説明

バッテリ用樹脂カバーとその形成方法

【課題】バッテリ数が多い場合やバッテリ数の変動に容易に対応できるようにする。
【解決手段】並列に配置された複数のバッテリ2の電極側の端部に装着されるバッテリ用樹脂カバー4で、一方の分割カバー4aと他方の分割カバー4bとで構成され、一方の分割カバーが一端部に複数の突板部37を互い違いに有し、他方の分割カバーが一端部と長手方向中間部とに、複数の突板部に対する複数の凹部42を並列に有し、一端部の凹部と突板部とが係止手段38,43で相互に係止されるようにした。他方の分割カバー4bをバッテリ2の数に応じて長手方向中間部の凹部42からカバー長手直交方向に切断して使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(ハイブリッドカーを含む)に搭載されるバッテリに装着され、長さを適宜に設定できるバッテリ用樹脂カバーとその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は電気自動車用(ハイブリッドカーを含む)のバッテリに装着する従来のバッテリ接続プレートの一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
このバッテリ接続プレート51は複数のバッテリ52を直列に接続するためのものであり、並列に配置された複数のバッテリ52の前後の電極側に二枚縦置きに配設される。
【0004】
各バッテリ接続プレート51は絶縁樹脂製のプレート本体(樹脂カバー)53の複数の開口54内に導電金属製の長方形のバスバー55を有し、各バスバー55は二つの孔部56を有し、隣接する二つのバッテリ52の雄ねじ型の+極と−極の各電極57,58を孔部56に挿通してナットで締め付けてバスバー55に接続させる。
【0005】
図7に示す如く、各バスバー55毎に一つの電圧検出端子59がナットで共締めされ、二つのバッテリ52(図6)ごとの電圧が検出される。電圧検出端子59には電線64が圧着接続され、電線64は電圧検出装置(図示せず)に接続される。各電線64はバッテリ接続プレート51に沿って配索される。
【0006】
電圧検出端子59は矩形状の一方の電気接触部60と中間の抵抗接続部61と他方の電線接続部62とを有し、中間の抵抗接続部61に抵抗63の両端子が接続された後、両端子の間で抵抗接続部61が切断され、バッテリ52の電圧が抵抗63で減圧されて電線64を経て電圧検出装置(図示せず)に送られる。
【特許文献1】特開2000−333343号公報(第2〜3頁、図11〜図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のバッテリ接続プレート51においては、車種毎のバッテリの数に応じてプレート本体(樹脂カバー)を異なる長さに樹脂成形しなければならず、その度に成形金型を新たに作製するために、多くの製造コストがかかるという問題や、バッテリの数の多い場合にプレート本体(樹脂カバー)が長くなり、樹脂成形が困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した点に鑑み、バッテリ数が多くて樹脂カバーが長くなる場合でも容易に対応することができ、また、車種毎にバッテリ数が変動する場合でも樹脂カバーの成形金型を一々製作する必要がなく、製造コストを低く抑えることのできるバッテリ用樹脂カバーとその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るバッテリ用樹脂カバーは、並列に配置された複数のバッテリの電極側の端部に装着されるバッテリ用樹脂カバーであって、一方の分割カバーと他方の分割カバーとで構成され、該一方の分割カバーが一端部に複数の突板部を互い違いに有し、該他方の分割カバーが一端部と長手方向中間部とに、該複数の突板部に対する複数の凹部を並列に有し、一端部の該凹部と該突板部とが係止手段で相互に係止されることを特徴とする。
【0010】
