説明

バッテリーの電解液液面の確認方法

【課題】 本願発明の目的は、半透明容器で覆われたバッテリーにおいて、電解液の液面を検出する装置、器具等をバッテリーに取り付けることなく、より簡便にバッテリーの電解液の液面を確認する方法を提供することにある。
【解決手段】 染料および/または顔料で着色した電解液に対して安定であり、比重の小さい着色樹脂粒子を半透明容器で覆われたバッテリー内の電解液の液面に浮かべることにより、半透明容器の外側から液面を容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーの電解液不足を確認する方法に関するものであり、さらに詳しくは、染料および/または顔料で着色した樹脂粒子をバッテリー内の電解液液面に浮かべることにより、半透明容器のバッテリー外面から液面の樹脂粒子を視認し、電解液の液面を確認する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来バッテリーの液面を確認する方法としては、釣り浮きを改良した水位計による方法(特許文献1)、バッテリーの空気抜きキャップに液面表示器を取り付ける方法(特許文献2)、比重差の異なる浮き子を利用して液面を測定する方法(特許文献3)などが提案されているが、いずれも液面を検出する装置、器具等をバッテリーに取り付ける必要があるのでバッテリーを改造する必要がある。一方、バッテリーを改造せずに液面を確認する方法として、種々の染料を電解液(希硫酸)に添加することにより電解液を着色しバッテリーの外側から液面を確認する方法が検討されたが、バッテリー内での酸化還元反応により、染料が分解し消色するため、この方法を用いることはできなかった。 そのため、液面を検出する装置、器具等をバッテリーに取り付けることなく、より簡便にバッテリーの液面を確認する方法の開発が求められていた。
【0003】
【特許文献1】特開平9−121735号公報
【0004】
【特許文献2】実開平6−86260号公報
【0005】
【特許文献3】特開平6−243900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、液面を検出する装置、器具等をバッテリーに取り付けることなく、より簡便にバッテリーの液面を確認する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するため、種々検討した結果、染料および/または顔料で着色した樹脂粒子をバッテリー内の電解質液面に浮かべることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明によれば染料および/または顔料で着色した樹脂粒子は電解質と電極の間で生成する酸化還元に対し極めて安定で消色する事は無く、半透明容器の外側から液面を容易に確認することができる。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明で用いる樹脂は通常、電解液に対して安定であり、比重の小さいポリプロピレン樹脂(以下PP樹脂)またはフッ素樹脂等が用いられ、これらを併用してもよく、これらの中でも、比重がより小さなPP樹脂が好ましい。
【0009】
本発明で用いる樹脂粒子の形状は特に限定されないが好ましくは樹脂粒子同士の摩擦が少ない球状が適している。樹脂粒子の大きさはバッテリー槽に充填可能な範囲に限られるが、好ましくは径が1〜10mmの範囲の大きさが液面の視認性の点から好ましい。
【0010】
本発明で用いる樹脂粒子の添加量は、電解液の液面に浮かんだ樹脂粒子が視認できる程度であれば良いが、液面全体を満たす量を添加することが好ましい。
【0011】
本発明における樹脂の着色には、電解液内で色相や濃度の変化がなく電解液にブリードしない染料および/または顔料が用いられ、これらを単独または2種類以上配合して用いてもよい。特に種類や色相の制約はないが好ましくは視認性のすぐれた鮮明で明るい色相が適している。染料の具体的な例としては、例えば、C.I.Basic Violet 11:1、C.I.Basic Red 1:1、C.I.Basic Yellow 21、C.I.Basic Violet 11、C.I.Solvent Red 49、C.I.Disperse Red 60、C.I.Disperse Red 672、C.I.Disperse Blue 56、C.I.Disperse Blue 60等が挙げられ、顔料の具体的な例としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Violet 37、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:6等を挙げることができる。 これらのうち、C.I.Basic Violet 11:1、C.I.Basic Red 1:1、C.I.Basic Yellow 21、C.I.Basic Violet 11、C.I.Solvent Red 49が好ましい。
【0012】
