、バッグの持ち主を確実に特定することができる。
特に、従来のペンダント式名札と比べると、ボタン操作により名前表示部を隠す必要がなく、常態において名前を隠し、名前を露出したい場合だけこれを露わにするものであるから、不審者等に対する名前の秘匿が、より確実に実現される。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記名前表示部が、前記バッグ本体に設けられた袋状部分に名札を挿脱する構成とした名札保持手段であることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、バッグ本体に直接名前を書かない構成とすることで、該バッグを、例えば兄弟などの異なる所有者が繰り返し使用する上で有利である。
【0010】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記遮蔽手段が、前記名前表示部の表面を覆う柔軟な材料でなる基材から分離される遮蔽片であり、該遮蔽片は、その一辺が前記基材と一体に接合されており、接合されない自由端側が開閉自在に前記名前表示部表面を覆う構成としたことを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記遮蔽手段が柔軟な材料で形成された基材から分離される遮蔽片で、その一辺が接合されているから、接合されていない自由端が名前表示部を覆っている状態では、該名前表示部に記載された名前を隠して、読み取ることができないようにすることができる。また、自由端を摘んでめくると、遮蔽片は柔軟な材料で形成されているので変形し、名前表示部が露出されることになる。これにより、記載された名前を確認できるので、バッグの持ち主を確実に特定することができる。
【0011】
第4の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記遮蔽手段が、前記名前表示部の表面を覆う柔軟な材料でなる基材から分離される遮蔽片であり、該遮蔽片は、その二辺が前記基材と一体に接合されているとともに、かつ該遮蔽手段のほぼ中央部で分離されており、分離された各自由端側が開閉自在に前記名前表示部表面を覆う構成としたことを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、前記遮蔽手段が柔軟な材料で形成される基材から分離された遮蔽片で、その二辺が接合されているから、各辺から分離された中央部までの各自由端が名前表示部を覆っている状態では、該名前表示部に記載された名前を隠して、読み取ることができないようにすることができる。また、各自由端を摘んで観音開きにめくると、遮蔽片は柔軟な材料で形成されているので変形し、名前表示部が露出されることになる。これにより、記載された名前を確認できるので、バッグの持ち主を確実に特定することができる。
【0012】
第5の発明は、第2ないし4のいずれかの発明の構成において、前記名札保持手段が、前記バッグ本体の表面に付加形成された袋状部分であって、該袋状部分の表面には透明部が形成されることにより、該袋状部分に挿入された前記名前表示部に表示された名前が前記透明部を介して露出する構成とされていることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、透明部を介して名札に記載された名前が示され、名札は透明部に覆われることで保護されている。
【0013】
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明の構成において、書道用道具を入れるための書道バッグ、水彩用具を入れるための水彩バッグ、ランドセル、裁縫用具を入れるための裁縫バッグのいずれかであることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、本発明のバッグは学童や生徒が学用品入れなどにするための種々のバッグとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係るバッグの全体構造を示す概略斜視図であり、図1(a)はバッグの正面図、図1(b)はバッグ本体の背面図である。
バッグ10は、いわゆる鞄であり、学用品を入れるための大きな袋状の収納部を構成するバッグ本体12を備え、該バッグ本体12を開閉する蓋部には把手13などが設けられている。
バッグ10は、種々の形態をとることができ、収容する学用品の種類や大きさ、量などに応じて、形状や大きさを変更することができる。
例えば、バッグ10は、書道用道具を入れるための書道バッグ、水彩用具を入れるための水彩バッグ、ランドセル、裁縫用具を入れるための裁縫バッグなどとすることができる。
【0016】
図1(b)に示すように、バッグ本体12の裏側の下端隅部付近には、名前表示部20が設けられている。
この名前表示部20に所有者の名前が記載されていることにより、バッグ10の持ち主が表示されるようになっている。