上記構成により、一方の分割カバーの一端部を他方の分割カバーの一端部に向けて長手方向に接合させることで、一方の分割カバーの各突板部が他方の分割カバーの各凹部に進入係合し、それと同時に各突板部と凹部とが係止手段で係止(固定)される。各突板部と凹部とは互い違い(千鳥状)に配置されているから、各突板部と凹部とが相互に噛み合って、両分割カバーが板厚方向及び高さ方向(突板部並び方向)の位置ずれなく確実に接合される。他方の分割カバーは車種(バッテリの数)に応じて長手方向中間部から適宜長さで切断して使用することができる。
【0011】
請求項2に係るバッテリ用樹脂カバーは、請求項1記載のバッテリ用樹脂カバーにおいて、前記他方の分割カバーが前記バッテリの数に応じて長手方向中間部の凹部からカバー長手直交方向に切断して使用されることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、一方の分割カバーは車種毎に共通で使用され、他方の分割カバーが車種(バッテリの数)に応じて長手方向中間部から切断して使用される。一方の分割カバーの他端部と他方の分割カバーの他端部とはバッテリの総出力部に対応して出力用のバスバー等を配置可能である。
【0013】
請求項3に係るバッテリ用樹脂カバーは、請求項1又は2記載のバッテリ用樹脂カバーにおいて、前記各分割カバーに電圧検出端子が装着され、前記各バッテリが接続板で直列に接続され、該電圧検出端子が該接続板に接続されたことを特徴とする。
【0014】
上記構成により、各バッテリの+極と−極とが接続板を介して溶接等で相互に接続され、樹脂カバーに電線付きの電圧検出端子が装着され、バッテリに樹脂カバーが装着され、電圧検出端子が接続板に溶接等で接続される。樹脂カバーは外部に対して接続板や電圧検出端子を絶縁保護する。
【0015】
請求項4に係るバッテリ用樹脂カバーの形成方法は、並列に配置された複数のバッテリの電極側の端部に装着するバッテリ用樹脂カバーの形成方法であって、一方の分割カバーの一端部に、係止手段を有する複数の突板部を互い違いに設け、他方の分割カバーの一端部と長手方向中間部とに、該複数の突板部に対応して係止手段を有する複数の凹部を並列に形成し、前記バッテリの数に応じて該他方の分割カバーを長手方向中間部の所要の列の凹部から切断し、切断した該凹部に該突板部を係合させて樹脂カバーを形成することを特徴とする。
【0016】
上記構成により、一方の分割カバーの一端部を他方の分割カバーの一端部に向けて長手方向に接合させることで、一方の分割カバーの各突板部が他方の分割カバーの各凹部に進入係合し、それと同時に各突板部と凹部とが係止手段で係止(固定)される。各突板部と凹部とは互い違い(千鳥状)に配置されているから、各突板部と凹部とが相互に噛み合って、両分割カバーが板厚方向及び高さ方向(突板部並び方向)の位置ずれなく確実に接合される。一方の分割カバーは車種毎に共通で使用され、他方の分割カバーが車種(バッテリの数)に応じて長手方向中間部から切断して使用される。一方の分割カバーの他端部と他方の分割カバーの他端部とはバッテリの総出力部に対応して出力用のバスバー等を配置可能である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、一方の分割カバーと他方の分割カバーとを位置ずれなく確実に結合させることができると共に、両分割カバーの結合で長い樹脂カバーを得ることができ、バッテリ数の多い場合でも、両分割カバーの樹脂成形を容易に行ってバッテリ数の増加に確実に対応することができる。また、他方の分割カバーは一端部のみならず長手方向中間部においても凹部を有しているから、所要長さに切断して、車種毎のバッテリ数の増減に対応することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、一方の分割カバーを車種毎に共通で使用し、他方の分割カバーを車種(バッテリの数)に応じて長手方向中間部から切断して使用することで、従来のようにバッテリの数に応じて一々樹脂カバーを樹脂成形する必要がなくなり、樹脂成形金型にかかるコストが低減され、樹脂カバーが低コスト化される。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、各分割カバーでバッテリ側の接続板や電圧検出端子を確実に絶縁保護することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、一方の分割カバーと他方の分割カバーとを位置ずれなく確実に結合させることができると共に、両分割カバーの結合で長い樹脂カバーを得ることができ、バッテリ数の多い場合でも、両分割カバーの樹脂成形を容易に行ってバッテリ数の増加に確実に対応することができる。