本発明において用いられる樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特願2004−320014号等に記載の方法で製造することが出来、例えば、凍結乾燥法または主に結晶性樹脂を適当な溶媒中で加熱するなどして溶解後、温度条件等を変えることにより析出させて樹脂微粉末を得るケミカル粉砕法等の公知の方法で得られた平均粒子径1〜100μmの可染ポリエステル樹脂粒子を染料および/または顔料で着色し、得られた着色樹脂粒子と電解液に安定な樹脂との配合により製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いることにより、液面を検出する装置、器具等をバッテリーに取り付けることなく、より簡便にバッテリーの液面を確認することができる。
【0014】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
(樹脂の着色方法)
(イ)平均粒径10μmのカチオン可染ポリエステル樹脂100重量部に対し0.3重量部のRhodamine A (Basic Violet 11:1、田岡化学(株)製)を熱湯で溶解したものを1500重量部の水中に均一分散し、0.075重量部のSFK−01(センカ株製ノニオン系浸透剤)、および98%酢酸を1重量部を加えてpH値を4.0に調整した染色浴を準備した。
(ロ)上記染色浴を日本染色機械(株)製高温高圧染色機カラーペットにセットし、攪拌しながら、圧力を大気圧から1.0Kg/cm(ゲージ圧)まで加圧下で、50℃からで120℃に昇温速度1℃/分で昇温し、さらに120℃で30分間保持した後90℃まで冷却し圧力を下げて染色を完了した。染色浴をADVANTEC(株)製濾紙NO.5Aで濾過して余剰の染料を取り除いた後、濾上物を水洗、乾燥し、赤色着色カチオン可染ポリエステル樹脂粒子を得た。
【0016】
PP樹脂ペレット100重量部に対し3重量部の上記赤色樹脂粒子を配合し200℃で加熱しながら均一に混練した後、射出成型機で粒径5mmの球状の赤色着色PP樹脂粒子を得た。
【0017】
カーバッテリー(SHIN−KOBE DENKI製)の上部開閉部を開け各槽の電解液の液面が全て覆われるまで上記の赤色着色PP樹脂粒子を入れた後、開閉部を閉め定期的に液面の視認性と着色PP樹脂粒子の色相安定性について試験を行った結果を表1に示す。
【実施例2】
【0018】
実施例1において0.3重量部のRhodamine Aを用いる代わりに0.3重量部のAizen Cathilon Yellow 7GLH(C.I.Basic Yellow 21、保土ヶ谷化学工業製)を用いた以外は実施例1と同様に黄色着色PP樹脂粒子を得、実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0019】
(比較例1)
100重量部の水に対し0.3重量部のRhodamine A (Basic Violet 11:1、田岡化学製)を溶解分散し赤色水溶液を作成した。得られた赤色水溶液10mlをカーバッテリー(SHIN−KOBE DENKI製)の内部へ加えて電解液を鮮明な赤色に着色し、実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0020】
(比較例2)
比較例1において0.3重量部のRhodamine Aを用いる代わりに0.3重量部のAizen Cathilon Yellow 7GLHを用いた以外は比較例1と同様に電解液を鮮明な黄色に着色し、実施例1と同様の試験を行った結果を表1に示す。
【0021】
【表1】


液面の視認性
バッテリー容器の外側から電解液液面の視認性を確認する。
○ 視認性良好
× 視認性不良
着色物の色相安定性
着色PP樹脂は電解液から取り出し水洗乾燥し、未試験の着色樹脂を標準にして濃度色相
を肉眼で判定する。
着色電解液は、バッテリーから取り出し、未試験の着色電解液を標準にして濃度色相にし
て濃度色相を肉眼で判定する。

○ 濃度(色相)の低下(変化)なし
× 濃度(色相)の低下(変化)著しい
【0022】
着色したPP樹脂はバッテリー液面に浮かび液面の視認性が優れているだけでなく長期の安定性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明容器で覆われたカーバッテリーの電解液液面に、染料および/または顔料で着色した樹脂粒子を浮かべることを特徴とするバッテリー電解液液面の確認方法。
【請求項2】
樹脂粒子がポリプロピレン樹脂粒子またはフッ素樹脂粒子であることを特徴とする請求項1記載のバッテリー電解液液面の確認方法。

【公開番号】特開2007−115558(P2007−115558A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306653(P2005−306653)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000216243)田岡化学工業株式会社 (115)
【Fターム(参考)】