本実施形態では、名前表示部20がバッグ10の表面や蓋部を開いた収容部の内側など適宜の箇所に形成されているので、別体の名札をバッグに取り付ける場合と比較すると、バッグ10を購入すれば、無料でついてくることから、ユーザーにとって、より費用負担が小さくて済む利点がある。
【0017】
図2はバッグ本体12の部分の裏側の下端隅部付近に設けた名前表示部を拡大して示す説明図である。
図において、名前表示部20は、本実施形態では、名札保持手段21として構成されている。すなわち、名前表示部20は必ずしも名札を必要とせず、バッグ本体12の所定箇所に直接名前を記載して名前表示部としてもよいが、本実施形態では、名前表示部として名札を用いた名札保持手段21を以下のように形成するものである。
【0018】
名札保持手段21は、例えば、バッグ本体12の表面に矩形の基材25が固定されている。具体的には、基材25は開口23が形成される辺以外の周縁部をバッグ本体12に接合されることにより、名札24を矢印Aに示すように挿脱することができるような袋状部分を形成するもので、名札保持手段21の本体をなす部分である。
この基材25は、このような機能を果たすことができる丈夫で柔軟な材料が用いられ、曲折可能で、繰り返し曲折されても損傷しにくい材料が適している。つまり、好ましくは、皮革、合成皮革、丈夫な布、ビニール、合成ゴムなどで形成されている。
【0019】
本実施形態では、基材25の上記開口23に対応する辺以外の辺に対応する周縁部が、バッグ本体12に対して縫着されて、固定されている。
また、この縫着された各辺の縫着部の内側が切断されており、図2に示すように開口23に対応した辺の部分は分離されていない。これにより、基材25の枠状の縫着周縁の内側には、分離された領域を自由端とする遮蔽手段、すなわち遮蔽片30が形成されている。遮蔽片30は開口23に対応した辺だけが基材25に一体に接合している。
また、遮蔽片30を開いた枠状部分の内側には、透明部22が設けられた窓部26が形成されている。
【0020】
すなわち、窓部26が形成されれば、挿入された名札24の名前表記は読み取ることができるが、例えば、透明なビニールや合成樹脂のシート状部材を基材25の内側に固定することで、透明部22としてのカバーを構成することで、名札24を保護することができる。
また、名前表示部20を名札保持手段21のように構成して、名前を名札24に書くようにし、バッグ本体12の表面に直接名前を書かない構成とすることで、該バッグを、例えば兄弟などの異なる所有者が繰り返し使用する上で有利である。
【0021】
図3は使用状態を示す図である。
名前表示部である名札保持手段21では、遮蔽片30の下端部や下端隅部を指で摘んで、めくると、窓部26から透明部22を介して、名札に書かれた名前が露出するので、これを視認することができ、誰のバッグかを誤り無く特定することができる。
一方、遮蔽片30を摘んだ指を離すと、遮蔽片30は窓部26の内周に合うように閉じられ、名前表示部としての名札の表面を、透明部22を介して覆うので、窓部26を塞ぐことになる。これにより名札に書かれた名前が読み取れなくなる。
このため、バッグ10を持って移動中の学童や生徒にあっては、登下校時などにおいて、持っているバッグの名前表示部から、見ず知らずの者などにむやみに名前表示部をさらして、その名前を視認され、記憶されたりすることがないから、誘拐などの犯罪に利用される危険がない。
特に、従来のペンダント式名札と比べると、ボタン操作により名前表示部を隠す必要がなく、常態において名前を隠し、名前を露出したい場合だけこれを露わにするものであるから、不審者等に対する名前の秘匿が、より確実に実現される。
【0022】
図4は、本発明実施形態の第1変形例の要部を示す図であり、名前表示部の名札保持手段を拡大して示している。
図において、基材25はほぼ中央部で縦方向に伸びる切断線で左右に分離されている。各分離された部分である遮蔽片30−1,30−2は、左右側面に沿った各二辺が、基材25と一体に接合されているとともに、中央の分離された各自由端側が開閉自在に名前表示部としての名札の表面を、透明部22を介して覆うようになっている。
なお、遮蔽片30−1,30−2の各自由端を指で摘んで、めくると、窓部26から透明部22を介して、名札に書かれた名前が露出するので、これを視認することができ、誰のバッグかを誤り無く特定することができる。
第1変形例は以上のように構成されているので、図2および図3の遮蔽片と同様の作用効果を発揮できる。
【0023】
図5は、本発明実施形態の第2変形例の要部を示す図であり、名前表示部の名札保持手段を拡大して示している。
図において、遮蔽片30−3は左側の側面に沿う辺が記載25と一体に接合されており、それ以外の辺は分離されている。これにより、遮蔽片30−3の右端側が自由端とされている。この自由端側が図5(b)に示すように、開閉自在に名前表示部としての名札の表面を、透明部22を介して覆うようになっている。