また、一方の分割カバーを車種毎に共通で使用し、他方の分割カバーを車種(バッテリの数)に応じて長手方向中間部から切断して使用することで、従来のようにバッテリの数に応じて一々樹脂カバーを樹脂成形する必要がなくなり、樹脂成形金型にかかるコストが低減され、樹脂カバーが低コスト化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明のバッテリ用樹脂カバーを備えたバッテリパックの一形態、図2はバッテリ用樹脂カバー(以下樹脂カバーと言う)を装着する前のバッテリパック、図3は樹脂カバーの内面(裏面)側に電線付きの電圧検出端子を装着した状態、図4〜図5は本発明のバッテリ用樹脂カバーの一実施形態をそれぞれ示すものである。
【0022】
図1の如く、バッテリパック1は、複数の並列なバッテリ2(図2)と、複数のバッテリ2の上下を覆うバッテリカバー3と、複数のバッテリ2の前後の電極側に装着される二枚の樹脂カバー4とで構成されている。上下のバッテリカバー3は複数本のバンド5でバッテリ2に締付固定されている。
【0023】
樹脂カバー4(図1)はバスバーカバーとも呼称され、内面側で、各バッテリ2を接続する導電金属製の接続板6(図2)を覆ったり、両端末の各バッテリ6に接続される総出力用の+極と−極の各バスバー7,7’(図1,図2)を覆ったりする。樹脂カバー4の垂直な基板部11の内面側に電圧検出端子8(図1,図3)が固定され、樹脂カバー4の内面側で電圧検出端子8がバッテリ2(図2)の接続板6にレーザ等で溶接される。図2で符号9はバッテリ2の環状の+電極、10は同じく平坦な−電極を示している。
【0024】
図3の如く、電圧検出端子8は、基板部11に突設されたピン部23と可撓性の爪部25と端子先端側の囲い凹部(図示せず)とで樹脂カバー4に固定されている。ピン部23は端子8の孔部30に係合し、爪部25は端子8の電線圧着部31を保持し、端子先端(下端)の幅狭な突部(図示せず)が囲い凹部に進入係合している。
【0025】
爪部25は基板部22の幅狭な開口21の両側に配置され、開口21は上側(電線ガイド壁12側)の幅広の開口20に続くと共に、ピン部23を有する幅狭の連結壁26を介して下側の幅広の開口13に続いている。樹脂カバー4の上端部に電線ガイド壁12が一体に設けられ、電線ガイド壁12の下部から基板部11の上端部にかけて開口20が設けられている。
【0026】
電圧検出端子8は開口20から下向きに挿通され、爪部25とピン部23等で固定され、端子8の平板状の電気接触部32が幅広の開口13に沿って位置している。電線19は、電線ガイド壁12側の開口20から電線ガイド壁12の内面に沿って水平方向に挿通されて、図1の如く電線ガイド壁12の端末の側部開口28aから外部に導出されている。樹脂カバー4に端子8が固定された状態で、端子8の電気接触部32が幅広の開口13の表側からレーザ溶接等で裏側の接続板6(図2)に接続固定される。
【0027】
図1,図4,図5に本発明の樹脂カバー4の一実施形態を示す如く、樹脂カバー4は、垂直な基板部11と、基板部11の上部に一体に形成された断面略コの字状の電線ガイド壁12と、基板部11に設けられた電圧検出端子接続(溶接)用の略長方形の開口13と、バッテリ冷却用の長形の送風孔14と、開口13を覆って基板部11に係止される開閉自在な小カバー15と、電線ガイド壁12の電線挿通開口28を覆って電線19の飛び出しを防止する開閉自在な小カバー24とを備えている。小カバー15は基板部11の孔35(図4)に対する係止爪36を有し、小カバー24は電線ガイド壁12の下部に係合する爪部27を有している。
【0028】
電圧検出端子8(図3)に対する接続(溶接)用の開口13はバッテリ二つに対して一つの割合で配置され、送風孔14は各バッテリ2ごとに配置されている。樹脂カバー4は基板部11の上部と電線ガイド壁12とでバッテリカバー3(図2)に係止される。すなわち、図2の上側のバッテリカバー3の各係止突起(係止手段)16に電線ガイド壁12や基板部11の各係合孔(係止手段)が係合する。
【0029】
樹脂カバー4は上下方向の分割部から左右(長手方向)に二分割可能に形成されており、一方(第一)の分割カバー4aと他方(第二)の分割カバー4bとで一つの樹脂カバー4が構成されている。両分割カバー4a,4bの大きさは必ずしも同一ではなく、両分割カバー4a,4bの形状は分割部の形状を除いて同一である。
【0030】
一方の分割カバー4aの分割部は複数の略長方形の突板部37(371〜374)を上下方向に千鳥状(互い違い)に配設して構成され、各突板部37は中央に矩形状(長方形)の係止孔(係止手段)38を有している。各突板部37の板厚は基板部11の板厚の半分であり、各突板部37は基板部11の板厚方向(表裏ないし前後方向)に互い違いに位置し、表側の突板部372,374の表面は基板部11の表面と同一平面上に位置し、裏側の突板部371,373の裏面は基板部11の裏面と同一平面に位置している。
【0031】
本例で突板部37は四つ設けられ、上から第一の突板部371は基板部11の裏面側(裏面寄り)に位置し、上から第二の突板部372は基板部11の表面側(表面寄り)に位置し、上から第三の突板部373は基板部11の裏面側に位置し、上から第四の突板部374は基板部11の表面側に位置している。第一の突板部371と第三の突板部373とは垂直な裏側の同一平面上に位置し、第二の突板部372と第四の突板部374とは垂直な表側の同一平面上に位置している。
【0032】
上から第一と第三の各突板部371,373の表面は上から第二と第四の各突板部372,374の裏面と同一平面に位置している。各突板部37の間には横(水平)方向のスリット39が設けられ、各突板部37はスリット39を介して少し上下方向に離間して位置している。各スリット39は上側の突板部(例えば371)の下端と下側の突板部(例えば372)の上端との間に形成され、上側の突板部(例えば371)の下端と下側の突板部(例えば372)の上端とは前後斜め方向に離間している。
【0033】
各突板部37は基板部11の垂直な分割面40からカバー長手方向に突出され、各突板部37の上下端は分割面40に直交している。最も上側の突板部371の上端は電線ガイド壁12のやや下側で分割面40に直交し、電線ガイド壁12は基板部11の垂直な分割面40と同一平面上に分割面を有している。
【0034】
最も下側の突板部374は、基板部11の下端の切欠部18に隣接する突板33aに一体に続いている。切欠部18は下側のバッテリカバー3(図1,図2)のストッパ突部22に係合して樹脂カバー4を位置決め支持させるためのものであり、突板33aは分割面40において幅方向中間部でカットされ、最も下側の突板部374の下端が突板33aの分割面33a’に直交している。
【0035】
他方の分割カバー4bの分割部は、一方の分割カバー4aの各突板部37に対向して各突板部37を進入係合可能な複数の略長方形の凹部42(421〜424)を上下方向に千鳥状(互い違い)に配設して構成され、各凹部42はその垂直な基面(符号42で代用)の中央に、一方の分割カバー4aの係止孔38に対応する横断面略三角形状の係止突起(係止手段)43を有している。係止突起43は分割面45寄りのガイド傾斜面43a(図5)と反対側の係止面43bとを有している。
【0036】
各凹部42における板厚は基板部11の板厚の半分であり、各凹部42は基板部11の板厚方向(表裏ないし前後方向)に互い違いに位置し、表側の凹部422,424の表面(基面)は基板部11の表面よりも板厚の半分ほど凹んで位置し、裏側の凹部421,423の裏面(基面)は基板部11の裏面よりも板厚の半分ほど凹んで位置し、表裏の各凹部42の各基面は垂直な同一平面上に位置している。
【0037】
本例の凹部42は突板部37の数に対応して四つ設けられ、上から第一の凹部421は基板部11の裏面に向けて表面寄りに位置し、上から第二の凹部422は基板部11の表面に向けて裏面寄りに位置し、上から第三の凹部423は基板部11の裏面に向けて表面寄りに位置し、上から第四の凹部424は基板部11の表面に向けて表面寄りに位置している。第一〜第四の各凹部42の各基面は基板部11の板厚方向中央の垂直な同一平面上に位置している。