そして、遮蔽片30−3の自由端を指で摘んで、めくると、図5(b)に示すように、窓部26から透明部22を介して、名札に書かれた名前が露出するので、これを視認することができ、誰のバッグかを誤り無く特定することができる。
第2変形例は以上のように構成されているので、図2および図3の遮蔽片と同様の作用効果を発揮できる。
【0024】
図6は、本発明実施形態の第3変形例の要部を示す図であり、名前表示部の名札保持手段を拡大して示している。
図において、基材25はほぼ中央部で横方向に伸びる切断線で上下に分離されている。各分離された部分である遮蔽片30−4,30−5は、上下の各二辺が、基材25と一体に接合されているとともに、中央の分離された各自由端側が開閉自在に名前表示部としての名札の表面を、透明部22を介して覆うようになっている。
そして、遮蔽片30−4,30−5の各自由端を指で摘んで、めくると、窓部26から透明部22を介して、名札に書かれた名前が露出するので、これを視認することができ、誰のバッグかを誤り無く特定することができる。
第3変形例は以上のように構成されているので、図2および図3の遮蔽片と同様の作用効果を発揮できる。
【0025】
本発明は上述の各実施形態に限定されない。上述の各実施形態における各構成は、必要により、その一部を省略したり、他の構成と入れ換えて、異なる構成の組み合わせのもとで実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態にかかるバッグの全体構成を示す概略斜視図。
【図2】図1のバッグの名前表示部を示す拡大斜視図。
【図3】図1の名前表示部の使用状態を説明する図。
【図4】図1のバッグの第1変形例の図。
【図5】図1のバッグの第2変形例の図。
【図6】図1のバッグの第3変形例の図。
【図7】従来のバッグの全体構成を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0027】
10・・・バッグ、12・・・バッグ本体、20・・・名前表示部、21・・・名札保持手段、24・・・名札、25・・・基材、26・・・窓部、30・・・遮蔽片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を備えるバッグ本体と、
該バッグ本体に設けられ名札もしくは前記バッグ本体に直接記載された名前を表示するための名前表示部と、
該名前表示部の少なくとも一部を覆い得る遮蔽手段と
を備えており、
該遮蔽手段が、前記名札もしくはバッグ本体に記載された前記名前標記を、常態において隠し、任意に該名前標記を露出できる構成とされている
ことを特徴とするバッグ。
【請求項2】
前記名前表示部が、前記バッグ本体に設けられた袋状部分に名札を挿脱する構成とした名札保持手段であることを特徴とする請求項1に記載のバッグ。
【請求項3】
前記遮蔽手段が、前記名前表示部の表面を覆う柔軟な材料でなる基材から分離される遮蔽片であり、該遮蔽片は、その一辺が前記基材と一体に接合されており、接合されない自由端側が開閉自在に前記名前表示部表面を覆う構成としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のバッグ。
【請求項4】
前記遮蔽手段が、前記名前表示部の表面を覆う柔軟な材料でなる基材から分離される遮蔽片であり、該遮蔽片は、その二辺が前記基材と一体に接合されているとともに、かつ該遮蔽手段のほぼ中央部で分離されており、分離された各自由端側が開閉自在に前記名前表示部表面を覆う構成としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のバッグ。
【請求項5】
前記名札保持手段が、前記バッグ本体の表面に付加形成された袋状部分であって、該袋状部分の表面には透明部が形成されることにより、該袋状部分に挿入された前記名前表示部に表示された名前が前記透明部を介して露出する構成とされていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のバッグ。
【請求項6】
書道用道具を入れるための書道バッグ、水彩用具を入れるための水彩バッグ、ランドセル、裁縫用具を入れるための裁縫バッグのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−330810(P2007−330810A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221224(P2007−221224)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【分割の表示】特願2006−127628(P2006−127628)の分割
【原出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(591139138)株式会社新学社 (13)
【Fターム(参考)】