【0038】
各凹部42の間には基板部11の横方向延長部として基板部11の板厚と同じ厚さの端縁部44が設けられている。他方の分割カバー4bの分割部には何らスリットは設けられていない。各凹部42は上下の端縁部44を介して少し上下方向に離間して位置している。各端縁部44は上側の凹部(例えば421)の下端と下側の凹部(例えば422)の上端との間に形成され、上側の凹部(例えば421)の下端と下側の凹部(例えば422)の上端とは前後斜め方向に離間している。
【0039】
各凹部42は基板部11の垂直な分割面45からカバー長手方向に切欠されて、分割面45に開放された開口42aを有し、開口42aの深さは凹部42の深さに一致し、開口42aは凹部42の内側空間(符号42で代用)に連通している。最も上側の凹部421の上端は電線ガイド壁12のやや下側に位置し、電線ガイド壁12は基板部11の垂直な分割面45と同一平面の分割面46(図5)を有している。
【0040】
最も下側の凹部424は、基板部11の下端の切欠部18に隣接する突板33bに一体に続いている。切欠部18は一方の分割カバー4aと同様に下側のバッテリカバー3(図1,図2)のストッパ突部22に係合して樹脂カバー4を位置決め支持させるためのものであり、突板33bは分割面45において幅方向中間部でカットされ、一方の分割カバー4aの突板33aと接合して正規の長さの一つの突板33を構成する。
【0041】
図5の矢印の如く一方の分割カバー4aを他方の分割カバー4bに接合させて、一つの樹脂カバー4を形成する。すなわち、一方の分割カバー4aの各突板部37を他方の分割カバー4bの各凹部42内に進入係合させて、各突板部37の係止孔38に各凹部42内の係止突起43を係合させる。これにより、両分割カバー4a,4bが位置ずれなく相互に固定される。
【0042】
上から一番目と三番目の各突板部371,373は基板部11の裏面側で各凹部421,423に係合し、上から二番目と四番目の各突板部372,374は基板部11の表面側で各凹部422,424に係合する。各突板部37は互い違いに位置し、各凹部42は各突板部37に対応して互い違いに位置しているから、各突板部37が互い違いに各凹部42に噛み合って板厚方向の位置ずれなく且つ強固に両分割カバー4a,4bが接合合体する。
【0043】
各突板部37の間のスリット39には各凹部42の間の端縁部44が進入係合してスリット39が完全に塞がれる。スリット39が完全に塞がれることで、樹脂カバー4の内側の接続板6(図2)や電圧検出端子8(図3)が外部に対して良好に絶縁される。各突板部37と各凹部42とは互い違いに係合するから、沿面距離が増大し、絶縁性が高まる。
【0044】
図4,図5の如く、一方の分割カバー4aにはその一端部にのみ突板部37が設けられているが、他方の分割カバー4bには凹部42が二つの隣接するバッテリ2(図2)ごとに(二つのバッテリ2のピッチで)基板部11に複数列に並列に設けられている。図4,図5では便宜上凹部42を二列のみ図示しているが、実際は等ピッチ(等間隔)で各凹部42が基板部11に並列に設けられている。
【0045】
隣接する二つのバッテリ毎としたのは、一方のバッテリ2(図2)が+極の電極9を有し、他方のバッテリ2が−極の電極10を有しており、隣接する二つのバッテリ2の単位でバッテリ数を増減させて使用するからである。一つのバッテリ2は複数の単電池で構成されている。
【0046】
車種に応じてバッテリ2の数が異なる場合に、他方の分割カバー4bを図5で例えば鎖線47の如く基板部11と凹部42(421〜424)との境から、各凹部42に開口42aができる位置で縦方向に切断して、バッテリ2の数に対応した樹脂カバー4を形成することができる。下端の各突板33はバッテリ毎に形成されている。
【0047】
図5で他方の分割カバー4bの分割面45に対して鎖線47の切断面はバッテリ一つ分、分割カバー4bを短くすることになる。図5で分割面45に対して凹部42の二列のピッチ寸法位置で分割カバー4bを切断すれば、バッテリ二つ分、分割カバー4bが短くなる。このように、切断する凹部42の列の数と削減されるバッテリ2の数とは同じであり、長さを調整した他方のカバー4bに一定長さの一方の分割カバー4aを接合させることで、バッテリ2の数に対応した長さの樹脂カバー4を形成することができる。
【0048】
一方の分割カバー4aは切断せずに車種毎に共通で使用される。他方の分割カバー4bの切断箇所は一方の分割カバー4aに近い一方の端部側であり、図1の如く他方の分割カバー4bの他方の端部は総出力用のバスバー7’を保持する部分であるから、他方の端部側は切断せずに残存させる。
【0049】
他方の分割カバー4bの切断は例えばプレス式の切断機や回転砥石や回転刃を有する切断機等を用いて容易に行うことができる。他方の分割カバー4bは初期長さを余裕を持って長めに設定しておくか、あるいは少なくともバッテリ2の最大使用数の長さから一方の分割カバー4aの長さを差し引いた長さに設定することが好ましい。
【0050】
なお、上記実施形態においては、係止手段として突板部37に係止孔38、凹部42に係止突起43を設けたが、これとは逆に突板部37に係止突起43、凹部42に係止孔38を設けることも可能である。また、貫通した係止孔38に代えて貫通していない係止穴を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のバッテリ用樹脂カバーを備えるバッテリパックの一形態を示す斜視図である。
【図2】樹脂カバーを装着する前のバッテリパックを部分的に示す斜視図である。
【図3】樹脂カバーの内面側に電圧検出端子を装着した状態を示すやや斜め下側から見た正面図である。
【図4】本発明のバッテリ用樹脂カバーの一実施形態を示す組立前の状態の分解斜視図である。
【図5】同じく樹脂カバーの組立前の状態を示す正面図である。
【図6】従来のバッテリ用接続プレートの一形態を示す分解斜視図である。
【図7】従来の電圧検出端子の一形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
2 バッテリ
4 バッテリ用樹脂カバー
4a 一方の分割カバー
4b 他方の分割カバー
6 接続板
8 電圧検出端子
9 +電極
10 −電極
37(371〜374) 突板部
38 係止孔(係止手段)
42(421〜424) 凹部
43 係止突起(係止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数のバッテリの電極側の端部に装着されるバッテリ用樹脂カバーであって、一方の分割カバーと他方の分割カバーとで構成され、該一方の分割カバーが一端部に複数の突板部を互い違いに有し、該他方の分割カバーが一端部と長手方向中間部とに、該複数の突板部に対する複数の凹部を並列に有し、一端部の該凹部と該突板部とが係止手段で相互に係止されることを特徴とするバッテリ用樹脂カバー。
【請求項2】
前記他方の分割カバーが前記バッテリの数に応じて長手方向中間部の凹部からカバー長手直交方向に切断して使用されることを特徴とする請求項1記載のバッテリ用樹脂カバー。
【請求項3】
前記各分割カバーに電圧検出端子が装着され、前記各バッテリが接続板で直列に接続され、該電圧検出端子が該接続板に接続されたことを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリ用樹脂カバー。
【請求項4】
並列に配置された複数のバッテリの電極側の端部に装着するバッテリ用樹脂カバーの形成方法であって、一方の分割カバーの一端部に、係止手段を有する複数の突板部を互い違いに設け、他方の分割カバーの一端部と長手方向中間部とに、該複数の突板部に対応して係止手段を有する複数の凹部を並列に形成し、前記バッテリの数に応じて該他方の分割カバーを長手方向中間部の所要の列の凹部から切断し、切断した該凹部に該突板部を係合させて樹脂カバーを形成することを特徴とするバッテリ用樹脂カバーの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−120488(P2006−120488A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307871(P2004−307871)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】